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審決分類 |
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1238130 |
審判番号 | 不服2009-24477 |
総通号数 | 139 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-07-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-12-11 |
確定日 | 2011-06-10 |
事件の表示 | 特願2000-180690「建築構造情報供給方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月26日出願公開、特開2001-357079〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成12年6月16日の出願であって、平成21年6月8日付けの拒絶理由の通知に対し、平成21年8月10日付けで手続補正がなされたが、平成21年9月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月11日に審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。 第2.平成21年12月11日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成21年12月11日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 この手続補正による補正前後の特許請求の範囲の記載は、それぞれ、次のとおりである。 (1)補正前の特許請求の範囲の記載 「 【請求項1】 コンピュータネットワークによって建築構造の情報を供給する建築構造情報供給方法において、 工務店側サブステーションからホストステーションに対して建築物の構造体を形成するための複数種類の建築構造部材についての形状データ、相対位置データ及び荷重データ(以下形状データ等という)を出力し、前記ホストステーションにて入力された前記形状データ等と、CADプログラム内の補助データとに基づいて仮想的に3次元モデルを構築し、同モデルから選択された建築構造部材について平面上に描画された2次元線図を表示画面に表示させる一方、前記形状データ等より選択されたデータに基づいて建築構造部材の強度を算出して同表示画面に表示させ、 第1のサブステーションに対して前記算出された建築構造部材の強度データを同ホストステーションから出力し、同第1のサブステーション側で同強度データに基づいて建築構造の安全評価を実行し、実行された建築構造の安全評価の評価データは前記第1のサブステーションから前記ホストステーションに対して出力され、前記評価データは前記工務店側サブステーションからの要請に応じて前記ホストステーションから前記工務店側サブステーションへ出力されることを特徴とする建築構造情報供給方法。 【請求項2】 コンピュータネットワークによって建築構造の情報を供給する建築構造情報供給方法において、 工務店側サブステーションからホストステーションに対して建築物の構造体を形成するための複数種類の建築構造部材についての形状データ等を出力し、前記ホストステーションにて入力された前記形状データ等と、CADプログラム内の補助データとに基づいて仮想的に3次元モデルを構築し、同モデルから選択された建築構造部材について平面上に描画された2次元線図を表示画面に表示させる一方、前記形状データ等より選択されたデータに基づいて建築構造部材の強度を算出して同表示画面に表示させ、 第1のサブステーションに対して前記算出された建築構造部材の強度データを同ホストステーションから出力し、同第1のサブステーション側で同強度データに基づいて建築構造の安全評価を実行し、実行された建築構造の安全評価の評価データは前記第1のサブステーションから前記ホストステーションに対して出力されるとともに、前記工務店側サブステーションからの要請に応じて前記第1のサブステーションから前記工務店側サブステーションへ出力されることを特徴とする建築構造情報供給方法。 【請求項3】 前記ホストステーションは第2のサブステーションに対して前記形状データ等より選択された形状データに基づいて前記第2のサブステーション側の工作機械に対して建築構造部材の加工を実行させるようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の建築構造情報供給方法。 【請求項4】 前記ホストステーションに入力された施工管理データより選択されたデータを前記表示画面に表示させるとともに金融機関側サブステーションに対して出力し、同選択データに基づいて金融機関側サブステーション側で建築構造の出来高評価を実行することを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の建築構造情報供給方法。 【請求項5】 実行された建築構造の出来高評価の評価データは前記金融機関側サブステーションから前記ホストステーション又は前記工務店側サブステーションへ出力されることを特徴とする請求項4に記載の建築構造情報供給方法。」 (2)補正後の特許請求の範囲の記載 「 【請求項1】 コンピュータネットワークによって建築構造の情報を供給する建築構造情報供給方法において、 工務店側サブステーションからホストステーションに対して建築物の構造体を形成するための複数種類の建築構造部材についての形状データ、相対位置データ及び荷重データ(以下形状データ等という)を出力し、前記ホストステーションにて入力された前記形状データ等と、CADプログラム内の補助データとに基づいて仮想的に3次元モデルを構築し、同モデルから選択された建築構造部材について平面上に描画された2次元線図を表示画面に表示させる一方、前記形状データ等より選択されたデータに基づいて建築構造部材の強度を算出して同表示画面に表示させ、 第1のサブステーションに対して前記算出された建築構造部材の強度データを同ホストステーションから出力し、同第1のサブステーション側で同強度データに基づいて建築構造の安全評価を実行し、実行された建築構造の安全評価の評価データは前記第1のサブステーションから前記ホストステーションに対して出力され、前記評価データは前記工務店側サブステーションからの要請に応じて前記ホストステーションから前記工務店側サブステーションへ出力されるとともに、前記ホストステーションは第2のサブステーションに対して前記形状データ等より選択された形状データに基づいて前記第2のサブステーション側の工作機械に対して建築構造部材の加工を実行させるようにし、 前記ホストステーションに入力された施工管理データより選択されたデータを前記表示画面に表示させるとともに金融機関側サブステーションに対して出力し、同選択データに基づいて金融機関側サブステーション側で建築構造の出来高評価を実行するようにしたことを特徴とする建築構造情報供給方法。 【請求項2】 実行された建築構造の出来高評価の評価データは前記金融機関側サブステーションから前記ホストステーションへ出力されることを特徴とする請求項1に記載の建築構造情報供給方法。 【請求項3】 前記施工管理データとはカメラで撮影したデジタル画像データであることを特徴とする請求項1又は2(注)に記載の建築構造情報供給方法。」 (注)補正後の特許請求の範囲の請求項3には、「・・請求項1又はに記載の・・」と記載されているが、これは、「・・請求項1又は2に記載の・・」の明らかな誤記と考えられるのでそのように認定した。 2.補正の適否 補正後の請求項1は、補正前の(請求項1を引用する請求項3をさらに引用する)請求項4であり、補正後の請求項2は、補正前の(請求項1を引用する請求項3を引用する請求項4をさらに引用する)請求項5であるから、これら補正後の請求項1、2の補正は適法なものであるが、補正後の請求項3の補正は適法なものではない。以下、補正後の請求項3の補正について詳述する。 補正後の請求項3の補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という)第17条の2第4項第1号、第3号、第4号に規定された、第36条第5項に規定する請求項の削除、誤記の訂正、明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)を目的とするものではないことは明らかである。 そこで、この補正が第2号の『特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)』(以下、「限定的減縮」という)に該当するか否か、すなわち、補正後の請求項3が、補正前の請求項1ないし5を限定的に減縮したものとなっているか否かについて以下に検討する。 (1)補正後の請求項3が、補正前の請求項1、3を限定的に減縮したものであるか否かについて検討する。 補正後の請求項3には、「前記施工管理データは」と記載されているが、補正前の請求項1、3には、施工管理データの記載がないから、補正後の請求項3は、補正前の請求項1、3を限定的に減縮したものではない。 (2)補正後の請求項3が、補正前の請求項2、および、その従属請求項(請求項3ないし5のうち請求項2を直接又は間接的に引用する部分)を限定的に減縮したものであるか否かについて検討する。 補正前の請求項2、および、その従属請求項は、「評価データ」が「前記工務店側サブステーションからの要請に応じて前記第1のサブステーションから前記工務店側サブステーションへ出力されること」を含むものであるが、補正後の請求項3はこの事項を含まない。 したがって、補正後の請求項3は、補正前の請求項2、および、その従属請求項の発明を特定するために必要な事項を省いたものとなっており、補正前の請求項2、および、その従属請求項を限定的に減縮したものではない。 (3)補正後の請求項3が、補正前の請求項4、5(上記(2)で既に検討した請求項2を直接又は間接的に引用する部分を除く)を限定的に減縮したものであるか否かについて検討する。 上述したように、補正前の(請求項1を引用する請求項3をさらに引用する)請求項4、補正前の(請求項1を引用する請求項3を引用する請求項4をさらに引用する)請求項5は、補正後に請求項1、請求項2として記載されている。 したがって、補正後の請求項3は、補正前の(請求項1を引用する請求項3をさらに引用する)請求項4、補正前の(請求項1を引用する請求項3を引用する請求項4をさらに引用する)請求項5を限定的に減縮したものではない。 また、補正後の請求項3は、補正前の(請求項1を引用する)請求項4、及び、補正前の(請求項1を引用する請求項4をさらに引用する)請求項5に、「前記ホストステーションは第2のサブステーションに対して前記形状データ等より選択された形状データに基づいて前記第2のサブステーション側の工作機械に対して建築構造部材の加工を実行させるようにしたこと」を新たに付加したものとなっており、補正前の請求項に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものではない。 したがって、補正後の請求項3は、補正前の(請求項1を引用する)請求項4、及び、補正前の(請求項1を引用する請求項4をさらに引用する)請求項5を限定的に減縮したものではない。 以上、(1)から(3)をまとめると、補正後の請求項3は、補正前の請求項1ないし5の何れをも限定的に減縮したものではない。 したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号ないし第4号の何れの事項をも目的とするものではなく、同項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 以上のように、平成21年12月11日付けの手続補正は却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成21年8月10日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりのものである。 「コンピュータネットワークによって建築構造の情報を供給する建築構造情報供給方法において、 工務店側サブステーションからホストステーションに対して建築物の構造体を形成するための複数種類の建築構造部材についての形状データ、相対位置データ及び荷重データ(以下形状データ等という)を出力し、前記ホストステーションにて入力された前記形状データ等と、CADプログラム内の補助データとに基づいて仮想的に3次元モデルを構築し、同モデルから選択された建築構造部材について平面上に描画された2次元線図を表示画面に表示させる一方、前記形状データ等より選択されたデータに基づいて建築構造部材の強度を算出して同表示画面に表示させ、 第1のサブステーションに対して前記算出された建築構造部材の強度データを同ホストステーションから出力し、同第1のサブステーション側で同強度データに基づいて建築構造の安全評価を実行し、実行された建築構造の安全評価の評価データは前記第1のサブステーションから前記ホストステーションに対して出力され、前記評価データは前記工務店側サブステーションからの要請に応じて前記ホストステーションから前記工務店側サブステーションへ出力されることを特徴とする建築構造情報供給方法。」 2.刊行物の記載事項 これに対し、原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願の日前に頒布された刊行物である特開2000-76323号公報(以下、「刊行物1」という)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「【発明の属する技術分野】本発明は建築物の構造設計に関し、特にCAD(computer aided design)装置で建築構造の設計をするとともにLAN(Local Area Network)等の通信網を使用してCAD装置のデータをCAM(computer aided manufacturing)装置に出力する建築構造部材の処理装置に関するものである。」 (2)「【発明が解決しようとする課題】 ・・・(中略)・・・ 本発明は上記課題を解決するためのものである。その目的は設計CAD装置において作成したCADデータを用いて建築物の構造設計から設計の再検討、更に建築構造部材の加工まで一元的に処理が可能な建築構造部材の処理装置を提供することにある。 【0004】 【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために、請求項1の発明では、建築物の構造体を形成する複数種類の建築構造部材についての少なくとも形状データ及び相対位置データを入力する入力手段と、同入力手段により入力された諸データとCADプログラム内の補助データとに基づいて構築される仮想3次元モデルから選択された建築構造部材について平面上に描画された2次元線図を作成する2次元線図作成手段と、同2次元線図作成手段により得られた2次元線図を表示画面に表示させる表示手段と、同2次元線図作成手段により得られた前記仮想3次元モデルを構築するCADデータを記憶する記憶手段と、同記憶手段から読み出されたCADデータに基づいて選択された建築構造部材の強度を算出する強度算出手段とを有する第1のステーションと、同第1のステーションと通信回線を介して接続され、前記記憶手段から読み出されたCADデータに基づいて各建築構造部材を加工する加工手段とを有する第2のステーションを有するようにしたことを要旨とする。」 (3)「【0011】 【発明の実施の形態】以下、本発明の建築構造部材の処理装置(以下、処理装置とする)を具体化した実施形態について図1?図7に基づいて説明する。 図1に示すように、処理装置はCPU(中央演算装置)11を有し、同CPU11にはROM(リードオンリーメモリ)12、RAM(ランダムアクセスメモリ)13、磁気ディスク装置14、入力装置15、マウス16、表示装置17及びプリンタ18が接続されている。CPU11とこれら周辺機器によって第1のステーションAが構成されている。また、CPU11と通信回線20を介して第2のステーションBとしてのCAM装置21が接続されている。 【0012】ROM12には処理装置全体の動作を制御するためのプログラム、データベースを整理統合して管理するデータベース管理プログラム、通信ネットワークを制御するネットワーク処理プログラム、複数のプログラムに共通して適用できる機能を管理するOA処理プログラム(例えば、日本語入力機能や印刷機能等)等が予め記憶されている。また、RAM13はCPU11の演算に必要な各種情報を一時的に記憶する書き込み及び書き替え可能な記憶部とされる。磁気ディスク装置14には建築構造部材の設計のためのCADプログラムと、設計された建築構造部材のデータに基づいて価格の見積もりをする見積プログラムと、建築構造部材の強度を算出するための強度算出プログラムが記憶されている。 また、磁気ディスク装置14にはCADプログラムで作成したCADデータが記憶されている。CPU11は見積プログラムと強度算出プログラムの実行時にCADデータを磁気ディスク装置14からRAM13に転送する。」 (4)「【0014】まず、図2に示す建築物の構造設計をCADプログラム上で行い、これをCADデータとして保存する工程Iについて説明する。CPU11は磁気ディスク装置14からCADプログラムを読み出しRAM13に転送する。入力装置15又はマウス16の操作によって表示装置17の表示画面上でRAM13内のプログラムを呼び出し、形状データ、相対位置データ、荷重データ、更に継ぎ手、仕口、接続金具用のボルト穴やスリット等の接続加工データ等を入力する。更に本実施の形態では、構造とは直接関係ないが後述する見積プログラムにおいて見積もり計算に使用するために屋根材、壁材、床材、階段や窓や扉等の内装の仕様データ(種類、施工面積、サイズ等)も入力する。更に、前もってCADプログラム内に用意された補助データ(建築構造部材の材質(樹種)、描画手法、色等)を選択してこれら各データによって仮想3次元モデルを構築できるCADデータを得る。CPU11はCADデータを一旦RAM13に記憶させた後、磁気ディスク装置14に記憶させる。」 (5)「【0017】次に図2に示す強度算出プログラムを実行してCADデータに基づいて強度分布図23を作成する工程IIIについて説明する。CPU11は磁気ディスク装置14から強度算出プログラムを読み出しRAM13に転送する。CPU11は磁気ディスク装置14からCADデータのうち、建築構造部材の形状データ、相対位置データ及び荷重データを読み出しRAM13に転送する。 CPU11は形状データ及び相対位置データに基づいて建築構造の仮想3次元モデルを構築する。本実施の形態ではこのように得られた仮想3次元モデルを水平に切断して得られた平断面図を2次元線図として表示装置17の表示画面に表示する。 建築構造として必須の建築構造部材の属性を確認した上で更に床と壁については荷重データを所望の値を入力する。もちろん、荷重データは初期設定値のままで変更させなくともよい。 次いで、入力装置15又はマウス16の操作によって強度計算を実行する。すなわち、強度計算に関与する柱25a?25m、梁26a?26m及びすじかい27a?27fについてそれぞれ応力値を算出し、図5に示すように表示装置17の表示画面に強度分布図23を表示させる。強度分布図23では応力値に応じた色で強度計算した各柱25a?25m、梁26a?26m及びすじかい27a?27fが表現される。」 以上の記載から、刊行物1には以下の発明(以下、「刊行物1発明」という)が記載されている。 「建築物の構造体を形成する複数種類の建築構造部材についての少なくとも形状データ、相対位置データ及び加重データを入力する入力手段と、同入力手段により入力された諸データとCADプログラム内の補助データとに基づいて構築される仮想3次元モデルから選択された建築構造部材について平面上に描画された2次元線図を作成する2次元線図作成手段と、同2次元線図作成手段により得られた2次元線図を表示画面に表示させる表示手段と、同2次元線図作成手段により得られた前記仮想3次元モデルを構築するCADデータを記憶する記憶手段と、同記憶手段から読み出されたCADデータに基づいて選択された建築構造部材の強度を算出する強度算出手段と、該強度を表示画面に表示させる表示手段と、を有する第1のステーションと、同第1のステーションと通信回線を介して接続され、前記記憶手段から読み出されたCADデータに基づいて各建築構造部材を加工する加工手段とを有する第2のステーションを有する建築構造部材の処理装置。」 3.対比 本願発明と刊行物1発明とを対比する。 (1)刊行物1発明の建築構造部材の処理装置は、通信回線を介してCADデータを第1のステーションから第2のステーションへ供給するものであり、該装置の動作方法は、「コンピュータネットワークによって建築構造の情報を供給する建築構造情報供給方法」といえるものである。 (2)刊行物1発明において、選択された建築構造部材の強度は、CADデータに基づいて算出されるものであり、該CADデータは形状データ等を含むものである。したがって、刊行物1発明の強度データは、「形状データ等より選択されたデータに基づいて」算出されたものといえる。 (3)以上をまとめると、本願発明と刊行物1発明の一致点及び相違点は次のとおりである。 [一致点] コンピュータネットワークによって建築構造の情報を供給する建築構造情報供給方法において、 建築物の構造体を形成するための複数種類の建築構造部材についての形状データ、相対位置データ及び荷重データ(以下形状データ等という)と、CADプログラム内の補助データとに基づいて仮想的に3次元モデルを構築し、同モデルから選択された建築構造部材について平面上に描画された2次元線図を表示画面に表示させる一方、前記形状データ等より選択されたデータに基づいて建築構造部材の強度を算出して同表示画面に表示させる建築構造情報供給方法。 [相違点1] 形状データ等は、本願発明においては、「工務店側サブステーションからホストステーションに対して出力し、前記ホストステーションにて入力された」ものであるのに対し、刊行物1発明においては、第1のステーションで入力されたものである点。 [相違点2] 本願発明の方法は、「第1のサブステーションに対して前記算出された建築構造部材の強度データを同ホストステーションから出力し、同第1のサブステーション側で同強度データに基づいて建築構造の安全評価を実行し、実行された建築構造の安全評価の評価データは前記第1のサブステーションから前記ホストステーションに対して出力され、前記評価データは前記工務店側サブステーションからの要請に応じて前記ホストステーションから前記工務店側サブステーションへ出力される」のに対し、刊行物1発明では、そのような安全評価に関する言及がない点。 4.当審の判断 上記各相違点についてそれぞれ検討する。 [相違点1]について ゼネコン・設計事務所・メーカなどの建設関連会社をコンピュータネットワークで結び、CADデータなどをやりとりすることは、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物2(高田慎也 他,建築の共同設計に必要なネットワーク上での情報の統合化手法に関する研究 : VRMLを用いた3D-CADデータベースの構築,日本建築学会学術講演梗概集 D-1,1998年7月30日,1998,p.979-980)にも記載されているように周知の技術であるから、刊行物1発明において、形状データ等を第1のステーションへ入力する構成を、工務店側サブステーションから出力されたデータを入力する構成とすることは当業者が容易に想到し得ることである。 [相違点2]について 建築物を設計し施工する際に、建築構造部材の強度計算や価格の見積もりが決定した後に、評価機関に安全評価を依頼することや、依頼した結果を受け取って要請により工務店などに報告することは通常、普通に行われていることであり、刊行物1発明を用いて建築物を構築する際には、当然行われるべきことである。そして、上述したように、ゼネコン・設計事務所・メーカなどを含む建設関連会社をコンピュータネットワークで統合してデータなどをやりとりすることは周知の技術であるから、刊行物1発明において、構築されているネットワークを安全評価を依頼する評価機関や形状データ等を作成する工務店にも拡張し、そのやりとりされるデータの具体的な流れを「第1のサブステーションに対して前記算出された建築構造部材の強度データを同ホストステーションから出力し、同第1のサブステーション側で同強度データに基づいて建築構造の安全評価を実行し、実行された建築構造の安全評価の評価データは前記第1のサブステーションから前記ホストステーションに対して出力され、前記評価データは前記工務店側サブステーションからの要請に応じて前記ホストステーションから前記工務店側サブステーションへ出力される」ようにすることは、通常行われる事務フローを単にネットワーク上で実現したものにすぎないのであって、当業者が容易に想到し得ることである。 第4.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-04-11 |
結審通知日 | 2011-04-13 |
審決日 | 2011-04-27 |
出願番号 | 特願2000-180690(P2000-180690) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
P 1 8・ 572- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 加舎 理紅子 |
特許庁審判長 |
板橋 通孝 |
特許庁審判官 |
千葉 輝久 溝本 安展 |
発明の名称 | 建築構造情報供給方法 |
代理人 | 柴田 淳一 |