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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A01N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01N
管理番号 1238076
審判番号 不服2008-19464  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-31 
確定日 2011-06-09 
事件の表示 特願2003-112384「切り花セットの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年11月11日出願公開、特開2004-315450〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年4月17日の出願であって、平成19年11月30日付けの拒絶理由通知に対して、平成20年2月8日付けで意見書の提出とともに手続補正がなされ、平成20年3月4日付けの拒絶理由通知に対して、平成20年5月9日付けで意見書の提出とともに手続補正がなされたが、平成20年6月25日付けで拒絶査定がなされ、その後、平成20年7月31日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成20年8月28日付けで手続補正がなされ、平成22年11月8日付けの審尋に対して、平成22年12月28日に回答書の提出がなされたものである。

2.平成20年8月28日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成20年8月28日付け手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
平成20年5月23日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の請求項1に記載された「切り花セットの製造方法」という発明特定事項を、補正後の請求項1において「アレンジメントされた切り花セットの製造方法」に改める補正を含むものであるから、当該補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否か)について検討する。

(2)引用文献及びその記載事項
刊行物1:特開平3-47101号公報(原査定の「引用文献1」に同じ。)
刊行物2:特開平7-82101号公報(原査定の「引用文献2」に同じ。)
刊行物3:特開平9-47154号公報
刊行物4:特開2002-97101号公報
刊行物5:特開平8-104385号公報

上記刊行物1には、次の記載がある。
摘記1a:請求項1
「チオスルファト銀錯塩水溶液にヘキサメチレンテトラミン、またはポリアミノカルボン酸の水溶性塩を添加してなる切り花の活力保持剤。」

摘記1b:第1頁右下欄第10?14行
「カーネーションを始めユリ、スイートピー、ダリアなど微量のエチレンガスによって花が萎みやすい切り花をチオスルファト銀錯塩を含有する水溶液で前処理すれば有効に活力を維持できることは既に知られている。」

摘記1c:第2頁左下欄第20行?右下欄第6行
「本発明の活力保持剤は種々の濃度に製造できるが、たとえば塩化銀に換算して3,000ppmを含有する溶液を製造した場合、これをたとえば水で50?100倍に希釈した液に、出荷前の切り花の茎を2ないし18時間程度室温で浸漬することにより切り花の活力を長時間保持させることができる。」

摘記1d:第2頁右下欄第12?17行
「実施例1
硝酸銀(または塩化銀)3gとチオ硫酸ナトリウム30g(無水物として)を水800mlに混合溶解して得られるチオ硫酸銀錯塩水溶液にヘキサメチレンテトラミン25gおよび水を加えて全量を1Lとする。」

摘記1e:第3頁左上欄第15行?右上欄第13行
「実施例5
実施例1,2または3の製品をそれぞれ5mlずつ採り、水道水でそれぞれ500mlに希釈してフラスコに入れ、この液に赤または他の色のカーネーションの切り花(長さ約45?50cm)それぞれ10本ずつを入れ、室温(20?25℃)にて2?18時間前浸漬を行った後、別に用意した水道水500mlのみを入れたフラスコにそれぞれ移して浸漬し、28?30℃の温室中に放置した。…
6?7日後には、対照群は全部の花が小さく萎んだが、実施例1?3の各製品で前処理した試験群は全部の花が非常に大きく美しく開花し12?15日に至って逐次凋んで行った。」

上記刊行物2には、次の記載がある。
摘記2a:請求項1
「ジェランガムを主剤としたゲル状組成物を防水性の袋体もしくは容器に充填するとともに、このゲル状組成物中に切り花の茎下端部を差し込んだ状態として輸送することを特徴とする切り花の輸送方法。」

摘記2b:段落0002
「従来より、切り花などを輸送する場合は、フェノール樹脂などの発泡体で切り花の茎下端部を囲繞するとともに、この発泡体に水分を含ませた状態として切り花の鮮度を保ちながら輸送していた(例えば、特開昭62-122078号公報参照)。」

摘記2c:段落0013?0014
「切り花としては、生け花や、冠婚葬祭用の花束などに用いられる各種のものを用いることができる。また、その数としても、袋体もしくは容器に充填したゲル状組成物に差し込むことができる数であれば、1本から数百本まで特に限定されるものではない。…本発明によると、離水性に優れたジェランガムによってゲル状組成物を構成しているため、このゲル状組成物から切り花に必要な水分を供給することができる。」

摘記2d:段落0016及び0019?0020
「【実施例1】
1000mlのビーカーにジェランガム3gと、植物延命剤10gとを入れ、約950mlの冷水を加えて90?95℃で30分以上加熱、攪拌し、溶液とした。この溶液に、0.5gの塩化カルシウムの溶解した水溶液20mlを加えて攪拌し、さらに水を加えて溶液の量を1000mlに調製した。次に、溶液を攪拌しながら50?55℃に冷却し、ゲル化しないように50℃の保温状態とした。…
【実施例2】
図2に示すように、容量30mlの樹脂製三角フラスコ型の一輪差し容器5に、上記実施例1の溶液を20ml加え、冷却してゲル化させるとともに、1本の切り花2をこのゲル状組成物3中に差し込み、容器5の開口部分50を閉塞するようにセロファン6やテープ4などによって切り花2の茎20の基端部に止めた。…
このようにして構成された切り花2は、日陰の室温保存で24?48時間にわたって目視で観察した結果、品質の低下を伴わず、新鮮な状態を維持できた。また、包装を剥がすだけで、一輪差しの切り花2の製品として提供することができた。さらに、切り花2を容器5ごと転倒せさせたが、ゲル状組成物3および水分の流出もなく安全であった。」

摘記2e:図2




上記刊行物3には、次の記載がある。
摘記3a:段落0002
「切り花等の生花を遠隔地に搬送する場合,或いはそのような生花を展示する場合には,従来からプラスチック製の花瓶などに水を入れて搬送することが行われている。このような場合には,輸送車両等の発進,制動,カーブ走行等の揺動或いは振動により水があふれ易いため,水を少なくしたり,スポンジ等の多孔性発泡体に水を吸収させて,生花への給水を行うなどの措置がとられることが多い。また,輸送中に水がこぼれるのを防ぐために,花瓶の容量に対して水の比率を小さくしたり,花瓶の大容量化並びに重量の増大化などが行われる。」

摘記3b:段落0006
「本発明の切り花用給水材によれば,生分解可能な容器の中に,保水性及びゲル化能を有する多糖類とこの多糖類のゲル化を促進させる塩類と植物延命剤とを水に溶解させてゲル化させたゲル状給水剤が充填されているので,容器を開封して切り花等の生花を差し込めば,給水を行うことができる。」

摘記3c:段落0009
「図1は本発明の切り花用給水材を示しており,切り花用給水材1は容器である花瓶2とゲル状給水剤としてのジェランガムゲル3と密封用のプラスチックフィルム4からなる。」

摘記3d:段落0030?0031
「さらに,図3に示すように予め切り花5を花瓶6にセットして花瓶付きの切り花商品とすると,輸送,備蓄を経て消費者に届く物流工程段階における花色の退色,鮮度の低下などの品質の低下を防ぎ,商品価値の低下の抑制が可能となる。この場合,花瓶6の底部に切り花5の茎の根元が左右に移動しないように突起8,8をリング状或いは飛び石状に配列形成すると,切り花5の茎をフィルム9に差し込んだときに,切り花5の茎の中間部はフィルム9の開口部10に保持され,茎の切り口側が突起8,8の間に位置し,さらにジェランガムゲル7で切り花5の茎が支持されるので,倒れ難くなり,切り花5の花が傷つき難くなる。なお,花瓶7の側部周面に切り花5を囲むように紙或いはセロファン11等で覆っても良い。この場合,あらかじめセロファン11の下端部に接着剤を塗工し,先に花瓶5の周りにセロファン11を筒状に巻き付け,上部の径を下部より大きくしておけば,切り花5を単に差し込むだけであるので,切り花5のセットが非常に容易なものとなる。セロファン11,紙などの柄なども選択でき,装飾効果が向上する。…
このように,ジェランガムゲル7が花瓶6に予めセットされていることにより,従来の技術では準備はパーティー,展示会,葬式など各種イベントの開催直前に飾り付けを行わなければならないため,大量の需要をまかなうことは困難であったが,本実施形態の切り花用給水材を使用すれば,作業の簡略化が図れるだけでなく,保水材の給水性と配合成分の植物延命効果などにより,前日からの製品の準備,調製が可能となり大量需要への対応が可能となる。」

摘記3e:図3




上記刊行物4には、次の記載がある。
摘記4a:段落0018
「即ち、切り花は、上記のように、主に冷却手段等を備えた他の装置等に依存して保存され、切り花自体に適切な保存のための手段が施されていなかったため、一般的には、産地にて刈り取られた後市場へ搬入されるまでの過程においては、新聞紙等により包装されて特に延命のための水分補給をすることなく、まとめて段ボール箱に詰められた状態で搬送され、その後、花屋等の専門店が仕入れる場合には、そのままの状態で花屋まで運送されていた。また、花屋等の専門店ではなく、切り花以外の商品も取扱うスーパーマーケット等の一般店に仕入れる場合には、段ボール箱に詰められた状態で市場から加工場に搬送され、加工場にて販売に適した状態に包装する等の加工が行われた後、加工場から販売店までは水桶等の保持部材に切り口を浸し、場合によっては更に水桶ごと切り花を段ボールで覆って運搬、延命が行われていた。」

摘記4b:段落0102
「(保持部材)一方、このようにして延命処理が施された切り花1を保持する保持部材14としては、例えば、図1に示すように、保水具12が挿入される開口部14aを有する有底円筒状のポリプロピレン等から成る桶30を使用することができる。この桶30は、少なくとも冷却すべき切り花1の切り口1aを覆った保水具12を、望ましくは、図1に示すように、切り花1が転倒しないように、切り花1の茎部の途中付近まで支えることができる深さに形成する。なお、この桶30の直径は、切り花1を適数本挿入することができるように、約15cm前後とすることが好ましい。」

摘記4c:段落0107
「これにより、図1に示すように、桶30等の保持部材14に保持された切り花1の花弁部1bが看者の方を向くため、店頭販売時における切り花1の見栄えが良くなり、装飾的に陳列することができ、販売を促進することができる。」

摘記4d:段落0112
「具体的には、それぞれ茎部を50cmの長さに調整したA)大輪菊(黄色)、B)小菊(赤)、C)小菊(黄色)1本、D)リンドウ1本の4本の切り花1を1セットとして、…1%の栄養剤及び殺菌剤を含有する200gの水分(保水剤:栄養剤及び殺菌剤とを含んだ水分26)を吸収したバージンパルプ(保水具12)により切り口1aを覆って、これらの切り花1の各4本セットを(1)冷却手段20による冷却温度を+11℃に設定して(低温)冷却カバー38を有する保持部材14に挿入して保持」

上記刊行物5には、次の記載がある。
摘記5a:請求項22
「前記花瓶は、一本の蕾又は花を収容するための一輪挿しと定義される、請求項1に記載の植物パッケージ輸送方法。」

摘記5b:段落0023
『「花瓶」という用語は、花卉又は一本の切り花の保持に使用される任意の種類の容器に関する。…「花卉」という用語は、本明細書中では、「生け花(floral arrangement)」と相互交換自在に使用できる。』

摘記5c:段落0033
「花卉保持媒体(例えばフォーム)49が花瓶26の内部空間内に配置された状態で示してある。この媒体は、水分又は栄養物を与えるため、…花卉34の一部を保持するように機能する。…このような花卉保持材料49は当業者に周知であり、商業的に入手できる。」

(3)刊行物1に記載された発明
摘記1aの「チオスルファト銀錯塩水溶液にヘキサメチレンテトラミン、またはポリアミノカルボン酸の水溶性塩を添加してなる切り花の活力保持剤。」との記載、摘記1bの「カーネーションを始めユリ、スイートピー、ダリアなど…切り花をチオスルファト銀錯塩を含有する水溶液で前処理すれば有効に活力を維持できる」との記載、摘記1cの「本発明の活力保持剤は…これをたとえば水で50?100倍に希釈した液に、出荷前の切り花の茎を2ないし18時間程度室温で浸漬することにより切り花の活力を長時間保持させることができる。」との記載からみて、刊行物1には、
『切り花の活力保持剤の水溶液に、出荷前の切り花の茎を2ないし18時間程度浸漬することにより、切り花の活力を長時間保持させることができる切り花の出荷方法。』についての発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(4)対比
補正発明と引用発明とを対比するに、
引用発明の「切り花」は、摘記1eの「実施例1?3の各製品で前処理した試験群は全部の花が非常に大きく美しく開花」との記載からみて、鑑賞用に供されるものであることが明らかであることから、補正発明の「鑑賞用切り花」ないし「観賞用切り花」に相当し、
引用発明の「切り花の活力保持剤の水溶液」は、摘記1aの「チオスルファト銀錯塩水溶液…切り花の活力保持剤」との記載、及び補正後の本願明細書の段落0024の「(B3)の老化防止剤としては、…STS(チオ硫酸銀又はチオスルファト銀錯塩)」との記載からみて、その具体的な有効成分が「チオスルファト銀錯塩」である点において一致していることから、補正発明の「切り花鮮度保持剤の水溶液」に相当し、
引用発明の「切り花の活力保持剤の水溶液に、…切り花の茎を2ないし18時間程度浸漬する」は、一般に切り花の切り口が茎に形成されるのが普通であること、及び、水溶液に浸漬された切り花が水溶液中の有効成分とともに水分を吸収するのが普通であることからみて、補正発明の「観賞用切り花の切り口に切り花鮮度保持剤の水溶液を1時間?1週間接触させて切り花に切り花鮮度保持剤を吸収させ」に相当する。
してみると、両者は、『観賞用切り花の切り口に切り花鮮度保持剤の水溶液を1時間?1週間接触させて切り花に切り花鮮度保持剤を吸収させる方法。』である点において一致し、
切り花に切り花鮮度保持剤を吸収させた後の工程として、補正発明が「少なくとも切り花の切り口を水を含む吸水性支持体と接触させる工程を有するアレンジメントされた切り花セットの製造方法であって、前記吸水性支持体がゲランガムからなる、アレンジメントされた切り花セットの製造方法」という工程を有しているのに対して、引用発明は、その後の工程として単に「出荷」を行うものである点においてのみ実質的に相違している。

(4)判断
上記相違点について検討する。

まず、摘記2aの「ジェランガムを主剤としたゲル状組成物…中に切り花の茎下端部を差し込んだ状態として輸送する…切り花の輸送方法。」との記載、摘記2cの「切り花としては、生け花や、冠婚葬祭用の花束などに用いられる各種のものを用いる…本発明によると、離水性に優れたジェランガムによってゲル状組成物を構成しているため、このゲル状組成物から切り花に必要な水分を供給することができる。」との記載、摘記2dの「図2に示すように、…1本の切り花2をこのゲル状組成物3中に差し込み、…一輪差しの切り花2の製品として提供することができた。」との記載、及び摘記2eの図2についての記載からみて、刊行物2には、『ジェランガムを主剤としたゲル状組成物中に切り花の茎下端部を差し込んだ状態として輸送する切り花の輸送方法であって、ゲル状組成物から切り花に必要な水分を供給することができ、一輪挿しの切り花2の製品(或いは、生け花や、冠婚葬祭用の花束)として提供することができる輸送方法。』についての発明(以下、「刊2発明」という。)が記載されており、
ここで、刊2発明の「一輪挿しの切り花2の製品(或いは、生け花や、冠婚葬祭用の花束)として提供すること」は、摘記5aの「一輪挿し」との記載、及び摘記5bの「花卉又は一本の切り花…生け花(floral arrangement)」との記載を参酌するに、一般に「一輪挿し」は生け花(英語で「フラワーアレンジメント」ともいう。)の技法の一つであることが普通に知られており、「生け花や、冠婚葬祭用の花束」も一般に複数種類の切り花を組み合わせた「アレンジメントされた切り花セット」の形態にあると言えるから、補正発明の「アレンジメントされた切り花セットの製造方法」に相当するものであり、
刊2発明の「ゲル状組成物中に切り花の茎下端部を差し込んだ状態として…ゲル状組成物から切り花に必要な水分を供給することができ」は、その「切り花に必要な水分を供給すること」ができる「ゲル状組成物」が、切り花の茎下端部を差し込んだ状態に支持し、かつ水分を供給可能な程度に含んでいることが明らかであることから「水を含む吸水性支持体」に相当するものと解され、その「切り花の茎下端部」の「端部」が「切り花の切り口」に相当するものと解され、その「ゲル状組成物中に切り花の茎下端部を差し込んだ状態」とすることが「切り花の切り口を水を含む吸水性支持体と接触させる」に相当するものと解されるから、補正発明の「少なくとも切り花の切り口を水を含む吸水性支持体と接触させる工程を有する」に相当し、
刊2発明の「ジェランガムを主剤としたゲル状組成物」は、その「ジェランガム」の表記が「gellan gum」であり(必要ならば、特公平7-106966号公報の第7欄第28?30行の「シュードモナス・エロデア…によって生産される多糖類はジェランガム(Gellan Gum)として市販されている。」との記載を参照されたい。)、「ゲランガム」と同義であることが自明であることから、補正発明の「前記吸水性支持体がゲランガムからなる」に相当する。
してみると、刊行物2には、「少なくとも切り花の切り口を水を含む吸水性支持体と接触させる工程を有するアレンジメントされた切り花セットの製造方法であって、前記吸水性支持体がゲランガムからなる、アレンジメントされた切り花セットの製造方法」という工程を含む輸送方法についての発明が記載されているものと認められる。

加えて、摘記3dの「図3に示すように予め切り花5を花瓶6にセットして花瓶付きの切り花商品とすると,輸送,備蓄を経て消費者に届く物流工程段階における花色の退色,鮮度の低下などの品質の低下を防ぎ,商品価値の低下の抑制が可能となる。…さらにジェランガムゲル7で切り花5の茎が支持されるので,倒れ難くなり,切り花5の花が傷つき難くなる。…飾り付け…作業の簡略化が図れる」との記載、及び摘記3cの「図1は本発明の切り花用給水材を示しており,切り花用給水材1は容器である花瓶2とゲル状給水剤としてのジェランガムゲル3と密封用のプラスチックフィルム4からなる。」との記載からみて、刊行物3には、『輸送を経て消費者に届く物流工程段階において、予め切り花5を花瓶6にセットして花瓶付きの切り花商品とし、切り花用給水材1は容器である花瓶2とゲル状給水剤としてのジェランガムゲル3と密封用のプラスチックフィルム4からなり、ジェランガムゲル7で切り花5の茎が支持され、飾り付けなどの作業の簡略化が図れる物流工程段階。』についての発明(以下、「刊3発明」という。)が記載されており、
ここで、刊3発明の「予め切り花5を花瓶6にセットして花瓶付きの切り花商品とし」は、補正発明の「鑑賞用切り花をアレンジして切り花セットを製造する際」ないし「アレンジメントされた切り花セットの製造方法」に相当し、
刊3発明の「ゲル状給水剤としてのジェランガムゲル3」は、当該「ゲル状給水剤」が「ジェランガムゲル」からなり、なおかつ、摘記3dの記載からみて、当該「ジェランガムゲル」が「切り花5の茎」を「支持」する「給水剤」になっていることから、補正発明の「吸水性支持体がゲランガムからなる」に相当し、
刊3発明の「ジェランガムゲル7で切り花5の茎が支持」は、摘記3c及び3dの記載からみて、当該「ジェランガムゲル7」が「ゲル状給水剤」として「切り花用給水材1」を構成して「切り花5の茎」に給水ができるように「セット」されるものであることから、補正発明の「切り花の切り口を水を含む吸水性支持体と接触させる工程を有する」に相当する。
してみると、刊行物3にも、「少なくとも切り花の切り口を水を含む吸水性支持体と接触させる工程を有するアレンジメントされた切り花セットの製造方法であって、前記吸水性支持体がゲランガムからなる、アレンジメントされた切り花セットの製造方法」という工程を含む物流工程段階についての発明が記載されているものと認められる。

次に、摘記4aの「切り花は、…産地にて刈り取られた後市場へ搬入されるまでの過程においては、…まとめて段ボール箱に詰められた状態で搬送され、…段ボール箱に詰められた状態で市場から加工場に搬送され、加工場にて販売に適した状態に包装する等の加工が行われた後、加工場から販売店までは…保持部材に切り口を浸し、…運搬、延命が行われていた。」との記載を参酌するに、出荷後の切り花を販売に適した状態に加工した後に販売に供することは、当業者にとって普通に知られていたものと認められる。
してみると、刊行物1に記載された発明である引用発明の「切り花の出荷方法」に、刊行物2ないし3に記載された「少なくとも切り花の切り口を水を含む吸水性支持体と接触させる工程を有するアレンジメントされた切り花セットの製造方法であって、前記吸水性支持体がゲランガムからなる、アレンジメントされた切り花セットの製造方法」という周知ないし刊行物公知の発明を組み合わせることに格別の阻害事由があるとは認められないから、刊行物1に記載された発明に、刊行物2ないし3に記載された周知ないし刊行物公知の発明を組み合わせて、補正発明の構成に到達することは、当業者にとって通常の創作能力の発揮の範囲内のことでしかない。

そして、補正発明の効果について検討するに、補正後の本願明細書の段落0070の「本発明により鮮度保持日数が飛躍的に増大し、尚かつ転倒により生け水がこぼれず、見栄えが良く美しいアレンジが維持できる切り花セットが容易に得られる。このような切り花セットは、そのまま流通、販売、観賞が可能となる。」という効果に関して、摘記1eの「6?7日後には、対照群は全部の花が小さく萎んだが、実施例1?3の各製品で前処理した試験群は全部の花が非常に大きく美しく開花し12?15日に至って逐次凋んで行った。」との記載からみて、前処理を行えば「鮮度保持日数が飛躍的に増大」することは、当業者にとって容易に予測可能なことでしかなく、摘記2dの「一輪差しの切り花2の製品として提供することができた。さらに、切り花2を容器5ごと転倒せさせたが、ゲル状組成物3および水分の流出もなく安全であった。」との記載からみて、ゲランガムなどの吸水性支持体を用いれば「転倒により生け水がこぼれず、見栄えが良く美しいアレンジが維持できる切り花セットが容易に得られる」ことも、当業者にとって容易に予測可能なことでしかなく、摘記2eに図示されるような切り花の出荷状態になっていれば「そのまま流通、販売、観賞が可能となる」ことも、当業者にとって容易に予測可能なことでしかない。

したがって、補正発明は、刊行物1?3に記載された発明(及び刊行物4?5に記載された技術常識)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

(5)審判請求人の主張について
まず、平成20年10月31日付けで手続補正された審判請求書の請求の理由の「〔3〕原審引例との対比」の項において、審判請求人は、『(3-2)…原審引例2は、その段落0013に「切り花としては、生け花や、冠婚葬祭用の花束などに用いられる各種のものを用いることができる。」とあるように、対象となる切り花は、アレンジする前の出荷段階のものであることが明らかです。原審引例2の図1?3でも、輸送方法に係る「出荷状態」の切り花が示されています。』と主張し、『(3-3)…本願発明の切り花セットは、図1にも示されるように、吸水性支持体及び切り花を含んで構成されるものであり』と主張しているところ、刊行物2(引例2)に記載された摘記2d及び2eの「一輪挿しの切り花2の製品」は、吸水性支持体(ゲル状組成物3)及び切り花(切り花2)を含んで構成される「製品」であって、一輪挿しの形態でアレンジメントされているものであるから、補正発明の「アレンジメントされた切り花セット」に相当することは明らかであり、摘記2cの「冠婚葬祭用の花束」も複数種類の切り花をアレンジメントしていることも明らかであるから、前記審判請求人の主張は採用できない。
また、同項において、審判請求人は、『(3-2)…平成20年5月9日付け意見書でご説明した通り、原審引例2で切り花の輸送の際に使用できるとしているジェランガムは、…問題点があり、実際には輸送用の支持体としては用いられていません。つまり、ゲランガムを輸送用の支持体として使用するのは一般的ではないというのが、当業界におけるゲランガムの認識であり、こうした実情に基づけば、当業者が原審引例1で前処理後の切り花を接触させる支持体として、ゲランガムを採用すべき動機付けも希薄であるといえます。』と主張しているが、摘記3dの「ジェランガムゲル7で切り花5の茎が支持される」との記載や、例えば、特開平9-23751号公報の第4欄第15及び22?23行の「ゲランガム…容器を誤って倒しても…植物体が傾いたりせず容器の外にも出ない」との記載にあるように、植物の輸送用の支持体として「ゲランガム」を使用することを開示する文献は枚挙にいとまがないので、前記審判請求人の主張は採用できない。
さらに、同項において、審判請求人は、『(3-2)…ゲランガムからなる吸水性支持体を用いることで、アレンジが維持できることは、当業者といえども、原審引例1と2の組み合わせから相当できたものではありません。…原審引例1、2から当業者が予測できないアレンジの維持という効果が奏されます。このような補正後の本願発明は、原審引例1、2に開示された出荷段階でも切り花の鮮度を維持する方法を何れの段階で適用するか、といった範疇の設計変更では当業者が想到し得ないものです。』と主張し、平成22年12月28日付けの回答書の「〔2〕引用文献との対比」の項においても、『(2-2)…引用文献1、2は、輸送後の切り花を用いて作製したフラワーアレンジメントの維持効果について具体的に示唆するところは有りません。』と主張しているが、摘記2dの「このようにして構成された切り花2は、…品質の低下を伴わず、新鮮な状態を維持できた。…さらに、切り花2を容器5ごと転倒せさせたが、ゲル状組成物3および水分の流出もなく安全であった。」との記載にあるように、刊行物2(引例2)には、アレンジされた切り花2を容器5ごと転倒させても問題がなかったことが実質的に記載されているので、前記審判請求人の主張は採用できない。加えて、摘記3dの「予め切り花5を花瓶6にセットして花瓶付きの切り花商品とすると,…花色の退色,鮮度の低下などの品質の低下を防ぎ,商品価値の低下の抑制が可能となる。…さらにジェランガムゲル7で切り花5の茎が支持されるので,倒れ難くなり,切り花5の花が傷つき難くなる。」との記載にあるように、刊行物3にも、ゲランガムからなる吸水性支持体(切り花の茎を支持するジェランガムゲル7)を用いることで、切り花が倒れ難くなり、商品価値の低下の抑制が可能となることが記載されているので、補正発明に格別予想外の顕著な効果があるとはいえない。

(6)まとめ
以上総括するに、補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではなく、上記請求項1についての補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、本件補正は、その余のことを検討するまでもなく、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成20年8月28日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?5に係る発明は、平成20年2月8日付けの手続補正、及び平成20年5月9日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「観賞用切り花の切り口に切り花鮮度保持剤の水溶液を1時間?1週間接触させて切り花に切り花鮮度保持剤を吸収させた後、少なくとも切り花の切り口を水を含む吸水性支持体と接触させる工程を有する切り花セットの製造方法であって、前記吸水性支持体がゲランガムからなる、切り花セットの製造方法。」

(2)原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、『この出願については、平成20年3月4日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものです。』というものであって、原査定の備考欄には、『引用文献1に記載の切り花鮮度保持剤を切り花に吸収させた後、継続した水分供給のために、水に浸漬することに変えて、引用文献2に記載の水漏れの心配のないジェランガムを主剤とする吸水支持体に切り花を差し込み、鮮度を維持しようとすることは当業者であれば容易に想到するものである。』との指摘がなされている。
そして、平成20年3月4日付けの拒絶理由通知書には、理由1として、『この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。』という理由が示され、その「記」に「理由1:請求項1-6:引用文献1-5(備考)」との指摘がなされるとともに、上記2.(2)に示した刊行物1(特開平3-47101号公報)及び刊行物2(特開平7-82101号公報)が、それぞれ「引用文献1」及び「引用文献2」として提示されている。

(3)引用文献1?2、及びその記載事項
本願出願日前に頒布された刊行物であって、原査定の拒絶の理由に「引用文献1」及び「引用文献2」として引用された刊行物、並びにその記載事項については、上記2.(2)において「刊行物1」及び「刊行物2」、並びに「摘記1a」?「摘記1e」及び「摘記2a」?「摘記2e」として示したとおりである。

(4)引用文献1に記載された発明
上記2.(3)に示したように、引用文献1には、上記2.(3)に示したとおりの「引用発明」が記載されている。

(5)対比
本願発明と引用発明とを対比するに、
引用発明の「切り花」は、摘記1eの「実施例1?3の各製品で前処理した試験群は全部の花が非常に大きく美しく開花」との記載からみて、観賞用に供されるものであることが明らかであることから、本願発明の「観賞用切り花」に相当し、
引用発明の「切り花の活力保持剤の水溶液」は、摘記1aの「チオスルファト銀錯塩水溶液…切り花の活力保持剤」との記載、及び本願明細書の段落0024の「(B3)の老化防止剤としては、…STS(チオ硫酸銀又はチオスルファト銀錯塩)」との記載からみて、その具体的な有効成分が「チオスルファト銀錯塩」である点において一致していることから、本願発明の「切り花鮮度保持剤の水溶液」に相当し、
引用発明の「切り花の活力保持剤の水溶液に、…切り花の茎を2ないし18時間程度浸漬する」は、一般に切り花の切り口が茎に形成されるのが普通であること、及び、水溶液に浸漬された切り花が水溶液中の有効成分とともに水分を吸収するのが普通であることからみて、本願発明の「観賞用切り花の切り口に切り花鮮度保持剤の水溶液を1時間?1週間接触させて切り花に切り花鮮度保持剤を吸収させ」に相当する。
してみると、両者は、『観賞用切り花の切り口に切り花鮮度保持剤の水溶液を1時間?1週間接触させて切り花に切り花鮮度保持剤を吸収させる方法。』である点において一致し、
切り花に切り花鮮度保持剤を吸収させた後の工程として、本願発明が「少なくとも切り花の切り口を水を含む吸水性支持体と接触させる工程を有する切り花セットの製造方法であって、前記吸水性支持体がゲランガムからなる、切り花セットの製造方法」という工程を有しているのに対して、引用発明は、その後の工程として単に「出荷」を行うものである点においてのみ実質的に相違している。

(4)判断
上記相違点について検討する。

上記2.(4)において検討したように、引用文献2には、『ジェランガムを主剤としたゲル状組成物中に切り花の茎下端部を差し込んだ状態として輸送する切り花の輸送方法であって、ゲル状組成物から切り花に必要な水分を供給することができ、一輪挿しの切り花2の製品として提供することができる輸送方法。』についての発明が記載されているものと認められ、引用文献2には、「少なくとも切り花の切り口を水を含む吸水性支持体と接触させる工程を有する切り花セットの製造方法であって、前記吸水性支持体がゲランガムからなる、切り花セットの製造方法」という工程を含む輸送方法についての発明が実質的に記載されているものと認められる。

そして、出荷後の切り花を販売に適した状態に加工した後に販売に供することが普通に知られているところ、引用文献1に記載された発明である引用発明の「切り花の出荷方法」に、引用文献2に記載された「少なくとも切り花の切り口を水を含む吸水性支持体と接触させる工程を有する切り花セットの製造方法であって、前記吸水性支持体がゲランガムからなる、切り花セットの製造方法」という発明を組み合わせることに格別の阻害事由があるとは認められないから、引用文献1に記載された発明と引用文献2に記載された発明とを組み合わせて、本願発明の構成に到達することは、当業者にとって通常の創作能力の発揮の範囲内のことでしかない。

また、本願発明の効果について検討するに、上記2.(4)において検討したように、本願発明に格別予想外の顕著な効果があるとは認められない。

したがって、本願発明は、引用文献1?2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-04-11 
結審通知日 2011-04-12 
審決日 2011-04-25 
出願番号 特願2003-112384(P2003-112384)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A01N)
P 1 8・ 121- Z (A01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今井 周一郎中島 庸子  
特許庁審判長 中田 とし子
特許庁審判官 木村 敏康
小出 直也
発明の名称 切り花セットの製造方法  
代理人 古谷 聡  
代理人 義経 和昌  
代理人 溝部 孝彦  
代理人 持田 信二  
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