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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A47K
管理番号 1238725
審判番号 不服2009-20708  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-27 
確定日 2011-06-16 
事件の表示 平成11年特許願第286058号「浴水浄化循環装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 4月17日出願公開、特開2001-104181〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は,平成11年10月6日に特許出願としたものであって,平成21年7月24日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年10月27日に審判請求がなされるとともに,手続補正がなされたものである。
その後,当審より,平成22年12月21日付けで,平成21年10月27日付けの手続補正に対して補正の却下の決定を行い,同日付で拒絶理由を通知したところ,平成23年2月21日に意見書及び手続補正書が提出された。


第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は,平成23年2月21日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。
「【請求項1】
塩素等の浄化剤を貯留する浄化剤貯留部と、
浄化剤投入制御部プログラムが記憶されるプログラム記憶部と、
予め予想した入浴人数データテーブル、入浴時間データテーブル、入浴間隔データテーブル、浴水入替間隔データテーブル、カレンダデータテーブル等の複数の入浴パターンのデータが予め記録された入浴パターン記録部と、
該入浴パターン記録部から読み出される入浴パターンデータに対応する名称、アイコン、その他のメニュー情報を出力表示する表示手段と、
該表示手段に表示される複数の入浴パターンのうち、使用者の入浴形態に最も近い各入浴パターンを選択入力する入浴パターン選択手段と、
該入浴パターン選択手段により選択入力された前記入浴人数データテーブル、入浴時間データテーブル、入浴間隔データテーブル、浴水入替間隔データテーブル、カレンダデータテーブル等のデータを適切に組み合わせ、浄化剤投入量、投入時刻等を含んで生成された浄化剤投入データを含む投入データテーブルに基づいて浄化剤投入する時刻に、前記浄化剤貯留部を投入制御する浄化剤投入制御手段とを備えたことを特徴とする浴水浄化循環装置。」(以下,「本願発明」という。)


第3 引用刊行物
(1)刊行物1
当審の拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された刊行物である,特開平11-47012号公報(以下,「刊行物1」という。)には,以下の記載がある。
(1a)「【請求項1】 浴槽の浴水を循環ポンプにより吸引し、浄化槽と殺菌手段を経て循環させて上記浴槽に戻す風呂循環浄化装置において、
循環する浴水に電圧を印可し、浴水に流れる電流を検出する電流検出手段と、
この電流検出手段により検出された電流値に基づいて上記風呂循環浄化装置を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする風呂循環浄化装置の制御装置。
【請求項2】(記載を省略)
【請求項3】(記載を省略)
【請求項4】 制御手段は、時刻を出力する計時手段と、
電流検出手段により検出された電流値と上記計時手段から出力された時刻を記憶する電流・時刻記憶手段と、
この電流・時刻記憶手段に記憶された電流値と時刻に基づいて入浴の有無と汚濁度合いを判定する入浴・汚濁度合判定手段と、
この入浴・汚濁度合判定手段で入浴したと判定された時刻と汚濁度合いを記憶する入浴・汚濁度合い記憶手段と、
この入浴・汚濁度合い記憶手段の出力から入浴パターンを算出する入浴パターン算出手段と、
この入浴パターン算出手段で算出された入浴パターンを記憶する入浴パターン記憶手段と、
この入浴パターン記憶手段で記憶された入浴パターンに基づいて殺菌を行う時刻を定め、殺菌手段に殺菌動作を指令する殺菌動作指令手段とを備えたことを特徴とする請求項1記載の風呂循環浄化装置。
【請求項5】 電極部に流入する浴水の電流値を検出する電流検出ステップと、
上記検出された電流値と検出された時刻を電流・時刻記憶手段に記憶する第1の記憶ステップと、
上記記憶された電流値と時刻に基づいて入浴の度合いと浴水の汚濁度合いを判定する判定ステップと、
判定された入浴の度合い、浴水の汚濁度合及び時刻を記憶させる第2の記憶ステップと、
記憶された時刻とこの時刻に対応する入浴の度合いに基づいて曜日毎の1日の入浴パターンを算出するパターン算出ステップと、
上記入浴パターンを入浴パターン記憶手段に記憶させる第3の記憶ステップと、
記憶された上記入浴パターンに基づいて、殺菌動作指令手段により塩素を投入する殺菌動作指令ステップとを備えたことを特徴とする風呂循環浄化装置の制御方法。
【請求項6】 殺菌動作指令ステップは、記憶された入浴パターンの入浴時間帯の一定時間前に塩素剤を投入することを特徴とする請求項5記載の風呂循環浄化装置の制御方法。
【請求項7】(記載を省略)
【請求項8】(記載を省略)」(【特許請求の範囲】)

(1b)「この発明は、循環している浴水を浄化槽により浄化し、塩素、オゾン等を用いて殺菌し、浴水を長期間入れ換えるることなく入浴できる風呂の風呂循環浄化装置とその制御方法に関する。」(段落【0001】)

(1c)「実施の形態2.以下、この発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態は、実施の形態1に浴水の汚れの経時変化も考慮して、浄化を行うものである。図4はこの発明の実施の形態2を示す風呂循環浄化装置の構成図、図5は入浴状態と電流の関係図である。
なお、実施の形態1を示す図1と同一または相当部分には同じ符号を付し説明を省略する。図4において11は時刻を出力する計時手段、12は電流検出手段10の検出された電流と計時手段11から出力された時刻を記憶する電流・時刻記憶手段、42は電流・時刻記憶手段12に記憶された電流値と時刻から汚れ具合を判定する汚濁度合判定手段、43は汚濁度合判定手段の出力に基づいて循環ポンプ9の回転速度を制御するポンプ駆動制御手段である。41は計時手段11、電流・時刻記憶手段12、汚濁度合判定手段42及びポンプ駆動制御手段43からなる駆動制御手段である。
次に、このように構成されたす風呂循環浄化装置の動作について説明する。まず、循環ポンプ2により浴槽6の浴水は入水路31へ汲み上げられ、電極部1に流入する。電極部1には定電圧電源9により一定電圧が印加されており、電流検出手段10が電極18a、18b間の浴水7に流れる電流値を検出する。
ここで、電極部1に流れる電流と塩素濃度の関係は実施の形態1の図3で説明したように電流値を測定することにより、浴水の汚れ知ることができ、入浴することにより、人体の皮膚から出る塩分や汚濁物により、浴水の塩分や汚濁物の濃度が上昇するので、電極に流れる電流値が上昇する。従って、図5に示されるように、電流値を測定することにより、人が入浴開始、終了時及び浴槽の汚れが浄化され定常状態となる復帰点の時刻と、その時刻における汚れを知ることができる。
図において縦軸は電極部1に流れる電流値、横軸は時計手段11から出力される時刻、T1は入浴開始時刻、T2は入浴終了時刻,T3は復帰(浄化完了)時刻である。入浴前の浄化されている浴水の電流値は定常値I1であり、入浴開始時刻T1から電流値が上昇し、入浴終了時T2では電流が極大値I2となり、入浴での汚れが浄化され浄化完了時T3で電流値が定常値I1に戻る。これらの入浴開始時刻T1に流検出手段10により検出された電流値I1、入浴終了時T2の電流値I2、浄化完了時T2の電流値が定常値I1は、電流・時刻記憶手段12に記憶される。」(段落【0025】?【0030】)

(1d)「実施の形態3.以下、この発明の実施の形態3について説明する。図6はこの発明の実施の形態3を示す風呂循環浄化装置の構成図、図7は動作フローチャートである。
なお、実施の形態1、2を示す図1、図4と同一または相当部分には同じ符号を付し説明を省略する。図6において、13は電流・時刻記憶手段12に記憶された電流から入浴の度合と汚濁度合いを判定する入浴・汚濁度合判定手段、14は入浴・汚濁度合判定手段13で判定された結果を記憶する入浴・汚濁時刻記憶手段、15は入浴・汚濁時刻記憶手段14に記憶された入浴・汚濁の時刻から入浴パターンを算出する入浴パターン算出手段、16は入浴パターン算出手段15で算出された入浴パターンを記憶する入浴パターン記憶手段、17は入浴パターン記憶手段16で記憶された入浴パターンに基づいて殺菌を行う時刻を定め、殺菌手段4に殺菌動作を指令する殺菌動作指令手段である。
次に、このように構成された風呂循環浄化装置の動作について説明する。まず、循環ポンプ2により汲み上げられ、電極部1に流入した浴水の電流値を電流検出手段10が検出する。実施の形態2の図5に示した時間と電流の関係のように、入浴開始時刻T2に検出された電流値I1、入浴終了時T2の電流値I2、浄化完了時T3の電流値が定常値I1は、電流・時刻記憶手段12に記憶される。
次に、入浴・汚濁度合判定手段13は、電流・時刻記憶手段12に記憶された電流から入浴の度合(有無)、または汚濁度を判定するが、この動作を、図7に示す動作フローチャートにより説明する。
まず、入浴終了時T2の電流の極大値I2と入浴開始時刻T1の電流の定常値I1との差と、入浴終了時T2と電流の極大値I2と入浴開始時刻T1との差の商があらかじめ定められた値Aを越えるかどうか比較し(ステップS1)、Aを越えるときは入浴していると判定し(ステップ2)、Aを越えない場合は入浴していないと判定する(ステップS3)。
入浴していると判定されたときはステップS4に進み、汚れ度合を入浴終了時T2の電流の極大値I2と入浴開始時刻T1の電流の定常値I1との差とする。入浴していないと判定されたときはステップS5に進み、汚濁度合いを0とする。次に、入力しているときの汚濁度(I2-I1)、入浴してないときの汚れ度合(0)、入浴開始時刻T1、入浴終了時刻T2及び復帰(浄化完了)時刻T3を入浴情報として入浴・汚濁度合記憶手段14に記憶させる(ステップS6)。
なお、判定(値)、入浴開始時刻T1は、次に説明する入浴パターンに使用されるが、汚濁度は実施の形態2のように、浄化槽3の制御に使用され、入浴終了時刻T2から復帰(浄化完了)時刻T3の時間は、浄化性能の評価に使用される。
次に、入浴・汚濁度合記憶手段14の入浴情報時刻から、例えば、曜日毎の1日分の入浴パターンを判定する入浴パターン算出手段15の動作を、メモリのデータ格納状態を示す図8により説明する。入浴パターン算出手段15は入浴状態について学習処理を行って判断するものであり、図8は入浴・汚濁度合記憶手段14のメモリのデータのうち、入浴パターンに関する入浴の有無の判定値と入浴開始時間T1に基づくデータの格納状態を示し、同図(a)は1日の時刻別の学習処理を行う1時間毎の初期メモリである。同図(b)は第一週目の月曜日の1時間毎の入浴度数を示す。例えば、17?18時の間では入浴回数が1回、21?22時の間では入浴回数が2回である。同様に、同図(c)は火曜日、(d)は日曜日の入浴度数を示す。これらの入浴パターンは入浴パターン記憶手段16に記憶される。同図(e)は曜日別の学習処理を例えば4週間続けた結果、月曜日の入浴度数累計を示すものである。このように各曜日毎の入浴パターン累計は入浴パターン記憶手段16に記憶される。
次に、殺菌動作判定手段17は、例えば、入浴パターン記憶手段16に記憶された曜日毎の4週間の累計の入浴パターンに基づいて、例えば入浴時間帯の2時間前に塩素剤(オゾン、紫外線、または熱等の殺菌手段)を投入するように殺菌手段(塩素剤投入手段、オゾン殺菌手段、紫外線照射手段、または加熱手段)4に指令する。例えば、図8(e)の月曜日のパターンでは3時、15時および18時に塩素剤を投入するように殺菌手段4に指令する。
なお、2時間前としたのは、2時間で残留塩素及び菌がほぼ0となるからである。ただし、入浴時間帯から2時間前までに他の入浴時間帯がある場合は塩素を投入しない。また、塩素の投入量は入浴・汚濁度合い記憶手段14の汚濁度合いに基づいて定められる。
以上のように、入浴パターンによって塩素の投入を行うので、入浴する人に不快感を与えず、また、殺菌の効果が減少することもなく、快適な風呂循環浄化装置が得られる。」(段落【0033】?【0043】)

上記の記載事項(1a)?(1d)及び図面の記載からみて,刊行物1には,以下の発明が記載されているものと認められる。
「循環する浴水に電圧を印可し,浴水に流れる電流を検出する電流検出手段と,
時刻を出力する計時手段と,
電流検出手段により検出された電流値と計時手段から出力された時刻を記憶する電流・時刻記憶手段と,
この電流・時刻記憶手段に記憶された電流値と時刻に基づいて入浴の有無と汚濁度合いを判定する入浴・汚濁度合判定手段と,
この入浴・汚濁度合判定手段で入浴したと判定された時刻と汚濁度合いを記憶する入浴・汚濁度合い記憶手段と,
この入浴・汚濁度合い記憶手段の出力から入浴パターンを算出する入浴パターン算出手段と,
この入浴パターン算出手段で算出された入浴パターンを記憶する入浴パターン記憶手段と,
この入浴パターン記憶手段に記憶された入浴パターンに基づいて塩素剤を投入する時刻を定め,定めた時刻に殺菌手段に対して塩素剤を投入するように指令する殺菌動作指令手段とを備えた風呂循環浄化装置。」(以下,「刊行物1記載の発明」という。)

(2)刊行物2
本願出願前に頒布された刊行物である,特開平9-72974号公報(以下,「刊行物2」という。)には,以下の記載がある。
(2a)「【請求項7】 1日を複数の時間帯に分割し各時間帯に対応する複数のメモリーを有するタイマー制御部と、上記各時間帯毎に入浴時間帯又は非入浴時間帯を設定し上記タイマー制御部の各メモリーに記憶させるタイマー設定部と、上記タイマー制御部のメモリーに対応した複数の表示部で構成され上記タイマー設定部の設定に応じて表示を行なうタイマー表示部と、オゾンを発生させ浴水と混合させるオゾン発生器と、時刻をカウントする時計制御部と、この時計制御部の時計カウントに同期して上記メモリーの内容を読み出し、メモリーの内容に応じて上記オゾン発生器から発生するオゾンの濃度を制御するオゾン殺菌制御部を備えたことを特徴とする風呂装置。
【請求項8】 タイマー表示部のうち、現在時刻が含まれる時間帯に対応する表示部を点滅させることを特徴とする請求項2、請求項3、または請求項7記載の風呂装置。」(【特許請求の範囲】)

(2b)「従来の24時間利用可能な風呂装置は以上のように構成されているので、最大2パターンの入浴時間帯しか設定することができず、いろいろな入浴シーンに対応することができないという問題点があった。・・・また、入浴の際オゾン殺菌を停止して、人体に対する安全を確保するためのオゾン停止スイッチを有しているが、入浴の度にスイッチを押さなくてはならないので、非常に手間がかかり、またオゾン停止スイッチを押さない可能性もあり、オゾン停止スイッチの本来の機能を発揮できない状態が発生するなどの問題点があった。
この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、利用時間帯に応じて装置の制御を行なうための24時間タイマーを得ることを目的とする。また、この24時間タイマーを用いて、多くの入浴シーンに対応できるよう入浴時間帯の選択に自由度を幅広くもたせ、かつそれらの選択された入浴時間帯に対応した保温制御を行ない、その保温制御状況が視覚的にわかりやすい表示形態となり、さらに入浴時間帯の設定情報をオゾン殺菌制御に還元する自動殺菌制御行なう風呂装置を提供することを目的としている。」(段落【0007】?【0008】)

(2c)「以下この発明の一実施の形態について説明する。図1は、使用者が入浴時間帯や湯温を設定する操作パネル1を示すものであって、ここで設定された情報が制御装置(図2に示すコントローラー10)に送られ、浴水の保温制御が行なわれる。図1において、2は風呂装置の利用時間帯である入浴時間帯又は非利用時間帯である非入浴時間帯を設定するタイマー設定部であり、設定したい時間帯に対応する表示にカーソルを移動させる送りスイッチ2aと、入浴時間帯又は非入浴時間帯をセットするセットスイッチ2bとで構成されている。3は1日の24時間を8個に分割して表示3a?3hに分け、サークル状に表示したタイマー表示部であり、タイマー設定部2のセットスイッチ2bにより入浴時間帯としてセットされた時間帯に相当する表示が点灯するように構成されている。図においては、斜線で示すように表示3bと表示3hが点灯しており、3?6時及び21?0時が入浴時間帯としてセットされた状態を表示している。また、4は設定温度を表示する設定温度表示部、5は現在湯温を表示する現在湯温表示部であり、表示切換スイッチ6により表示を切り換えると、設定温度表示部4及び現在湯温表示部5にそれぞれ時・分が表示される時計表示部7となる。また、8は入浴時間帯における浴水の設定温度を調節する温度設定部であるが、表示切換スイッチ6により表示が時計表示に変わったときは現在時刻を調節する時計設定部9となる。
図2はこの実施の形態における風呂装置のシステム図である。図において、10は風呂装置の制御を行なうコントローラーである。浴水はポンプ11により吸込口12より吸い込まれ、吐出口13より浴槽に戻され循環している。コントローラー10は、タイマー設定部2から入力された入浴・非入浴の情報、温度設定部8からの設定温度の情報、温度検知部14からの温度情報、及び時計設定部9からの現在時刻情報によりヒーター15の通電を制御して浴水の保温を行ない、また、オゾン発生信号をオゾン発生器16に出力して、オゾンを発生させる。発生したオゾンは負圧によりオゾン誘導パイプ17を通り浴水と混合され、浴水の殺菌を行なう。
図3は、コントローラー10のブロック図である。20はタイマー制御部であり、メモリーa?メモリーhの8個のメモリー21で構成され、各メモリーにはタイマー設定部2で任意に独立して入浴、非入浴の設定情報を記憶させることができる。また、各メモリー内容は、時計制御部22の時計カウントに同期して、0?3時のときはメモリーaの情報が、3?6時のときはメモリーbの情報が、6?9時のときはメモリーcの情報が、9?12時のときはメモリーdの情報が、12?15時のときはメモリーeの情報が、15?18時のときはメモリーfの情報が、18?21時のときはメモリーgの情報が、21?0時のときはメモリーhの情報が保温制御部23及びオゾン殺菌制御部24に出力される。この時計カウントに同期して出力される、入浴・非入浴情報をもとに、保温制御部23ではヒーター15により保温制御を行なう。具体的には、入浴情報を確認したときは、温度設定部8より出力される設定温度(例えば42度)で浴水の保温制御を行ない、非入浴のときは、自動的に予め設定された低い温度(例えば35度)に設定温度を変更して浴水の保温制御を行ない、保温エネルギーの節約を図る。
また、タイマー制御部20の入浴・非入浴の情報をオゾン殺菌制御部24に出力し、入浴時間帯であれば、非入浴時間帯に比べオゾン濃度を薄くしたり、またはオゾン殺菌を停止したりするように、オゾン発生器16を制御して殺菌制御を行なう。」(段落【0017】?【0020】)

上記の記載事項(2a)?(2c)及び図面の記載からみて,刊行物2には,以下の発明が記載されているものと認められる。
「1日の24時間を8個に分割して表示部に表示させ,使用者が設定したい時間帯に対応する表示にカーソルを移動させて入浴時間帯をセットさせることにより,入浴・非入浴情報を取得し,取得した入浴・非入浴情報に基づいて保温制御及び殺菌制御を行う,風呂装置。」(以下,「刊行物2記載の発明」という。)

第4 当審の判断
1.本願発明と刊行物1記載の発明との対比
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると,刊行物1記載の発明の「塩素剤」が本願発明の「塩素等の浄化剤」に相当しており,刊行物1記載の発明の「殺菌手段」が「塩素等の浄化剤を貯留する浄化剤貯留部」に相当する構成を備えていることは,自明である。
そして,刊行物1記載の発明の「循環する浴水に電圧を印可し,浴水に流れる電流を検出する電流検出手段と,時刻を出力する計時手段と,電流検出手段により検出された電流値と計時手段から出力された時刻を記憶する電流・時刻記憶手段と,この電流・時刻記憶手段に記憶された電流値と時刻に基づいて入浴の有無と汚濁度合いを判定する入浴・汚濁度合判定手段と,この入浴・汚濁度合判定手段で入浴したと判定された時刻と汚濁度合いを記憶する入浴・汚濁度合い記憶手段と,この入浴・汚濁度合い記憶手段の出力から入浴パターンを算出する入浴パターン算出手段」と,本願発明の「予め予想した入浴人数データテーブル,入浴時間データテーブル,入浴間隔データテーブル,浴水入替間隔データテーブル,カレンダデータテーブル等の複数の入浴パターンのデータが予め記録された入浴パターン記録部と,該入浴パターン記録部から読み出される入浴パターンデータに対応する名称,アイコン,その他のメニュー情報を出力表示する表示手段と,該表示手段に表示される複数の入浴パターンのうち,使用者の入浴形態に最も近い各入浴パターンを選択入力する入浴パターン選択手段」とは,ともに「使用者の入浴パターンを取得する手段」として共通している。
さらに,刊行物1記載の発明の「入浴パターンに基づいて塩素剤を投入する時刻を定め,定めた時刻に殺菌手段に対して塩素剤を投入するように指令する殺菌動作指令手段」と本願発明の「入浴パターン選択手段により選択入力された入浴人数データテーブル,入浴時データテーブル,入浴間隔データテーブル,浴水入替間隔データテーブル,カレンダデータテーブル等のデータを適切に組み合わせ,浄化剤投入量,投入時刻等を含んで生成された浄化剤投入データを含む投入データテーブルに基づいて浄化剤投入する時刻に,浄化剤貯留部を投入制御する浄化剤投入制御手段」とは,共に,「取得した使用者の入浴パターンに基づいて浄化剤投入時刻を決定し,浄化剤投入時刻に浄化剤を投入する浄化剤投入制御手段」として共通している。
また,刊行物1記載の発明においても,「使用者の入浴パターンの取得や入浴パターンに基づく浄化剤の投入の制御をコンピュータで行うためのプログラム」を備えること,及び,「該プログラムを記憶するメモリ等記憶手段」を備えていることは自明であって,それらは,本願発明の「浄化剤投入制御部プログラム」及び「プログラム記憶部」に相当している。

したがって,両者は,以下の点で一致している。
(一致点)
「塩素等の浄化剤を貯留する浄化剤貯留部と,浄化剤投入制御部プログラムが記憶されるプログラム記憶部と,
使用者の入浴パターンを取得する手段と,
取得した使用者の入浴パターンに基づいて浄化剤投入時刻を決定し,浄化剤投入時刻に浄化剤を投入する浄化剤投入制御手段と,
を備えた浴水浄化循環装置。」

そして,以下の点で相違している。
(相違点1)
使用者の入浴パターンを取得する手段が,本願発明は,「予め予想した入浴人数データテーブル,入浴時間データテーブル,入浴間隔データテーブル,浴水入替間隔データテーブル,カレンダデータテーブル等の複数の入浴パターンのデータが予め記録された入浴パターン記録部と,該入浴パターン記録部から読み出される入浴パターンデータに対応する名称,アイコン,その他のメニュー情報を出力表示する表示手段と,該表示手段に表示される複数の入浴パターンのうち,使用者の入浴形態に最も近い各入浴パターンを選択入力する入浴パターン選択手段」であるのに対して,刊行物1記載の発明は,「循環する浴水に電圧を印可し,浴水に流れる電流を検出する電流検出手段と,時刻を出力する計時手段と,電流検出手段により検出された電流値と計時手段から出力された時刻を記憶する電流・時刻記憶手段と,この電流・時刻記憶手段に記憶された電流値と時刻に基づいて入浴の有無と汚濁度合いを判定する入浴・汚濁度合判定手段と,この入浴・汚濁度合判定手段で入浴したと判定された時刻と汚濁度合いを記憶する入浴・汚濁度合い記憶手段と,この入浴・汚濁度合い記憶手段の出力から入浴パターンを算出する入浴パターン算出手段」であって,本願発明のように,入浴パターンデータを表示して,使用者が選択入力することによって取得するものではない点。

(相違点2)
相違点1に関連して,浄化剤投入制御手段が,本願発明は,「入浴パターン選択手段により選択入力された入浴人数データテーブル,入浴時データテーブル,入浴間隔データテーブル,浴水入替間隔データテーブル,カレンダデータテーブル等のデータを適切に組み合わせ,浄化剤投入量,投入時刻等を含んで生成された浄化剤投入データを含む投入データテーブルに基づいて浄化剤投入する時刻に,浄化剤貯留部を投入制御する」ものであるのに対して,刊行物1記載の発明は,入浴パターンに基づいて塩素剤を投入する時刻を定め,定めた時刻に殺菌手段に対して塩素剤を投入するように指令するものであって,本願発明のような浄化剤投入データを含む投入データテーブルを使用するものではない点。

2.相違点についての判断
(1)相違点1について
相違点1に係る本願発明の「使用者の入浴パターンを取得する手段」は,予め予想した入浴人数データや入浴時間データ等の複数の入浴パターンのデータをテーブルにして記憶しておき,記憶した複数の入浴パターンのデータに対応する名称等を表示手段に表示して,表示される複数の入浴パターンのデータから使用者の入浴形態に最も近い各入浴パターンを使用者に選択させて入浴パターンを取得するものである。
これに対して,刊行物2記載の発明の「使用者が設定したい時間帯に対応する表示にカーソルを移動させて入浴時間帯をセットさせる」こと,及び,「入浴・非入浴情報」が上記相違点1に係る本願発明の「使用者の入浴形態に最も近い各入浴パターンを使用者に選択させ」ること,及び,「入浴パターン」に相当しているから,使用者の入浴パターンを取得する手段として,「使用者の入浴形態に最も近い各入浴パターンを使用者に選択させて入浴パターンを取得する」ものは,刊行物2記載の発明として開示されており,公知の技術である。
そして,刊行物1記載の発明において,使用者の入浴パターンを取得する手段として,「電流検出手段」等によって自動的に取得する手段に代えて,上記公知の技術を用いることが,当業者にとって困難性を伴うとは認められない。

ここで,本願発明では,取得する入浴パターンが,入浴人数,入浴時間,入浴間隔,浴水入替間隔,カレンダ等複数の入浴パターンから構成されているが,刊行物1記載の発明においても,取得する入浴パターンとして曜日毎,入浴時間毎の入浴度数が示されているように複数の入浴パターンが想定されており,刊行物1記載の発明において,入浴パターンを複数の入浴パターンから構成することは,当業者が容易になし得たことであって,該複数の入浴パターンとして,上記入浴人数,入浴時間,入浴間隔,浴水入替間隔,カレンダによる入浴パターンを設定することにより格別の効果が生じるものではないから,複数の入浴パターンを入浴人数,入浴時間,入浴間隔,浴水入替間隔,カレンダについての入浴パターンにすることは当業者が必要に応じて適宜なし得た設計事項である。

また,本願発明は,使用者に入浴パターンを選択させるに際して,複数の入浴パターンのデータを記憶しておき,記録した入浴パターンデータに対応する名称,アイコン,その他のメニュー情報を表示して選択するようにしているが,そのような表示・選択手段は,データ入力手法として例示するまでもなく周知の手法に過ぎない。

してみると,刊行物1記載の発明において,使用者の入浴パターンを取得する手段として,使用者に選択させて取得する手段を採用し,該採用に際して,入浴パターンを複数の入浴パターンから構成すると共に,選択させるために,入浴パターンデータに対応する名称,アイコン,その他のメニュー情報を出力表示する表示手段を用いることは,当業者が容易になし得たことである。

したがって,上記相違点1に係る本願発明の構成は,刊行物1,2記載の発明及び周知の技術から,当業者が容易になし得たものである。

(2)相違点2について
相違点2に係る本願発明の「浄化剤投入制御手段」は,浄化剤貯留部の投入制御を「浄化剤投入量,投入時刻等を含んで生成された浄化剤投入データを含む投入データテーブル」に基づいて行うとしているが,該投入制御は,浄化剤投入量及び投入時刻等を含んで生成された「浄化剤投入データ」に基づいて行えばすむことであって,該浄化剤投入データを含む「投入データテーブル」に基づいて行う理由は不明である(そもそも「投入データテーブル」の技術的意味自体が,発明の詳細な説明を見ても不明ではある。)。
いずれにせよ,上記投入制御に必要なデータは,浄化剤投入データに含まれる浄化剤投入量,投入時刻等のデータであることは明らかである。
してみると,上記相違点2に係る本願発明の構成は,使用者により選択された入浴人数データテーブル,入浴時データテーブル等の複数のデータを適切に組み合わせ,浄化剤投入量及び投入時刻等を算出して,算出した投入時刻に,浄化剤投入部を投入制御することをその主たる構成とするものであると考えられる。

これに対して,刊行物1記載の発明は,入浴パターンに基づいて塩素剤を投入する時刻を定めるものであって,上記記載事項(1b)に記載されているように,該入浴パターンは,入浴時,入浴度数,曜日等の複数のデータを想定したものであるから,刊行物1記載の発明の「入浴パターンに基づいて塩素剤を投入する時刻を定める」という構成は,本願発明の「複数のデータを適切に組み合わせ,投入時刻等を算出」するという構成に相当している。

そうすると,結局,相違点2は,(ア)複数のデータを適当に組み合わせて算出する投入制御のためのデータとして「浄化剤投入量」を含ませるか否か,及び,(イ)取得した入浴パターンのデータ,及び,それを基に生成した「投入時刻等」投入制御のためのデータが,データテーブルの形式を採っているか否かの相違と認められる。

しかしながら,刊行物1記載の発明においても,上記記載事項(1c)に記載されているように,汚染度合いのデータに基づくものではあるものの「浄化剤投入量」を算出することは考慮されているし,本願発明が「浄化剤投入量」を算出するために特別な構成を有するものでもなく,該「浄化剤投入量」を複数の入浴パターンのデータを組み合わせて算出することにより格別の効果が生じるものではないから,上記算出する投入制御のためのデータとして浄化剤投入量を含ませることは,当業者が必要に応じて適宜なし得たことである。また,各種データをテーブルの形式として処理することは,情報処理技術として周知の技術であって,刊行物1記載の発明において,「入浴パターン」及び「投入時刻等」をテーブル形式のデータとすることを妨げる要因もない。

したがって,上記相違点2に係る本願発明の構成は,刊行物1記載の発明及び情報処理における周知の技術から,当業者が容易になし得たものである。

(3)本願発明の効果について
本願発明が,上記相違点1及び2に係る構成を共に備えることによって,格別の効果が生じるとも認められない。

(4)まとめ
よって,本願発明は,刊行物1,2記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第5 むすび
以上のとおり,本願発明は,刊行物1,2記載の発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-30 
結審通知日 2011-04-05 
審決日 2011-04-28 
出願番号 特願平11-286058
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A47K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 秀幹  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 宮崎 恭
山本 忠博
発明の名称 浴水浄化循環装置  
代理人 岩堀 邦男  

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