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審決分類 審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する G02B
管理番号 1238555
審判番号 訂正2011-390048  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2011-04-25 
確定日 2011-06-02 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第4500789号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4500789号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 請求の要旨
本件審判の請求の要旨は、特許第4500789号(平成14年9月13日に出願した特願2002-267774号の一部を平成18年8月28日に分割出願、平成22年4月23日に設定登録)の明細書及び特許請求の範囲を審判請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、すなわち、下記訂正事項1ないし2のとおり訂正することを求めるものである。

1 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の
「前記判断手段は、焦点距離が第1の場合には該第1の場合に比較して焦点距離が短い第2の場合よりも前記スキャン範囲の分割数を増やす・・・」
とあるのを、
「前記分割手段は、焦点距離が第1の場合には該第1の場合に比較して焦点距離が短い第2の場合よりも前記スキャン範囲の分割数を増やす・・・」
と訂正する。

2 訂正事項2
明細書の段落【0007】の
「【0007】
・・・前記判断手段は、焦点距離が第1の場合には該第1の場合に比較して焦点距離が短い第2の場合よりも前記スキャン範囲の分割数を増やすことを特徴とする。」

「【0007】
・・・前記分割手段は、焦点距離が第1の場合には該第1の場合に比較して焦点距離が短い第2の場合よりも前記スキャン範囲の分割数を増やすことを特徴とする。」
と訂正する。

第2 当審の判断
1 訂正の目的
(1)訂正事項1について
訂正前の請求項1記載の特許発明において、「分割手段」は、「前記評価信号を取得するために前記焦点調節用光学系を駆動させるスキャン範囲を複数に分割する分割手段」と特定され、「判断手段」は「前記分割手段により複数に分割されたスキャン範囲の一のスキャン範囲で合焦位置の判断、および他のスキャン範囲に前記焦点調節用光学系を駆動させるか否かの判断を行う判断手段」と特定されている。
そして、これら発明特定事項との整合を考慮すると、「焦点距離が第1の場合には該第1の場合に比較して焦点距離が短い第2の場合よりも前記スキャン範囲の分割数を増やす」構成を備えるべきものは「判断手段」ではなく「分割手段」である。また、このような解釈は、発明の詳細な説明の記載とも整合する。
そうすると、訂正前の請求項1における上記「前記判断手段」は「前記分割手段」の誤りであることは明らかである。
したがって、訂正事項1における、上記「前記判断手段」を「前記分割手段」に訂正することは誤記の訂正と認められるから、訂正事項1は誤記の訂正を目的とするものである。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、上記訂正事項1に対応して特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合性をとるためのものであり、上記訂正事項1と同様の趣旨の訂正であるから、誤記の訂正を目的とするものである。

(3)まとめ
以上によれば、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第2号に揚げる事項(誤記の訂正)を目的とする。

2 訂正の適合性
(1)訂正の範囲、特許請求の範囲の拡張・変更について
本件訂正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正といえ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)独立特許要件
本件訂正が誤記の訂正を目的とするものであることは上記のとおりであるところ、訂正後における特許請求の範囲の請求項1に記載される事項により特定される発明について、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。
したがって、訂正後における特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

(3)まとめ
以上によれば、本件訂正は、特許法第126条第3項ないし第5項までの規定に適合する。

第3 むすび
以上、本件審判の請求に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第2号に揚げる事項を目的とし、かつ、同条第3項ないし第5項までの規定に適合する。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
焦点調節装置及びプログラム
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置などに適用される焦点調節技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルカメラなどの撮像装置では、TV-AF方式と呼ばれるオートフォーカス(以下、AF(自動焦点調節))方式を採用することが多い。この方式では、フォーカス位置をある範囲内で動かして、当該範囲内における各点でのAF評価信号の値から被写体距離を算出する(例えば、特許文献1参照)。AF評価信号は、BPF(Band Pass Filter:帯域通過フィルタ)などを用いて所定帯域の信号成分を抽出することで演算されるものであり、被写体に合焦しているほど信号が大きくなるように演算される。
【0003】
例えば無限遠から50cmまでを測距範囲とした場合、図10に示すように、無限遠に合焦するフォーカス位置におけるAF評価信号を取得し、順次50cmまでフォーカス位置を近づけながら各距離におけるAF評価信号を取得する。この後、取得した各距離におけるAF評価信号を比較して、最も合焦すると判定された被写体距離A(AF評価信号の山の頂点に対応する被写体距離)にフォーカス位置を持っていくという方法でAF制御が行われる。
【0004】
また、通常、フォーカス位置を振りながらAF評価信号を連続的に取得することは困難なため、例えば被写界深度相当の距離間隔毎にAF評価信号を間引いてAF評価信号を取得する場合が多い。
【特許文献1】特開平3-68280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術においては次のような問題があった。焦点距離が長くフォーカス移動範囲が広いデジタルカメラや、被写界深度が浅くフォーカスの移動を細かくする必要のあるデジタルカメラの場合、測距範囲に対して取得するデータ(AF評価信号)のサンプル数を非常に多くとる必要がある。これに伴い、データの取得に時間がかかりAF時間が延びてしまうという問題があった。そのため、撮影条件(焦点距離、絞り値等)や撮影モード(風景撮影、人物撮影)に応じた制御を実現しAF時間の短縮が要望されていた。
【0006】
本発明の目的は、焦点調節時間を従来に比べて画期的に短縮可能とした焦点調節技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明は、焦点調節用光学系を所定範囲駆動させて焦点調節を行う焦点調節装置であって、前記焦点調節用光学系を駆動させながら被写体への合焦状態を示す評価信号を取得する評価信号取得手段と、前記評価信号を取得するために前記焦点調節用光学系を駆動させるスキャン範囲を複数に分割する分割手段と、前記分割手段により複数に分割されたスキャン範囲の一のスキャン範囲で合焦位置の判断、および他のスキャン範囲に前記焦点調節用光学系を駆動させるか否かの判断を行う判断手段とを有し、前記分割手段は、焦点距離が第1の場合には該第1の場合に比較して焦点距離が短い第2の場合よりも前記スキャン範囲の分割数を増やすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、焦点調節速度の向上により焦点調節時間が従来に比べて画期的に短縮となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態では、本発明の焦点調節装置としてのオートフォーカス装置をデジタルカメラに適用した場合の実施形態を説明する。
【0011】
図1は、本実施の形態に係るオートフォーカス機能を有する撮像装置としてのデジタルカメラの概略構成を示すブロック図である。
【0012】
図1において、デジタルカメラは、光学系1、フォーカスレンズ2、撮像素子3、前置処理回路4、A/D変換器5、メモリコントローラ6、メモリ7、記録媒体8、スイッチSW1・9、スイッチSW2・10を備えている。デジタルカメラは、更に、制御部11、測距ゾーン設定手段12、測距ゾーン選択手段13、AF評価値演算回路14、ゾーン更新判断手段15、合焦位置決定手段16、フォーカスレンズ駆動回路17を備えている。
【0013】
光学系1は、被写体像をフォーカスレンズ2を介して撮像素子3に入光させる。フォーカスレンズ2は、選択された測距範囲を駆動される。撮像素子3は、被写体像を電気信号に光電変換する。前置処理回路4は、出力ノイズを除去するCDS回路、A/D変換前に非線形増幅を行う非線形増幅回路を備えている。A/D変換器5は、前置処理回路4から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0014】
メモリコントローラ6は、A/D変換器5から出力されるデジタル信号をメモリ7に格納する。メモリ7は、前記デジタル信号を記憶する。記録媒体8は、画像を記録する。スイッチSW1・9は、フォーカスレンズ2を駆動する際に押下するスイッチである。スイッチSW2・10は、撮影を実行する際に押下するスイッチである。
【0015】
制御部11は、デジタルカメラ各部を制御することでAF動作を含む各種動作を制御するものであり、デジタルカメラ内部に格納されたプログラムまたは外部から供給されたプログラムに基づき後述の各フローチャートに示す処理を実行する。測距ゾーン設定手段12は、測距ゾーンを複数に分割(設定)する。測距ゾーン選択手段13は、スキャンする測距ゾーンの順序を決定する。
【0016】
AF評価値演算回路14は、撮像素子3により取得した信号の中高域信号成分を抽出することでAF評価値を演算する。ゾーン更新判断手段15は、AF評価値に基づき測距ゾーンを更新するか否かを判断する。合焦位置決定手段16は、上記測距ゾーンの更新とAF評価値の取得の繰り返しに基づき、合焦位置を決定する。フォーカスレンズ駆動回路17は、合焦位置にフォーカスレンズ2を駆動する。
【0017】
本実施の形態のデジタルカメラでは、撮影時に光学系1及びフォーカスレンズ2により撮像素子3に結像した光(被写体像)を撮像素子3により光電変換する。更に、出力ノイズを除去するCDS回路やA/D変換前に非線形増幅を行う非線形増幅回路を備えた前置処理回路4とA/D変換器5を通してデジタル化した信号を、メモリコントローラ6を介してメモリ7に格納する。更に、メモリ7に格納されたデジタル化した信号を不図示の信号処理回路によって画像に変換してから、記録媒体8に画像として記録する。
【0018】
次に、上記の如く構成された本実施の形態のデジタルカメラの動作を図1乃至図5を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
AF動作について説明する。AF動作は制御部11により制御される。まず、撮影者によりスイッチSW1・9が押されたら、測距ゾーン設定手段12により被写体距離を複数の測距ゾーンに分割し且つ測距ゾーン選択手段13により選択した測距範囲(測距ゾーン)をスキャンするように、次の信号取得を行う。即ち、フォーカスレンズ駆動回路17によってフォーカスレンズ2を駆動し、撮像素子3により信号を取得する。撮像素子3により取得した信号は、AF評価値演算回路14によりBPFを用いて中高域信号成分を抽出することにより、各スキャンポイントにおけるAF評価値(AF評価信号の値)に変換される。
【0020】
次に、ゾーン更新判断手段15により、各スキャンポイントにおけるAF評価値を基に他の測距ゾーンを測距するか否かの判断を行う。ゾーン更新判断手段15による測距ゾーンの更新とAF評価値演算回路14によるAF評価値の取得を繰り返した後、スキャン終了後のAF評価値に基づき合焦位置決定手段16により合焦位置を決定する。その合焦位置にフォーカスレンズ駆動回路17によりフォーカスレンズ2を駆動する。その状態で撮影者がスイッチSW2・10を押すことで撮影が実行される。
【0021】
AF動作について更に詳細に説明する。本実施の形態では、単焦点レンズを前提とし、デジタルカメラの画面内に表示する領域であるAF枠(測距ポジション)も一つであるとして説明する。また、測距範囲は無限遠から例えば50cmまでとする。測距ゾーン設定手段12によって測距ゾーンを図2に示すように例えば3分割する。
【0022】
図2は、被写体距離と測距ゾーンの関係を示す図であり、測距ゾーン1を2m?無限遠、測距ゾーン2を1m?2m、測距ゾーン3を50cm?1mとした例である。測距ゾーンの分割の仕方は、測距速度やどの被写体距離を優先するか、或いは撮影条件などによって任意に決定すればよい。また、測距ゾーンの分割数は、撮影時の焦点距離、撮影時の絞り値に応じて変更することが可能である。この場合、焦点距離が長いほど測距ゾーン分割数を増やし、絞りを絞っているほど測距ゾーン分割数を減らしてもよい。
【0023】
次に、測距ゾーン選択手段13によってスキャンする測距ゾーンの順序を決定する。本例では、例えば測距ゾーン1→測距ゾーン2→測距ゾーン3の順とする。この場合、図2に示すように被写体距離が遠いところからスキャンしていくことを意味する。他には、測距ゾーン3→測距ゾーン2→測距ゾーン1のように被写体距離が近いところからスキャンしてもよい。また、測距ゾーン2→測距ゾーン1→測距ゾーン3のようにスキャンしてもよい。測距ゾーンを分割する目的は、早く被写体を見つけてそこでスキャンを終了することによってAF時間を短くすることであるため、被写体が存在する確率の高い測距ゾーンからスキャンすることが望ましい。
【0024】
従って、次のように撮影モードによってスキャンする測距ゾーンの順序を変更することも可能である。例えば、風景撮影モードで撮影する場合には遠いところから近いところにスキャンを行い、人物撮影モードで撮影する場合には近いところから遠いところにスキャンを行うように構成する。これにより、より撮影者の意図した被写体に早く合焦させることが可能となる。
【0025】
次に、上記のように分割した測距ゾーンを順次スキャンしてAF評価値を取得し、最終的に合焦位置を決定するまでの処理の流れを図3のフローチャートに基づき説明する。本フローチャートに示す処理は制御部11がプログラムに基づき図1のデジタルカメラ各部を制御することで実行する。
【0026】
ステップS1において、測距ゾーン設定手段12はスキャンする測距ゾーンを設定する。測距ゾーンの更新順序が測距ゾーン1→測距ゾーン2→測距ゾーン3の場合には、まず測距ゾーン1が設定される。次に、ステップS2において、測距ゾーン設定手段12で設定された測距ゾーンをスキャンすることで、AF評価値演算回路14によりAF評価値を取得する。AF評価値の計算は、撮影した信号に対してBPFによるフィルタリング処理を適用し、撮影した信号の中高域成分を抽出した後、AF枠内の振幅の最大値をAF評価値としてもよい。また、AF枠内でBPFのフィルタリングにおけるX軸方向に沿って最大値を抽出し、BPFのX軸方向と垂直の方向(Y軸方向)に最大値を積分したものをAF評価値としてもよい。
【0027】
次に、ステップS3において、ゾーン更新判断手段15は上記AF評価値演算回路14で取得したAF評価値に基づき、測距ゾーンの更新を行うかどうかを判断する測距ゾーン更新判断処理を行う。測距ゾーン更新判断処理では、具体的には、例えば、AF評価値の高低差と測距ゾーンの端におけるAF評価値の上り具合とに基づき、測距ゾーンの更新を行うかどうかを判断する。
【0028】
上記ステップS3における測距ゾーン更新判断処理の詳細を図4のフローチャートに基づき説明する。本フローチャートに示す処理は制御部11がプログラムに基づき図1のデジタルカメラ各部を制御することで実行する。
【0029】
ステップS11において、まず、ゾーン更新判断手段15は、それまでにスキャンした測距ゾーンの全てのAF評価値の最大値Afmaxと最小値Afminとの差Afdiff1=Afmax-Afminを計算する。次に、ステップS12において、ゾーン更新判断手段15は上記計算した差Afdiff1が閾値TH1より大きいかどうかを判定する。ゾーン更新判断手段15は、差Afdiff1>閾値TH1の場合には、AF評価信号の山取り(AF評価信号の山の頂点を見つけること)ができていると判断しOK(測距ゾーンを更新しない)と判定する。差Afdiff1>閾値TH1でない場合には、NG(測距ゾーンを更新する)と判定する。
【0030】
測距ゾーンの端におけるAF評価値の上り具合は、例えば図5に示すように、測距ゾーン1において至近側でAF評価値が上っているかどうかを判断するものである。即ち、ステップS13において、ゾーン更新判断手段15は測距ゾーン1における最至近側のAF評価値Afsikinと一つ前のAF評価値Afsikin-1の差Afdiff2=Afsikin-Afsikin-1を計算する。ステップS14において、計算結果を閾値TH2と比較する。ゾーン更新判断手段15は、計算結果が閾値TH2より大きい場合には、測距ゾーンの端におけるAF評価値が上っていると判断し、図5におけるAF評価信号の山の頂点は別の測距ゾーンにあるとしてNG(測距ゾーンを更新する)とする。計算結果が閾値TH2より小さい場合には、OK(測距ゾーンを更新しない)とする。
【0031】
尚、上記の測距ゾーン更新の判定における閾値TH1は、固定値である必要はなく、それまでにスキャンした測距ゾーンの数によって変えてもよい。即ち、測距ゾーンを多く見ている(測距ゾーンの分割数を多くする)ほどAF評価信号の山の頂点と最も低い点との差が大きく出やすくなるはずなので、閾値を大きく取ることが可能である。また、測距ゾーンが少ないほどAF評価信号の山の高低差が出にくいため、閾値を小さく取るほうが好ましい場合がある。このように、測距ゾーンの更新履歴に応じて測距ゾーン更新判定条件を変えることで、より好適な測距ゾーン更新判定を行うことが可能になる。
【0032】
更に、撮影モードに応じてパラメータ(測距ゾーン更新判定条件)を変更してもよい。例えば、夜景撮影モードのように被写体が暗いためにAF評価値のS/Nが悪いと推測できるような場合には、測距ゾーン更新をなるべくしやすくして広い範囲の被写体距離を見る(算出する)ようにしてもよい。
【0033】
ゾーン更新判断手段15は、上記のステップS12及びステップS14の2つの測距ゾーン更新条件が共にOKの場合に、ステップS15において、測距ゾーンを更新しないと決定する。そうでない場合には、ステップS16において、測距ゾーン更新を実行すると決定する。
【0034】
再度図3に戻り、ステップS4において、ゾーン更新判断手段15は図4の測距ゾーン更新判断処理を行った結果を使って、測距ゾーンを更新するか否かを判定する。ゾーン更新判断手段15は、測距ゾーンを更新すると判定した場合には、ステップS5において、全ての測距ゾーンに対する上記処理が終了したかを判断する。測距ゾーンを更新しないと判定した場合には、ステップS6の合焦位置判断処理に移る。
【0035】
ゾーン更新判断手段15は、測距ゾーンを更新すると判定した場合、ステップS5において、全ての測距ゾーンに対する上記処理が終了していなければ、上記ステップS1において次の測距ゾーンを設定する。全ての測距ゾーンに対する上記処理が終了していたならば、ステップS6の合焦位置判断処理に移る。
【0036】
ステップS6の合焦位置判断処理においては、まず、合焦位置決定手段16は合焦状態の判定を行った後に合焦位置を算出する。合焦状態の判定は、例えば、それまでにスキャンした測距ゾーンの全てのAF評価値に基づき、上記測距ゾーン更新判断処理と同様にAfdiff1(=Afmax-Afmin)を求め、Afdiff1を閾値TH3と比較する。
【0037】
合焦位置決定手段16は、Afdiff1>TH3が成立するならば合焦可能とし、Afdiff1>TH3が不成立ならば合焦不可能と判定する。合焦可能な場合には、AF評価値の最大値を合焦位置とする。尚、測距ゾーンの更新履歴に応じて合焦状態の判定条件を変更することが可能である。また、合焦可能と判定した場合は測距ゾーン更新を終了する。
【0038】
測距ゾーン更新判断処理における閾値TH1の設定と合焦位置判断処理における閾値TH3を変えることで、測距ゾーンの更新の仕方をしやすくしたりしにくくしたりといった設定が可能となる。例えば、閾値TH1が閾値TH3より大きければ、それだけAF評価信号の山の高低差が大きくならないとOK(測距ゾーンを更新しない)とならないため、測距ゾーンの更新がしやすくなる。また、測距ゾーン更新の判定を合焦状態の判定と全く同じ判定にしてもよい。
【0039】
以上説明したように、本実施の形態によれば、被写体距離を複数の測距ゾーンに分割すると共にスキャンする測距ゾーンを選択し、選択した測距ゾーンをスキャンしてAF評価値を取得する。更に、AF評価値を用いてスキャンする測距ゾーンの更新の有無を判断し、スキャンする測距ゾーンを適宜更新すると共にAF評価値の取得に基づいて合焦位置を決定する。これにより、被写体が早く見つかった場合にはその他の測距ゾーンをスキャンする必要がなくなるため、その分だけ合焦時間を短くすることが可能となる。また、そうした場合でもAFの合焦性能が落ちることはない。
【0040】
従って、測距範囲に対し必要なAF評価信号のサンプル数が多い場合でも、AF精度を落とすことなく、AF速度の向上を図ることでAF時間を短縮したオートフォーカス装置及びオートフォーカス装置を備えたデジタルカメラを実現することが可能となる。
【0041】
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態では、本発明の焦点調節装置としてのオートフォーカス装置をデジタルカメラに適用した場合で且つデジタルカメラの画面内のAF枠(測距ポジション)が複数存在する場合の制御について説明する。
【0042】
本実施の形態が上述した第1の実施の形態と相違する点は、AF枠が複数存在するため測距ゾーン更新判断処理が変更になる点である。本実施の形態のその他の要素は、上述した第1の実施の形態(図1)の対応するものと同一なので、説明を省略する。本実施の形態では、AF枠を図6に示すように9つとした場合について説明する。
【0043】
次に、上記の如く構成された本実施の形態のデジタルカメラの動作を、図1、図6、図7を参照しながら詳細に説明する。
【0044】
本実施の形態におけるAF動作の処理の流れは、第1の実施の形態における図3のフローチャートと同様であり、ステップS3の測距ゾーン更新判断処理部分のみに差がある。本実施の形態では、この測距ゾーン更新判断処理部分について説明する。また、測距ゾーン更新順序は遠くから近くに更新することにする。
【0045】
また、本実施の形態における各AF枠でのAF評価信号の山の状態の判定は、第1の実施の形態における図4のフローチャートと同様である。本実施の形態では、ステップS14においてNoである場合にAF評価信号の山の状態が○(当該測距ゾーンに山の頂点(ピーク)有り)と表現する。ステップS14においてYesの場合に△(山が他の測距ゾーンに有り)と表現する。ステップS12においてNoの場合に×(当該測距ゾーンに山無し)と表現する。
【0046】
次に、上記測距ゾーン更新判断処理部分の流れを図7のフローチャートに基づき説明する。本フローチャートに示す処理は制御部11がプログラムに基づき図1のデジタルカメラ各部を制御することで実行する。
【0047】
ステップS21において、ゾーン更新判断手段15は図6における上中下段9つのAF枠のうち中段の3つのAF枠のAF評価値の状態を調べ、全て○の場合のみステップS26に進み、測距ゾーンを更新しないと判定する。
【0048】
上中下段の全てのAF枠を調べないのは、中段のAF枠優先の考え方をしているからである。上段や下段のAF枠に近距離の被写体があった場合でも、そちらに引っ張られることがないように(例えば中段のAF枠に主要被写体があった場合に上段や下段のAF枠で合焦することがないように)考慮されている。また、中心一点ではなく、中段の3つのAF枠を調べているのは、中心に主要被写体がないような中抜けシーンの場合にAFの誤測距を防ぐためである。
【0049】
ステップS21で「偽」の場合(中段が全て○でない場合)には、ステップS22において、ゾーン更新判断手段15は測距ゾーンの更新が2つ目以降かどうかを判定する。ゾーン更新判断手段15は測距ゾーンの更新が2つ目以降でなければ、ステップS27において、測距ゾーンを更新すると判定する。
【0050】
測距ゾーンの更新が2つ目以降かどうかを判定する理由は、次の通りである。測距ゾーンを細かく分割した場合にAF評価信号の山のすそのみをスキャンする可能性があり、実際には山があるのに山のすそのみを見て×判定をするのを避けるよう、なるべく複数の測距ゾーンを調べてから測距ゾーンの更新判定を行うためである。
【0051】
ステップS22で「真」の場合(測距ゾーンの更新が2つ目以降の場合)には、ステップS23において、ゾーン更新判断手段15は中段のAF枠のAF評価値の状態を調べ、中段に△があるかどうかを調べる。ゾーン更新判断手段15は中段に△がある場合には、まだ他の測距ゾーンにAF評価信号の山のピークが存在すると解釈し、ステップS27において、測距ゾーンを更新すると判定する。ゾーン更新判断手段15は中段に△がない場合には、ステップS24において、中段のAF枠のAF評価値の状態を調べ、中段が全て×かどうかを調べる。
【0052】
ゾーン更新判断手段15は全てが×ではない場合には、いずれかに○があるということなので、ステップS26において、測距ゾーンを更新しないと判定する。ゾーン更新判断手段15は全てが×の場合には、中段には合焦できないので、ステップS25において、上下段のAF枠のAF評価値の状態を調べ、上下段に△があるかどうかを調べる。
【0053】
ゾーン更新判断手段15は上下段のどこかに△がある場合には、上下段には他のゾーンに被写体が存在するということなので、ステップS27において、測距ゾーンを更新すると判定する。ゾーン更新判断手段15は上下段に△がない場合には、ステップS26において、測距ゾーンを更新しないと判定する。
【0054】
本例では、AF枠が複数ある場合の測距ゾーン更新判断処理の例を示したが、本例に限るものではない。常に全てのAF枠を使って測距ゾーン更新判断をしてもよいし、複数のAF枠のうち中段のAF枠優先でなくともよい。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態によれば、AF枠が複数の場合でも、測距ゾーンを複数に分割すると共に選択した測距ゾーンをスキャンしてAF評価値を取得し、AF評価値に基づき合焦状態が得られたと判断した所でスキャンを終了することができる。これにより、AF速度の向上を図ることでAF時間を短縮したオートフォーカス装置及び該オートフォーカス装置を備えたデジタルカメラを実現することが可能となる。
【0056】
[第3の実施の形態]
本発明の第3の実施の形態では、本発明の焦点調節装置としてのオートフォーカス装置をズームレンズの他にフォーカスレンズを備えたデジタルカメラに適用した場合の制御について説明する。
【0057】
本実施の形態が上述した第1の実施の形態と相違する点は、光学系にズームレンズを備えた点である。本実施の形態のその他の要素は、上述した第1の実施の形態(図1)の対応するものと同一なので、説明を省略する。
【0058】
次に、上記の如く構成された本実施の形態のデジタルカメラの動作を図1、図8、図9を参照しながら詳細に説明する。
【0059】
AF時間に関わるスキャンポイント数は、測距範囲をスキャンするのに必要なフォーカスレンズ2の移動量と、測距範囲をどれくらい細かくスキャンするかによって決定される。一般的に、焦点距離が長くなるとフォーカスレンズ2の移動量は増加する。一方、測距範囲をどれくらい細かくスキャンするかは焦点深度に相当するFδ(FはFナンバー、δは許容錯乱円径)によって決まる。
【0060】
今、Fナンバーが焦点距離によって変わらないとすると、焦点距離が長くなるとフォーカスレンズ2の移動量が増加するため、その増加分だけAF時間が延びることになる。従って、各焦点距離によって、図8に示すように測距ゾーンの分割数を最適化することが望ましい。
【0061】
また、Fナンバーの変化に応じてスキャンする細かさを変えた場合には、Fナンバーによって測距ゾーンの分割の仕方を変えてもよい。例えば、F4とF5.6の二つの絞り値を持つデジタルカメラの場合、F4で撮影した場合に対してF5.6で撮影した場合の方が焦点深度が深いため、より荒くAF評価値を取得しても構わない。
【0062】
具体的には、F4での撮影時のフォーカスレンズ2のスキャンポイント内移動量に対して、F5.6での撮影時にはフォーカスレンズ2の移動量を倍に設定したとすると、測距範囲全領域に対するスキャンポイント数はF5.6での撮影時には約半分になる。従って、測距ゾーン毎のスキャンポイント数を常に一定に設定するとした場合、F4での撮影時の方がF5.6での撮影時に対して測距ゾーンの分割数が図9(A)、(B)に示すように倍になることになる。
【0063】
本例では測距ゾーンの分割数について説明したが、測距ゾーンの更新順序についても撮影条件によって変更してもよい。例えば、撮影する際の輝度レベルが高い場合には、戸外で撮影しているものと判断し、遠くのもの優先の考え方で遠い測距ゾーンから近い測距ゾーンに向かってスキャンする。また、撮影する際の輝度レベルが低い場合には、室内で撮影しているものと判断し、近いもの優先の考え方で近い測距ゾーンから遠い測距ゾーンに向かってスキャンする。
【0064】
また、測距ゾーンの更新順序を撮影モードによって変更してもよい。例えば風景を撮影するモードに設定された場合には、遠くの測距ゾーンを優先してスキャンするようにすればよい。また、人物を撮影するモードに設定された場合には、近い距離或いは人物が含まれることの多い測距ゾーンを優先的にスキャンするようにすればよい。また、ストロボ設定がされている場合には、人物を撮影するものと判断し、近い距離或いは人物が含まれることの多い測距ゾーンを優先的にスキャンするようにすればよい。
【0065】
以上説明したように、本実施の形態によれば、撮影時の焦点距離や絞り値に応じて測距ゾーンの分割数やスキャンポイント数や測距ゾーン更新順序を変更する。これにより、AF速度の向上を図ることでAF時間を短縮したオートフォーカス装置及び該オートフォーカス装置を備えたデジタルカメラを実現することが可能となる。
【0066】
[他の実施の形態]
また、本発明の目的は、以下の処理を実行することによって達成される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す処理である。
【0067】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施の形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード及び該プログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0068】
また、プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、次のものを用いることができる。例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、CD-RW、DVD-ROM、DVD-RAM、DVD-RW、DVD+RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等である。または、プログラムコードをネットワークを介してダウンロードしてもよい。
【0069】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、上記実施の形態の機能が実現される場合も本発明に含まれる。加えて、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0070】
更に、前述した実施形態の機能が以下の処理によって実現される場合も本発明に含まれる。即ち、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれる。その後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部または全部を行う場合である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るオートフォーカス装置を搭載した撮像装置としてのデジタルカメラの概略構成を示すブロック図である。
【図2】測距ゾーンを被写体距離に応じて複数に分割した例を示す図である。
【図3】測距ゾーンを分割した時のAF動作を示すフローチャートである。
【図4】測距ゾーン更新判断処理を示すフローチャートである。
【図5】各測距ゾーンの範囲とAF評価値の関係の例を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るオートフォーカス装置を搭載した撮像装置としてのデジタルカメラにおける9つのAF枠が設定された場合のAF枠位置を示す図である。
【図7】AF枠が複数存在する場合の測距ゾーン更新判断処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係るオートフォーカス装置を搭載した撮像装置としてのデジタルカメラにおける焦点距離と測距ゾーン分割数の関係の例を示す図である。
【図9】Fナンバーと測距ゾーン分割数の関係を示す図であり、(A)はF5.6の時の測距ゾーン分割例、(B)はF4の時の測距ゾーン分割例である。
【図10】被写体距離とAF評価値の関係の例を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
1 光学系
2 フォーカスレンズ(焦点調節用光学系)
3 撮像素子
12 測距ゾーン設定手段(分割手段)
14 AF評価値演算回路(評価信号取得手段)
17 フォーカスレンズ駆動回路
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焦点調節用光学系を所定範囲駆動させて焦点調節を行う焦点調節装置であって、
前記焦点調節用光学系を駆動させながら被写体への合焦状態を示す評価信号を取得する評価信号取得手段と、
前記評価信号を取得するために前記焦点調節用光学系を駆動させるスキャン範囲を複数に分割する分割手段と、
前記分割手段により複数に分割されたスキャン範囲の一のスキャン範囲で合焦位置の判断、および他のスキャン範囲に前記焦点調節用光学系を駆動させるか否かの判断を行う判断手段とを有し、
前記分割手段は、焦点距離が第1の場合には該第1の場合に比較して焦点距離が短い第2の場合よりも前記スキャン範囲の分割数を増やすことを特徴とする焦点調節装置。
【請求項2】
撮影の際の絞り値に応じて前記スキャン範囲の分割数を変更することを特徴とする請求項1記載の焦点調節装置。
【請求項3】
撮影の際の絞りを絞っているほど前記スキャン範囲の分割数を減らすことを特徴とする請求項2記載の焦点調節装置。
【請求項4】
撮影条件に応じてスキャンするスキャン範囲の順序を変更することを特徴とする請求項1又は2記載の焦点調節装置。
【請求項5】
撮影する際の輝度レベルに応じてスキャンするスキャン範囲の順序を変更することを特徴とする請求項4記載の焦点調節装置。
【請求項6】
風景撮影モードの際には遠い距離優先でスキャンするスキャン範囲の順序を設定することを特徴とする請求項4記載の焦点調節装置。
【請求項7】
人物撮影モードの際には近い距離優先でスキャンするスキャン範囲の順序を設定することを特徴とする請求項4記載の焦点調節装置。
【請求項8】
ストロボ設定の際には近い距離優先でスキャンするスキャン範囲の順序を設定することを特徴とする請求項4記載の焦点調節装置。
【請求項9】
焦点調節用光学系を所定範囲駆動させて焦点調節を行う焦点調節装置に適用されるコンピュータ読み取り可能なプログラムであって、
前記焦点調節用光学系を駆動させながら被写体への合焦状態を示す評価信号を取得する機能と、前記評価信号を取得するために焦点調節用光学系を駆動させるスキャン範囲を複数に分割する機能と、前記複数に分割されたスキャン範囲の一のスキャン範囲で合焦位置の判断、および他のスキャン範囲に前記焦点調節用光学系を駆動させるか否かの判断を行う機能と、焦点距離が第1の場合には該第1の場合に比較して焦点距離が短い第2の場合よりも前記スキャン範囲の分割数を増やす機能を、コンピュータに実現させるためのプログラム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2011-05-25 
出願番号 特願2006-230735(P2006-230735)
審決分類 P 1 41・ 852- Y (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 吉川 陽吾  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 樋口 信宏
橋本 直明
登録日 2010-04-23 
登録番号 特許第4500789号(P4500789)
発明の名称 焦点調節装置及びプログラム  
代理人 別役 重尚  
代理人 別役 重尚  

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