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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2008800005 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 特123条1項6号非発明者無承継の特許  H01L
管理番号 1238693
審判番号 無効2008-800006  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-01-15 
確定日 2011-06-13 
事件の表示 上記当事者間の特許第4005609号「基板処理装置及び基板処理方法並びに基板の製造方法」の特許無効審判事件についてされた平成20年10月14日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成20年(行ケ)第10429号平成21年 6月29日判決言渡)があったので、更に審理の上、次のとおり審決する。 
結論 特許第4005609号の請求項1ないし14に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
1 本件特許の設定登録までの手続の経緯
本件特許第4005609号は、平成13年4月27日に出願した特願2001-170284号(以下「原出願」という。)の一部を平成17年6月17日に新たな特許出願(特願2005-177099号)とし、平成19年8月31日にその請求項1ないし14に係る発明について特許権の設定登録がされたものである。

2 本件無効審判の手続の経緯
(1)請求人は、平成20年1月15日に本件請求項1ないし14に係る発明の特許(以下総称して「本件特許」という。)について無効審判を請求した。
(2)請求人は、平成20年2月1日付けで手続補正書、平成20年5月29日付けで第1回上申書、平成20年7月2日付けで第2回上申書、平成20年8月27日付けで審理の方式の申立書、平成20年8月29日付けで当事者尋問申出書及び尋問事項書、平成20年9月18日付けで審理再開申立書、平成20年9月24日付けで証人尋問申出書及び尋問事項書を提出し、一方、被請求人は、平成20年4月7日付けで答弁書、平成20年4月10日付けで上申書を提出した。
(3)平成平成20年10月14日付けで「本件審判の請求は、成り立たない。」とする審決がされたところ、知的財産高等裁判所において、審決取消の判決(平成20年(行ケ)第10429号、平成21年6月29日判決言渡)がされ、同判決は確定した。
(4)請求人は、平成22年4月19日付けで証人尋問申出書及び尋問事項書、平成22年5月31日差出で上申書、平成22年9月9日差出で上申書、平成22年11月5日付けで上申書、証人尋問申出書及び尋問事項書、平成23年2月15日付けで上申書及び尋問事項書を提出し、被請求人は、平成22年7月6日付けで答弁書、平成22年9月7日付けで上申書、平成22年10月25日付けで証拠説明書、平成23年2月16日付けで口頭審理陳述要領書を提出した。
(5)平成23年3月2日に口頭審理及び証拠調べ(証人尋問)が行われた。
(6)請求人は平成23年3月4日付けで証拠申出書を提出した。

第2 本件発明
本件特許は、願書に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
被処理基板をローラ搬送で搬送するローラ搬送機構を内部に備えるとともに被処理基板をローラにて搬送しつつ前記被処理基板に対して洗浄処理を施す洗浄処理部と、被処理基板を搬送する第一の搬送機構を内部に備えるとともに前記第一の搬送機構にて搬送される被処理基板に対してレジストを塗布する処理を施すレジスト塗布処理部と、前記洗浄処理部及び前記レジスト塗布処理部の外部であって前記洗浄処理部と前記レジスト塗布処理部との間に配置され前記被処理基板を搬送する自走不可である第二の搬送機構と、前記洗浄処理部または/及び前記レジスト塗布処理部に対する前記被処理基板の搬入または/及び搬出される位置の上方に配置され前記被処理基板に熱処理を施す処理部を複数積層してなる第一の熱処理部と、被処理基板をローラ搬送で搬送するローラ搬送機構を内部に備えるとともに被処理基板をローラにて搬送される前記被処理基板に対して現像処理を施す現像処理部と、この現像処理部の外部に配置され前記被処理基板を搬送する自走不可である第三の搬送機構と、前記現像処理部に対する前記被処理基板の搬入または/及び搬出される位置の上方に配置され前記被処理基板に熱処理を施す処理部を複数積層してなる第二の熱処理部と、を具備し、前記第二の搬送機構は、前記第一の熱処理部に対して前記被処理基板を搬入出自在であり、前記第三の搬送機構は、前記第二の熱処理部に対して前記被処理基板を搬入出自在であることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
被処理基板をローラ搬送で搬送するローラ搬送機構を内部に備えるとともに被処理基板をローラにて搬送される前記被処理基板に対して現像処理を施す現像処理部と、この現像処理部の外部に配置され前記被処理基板を搬送する自走不可である搬送機構と、前記現像処理部に対する前記被処理基板の搬入または/及び搬出される位置の上方に配置され前記被処理基板に熱処理を施す処理部を複数積層してなる熱処理部と、を具備し、前記搬送機構は、前記熱処理部に対して前記被処理基板を搬入出自在であることを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
前記搬送機構は、前記現像処理部に対する前記被処理基板の搬入または/及び搬出される位置の上方に配置された熱処理部とは別の熱処理部に対して前記被処理基板を搬入出自在であることを特徴とする請求項2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記現像処理部は、前記被処理基板に紫外線を照射して処理を施す紫外線処理室を有することを特徴とする請求項2又は請求項3記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記熱処理部は、高い位置の処理部ほど高い温度で処理を行うことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項6】
被処理基板をローラ搬送で搬送する第一のローラ搬送機構を内部に備えるとともに被処理基板を第一のローラ搬送機構のローラにて搬送しつつ前記被処理基板に対して洗浄処理を施す洗浄処理部と、被処理基板を搬送する第一の搬送機構を内部に備えるとともに前記第一の搬送機構にて搬送される被処理基板に対してレジストを塗布する処理を施すレジスト塗布処理部と、前記洗浄処理部及び前記レジスト塗布処理部の外部であって前記洗浄処理部と前記レジスト塗布処理部との間に配置され前記被処理基板を搬送する自走不可である第二の搬送機構と、前記洗浄処理部または/及び前記レジスト塗布処理部に対する前記被処理基板の搬入または/及び搬出される位置の上方に配置され前記被処理基板に熱処理を施す処理部を複数積層してなる第一の熱処理部と、被処理基板をローラ搬送で搬送する第二のローラ搬送機構を内部に備えるとともに被処理基板を第二のローラ搬送機構のローラにて搬送される前記被処理基板に対して現像処理を施す現像処理部と、この現像処理部の外部に配置され前記被処理基板を搬送する自走不可である第三の搬送機構と、前記現像処理部に対する前記被処理基板の搬入または/及び搬出される位置の上方に配置され前記被処理基板に熱処理を施す処理部を複数積層してなる第二の熱処理部と、を具備し、前記第二の搬送機構は、前記第一の熱処理部に対して前記被処理基板を搬入出自在であり、前記第三の搬送機構は、前記第二の熱処理部に対して前記被処理基板を搬入出自在であり、前記第一の熱処理部及び前記第二の熱処理部とは別の熱処理部を有し、前記第三の搬送機構が前記別の熱処理部に対して前記被処理基板を搬入出自在であることを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
前記現像処理部は、前記被処理基板に紫外線を照射して処理を施す紫外線処理室を有することを特徴とする請求項6記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記第一の熱処理部、前記第二の熱処理部または/及び前記別の熱処理部は、高い位置の処理部ほど高い温度で処理を行うことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
被処理基板を複数収納自在に構成されたカセットを複数配置するとともに、前記カセットに対して被処理基板を搬入出自在に構成され所定方向に自走自在である第四の搬送機構を配置するカセット配置部を有することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記第四の搬送機構が自走する前記所定方向とほぼ直交する方向に自走自在であり、前記被処理基板を支持して搬送する別の搬送機構を有することを特徴とする請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記第四の搬送機構と前記別の搬送機構とは前記被処理基板を受け渡し自在に構成されていることを特徴とする請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記第四の搬送機構と前記第三の搬送機構とは、前記第二の熱処理部又は前記別の熱処理部を介して受け渡し自在に構成されていることを特徴とする請求項9から請求項11のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれかに記載の基板処理装置を使用して、被処理基板を順次処理することを特徴とする基板処理方法。
【請求項14】
請求項1から請求項12のいずれかに記載の基板処理装置を使用して、被処理基板を製造することを特徴とする基板の製造方法。」

第3 当事者の主張
1.請求人の主張
請求人は、「特許第4005609号の特許は、発明者でない者であってその発明について特許を受ける権利を承継しないものの特許出願(冒認出願)に対してされたものであり、特許法第123条第1項第6号に規定される無効理由に該当する。」と主張し、証拠方法として以下の証拠を申し出ている。

[証拠方法]
(1)書証
ア 請求書に添付したもの
甲第 1号証:特許第4005609号公報(本件特許公報)
甲第 2号証:特開2002-329661号公報(原出願の公開公報)
甲第 3号証:平成19年11月20日付け警告書
甲第 4号証:特開2002-151384号公報(請求人の出願の公開公報)
甲第 5号証:特開2002-334918号公報(請求人の出願の公開公報)
甲第 6号証:特開2002-289501号公報(請求人の出願の公開公報、平成20年2月1日付け手続補正により補正)
甲第 7号証:特開2002-313699号公報(請求人の出願の公開公報)
甲第 8号証:特開2002-324740号公報(請求人の出願の公開公報)
甲第 9号証:平成19年12月12日付け株式会社磯部調査事務所作成の調査報告書(人物Aの身上調査)
甲第10号証:日昇電気株式会社の商業登記簿謄本
甲第11号証:人物Aが所有してた土地の不動産登記簿謄本
甲第12号証:人物Aの除住民票
甲第13号証:第一新田荘の写真4葉
甲第14号証:特開2004-72120号公報(人物Aの他の出願の公開公報)

イ 平成20年5月29日付け第1回上申書に添付したもの
甲第15号証:平成20年2月25日付けの東京エレクトロン株式会社知的財産部部長宛の人物B弁理士の書簡
甲第16号証:平成20年2月20日付け却下理由通知書
甲第17号証:平成20年4月4日付け手続却下の処分

ウ 平成20年7月2日付け第2回上申書に添付したもの
甲第18号証:平成16年10月15日付け包括委任状提出書
甲第19号証:平成16年10月20日付け包括委任状番号通知

エ 平成22年5月31日差出の上申書に添付したもの
甲第23号証:特願2001-170284号の出願書類(原出願の特許願、明細書、図面、要約書)
甲第24号証:特願2001-132191号の要約書
甲第25号証:特開2002-330296号公報(特願2001-132191号の公開公報)
甲第30号証:審決取消訴訟における平成21年1月19日付け証拠説明書
甲第43号証:審決取消訴訟における平成21年4月3日付け証拠説明書
甲第44号証:人物Cの写真
甲第45号証:平成21年2月27日付け人物Dの陳述書(平成23年3月4日付け証拠申出書により再提出)
甲第46号証:請求人社内の人物Cの人事データを印刷したもの
甲第47号証:請求人従業員の時の人物Cの名刺
甲第48号証:株式会社パテントビジネスサービスの人物Cの名刺
甲第49号証:株式会社パテントビジネスサービスの商業登記簿謄本
甲第50号証:株式会社パテントビジネスサービスのホームページを印刷したもの
甲第51号証:2007年8月8日に送信された電子メールを印刷したもの
甲第52号証:2007年8月11日に送信された電子メールを印刷したもの
甲第53号証:2003年11月4日にシグマ国際特許事務所で受信されたFAX
甲第54号証:審決取消訴訟における平成21年3月2日付け訴訟委任状
甲第55号証:シグマ国際特許事務所の請求書に関するデータ及び請求書
甲第56号証:平成21年3月27日付け高山宏志の陳述書
甲第57号証:平成10年5月7日付けの請求人から鈴栄内外国特許事務所に宛てた年金管理依頼書等
甲第58号証:IPDLの公報テキスト検索における検索キーワード「現像の脱色処理」等での検索結果等を印刷したもの
甲第59号証:2000年8月28日受付の知的財産権報告書兼発明等譲渡証等
甲第60号証:2000年11月15日にKOBAYASHIから人物C等に送信された電子メールを印刷したもの等
甲第61号証:「技術的証人尋問に係る尋問事項」の表題のある文書
甲第62号証:「LCD製造装置関連の用語の意味」の表題のある手書き文書
甲第63号証:平成21年9月1日付けの警告状
甲第64号証:平成21年9月15日付けの「回答書」の表題のある文書
甲第65号証:シグマ国際特許事務所麹町オフィスのホームページを印刷したもの
甲第66号証:原出願と請求人の特許出願の比較を説明する文書
甲第67号証:IPDLの公報テキスト検索における検索キーワード「特開平2-144333号公報」での検索結果を印刷したもの

オ 平成22年9月9日差出の上申書に添付したもの
甲第21号証:2007年12月3日付け東京エレクトロン株式会社知的財産部部長宛の書簡
甲第22号証:平成21年1月9日付け東京エレクトロン株式会社知的財産部部長の宣誓供述書
甲第26号証:平成20年6月11日付け株式会社磯部調査事務所作成の調査報告書(人物Bの特殊調査)
甲第27号証:IPDLの公報テキスト検索における検索キーワード「被処理基板 いわゆるフォトリソグラフィー技術により回路パターンを形成する」等での検索結果を印刷したもの
甲第28号証:2001年3月1日受付の知的財産権報告書兼発明等譲渡証等
甲第29号証:2009年1月9日付け人物Eの宣誓供述書
甲第31号証:審決取消訴訟における平成21年1月19日付け原告準備書面(第1回)
甲第32号証:審決取消訴訟における平成21年1月29日付け原告準備書面(第2回)
甲第33号証:審決取消訴訟における平成21年4月3日付け原告準備書面(第3回)
甲第36号証:審決取消訴訟における平成21年1月29日付け証拠説明書

カ 平成22年11月5日付け上申書に添付したもの
甲第68号証:審決取消訴訟における平成21年3月3日付け被告第1準備書面

キ 平成23年3月4日付け証拠申出書に添付したもの
甲第71号証:「尋問事項についての考察ver1.0」の表題のある文書
甲第76号証:2003年10月10日に送信された電子メール

ク 欠番
甲第20号証、甲第34、35号証、甲第37?42号証、甲第69?70号証及び甲第72?75号証は欠番となっている。

(2)人証
ア 証人氏名 人物D
住所 住所A
職業 シグマ国際特許事務所横浜オフィス 弁理士

イ 証人氏名 人物B
住所 住所B
職業 インフォート国際特許事務所 弁理士

ウ 証人氏名 人物C
住所 住所C
職業 株式会社パテントビジネスサービス 会社役員

2 被請求人の主張
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と主張し、証拠方法として以下の証拠を申し出ている。

[証拠方法]
(書証)
・平成22年10月25日付け証拠説明書に添付したもの
乙第1号証:人物Aの運転免許証

第4 当審の判断
1 事実関係
1-1 証人の証言内容
(1)人物Dの証言内容
(ア)シグマ国際特許事務所は2003年1月に開設した。
(イ)人物Aの出願の代理を受任したのは、2001年に当時弁理士でなかった人物Bから、人物Aが既に特許庁に対して特許出願をしていて、人物Aが願書表示上の住所には不在になるというケースが非常に多く、特許庁とのやりとりが始まると書類を紛失してしまう可能性があるので代理人を引き受けてほしいという依頼があった。私の記憶では2001年に中途受任したものと思っていたが、実際に特許庁に代理人受任届が出されたのは2003年だったようだ。人物Bがシグマ国際特許事務所に入所してからは担当は人物Bに代わった。
(ウ)2000年に高田馬場で事務所を開業しており、開業した翌年に、人物Aを名乗る人物が高田馬場の浜谷第7ビルの事務所に来ており、いきなり拒絶理由通知書を手渡されて、事務所の中のホワイトボードにいろいろ殴り書きをして、この審査官の判断はおかしいということを盛んに言っていた。その後カラーコピーを私に手渡し、この装置はこの特許を侵害している、技術的範囲に属するという説明を口頭で受けたので、特許に関してはかなり詳しい人物であると私は記憶している。人物Aを名乗る人と面会した以外は人物Aとは電話や書面のやりとりをした記憶はない。
(エ)高田馬場の事務所で会った人物は、私と同年代かちょっと上ぐらいというふうに認識しており、甲第45号証の別紙3の写真の人物や乙第1号証の写真の人物は年齢が明らかに違うから会った人物ではない。高田馬場の事務所で会った人物は、甲第44号証の人物か断定はできないがこの人物であったろうなという印象である。(再尋問では)多分人物Cに間違いない。大分確信は強くなった。
(オ)本件の審決取消訴訟の第1回準備書面を見たところ、人物Bが冒認をしているかのような書き方をされていたので、事務所に残っている人物A関連の資料を探して、人物Aとはどういう人物かとか、そういう資料が残っていないか探した。人物A関連のファイル等、事件ファイルはすべて麹町の方に既に移管されて何もなかったが、会計資料だけ残っており、人物Aの案件を私の方から人物Bに譲った後の全ての会計、請求書の送り先が人物Aではなくてパテントビジネスサービスという会社に書類と請求書が送られているということを発見した。
(カ)平成21年2月20日に人物Bと東京エレクトロンとの面会が行われた際に、人物Bは、人物Cから明細書を渡されて、図面が手書きだったので、その図面に関しては図面屋さんに出して、上がってきたものを書類を整えて私が提出した、と答えていた。
(キ)包括委任状をもらう際に人物Aに直接会ったことはなかった。
(ク)人物Aを名乗る人物に対して人物Aであることの確認はしなかった。
(ケ)人物Bは人物Aの出願が冒認であるというようなことは言っていない。

(2)人物Bの証言内容
(コ)人物Aは人物Cに紹介された。人物Aと最初に会ったのは五、六年前で、場所は町田で会った。顔合わせのために会ったが、余り話さない方なので技術的な話はなかったと思う。人物Aとは3回ぐらい会った。
(サ)人物A名義の特許出願のシグマ国際特許事務所の事務所費用は、人物Cからパテントビジネスサービスで払うので請求してくれと言われたので、パテントビジネスサービスに請求した。パテントビジネスサービスから金額は期限どおりに支払われていたと思う。
(シ)人物A名義の出願についての指示は人物Cから来た。人物Aから直接指示が来たことはない。
(ス)人物Aの出願の代理は人物Cを介して依頼された。この時人物Aには会っていない。
(セ)人物Aの原出願の明細書は、人物Cから直接手渡された。原出願の明細書を作成したのは誰かわからない。願書、明細書はタイプされたものを渡された。願書には平成13年4月27日の日付もタイプされていた。図面はフリーハンドだったのでトレーサーに依頼して清書した。手書きの図面は誰が書いたか知らない。図面の清書が出来上がった段階で清書図面の確認を人物C、人物Aにはとっていない。要約書は後で私の方で取り違えてしまうが、そこについていたかどうかもよく覚えていない。書類を受けて、形式のチェックをして郵送で出願した。
(ソ)出願書類を整えて提出する時に特許印紙は恐らく私が勤務していた事務所の近くの郵便局で自分で買いに行ったと思う。特許印紙を買う費用は、図面の実費プラス必要な費用を人物Cからいただいたので、その中から払った。
(タ)原出願の代理人に関して、人物Cから誰か弁理士を紹介してほしいという話があり、多分審査請求した後に人物Cに、人物Dを紹介した。人物Dに人物A名義の出願の代理のことを話した時には人物Aにまだ会っていなかったと思う。そのころ人物Aと電話で話したこともない。
(チ)原出願とその分割出願の代理人になって、これらの出願について、人物Aと打合せはしていない。拒絶理由等中間処理の打合せは人物Cとした。人物Aに確認はとって下さいということは言っているが、人物Aと直接は打合せはしていない。
(ツ)本件分割出願3件のうちの1つについて、2004年1月26日に発せられた拒絶理由通知への対応は、意見書は私が作成し補正案は人物Cからいただいた。人物Aとは中間処理について直接話はしていない。
(テ)甲第3号証の警告書を送ることを発案したのは誰だかはわからないが、人物Cからの指示で警告書を送った。人物Aが関与していないかどうかはわからない。警告書の送付先を決めたのは人物Cである。警告書の文面は、私が素案を書いて、人物Cに直してもらった。
(ト)本件無効審判及び本件審決取消訴訟において、人物Aと協議していない。
(ナ)人物Aが本当に発明者であるかどうかの確認はできなかった。
(ニ)人物Cが人物Aの原出願の明細書を書いたという話は聞いていない。人物Cは原出願は人物Aが発明したものだという言い方はしていない。
(ヌ)人物Aが発明者であることの確認をするため、人物Cを介して及び人物Aへ直接電話することを試みたが、いなかったりつかまらなかったりとかで確認できなかった。
(ネ)甲第53号証のFAX、甲第51、52号証の電子メールのプリントアウトしたものは、伊東国際特許事務所における会合にF弁理士に促されて持参したものである。

(3)人物Cの証言内容
(ノ)人物Aとは30年ほど前に日本電気株式会社で知り合った。
(ハ)原出願の特許出願の手続作業を人物Bに依頼していない。
(ヒ)中央区京橋のシグマ国際特許事務所で、人物Aの件でと言って人物Dと会い、人物Aの出願の拒絶理由通知の対応について説明した。
(フ)甲第53号証のFAXは私が書いた。人物Bから電話を受けてこのように書けと言われた。私の名前を書こうとしたら、そこは人物Aの名前にしてくれと言うから人物Aの名前に変えて字を間違えた。
(ヘ)クレームの補正案を作る時、人物Aとうちの会社で会って、クレームの補正案は私が作った。
(ホ)審決取消訴訟の代理人のG弁護士はうちの税理士を通じて知った。そういういきさつからG弁護士が審決取消訴訟の代理人に選任されたと記憶している。
(マ)台湾のLCDメーカーから弊社が修理依頼を受けて、人物Aを送った。LCDの製造装置等について修理する能力が人物Aにはあった。日本電気時代に人物Aも私も入社一、二年くらいは明細書を書かなくてはいけなかった。
(ミ)人物Aの出願のシグマ特許事務所の費用を株式会社パテントビジネスサービスで立て替えた。立て替えた費用はまだ人物Aには請求していない。
(ム)原出願の発明者が人物Aであるかどうかは知らない。

1-2.書証の記載事項
(メ)甲第2号証
a.「このような、処理を施す例として、被処理基板、例えば半導体ウエハにおけるSOD膜、例えばLow-K膜(低誘電率膜)等の加熱処理について図26を参照して具体的に述べる。この図26は、加熱処理前雰囲気設定工程或いは加熱処理後雰囲気設定工程における工程が基板の処理に対する影響を指し示すための表である。Low-K膜の加熱処理においては、基板と基板に形成されたLow-K膜とが同温だと仮定すると、基板の温度が所定の温度、例えば約200℃の温度或いはそれ以上の温度において、基板の周囲の雰囲気の酸素濃度が所定の濃度以上、例えば約30?100ppm、好ましくは30ppm以上だとLow-K膜が酸化等の不具合を起こしてしまうということを本発明者は発見するに至った。」(段落【0136】)

(モ)甲第11号証
a.「【権利部(甲区)】(所有権に関する事項) …(略)…
【原因】 【権利者その他の事項】
平成5年6月25日売買 所有者 住所D
人物A
順位2番の登記を移記
平成12年5月29日住所移転 住所 住所E」(第1ページ)

(ヤ)甲第23号証
a.「【書類名】 特許願
…(略)…
【提出日】 平成13年4月27日
…(略)…
【発明者】
【住所又は居所】 住所D
【氏名】 人物A
【特許出願人】
【住所又は居所】 住所D
【氏名】 人物A 」(第1ページ)

(ユ)甲第53号証
a.「特願2001-170284号の代理をお願いいたします。B弁理士からも話がいっていると思いますが。」
b.「この親願は、また審査請求せずに分割してその分割を早期審査請求して下さい。尚分割出願用Claimは、FAXにて3枚に案を記載いたしております。」

(ヨ)甲第55号証
a.「請求日 …(略)… 請求先 合計請求額
2003/7/30 …(略)… 人物A …(略)…
2003/7/30 …(略)… 人物A …(略)…
2003/9/29 …(略)… 人物A …(略)…
2003/10/6 …(略)… 人物A …(略)…
2003/12/1 …(略)… 人物A …(略)…
2003/12/9 …(略)… 人物A …(略)…
2004/1/27 …(略)… 人物A …(略)…
2004/3/23 …(略)… 人物A …(略)…
2004/6/23 …(略)… 人物A …(略)…
2004/8/27 …(略)… 人物A …(略)…
2004/10/26 …(略)… PBS …(略)…
2004/10/26 …(略)… PBS …(略)…
2005/2/1 …(略)… PBS …(略)…」(第1ページ)

(ラ)甲第68号証
a.「被告は,その後,時間があったこと,特許に関心があったことから,装置の制御関係が関連しそうな内容の特許,モーターでもシリンダーでもロボット技術でも,機構と制御,コントロールすることに関連しそうな特許等を読みこむ生活を送った。また,FPDインターナショナル …(略)…といった展示会にも足を運んだ。そのような最中,大日本スクリーンの特許 …(略)…が目に留まり,同特許の記載を出発点として他の特許等も参照するなどしながら被告により発明されたのが本件原出願発明である。」(第11ページ第4?12行)

2 本件特許が、発明者でない者であってその発明について特許を受ける権利を承継しないものの特許出願に対してされたものであるか否かについての検討・判断
(1)人物Aが発明者であることについて疑念を抱かせる事情
(a)前記書証の記載事項(ヤ)で摘記したように、甲第23号証である原出願の出願書類の願書には、発明者であり特許出願人でもある人物Aの住所は「***」と記載されている。一方、前記書証の記載事項(モ)で摘記したように、甲第11号証の人物Aが所有していた土地の不動産登記簿謄本には、人物Aは、原出願の出願日よりも10月以上前である平成12年5月29日に東京都大田区に住所移転したことが記載されており、原出願を出願した時に、人物Aは原出願の願書表示の前記住所には居住していなかった事実が認められる。当該事実及び原出願は代理人が選任されていないことも併せ考えれば、特許庁との手続に必要となる願書の住所を実際の住所ではなく移転前の住所とした事情、また、早期に住所表示の手続補正を行わなかった事情について、特許権の取得を望む発明者の行為として疑念が生ずる。
(b)前記証言内容(ト)によれば、人物Bは、本件無効審判及び本件無効審判の第1次審決に対する審決取消訴訟において、代理人を辞任するまでに代理人として人物Aと協議していないことが事実と認められる。また、前記証言内容(ヌ)によれば、人物Bは、人物Cを介して及び人物Aへ直接電話することを試みて、人物Aが発明者であることの確認をしようとしたが、人物Aに確認することができなかったことが事実と認められる。これらの事実に照らすと、冒認出願を理由とする無効審判及び無効審判に係る審決取消訴訟ということの重大性に鑑みれば、人物Aが代理人である人物Bに直接連絡することに積極的にならなかった行為は、発明者の行為として疑念が生ずる。
(c)前記証言内容(ミ)によれば、人物Aの出願の費用は、人物Cが代表を務める株式会社パテントビジネスサービスで立て替え払いされ、立て替えた費用を人物Aに請求していないことが事実と認められ、株式会社パテントビジネスサービスが立て替えた人物Aの出願の費用はかなり高額(甲第55号証参照)である。これらの事実を社会通念に照らすと、人物Aが真の発明者であって特許を受ける権利を有していたとすることに疑念が生ずる。
(d)前記証言内容(キ)、(ス)によれば、人物Aの出願の代理人となった人物Dと人物Bは、代理を引き受ける際に人物Aに会っていないことが事実と認められる。当該事実は人物Aが真の発明者であり出願人であるということについて疑念が生ずる。
(e)前記書証の記載事項(ラ)で摘記したように、甲第68号証である審決取消訴訟の準備書面には、人物Aは展示会に足を運び大日本スクリーン株式会社の特許を出発点として他の特許等も参照しながら発明した旨の記載がされているが、前記書証の記載事項(メ)で摘記したように、甲第2号証である原出願の公開公報には、基板の周囲の雰囲気の酸素濃度が所定の濃度以上だとLow-K膜が酸化等の不具合を起こすことを発見した旨の記載がされており、このようなLow-K膜の酸化等の不具合は、特許等の参照のみで発見することはできない。そうすると、人物Aが真の発明者であることには疑念が生ずる。
(f)前記証言内容(フ)によれば、甲第53号証である2003年11月4日にシグマ国際特許事務所で受信されたFAXは人物Cが書いたことが事実と認められるが、甲第53号証のFAXには、人物Aの名前を使って(当審注:伊藤美兵と表記を間違えている)原出願の審査請求をしないことや、分割してその分割を早期審査請求すること等の特許権利化のための重要な指示内容が記載されている(記載事項(ユ)参照)。前記人物Cが人物Aの名前を使って原出願についての指示をFAXで行った行為は、人物Aが真の発明者であることに疑念を抱かせる。

(2)被請求人の人物Aが発明者であることについての立証
当審は、被請求人に対して、人物Aが本件特許の特許出願に係る発明を実際に行ったことを裏付ける具体的な証拠方法として、出願に関する書類、発明に関するアイデアを記載したノート等のメモ、本人が研究活動のため集めた基板処理に関する資料、基板処理に関する研究会・学会・展示会の資料等、本件特許出願や基板処理の研究に関するパソコンのデータ等の物証、又は人物Aが発明者であることを証言できる証人等を例示し、証拠の提出又は証人尋問の申し出を促してきた(平成22年8月9日付けの応対記録参照)。しかしながら、人物Aが本件特許の特許出願に係る発明を実際に行ったことを裏付ける証拠の提出はなく、また、人物Aが亡くなっているという事情もあり、人物Aが本件特許の特許出願に係る発明を実際に行ったことを裏付ける資料については、現在も見つけることはできていない。(第1回口頭審理及び証拠調べ調書参照)。

(3)当審の判断
前記(a)ないし(f)の人物Aが発明者であることについて疑念を抱かせる事情や、人物D、人物B及び人物Cの証言内容を全体として見れば、人物Aが原出願に係る発明及び原出願の分割出願である本件特許の特許出願に係る発明の真の発明者であると考えるには不自然な点が多いといわざるを得ない。また、前記書証の記載事項(ヨ)によれば、人物Aの出願に関する費用は2004年8月27日以前は人物Aに請求されているし、人物Cの証言内容(マ)によれば、人物AはLCD装置について修理することができる程度の知識があり、特許明細書も書いた経験があることが事実と認められるから、人物Aが真の発明者である可能性も否定できないし、人物Aが発明者であることについて疑念を抱かせる個々の事情についても人物Aが真の発明者であることと全く両立しないわけではない。したがって、人物Aが本件特許の特許出願に係る発明の真の発明者であるか否かについては、真偽不明である。
ところで、本件無効審判の第1次審決に対する審決取消請求事件(平成20年(行ケ)第10429号)の判決において、「冒認出願(123条1項6号)を理由として請求された特許無効審判において,『特許出願がその特許に係る発明の発明者自身又は発明者から特許を受ける権利を承継した者によりされたこと』についての主張立証責任は,特許権者が負担すると解すべきである。」と判示されていることから、本件特許の特許出願が人物Aによりされたことの主張立証責任は特許権者である被請求人が負担すべきである。しかし、前記「(2)被請求人の人物Aが発明者であることについての立証」に記載したように、当審は、被請求人に対して、人物Aが真の発明者であることを裏付ける証拠方法を具体的に例示し、証拠の提出又は証人尋問の申し出を促してきたが、人物Aが本件特許の特許出願に係る発明を実際に行ったことを裏付ける証拠の提出はなく、また、人物Aが亡くなっているという事情もあり、人物Aが本件特許の特許出願に係る発明を実際に行ったことを裏付ける資料については、現在も見つけることはできていない状況であるから、本件特許の特許出願が人物Aによりされたことの主張立証責任が被請求人によって果たされているとはいえない。
したがって、人物Aが本件特許の特許出願に係る発明の真の発明者であるか否かについては、真偽不明であり、且つ本件特許の特許出願が人物Aによりされたことの主張立証責任が被請求人によって果たされているとはいえない以上、本件無効審判の第1次審決に対する審決取消請求事件(平成20年(行ケ)第10429号)の判決で判示された主張立証責任の原則に従って判断すると、本件特許は特許法第123条第1項第6号の「その特許が発明者でない者であつてその発明について特許を受ける権利を承継しないものの特許出願に対してされたとき」に該当すると結論するよりほかない。

第5 むすび
以上のとおりであるから本件の請求項1ないし14に係る特許は、特許法第123条第1項第6号の規定に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定により準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-04 
結審通知日 2008-09-10 
審決日 2008-10-14 
出願番号 特願2005-177099(P2005-177099)
審決分類 P 1 113・ 152- Z (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 新井 重雄  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 村田 尚英
小松 徹三
森林 克郎
岡田 吉美
登録日 2007-08-31 
登録番号 特許第4005609号(P4005609)
発明の名称 基板処理装置及び基板処理方法並びに基板の製造方法  
代理人 木田 博  
代理人 舟橋 定之  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  
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