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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  B01D
管理番号 1238557
審判番号 無効2010-800049  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-03-18 
確定日 2011-05-16 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3760033号発明「加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 I.手続の経緯

出願 平成9年7月29日
(特願平9-218028号)
設定登録 平成18年1月13日
(特許第3760033号)
無効審判請求書 平成22年3月18日
審判事件答弁書 平成22年6月7日
訂正請求書 平成22年6月7日
弁駁書(請求人) 平成22年8月12日
通知書 平成22年10月14日(発送)
口頭審理陳述要領書(被請求人) 平成22年11月12日
口頭審理陳述要領書(請求人) 平成22年11月26日
口頭審理 平成22年12月10日
上申書(請求人) 平成22年12月17日
上申書(被請求人) 平成23年1月11日
審理終結通知 平成23年1月18日(発送)

II.本件特許発明

特許第3760033号の請求項1?5に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1?5」といい、これらを総称して「本件特許発明」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その【特許請求の範囲】の【請求項1】?【請求項5】に記載された次のとおりのものである。
「 【請求項1】 蒸気発生器から供給される水蒸気によりタービンを駆動して発電を行った後、水蒸気を復水器で冷却して復水となし、この復水を蒸気発生器に戻す加圧水型原子力発電所の2次系ラインの水処理装置であって、脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填してなり、蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する電気脱イオン装置と、該電気脱イオン装置により脱塩処理された水を蒸気発生器に還流するための還流路と、上記復水を蒸気発生器に戻す復水循環路に配設された復水脱塩装置と、上記復水が復水脱塩装置を通らずに蒸気発生器に還流されるようにするために復水循環路に設けられたバイパス路とを設けてなることを特徴とする加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置。
【請求項2】 電気脱イオン装置の前段に濾過装置を設けてなる請求項1記載の加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置。
【請求項3】 電気脱イオン装置の後段に、カチオン交換体及びアニオン交換体を使用してなるイオン交換式脱塩装置を設けてなる請求項1又は2記載の加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置。
【請求項4】 電気脱イオン装置の濃縮水の一部を、イオン交換式脱塩装置により脱塩処理された水に混入するようにした請求項3記載の加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置。
【請求項5】 ブローダウン水はpH9.2を超えるpH値を有するものである請求項1記載の加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置。」

III.請求人の主張および証拠方法の概要
III-1.審判請求書
請求人は、審判請求書において特許第3760033号の特許請求の範囲の請求項1、請求項2、請求項3及び請求項5に係る特許を無効とする、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求め、証拠方法として以下の証拠を申し出て、以下のとおり主張している。

III-1-1.無効理由1
本件特許発明1は、甲第1号証及び甲第3号証?甲第7号証又は甲第2号証及び甲第3号証?甲第7号証に記載された発明に基づいて、本件特許発明2は、甲第1号証及び甲第3号証?甲第9号証又は甲第2号証及び甲第3号証?甲第9号証に記載された発明に基づいて、本件特許発明3は、甲第1号証及び甲第3号証?甲第9号証又は甲第2号証及び甲第3号証?甲第9号証に記載された発明に基づいて、本件特許発明5は、甲第1号証及び甲第3号証?甲第7号証及び甲第10号証又は甲第2号証及び甲第3号証?甲第7号証及び甲第10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に該当するにもかかわらず看過されて特許されたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効である。

III-1-2証拠方法
甲第1号証:米国特許第3,976,541号明細書
甲第2号証:”TAIPOWER'S OPERATIONAL EXPERIENCE-WATER CHEMISTRY IN NUCLEAR POWER STATION”,Huei-Hsiung Hsu, MIchael M.H. Lin and Min-Kuang Chiang, 1988 JAIF International Conference on Water Chemistry in Nuclear Power Plants-Operational Experience and New Technologies for Management, Proceedings, Volume 1, April19-22, 1988, Tokyo, Japan Atomic Industrial Forum, Ministry of International Trade and Industry
甲第3号証:”STEAM GENERATOR BLOWDOWN PROCESSING USING MEMBRANE TECHNOLOGY”, M.ROOTHAM and R.BRYANT, Proceedings: Condensate Polishing and Water Purification in the Steam Cycle, June 1996
甲第4号証:”Application of Electrodeionization in Ultrapure Water Production: Performance and Theory ” BRIAN P. HERNON, R. HILDA ZANAPALIDOU, LI ZHANG, LINDA R. SIWAK, ERIK J. SCHOEPKE(IWC-94-47), OFFICIAL PROCEEDINGS THE INTERNATIONAL WATER CONFERENCE 55th ANNUAL MEETING, Ocotober 31-November 2, 1994, Engineers' Society of Western Pennsylvania
甲第5号証:http://www.entergy-nuclear.com/Global/print/Nuclear print.aspx
甲第6号証:http://www.FPL.com
甲第7号証:「日本におけるイオン交換技術の発展について」、清水博、J.ION EXCHANGE,Vol.4 No.2(1993)
甲第8号証:”Optimaizing the Performance of a Reverse Osmosis/Electrodeionization System” David C.Auerswald, OFFICIAL PROCEEDINGS THE INTERNATIONAL WATER CONFERENCE, 56TH ANNUAL MEETING, October 30-November 1, 1995, Engineers' Society of Western Pennsylvania
甲第9号証:特開平7-47364号公報
甲第10号証:”Water Chemistry for Qindhan Nuclear Power Plant”, Yu Shicheng, 1988 JAIF International Conference on Water Chemistry in Nuclear Power Plants-Operational Experience and New Technologies for Management, Proceedings, Volume 1, April 19-22, 1988, Tokyo, Japan Atomic Industrial Forum, Ministry of International Trade and Industry

III-1-3.甲号各証の記載事項について
III-1-3-1.甲第1号証(米国特許第3,976,541号明細書)
図1には、加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置が記載されており、その構成は下記のとおりである。
(1-A)「蒸気発生器(steam generator)12から供給される水蒸気によりタービン(turbine)22を駆動して発電を行った後、水蒸気を復水器(condenser)24で冷却して復水となし、この復水を蒸気発生器12に戻す加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置であって、」
(1-B’)「蒸気発生器12からのブローダウン水を脱塩処理するイオン交換装置(ion exchangers)88,90と、」
(1-C)「イオン交換装置88,90により脱塩処理された水を蒸気発生器に還流されるようにするために還流路(conduit)92と、」
(1-D)「復水を蒸気発生器12に戻す復水循環路に配設された復水脱塩装置(condensate demineralizer)38と」
(1-E)「復水が脱塩装置38を通らずに蒸気発生器12に還流されるようにするために復水循環路58に設けられたバイパス路(bypass line)34と、」
を設けてなる加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置
また、甲第1号証には、以下の記載がある。
「Downstream of the condensate demineralizers38 and downstream of the reentrance of the bypass line34 is a chemical injection means46. At this position volatile chemicals, such as ammonia and hedrazine, are injected into the feedwater flow stream. After the addition of appropriate chemicals, the condensate or feedwater passes through a low pressure feedwater heater system48, main feed pump54 and high pressure feedwater heater system56, before being delivered back to the steam generator12.」(訳:復水脱塩装置の下流及びバイパス34の再入口の下流には、薬液注入手段46がある。このポイントにて、アンモニア及びヒドラジンなどの揮発性薬液が給水フロー系にて注入される。適切な薬液の添加後、復水又は給水は、蒸気発生器12に戻される前に、低圧給水加熱装置48,主ポンプ54及び高圧給水加熱装置56を通過する。)(甲第1号証、第3欄4-13行)

III-1-3-2.甲第2号証
甲第2号証の図4には、MaanshanPWRの2次系ライン水処理装置が記載されており、その構成は下記のとおりである。
(1-A)蒸気発生器(S/G)から供給される水蒸気によりタービン(High Press.Turbine、Low Press.Turbine)を駆動して発電を行った後、水蒸気を復水器(condenser)で冷却して復水となし、この復水を蒸気発生器(S/G)に戻す加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置であって、
(1-B’)蒸気発生器(S/G)からのブローダウン水(S/G Blowdown)を脱塩処理する脱塩処理装置(Blow down demin.)と、
(1-C)脱塩装置により脱塩処理された水を蒸気発生器(S/G)に還流するための還流路(main condenserへの矢印)と、
(1-D)復水を蒸気発生器(S/G)に戻す復水循環路に配設された復水脱塩装置(condensate polisher)と、
(1-E)復水が復水脱塩装置(condensate polisher)を通らずに蒸気発生器(S/G)に還流されるようにするために復水循環路に設けられたバイパス路と、
を設けてなる加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置。
なお、図4からは以下の内容が読み取れる。
蒸気発生器(S/G)からの主蒸気(Main Steam)が、発電機(Generator)に接続された高圧タービン(High Press. Turbine)及び低圧タービン(Low Press. Turbine)を介して復水器(Condenser)に供給されていて、復水は復水ポンプ(Condensate Pump)によりグランドシール復水器(Grand Seal Condenser)を介して蒸気発生器に送水される。復水脱塩装置に平行してバイパス経路が設けられており、復水器から復水脱塩装置を介さずに蒸気発生器へ流れる経路が記載されている。復水脱塩装置の下流では、アンモニア(NH_(4)OH)やヒドラジン一水和物(N_(2)H_(4)H_(2)O)が復水に添加される。また、蒸気発生器からのブローダウン水(S/G Blowdown)は、フラッシュタンク(Flash Tank)及びフィルター(F)を介して、ブローダウン脱塩装置(Blowdown demin.)に供給され、更に、ブローダウン脱塩装置で処理された水が通常は復水器に送られる(main condenser(normal))。
「Units 5 and 6 of Maanshan NPS, the first pressurized water reactor of Taipower, declared commercial operation in July of 1984 and March of 1985, respectively. The flow diagrams of primary and secondary sides are shown in Figure 3 and 4.」(訳:Maanshan NPS のユニット5,6は、Taipowerにとって最初の加圧水型原子炉であり、それぞれ1984年7月と1985年3月に商用運転が宣言された。1次側及び2次側のフローダイアグラムを図3、4に示す。)(252頁右欄3?7行)
「With respect to secondary side, the fluctuation of water quality is considered to be more violent than that of primary side. However, the secondary side water quality can still be maintained, except that under the circumstances of sea water leakage or equipment malfunction, at fair good conditions most of the time due to the functioning of half flow condensate polisher and 3% feed water flow steam generator blow down. Recently, in order to strengthen the adaptability to the change that is caused by sea water lekage or unit start up, Maanshan NPS is proceeding to retrofit half flow condensate polisher to full flow condensate polisher.」(訳:2次側については、水質の変動は、1次側よりも激しいと考えられる。しかし、海水のリークや装置故障といった状況を除けば、2次側の水質は、半流量復水脱塩装置と供給水の3%にあたるブローダウンの機能により、ほとんどの時間とてもよい状態に保つことができる。最近、海水のリークや設備の始動による変化に対する適応能力を強化するために、半流量復水脱塩装置の全流量復水脱塩装置への改良を進めている。)(252頁右欄16?26行)
「The oprational problems of condensate polisher include resin loss and operating concept. A focus of quarrel is that when the appropriate opportunity is to apply condensate polisher. At abnormal conditions, such as start up or sea water intrusion, the condensate polisher is certainly needed to be applied. However, the following measures are adopted to operate polisher under normal water conditons.
1. With good and stable water quality, the condensate polisher is bypassed to avoid the breaktrough and fine resin leakage.
2. With gradual deterioration of water quality, the polisher is put in service.」(訳:復水脱塩装置の運転上の問題には、樹脂の目減りや運用概念がある。議論の焦点は、復水脱塩装置を使用する適切なタイミングはいつかということである。始動時や海水の進入といった通常ではない状況では、復水脱塩装置は確実に使用する必要がある。しかし、通常の水の状態においては、脱塩装置の運転には以下のような手段を採用することができる。
1.水質がよく安定している場合は、破過や微細な樹脂のリークを防ぐために復水脱塩装置はバイパスされる。
2.水質が徐々に劣化している場合は、復水脱塩装置の運転が開始される。)(253頁左欄6?右欄2行)

III-1-3-3.甲第3号証
甲第3号証には、下記記載がある。
(ア)「At the present time, ETA is being added at many PWR plants to elevate pH in the high prssure drains and other areas of elevated temperature/two-phase flow. The ETA concentration in steam generator blowdown at these plants nominally is around 7 ppm. Ammonia and hydrazine are also usually present in relatively high concentrations.」(訳:現在、高圧ドレインや高温/2層流のその他の領域におけるpHを上昇させるために、多くのPWRプラントにETAが添加されている。これらのプラントにおける蒸気発生器ブローダウン水中のETA濃度は、通常7ppm近辺である。アンモニア及びヒドラジンもまた、比較的高濃度で存在する)(42-4頁5?7行)
(イ)「Most of the blowdown processing systems currently in operation use non-regenerable ion exchange resins.」(訳:現在稼働しているほとんどのブローダウン水処理システムは、非再生型イオン交換樹脂を用いている。)(42-5頁1?2行)
(ウ)「The cation resin is replaced when ammonia break through. At the present time the concentrations of ammonia in blowdown is in the range of 4.5-5ppm, and a cation bed lasts for about 10 days.」(訳:カチオン樹脂はアンモニアが破過すると交換される。現在、ブローダウン水中のアンモニア濃度は4.5?5ppmの範囲にあり、カチオン床の耐久は10日間である。)(42-6頁6?9行)
(エ)「At last year's workshop, in Seattle, the comment was made that wider application of membrance technologies should be considered for water purification in PWR plants. Follow up discussions between Westinghouse, Ionics Incorporated, and Southern Nuclear(Georgia Power) led to the implementation of a pilot study at Vogtle Unit 1. The purpose of this study was to determine whether currently available membrance technology could be used to remove ammonia from steam generator blowdown, instead of relying on the consumption of cation resin. The test program at Vogtle began in August 1995, and has shown very encouraging results.」(訳:昨年のシアトルでのワークショップにおいて、PWRプラントにおける水質浄化に対する膜技術の幅広い応用が考えられるとコメントした。Westinghouse、Ionics Incorporated及びSouthern Nuclear(Georgia Power)の間での議論に基づき、Vogtle Unit1でパイロット研究を実施した。この研究の目的は、カチオン樹脂の消費に依存せずに、現行の膜技術が蒸気発生器ブローダウン水からアンモニアを除去するために使用できるか否かを決定することにあった。Vogtleでのテストプログラムは1995年8月に開始したが、非常に有効な結果を示している。)(42-8頁1?末行)
(オ)「The pilot test performed at Vogtle Unit1 showed that excellent removal efficiency for ammonia can be obtained using currently available membrane tenchnology. Ammonia removal effciency was around 99.8%, and silica removal around 95%. Cation resin replacement can be eliminated if membrane technology is used to remove ammonia prior to mixed bed polishing of blowdown.」(訳:Vogtle Unit1で行ったパイロットテストは、現行で有効な膜技術を用いて、アンモニアの優れた除去効率が得られることを示す。アンモニア除去効率は約99.8%であり、シリカ除去効率は約95%であった。ブローダウン水の混床式ポリッシャーに先行して、アンモニアを除去するために膜技術を用いるならば、カチオン樹脂交換を無くすことができる。)(42-17頁2?9行)
(カ)「パイロットブローダウン水アンモニア除去システムでの代表データ」(42-14頁)
(キ)「SIMPLIFIED SCHEMATIC OF STEAM GENERATOR BLOWDOWN PROCESSING SYSTEM」(訳:蒸気発生器ブローダウン水処理システムの概略図)
蒸気発生器(STEAM GENERATOR)からのブローダウン水は、熱交換器(HEAT EXCHANGER)で冷却された後、混床式脱塩装置(MIXED BED DEMINERALIZER)で脱塩処理後、復水系に送られる(TO CONDENSATE SYSTEM)(42-7頁)

III-1-3-4.甲第4号証
甲第4号証には、下記の記載がある。
(ク)「Ultrapure water is critical in a number of industrial applications, such as power generation.」(訳:超純水は、発電など多くの産業用途において重要である。)(400頁左欄2?3行)
(ケ)「Traditonally, ion exchange has been used to provide ultrapure water in these industries but membrane processes are becoming increasingly popular...as replacements for ion-exchange systems altogether. Membrane processes can provide very high levels of demineralization and offer the advantage of continuous operaton. Moreover, membrane processes are not as mechanically complex as ion-exchange systems, and they require no acid and caustic regeneration, nor waste neutralization.」(訳:伝統的に、これらの産業において超純水を提供するためにイオン交換が用いられてきているが、イオン交換システムに代わり、膜プロセスが次第にポピュラーになっている。膜プロセスは、非常に高いレベルの脱塩を提供することができ、連続運転の利点を呈する。さらに、膜プロセスはイオン交換システムのように機械的に複雑ではなく酸及びアルカリによる再生を要せず、廃棄物の中和も要しない。)(400頁左欄4?13行)
(コ)「In power plants, increased recognition of the effect of ultrapure water quality on system component life has resulted in demand for membrane systems which can render an even higher purity of water than mixed-bed deionization systems alone can achieve.」(訳:発電プラントにおいて、システム構成機器の寿命に対する超純水の効果が認められてきたことによって、混床式脱イオンシステム単独で達成できるよりもさらに高い純度の水にすることができる膜システムに対する需要が増している。)(400頁左欄16?21行)
(サ)「Such high levels of demineralization can be obtained using electrodeionization(EDI). EDI combines ion-exchange resins, ion-exchange membranes, and a direct(DC) electric field.」(訳:このような高いレベルの脱塩は、電気脱イオン装置(EDI)を用いてなされ得る。EDIは、イオン交換樹脂とイオン交換膜と直流電界を組み合わせたものである。)(400頁左欄22?25行)
(シ)「Four of these EDI installations are located at electric generation plants....The electric power plants are Grand Gulf Nuclear Station(GGNS),Arkansas Nuclear One(ANO), Florida Power & Light Turkey Point Power Station(TPPS),and the Riverbend Nuclear Station(RBNS). In the power plants, the ultrapure water is used for makeup to high-pressure boilers and for plant usage.」(訳:これらのEDI装置のうち4つは、発電プラントに設けられている。発電プラントは、 Grand Gulf Nuclear Station(GGNS),Arkansas Power Station(ANO), Florida Power & Light Turkey Point Power Station(TPPS)及びthe Riverbend Nuclear Station(RBNS)である。発電プラントにおいて、超純水は、高圧ボイラーへの補給水及びプラント利用水して用いられている。)(400頁左欄41行?右欄7行)
(ス)「The EDI process pretreatment includes filtration and partial demineralization by RO. RO removes many of the contaminants which could harm an EDI system, such as organics, which can foul anion and cation ion-exchange resins, and particulate matter, which would be difficult to remove from an EDI unit.」(訳:EDIプロセス前処理は、ROによる濾過及び部分脱塩を含む。ROは、アニオン交換樹脂及びカチオン樹脂に付着する有機物やEDIユニットから取り除くことが困難な粒子状物質などのEDIシステムに有害な汚染物質の多くを除去する。)(400頁右欄12?18行)

III-1-3-5.甲第5号証
甲第5号証には、甲第4号証に記載されているArkansas Nuclear One(ANO)のデータシートが記載されており、加圧水型原子炉(pressurized Water Reactor)であること、および、商用運転の開始(Commercial Operation Date)がUnit1について1974年12月、Unit2について1980年3月で、本件出願前より運転されていたことが記載されている。

III-1-3-6.甲第6号証
甲第6号証には、甲第4号証に記載されているFlorida Power&Light Turkey Point Power Station(TPPS)のデータシートが記載されており、加圧水型原子炉(pressurized Water Reactor)であること、および、商用運転の開始(commercial operation started)がUnit3について1973年9月7日で、本件出願前より運転されていたことが記載されている。

III-1-3-7.甲第7号証
甲第7号証には、下記記載がある。
(タ)「電気透析式連続イオン交換脱イオン装置は、アニオン交換膜とカチオン交換膜で構成する脱イオン室に、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂の混合樹脂を充填したもので、電気透析式に陽極と陰極に直接電流を通電しながら脱イオン室(希釈室)に給水を導入して脱イオン水を採取し、給水中の不純物イオンは濃縮して、濃縮室から給水の一部で流し出すことを基本とした、非再生型の連続式脱イオン装置である。」(104頁右欄3?11行)
(セ)「PWR型原子力発電所の復水は、安全管理のために水質基準が年々極めて厳しくなった」(102頁右欄19?20行)
(ソ)「処理水に対する厳しい要求水質をすべてクリアーすることに成功した。このことは、PWRの長期運転下におけるSG伝熱管やタービン材などの健全性を高め、プラントの信頼性向上に大きく寄与した。」(104頁左欄6?10行)
(チ)「電気透析式連続イオン交換脱イオン装置の開発状況を述べたが、この方式の脱イオン装置は、前処理としてRO装置を置くことが前提となるので、10?17MΩ・cmの高品位純水を再生しないで採取するのに向いている。しかしそれ以上の超純水とするには、必ずイオン交換樹脂のカートリッジ型混床式ポリシャーで後処理することが必要である。しかし、いずれにしても、イオン交換体を再生する必要はないので、これまでのように大量の再生排水の処理が不要となり、純水採取運転が連続的に簡単かつ容易に出来る利点がある。」(108頁左欄9行?109頁左欄2行)

III-1-3-8.甲第8号証
甲第8号証には、原子力発電所における水処理システムにおいて、連続電気式脱イオン装置(CDEI)の前段に濾過装置(Filter)を設ける構成が記載されている。(第18頁 Figure 1)

III-1-3-9.甲第9号証
甲第9号証には、以下の記載がある。
(ツ)「 少なくとも膜除濁装置を有し供給される原水を処理して前処理水とする前処理装置と、少なくとも逆浸透膜装置と電気式脱イオン水製造装置とを有し前記前処理水を処理して一次純水とする一次純水製造装置と・・・からなることを特徴とする超純水製造装置。」(【特許請求の範囲】)
(テ)「即ち、上水、井水等の原水2は、まず活性炭濾過器6に送られ、ここで原水中に含まれる残留塩素、有機物等が除去される。次いで、濾過体として例えば中空糸膜モジュールを用いる膜除濁装置8で処理し、濁度成分の除去が行なわれ、前処理水10となる。ここで膜除濁装置8は精密濾過膜(MF膜)あるいは限外濾過膜(UF膜)等の膜を用いて濾過を行なうもので、膜の材質としてはポリスルホン、ポリエチレン、ポリエーテルスルホン、ポリプロピレン等がある」(段落【0011】)
(ト)「ここで電気式脱イオン水製造装置は脱塩及び微粒子の除去を目的とし、アニオン交換膜とカチオン交換膜とで形成される間隙にカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを充填して脱塩室とし、当該脱塩室内に被処理水を通過させると共に、前記両イオン交換膜を介して被処理水の流れに対して直角方向に直流電流を作用させて両イオン交換膜の外側に流れている濃縮水中に被処理水中のイオンを電気的に排除しながら脱イオン水を製造するもので、脱塩室内にイオン交換樹脂等のイオン交換体を充填しているにもかかわらず酸、アルカリ等の再生薬品を一切使用せずに脱イオン水を製造することができるものである。」(段落【0016】)
(ナ)「・・・一次純水20は、次いで二次純水製造装置22によって更に精製処理がなされる。・・・イオン交換樹脂を充填した非再生型イオン交換装置26に送られ、微量溶解塩類の脱塩がなされ・・・」(段落【0019】)

III-1-3-10.甲第10号証
甲第10号証には、以下の記載がある。
(ニ)「Qinshan Nuclear Power Plant is the first 300MW pressurized water reactor designed and constructed by ourself.」(訳:Qinshan原子力発電所は、我々が設計し建設した最初の300MW加圧水型原子炉である。)(65頁左欄2?4行)
(ヌ)「Ammonium hydroxide is added to the system for feedwater pH control. Hydrazine is added to minimize feedwater oxygen content prior to entry into steam generator.」(訳:水酸化アンモニウムは、供給水のpH制御のためにシステムに添加される。蒸気発生器に流入する前に、ヒドラジンが添加されて供給水の酸素含有量を最小にする。)(66頁右欄24?28行)
(ネ)「Water chemistry specification for steam generator blowdown and feedwater during normal power operation is given in Table 2. The blowdown pH, cation conductivity and chloride concentration of the steam generator will be controlled strictly.」(訳:通常の発電工程中の蒸気発生器ブローダウン水および供給水の化学的性質を表2に示す。ブローダウン水のpH、カチオン伝導率及び蒸気発生器の塩素濃度は厳しく制御される。)(66頁右欄49?54行)

III-1-4.請求人の本件特許発明1と甲第1号証及び甲第3号証?甲第7号証記載内容との対比
III-1-4-1.本件特許発明1と甲第1号証図1に示される装置との一致点
A)蒸気発生器から供給される水蒸気によりタービンを駆動して発電を行った後、水蒸気を復水で冷却して復水となし、この復水を蒸気発生器に戻す加圧水型原子力発電所の2次系ラインの水処理装置であって、
C)(イオン交換装置により)脱塩処理された水を蒸気発生器に還流するための還流路と
D)上記復水を蒸気発生器に戻す復水循環路に配設された復水脱塩装置と、
E)上記復水が復水脱塩装置を通らずに蒸気発生器に還流されるようにするために復水循環路に設けられたバイパス路と
を設けてなることを特徴とする加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置。

III-1-4-2.相違点
本件特許発明1が「脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填してなり、蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する電気脱イオン装置」を使用しているのに対して、甲第1号証図1に記載の装置では、イオン交換装置と記載されていて、電気脱イオン装置であるか否か明記されていない点で相違する。

III-1-4-3.相違点についての考察
甲第3号証には、甲第1号証図1とほぼ同じ構成の加圧水型原子力発電所における蒸気発生器からのブローダウン水の処理システムにおいて、イオン交換樹脂に代えて膜技術を用いて処理したところ、きわめて優れたアンモニア除去効率及びシリカ除去効率が得られたことが記載されている。甲第3号証には、「膜技術」が「脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填してなる電気脱イオン装置」であるか否かは明記されていないが、甲第4号証?甲第6号証には、加圧水型原子力発電所における純水製造のために、「膜技術」としてイオン交換樹脂とイオン交換膜と直流電界とを組み合わせた電気脱イオン装置(EDI)が実際に用いられていることが記載されている。してみると、甲第1号証図1の蒸気発生器からのブローダウン水処理に用いるイオン交換体に代えて、甲第3号証に記載の膜技術として甲第4号証?甲第6号証に記載の膜技術である電気脱イオン装置を用いることは、本件出願前の当業者にとって極めて容易なことであったといえる。
また、電気脱イオン装置として、脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填する構成は、甲第7号証に記載のように、本件出願前に周知であった。
したがって、甲第1号証図1に記載の装置において、蒸気発生器からのブローダウン水の脱塩処理のためのイオン交換装置として、脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填してなる電気脱イオン装置を用いることに何ら困難性はない。また、電気脱イオン装置を用いても、ブローダウン水からアンモニウムイオンを効率よく除去することができるから、その効果も予測範囲を逸脱するものではない。
なお、本件明細書には、「定常時は、復水はバイパス管を経由する。・・・復水は復水脱塩装置に流れることはなく」(本件明細書段落【0029】)と記載されているが、請求項1にはそのような限定はなく、バイパス管と復水脱塩装置とがともに復水循環路に設けられていると規定されているだけであるから、バイパス管がどのように用いられ、復水がどのような経路で流れるかは本件特許発明1の構成上考慮すべき事項とはならない。
よって、本件特許発明1は、甲第1号証及び甲第3号証?甲第7号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、無効とすべきである。

III-1-5.請求人の本件特許発明1と甲第2号証及び甲第3号証?甲第7号証記載内容との対比

III-1-5-1.本件特許発明1と甲第2号証図4に示される装置との一致点
A)蒸気発生器から供給される水蒸気によりタービンを駆動して発電を行った後、水蒸気を復水で冷却して復水となし、この復水を蒸気発生器に戻す加圧水型原子力発電所の2次系ラインの水処理装置であって、
C)(脱塩装置により)脱塩処理された水を蒸気発生器に還流するための還流路と
D)上記復水を蒸気発生器に戻す復水循環路に配設された復水脱塩装置と、
E)上記復水が復水脱塩装置を通らずに蒸気発生器に還流されるようにするために復水循環路に設けられたバイパス路と
を設けてなることを特徴とする加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置。

III-1-5-2.相違点
本件特許発明1が「脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填してなり、蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する電気脱イオン装置」を使用しているのに対して、甲第2号証図4に記載の装置では、脱塩装置と記載されていて、電気脱イオン装置であるか否か明記されていない点で相違する。

III-1-5-3.相違点についての考察
しかし、甲第3号証には、甲第2号証図4とほぼ同じ構成の加圧水型原子力発電所における蒸気発生器からのブローダウン水の処理システムにおいて、イオン交換樹脂に代えて膜技術を用いて処理したところ、きわめて優れたアンモニア除去効率及びシリカ除去効率が得られたことが記載されている。甲第3号証には、「膜技術」が「脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填してなる電気脱イオン装置」であるか否かは明記されていないが、甲第4号証?甲第6号証には、加圧水型原子力発電所における純水製造のために、「膜技術」としてイオン交換樹脂とイオン交換膜と直流電界とを組み合わせた電気脱イオン装置(EDI)が実際に用いられていることが記載されている。してみると、甲第2号証図4の蒸気発生器からのブローダウン水処理に用いる脱塩装置として、甲第3号証に記載の膜技術及び甲第4号証?甲第6号証に記載の膜技術である電気脱イオン装置を用いることは、本件出願前の当業者にとって極めて容易なことであったといえる。
また、電気脱イオン装置として、脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填する構成は、甲第7号証に記載のように、本件出願前に周知であった。
したがって、甲第2号証図4に記載の装置において、蒸気発生器からのブローダウン水の脱塩処理のための脱塩装置として、脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填してなる電気脱イオン装置を用いることに何ら困難性はない。また、電気脱イオン装置を用いても、ブローダウン水からアンモニウムイオンを効率よく除去することができるから、その効果も予測範囲を逸脱するものではない。
なお、本件明細書には、「定常時は、復水はバイパス管を経由する。・・・復水は復水脱塩装置に流れることはなく」(本件明細書段落【0029】)と記載されているが、請求項1にはそのような限定はなく、バイパス管と復水脱塩装置とがともに復水循環路に設けられていると規定されているだけであるから、バイパス管がどのように用いられ、復水がどのような経路で流れるかは本件特許発明1の構成上考慮すべき事項とはならない。
よって、本件特許発明1は、甲第2号証及び甲第3号証?甲第7号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、無効とすべきである。

III-1-6.本件特許発明2と甲第1号証?甲第9号証記載内容との対比
本件特許発明2は、本件特許発明1の構成要件(A)?(E)に加えて、
F)電気脱イオン装置の前段に濾過装置を設けてなることを特徴とする。
本件特許発明2の構成要件のうち(A)、(C)?(E)を具備する装置が甲第1号証又は甲第2号証に記載されていること、及び構成要件(B)の電気脱イオン装置は、甲第3号証?甲第7号証の記載に基づいて当業者が甲第1号証に記載のイオン交換装置又は甲第2号証に記載の脱塩装置と極めて容易に交換し得ることはIII-1-4.及びIII-1-5に記載のとおりである。甲第8号証には、原子力発電所における水処理システムの連続脱イオン装置の前段に濾過装置が設けられていることが記載されている。甲第9号証には、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂を充填した脱塩室を有する電気式脱イオン装置の前段にMF膜やUF膜などの膜除濁装置を設ける純水製造装置が記載されている。甲第8号証及び甲第9号証はいずれも電気式脱イオン装置に導入する被処理水から不純物を除去することを目的として、電気式脱イオン装置の前段に膜濾過装置を設けることを開示する。甲第1号証に記載のイオン交換装置又は甲第2号証に記載の脱塩装置に代えて甲第4号証?甲第9号証記載の濾過装置を設けることに、何ら困難性がない。よって、本件特許発明2の構成要件(A)?(F)は甲第1号証?甲第9号証に記載されている。
したがって、本件特許発明2は、甲第1号証又は甲第2号証及び甲第3号証?甲第9号証の記載に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定に該当し、無効とすべきである。

III-1-7.本件特許発明3と甲第1号証?甲第9号証記載内容との対比
本件特許発明3は、本件特許発明1の構成要件(A)?(E)又は本件特許発明2の構成要件(A)?(F)に加えて、
G)電気脱イオン装置の後段に、カチオン交換体及びアニオン交換体を使用してなるイオン交換脱イオン装置を設けてなることを特徴とする。
本件特許発明3の構成要件のうち(A)、(C)?(E)を具備する装置が甲第1号証又は甲第2号証に記載されていること、及び構成要件(B)の電気脱イオン装置は、甲第3号証?甲第7号証の記載に基づいて当業者が甲第1号証に記載の脱イオン交換装置又は甲第2号証に記載の脱塩装置と極めて容易に交換し得ることはIII-1-4.及びIII-1-5に記載のとおりである。また、構成要件(F)が甲第8号証及び甲第9号証に記載されていることは、III-6.に記載のとおりである。
さらに、甲第7号証には、より高純度の純水を得るために、電気式脱イオン装置に加えて、イオン交換樹脂のカートリッジ型混床式ポリッシャーで後処理することが必要であることが記載されている。また、甲第9号証には、電気式脱イオン水製造装置の後段にイオン交換樹脂を充填した非再生型イオン交換装置を設けることが記載されてい当業者が、電気式脱イオン水製造装置の処理水の純度を高めるために、甲第7号証及び甲第9号証に記載のように、電気式脱イオン水製造装置の後段にイオン交換式脱塩装置を設けることに、何ら困難性はない。
また、甲第3号証には、「ブローダウン水の混床式ポリッシャーの前にアンモニアを除去するために膜技術を用いるならば、カチオン樹脂交換を無くすことができる。」と記載されているから、膜技術を用いた脱塩装置の後段に混床脱塩装置を設けること(もしくは、膜技術を用いた脱塩装置を混床式脱塩装置の前段に設けること)が示唆されているといえる。そして、混床式脱塩装置がアニオン交換体及びカチオン交換体の両者の混合床を使用するイオン交換式脱塩装置であることは当業者に周知であるから、甲第3号証からも本件特許発明3の構成要件は容易想到である。
したがって、本件特許発明3は、甲第1号証又は甲第2号証及び甲第3号証?甲第9号証の記載に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定に該当し、無効とすべきである。

III-1-8.本件特許発明5と甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証?甲第7号証、甲第10号証記載内容との対比
本件特許発明5は、本件特許発明1の構成要件(A)?(E)に加えて
I)ブローダウン水はpH9.2を超えるpH値を有するものであることを特徴とする。
本件特許発明5の構成要件のうち(A)、(C)?(E)を具備する装置が甲第1号証又は甲第2号証に記載されていること、及び構成要件(B)の電気脱イオン装置は、甲第3号証?甲第7号証の記載に基づいて当業者が甲第1号証に記載の脱イオン交換装置又は甲第2号証に記載の脱塩装置と極めて容易に交換し得ることはIII-4.及びIII-5に記載のとおりである。
甲第1号証には、ブローダウン水のpHについては具体的な数値は記載されていないものの、蒸気発生器に導入される水には、アンモニア及びヒドラジンなどの化学物質が添加されることが記載されている。また、甲第3号証にも、蒸気発生器からのブローダウン水中にアンモニア及びヒドラジンが比較的高濃度で存在すること、及びブローダウン水中のアンモニア濃度が4.5?5ppmであることが記載されている。ところで、本件明細書の記載によれば、アンモニアはpH調整剤として蒸気発生器に導入される水に添加することによりブローダウン水のpHが9.2を超えることになるのであるから、甲第1号証においても蒸気発生器に導入される水にアンモニアを添加すれば同等のpHとなることは当業者には容易に理解されることである。
また、甲第10号証には、加圧水型原子力発電所の蒸気発生器からのブローダウン水中のアンモニア濃度が2.5ppm以下の場合にpHが8.5?9.5であること、供給水中のアンモニア濃度が5.0ppm以下の場合にpHが9.3?9.6であることが記載されている。してみれば、甲第3号証に記載されているブローダウン水中のアンモニア濃度が4.5?5ppmの場合にはpHが9.3?9.6程度になることは当業者が容易に理解されることである。
したがって、本件特許発明5は、甲第1号証又は甲第2号証及び甲第3号証?甲第7号証、甲第10号証の記載に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定に該当し、無効とすべきである。

III-1-9.むすび
本件特許発明1は、甲第1号証及び甲第3号証?甲第7号証又は甲第2号証及び甲第3号証?甲第7号証に記載された発明に基づいて、本件特許発明2は、甲第1号証及び甲第3号証?甲第9号証又は甲第2号証及び甲第3号証?甲第9号証に記載された発明に基づいて、本件特許発明3は、甲第1号証及び甲第3号証?甲第9号証又は甲第2号証及び甲第3号証?甲第9号証に記載された発明に基づいて、本件特許発明5は、甲第1号証及び甲第3号証?甲第7号証及び甲第10号証又は甲第2号証及び甲第3号証?甲第7号証及び甲第10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に該当するにもかかわらず看過された特許されたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効である。

III-2.弁駁書
平成22年6月7日付け訂正請求書による請求項1に対する訂正が認められるべきでないので、訂正前の本件特許発明は、審判請求書記載の理由により、無効とされるべきであり、訂正が認められるとしても、同訂正請求書により訂正された、本件特許の特許請求の範囲の請求項1、2、3及び5(以下、訂正後の請求項1、2、3及び5に係る発明を、それぞれ「本件訂正発明1」、「本件訂正発明2」、「本件訂正発明3」及び「本件訂正発明5」といい、まとめて「本件訂正発明」という。)は、何れも特許法第29条第2項の無効理由を有しており、無効とされるべきである。
なお、弁駁書において主張された本件訂正発明1に対する特許法第36条第6項第1号及び同法同条第4項第1号の無効理由は、新たな無効理由の根拠法条の追加に該当し、審判請求時の請求書に記載した「特許を無効にする根拠となる事実」に当該異なる根拠法条の要件を充足する主要事実を追加することになるから、請求書の要旨を変更する補正に該当する。そして、当該補正は審理遅延のおそれがないことが明らかであるとはいえないから、当該無効理由の根拠法条を追加する補正は、特許法第131条の2第2項第2号柱書きの要件を満たすものとすることができない、として不許可となった(第1回口頭審理調書)。

III-2-1.本件訂正発明1
III-2-1-1.本件訂正発明1と甲1号証に記載の発明の対比
本件訂正発明1と甲1号証に記載の発明(以下、「甲1発明」という。)とは、以下の点で相違する。
III-2-1-1-1.相違点1-1-1
本件訂正発明1は、脱イオン装置として「脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填してなり、蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する電気脱イオン装置」を使用しているのに対し、甲1発明は、電気脱イオン装置を特定していない点。
III-2-1-1-2.相違点1-1-2
本件訂正発明1では、「上記蒸気発生器から上記還流路の上記復水循環路とを連結する部分までの間において、上記ブローダウン水を脱塩処理する装置が上記電気脱イオン装置しか設けられていない」のに対し、甲1発明には、係る限定がない点。
III-2-1-1-3.相違点1-1-1について
本件出願時において、電気脱イオン装置は、脱イオン装置の一種として既に周知であった(甲第7号証、甲第11号証ないし甲第15号証)。
甲第7号証には、1980年代のイオン交換技術のトピックとして、PWRの復水脱塩装置にイオン交換樹脂を用いた装置が採用されたことが記載されている。その直後に、1990年代のトピックとして「電気透析式連続イオン交換脱イオン装置(注:電気脱イオン装置にあたる。)の開発」が記載されている。つまり、電気脱イオン装置が脱イオン装置の新たなタイプとして登場したことが記載されている。
しかも、「1イオン交換樹脂の再生が不要」、「2 再生処理設備が不要」、「3日常のメンテナンスが不要」、「4水質の変動に対応が不要」、「5設備がコンパクトになる」などの従来使用されていたイオン交換樹脂充填式の脱イオン交換装置の欠点を改良した特徴があることも記載されている。
これらの記載に照らし、当業者が、電気脱イオン装置を従来の脱イオン装置の用途に使用する十分な動機付けがある。しかも、従前のイオン交換技術の用途として、甲第7号証には、電気脱イオン装置の説明の直前に、PWRの復水脱塩装置の用途が記載されている。したがって、同じPWRにおいて、復水脱イオン装置に戻されるブローダウン水の脱イオン装置として、電気脱イオン装置を適用することは、当業者であれば容易に想到し得る事項である。
III-2-1-1-4.相違点1-1-2について
甲1発明の脱イオン装置としては電気脱イオン装置を使用するに際し、前段のRO装置を設けるか否かは、原水であるブローダウン水の水質次第であり、後段の混床式ポリッシャーを設けるか否かは、脱塩処理後の水に求められる水質基準次第である。
したがって、甲1発明の脱イオン装置として電気脱イオン装置を適用するにあたり、RO装置及び混床式ポリッシャーなしで電気脱イオン装置を単独で使用することは、技術常識に照らし、当業者が容易に想到し得る事項である。
III-2-1-1-5.小括
本件訂正発明1は、甲1発明、甲第7号証に記載の技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであり、特許法第29条第2項規定の進歩性を欠く。

III-2-1-2.本件訂正発明1と甲2号証に記載の発明の対比
本件訂正発明1と甲2号証に記載の発明(以下、「甲2発明」という。)とは、以下の点で相違する。
III-2-1-2-1.相違点1-2-1
本件訂正発明1は、脱イオン装置として「脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填してなり、蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する電気脱イオン装置」を使用しているのに対し、甲2発明は、電気脱イオン装置を特定していない点。
III-2-1-2-2.相違点1-2-2
本件訂正発明1では、「上記蒸気発生器から上記還流路の上記復水循環路とを連結する部分までの間において、上記ブローダウン水を脱塩処理する装置が上記電気脱イオン装置しか設けられていない」のに対し、甲2発明には、係る限定がない点。
III-2-1-2-3.相違点1-2-1及び1-2-2について
相違点1-2-1及び1-2-2は、相違点1-1-1及び1-1-2と同じである。したがって、同様の理由により、本件訂正発明1は、甲2発明、甲第7号証に記載の技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであり、特許法第29条第2項規定の進歩性を欠く。
III-2-1-2-4.小括
本件訂正発明1は、特許法第123条第1項第2号及び同法第29条第2項無効理由を有しているから、無効とされるべきである。

III-2-2.本件訂正発明2
請求項2自体は、訂正請求書により訂正されていない。しかし、請求項2は、請求項1の従属項であり、その付加された構成要件を当業者が容易に想到し得ることは、既に述べたとおりである。
したがって、本件訂正発明2は、甲第1号証又は甲第2号証及び甲第7号証、甲第8号証及び甲第9号証の記載に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項規定の進歩性を欠く。

III-2-3.本件訂正発明3
III-2-3-1.本件訂正発明3と甲1発明の対比
本件訂正発明3と甲1発明とは、以下の点で相違する。
III-2-3-1-1.相違点3-1-1
本件訂正発明3は、ブローダウン水の脱イオン装置として「脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填してなり、蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する電気脱イオン装置」を使用しているのに対し、甲1発明は、電気脱イオン装置を特定していない点。
III-2-3-1-2.相違点3-1-3
本件訂正発明3では、バイパス路が「切換えバルブを介して」設けられているのに対し、甲1発明では、復水循環路が復水脱塩装置38とバイパス路34とに分岐した後、それぞれに調整バルブ36及び32が設けられている点。
III-2-3-1-3.相違点3-1-4
本件訂正発明3では、「上記還流路は、上記復水循環路における上記切換えバルブと上記復水脱塩装置との間に連結され」ているのに対し、甲1発明では、還流路が復水脱塩装置38とバイパス路34との分岐点の上流側に連結されている点。
III-2-3-1-4.相違点3-1-5
ブローダウン水が脱塩装置で処理された後、復水循環路の復水脱塩装置でさらに処理されるところ、その復水脱塩装置が、本件訂正発明3では、「カチオン交換体及びアニオン交換体を使用してなるイオン交換式脱塩装置」に限定されているのに対し、甲1発明では、かかる限定がない点。
III-2-3-2-1.相違点3-1-1について
本件訂正発明1のIII-2-1-1-1.相違点1-1-1についてで記載したとおり、当業者は、ブローダウン水の脱イオン装置として、「脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填して成り、蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する電気脱イオン装置」を採用すること容易に着想し得る。
III-2-3-2-2.相違点3-1-3について
甲1発明では、復水脱塩装置38及びバイパス路34の各々に調整バルブが設置されている。調整バルブにより、復水が復水脱塩装置38を通過するか、バイパス路34で迂回するか選択できる。
それに対し、本件訂正発明3は、復水脱塩装置38とバイパス路34との分岐点に切換バルブを設置し、復水が復水脱塩装置38を通過するかバイパス路34で迂回するかを選択できるようにしている。しかし、切換えバルブは、周知慣用の配管要素にすぎない。
したがって、復水脱塩装置38及びバイパス路34の各々に調整バルブを設置する構成に代え、切換えバルブを設置し、相違点3-1-3を解消することは、当業者が容易に想到し得る事項である。
III-2-3-2-3.相違点3-1-4について
脱塩処理がされたブローダウン水をどの位置で復水循環路に戻すのかは、設計事項にすぎない。
ブローダウン水を脱塩処理の後に復水循環路に戻す位置を、復水脱塩装置とバイパス路の分岐点より上流側とする場合、(i)復水脱塩装置で重ねて脱塩処理を施すか、(ii)バイパス路を通過させることにより、復水脱塩装置での脱塩処理を省略するかを選択できる。
それに対し、連結位置を上記分岐点と復水脱塩装置との間とする場合、必ず、すなわち、復水脱塩装置を通過するため、ブローダウン水の脱塩処理に万全を期すことができるという程度の利点があるにすぎない。係る連結位置の選択に格別な技術的意義はなく、連結位置の影響は、当業者でなくとも、復水循環路の構造から当然に理解できる。
したがって、ブローダウン水の還流路を切換えバルブと復水脱塩装置との間に連結することは、当業者が容易に想到し得る事項である。
III-2-3-2-4.相違点3-1-5について
復水脱塩装置を「カチオン交換体及びアニオン交換体を使用してなるイオン交換式脱塩装置」とすることは、当然の技術であり、相違点3-1-5は、実質的な相違点とはいえない。
III-2-3-2-5.小括
本件訂正発明3は、甲1発明、甲第7号証に記載の技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであり、特許法第29条第2項規定の進歩性を欠く。
III-2-3-3.本件訂正発明3と甲2発明の対比
本件訂正発明3と甲2発明とは、以下の点で相違する。
III-2-3-3-1.相違点3-2-1
本件訂正発明3は、ブローダウン水の脱イオン装置として「脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填してなり、蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する電気脱イオン装置」を使用しているのに対し、甲2発明は、電気脱イオン装置を特定していない点。
III-2-3-3-2.相違点3-2-3
本件訂正発明3では、バイパス路が「切換えバルブを介して」設けられているのに対し、甲2発明では、復水を復水脱塩装置を通過させる場合とバイパスさせる場合をどのようにして切換えるのか、明示されていない点。
III-2-3-3-3.相違点3-2-4
本件訂正発明3では、「上記還流路は、上記復水循環路における上記切換えバルブと上記復水脱塩装置との間に連結され」ているのに対し、甲2発明では、還流路が復水器に連結されている点。
III-2-3-3-4.相違点3-2-5
ブローダウン水が脱塩装置で処理された後、復水循環路の復水脱塩装置でさらに処理されるところ、その復水脱塩装置が、本件訂正発明3では、「カチオン交換体及びアニオン交換体を使用してなるイオン交換式脱塩装置」に限定されているのに対し、甲2発明では、かかる限定がない点。
III-2-3-4-1.相違点3-2-1について
本件訂正発明1のIII-2-1-1-1.相違点1-1-1について、において記載したとおり、当業者は、ブローダウン水の脱イオン装置として、「脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填して成り、蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する電気脱イオン装置」を採用すること容易に着想し得る。
III-2-3-4-2.相違点3-2-3について
甲2発明では、復水を復水脱塩装置を通過させる場合とバイパスさせる場合をどのようにして切換えるか、明示されていない。
しかし、甲第2号証には、「議論の焦点は、復水脱塩装置を使用する適切なタイミングはいつかということである。始動時や海水の進入といった通常ではない状況では、復水脱塩装置は確実に使用する必要がある。しかし、通常水の状態においては、脱塩装置の運転には以下のような手段を採用することができる。
1.水質がよく安定している場合は、破過や微細な樹脂のリークを防ぐために復水脱塩装置はバイパスされる。
2.水質が徐々に劣化している場合は、復水脱塩装置の運転が開始される」と記載され(甲第2号証(1-E))、甲2発明の装置が復水脱塩装置とバイパス路とを切り換える手段を有していることは明らかである。
そして、切換えバルブは、周知慣用の配管要素であるから、水脱塩装置とバイパス路との分岐点に切換えバルブを設置し、相違点2-3を解消することは、当業者が容易に想到し得る事項である。
III-2-3-4-3.相違点3-2-4について
本件訂正発明3と甲1発明との相違点1-1-4について詳述したとおり、ブローダウン水の還流路を切換バルブと復水脱塩装置との間に連結することは、当業者が容易に想到し得る事項である。
III-2-3-4-4.相違点3-2-5について
本件訂正発明3と甲1発明との相違点1-1-5で詳述したとおり、復水脱塩装置を「カチオン交換体及びアニオン交換体を使用してなるイオン交換式脱塩装置」とすることは、当然の技術である。
しかも甲第2号証には、Condensate Polisherの問題点として「resin loss(樹脂の目減り)」が挙げられている。したがって、甲第2号証に明示の記載はないものの、甲2発明のCondensate Polisherも「カチオン交換体及びアニオン交換体を使用してなるイオン交換脱塩装置」であると推認される。
したがって、相違点2-5は、実質的な相違点とはいえない。
III-2-3-5.小括
本件訂正発明3は、甲2発明、甲第7号証に記載の技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであり、特許法第29条第2項規定の進歩性を欠く。

III-2-4.本件訂正発明5
請求項5自体は、訂正請求書によって訂正されていない。しかし、請求項5は、請求項1の従属項であるため、請求項1の訂正の影響を受けている。訂正後の請求項に係る本件訂正発明5は、本件訂正発明1に「ブローダウン水は、pH9.2を超えるpHを有するものである」という構成要件が追加されたものでる。
当業者が係る構成要件に由来する相違点を容易に解消し得ることは、審判請求書の「III-8.本件特許発明5について」で記載したとおりである。
したがって、本件訂正発明5は、甲第1号証又は甲第2号証及び甲第3号証?甲第10号証の記載に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項規定の進歩性を欠く。
よって、本件訂正発明5は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。

III-2-5.むすび
本件訂正発明1は、特許法第123条第1項第2号及び同法第29条第2項の無効理由を有しており、無効とされるべきである。
本件訂正発明2、訂正発明3及び訂正発明5も特許法第123条第1項第2号及び同法第29条第2項の無効理由を有しており、無効とされるべきである。

III-3.口頭審理陳述要領書(請求人)
III-3-1.陳述の要領
III-3-2.証拠方法
甲第16号証:R.P.Allison,"The Continuous Electrodeionization Process"("The Water Supply Puzzle How Does Desalting Fit In ?"(1996年, American Desalting))197-206頁
甲第17号証:川崎順二郎ら編「高度膜分離技術ハンドブック」(昭和62年7月25日、第1版第1刷、サイエンスフォーラム)
甲第18号証:中垣正幸監修「膜処理技術体系[応用・資料編]下巻」(1991年、フジテクノシステム)60-62頁
甲第19号証:P.Cartwright,"Technology Focus-Membrane Technologies In the Power Industry"(ULTRAPURE WATER(1993年2月)44-47頁)
甲第20号証:S.Schexnailder"Application of Electrodeionization in Nuclear Makeup Water Production: Performance and Theory"("Proceedings: Condensate Polishing and Water Purification in the Steam Cycle"(1996年6月、Electric Power Reserch Institute)39-1から39-8頁)
甲第21号証:中野専次ら「合成樹脂工業技術10 イオン交換樹脂 フェノール樹脂」、(昭和38年(1963年)9月15日、誠文堂新光社)16頁
甲第22号証:「高温水化学」研究専門委員会「原子力発電プラントの水化学管理と基盤技術」(1991年8月、日本原子力学会)117頁、129頁及び131頁
甲第23号証:特開平7-265865号公報
甲第24号証:特開平8-10762号公報

IV.被請求人の主張の概要
IV-1.答弁書
被請求人は、平成22年6月7日付けで答弁書及び訂正請求書を提出して、本件特許の特許請求の範囲の請求項1、3、4及び5について訂正を求め、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、以下のとおり主張している。

IV-1-1.本件訂正発明1に対する無効理由について
本件訂正発明1との対比において、甲第1号証及び甲第2号証は、何れも「脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填してなり、蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する電気脱イオン装置」を使用しておらず、「上記蒸気発生器から上記還流路の上記復水循環路とを連結する部分までの間において、上記ブローダウン水を脱塩処理する装置が上記電気脱イオン装置しか設けられていない」という点が開示されていない点において相違する(以下「相違点A」という)。
本件特許出願時における電気脱イオン装置の使用態様及び脱塩性能の点からすれば、加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置における蒸気発生器のブローダウン水の塩類を除去する脱塩装置として使用されていた「イオン硬化樹脂を充填した脱塩塔による脱塩装置」を「電気脱イオン装置」に変更し、「蒸気発生器から上記還流路の上記復水循環路とを連結する部分までの間において、上記ブローダウン水を脱塩処理する装置が上記電気脱イオン装置しか設けられていない」という構成を想到することは、当業者にとって容易になし得るものではない。
(甲第1号証に基づく容易想到性について)
本件発明の技術分野における技術常識から甲第1号証のイオン交換装置は、イオン交換樹脂を充填した混床式の脱塩塔を含む脱塩装置を意味している。
甲第1号証には、「the auxiliary ion exchange system, generally indicated by 91, which includes a multiplicity of blow down ion exchangers 88 and 90 having throw-away resin beds.[使い捨ての樹脂床を有する複数のブローダウン系のイオン交換器88,90を含む総括的に91で示す補助イオン交換システム]」という記載があり、甲第1号証のイオン交換器88,90がイオン交換樹脂を充填した脱塩塔であることを明記している。
請求人は、甲第3号証には、膜技術が電気脱イオン装置であることは明記されていないものの、「加圧水型原子力発電所における蒸気発生器からのブローダウン水の処理システムにおいて、イオン交換樹脂に代えて膜技術を用いて処理したところ、極めて優れたアンモニアを除去効率及びシリカ除去効率が得られたこと」が記載されており、甲第4号証には、PWRにおける純水製造のために電気脱イオン装置が用いられていることが記載されていることから、甲第1号証のイオン交換器に代えて、甲第3号証に記載の膜技術として電気脱イオン装置を用いることは容易である旨主張しているが請求人は、甲第3号証の内容を誤解しており、請求人の主張は前提において失当である。
請求人は、「加圧水型原子力発電所における蒸気発生器からのブローダウン水の処理システムにおいて、イオン交換樹脂に代えて膜技術を用いて処理したところ、きわめて優れたアンモニア除去効率及びシリカ除去効率が得られたこと」と主張するが、甲第3号証には、「memmbrane technology is used to remove ammonia prior to mixed bed polishing of blowdown..(ブローダウン水の混床式ポリッシャの前にアンモニアを除去するために膜技術を使用する)」と記載されているので、混床式脱塩装置に代えて膜技術を採用することは開示されておらず、ブローダウン水処理で用いられているイオン交換樹脂による混床式ポリッシャ(混床式脱塩装置)の前段に膜技術を採用することが開示されているだけなのである。
したがって、当業者は、甲第3号証に基づいて、甲第1号証のイオン交換器に代えて膜技術を採用しないのである。
そもそも、2次系ラインの脱塩装置は、2次水に含まれる塩類の除去を目的として設けられるものである。特に、加圧水型原子力発電所の2次系ラインにおいては、系内に持ち込まれた塩類等の不純物及び腐食生成物が蒸気発生器で濃縮されるため、蒸気発生器内部の腐食の問題や蒸気発生器の伝熱管への腐食生成物の付着の問題が発生するので、蒸気発生器に供給される水のナトリウム及び塩素のより一層の低減化が必要とされていた。
さらに、甲第4号証乃至甲第7号証には、加圧水型原子力発電所の2次系ラインにおいて電気脱イオン装置を利用することは記載も示唆もされていない。
電気脱イオン装置は、常に前段に逆浸透膜(RO)装置を必要とするものであり、逆浸透膜(RO)装置を設けることなく単独で使用されるものではなかった。
また、電気脱イオン装置は、脱塩性能の点において、完全な塩類の除去が困難であり、完全に塩類を除去するためには、後段に混床式の脱塩塔(ポリシャー)を設けて全体としての脱塩性能を向上させていた。電気脱イオン装置によって除去できなかった塩類が後段に設けられた混床式の脱塩塔(ポリシャー)によって除去されることから、基本的な脱塩性能として、電気脱イオン装置は、混床式脱塩塔(ポリシャー)よりも劣るものであった。
甲第7号証には、「[10?17MΩ・cm]以上の超純水とするには、必ずイオン交換樹脂のカートリッジ型混床式ポリシャーで後処理することが必要である。」と記載されている。
したがって、「電気脱イオン装置」は、「イオン交換樹脂を充填した混床式の脱塩塔」よりも脱塩性能が劣っており、常に前段に逆浸透膜(RO)装置を必要としていたものであるから、PWRにおいて従来使用されていた「イオン交換樹脂を充填した混床式の脱塩塔を含む脱塩装置」にかえて、「電気脱塩装置」を単独で使用することは当業者にとって容易に想到できることではない。
(甲第2号証に基づく容易想到性について)
甲第2号証の図4には、ブローダウン側に「Blow down demin.」と記載されたMaanshan NPS における加圧水型原子力発電所の2次側のフロー図が示されている。しかし、PWRの2次系ライン水処理装置に使用される脱塩装置は、前述したとおり、混床式の脱塩塔又は混床式の脱塩塔の前段に前処理の脱塩塔を設けた構成であったので、何らの注意書きも存在しない甲第2号証の「Blow down demin.」という記載は、「イオン交換樹脂を充填した混床式の脱塩塔を含む脱塩装置」を意味するのである。
請求人は、甲第2号証及び甲第3号証?甲第7号証の記載に基づく進歩性欠如の無効理由を主張するが、その内容は、甲第1号証及び甲第3号証?甲第7号証の記載に基づく進歩性欠如の理由と実質的に同じであるから、上記の被請求人の主張を援用する。

IV-1-2.本件訂正発明2に対する無効理由について
請求人は、訂正前の請求項2に係る発明に対し、訂正前の請求項1に対する無効理由を前提として、甲第1号証及び甲第3号証?甲第9号証又は甲第2号証及び甲第3号証?甲第9号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであると主張する。しかし、本件訂正発明2は、本件訂正発明1を引用するものであるところ、上記において記載したとおり、本件訂正発明1は甲第1号証及び甲第3号証?甲第7号証又は甲第2号証及び甲第3号証?甲第7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないので、本件訂正発明2においても同様に当業者が容易に発明をすることができたものではない。

IV-1-3.本件訂正発明3に対する無効理由について
本件訂正発明3との対比において、甲第1号証及び甲第2号証は、何れも「脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填してなり、蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する電気脱イオン装置」を使用しておらず、「上記還流路は、上記復水循環路における上記切換えバルブと上記復水脱塩装置との間に連結され、電気脱イオン装置の後段に、カチオン交換体及びアニオン交換体を使用してなるイオン交換式脱塩装置として上記復水脱塩装置を設けてなる」という点が開示されてない点において相違する(以下「相違点B」という)。
そして、請求人は、甲第3号証の記載をイオン交換樹脂に代えて膜技術を用いることと誤解しており、このことを前提とする請求人の主張は成り立たない。
さらに、「還流路が、復水循環路における上記切換えバルブと上記復水脱塩装置との間に連結される」構成は、甲第1号証ないし甲第9号証の何れにも開示されておらず、本件訂正発明3は、係る構成を具備することによって、電気脱イオン装置によってブローダウン水を脱塩処理した処理水については、確実に復水脱塩装置に通水させる一方で、復水循環路を流れる復水については、切換えバルブによって復水脱塩装置に通水させるか、バイパス路で復水脱塩装置をバイパスさせるか選択できる構成を実現できるのである。
以上から、本件訂正発明1は甲第1号証及び甲第3号証?甲第9号証又は甲第2号証及び甲第3号証?甲第9号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないことは明らかである。

IV-1-4.本件訂正発明5に対する無効理由について
請求人は、訂正前の請求項5に係る発明に対し、訂正前の請求項1に対する無効理由を前提として、甲第1号証及び甲第3号証?甲第7号証及び甲第10号証又は甲第2号証及び甲第3号証?甲第7号証及び甲第10号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであると主張する。しかし、本件訂正発明5は、本件訂正発明1を引用するものであるところ、上記において記載したとおり、本件訂正発明1は甲第1号証及び甲第3号証?甲第7号証又は甲第2号証及び甲第3号証?甲第7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないので、本件訂正発明5においても同様に当業者が容易に発明をすることができたものではない。

IV-1-5.証拠方法
乙第1号証:益満 功他「III.復水処理設備」、火力原子力発電、社団法人火力原子力発電技術協会発行、1992、NO.433,Vol.43,72?97頁

IV-2.口頭審理陳述要領書(被請求人)
IV-2-1.総論
IV-2-2.無効理由II(本件訂正発明1は、甲第1号証又は甲第2号証に記載の発明に甲第7号証に記載の技術を適用することによって容易想到な発明である)に対する反論
IV-2-3.無効理由IV(本件訂正発明3は、容易想到な発明である)に対する反論

V.訂正請求について
V-1.訂正の事由
(1)特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明
V-2.訂正事項
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の【請求項1】を次のとおり訂正する。
「蒸気発生器から供給される水蒸気によりタービンを駆動して発電を行った後、水蒸気を復水器で冷却して復水となし、この復水を蒸気発生器に戻す加圧水型原子力発電所の2次系ラインの水処理装置であって、
脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填してなり、蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する電気脱イオン装置と、
該電気脱イオン装置により脱塩処理された水を蒸気発生器に還流するための還流路と、
上記復水を蒸気発生器に戻す復水循環路に配設された復水脱塩装置と、
上記復水が復水脱塩装置を通らずに蒸気発生器に還流されるようにするために復水循環路に設けられたバイパス路とを設け、
上記還流路は、上記復水循環路に連結されており、
上記蒸気発生器から上記還流路の上記復水循環路とを連結する部分までの間において、上記ブローダウン水を脱塩処理する装置が上記電気脱イオン装置しか設けられていないことを特徴とする
加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置。」
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の【請求項3】を次のとおり訂正する。
「蒸気発生器から供給される水蒸気によりタービンを駆動して発電を行った後、水蒸気を復水器で冷却して復水となし、この復水を蒸気発生器に戻す加圧水型原子力発電所の2次系ラインの水処理装置であって、
脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填してなり、蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する電気脱イオン装置と、
該電気脱イオン装置により脱塩処理された水を蒸気発生器に還流するための還流路と、
上記復水を蒸気発生器に戻す復水循環路に配設された復水脱塩装置と、
上記復水が復水脱塩装置を通らずに蒸気発生器に還流されるようにするために復水循環路に切換えバルブを介して設けられたバイパス路とを設け、
上記還流路は、上記復水循環路における上記切換えバルブと上記復水脱塩装置との間に連結され、
電気脱イオン装置の後段に、カチオン交換体及びアニオン交換体を使用してなるイオン交換式脱塩装置として上記復水脱塩装置を設けてなる加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置。」
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の【請求項4】を次のとおり訂正する。
「蒸気発生器から供給される水蒸気によりタービンを駆動して発電を行った後、水蒸気を復水器で冷却して復水となし、この復水を蒸気発生器に戻す加圧水型原子力発電所の2次系ラインの水処理装置であって、
脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填してなり、蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する電気脱イオン装置と、
該電気脱イオン装置により脱塩処理された水を蒸気発生器に還流するための還流路と、
上記復水を蒸気発生器に戻す復水循環路に配設された復水脱塩装置と、
上記復水が復水脱塩装置を通らずに蒸気発生器に還流されるようにするために復水循環路に設けられたバイパス路と、
電気脱イオン装置の後段に、カチオン交換体及びアニオン交換体を使用してなるイオン交換式脱塩装置を設け、
電気脱イオン装置の濃縮水の一部を、イオン交換式脱塩装置により脱塩処理された水に混入するようにした請求項3記載の加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置。」
(4)訂正事項4
発明の詳細な説明の【0014】を次のとおり訂正する。
「即ち本発明は、(1)蒸気発生器から供給される水蒸気によりタービンを駆動して発電を行った後、水蒸気を復水器で冷却して復水となし、この復水を蒸気発生器に戻す加圧水型原子力発電所の2次系ラインの水処理装置であって、脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填してなり、蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する電気脱イオン装置と、該電気脱イオン装置により脱塩処理された水を蒸気発生器に還流するための還流路と、上記復水を蒸気発生器に戻す復水循環路に配設された復水脱塩装置と、上記復水が復水脱塩装置を通らずに蒸気発生器に還流されるようにするために復水循環路に設けられたバイパス路とを設け、上記還流路は、上記復水循環路に連結されており、上記蒸気発生器から上記還流路の上記復水循環路とを連結する部分までの間において、上記ブローダウン水を脱塩処理する装置が上記電気脱イオン装置しか設けられていないことを特徴とする加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置、(2)電気脱イオン装置の前段に濾過装置を設けてなる上記(1)記載の加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置、(3)蒸気発生器から供給される水蒸気によりタービンを駆動して発電を行った後、水蒸気を復水器で冷却して復水となし、この復水を蒸気発生器に戻す加圧水型原子力発電所の2次系ラインの水処理装置であって、脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填してなり、蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する電気脱イオン装置と、該電気脱イオン装置により脱塩処理された水を蒸気発生器に還流するための還流路と、上記復水を蒸気発生器に戻す復水循環路に配設された復水脱塩装置と、上記復水が復水脱塩装置を通らずに蒸気発生器に還流されるようにするために復水循環路に切換えバルブを介して設けられたバイパス路とを設け、上記還流路は、上記復水循環路における上記切換えバルブと上記復水脱塩装置との間に連結され、電気脱イオン装置の後段に、カチオン交換体及びアニオン交換体を使用してなるイオン交換式脱塩装置として上記復水脱塩装置を設けてなる加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置、(4)蒸気発生器から供給される水蒸気によりタービンを駆動して発電を行った後、水蒸気を復水器で冷却して復水となし、この復水を蒸気発生器に戻す加圧水型原子力発電所の2次系ラインの水処理装置であって、脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填してなり、蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する電気脱イオン装置と、該電気脱イオン装置により脱塩処理された水を蒸気発生器に還流するための還流路と、上記復水を蒸気発生器に戻す復水循環路に配設された復水脱塩装置と、上記復水が復水脱塩装置を通らずに蒸気発生器に還流されるようにするために復水循環路に設けられたバイパス路と、電気脱イオン装置の後段に、カチオン交換体及びアニオン交換体を使用してなるイオン交換式脱塩装置を設け、電気脱イオン装置の濃縮水の一部を、イオン交換式脱塩装置により脱塩処理された水に混入するようにした請求項3記載の加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置、(5)ブローダウン水はpH9.2を超えるpH値を有するものである上記(1)記載の加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置、を要旨とするものである。」
(5)訂正事項5
発明の詳細な説明の【0028】の「環流」を「還流」と訂正する。
(6)訂正事項6
発明の詳細な説明の【0043】の「仮りに」を「仮に」と訂正する。

V-3.訂正の原因
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1に「上記還流路は、上記復水循環路に連結されており、上記蒸気発生器から上記還流路の上記復水循環路とを連結する部分までの間において、上記ブローダウン水を脱塩処理する装置が上記電気脱イオン装置しか設けられていない」という記載を追加するもので、蒸気発生器からのブローダウン水が、復水循環路と合流する前において、電気脱イオン装置のみによって脱塩処理されることを特定したもので、「特許請求の範囲の減縮」に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。また、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものである。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、元々請求項1又は2に従属する形式であった請求項3に対し、請求項1の記載を追加して、独立形式に書き改め、さらにバイパス路が復水循環路に「切換えバルブを介して設けられた」点、「上記還流路は、上記復水循環路における切換えバルブと上記復水脱塩装置との間に連結された」点及び「イオン交換式脱塩装置として上記復水脱塩装置を設けてなる」点を特定したもので、「特許請求の範囲の減縮」に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。また、訂正事項2は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものである。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、元々請求項3に従属する形式であった請求項4に対し、訂正前の請求項1及び請求項3の記載を追加して、独立形式に書き改めただけであるから、訂正の前後で実質的には変更されておらず、請求項1及び3を訂正することに伴う「明りょうでない記載の釈明」に該当するものである。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、特許請求の範囲を訂正したことに伴って、特許請求の範囲と発明の詳細な説明との整合を図るための訂正であり、「明りょうでない記載の釈明」に該当する。
(5)訂正事項5について
訂正事項5は、いずれも「誤記の訂正」に該当するものである。

V-4.訂正後の本件特許発明
訂正後の本件特許の請求項1?5に係る発明(以下、それぞれ「本件訂正発明1?5」といい、これらを総称して「本件訂正発明」ということがある。)は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その【特許請求の範囲】の【請求項1】?【請求項5】に記載された次のとおりのものである。
「 【請求項1】 蒸気発生器から供給される水蒸気によりタービンを駆動して発電を行った後、水蒸気を復水器で冷却して復水となし、この復水を蒸気発生器に戻す加圧水型原子力発電所の2次系ラインの水処理装置であって、
脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填してなり、蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する電気脱イオン装置と、
該電気脱イオン装置により脱塩処理された水を蒸気発生器に還流するための還流路と、
上記復水を蒸気発生器に戻す復水循環路に配設された復水脱塩装置と、
上記復水が復水脱塩装置を通らずに蒸気発生器に還流されるようにするために復水循環路に設けられたバイパス路とを設け、
上記還流路は、上記復水循環路に連結されており、
上記蒸気発生器から上記還流路の上記復水循環路とを連結する部分までの間において、上記ブローダウン水を脱塩処理する装置が上記電気脱イオン装置しか設けられていないことを特徴とする
加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置。
【請求項2】 電気脱イオン装置の前段に濾過装置を設けてなる請求項1記載の加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置。
【請求項3】 蒸気発生器から供給される水蒸気によりタービンを駆動して発電を行った後、水蒸気を復水器で冷却して復水となし、この復水を蒸気発生器に戻す加圧水型原子力発電所の2次系ラインの水処理装置であって、
脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填してなり、蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する電気脱イオン装置と、
該電気脱イオン装置により脱塩処理された水を蒸気発生器に還流するための還流路と、
上記復水を蒸気発生器に戻す復水循環路に配設された復水脱塩装置と、
上記復水が復水脱塩装置を通らずに蒸気発生器に還流されるようにするために復水循環路に切換えバルブを介して設けられたバイパス路とを設け、
上記還流路は、上記復水循環路における上記切換えバルブと上記復水脱塩装置との間に連結され、
電気脱イオン装置の後段に、カチオン交換体及びアニオン交換体を使用してなるイオン交換式脱塩装置として上記復水脱塩装置を設けてなる加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置。
【請求項4】 蒸気発生器から供給される水蒸気によりタービンを駆動して発電を行った後、水蒸気を復水器で冷却して復水となし、この復水を蒸気発生器に戻す加圧水型原子力発電所の2次系ラインの水処理装置であって、
脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填してなり、蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する電気脱イオン装置と、
該電気脱イオン装置により脱塩処理された水を蒸気発生器に還流するための還流路と、
上記復水を蒸気発生器に戻す復水循環路に配設された復水脱塩装置と、
上記復水が復水脱塩装置を通らずに蒸気発生器に還流されるようにするために復水循環路に設けられたバイパス路と、
電気脱イオン装置の後段に、カチオン交換体及びアニオン交換体を使用してなるイオン交換式脱塩装置を設け、
電気脱イオン装置の濃縮水の一部を、イオン交換式脱塩装置により脱塩処理された水に混入するようにした請求項3記載の加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置。
【請求項5】 ブローダウン水はpH9.2を超えるpH値を有するものである請求項1記載の加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置。」

V-5.訂正請求についての当審の判断
(1)訂正事項1について
訂正事項1において請求項1に追加した「上記還流路は、上記復水循環路に連結されており、上記蒸気発生器から上記還流路の上記復水循環路とを連結する部分までの間において、上記ブローダウン水を脱塩処理する装置が上記電気脱イオン装置しか設けられていない」は、訂正前に具体的な経路については、特定のなかった「還流路」を復水循環路と連結するものであることを特定し、蒸気発生器からのブローダウン水が、復水循環路と合流する前において、電気脱イオン装置のみによって脱塩処理されることを特定したもので、特許請求の範囲の減縮に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。また、訂正事項1は、明細書の【0020】、【0034】乃至【0036】並びに図1及び図4に開示されているので、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものである。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、請求項3に請求項1の記載を追加して、独立形式に書き改め、復水循環路とバイパス路とが切換えバルブを介して設けられていること及び還流路が復水循環路における切換えバルブと上記復水脱塩装置との間に連結するものであることを特定した上で、イオン交換式脱塩装置として上記復水脱塩装置を使用することを特定したもので、特許請求の範囲の減縮に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。また、切換えバルブは、明細書の【0019】に記載され、還流路が復水循環路における切換えバルブと上記復水脱塩装置との間に連結し、イオン交換式脱塩装置として上記復水脱塩装置を使用することは、【0048】及び【0049】並びに図面4に開示されているので、訂正事項2は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものである。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、請求項4に対し、訂正前の請求項1及び請求項3の記載を追加して、独立形式に書き改めたものであるから、請求項1及び3を訂正することに伴う明りょうでない記載の釈明に該当するものである。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、特許請求の範囲を訂正したことに伴って、特許請求の範囲と発明の詳細な説明との整合を図るための訂正であり、明りょうでない記載の釈明に該当する。
(5)訂正事項5について
訂正事項5は、いずれも「誤記の訂正」に該当するものである。
したがって、訂正事項1乃至5は、特許法第134条の2第1項及び第5項の規定によって準用する特許法第126条第3項乃至第5項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

VI.無効理由についての当審の判断
VI-1.本件訂正発明1に対する無効理由について
弁駁書において主張された本件訂正発明1に対する特許法第36条第6項第1号及び同法同条第4項第1号の無効理由は、不許可となったので(III-2.弁駁書参照)、本件訂正発明1についての無効理由は、審判請求書に記載された無効理由1(特許法第29条第2項)である。
VI-1-1.本件訂正発明1と甲第1発明の対比
甲第1号証の記載事項(1-A)には、「蒸気発生器(steam generator)12から供給される水蒸気によりタービン(turbine)22を駆動して発電を行った後、水蒸気を復水器(condenser)24で冷却して復水となし、この復水を蒸気発生器12に戻す加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置であって、」と記載されている。そして、記載事項(1-B’)に「蒸気発生器12からのブローダウン水を脱塩処理するイオン交換装置(ion exchangers)88,90と、」と記載され、記載事項(1-C)に、「イオン交換装置88,90により脱塩処理された水を蒸気発生器に還流されるようにするために還流路(conduit)92と、」と記載され、記載事項(1-D)に「復水を蒸気発生器12に戻す復水循環路に配設された復水脱塩装置(condensate demineralizer)38と」が記載され、記載事項(1-E)には、「復水が脱塩装置38を通らずに蒸気発生器12に還流されるようにするために復水循環路58に設けられたバイパス路(bypass line)34と、」を設けてなる加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置が記載されている。
これらの記載を本件訂正発明1の記載振りに則して表すと、甲第1号証には、
「蒸気発生器から供給される水蒸気によりタービンを駆動して発電を行った後、水蒸気を復水器で冷却して復水となし、この復水を蒸気発生器に戻す加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置であって、蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理するイオン交換装置と、イオン交換装置により脱塩処理された水を蒸気発生器に還流されるようにするために還流路と、復水を蒸気発生器に戻す復水循環路に配設された復水脱塩装置と、復水が復水脱塩装置を通らずに蒸気発生器に還流されるようにするために復水循環路に設けられたバイパス路を設けてなる加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置。」(以下、甲第1発明」という。)が記載されていると認められる。
ここで、本件訂正発明1と甲第1発明とを対比すると、後者の「蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理するイオン交換装置」は、イオン交換により脱塩を行うから、前者の「脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填してなり、蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する電気脱イオン装置」と「蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する脱イオン装置」である点で共通する。
したがって、本件訂正発明1と甲第1発明とは、「蒸気発生器から供給される水蒸気によりタービンを駆動して発電を行った後、水蒸気を復水器で冷却して復水となし、この復水を蒸気発生器に戻す加圧水型原子力発電所の2次系ラインの水処理装置であって、
蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する脱イオン装置と、
脱塩処理された水を蒸気発生器に還流するための還流路と、
上記復水を蒸気発生器に戻す復水循環路に配設された復水脱塩装置と、
上記復水が復水脱塩装置を通らずに蒸気発生器に還流されるようにするために復水循環路に設けられたバイパス路とを設け、
上記還流路は、上記復水循環路に連結されている、
加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置。」である点で一致するが、以下の点で相違する。
相違点1-1-A
本件訂正発明1は、脱イオン装置として「脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填してなり、蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する電気脱イオン装置」を使用しているのに対し、甲第1発明は、電気脱イオン装置でない点。
相違点1-1-B
本件訂正発明1では、「上記蒸気発生器から上記還流路の上記復水循環路とを連結する部分までの間において、上記ブローダウン水を脱塩処理する装置が上記電気脱イオン装置しか設けられていない」のに対し、甲第1発明には、かかる限定がない点。

まず、相違点1-1-Aについて、検討する。
甲第1号証には、「the auxiliary ion exchange system, generally indicated by 91, which includes a multiplicity of blow down ion exchangers 88 and 90 having throw-away resin beds.[訳:使い捨ての樹脂床を有する複数のブローダウン系のイオン交換器88,90を含む総括的に91で示す補助イオン交換システム]」(第4欄37-40行)という記載があり、甲第1号証のイオン交換器88,90がイオン交換樹脂を充填した脱塩塔であることが実質的に記載されている。そして、甲第3号証には、「The pilot test performed at Vogtle Unit1 showed that excellent removal efficiency for ammonia can be obtained using currently available membrane tenchnology. Ammonia removal effciency was around 99.8%, and silica removal around 95%. Cation resin replacement can be eliminated if membrane technology is used to remove ammonia prior to mixed bed polishing of blowdown[訳:Vogtle Unit1で行ったパイロットテストは、現在利用可能な膜技術を用いて、アンモニアの優れた除去効率が得られることを示す。アンモニア除去効率は約99.8%であり、シリカ除去効率は約95%であった。ブローダウン水の混床式ポリッシャーに先行して、アンモニアを除去するために膜技術を用いるならば、カチオン樹脂交換を無くすことができる。]」)(42-17頁2?9行)と記載されているが、ブローダウン水の混床式ポリッシャーの前段で用いられる現在利用可能な膜技術については、具体的な記載はない。甲第4号証は、「Ultrapure water is critical in a number of industrial applications, such as power generation.[訳:超純水は、発電など多くの産業用途において重要である。]」(400頁左欄2?3行)、「 In the power plants, the ultrapure water is used for makeup to high-pressure boilers and for plant usage.[訳:発電プラントにおいて、超純水は、高圧ボイラーへの補給水及びプラント利用水して用いられている。]」(400頁右欄6?7行)と記載されるに留まり、電気脱イオン装置がブローダウン水の脱イオン装置として用いられることについては、記載も示唆も認められない。さらに、甲第4号証?甲第6号証には、加圧水型原子力発電所における純水製造のために、「膜技術」としてイオン交換樹脂とイオン交換膜と直流電界とを組み合わせた電気脱イオン装置(EDI)が実際用いられていることが記載されている。甲第7号証には、「1980年代」の項に「PWR型原子力発電所の復水は、安全管理のために水質基準が年々厳しくなった」(102頁右欄19?20行)及び「処理水に対する厳しい要求水質を全てクリアーすることに成功した。このことは、PWRの長期運転下におけるSG伝熱管やタービン部材などの健全性を高め、プラントの信頼性向上に大きく寄与した」(104頁左欄6?10行)というPWR型原子力発電所の復水に関する一般的な記載は認められる。しかしながら、同号証の「1990年代
電気透析式連続イオン交換脱イオン装置の開発
電気透析式連続イオン交換脱イオン装置は、アニオン交換膜とカチオン交換膜で構成する脱イオン室に、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂の混合樹脂を充填したもので、電気透析式に陽極と陰極に直接電流を通電しながら脱イオン室(希釈室)に給水を導入して脱イオン水を採取し、給水中の不純物イオンは濃縮して、濃縮室からの給水の一部を流し出すことを基本とした、非再生型の連続式脱イオン装置である。」(104頁右欄13?11行)という項目と前記PWR型原子力発電所の復水に関する項目は相互に関連する記載が認められず、これら記載事項は、「日本におけるイオン交換技術の発展について(その3)」と題された論文中の1980年代のトピックと1990年代のトピックであるという程度の関係のものである。
そうすると、甲第7号証には、この「電気脱イオン装置(EDI)」を「PWR型原子力発電所の復水」のブローダウン水の脱イオン装置として適用することへの動機付けを見いだすことはできない。
したがって、甲第1号証及び甲第3号証?甲第7号証からは、相違点1-1-1を当業者といえども容易に想到することはできないというべきである。
次に、相違点1-1-Bについて、検討する。
本件訂正発明1のPWRのブローダウン水は、高濃度のアンモニア及びヒトラジンを含有する原水であり、甲第4号証の「The EDI process pretreatment includes filtration and partial demineralization by RO. RO removes many of the contaminants which could harm an EDI system, such as organics, which can foul anion and cation ion-exchange resins, and particulate matter, which would be difficult to remove from an EDI unit.[訳:EDIプロセス前処理は、ROによる濾過及び部分脱塩を含む。ROは、アニオン交換樹脂及びカチオン樹脂に付着する有機物やEDIユニットから取り除くことが困難な粒子状物質などのEDIシステムに有害な汚染物質の多くを除去する。]」(400頁右欄12?18行)及び甲第7号証の「電気透析式連続イオン交換脱イオン装置の開発状況を述べたが、この方式の脱イオン装置は、前処理としてRO装置を置くことが前提となるので、10?17MΩ・cmの高品位純水を再生しないで採取するのに向いている。しかしそれ以上の超純水とするには、必ずイオン交換樹脂のカートリッジ型混床式ポリシャーで後処理することが必要である。しかし、いずれにしても、イオン交換体を再生する必要はないので、これまでのように大量の再生排水の処理は不要となり、純水採取運転が連続的に簡単且つ容易にできる利点がある。」(108頁左欄9行?109頁左欄2行)という記載等から、原水中の不純物が高濃度であれば、当業者は、電気脱イオン装置を単独で使用せず、RO装置や混床式ポリッシャーとを組み合わせて使用することを想起するとみるべきであって、「上記蒸気発生器から上記還流路の上記復水循環路とを連結する部分までの間において、上記ブローダウン水を脱塩処理する装置が上記電気脱イオン装置しか設けられていない」という特定事項を想起することは、当業者といえども容易になし得るものではない。
そして、本件訂正発明1は、本件訂正明細書記載の当業者に予期できない優れた効果を奏するものである。
したがって、本件訂正発明1は、甲第1号証及び甲第3号証?甲第7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。

VI-1-2.本件訂正発明1と甲第2発明の対比
甲第2号証の図4には、「蒸気発生器(S/G)から供給される水蒸気によりタービン(High Press.Turbine、Low press.Turbine)を駆動して発電を行った後、水蒸気を復水器(condenser)で冷却して復水となし、この復水を蒸気発生器(S/G)に戻す加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置であって、
蒸気発生器(S/G)からのブローダウン水(S/G Blowdown)を脱塩処理する脱塩処理装置(Blow down demin.)と、
脱塩装置により脱塩処理された水を蒸気発生器(S/G)に還流するための還流路(main condenserへの矢印)と、
復水を蒸気発生器(S/G)に戻す復水循環路に配設された復水脱塩装置(condensate polisher)と、
復水が復水脱塩装置(condensate polisher)を通らずに蒸気発生器(S/G)に還流されるようにするために復水循環路に設けられたバイパス路と、
を設けてなる加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置。」が記載されており、この記載を本件訂正発明1の記載振りに則して表すと、甲第2号証には、
「蒸気発生器から供給される水蒸気によりタービンを駆動して発電を行った後、水蒸気を復水器で冷却して復水となし、この復水を蒸気発生器に戻す加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置であって、蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する脱塩処理装置と、脱塩装置により脱塩処理された水を蒸気発生器に還流するための還流路と、復水を蒸気発生器に戻す復水循環路に配設された復水脱塩装置)と、復水が復水脱塩装置を通らずに蒸気発生器に還流されるようにするために復水循環路に設けられたバイパス路と、
を設けてなる加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置。」(以下、「甲第2発明」という。)が記載されていると認められる。
ここで、本件訂正発明1と甲第2発明とを対比すると、後者の「蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する脱塩処理装置」は、イオン交換により脱塩を行うから、前者の「脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填してなり、蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する電気脱イオン装置」と「蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する脱イオン装置」である点で共通する。
したがって、本件訂正発明1と甲第2発明とは、「蒸気発生器から供給される水蒸気によりタービンを駆動して発電を行った後、水蒸気を復水器で冷却して復水となし、この復水を蒸気発生器に戻す加圧水型原子力発電所の2次系ラインの水処理装置であって、
蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する脱イオン装置と、
脱塩処理された水を蒸気発生器に還流するための還流路と、
上記復水を蒸気発生器に戻す復水循環路に配設された復水脱塩装置と、
上記復水が復水脱塩装置を通らずに蒸気発生器に還流されるようにするために復水循環路に設けられたバイパス路とを設け、
上記還流路は、上記復水循環路に連結されている、
加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置。」である点で一致するが、以下の点で相違する。
相違点1-2-A
本件訂正発明1では、脱イオン装置として「脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填してなり、蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する電気脱イオン装置」を使用しているのに対し、甲第2発明は、脱イオン装置を特定していない点。
相違点1-2-B
本件訂正発明1では、「上記蒸気発生器から上記還流路の上記復水循環路とを連結する部分までの間において、上記ブローダウン水を脱塩処理する装置が上記電気脱イオン装置しか設けられていない」のに対し、甲第2発明には、かかる限定がない点。

まず、相違点1-2-Aについて、検討する。
甲第2号証の図4には、ブローダウン側に「Blow down demin.」と記載された加圧水型原子力発電所の2次側のフロー図が示されているが、それ以上の説明はなく、甲第2号証の「Blow down demin.」がどのような脱塩装置であるかについて一切の記載がないので、甲第2号証は、相違点1-2-Aにかかる特定事項を想起することができるか否かの証拠とすることはできない。
そして、これらの相違点1-2-A及び相違点1-2-Bは、いずれも、相違点1-1-A及び相違点1-1-Bと同じであるので、「VI-1-1.本件訂正発明1と甲1発明の対比」において検討したのと同じ理由により、当業者が容易に想到し得たものとすることができない。
そして、本件訂正発明2は、本件訂正明細書記載の当業者に予期できない優れた効果を奏するものである。
したがって、本件訂正発明2は、甲第2号証及び甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。

VI-2.本件訂正発明2について
本件訂正発明2は、本件訂正発明1を引用するものであるところ、上記したとおり、本件訂正発明1は甲第1号証及び甲第3号証?甲第7号証又は甲第2号証及び甲第3号証?甲第7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないので、本件訂正発明2も同じ理由により当業者が容易に発明をすることができたものではない。

VI-3.本件訂正発明3について
VI-3-1.本件訂正発明3と甲第1発明の対比
本件訂正発明3は、本件特許発明3が本件特許発明1を引用する形式で記載されたものを独立形式に訂正し、さらに、バイパス路が復水循環路に「切換えバルブを介して設けられた」点、「上記還流路は、上記復水循環路における切換えバルブと上記復水脱塩装置との間に連結された」点及び「イオン交換式脱塩装置として上記復水脱塩装置を設けてなる」点を訂正したものである。
そして、甲第1発明は、VI-1-1.に記載したように「蒸気発生器から供給される水蒸気によりタービンを駆動して発電を行った後、水蒸気を復水器で冷却して復水となし、この復水を蒸気発生器に戻す加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置であって、蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理するイオン交換装置と、イオン交換装置により脱塩処理された水を蒸気発生器に還流されるようにするために還流路と、復水を蒸気発生器に戻す復水循環路に配設された復水脱塩装置と、復水が復水脱塩装置を通らずに蒸気発生器に還流されるようにするために復水循環路に設けられたバイパス路を設けてなる加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置。」の発明であり、さらに、甲第1号証の図1には、復水脱塩装置38及びバイパス路34の各々に調整バルブが設置され、調整バルブにより、復水が復水脱塩装置38を通過するか、バイパス路34で迂回するかを選択できるように示されており、これを甲第1発明に付加した「蒸気発生器から供給される水蒸気によりタービンを駆動して発電を行った後、水蒸気を復水器で冷却して復水となし、この復水を蒸気発生器に戻す加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置であって、蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理するイオン交換装置と、イオン交換装置により脱塩処理された水を蒸気発生器に還流されるようにするために還流路と、復水を蒸気発生器に戻す復水循環路に配設された復水脱塩装置と、復水が復水脱塩装置を通らずに蒸気発生器に還流されるようにするために復水循環路に設けられたバイパス路を設けてなり、復水脱塩装置38及びバイパス路34の各々に調整バルブが設置され、調整バルブにより、復水が復水脱塩装置38を通過するか、バイパス路34で迂回するかを選択できる加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置。」(以下、「甲第1’発明」という。)が甲第1号証には記載されていると認められる。
ここで、本件訂正発明3と甲第1’発明とを対比すると、後者の「蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理するイオン交換装置」は、イオン交換により脱塩を行うから、前者の「脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填してなり、蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する電気脱イオン装置」と「蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する脱イオン装置」である点で共通する。
したがって、本件訂正発明3と甲第1’発明とは、「蒸気発生器から供給される水蒸気によりタービンを駆動して発電を行った後、水蒸気を復水器で冷却して復水となし、この復水を蒸気発生器に戻す加圧水型原子力発電所の2次系ラインの水処理装置であって、
蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する脱イオン装置と、
脱塩処理された水を蒸気発生器に還流するための還流路と、
上記復水を蒸気発生器に戻す復水循環路に配設された復水脱塩装置と、
上記復水が復水脱塩装置を通らずに蒸気発生器に還流されるようにするために復水循環路に設けられたバイパス路とを設け、
上記還流路は、上記復水循環路に連結されている、
加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置。」である点で一致するが、以下の点で相違する。
相違点3-1-A
本件訂正発明3は、脱イオン装置として「脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填してなり、蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する電気脱イオン装置」を使用しているのに対し、甲第1’発明は、電気脱イオン装置でない点。
相違点3-1-B
本件訂正発明3では、バイパス路が「切換えバルブを介して」設けられているのに対し、甲第1’発明では、復水循環路が復水脱塩装置38とバイパス路34とに分岐した後、それぞれに調整バルブ36及び32が設けられる点。
相違点3-1-C
本件訂正発明3では、「上記還流路は、上記復水循環路における上記切換えバルブと上記復水脱塩装置との間に連結されて」いるのに対し、甲第1’発明では、還流路が復水脱塩装置38とバイパス路34との分岐点の上流側に連結されている点。
相違点3-1-D
本件訂正発明3では、復水脱塩装置が、「カチオン交換体及びアニオン交換体を使用してなるイオン交換脱塩装置」に限定されているのに対して、甲第1’発明では、脱塩装置の特定がされていない点。

まず、相違点3-1-Dについて、検討する。
復水脱塩装置としては、「カチオン交換体及びアニオン交換体を使用してなるイオン交換脱塩装置」は、通常のものであり、実質的な相違ではない。
次に、相違点3-1-Aについては、相違点1-1-Aと同じ内容であり、「VI-1-1.本件訂正発明1と甲1発明の対比」で検討した理由により、甲第1号証等から当業者が容易に相当し得たとすることはできない。
さらに、相違点3-1-B及び同3-1-Cについてまとめて検討する。
本件訂正発明3において「上記復水が復水脱塩装置を通らずに蒸気発生器に還流されるようにするために復水循環路に切換えバルブを介して設けられたバイパス路とを設け、
上記還流路は、上記復水循環路における上記切換えバルブと上記復水脱塩装置との間に連結され」ることの技術的意義は、「既設の復水脱塩装置18(この復水脱塩装置18にはカチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂が充填されている)をその代替装置として用いることができる。
即ち、図4に示すように、電気脱イオン装置24の出口側に設けた処理水管25を復水脱塩装置18の入口側に連結する。このようにすれば、電気脱イオン装置24で脱塩処理された処理水を復水脱塩装置18に通水して、この装置18において、前述した混床式脱塩装置41と同様の脱塩処理を行うことができる。この場合、復水脱塩装置18は通常、複数の脱塩塔を備えているので、そのうちの一つをブローダウン水の脱塩処理に使用すればよい。」(本件訂正明細書段落【0048】?【0049】)というものであり、電気脱イオン装置によってブローダウン水を脱塩処理した処理水については、確実に復水脱塩装置に通水させる一方で、復水循環路を流れる復水については切換えバルブによって復水脱塩装置に通水させるか、バイパス路で復水脱塩装置をバイパスさせるかを選択できる構成を実現し、ブローダウン水で除去できなかった不純物イオンを復水の全量とともに復水脱塩装置に通水することなく能率的に除去する効果を奏するのであるが、甲第1’発明のように「還流路が復水脱塩装置38とバイパス路34との分岐点の上流側に連結されている」構成では、このような効果が得られない点で基本的に相違する。
これらの相違点に関して請求人は、上記「III-2-3-2-3.相違点1-4について」で「脱塩処理がされたブローダウン水をどの位置で復水循環路に戻すのかは、設計事項にすぎない。
ブローダウン水を脱塩処理の後に復水循環路に戻す位置を、復水脱塩装置とバイパス路の分岐点より上流側とする場合、(i)復水脱塩装置で重ねて脱塩処理を施すか、(ii)バイパス路を通過させることにより、復水脱塩装置での脱塩処理を省略するかを選択できる。
それに対し、連結位置を上記分岐点と復水脱塩装置との間とする場合、必ず、すなわち、復水脱塩装置を通過するため、ブローダウン水の脱塩処理に万全を期すことができるという程度の利点があるにすぎない。係る連結位置の選択に格別な技術的意義はなく、連結位置の影響は、当業者でなくとも、復水循環路の構造から当然に理解できる。
したがって、ブローダウン水の還流路を切換えバルブと復水脱塩装置との間に連結することは、当業者が容易に想到し得る事項である。」と主張するが、そもそも甲号各証には、この主張の裏付けとなるブローダウン水の連結位置を分岐点と復水脱塩装置の間とすることの記載もなく、しかも、主張の根拠となる連結位置が分岐点の上流側と下流側の2箇所に限られるとの理由も不明であって「脱塩処理がされたブローダウン水をどの位置で復水循環路に戻すのかは、設計事項にすぎない。」と断ずる他の説明も独自のものといわざるをえないから、相違点3-1-B及び同3-1-Cを甲第1号証及び甲第3号証?甲第7号証から当業者が容易に想到し得たとすることはできない。
そして、本件訂正発明3は、上記した当業者に予期できない優れた効果を奏するものである。
よって、本件訂正発明3は、甲第1号証及び甲第3号証?甲第7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。

VI-3-2.本件訂正発明3と甲第2発明の対比
甲第2発明は、VI-1-2.に記載したように「蒸気発生器から供給される水蒸気によりタービンを駆動して発電を行った後、水蒸気を復水器で冷却して復水となし、この復水を蒸気発生器に戻す加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置であって、蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する脱塩処理装置と、脱塩装置により脱塩処理された水を蒸気発生器に還流するための還流路と、復水を蒸気発生器に戻す復水循環路に配設された復水脱塩装置)と、復水が復水脱塩装置を通らずに蒸気発生器に還流されるようにするために復水循環路に設けられたバイパス路と、
を設けてなる加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置。」の発明である。
ここで、本件訂正発明3と甲第2発明とを対比すると、後者の「蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理するイオン交換装置」は、イオン交換により脱塩を行うから、前者の「脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填してなり、蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する電気脱イオン装置」と「蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する脱イオン装置」である点で共通する。
したがって、本件訂正発明3と甲第2発明とは、「蒸気発生器から供給される水蒸気によりタービンを駆動して発電を行った後、水蒸気を復水器で冷却して復水となし、この復水を蒸気発生器に戻す加圧水型原子力発電所の2次系ラインの水処理装置であって、
蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する脱イオン装置と、
脱塩処理された水を蒸気発生器に還流するための還流路と、
上記復水を蒸気発生器に戻す復水循環路に配設された復水脱塩装置と、
上記復水が復水脱塩装置を通らずに蒸気発生器に還流されるようにするために復水循環路に設けられたバイパス路とを設け、
上記還流路は、上記復水循環路に連結されている、
加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置。」である点で一致するが、以下の点で相違する。
相違点3-2-A
本件訂正発明3は、脱イオン装置として「脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填してなり、蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する電気脱イオン装置」を使用しているのに対し、甲第2発明は、脱イオン装置を特定していない点。
相違点3-2-B
本件訂正発明3では、バイパス路が「切換えバルブを介して」設けられているのに対し、甲第2発明では、復水を復水脱塩装置を通過させる場合とバイパスを通過させる場合をどのように切り換えるか明示されていない点。
相違点3-2-C
本件訂正発明3では、「上記還流路は、上記復水循環路における上記切換えバルブと上記復水脱塩装置との間に連結されて」いるのに対し、甲第2発明では、還流路が復水器に連結されている点。
相違点3-2-D
本件訂正発明3では、復水脱塩装置が、「カチオン交換体及びアニオン交換体を使用してなるイオン交換脱塩装置」に限定されているのに対して、甲第2発明では、脱塩装置の特定がされていない点。
これらの相違点3-2-A乃至3-2-Dは、それぞれ、相違点3-1-A乃至3-1-Dに対応するものであり、相違点3-2-Dは、実質的な相違とはいえないものの、それ以外は、上記したのと同様の理由により、甲第2号証及び甲第3号証?甲第7号証から当業者が容易に想到し得たとすることはできない。
そして、本件訂正発明3は、上記した当業者に予期できない優れた効果を奏するものである。
よって、本件訂正発明3は、甲第2号証及び甲第3号証?甲第7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。
VI-3-3.本件訂正発明3のまとめ
本件訂正発明3は、甲第2号証及び甲第3号証?甲第7号証又は甲第1号証及び甲第3号証?甲第7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。

VI-4.本件訂正発明5について
本件訂正発明5は、本件訂正発明1を引用するものであるところ、上記したとおり、本件訂正発明1は甲第1号証及び甲第3号証?甲第7号証又は甲第2号証及び甲第3号証?甲第7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないので、本件訂正発明5も同じ理由により当業者が容易に発明をすることができたものではない。

VI-5.小括
請求人が主張する無効理由1によっては、本件訂正発明1、本件訂正発明2、本件訂正発明3及び本件訂正発明5に係る特許を無効にすることはできない。

VII.むすび
以上のとおり、請求人の主張する理由及び証拠方法によって、本件訂正発明1、本件訂正発明2、本件特許発明3及び本件訂正発明5に係る特許を無効とすることができない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気発生器から供給される水蒸気によりタービンを駆動して発電を行った後、水蒸気を復水器で冷却して復水となし、この復水を蒸気発生器に戻す加圧水型原子力発電所の2次系ラインの水処理装置であって、
脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填してなり、蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する電気脱イオン装置と、
該電気脱イオン装置により脱塩処理された水を蒸気発生器に還流するための還流路と、
上記復水を蒸気発生器に戻す復水循環路に配設された復水脱塩装置と、
上記復水が復水脱塩装置を通らずに蒸気発生器に還流されるようにするために復水循環路に設けられたバイパス路とを設け、
上記還流路は、上記復水循環路に連結されており、
上記蒸気発生器から上記還流路の上記復水循環路と連結する部分までの間において、上記ブローダウン水を脱塩処理する装置が上記電気脱イオン装置しか設けられていないことを特徴とする
加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置。
【請求項2】
電気脱イオン装置の前段に濾過装置を設けてなる請求項1記載の加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置。
【請求項3】
蒸気発生器から供給される水蒸気によりタービンを駆動して発電を行った後、水蒸気を復水器で冷却して復水となし、この復水を蒸気発生器に戻す加圧水型原子力発電所の2次系ラインの水処理装置であって、
脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填してなり、蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する電気脱イオン装置と、
該電気脱イオン装置により脱塩処理された水を蒸気発生器に還流するための還流路と、
上記復水を蒸気発生器に戻す復水循環路に配設された復水脱塩装置と、
上記復水が復水脱塩装置を通らずに蒸気発生器に還流されるようにするために復水循環路に切換えバルブを介して設けられたバイパス路とを設け、
上記還流路は、上記復水循環路における上記切換えバルブと上記復水脱塩装置との間に連結され、
電気脱イオン装置の後段に、カチオン交換体及びアニオン交換体を使用してなるイオン交換式脱塩装置として上記復水脱塩装置を設けてなる加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置。
【請求項4】
蒸気発生器から供給される水蒸気によりタービンを駆動して発電を行った後、水蒸気を復水器で冷却して復水となし、この復水を蒸気発生器に戻す加圧水型原子力発電所の2次系ラインの水処理装置であって、
脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填してなり、蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する電気脱イオン装置と、
該電気脱イオン装置により脱塩処理された水を蒸気発生器に還流するための還流路と、
上記復水を蒸気発生器に戻す復水循環路に配設された復水脱塩装置と、
上記復水が復水脱塩装置を通らずに蒸気発生器に還流されるようにするために復水循環路に設けられたバイパス路と、
電気脱イオン装置の後段に、カチオン交換体及びアニオン交換体を使用してなるイオン交換式脱塩装置を設け、
電気脱イオン装置の濃縮水の一部を、イオン交換式脱塩装置により脱塩処理された水に混入するようにした加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置。
【請求項5】
ブローダウン水はpH9.2を超えるpH値を有するものである請求項1記載の加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は加圧水型原子力発電所の2次系内を流れる水の処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
加圧水型原子力発電所では、原子炉から熱を取り出す1次系と、蒸気を発生させてタービンを回す2次系とが蒸気発生器を介して分離されている。蒸気発生器は原子炉1次系の高温、高圧水から熱交換により高圧の蒸気を発生させる熱交換器である。
【0003】
2次系においては、タービンを駆動して発電を行なった後、蒸気を復水器で冷却し、復水となし、この復水を蒸気発生器に戻している。この2次系には湿分分離機器、給水加熱器等の機器が接続されており、これら機器を含む配管系統の腐食の問題があり、この腐食の発生を防止するため従来から水処理対策が施されてきた。
【0004】
従来の水処理対策は、アンモニア添加によるpH調整、ヒドラジン添加による脱酸素、及び復水脱塩装置による脱塩処理である。復水脱塩装置は図5に示すように復水器1の後段に設置され、復水器1からの復水をこの復水脱塩装置2で脱塩処理し、脱塩処理された水は脱気器3、給水加熱器4を通して蒸気発生器5に戻される。図中、6はタービン、7は発電機、8は復水ポンプである。
【0005】
蒸気発生器5では系内に持ち込まれた塩類等の不純物及び腐食生成物が濃縮されるため、蒸気発生器内部の腐食の問題や蒸気発生器の伝熱管への腐食生成物の付着の問題が発生する。伝熱管への腐食生成物の付着は伝熱性能の低下をもたらすばかりでなく、伝熱管の腐食損傷の要因ともなる。そのため、従来は図5に示すように、蒸気発生器5内の水を一部ブローダウンし、このブローダウン水を復水器1に導入し、復水と混合されたブローダウン水を復水脱塩装置2に通して脱塩処理し、しかる後、蒸気発生器5に戻すようにしていた。
【0006】
蒸気発生器の伝熱管に付着する腐食生成物は、2次系の機器及び配管内表面から発生し、復水中に微量存在するクラッドであり、このクラッドとしては大部分が鉄酸化物(鉄クラッド)である。従来、鉄酸化物の発生を防止するための水処理対策として、2次系内の水にアンモニアを添加してpHを9.2という高い値に調整して運転を行なっていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、蒸気系統の機器、配管内表面では気液二相流域であるところ、アンモニアの気液分配率が1以上のため、当該気液二相流域における液相中のアンモニア濃度が小さくなり、pHが9.2より低い値となって、結果的に鉄酸化物の生成を抑制できないという問題が生じていた。
【0008】
上記した従来技術の欠点を解決するための水質改善対策として、2次系内の水のアンモニア濃度を上昇させ、気液二相流域での液相側のpHの低下を防止して鉄酸化物の生成を抑制させることが提案されている。そのためにはpHを9.2より更に上昇させる必要があり、検討の結果、好ましくは、pH9.8となるようにアンモニア濃度を上昇させると、鉄酸化物の生成を抑制できることがわかっている。しかしながら、次のような問題点が生じる。
【0009】
即ち、pHを9.8に設定した場合、pH9.2のときに比べアンモニア濃度は約10倍となる。pH9.2に設定した場合、アンモニア濃度は約1ppm程度なので、図5に示す復水脱塩装置2にて脱塩処理を行なったとき、該復水脱塩装置2は通常、複数の脱塩塔を備えていて一つの脱塩塔については通常、10日に一度再生処理を行なえば済むが、pHを9.8に設定すると、アンモニア濃度は約10ppmとなり、1日ですべての脱塩塔の再生処理を行なう必要性が生じる。1日ですべての脱塩塔を再生処理するのは、再生時間が長時間となるので実際上不可能であり、従ってpHを9.8に設定した場合は復水脱塩装置2において通常のH-OH型運転を行なうことは不可能となる。
【0010】
尚、火力発電所における復水脱塩装置のようにアンモニア型運転を採用すると、カチオン交換樹脂におけるナトリウムイオンとアンモニウムイオンの選択係数の相違から、ナトリウムイオンが多量にリークするため、H-OH型運転に代えてアンモニア型運転を行なうこともまた不可能である。
【0011】
このように、2次系の水を高pHにすると水処理のための処理装置の稼働を連続して長時間行なうことができないという問題点があった。
【0012】
本発明者はこのような問題点を解決すべく研究を重ねた結果、復水器からの復水を復水脱塩装置で脱塩処理することなく(即ち、復水脱塩装置をバイパスして)蒸気発生器に戻し、一方、蒸気発生器からのブローダウン水を電気脱イオン装置により脱塩処理すれば、高pHであっても長時間連続して運転を行なうことが可能であるという知見を得た。本発明はこのような知見に基づき完成されたものである。
【0013】
本発明は2次系内の水のpHを9.2より上昇させることによって鉄酸化物の生成を確実に抑制して、蒸気発生器の伝熱管への鉄酸化物の付着を防止する上述のような水質改善対策を施した場合でも、2次系の水の脱塩処理を何ら支障なく行なうことができる加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明は、(1)蒸気発生器から供給される水蒸気によりタービンを駆動して発電を行った後、水蒸気を復水器で冷却して復水となし、この復水を蒸気発生器に戻す加圧水型原子力発電所の2次系ラインの水処理装置であって、脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填してなり、蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する電気脱イオン装置と、該電気脱イオン装置により脱塩処理された水を蒸気発生器に還流するための還流路と、上記復水を蒸気発生器に戻す復水循環路に配設された復水脱塩装置と上記復水が復水脱塩装置を通らずに蒸気発生器に還流されるようにするために復水循環路に設けられたバイパス路とを設け、上記還流路は、上記復水循環路に連結されており、上記蒸気発生器から上記還流路の上記復水循環路と連結する部分までの間において、上記ブローダウン水を脱塩処理する装置が上記電気脱イオン装置しか設けられていないことを特徴とする加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置、(2)電気脱イオン装置の前段に濾過装置を設けてなる上記(1)記載の加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置、(3)蒸気発生器から供給される水蒸気によりタービンを駆動して発電を行った後、水蒸気を復水器で冷却して復水となし、この復水を蒸気発生器に戻す加圧水型原子力発電所の2次系ラインの水処理装置であって、脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填してなり、蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する電気脱イオン装置と、該電気脱イオン装置により脱塩処理された水を蒸気発生器に還流するための還流路と、上記復水を蒸気発生器に戻す復水循環路に配設された復水脱塩装置と、上記復水が復水脱塩装置を通らずに蒸気発生器に還流されるようにするために復水循環路に切換えバルブを介して設けられたバイパス路とを設け、上記還流路は、上記復水循環路における上記切換えバルブと上記復水脱塩装置との間に連結され、電気脱イオン装置の後段に、カチオン交換体及びアニオン交換体を使用してなるイオン交換式脱塩装置として上記復水脱塩装置を設けてなる加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置、(4)蒸気発生器から供給される水蒸気によりタービンを駆動して発電を行った後、水蒸気を復水器で冷却して復水となし、この復水を蒸気発生器に戻す加圧水型原子力発電所の2次系ラインの水処理装置であって、脱塩室にカチオン交換体及びアニオン交換体を充填してなり、蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する電気脱イオン装置と、該電気脱イオン装置により脱塩処理された水を蒸気発生器に還流するための還流路と、上記復水を蒸気発生器に戻す復水循環路に配設された復水脱塩装置と、上記復水が復水脱塩装置を通らずに蒸気発生器に還流されるようにするために復水循環路に設けられたバイパス路と、電気脱イオン装置の後段に、カチオン交換体及びアニオン交換体を使用してなるイオン交換式脱塩装置を設け、電気脱イオン装置の濃縮水の一部を、イオン交換式脱塩装置により脱塩処理された水に混入するようにした加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置、(5)ブローダウン水はpH9.2を超えるpH値を有するものである上記(1)記載の加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置、を要旨とするものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1には加圧水型原子力発電所(PWRという)の2次系ラインにおける本発明処理装置の一例が示されている。
【0016】
蒸気発生器11は内部に伝熱管12を備えてなるもので、図示しない原子炉からの高温、高圧水の供給を受けて、伝熱管12により熱交換を行ない、蒸気発生器11内部の水を加熱し、水蒸気を発生させる。
【0017】
蒸気発生器11には蒸気管13を通してタービン14が連結され、該タービン14に復水器15が連結されている。40は発電機である。
【0018】
復水器15にて生じる凝縮水即ち復水を蒸気発生器11に還流するために復水器15と蒸気発生器11との間に、それらを連結する復水循環路としての復水管16が設けられている。この復水管16には復水器15から蒸気発生器11に向かう方向に沿って、復水ポンプ17、復水脱塩装置18、脱気器19、給水加熱器20の各装置が復水管16のライン上に設けられている。
【0019】
復水脱塩装置18を連結してある復水管16には該復水脱塩装置18と並列的に、バイパス路としてのバイパス管21が設けられ、復水を復水脱塩装置18、バイパス管21のいずれにも通水できるように構成されている。22は通水切換え用の切換えバルブである。
【0020】
蒸気発生器11にはブローダウン水を取り出すための取出管23が設けられ、この取出管23の他端はその途中に冷却器(不図示)を介して電気脱イオン装置24に連結されている。更に、電気脱イオン装置24の脱塩室出口と復水器15との間に、それらを連結する還流路としての処理水管25が設けられ、処理水を復水器15を介して蒸気発生器11に還流するように構成されている。また電気脱イオン装置24の濃縮室出口には濃縮水流出管26が設けられ、電気脱イオン装置24から流出する濃縮水を系外に排出するようになっている。
【0021】
電気脱イオン装置24としては従来公知の構造のものを使用でき、例えば図2に示すような構造のものが使用される。
【0022】
同図において27は脱塩室、28は濃縮室で、これらの脱塩室27、濃縮室28は交互に複数設けられている。一般的には脱塩室27を構成するに当たっては1個のモジュール品として製作される。即ち、四周枠状に形成された例えば合成樹脂からなる枠体の両面にそれぞれカチオン交換膜29、アニオン交換膜30を接着し、その内部空間にイオン交換樹脂(カチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂)やイオン交換繊維等のイオン交換体(以下、イオン交換樹脂を例にとって説明する)を充填して脱イオンモジュール31を製作し、該脱イオンモジュール31内のイオン交換樹脂充填部を脱塩室27として構成する。
【0023】
上記脱イオンモジュール31は離間して複数並設される。各脱イオンモジュール31、31間には四周枠状に形成されたゴムパッキン等の水密性部材からなるスペーサー32が介在され、このようにして形成される空間部を濃縮室28として構成する。濃縮室28の内部空間には、イオン交換膜29、30同士の密着を防止して濃縮水の流路を確保するために、通常、イオン交換繊維、合成樹脂製網体等の流路形成材が充填される。
【0024】
上記の如き脱塩室27と濃縮室28との交互配列体の両側部に陽極33と陰極34を配置し、特に図示しないが陽極33、陰極34の近傍にそれぞれ仕切膜を設け、該仕切膜と陽極33との間の空間部を陽極室35として構成し且つ該仕切膜と陰極34との間の空間部を陰極室36として構成する。
【0025】
脱塩室27の入口側には、蒸気発生器11からのブローダウン水を導く取出管23の他端が連結され、また、脱塩室27の出口側には還流路としての処理水管25が連結されている。一方、濃縮室28の入口側には濃縮水流入管37が連結され、濃縮室28の出口側には濃縮水流出管26が連結されている。38は電極水流入管、39は電極水流出管である。尚、濃縮水流入管37及び電極水流入管38にも、通常は、蒸気発生器11からのブローダウン水が導入される。
【0026】
上記の如く構成される加圧水型原子力発電所の2次系ラインにおける本発明処理装置の作用について以下、説明する。
【0027】
原子炉1次系より供給される高温、高圧水が蒸気発生器11内の伝熱管12の内部を流れ、ここで熱交換が行なわれて蒸気発生器11内の水は加熱され、水蒸気となる。蒸気発生器11内で発生した水蒸気は蒸気管13を通ってタービン14を駆動し、発電を行なう。
【0028】
タービン駆動後、水蒸気は復水器15で冷却され、凝縮水即ち復水が生成する。冷却水として通常、海水が用いられる。復水は復水管16を通り復水ポンプ17で加圧されて蒸気発生器11に還流される。この還流の経路は次の通りである。
【0029】
まず、定常時は、復水はバイパス管21を経由する。即ち、切換えバルブ22によって通常、流路はバイパス管21の方に切換えられており、復水はバイパス管21を流れる。従って、復水は復水脱塩装置18に流れることはなく、その結果、当該セクションにおいて脱塩処理は行なわれない。バイパス管21を通った復水は次に脱気器19に入り、ここで脱酸素処理を行ない、次いで給水加熱器20を通り、ここで復水は予備加熱された後、蒸気発生器11に流入する。
【0030】
機器類や配管系統から鉄酸化物が生成するのを防ぐために、2次系内の水(正確には蒸気発生器11に導入される水)は、pH9.2を越える値、好ましくはpH9.8に設定されている。このpH調整剤としてアンモニア水が用いられるが、アンモニア水以外に、エタノールアミン等の有機アミンであってもよい。また脱酸素を行なって還元性雰囲気を維持するために、2次系内の水にはヒドラジンが添加されている。
【0031】
2次系内の水は上記したように還元性雰囲気下におかれているので、2次系ラインに配置された機器類や配管の内表面に鉄酸化物が生成することは極力抑制されるが、仮りに鉄酸化物が生成した場合でも、蒸気発生器11からのブローダウンによって、蒸気発生器11内に鉄酸化物が量的に蓄積されるのを防止することができる。
【0032】
一方、2次系ラインには時々、補給水が供給されるが、この補給水によって系内にナトリウムイオン、塩素イオン、硫酸イオン等の塩類が持ち込まれる場合がある。このような塩類が系内の水に入り込んだとしても、蒸気発生器11からのブローダウンによって、蒸気発生器11内の水の塩濃度が増大することはない。
【0033】
蒸気発生器11内の水は取出管23を通してブローダウンされる。ブローダウンは連続的でも間欠的でもよいが、連続して行なわれるのが一般的である。
【0034】
取出管23を経てブローダウンされた高温の水は不図示の冷却器で所定の温度に冷却された後、その大部分が電気脱イオン装置24の脱塩室に導かれ、ここで脱塩処理が行なわれる。又、ブローダウン水の一部は電気脱イオン装置24の濃縮室及び電極室に導かれる。この脱塩処理においてまずブローダウン水は取出管23より、電気脱イオン装置24の脱塩室27に流入し、イオン変換樹脂の充填層を通過する際にイオン交換樹脂にイオンが吸着される。イオン交換樹脂としてカオチン交換樹脂及びアニオン交換樹脂が充填されているので、陽イオン、陰イオンの両イオンが吸着される。従って、ブローダウン水に含まれるナトリウムイオン、塩素イオン、硫酸イオン等の不純物イオンが吸着除去される他、ブローダウン水に高濃度で含まれるアンモニウムイオンも吸着除去される。
【0035】
陽極33、陰極34の両電極間には電圧が印加されており、イオン交換樹脂に吸着されたイオンは電気的に吸引されて濃縮室28に移動する。即ち、陽イオン(アンモニウムイオン、ナトリウムイオン等)は陰極34側に吸引され、カオチン交換膜29を通って濃縮室28に移動し、また陰イオン(塩素イオン、硫酸イオン等)は陽極33側に吸引され、アニオン交換膜30を通って濃縮室28に移動する。濃縮室28を流れる濃縮水はこの移動してくるイオンを受け取り、イオンを濃縮した濃縮水として濃縮水流出管26より流出する。
【0036】
脱塩室27にて脱イオンが行なわれた後の水即ち処理水は、脱塩室27の出口より処理水管25に流れ込み、この処理水管25を通って復水器15に導入される。
【0037】
濃縮室28から流出する濃縮水は濃縮水流出管26より系外に排出される。
復水器15に流れ込んだ処理水は、復水器15で生じる復水に混合され、この復水と処理水との混合水は復水管16を通り、前述した経路即ち、バイパス管21-脱気器19-吸水加熱器20を経て蒸気発生器11に還流される。
【0038】
電気脱イオン装置24による脱塩処理の際、ブローダウン水中の鉄酸化物は脱塩室27内のイオン交換樹脂やイオン交換膜(カチオン交換膜29、アニオン交換膜30)に付着する。イオン交換樹脂への鉄酸化物の付着量が多くなると、通水差圧の上昇を生じたり、電流の流れが阻害されたりする。またイオン交換膜への鉄酸化物の付着量が多くなると、同様に電流の流れが阻害される。このため、電気脱イオン装置24の前段に図示しない濾過装置を設置し、電気脱イオン装置24による脱塩処理の前に濾過処理を行なって、鉄酸化物を除去することが好ましい。ここにおいて用いる濾過装置としては、通常、復水濾過装置として用いられている中空糸膜濾過器、電磁濾過器、プリーツ型膜濾過器等一般的な濾過装置が挙げられる。
【0039】
濃縮水流出管26より流出する濃縮水中のイオンは大部分がアンモニウムイオンであり、このアンモニア濃度は脱塩処理前のブローダウン水中のアンモニア濃度に比べて一般的に10?100倍の濃度になっている。一方、濃縮水中のナトリウムイオン、塩素イオン等の不純物イオンの含有量は微量である。このため、アンモニアストリッピング法などで濃縮水からアンモニアのみを回収して、2次系ライン水のpH調整剤として再利用することも可能である。
【0040】
電気脱イオン装置24により脱塩処理された処理水は通常、pH9.2以下になる。
2次系ラインの任意の位置において、pH調整剤としてのアンモニア水が注加され、ライン水は再びpH9.2を越える値、好ましくはpH9.8にpH調整される。
【0041】
電気脱イオン装置24は薬品による再生処理が不要であるので、2次系ライン水のアンモニア濃度が高くても連続した長時間の脱塩処理を何ら支障なく行うことができる。そのため、2次系ラインを流れる復水中の不純物イオン濃度を常時、低濃度に維持することができ、機器類や配管系統の腐食を防止することができる。
【0042】
復水器15から蒸気発生器11に向かうラインにおいて、このラインを流れる復水は通常、上述の如くバイパス管21を流れ、従って復水脱塩装置18に通水されることはないが、万が一、復水器15の冷却管から海水が漏れ、復水中にリークした場合には、図示しない検出器が海水のリークを検知して、電気信号を出力し、それにより切換えバルブ22を作動させる。切換えバルブ22の作動により、バイパス管21への流路は遮断され、復水脱塩装置18への流路が開かれる。その結果、リークにより海水が混入した復水は復水脱塩装置18に通水されることになり、ここで脱塩処理が行われる。従って、蒸気発生器11へ流入する復水の中に高濃度の不純物イオンが混入されるという事態の発生は防止される。
【0043】
本発明は、図3に示すように電気脱イオン装置24の後段に、カチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂を使用してなるイオン交換式脱塩装置として、例えば塔内にカチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂を混合して充填してなる混床式脱塩装置41を設けてもよい。ブローダウン水中のナトリウムイオン、塩素イオン、硫酸イオン等の不純物イオンは含有量が微量であるため、電気脱イオン装置24ではそれらのイオンを必ずしも効率的に除去できない場合がある。そこで、電気脱イオン装置24の後段に混床式脱塩装置41を設ければ、仮に、電気脱イオン装置24で前記不純物イオンを充分に除去できなかった場合でも、後段の混床式脱塩装置41で確実にそれらの不純物イオンを除去できるものである。
【0044】
又、本例においては、図3に示した如く電気脱イオン装置24の濃縮室から流出する濃縮水の一部は放流管26aを経て系外に放流し、残部を分岐管26bを経て混床式脱塩装置41の下流側の処理水管25内を流れる該脱塩装置41の処理水と合流し、これにより、濃縮水中に含有されるアンモニアの一部を回収してpH調整剤として再利用することができる。
【0045】
尚、この場合、混床式脱塩装置41の処理水中にはナトリウムイオン等の不純物イオンはほとんど含まれておらず、又、この処理水に混合される濃縮水中の不純物イオンの含有量も前述の如く微量であるので、混床式脱塩装置41の処理水に電気脱イオン装置24の濃縮水の一部を混合しても、混合水中の不純物イオン濃度はほとんど増加しない。
【0046】
ここで混床式脱塩装置41は、充填されているイオン交換樹脂の交換容量が貫流点に達した時に薬品で再生する必要のある脱塩装置であるが、以下の理由により、通常のH-OH型運転を行うことができる。即ち、電気脱イオン装置24において、ブローダウン水に含まれるアンモニウムイオンのほとんどが除去されるので、該装置24による処理水中のアンモニウムイオン濃度は極めて低く、従って、通常のH-OH型運転を行うことができる。又、場合によっては非再生式のカートリッジタイプの混床式脱塩装置を用いることもできる。
【0047】
また、復水器15から生じる復水の量は一般的に蒸気発生器1基当たり1,500トン/hrであるのに対し、ブローダウン水の量は蒸気発生器1基当たり10?30トン/hrであり、このようにブローダウン水の処理量の方がはるかに少ないものであるから、混床式脱塩装置41の連続した長時間運転が可能である。
【0048】
上記の場合において、混床式脱塩装置41を設置する代りに、既設の復水脱塩装置18(この復水脱塩装置18にはカチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂が充填されている)をその代替装置として用いることができる。
【0049】
即ち、図4に示すように、電気脱イオン装置24の出口側に設けた処理水管25を復水脱塩装置18の入口側に連結する。このようにすれば、電気脱イオン装置24で脱塩処理された処理水を復水脱塩装置18に通水して、この装置18において、前述した混床式脱塩装置41と同様の脱塩処理を行うことができる。この場合、復水脱塩装置18は通常、複数の脱塩塔を備えているので、そのうちの一つをブローダウン水の脱塩処理に使用すればよい。又、混床式脱塩装置41の代わりに、カチオン交換樹脂を充填してなるカチオン塔と、アニオン交換樹脂を充填してなるアニオン塔とを直列に接続してなる2床式や2床3塔式等の脱塩装置を用いることもできる。
【0050】
本発明装置の別の態様として、電気脱イオン装置24の前段に、脱塩室にカチオン交換樹脂のみを充填した電気脱イオン装置を設けてもよい。このようにした場合は、前段の電気脱イオン装置で主として陽イオンのみの除去が行われ、従って、主にアンモニウムイオンを選択的に除去することができる。そして後段の電気脱イオン装置24において、除去しきれなかった残余のアンモニウムイオン及びナトリウムイオン、塩素イオン等の不純物イオンを除去する。
【0051】
尚、前段、後段共に、脱塩室にカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂を充填してなる電気脱イオン装置24を設けてもよい(つまり、電気脱イオン装置24を直列に2段繋いだ構造のものでもよい)。
【0052】
また本発明装置の別の態様として、電気脱イオン装置24の前段に、脱塩室にイオン交換体が充填されていない点を除いて該電気脱イオン装置24とほぼ同じ構造の電気透析装置を設けたものでもよい。この電気透析装置によって、主にアンモニウムイオンを選択的に除去できる。
【0053】
このように、前段で含有されるイオンの大部分を占めるアンモニウムイオンを選択的に除去しておけば、後段の電気脱イオン装置24では不純物イオンである微量のナトリウムイオンや塩素イオン等の不純物イオンを選択的に除去すればよく、従って、電気脱イオン装置24の運転条件を緩和することができ、例えば両電極間に印加する電圧を比較的小さくしても充分な脱塩処理を行うことができる。
【0054】
尚、このような電気脱イオン装置24の前段に、別の電気脱イオン装置や電気透析装置を設ける態様においても、電気脱イオン装置24の後段に混床式脱塩装置41のようなイオン交換式脱塩装置を設けることができる。
【0055】
又、上述の実施形態ではいずれも、電気脱イオン装置24で脱塩処理された処理水を処理水管25から復水管16を経由して蒸気発生器11に還流する構成としたが、本発明の別の態様として、電気脱イオン装置24の処理水を復水管16を経由することなく直接蒸気発生器11に還流させる構成としてもよい。
【0056】
前記した実施例において、電気脱イオン装置24は、脱塩室27と濃縮室28とを横方向に交互に配列し、その両側部に電極を配置した構造のものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば脱塩室と濃縮室が螺旋状に丸く形成された構造のものであってもよい。即ち、中心に棒状の形態をした一方の電極を配置し、この棒状電極を中心として脱塩室を螺旋状に伸びる方向に丸く形成し、これに伴ない、脱塩室に隣接する濃縮室も螺旋状に伸びる方向に丸く形成する。脱塩室にカチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂が充填される。螺旋体の最外周に筒状の形態をした他方の電極を配置する。本発明はこのような丸型構造を有する電気脱イオン装置を用いてもよい。
【0057】
【実施例】
次に、本発明の具体的実施例を示す。
実施例1
脱気された超純水を模擬原水として用いた。この模擬原水に含まれるイオンの組成は、ナトリウムイオン0.1?0.15ppb、塩素イオン0.7?1.2ppbであった。この模擬原水に、アンモニア、ヒドラジン及び鉄酸化物としての四三酸化鉄を下記濃度となるように添加し、蒸気発生器ブローダウン水模擬水溶液を調製した。
アンモニア 15mg/リットル(15000ppb)
ヒドラジン 0.1mg/リットル(100ppb)
四三酸化鉄 0.01mg/リットル(10ppb)
上記の模擬水溶液を電気脱イオン装置に通水し、脱塩処理を行なった。
電気脱イオン装置は、400mm×1000mmの大きさで厚み8mmの形枠の中に0.06m^(2)の部屋を4室配置し、その各部屋にカチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂を充填し、形枠の両面にそれぞれカチオン交換膜、アニオン交換膜を貼り付けてなる脱イオンモジュールを用いて構成した。2つの脱イオンモジュールをスペーサーを介して重ね合わせて濃縮室を形成すると共に、両側に電極を配置して電極室を形成し、これらを押え板で両側から押さえると共にボルトで締め付け、スタック状態の電気脱イオン装置を構成した。
上記模擬水溶液のpHを測定したところ、pH9.8であった。この模擬水溶液を400リットル/hrの流量で電気脱イオン装置に500時間通水し、初期通水後の出口水の導電率及びイオン濃度を測定すると共に、電気脱イオン装置における電流値及び通水差圧の発生の有無を測定した。
また500時間通水後の出口水の導電率及びイオン濃度を測定すると共に、電気脱イオン装置における電流値及び通水差圧の発生の有無を測定した。これらの結果を表1に示す。
【0058】
実施例2
実施例1における模擬水溶液をまず、濾過装置に通水して濾過処理を施した後、実施例1と全く同様の条件で電気脱イオン装置に通水し、脱塩処理を行なった。濾過装置としては、0.2μmの孔径を有するポリエチレン製中空糸膜フィルターで濾過面積2m^(2)のものを使用した。
実施例1と同様、初期通水後の電気脱イオン装置からの出口水及び、500時間通水後の出口水について、それぞれ導電率及びイオン濃度を測定すると共に、それぞれにおける電気脱イオン装置の電流値及び通水差圧の発生の有無を測定した。結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
上記実施例1における測定結果から、アンモニウムイオン、不純物イオン(Na^(+),Cl^(-))及び鉄酸化物は確実に除去され、良好な水質の処理水が得られることが判る。
また実施例2における測定結果から、電気脱イオン装置の前段に濾過装置を設置すると、鉄酸化物は濾過装置によって、その大部分が除去され、そのため、500時間通水後であっても電気脱イオン装置の脱塩効率がほとんど低下せず、ほぼ一定に保持されることが判る。
【0061】
【発明の効果】
本発明は蒸気発生器からのブローダウン水を脱塩処理する電気脱イオン装置を設けたので、充分な脱塩処理を行うことができ、特に電気脱イオン装置は通常のイオン交換式脱塩装置と異なり、薬品による再生処理が不要であるので、連続して長時間の運転を行うことが可能である。本発明によれば、PWRの2次系ライン水のpHを9.2を越えるpH値に設定しても脱塩処理を何ら支障なく行うことができ、例えば電気脱イオン装置の後段に混床式脱塩装置を配置した場合においても、該混床式脱塩装置を通常のサイクルで再生処理することができ、H-OH型運転が可能である。
従って、本発明によれば、2次系ライン水のpHを9.2を越える、例えば9.8という高いpH値に設定することが可能となり、その結果、2次系に設置される機器類や配管系統からの鉄酸化物の生成を最大限抑制でき、蒸気発生器内に鉄酸化物が蓄積されることによる不具合(伝熱管の伝熱性能の低下等)の発生を未然に防止できる効果がある。
【0062】
また本発明において、電気脱イオン装置の前段に濾過装置を設けた場合には、仮りに鉄酸化物が生成したとしても、それを確実に除去でき、より一段と良好な処理水質を維持できる。即ち、ブローダウン水に含まれる鉄酸化物は電気脱イオン装置による脱塩処理の前段で除去されるので、鉄酸化物が電気脱イオン装置内のイオン交換体やイオン交換膜に付着堆積することがなく、その結果、電気脱イオン装置の脱塩性能を一定に保持でき、より一段と良好な処理水質を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明処理装置を配置したPWRの2次系ラインを示す略図である。
【図2】本発明処理装置における電気脱イオン装置を示す略図である。
【図3】本発明処理装置の別の態様を示す略図である。
【図4】本発明処理装置の別の態様を示す略図である。
【図5】従来の処理装置を示す略図である。
【符号の説明】
11 蒸気発生器
14 タービン
16 復水管
18 復水脱塩装置
21 バイパス管
24 電気脱イオン装置
25 処理水管
27 脱塩室
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2011-01-14 
結審通知日 2011-01-18 
審決日 2011-04-06 
出願番号 特願平9-218028
審決分類 P 1 123・ 121- YA (B01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 敬子  
特許庁審判長 松本 貢
特許庁審判官 中澤 登
小川 慶子
登録日 2006-01-13 
登録番号 特許第3760033号(P3760033)
発明の名称 加圧水型原子力発電所の2次系ライン水処理装置  
代理人 浅村 昌弘  
代理人 永島 友悟  
代理人 末吉 剛  
代理人 安國 忠彦  
代理人 磯田 志郎  
代理人 永島 孝明  
代理人 磯田 志郎  
代理人 明石 幸二郎  
代理人 永島 孝明  
代理人 松山 美奈子  
代理人 永島 友悟  
代理人 鈴木 修  
代理人 明石 幸二郎  
代理人 浅村 昌弘  
代理人 安國 忠彦  
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