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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B21D
管理番号 1238167
審判番号 不服2009-24669  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-12-14 
確定日 2011-06-06 
事件の表示 特願2006- 70625「サーボモーターを用いるクリンチタイプのヘミング装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 9月28日出願公開、特開2006-255788〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成18年3月15日(パリ条約による優先権主張2005年3月15日、大韓民国)の出願であって、平成21年8月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月14日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで明細書を補正対象とする手続補正(以下、同手続補正を「本件補正」という。)がなされたものである。

第2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲は、
「それぞれの駆動手段を装着したヘミングリンクユニットを下部金型に固定し、前記それぞれの駆動手段を作動させることで、外部パネルの外周縁フランジを折り曲げる方式のヘミング装置において、
前記駆動手段は、サーボモーター4と;前記サーボモーターの回転速度及び回転量を制御する電気的コントローラーと;前記サーボモーターの回転軸に連結され、モーターの回転力を移送運動に変換させるボールスクリュー6と;前記ボールスクリューの両端を支持するスクリューハウジング13と;前記スクリューハウジング13を固定し、ブラケット10とヒンジP1で結合されてなるベースプレート9と;
前記ボールスクリューのスクリューナット7に直接ヒンジ結合されてヘミングリンクユニット100を動作させ、かつスクリューナットの直線移動によって、ヘミングリンクユニット上に設けられたヒンジ点を中心として回動し、これによりその回転量によって、メインヘミングツールと予備ヘミングツールが進入して予備ヘミング作業を行った後、後退して下方に回動したメインヘミングツールが工作物を加圧するように設けられた1つの駆動リンク11
とからなり、
前記ベースプレート9には、LM-ガイド8がボールスクリュー6と同一方向に取り付けられ、
前記スクリューナット7の一側面にはガイドブロック12が固定されことにより、前記LM-ガイド6に沿って前記スクリューナット7が案内されるように構成されることを特徴とする、サーボモーターを利用したクリンチタイプのヘミング装置。」
と、補正された。

(2)補正前の本願発明
なお、本件補正前の特許請求の範囲の記載は、以下のとおりであった。
「それぞれの駆動手段を装着したヘミングリンクユニットを下部金型に固定し、前記それぞれの駆動手段を作動させることで、外部パネルの外周縁フランジを折り曲げる方式のヘミング装置において、
前記駆動手段は、サーボモーター4と;前記サーボモーターの回転速度及び回転量を制御する電気的コントローラーと;前記サーボモーターの回転軸に連結され、モーターの回転力を移送運動に変換させるボールスクリュー6と;前記ボールスクリューの両端を支持するスクリューハウジング13と;前記スクリューハウジング13を固定し、ブラケット10とヒンジP1で結合されてなるベースプレート9と;前記ボールスクリューのスクリューナット7にヒンジ結合されてヘミングリンクユニット100を動作させる駆動リンク11とからなり、
前記ベースプレート9には、LM-ガイド8がボールスクリュー6と同一方向に取り付けられ、
前記スクリューナット7の一側面にはガイドブロック12が固定されことにより、前記LM-ガイド6に沿って前記スクリューナット7が案内されるように構成されることを特徴とする、サーボモーターを利用したクリンチタイプのヘミング装置。」

(3)補正事項
上記補正は、以下の事項からなる。

ア.補正事項1
駆動リンク11について、請求項1に記載された発明を特定する事項である「前記ボールスクリューのスクリューナット7にヒンジ結合されて」を、「前記ボールスクリューのスクリューナット7に直接ヒンジ結合されて」と補正する。

イ.補正事項2
同じく、駆動リンク11について、請求項1に記載された発明を特定する事項である「ヘミングリンクユニット100を動作させる駆動リンク11」を、「ヘミングリンクユニット100を動作させ、かつスクリューナットの直線移動によって、ヘミングリンクユニット上に設けられたヒンジ点を中心として回動し、これによりその回転量によって、メインヘミングツールと予備ヘミングツールが進入して予備ヘミング作業を行った後、後退して下方に回動したメインヘミングツールが工作物を加圧するように設けられた1つの駆動リンク11」と補正する。

(4)補正の目的
補正事項1は1つの駆動リンク11がスクリューナット7に「直接」ヒンジ結合されることを限定するものであり、補正事項2は駆動リンク11が「かつスクリューナットの直線移動によって、ヘミングリンクユニット上に設けられたヒンジ点を中心として回動し、これによりその回転量によって、メインヘミングツールと予備ヘミングツールが進入して予備ヘミング作業を行った後、後退して下方に回動したメインヘミングツールが工作物を加圧するように設けられた」ことを限定するものであって、これらは、平成18年法律第55号による改正前の特許法(以下、「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(5)請求項1に係る発明について
そこで、本件補正後の前記請求項に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(5-1)引用刊行物
○引用刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された
特開2003-311337号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、「曲げ加工装置」に関して、図面とともに、以下のとおり記載されている。

ア.【特許請求の範囲】
「【請求項1】 ワークの縁部に曲げ刃を押し付けて該縁部を曲げ加工するための曲げ加工装置であって、電動モータを駆動源とする電動駆動装置を用いて前記曲げ刃を前記ワークの縁部に押し付ける構成とした曲げ加工装置。
【請求項2】 請求項1記載の曲げ加工装置であって、電動モータの回転数と出力トルクを制御するための制御装置を備え、前記回転数に基づいて曲げ刃の位置を制御するとともに、前記出力トルクに基づいて曲げ刃の前記ワークの縁部に対する押し付け力を制御する構成とした曲げ加工装置。
【請求項3】 請求項1または2記載の曲げ加工装置であって、曲げ刃は平行リンク機構を介してワークの縁部に対して進退可能に設けられ、前記平行リンク機構を電動駆動装置により作動させて前記曲げ刃を前記ワークの縁部に押し付ける構成とした曲げ加工装置。
【請求項4】 請求項1?3のいずれか1項に記載した曲げ加工装置であって、ワークの縁部を載置する下型を備え、該ワークの縁部に曲げ刃を押し付けた時に前記下型に付加される曲げ方向の押圧力を受けるための押圧力受け装置を備えた曲げ加工装置。
【請求項5】 請求項4記載の曲げ加工装置であって、押圧力受け装置は、曲げ刃の曲げ方向の移動に連動して下型に対して反曲げ方向に押し付けられる受けアームを備えた曲げ加工装置。
【請求項6】 請求項1に記載した曲げ加工装置であって、曲げ刃は、ワークの縁部を予備曲げする予備曲げ刃と、該予備曲げよりも大きな角度で本曲げする本曲げ刃を備え、該予備曲げ刃と該本曲げ刃は相互に移動可能に設けられ、予備曲げ工程または本曲げ工程に合わせて前記予備曲げ刃および/または前記本曲げ刃を相対移動させて前記予備曲げ刃または前記本曲げ刃を選択して用いる構成とした曲げ加工装置。
【請求項7】 請求項6記載の曲げ加工装置であって、電動モータの回転数と出力トルクを制御するための制御装置を備え、予備曲げ工程では前記回転数に基づいて予備曲げ刃のワークの縁部に対する位置を制御し、本曲げ工程では前記回転数および前記出力トルクに基づいて本曲げ刃の位置と出力トルクに基づいて本曲げ刃のワークの縁部に対する位置と押し付け力を制御する構成とした曲げ加工装置。」

イ.段落【0001】
「【発明の属する技術分野】本発明は、例えば自動車用のドアパネルやフードパネル等のパネル部品(以下、単にワークという)の縁部をヘミング加工する際に好適な曲げ加工装置に関する。」

ウ.段落【0003】
「【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の曲げ加工装置にもさらに改良すべき点があった。すなわち、上記従来の曲げ加工装置では、ワークの縁部に曲げ刃を押し付けて該縁部を折り曲げ加工するための押圧力を油圧シリンダを加圧源として用いる構成であったので、その配管スペースを確保する必要等から当該曲げ加工装置の設置スペースが嵩むばかりでなく、油漏れ等のトラブルが発生しやすく、従ってこのトラブルを回避するためのメンテナンス等に手間が掛かる問題があった。さらに、実際にヘミング加工を行っていない段階においても油圧シリンダに作動油を給送する必要上、油圧源としての作動油給送装置(油圧ポンプ)の消費電力が嵩み、またその騒音による作業環境の劣化を生ずる問題があった。本発明は、このような従来の曲げ加工装置の問題を解消するためになされたもので、曲げ刃を押し付けるための駆動源として従来のような油圧シリンダを用いない曲げ加工装置を提供することを目的とする。」

エ.段落【0004】
「【課題を解決するための手段】このため、本願発明は、前記各請求項に記載した構成の曲げ加工装置とした。請求項1記載の曲げ加工装置によれば、曲げ刃がワークの縁部に押し付けられてこの縁部が例えば折り返し状に折り曲げられる。曲げ刃の押し付け力は従来の油圧シリンダではなく電動モータを駆動源とする電動駆動装置によりなされるので、油圧シリンダを用いた場合の従来の種々問題を解消することができる。すなわち、従来の油圧配管が不要となるので、当該曲げ加工装置の設置スペースを小さくすることができる。また、油圧シリンダを用いた場合のような油漏れのトラブルが発生しないので、そのメンテナンスの手間を少なくすることができる。さらに、作動油給送装置(油圧ポンプ)を必要としないので、消費電力を節約できるばかりでなく、騒音を低減して作業環境を改善することができる。請求項2記載の曲げ加工装置によれば、電動モータの回転数に基づいて曲げ刃の位置を制御するとともに、電動モータの出力トルクに基づいて曲げ刃の押し付け力が制御されるので、ワークの位置ズレあるいは位置決め誤差等を吸収してより確実な曲げ加工を行うことができる。また、請求項3記載の曲げ加工装置によれば、上記作用効果に加えて、平行リンク機構を介して電動駆動装置の出力を増幅することができるので、曲げ刃の大きな押し付け力を得ることができる。」

オ.段落【0006】?【0007】
「【発明の実施形態】次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1には、本実施形態の曲げ加工装置Hの全体が示されている。本実施形態では、曲げ加工装置Hの一例として、いわゆるヘミング加工装置を例示する。従って、以下ヘミング加工を単に曲げ加工とも言う。これに伴って、本実施形態ではワークWの一例として、インナパネルW1とアウタパネルW2を重ね合わせるように接合してなるドアパネルを例示する。このワークWのアウタパネルW2の縁部W2aを以下説明する曲げ加工装置Hにより折り返し状に曲げ加工してインナパネルW1の縁部W1aを挟み込むことによりインナパネルW1とアウタパネルW2が一体化される。
さて、図1に示すようにこの曲げ加工装置Hにおけるベース1の上面には、複数本(例えば4本)の支脚2a?2aによって支えられる下型2が固定されている。この下型2は、例えば鋳物製であって、平面視で中央部分が開放された略矩形の枠状に形成されている。下型2の中央部(空間部)には、ベース1上に縦向きに設置されたエアシリンダ4によって昇降動作されるリフター3が配置されている。このリフター3はその上面にワークWを載置して昇降可能となっている。このリフター3が下型2の上面よりも高い位置に上昇した状態で、このリフター3に、後述するロボットハンドRの作動によってワークWが移載される。ワークWが移載された後、リフター3が下型2の上面よりも低い位置まで下降すると、その下降途中の段階でワークWが下型2上に移載される。逆に、下型2上にワークWが存在する状態で、リフター3が上昇すると、このワークWがリフター3に移載され、これによりワークWが下型2から取り出される。ロボットハンドRの先端には、ワーク搬送治具5が取り付けられている。このワーク搬送治具5は、以下説明するようにワークWをクランプする機能とワークWを下型2に押し付ける機能を有している。このワーク搬送治具5のフレーム5aの下面には、ワークWの周囲適数ヶ所(例えば4箇所)に対応する位置に押さえブロック5b?5bとクランプハンガーが配置されている。図ではクランプハンガーは省略されている。このクランプハンガーは、シリンダにより進退可能に設けられている。このクランプハンガーをワークWの下側に進入させて引き上げることにより、ワークWはフレーム5aの下面側に沿って吊り下げ状態で保持される。クランプハンガーを退避させると、ワークWはアンクランプされる。各押さえブロック5b?5bは、ロボットハンドRの動作によりワークWの上面に当接され、この当接状態でロボットハンドRの動作力によりワークWに押し付けられ、これによりワークWが下型2上に押し付けられるようにして固定される。また、このフレーム5aの下面には、当該ワーク搬送治具5に対してワークWを位置決めするための位置決めピン6が設けられている。」

カ.段落【0009】?【0012】
「このようなヘミング加工を行うための加工ユニット10?10が、下型2の周囲における必要箇所、本実施の形態では、後部および左右の3箇所に配置されている。各加工ユニット10は、同様の構成を備えている。図1では、紙面向かって左側1箇所の加工ユニット10のみが示されている。以下、図4?図8に基づいてこの加工ユニット10の構成および加工動作を説明する。加工ユニット10は、大別して、本曲げ刃20Aと予備曲げ刃20BをワークWに対して押圧するための駆動源としての電動駆動装置41と、この電動駆動装置41により作動するトグル機構31と、このトグル機構31に連結された平行リンク機構12と受けアーム21と、平行リンク機構12の先端側に連結され、予備曲げ加工と本曲げ加工に際して本曲げ刃20Aまたは予備曲げ刃20Bの一方を選択して相互の位置を切り換える曲げ刃切り換え機構70を備えている。
先ず、曲げ加工装置Hのベース1上にユニットブラケット11が上方へ起立する状態に固定されている。このユニットブラケット11の下部に電動駆動装置41が取り付けられている。この電動駆動装置41は、電動モータ41aと、この電動モータ41aにより回転するねじ軸44と、このねじ軸44に噛み合わされたナット43を備えている。電動モータ41aの前端部はユニットブラケット11に対して支軸42を介して上下に傾動可能に支持されている。このため、当該電動駆動装置41は、支軸42を介して上下に傾動可能に取り付けられている。電動モータ41aが起動するとねじ軸44が回転して、ナット43がこのねじ軸44上を移動する。この電動モータには、いわゆるサーボモータが用いられている。この電動モータには、その回転方向、回転数、回転速度等を任意に制御(パルス制御)するための制御装置(図示省略)が備え付けられている。また、この電動モータ41aには、その出力トルクを検知するための負荷検知センサ41bが付設されている。この負荷検知センサ41bにより検知される出力トルクに基づいて、本曲げ刃20Aおよび予備曲げ刃20Bの押し付け力(曲げ加工力)が上記制御装置により制御(トルク制御)されるようになっている。
次に、上記ナット43には連結軸32を介してトグル機構31が連結されている。トグル機構31は、2つのトグルリンク33,34を備えている。両トグルリンク33,34は、上記連結軸32を介して相互に回動可能に連結されている。下側のトグルリンク34の上部には凸部55が形成され、これに対応して上側のトグルリング33の下部には凹部54が形成されている。当該トグル機構31が伸長方向(両トグルリンク33,34が相互に一直線状態になる方向)に作動して凸部55が凹部54の側部に当接することにより、その伸長方向の移動端が規制される。上側のトグルリンク33の先端側(図示上端側)は、平行リンク機構12に連結されている。平行リンク機構12は、上下一対のリンク13,14を備えている。両リンク13,14は、それぞれ支軸15,16を介してユニットブラケット11に上下に傾動可能に支持されている。上側のリンク13の後端部に連結軸35を介して上記上側のトグルリンク33の先端部が相互に回動可能に連結されている。一方、上記下側のトグルリンク34の先端部には連結軸36を介して受けアーム21の後端部が相互に回動可能に連結されている。この受けアーム21は、ユニットブラケット11の下部に支軸22を介して上下に傾動可能に取り付けられている。この受けアーム21の先端側(図4において左端側)は下型2の下面側に至っている。この受けアーム21の先端側には、下型2の下面に僅かな隙間を置いて当接可能に対向する加圧プレート23が固定されている。上記平行リンク13,14、受けアーム21、トグルリンク33,34は、ユニットブラケット11を構成する縦板間にそれぞれ前後方向(紙面に直交する方向)に2組ずつ設けられている。
次に、上記平行リンク機構12を構成する上下のリンク13,14の先端部間には、本曲げ刃20Aまたは予備曲げ刃20Bの一方を選択して相互の位置を切り換える曲げ刃切り換え機構70が取り付けられている。この曲げ刃切り換え機構70の詳細が図7、図8に示されている。上側のリンク13と下側のリンク14の先端部間には曲げ刃ブラケット77がそれぞれ連結軸18,19を介して回動可能に連結されている。この曲げ刃ブラケット77には、本曲げ刃20Aを取り付けるための固定ホルダ部77aが一体に設けられている。この固定ホルダ部77aの前面に本曲げ刃20Aがその加工面20Aaを下方へ向けた状態に取り付けられている。この固定ホルダ部77aの下側には、予備曲げ刃20Bを取り付けるための移動ホルダ73が配置されている。この移動ホルダ73は、曲げ刃ブラケット77に対して連結ブラケット74を介して相互に回動可能に連結されている。連結ブラケット74の一端側は連結軸71を介して曲げ刃ブラケット77に対して回動可能に連結されている。連結ブラケット74の他端側は、連結軸72を介して移動ホルダ73に回動可能に連結されている。」

キ.段落【0015】?【0017】
「以上のように構成した本実施形態の曲げ加工装置Hによれば、実際のヘミング加工が以下のようにして行われる。図1において、リフター3が下型2の上面よりも高い位置に上昇される一方、ワークWがワーク搬送治具5にクランプされた状態でロボットハンドRの動作によりリフター3の上方へ搬送される。その後、ワーク搬送治具5のクランプハンガーがアンクランプ側へ退避されることによりこのリフター3上に移載される。ワークWを受け取ったリフター3はその後下降し、その下降途中の段階でワークWが下型2上に移載される。こうしてワークWが下型2上に移載された後、ロボットハンドRの動作によりワーク搬送治具5がさらに下降してワーク押さえブロック5b?5bがワークWに当接される。この当接状態において、ロボットハンドRの動作力によりワークWが下型2上に移動不能に押さえ付けられて固定される。また、この固定状態では、位置決めピン6がインナパネルW1の基準孔(図示省略)に挿入されてワークWが下型2に対して位置決めされる。この位置決め状態はヘミング加工完了まで維持される。この段階で、アウタパネルW2の縁部W2aは、予め行ったフランジ立て加工により約90゜程度折り曲げられている。次に、下型2の周辺に設置された3台の加工ユニット10?10によるヘミング加工が同期して実施される。このヘミング加工は2段階に分けて行われる。先ず、フランジ立て加工された縁部W2aを折り返し方向に約45゜程度まで折り曲げる予備曲げ加工が行われ、その後この縁部W2aを折り返し状態にまで完全に折り曲げる本曲げ加工が行われる。先ず、予備曲げ加工が行われる。図8に示すように曲げ刃切り換え機構70の切り換えシリンダ76が伸長方向に作動し、これにより予備曲げ刃20Bが本曲げ刃20Aのほぼ真下の加工位置に移動する。
図11には、電動モータ41aの制御フローが示されている。この制御フローにおいて、ステップ1(ワーク加工待ち受け状態)では、制御装置から「位置指令確認保持」信号が出力されて電動モータ41aは原位置に停止しており、従って予備曲げ刃20Bおよび本曲げ刃20Aは所定の待機位置に位置している。ステップ2(予備曲げ加工開始)では、制御装置から「モータ回転指令」信号および「速度指令」信号が出力されて電動モータ41aが所定の回転方向へ所定の回転速度で起動する。こうして電動駆動装置41の電動モータ41aが起動して、ねじ軸44が加工側に回転(ねじ軸44が右ネジであれば右回転)し、これによりナット43がねじ軸先端側(図5において右方、以下加工側という)に移動する。ナット43が加工側に移動すると、トグル機構31の連結軸32が加工側に押されて、トグルリンク33,34が連結軸32を中心にして回動し、これにより当該トグル機構31が伸長する。トグル機構31が伸長方向に移動すると、平行リンク機構12が図において反時計回り方向に傾動することにより予備曲げ刃20Bが下型2に向かって下降する。予備曲げ刃20Bが下降して、ワークWの縁部W2aに押し付けられることにより、この縁部W2aが折り返し方向に折り曲げ加工(予備曲げ加工)される。この段階における当該加工ユニット10の様子が図5および図6に示されている。また、トグル機構31が伸長方向に作動することにより、上記予備曲げ加工に同期して受けアーム21が軸22を支点にして図示時計回り方向に回動し、これにより受けアーム21の先端に取り付けた加圧プレート23が下型2の下面に上向きの力で押し付けられ、これにより上記予備曲げ加工の押し付け力が相殺される。このように下型2を受けアーム21によって下から支えた状態で予備曲げ加工が行われるので、下型2自体の剛性をさほど必要とはしない。予備曲げ刃20Bの下降端は、電動モータ41aの回転数(出力パルス)を制御装置により適切に制御(パルス制御)することにより制御される。こうして電動モータ41aの累積回転数が確認され、これが予め設定した回転数に達した時点で、制御装置から「モータ回転位置確認指令」信号が出力され、これにより電動モータ41aが一旦停止される(ステップ3(予備曲げ加工完了))。引き続いて、制御装置から「モータ回転指令」信号および「速度指令」信号が出力されて電動モータ41aが逆転方向に所定の回転速度で回転し始め、これにより予備曲げ刃20Bが上方へ戻される(ステップ4(待ち受け位置戻り))。
こうして予備曲げ刃20Bが待ち受け位置に戻された後、本曲げ加工が行われる。ワークWのセット状態はそのまま維持される。先ず、曲げ刃切り換え機構70の切り換えシリンダ76を図7に示すように収縮方向に作動させる。これにより、予備曲げ刃20Bが退避位置に移動する。この状態は、図4にも示されている。また、制御装置ではステップ5(ワーク加工待ち受け)が実行され、電動モータ41aの原位置状態が確認される。次に、ステップ6(本曲げ加工開始)が実行されて、制御装置から「モータ回転指令」信号および「速度指令」信号が出力され、これにより電動モータ41aが起動してナット43が再び加工側に移動し、これによりトグル機構31を伸長方向に作動させる。すると、図9および図10に示すように、再び平行リンク機構12が図において反時計回り方向に傾動し、これにより本曲げ刃20AがワークWの縁部W2aに向けて下降する。なお、この段階で、予備曲げ刃20Bは退避位置に位置しているので、ワークWの縁部W2aには当接しない。本曲げ刃20Aが縁部W2aに当接した後、さらに下降することにより予備曲げされた縁部W2aが本曲げ加工される。この本曲げ加工の段階においても、トグル機構31が伸長方向に作動することにより、受けアーム21が軸22を支点にして図示時計回り方向に回動して、その先端部(加圧プレート23)が下型2の下面に上向きの力で押し付けられ、これにより下型2が受けアーム21によって下から支えた状態で本曲げ加工が行われる。」

以上によれば、引用刊行物1には、
「ヘミング加工を行うための加工ユニット10?10が、下型2の周囲における必要箇所である後部および左右の3箇所に配置され、
ワークの縁部に曲げ刃を押し付けて該縁部をヘミング加工するための曲げ加工装置であって、サーボモータを駆動源とする電動駆動装置を用い、
サーボモータの回転数と出力トルクを制御するための制御装置を備え、前記回転数に基づいて曲げ刃の位置を制御するとともに、前記出力トルクに基づいて曲げ刃の前記ワークの縁部に対する押し付け力を制御するものであり、
電動駆動装置41は、サーボモータ41aと、このサーボモータ41aにより回転するねじ軸44と、このねじ軸44に噛み合わされたナット43を備え、
ナット43には連結軸32を介してトグル機構31が連結され、トグル機構31は、2つのトグルリンク33,34を備え、上側のトグルリンク33の先端側は、平行リンク機構12に連結され、下側のトグルリンク34の先端部には連結軸36を介して受けアーム21の後端部が相互に回動可能に連結され、この受けアーム21は、ユニットブラケット11の下部に支軸22を介して上下に傾動可能に取り付けられ、受けアーム21の先端側には、下型2の下面に僅かな隙間を置いて当接可能に対向する加圧プレート23が固定され、平行リンク機構12を構成する上下のリンク13,14の先端部間には、本曲げ刃20Aが取り付けられている、曲げ加工装置。」
との発明(以下、「引用刊行物発明1」という。)が開示されていると認められる。

○引用刊行物2
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-42657号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、「ヘミング加工ワークの製造装置」に関して、図面とともに、以下のとおり記載されている。

ク.段落【0001】
「【発明の属する技術分野】本発明は、アウタ部材とインナ部材とをヘミング加工で一体化して成る形状の異なる2種類のワーク、例えば、自動車用の左右のドアを製造するヘミング加工ワークの製造装置に関する。」

ケ.段落【0040】
「第2と第3の各把持具82_(2),82_(3)は、大きさの異なるドアにも対処できるよう、ロボットハンド81に対し、アウタパネルWRO,WLOの第3と第4の両辺WOc,WOdの対向方向及び両辺WOc,WOdの長手方向に移動自在に支持されている。これを詳述するに、ロボットハンド81に、第3と第4の両辺WOc,WOdの長手方向に移動可能なスライド枠83を設け、スライド枠83に両辺WOc,WOdの対向方向に移動可能な1対の可動枠84,84を支持させて、各可動枠84に第2と第3の各把持具82_(2),82_(3)を取付けている。スライド枠83は、手首80dに連結されるロボットハンド81のベース枠81aに固定した1対のガイドレール83a,83aに摺動自在に支持されており、ベース枠81aに、モータ83bを搭載すると共に、モータ83bによりベルト83cを介して駆動される1対のボールねじ83d,83dを軸支し、両ボールねじ83d,83dをスライド枠83に固定した1対のナット83e,83eに螺挿し、モータ83bによりスライド枠83を介して両可動枠84,84が前記両辺WOc,WOdの長手方向に移動されるようにしている。各可動枠84は、スライド枠83に固定した各ガイドレール84aに摺動自在に支持されており、スライド枠83に、モータ84bを搭載すると共に、モータ84bによりベベルギア84cを介して駆動される1対のボールねじ84d,84dを軸支し、各ボールねじ84dを各可動枠84に固定したナット84eに螺挿し、モータ84bにより両可動枠84,84が前記両辺WOc,WOdの対向方向に接近、離間されるようにしている。」

そして、【図9】、【図10】によれば、ガイドレール83aとボールねじ83dが平行に並んで、共にベース枠81aに取り付けられていることが示されている。

以上によれば、引用刊行物2には、
「ヘミング加工ワークの製造装置であって、モータ83bを搭載したベース枠81aに、ガイドレール83a,83aを固定するとともに、ガイドレール83a,83aと平行にボールねじ83d,83dを軸支し、スライド枠83はガイドレール83a,83aに摺動自在に支持され、両ボールねじ83d,83dをスライド枠83に固定した1対のナット83e,83eに螺挿するヘミング加工ワークの製造装置。」
との発明(以下、「引用刊行物発明2」という。)が開示されていると認められる。

○引用刊行物3
平成22年3月15日付け前置報告書に引用された実公昭43-11239号公報(以下、「引用刊行物3」という。)には、「はぜ折り装置」に関して、図面とともに、以下のとおり記載されている。

コ.公報第1頁左欄第28?31行
「本考案は1枚の金属パネル(例えば車両の扉の外鈑)の直立縁辺を他の1枚の金属パネル(例えば扉の内鈑)上に折曲げてはぜ折りするための装置に関するものである。」

サ.公報第1頁右欄第21行?第2頁左欄第8行
「以下図において本考案の実施態様に付き詳述すれば、1はフレームで、該フレーム1は柱体2を支持し、該柱体2はピン3を介して作動梃4を枢支する。この作動梃4の一側には床面等に固着したブラケット5に枢着しモーター等により作動する流体圧シリンダー6のピストン杆6’が連結片17を介して連結せられており、且つ他側ははぜ折り具7を担持している。更に前記柱体2はピン8を介して折曲げ具9を担持する揺動腕10を枢支する。該揺動腕10と前記作動梃4とは夫々に設けたピン11,12に両端が枢支されているリンク13を介して連結せしめるものである。今流体圧シリンダー6が作動してピストン杆6’を上昇させると作動梃4がピン3を中心に右回転し、はぜ締め具7を下方へ移動せしめると共に、作動梃4はリンク13を介して揺動腕10をピン8を中心に右方へ揺動せしめて折曲げ具9を前記はぜ締め具7の下方運動よりも早い速度で前進せしめピン8、11及び12の3中心が一直線上に位置する即ち死点状態になるや否や揺動腕10は逆にピン8を中心に左方へ揺動し折曲げ具9は後退するようになっている。
又前記フレーム1には受け台14が装架され、該受け台14は金属パネル15,16を支持している。金属パネル15はその直立縁辺15’が前記折曲げ具9の移動線上に位置するように配置し且つ金属パネル16はそのフランジ部16’を前記直立縁辺15’に近器させて横置され、且つ又この金属パネル15及び16は図示しないが締付け治具等により受け台14に固着設置されている。」

シ.公報第2頁左欄第9行?第2頁右欄第5行
「次に本考案の作動について説明するならば、第1図の状態より作動梃4を流体圧シリンダー6により右回転させた場合はぜ折り具7が下降すると共にリンク13の働きにより揺動腕10がピン8の周りを右方へ揺動する。従って先ず折曲げ具9が金属パネル15の縁辺15’を第2図で示す如く金属パネル15に対して略々45°内方向まで折曲する。ここにおいてこの折曲げ作業は完了したことになる。この時ピン3、11及び12の中心が夫々一直線上即ち死点状態に位置していて、作動梃4が更に廻動するとはぜ折り具7は更に下降するも折曲げ具9はリンク13の働きにより揺動腕10が前記折曲げ作業時とは逆即ち左方へ揺動するので縁辺15’より次第に離れていく。そして該折曲げ具9がはぜ折り具7に係合しないまでに縁辺15’より離れた時、はぜ折り具7が縁辺15’上へ下降してはぜ折り作業を開始し、第3図の如き状態によってその作業を終了する。この後はぜ折り具7及び折具9は流体圧シリンダー6により作動梃4を逆作動即ち左回転方向へ作動させて再び第1図の状態へ復帰する。」

以上によれば、引用刊行物3には、
「作動梃4を右回転させた場合、はぜ折り具7が下降すると共にリンク13の働きにより折曲げ具9を担持する揺動腕10が右方へ揺動し、先ず折曲げ具9が金属パネル15の縁辺15’を金属パネル15に対して略々45°内方向まで折曲し、作動梃4が更に廻動すると折曲げ具9はリンク13の働きにより揺動腕10が前記折曲げ作業時とは逆即ち左方へ揺動するので縁辺15’より次第に離れ、作動梃4のさらなる回動によって、はぜ折り具7が縁辺15’上へ下降してはぜ折り作業を開始する、はぜ折り装置。」
との発明(以下、「引用刊行物発明3」という。)が開示されていると認められる。

(5-2)対比
そこで、本願補正発明と引用刊行物発明1とを比較すると、引用刊行物発明1の「曲げ加工装置」は、プレス装置を備えずに、それぞれの駆動源を装着したヘミングリンクユニットを、駆動源を作動させることで、外部パネルの外周縁フランジを折り曲げる方式のヘミング装置であるから、本願補正発明の「クリンチタイプのヘミング装置」と一致している。
そして、引用刊行物発明1の「ヘミング加工を行うための加工ユニット」は、本願補正発明の「ヘミングリンクユニット」に相当し、
以下同様に、「電動駆動装置」は、「駆動手段」に、「サーボモータ」は、「サーボモーター」に、「サーボモータの回転数と出力トルクを制御するための制御装置」は、「電気的コントローラー」に、「ねじ軸」は、「ボールスクリュー」に、夫々相当していることは明らかである。
更に、本願補正発明の「ボールスクリューのスクリューナット7に」、「ヒンジ結合されてヘミングリンクユニット100を動作させ」ている1つの駆動リンク11についてみると、引用刊行物発明1が曲げ加工するときの動作からみて、引用刊行物発明1は、ねじ軸44に噛み合わされたナット43に連結軸32を介して連結されたトグル機構31と、トグル機構31に連結された平行リンク機構12のうちの、上のリンク13が曲げ加工装置を動作させており、連結軸32を介して連結するのはヒンジ結合にほかならないから、ねじ軸44のナット43にヒンジ結合されて曲げ加工ユニットを動作させている上のリンク13が、本願補正発明の駆動リンク11に相当するものということができる。

以上の通りであるから、両者は、
<一致点>
「それぞれの駆動手段を装着したヘミングリンクユニットを下部金型に固定し、前記それぞれの駆動手段を作動させることで、外部パネルの外周縁フランジを折り曲げる方式のヘミング装置において、
前記駆動手段は、サーボモーターと;前記サーボモーターの回転速度及び回転量を制御する電気的コントローラーと;前記サーボモーターの回転軸に連結され、モーターの回転力を移送運動に変換させるボールスクリューと、前記ボールスクリューのスクリューナットにヒンジ結合されてヘミングリンクユニットを動作させる、サーボモーターを利用したクリンチタイプのヘミング装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>
本願補正発明では、1つの駆動リンク11が「ボールスクリューのスクリューナット7に直接ヒンジ結合され」ているのに対し、本願補正発明1の1つの駆動リンク11に相当する引用刊行物発明1の「上側のリンク13」は、トグル機構31を介して電動駆動機構41のナット43にヒンジ結合されている点。

<相違点2>
本願補正発明では、1つの駆動リンク11が、「スクリューナットの直線移動によって、ヘミングリンクユニット上に設けられたヒンジ点を中心として回動し、これによりその回転量によって、メインヘミングツールと予備ヘミングツールが進入して予備ヘミング作業を行った後、後退して下方に回動したメインヘミングツールが工作物を加圧するように設けられた1つのもの」であるのに対して、引用刊行物発明1の「上側のリンク13」はそのような動作をするようには設けられていない点。

<相違点3>
本願補正発明では、駆動手段は、「ボールスクリューの両端を支持するスクリューハウジング」と、「スクリューハウジングを固定し、ブラケットとヒンジで結合されてなるベースプレート」を備え、「ベースプレートには、LM-ガイドがボールスクリューと同一方向に取り付けられ、前記スクリューナットの一側面にはガイドブロックが固定されことにより、前記LM-ガイドに沿って前記スクリューナットが案内される」のに対して、引用刊行物発明1の電動駆動機構はそのように構成されていない点。

(5-3)判断
○ 相違点1について
リンク装置においてトグル機構を用いるのは、トグル機構が倍力機構の一種として周知の技術であり、このような倍力機構を用いるか、用いないかは、必要に応じて適宜選択すればよいことにすぎないものである。
してみれば、相違点1に係る発明特定事項の違いは、引用刊行物発明1から周知事項を削除したにすぎないものであり、当業者が容易に想到し得たものである。

○ 相違点2について
引用刊行物発明3に示される「はぜ折り装置」は、本願補正発明のヘミング装置と同じ技術分野に属するものであり、引用刊行物発明3において、折曲げ具9が金属パネル15の縁辺15’を金属パネルI5に対して略々45°内方向まで折曲する点は、本願補正発明の「予備ヘミング作業」に相当するものということができる。同様に、はぜ折り具7が「メインヘミングツール」に相当し、作動梃の回転量によって折曲げ具9が予備的な折曲をした後、はぜ折り具7によってはぜ折りするのは、相違点2にかかる本願補正発明の動作と同じである。
してみれば、相違点2に係る発明特定事項の違いは、引用刊行物発明1に引用刊行物発明3を適用したにすぎないものであり、当業者が容易に想到し得たものである。

○ 相違点3について
引用刊行物発明2には、ヘミング加工ワークの製造装置において、ベース枠にモータとガイドレールを取付け、ボールねじをガイドレールと平行に軸支し、ボールねじに螺挿したナットによってスライド枠が駆動されるとき、スライド枠はガイドレールに摺動自在に支持されている点が示されている。
引用刊行物発明2の「モータ」、「ボールねじ」、「ナット」、「スライド枠」が、相違点3に係る本願補正発明の「サーボモーター」、「ボールスクリュー」、「スクリューナット」、「ガイドブロック」に相当するものであることは明らかであり、引用刊行物発明2の「ガイドレール」が、ボールねじに曲げモーメントが作用しないようにスライド枠を支持している点も、本願補正発明の「LM-ガイド」が、ボールスクリューに曲げモーメントが作用しないようにガイドブロックを支持している点と同様である。
してみれば、相違点3に係る発明特定事項の違いは、引用刊行物発明1に引用刊行物発明2を適用したにすぎないものであり、当業者が容易に想到し得たものである。

以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用刊行物発明1ないし引用刊行物発明3、及び周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(6)むすび
以上のとおり、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するので、改正前特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3.本願発明について
(1)本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、出願時の明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2.(2)のとおりのものである。

(2)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物1、2、及び、その記載事項は、前記第2.(5-1)に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記第2.で検討した本願補正発明から、前記第2.(3)に記載した補正事項1、2の発明特定事項を省いたものである。
ここで、補正事項1は相違点1にかかり、補正事項2は相違点2にかかるものである。
そうすると、本願発明と引用刊行物発明1との対比における新たな一致点は、前記第2.の(5-2)対比で述べた一致点とかわりがなく、相違点は、前記第2.の(5-2)対比で述べた相違点3のみとなり、その相違点の判断は、前記第2.の(5-3)判断で述べた相違点3についての判断と同様に、相違点に係る発明特定事項の違いは、引用刊行物発明1に、拒絶査定の理由に引用された刊行物2に記載の引用刊行物発明2を適用したにすぎないものであり、当業者が容易に想到し得たものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用刊行物発明1及び引用刊行物発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-12-20 
結審通知日 2011-01-04 
審決日 2011-01-17 
出願番号 特願2006-70625(P2006-70625)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B21D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川村 健一  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 菅澤 洋二
所村 美和
発明の名称 サーボモーターを用いるクリンチタイプのヘミング装置  
代理人 神野 直美  

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