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審決分類 |
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 C03B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C03B |
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管理番号 | 1238151 |
審判番号 | 不服2007-33465 |
総通号数 | 139 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-07-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-12-12 |
確定日 | 2011-06-06 |
事件の表示 | 特願2002-313312「光学的特性のガラスを製造する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 6月24日出願公開,特開2003-176138〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は,2002年10月28日(パリ条約による優先権主張2001年10月30日,欧州特許庁,2001年11月2日,米国,2002年7月16日,欧州特許庁)の出願であって,平成17年10月24日付けで拒絶理由通知書が起案され,平成18年4月28日付けで意見書及び明細書の記載に係る手続補正書が提出され,同年6月16日付けで拒絶理由通知書が起案され,同年12月22日付けで意見書及び明細書の記載に係る手続補正書が提出され,平成19年9月27日付けで平成18年12月22日付けの手続補正が却下されるとともに,同日付けで拒絶査定が起案され,同年12月12日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,同日付けで明細書の記載に係る手続補正書が提出されたものである。その後,平成22年7月16日付けで特許法第164条第3項に基づく報告書を引用した審尋が起案され,同年10月20日付けで回答書が提出されている。 2.平成19年12月12日付けの手続補正の補正却下の決定 2-1.補正却下の決定の結論 平成19年12月12日付けの手続補正(以下,必要に応じて「本件補正」という。)を却下する。 2-2.理由 (1)平成19年12月12日付けの手続補正の内容 平成19年12月12日付けの手続補正は,平成18年4月28日付けで補正された特許請求の範囲の記載である, 「【請求項1】 熱エネルギー供給手段からのプラズマまたは火炎が予備焼結組成物の微粒子と共に第一の供給ダクトにより供給される,金属酸化物または半金属酸化物を水中に分散させ,噴霧乾燥し,かつ得られた粒体を150?1100℃の温度で1?8時間,加熱することにより製造される,金属酸化物または半金属酸化物の粒体からなる予備焼結組成物を溶融することにより光学的特性のガラスを製造する方法。 【請求項2】 さらに,第二の供給ダクトが,キャリアガスと混合されたフッ素もしくは塩素の化合物と共にプラズマまたは火炎を供給し,予備焼結組成物の微粒子中に含有されているアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の元素がフッ素もしくは塩素の化合物中のフッ素もしくは塩素と反応するように,第一および第二のダクトの供給条件を調整することを特徴とする,請求項1記載の方法。 【請求項3】 長手方向に延びるプレフォームが,プレフォームの長手方向に対して実質的に平行に前後に移動する熱エネルギー供給手段に由来するプラズマまたは火炎の前で,その軸を中心として移動するように配置されており,かつ第一の供給ダクトがプラズマまたは火炎を予備焼結組成物の微粒子と共に供給する,金属酸化物または半金属酸化物を水中に分散させ,噴霧乾燥し,かつ得られた粒体を150?1100℃の温度で1?8時間,加熱することにより製造される,金属酸化物または半金属酸化物の粒体からなる予備焼結組成物を光学装置上へ堆積させる方法。 【請求項4】 さらに,第二の供給ダクトが,キャリアガスと混合されたフッ素もしくは塩素の化合物と共にプラズマまたは火炎を供給し,その際,予備焼結組成物の微粒子中に含有されているアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の元素がフッ素もしくは塩素の化合物のフッ素または塩素と反応するように,第一および第二のダクトの供給条件を調整することを特徴とする,請求項3記載の方法。」を, 補正後の特許請求の範囲の記載である 「【請求項1】 熱エネルギー供給手段からのプラズマまたは火炎が予備焼結組成物の微粒子と共に第一の供給ダクトにより供給され,さらに,第二の供給ダクトが,キャリアガスと混合されたフッ素もしくは塩素の化合物と共にプラズマまたは火炎を供給し,予備焼結組成物の微粒子中に含有されているアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の元素がフッ素もしくは塩素の化合物中のフッ素もしくは塩素と反応するように,第一および第二のダクトの供給条件を調整する,熱分解法により製造され, - タップ密度150g/l?800g/l, - 粒体の粒径10?800μm, - およびBET表面積10?500m^(2)/g を有する粒体に圧縮された二酸化ケイ素であるシリカ粒体からなる予備焼結組成物を溶融することにより光学的特性のガラスを製造する方法。 【請求項2】 長手方向に延びるプレフォームが,プレフォームの長手方向に対して実質的に平行に前後に移動する熱エネルギー供給手段に由来するプラズマまたは火炎の前で,その軸を中心として移動するように配置されており,かつ第一の供給ダクトがプラズマまたは火炎を予備焼結組成物の微粒子と共に供給し,さらに,第二の供給ダクトが,キャリアガスと混合されたフッ素もしくは塩素の化合物と共にプラズマまたは火炎を供給し,その際,予備焼結組成物の微粒子中に含有されているアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の元素がフッ素もしくは塩素の化合物のフッ素または塩素と反応するように,第一および第二のダクトの供給条件を調整する,熱分解法により製造され, - タップ密度150g/l?800g/l, - 粒体の粒径10?800μm, - およびBET表面積10?500m^(2)/g を有する粒体に圧縮された二酸化ケイ素であるシリカ粒体からなる予備焼結組成物を光学装置上へ堆積させる方法。」に補正するものである。 (2)補正の適法性について 本件補正は,請求項1を削除し,補正前の請求項2(請求項1の従属項)を補正後の請求項1とするとともに,「金属酸化物または半金属酸化物を水中に分散させ,噴霧乾燥し,かつ得られた粒体を150?1100℃の温度で1?8時間,加熱することにより製造される,金属酸化物または半金属酸化物の粒体からなる予備焼結組成物を溶融する」を,「熱分解法により製造され, - タップ密度150g/l?800g/l, - 粒体の粒径10?800μm, - およびBET表面積10?500m^(2)/g を有する粒体に圧縮された二酸化ケイ素であるシリカ粒体からなる予備焼結組成物を溶融する」に変更する補正事項を含むものである。 上記補正事項について,請求人は,平成22年10月20日付け回答書において,「出願人は,平成19年12月12日付けで提出いたしました審判請求書の請求の理由にも記載いたしましたように,当該補正は,平成18年4月28日付け手続補正書による補正における『(金属酸化物または半金属酸化物を)水中に分散させ,噴霧乾燥し,かつ得られた粒体を150?1100℃の温度で1?8時間,加熱することにより製造される』という構成を,その下位概念である熱分解法による製造に限定したものであり,発明特定事項は何ら変更していないものと思量いたします。」と主張するが,上記補正事項により,予備焼結組成物の製造方法,製造条件を限定する特定事項が削除されており,上記補正事項は補正前の請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものとはいえない。したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものではない。 そして,上記補正事項が,上記特許法第17条の2第4項第3,4号に規定する「誤記の訂正」及び「明りょうでない記載の釈明」を目的とするものでないことも明らかである。 したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明 平成19年12月12日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の特許請求の範囲に記載された発明は,平成18年4月28日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4記載された事項により特定されるとおりのものであり,その請求項2に記載された発明(以下「本願発明」という。)は,引用する請求項1の記載と合わせ,以下のとおりのものと認める。 「熱エネルギー供給手段からのプラズマまたは火炎が予備焼結組成物の微粒子と共に第一の供給ダクトにより供給される,金属酸化物または半金属酸化物を水中に分散させ,噴霧乾燥し,かつ得られた粒体を150?1100℃の温度で1?8時間,加熱することにより製造される,金属酸化物または半金属酸化物の粒体からなる予備焼結組成物を溶融することにより光学的特性のガラスを製造する方法であって,さらに,第二の供給ダクトが,キャリアガスと混合されたフッ素もしくは塩素の化合物と共にプラズマまたは火炎を供給し,予備焼結組成物の微粒子中に含有されているアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の元素がフッ素もしくは塩素の化合物中のフッ素もしくは塩素と反応するように,第一および第二のダクトの供給条件を調整することを特徴とする方法。」 4.原査定の拒絶理由 原査定の拒絶の理由は,平成18年6月16日付け拒絶理由通知書に記載した理由であり,該理由は,請求項2?4に対して引用文献1?4を引用した特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 5.本願出願前に頒布された刊行物の記載事項 刊行物1:特開平10-273330号公報(平成18年6月16日付け拒絶理由通知書における引用文献3) (1-ア)「【請求項3】 実質的に円柱状で長手方向(L)に延びたプリフォーム(1)を,プリフォーム(1)の長手方向(L)とほぼ平行に往復運動する熱エネルギー付与手段(3)から出るプラズマまたは火炎(4)の前で自転(7)させ,第1供給管(9)によって天然または合成シリカの粒子(11)をプラズマまたは火炎に供給する,天然または合成シリカを光ファイバーのプリフォーム上に析出させる方法であって,第2供給管(13)によって,キャリヤーガス(15)に混合されたフッ素または塩素の化合物をプラズマまたは火炎に供給し,これら二本の供給管(9,13)の供給条件を,天然または合成シリカの粒子(11)に含まれるアルカリまたはアルカリ土類元素がフッ素または塩素の化合物のフッ素または塩素と反応するように調節することを特徴とする方法。」(特許請求の範囲) (1-イ)「天然または合成シリカの析出物中のアルカリを除去すれば,特にシリカが天然物の場合,原価が約5から10倍も高い非常に高純度の合成シリカに比べて,光ファイバーのプリフォームを非常に経済的な出発材料で肉盛り(recharge)することができる。化学的な処理に要する上乗せコストは割合に低い。フッ素または塩素化合物,好ましくはフッ素化合物で処理した天然または合成シリカを肉盛りしたプリフォームから得られるファイバーの光伝達特性は,非常に高純度の合成シリカの肉盛りによって得られるファイバーに匹敵し,天然または合成シリカを肉盛りしてもフッ素または塩素化合物で処理していないプリフォームから得られるファイバーに比して改善されている。」(段落【0012】) 刊行物2:特開2001-72427号公報(平成18年6月16日付け拒絶理由通知書における引用文献2) (2-ア)「【請求項1】 成型法又は圧縮法,場合により引き続く精製および場合により引き続く焼結法を用いて製造された焼結材料,殊に焼結ガラスにおいて, a)その製造のために,熱分解法で製造され,DE19601415A1による後続の圧縮工程を用いて圧縮して顆粒にされた,150g/l?800g/lのタップ密度,10?800μmの顆粒粒径および10?500m^(2)/gのBET-表面積を有する二酸化珪素が用いられているか,又は b)その製造のために,次の物理-化学的特性: 平均粒径:25?120μm,BET-表面積:40?400m^(2)/g,細孔容積:0.5?2.5ml/g,細孔分布:<5nmの孔なし,メソ孔およびマクロ孔のみ,pH-値:3.6?8.5,タップ密度:220?700g/l を有する熱分解法で製造された二酸化珪素をベースとするDE19601415A1による顆粒が用いられていることを特徴とする,焼結材料。」(特許請求の範囲) (2-イ)「【請求項10】 熱分解法で製造された二酸化珪素を公知方法で圧縮させ,及び/又は造粒させ,その後, a)・・・・・・, b)請求項1に記載の顆粒を,熱的又は他の高エネルギー的方法により成形体および表面上に施与し,この際,固い成形体又は固い被覆が生じ,得られる焼結体又は焼結表面は完全に緻密に焼結されているか又はなお部分的に多孔性である,・・・ c)・・・・・・請求項委に記載の焼結材料,殊に焼結ガラスの製法。」(特許請求の範囲) (2-ウ)「本発明の目的物は前記の焼結材料であり,これは,前記の顆粒を,次のタイプの1方法を用いて焼結材料に加工することにより得られる特徴を有する: a)・・・・・・ b)・・・・・・ c)相応する顆粒を成形体および表面上に,熱的又は他の高エネルギー法,例えばフレーム溶射法,プラズマコーテイング,レーザー焼結又はマイクロ波焼結により施与し,この際に,固い成形体又は固い被覆を生じさせ,得られる焼結体又は焼結表面は完全に緻密に焼結されているか又はなお部分的に多孔性である。」(段落【0010】) (2-エ)「本発明の課題は,ガラス成形体,例えば光ファイバー予備成形体(いわゆるオーバークラッデイング管又はコアロッド),光学レンズ,光学回折格子(optische Gitter),ガラスルツボ(いわゆる坩堝),電気絶縁体,断熱材,磁気絶縁体,プリズム,化学工業又は薬剤工業用の容器又は装置,インゴット,電気工業用の成形体,更なる加工用の原料としてのガラス棒,このプロセスの後の形状正確性(Formtreue)への高い要求を有する成形体の製造のための,焼結材料,殊に焼結ガラス又はガラスの使用である。」(段落【0021】) 刊行物3:特開平8-253309号公報(平成18年6月16日付け拒絶理由通知書における引用文献1) (3-ア)「【請求項1】 高熱分解法で製造された二酸化珪素をベースとし,次の物理化学的特性: 平均粒径: 10?120μm BET表面積: 40?400m^(2)/g 細孔容積: 0.5?2.5ml/g 細孔寸法分布: 全細孔容積の5%より少ない分は<5nmの直径の細孔よりなり,残りはメソ-又はマクロ細孔 pH値: 3.6?8.5 タッピング密度: 220?700g/l を有する顆粒。 【請求項2】 高熱分解法で製造された二酸化珪素を水中に分散させ,スプレー乾燥させ,得られた顆粒を150?1100℃の温度で1?8時間加熱することを特徴とする,請求項1に記載の顆粒の製法。」(特許請求の範囲) 6.対比・判断 刊行物1には,記載事項(1-ア)から,「プリフォーム(1)を,熱エネルギー付与手段(3)から出るプラズマまたは火炎(4)の前で自転(7)させ,第1供給管(9)によって合成シリカの粒子(11)をプラズマまたは火炎に供給する,合成シリカを光ファイバーのプリフォーム上に析出させる方法であって,第2供給管(13)によって,キャリヤーガス(15)に混合されたフッ素または塩素の化合物をプラズマまたは火炎に供給し,これら二本の供給管(9,13)の供給条件を,天然または合成シリカの粒子(11)に含まれるアルカリまたはアルカリ土類元素がフッ素または塩素の化合物のフッ素または塩素と反応するように調節する方法。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 本願発明と引用発明とを対比すると,引用発明の「第1供給管(9)」,「第2供給管(13)」,「キャリヤーガス(15)」,「アルカリまたはアルカリ土類元素」は,それぞれ,本願発明の「第一の供給ダクト」,「第二の供給ダクト」,「キャリアガス」,「アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の元素」に相当する。 そして,本願発明の「金属酸化物または半金属酸化物の粒体からなる予備焼結組成物」は,本願明細書の段落【0027】に「本発明の有利な対象では,金属酸化物または半金属酸化物はシリカ粒体であってもよい,つまり:a)熱分解法により製造され,・・・粒体に圧縮された二酸化ケイ素,またはb)熱分解法により製造され,・・・粒体に圧縮された二酸化ケイ素。」と記載されていることから,熱分解法によって合成されたシリカ粒体すなわち合成シリカの粒子を含むものであり,引用発明の「合成シリカの粒子(11)」と,本願発明の「金属酸化物または半金属酸化物の粒体からなる予備焼結組成物」とは,「合成シリカの粒子」である点で共通するといえる。 また,引用発明の「熱エネルギー付与手段(3)から出るプラズマまたは火炎(4)」は,本願発明の「熱エネルギー供給手段からのプラズマまたは火炎」に相当し,引用発明の「合成シリカの粒子(11)をプラズマまたは火炎に供給する」ことは,本願発明の「プラズマまたは火炎が予備焼結組成物の微粒子と共に第一の供給ダクトにより供給される」ことに相当するといえる。 そして,引用発明の「合成シリカを光ファイバーのプリフォーム上に析出させる方法」は,合成シリカの粒子をプラズマまたは火炎に供給した上でプリフォーム上に析出させていること,刊行物1の記載事項(1-イ)に,「光ファイバーのプリフォームを非常に経済的な出発材料で肉盛り(recharge)することができる」と記載されていることからみて,合成シリカの粒子をプラズマ又は火炎中で溶融することにより光ファイバプリフォームの表面上にシリカガラスを形成する方法であるとみることができるから,本願発明の「予備焼結組成物を溶融することにより光学的特性のガラスを製造する方法」に相当するといえる。 そうすると,本願発明と引用発明とは, 「熱エネルギー供給手段からのプラズマまたは火炎が予備焼結組成物の微粒子と共に第一の供給ダクトにより供給される,合成シリカの粒子を溶融することにより光学的特性のガラスを製造する方法であって,さらに,第二の供給ダクトが,キャリアガスと混合されたフッ素もしくは塩素の化合物と共にプラズマまたは火炎を供給し,予備焼結組成物の微粒子中に含有されているアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の元素がフッ素もしくは塩素の化合物中のフッ素もしくは塩素と反応するように,第一および第二のダクトの供給条件を調整する方法。」 である点で一致し,以下の点で相違している。 相違点:第一の供給ダクトにより供給される材料として,本願発明は,「金属酸化物または半金属酸化物を水中に分散させ,噴霧乾燥し,かつ得られた粒体を150?1100℃の温度で1?8時間,加熱することにより製造される,金属酸化物または半金属酸化物の粒体からなる予備焼結組成物」を用いるのに対して,引用発明では,「合成シリカ」である点 上記相違点について,以下,検討する。 刊行物2には,記載事項(2-イ)に,「熱分解法で製造された二酸化珪素を公知方法で圧縮させ,及び/又は造粒させ,その後,・・・・・・,請求項1に記載の顆粒を,熱的又は他の高エネルギー的方法により成形体および表面上に施与し,この際,固い成形体又は固い被覆が生じ,得られる焼結体又は焼結表面は完全に緻密に焼結されているか又はなお部分的に多孔性である,・・・・・・請求項委に記載の焼結材料,殊に焼結ガラスの製法」が記載されている(「請求項委」との記載は,それ以前に「請求項1に記載の顆粒を」との記載があることから,「請求項1」の誤記と認められる。)。そして,上記「請求項1に記載の顆粒」とは,記載事項(2-ア)に,「a)・・・熱分解法で製造され,DE19601415A1による後続の圧縮工程を用いて圧縮して顆粒にされた,150g/l?800g/lのタップ密度,10?800μmの顆粒粒径および10?500m^(2)/gのBET-表面積を有する二酸化珪素・・・,又は b)その製造のために,次の物理-化学的特性: 平均粒径:25?120μm,BET-表面積:40?400m^(2)/g,細孔容積:0.5?2.5ml/g,細孔分布:<5nmの孔なし,メソ孔およびマクロ孔のみ,pH-値:3.6?8.5,タップ密度:220?700g/l を有する熱分解法で製造された二酸化珪素をベースとするDE19601415A1による顆粒」と記載された顆粒である。当該顆粒は,熱分解法を用いて製造された二酸化ケイ素の顆粒であることから,「合成シリカ」の一種であるということができる。 また,刊行物2に記載された上記焼結ガラスの製法は,記載事項(2-イ)によれば,「顆粒を,熱的又は他の高エネルギー的方法により成形体および表面上に施与し,この際,固い成形体又は固い被覆が生じ,得られる焼結体又は焼結表面は完全に緻密に焼結されているか又はなお部分的に多孔性である」ものであり,さらに,刊行物2の記載事項(2-ウ)には,「顆粒を成形体および表面上に,熱的又は他の高エネルギー法,例えばフレーム溶射法,プラズマコーテイング・・・により施与し」と記載され,同(2-エ)には,「本発明の課題は,ガラス成形体,例えば光ファイバー予備成形体(いわゆるオーバークラッデイング管又はコアロッド)・・・の製造のための,焼結材料,殊に焼結ガラス又はガラスの使用である。」と記載されており,フレーム(火炎)やプラズマの使用,及び,光ファイバー予備成形体の製造についても言及されていることから,引用発明の「合成シリカの粒子(11)をプラズマまたは火炎に供給する,・・・合成シリカを光ファイバーのプリフォーム上に析出させる方法」と類似の方法とみることができる。 さらに,刊行物2に記載された顆粒の製法について検討するに,DE19601415A1の対応日本出願の公開公報である刊行物3をみると,記載事項(3-ア)に,「【請求項1】 高熱分解法で製造された二酸化珪素をベースとし,次の物理化学的特性: 平均粒径: 10?120μm BET表面積: 40?400m^(2)/g 細孔容積: 0.5?2.5ml/g 細孔寸法分布: 全細孔容積の5%より少ない分は<5nmの直径の細孔よりなり,残りはメソ-又はマクロ細孔 pH値: 3.6?8.5 タッピング密度: 220?700g/l を有する顆粒。 【請求項2】 高熱分解法で製造された二酸化珪素を水中に分散させ,スプレー乾燥させ,得られた顆粒を150?1100℃の温度で1?8時間加熱することを特徴とする,請求項1に記載の顆粒の製法。」と記載されており,上記刊行物2に記載されたb)の顆粒の特性を包含する(平均粒径の下限値が刊行物2の方がわずかに大きい以外,全て同じ)特性を有する顆粒は,「高熱分解法で製造された二酸化珪素を水中に分散させ,スプレー乾燥させ,得られた顆粒を150?1100℃の温度で1?8時間加熱する」ことにより製造されることが記載されており,この製法は,上記相違点に係る本願発明の予備焼結組成物の製法と一致するものである。 したがって,引用発明において刊行物2に記載された顆粒を用い,刊行物2に記載された特定の特性を有する顆粒を刊行物3に記載された製造方法により特定することは,当業者が容易になし得ることである。 したがって,本願発明は,刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。 なお,請求人は,平成22年10月20日付け回答書において,「たとえば『水中に分散させ,噴霧乾燥し,かつ得られた粒体を150?1100℃の温度で1?8時間,加熱する熱分解法により製造』という記載に補正する用意もございます」と述べているので,一応検討する。 当該補正を行った場合には,予備焼結組成物について, 「熱分解法により製造され, - タップ密度150g/l?800g/l, - 粒体の粒径10?800μm, - およびBET表面積10?500m^(2)/g を有する粒体に圧縮された二酸化ケイ素であるシリカ粒体からなる」 というシリカ粒体の特性に関する特定事項を有する平成19年12月12日付け手続補正書の請求項1に記載された発明について,さらに上記補正案のシリカ粒体の製法に関する特定事項が加わることになる。しかしながら,上記本願発明と引用発明との対比・判断において述べたとおり,これらの特定事項はいずれも刊行物2,3に記載されている事項であり,上記補正を行ったとしても,依然として本願発明は刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。 したがって,さらに補正の機会を設ける必要はない。 7.むすび 以上のとおりであるから,本願の請求項2に係る発明は,本願の出願日前に頒布された刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。 したがって,その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-12-28 |
結審通知日 | 2011-01-07 |
審決日 | 2011-01-19 |
出願番号 | 特願2002-313312(P2002-313312) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C03B)
P 1 8・ 572- Z (C03B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小柳 健悟、松浦 新司、淺見 節子 |
特許庁審判長 |
木村 孔一 |
特許庁審判官 |
深草 祐一 中澤 登 |
発明の名称 | 光学的特性のガラスを製造する方法 |
復代理人 | 住吉 秀一 |
代理人 | アインゼル・フェリックス=ラインハルト |
代理人 | 星 公弘 |
代理人 | 久野 琢也 |
代理人 | 二宮 浩康 |
代理人 | 山崎 利臣 |
代理人 | 杉本 博司 |
復代理人 | 篠 良一 |
復代理人 | 宮城 康史 |
代理人 | 矢野 敏雄 |