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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A47L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47L
管理番号 1238770
審判番号 不服2010-4908  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-03-05 
確定日 2011-06-15 
事件の表示 特願2000-177963号「クリーニングシ?ト」拒絶査定不服審判事件〔平成13年7月24日出願公開、特開2001-198075号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成12年6月14日(優先権主張平成11年11月9日)の出願であって、平成21年12月8日付け(発送日:同15日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年3月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、審判請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成22年3月5日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年3月5日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項2は、次のように補正された。
「基板処理装置内に搬送して上記装置内に付着している異物を除去するためのクリーニングシートであって、支持体の片面に、感圧接着性ポリマーであるアクリル系ポリマーに分子内に不飽和二重結合を1個以上有する化合物と重合開始剤とを含ませて活性エネルギーにより硬化させてなる、引張弾性率(試験法JIS K7127に準ずる)が0.98?4900N/mm^(2)で、シリコンウエハ(ミラー面)に対する180°引き剥がし粘着力が0.20N(20g)/10mm以下である粘着剤層がクリーニング層として設けられ、他面にシリコンウエハ(ミラー面)に対する180°引き剥がし粘着力が0.21?0.98N/10mmである粘着剤層が設けられてなるクリーニングシート。」(下線は補正個所を示す。)

2.補正の目的
本件補正は、請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項であるクリーニング層について、「感圧接着性ポリマーであるアクリル系ポリマーに分子内に不飽和二重結合を1個以上有する化合物と重合開始剤とを含ませて活性エネルギーにより硬化させてなる」と限定するものであり、かつ、補正前の請求項2に記載された発明と補正後の請求項2に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項2に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか。)について以下に検討する。

3.引用例
3-1.引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平10-154686号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア 「【発明の属する技術分野】本発明は、装置のクリーニングに関し、例えば半導体製造装置及び半導体検査装置等、基板処理装置のクリーニング方法に関するものである。」(段落【0001】、下線は当審で付与。以下、同様。)
イ 「【課題を解決するための手段】本発明は上記の問題を解決すべくなされたもので、粘着性の物質を固着した基板を搬送する事により基板処理装置内のクリーニングを行なうものである。」(段落【0005】)
ウ 「【発明の実施の形態】以下、図1乃至7を参照して本発明に係る半導体基板処理装置のクリーニング方法の実施例を、基板がウエハである場合を例に詳細に説明する。図1及び図2に粘着性の物質を固着したウエハの構造体の一例を示す。ウエハ上異物の付着は、ウエハと装置内搬送経路の接触する部分に偏っているがその分布は多少の広がりがある。従って、半導体ウエハの主面, 裏面, 側面の搬送過程で接触する部分を包括する様な広い範囲に、各々粘着性の物質(ここでは両面粘着テープ)を貼り付ける。ここでの搬送過程で接触する部分とは、図8の様なベルト式,ローラ式,メカニカル式等の搬送系におけるウエハとの接触部分や、ウエハ保持用のツメまたはクランプ,ウエハのストッパー,ウエハチャック等がある。図1は、本発明に係る半導体基板処理装置のクリーニングに用いる粘着性のテープを固着したウエハの構造体の一例を示したものであり、(A)は各要素を分離した状態における斜視図、(B)は断面図である。半導体ウエハ103の主面, 裏面, 側面の搬送過程で接触する部分を包括する様な広い範囲に、各々粘着性の物質(ここでは両面粘着テープ)101, 104, 105を貼り付けている。この粘着性のテープを固着したダミーウエハの異物除去能力は、搬送系や処理部の接触部分の異物付着を行うにつれその清浄度が劣化する為、何等かの方法で異物除去能力を回復する必要がある。ここでは、テープを貼り換える事を異物能力の回復手段とする。その為、粘着テープ101に非粘着性の突起状薄膜である両面粘着テープ剥離用非粘着部102を固着する。テープの貼り換えは、非粘着性の薄膜102を引っ張ることにより粘着テープ101をウエハ103から引き剥がし、新しい粘着テープ101を貼り付けることにより、再利用が可能となる。上記粘着性の物質の着脱は手で行なってもよいし、治具か装置で行なっても構わない。・・・・また、図4は本発明に係る半導体基板処理装置のクリーニングに用いる粘着性のテープを固着したウエハの第4の実施例の断面図を示したものであり、(A)はウエハ全体の断面図、(B)は(A)a部の拡大断面図である。図4(B)は、粘着剤402,支持体405,粘着剤404の3層構造の両面粘着テープをウエハ403の両面に貼り付けたものである。支持体の材料としては、アセテートフィルム(マットフィニッシュ; 住友スリーエム),ポリエチレンテレフタレート(PET; フジカラー),ふっ素樹脂,テフロン樹脂(テフロンスカイブドテープ)等があり、粘着剤としては真空プロセスで不活性が必要とされる場合はシリコン系粘着剤が適当であるが、常温・常圧プロセスでガスの発生をある程度許容する場合はアクリル系粘着剤を使用する事も可能である。尚、図4に示す両面体をウエハに貼り付ける場合、基板側の粘着テープの剥離強度(f1)が最表面側の剥離強度(f2)と同等か大きい事つまりf1≧f2である事が必要となる。その理由は、f2の方がf1よりも大きい場合、搬送過程で両面テープ自身が剥離を起こして接触部に付着する危険性が高く、異物除去という目的に反するばかりか逆に搬送過程を汚染する事になる為である。以上の例では、両面粘着テープを用いたが、粘着性の薄膜であれば、他のものであっても構わない。」(段落【0006】)
エ 「【発明の効果】上述した様に本発明によれば、ウエハ処理装置の搬送系及び各処理部における、ウエハに接触する部分の異物を確実に吸着除去出来る。」(段落【0009】)
オ 上記エの記載及び図4によれば、粘着剤402は粘着性のテープをウエハに貼り付けるための粘着剤であり、粘着剤404はクリーニング用の粘着剤であり、それらの剥離強度はf1(粘着剤402)≧f2(粘着剤404)である。

これら記載事項及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「基板処理装置内に搬送して上記装置内に付着している異物を吸着除去するための粘着性のテープであって、支持体405の片面に、アクリル系粘着剤404がクリーニング用の粘着剤として設けられ、他面に粘着剤402がウエハに貼り付ける粘着剤として設けられ、剥離強度はf1(粘着剤402)≧f2(粘着剤404)である粘着性のテープ。」

3-2.引用例2
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平8-115897号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア 「【産業上の利用分野】本発明は、半導体製造プロセスにおける洗浄工程に適用される、半導体ウエハに付着した異物の除去用粘着テ?プと除去方法に関する。」(段落【0001】)
イ 「【発明が解決しようとする課題】しかるに、上記提案の方法では、粘着テ?プを半導体ウエハ上に貼り付けて剥離する際に、糊残りによるウエハ汚染の問題を生じやすく、この回避のため、硬くて低粘着力の粘着テ?プを用いると、異物の吸着効果が著しく低減する結果、異物の除去率が期待したほどに上がらなかつた。
本発明は、このような事情に鑑み、ウエツト洗浄方式に比べて有用な粘着テ?プを用いたドライ洗浄方式において、特定の粘着テ?プを用いることによつて、糊残りによるウエハ汚染の問題をきたすことなく、半導体ウエハ上の異物を高い除去率で除去することを目的としている。
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の目的に対して、鋭意検討した結果、粘着テ?プとして、粘着剤層の引張弾性率を特定範囲に規定したものを用いることにより、糊残りによるウエハ汚染の問題をきたすことなく、半導体ウエハ上の異物を効率よく除去できることを見い出し、本発明を完成するに至つた。」(段落【0007】?【0009】)
ウ 「【発明の構成・作用】図1は、本発明の異物除去用粘着テ?プの一例を示したものである。1は粘着テ?プで、支持フイルム11上に粘着剤層12を設け、この粘着剤層12上にさらにセパレ?タ13を設けた構成となつている。
支持フイルム11は、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカ?ボネ?ト、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-エチルアクリレ?ト共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、ポリ塩化ビニルなどのプラスチツクからなる、厚さが通常10?1,000μmのフイルムである。
粘着剤層12は、この支持フイルム11上に、アクリル樹脂系、シリコ?ン樹脂系、フツ素樹脂系、ゴム系(天然ゴム、合成ゴム)などの常態下で粘着力を有する種々の粘着剤を塗着し、加熱などにより架橋処理することにより、また離型紙上に上記と同じ方法で形成した粘着剤層を支持フイルム11上に貼着することにより、形成される。厚さは、通常5?100μmである。
この粘着剤層12は、引張弾性率(試験法JIS K 7127に準ずる、以下同じ)が10?1,000Kg/cm^(2) 、好ましくは15?500Kg/cm^(2) 、さらに好ましくは100?300Kg/cm^(2)の範囲に設定されている。架橋剤の含量により架橋の程度を調整することなどにより、上記設定は容易に行える。アクリル樹脂系の粘着剤を用いると、上記設定がとくに容易であり、好ましい。上記の引張弾性率を有する粘着剤層12の粘着力は、JIS Z-0237に準じて測定されるシリコンウエハに対する180度引き剥がし粘着力(常温、剥離速度300mm/分)が通常50?500g/20mm幅となる程度である。」(段落【0012】?【0015】)
エ 「このように、本発明では、粘着剤層12の引張弾性率を上記特定の範囲に設定したことにより、貼り付け時の粘着剤層12と異物3との馴染みが良くなり、しかもこの層12が適度な強度と凝集力を示すため、異物3の吸着効果が増大し、またウエハ汚染の問題も回避されるという顕著な効果が奏される。これに対し、粘着剤層12の引張弾性率が10Kg/cm^(2)未満となると、この層12の強度と凝集力が不十分で、異物3の吸着効果が低下し、ウエハ汚染の問題も大きくなる。また、上記引張弾性率が1,000Kg/cm^(2) を超えると、粘着剤層12が塑性変形しにくく、粘着力も低くなり、異物除去率がやはり低下する。」(段落【0019】)
オ 「【実施例】つぎに、本発明の実施例を記載して、より具体的に説明する。なお、以下において、部とあるのは重量部を意味する。
実施例1
厚さ50μmのポリエステル支持フイルムのコロナ処理面に、アクリル系樹脂100部とイソシアネ?ト系架橋剤1部とからなるアクリル系粘着剤の溶液を塗布して、120℃で3分間加熱架橋処理し、厚さ20μmの粘着剤層を有する粘着テ?プを作製した。この粘着テ?プのシリコンウエハ(ミラ?面)に対する粘着力は、JIS Z-0237に準じて測定される180度引き剥がし粘着力(常温、剥離速度300mm/分)で450g/20mm幅であつた。また、上記粘着剤層の引張弾性率は、15Kg/cm^(2)であつた。
なお、粘着剤層の引張弾性率は、以下の方法で測定した。すなわち、厚さ50μmの離型処理を施したポリエステルフイルムの処理面に、上記と同じアクリル系粘着剤の溶液を塗布して、120℃で3分間加熱架橋処理し、厚さ20μmの粘着剤層を形成した。つぎに、これをダンベル型に加工し、剥離処理を施したポリエステルフイルムと粘着剤層とを分離したのち、JIS K 7127に準じて、粘着剤層のみの引張弾性率を測定した。以下の実施例および比較例でも、これと同様の方法で測定したものである。
・・・
実施例2
粘着剤として、アクリル系樹脂100部とイソシアネ?ト系架橋剤3部とからなるアクリル系粘着剤を用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さ20μmの粘着剤層を有する粘着テ?プを作製した。このテ?プのシリコンウエハ(ミラ?面)に対する粘着力は、JIS Z-0237に準じて測定される180度引き剥がし粘着力(常温、剥離速度300mm/分)で310g/20mm幅であつた。また、粘着剤層の引張弾性率は、50Kg/cm^(2)であつた。このテ?プを用い、実施例1と同様にして、異物洗浄試験および粘着剤汚染試験を行つた。これらの試験結果は、後記の表1に示されるとおりであつた。
実施例3
粘着剤として、アクリル系樹脂100部とイソシアネ?ト系架橋剤5部とからなるアクリル系粘着剤を用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さ20μmの粘着剤層を有する粘着テ?プを作製した。このテ?プのシリコンウエハ(ミラ?面)に対する粘着力は、JIS Z-0237に準じて測定される180度引き剥がし粘着力(常温、剥離速度300mm/分)で170g/20mm幅であつた。また、粘着剤層の引張弾性率は、184Kg/cm^(2)であつた。このテ?プを用い、実施例1と同様にして、異物洗浄試験および粘着剤汚染試験を行つた。これらの試験結果は、後記の表1に示されるとおりであつた。
実施例4
粘着剤として、アクリル系樹脂100部とイソシアネ?ト系架橋剤8部とからなるアクリル系粘着剤を用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さ20μmの粘着剤層を有する粘着テ?プを作製した。このテ?プのシリコンウエハ(ミラ?面)に対する粘着力は、JIS Z-0237に準じて測定される180度引き剥がし粘着力(常温、剥離速度300mm/分)で85g/20mm幅であつた。また、粘着剤層の引張弾性率は、450Kg/cm^(2)であつた。このテ?プを用い、実施例1と同様にして、異物洗浄試験および粘着剤汚染試験を行つた。これらの試験結果は、後記の表1に示されるとおりであつた。
比較例1
粘着剤として、アクリル系樹脂100部とイソシアネ?ト系架橋剤0.5部とからなるアクリル系粘着剤を用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さ20μmの粘着剤層を有する粘着テ?プを作製した。このテ?プのシリコンウエハ(ミラ?面)に対する粘着力は、JIS Z-0237に準じて測定される180度引き剥がし粘着力(常温、剥離速度300mm/分)で565g/20mm幅であつた。また、粘着剤層の引張弾性率は、8Kg/cm^(2)であつた。このテ?プを用い、実施例1と同様にして、異物洗浄試験および粘着剤汚染試験を行つた。これらの試験結果は、後記の表1に示されるとおりであつた。
比較例2
粘着剤として、アクリル系樹脂100部とイソシアネ?ト系架橋剤10部とからなるアクリル系粘着剤を用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さ20μmの粘着剤層を有する粘着テ?プを作製した。このテ?プのシリコンウエハ(ミラ?面)に対する粘着力は、JIS Z-0237に準じて測定される180度引き剥がし粘着力(常温、剥離速度300mm/分)で50g/20mm幅であつた。また、粘着剤層の引張弾性率は、1,090Kg/cm^(2)であつた。このテ?プを用い、実施例1と同様にして、異物洗浄試験および粘着剤汚染試験を行つた。これらの試験結果は、後記の表1に示されるとおりであつた。」(段落【0022】?【0033】)
カ 上記オの実施例、比較例の数値を本願補正発明の単位に合わせてまとめると以下の通りである。
引張弾性率 引き剥がし粘着力
実施例1 1.5N/mm^(2) 225g/10mm
実施例2 4.9N/mm^(2) 165g/10mm
実施例3 18N/mm^(2) 85g/10mm
実施例4 44.1N/mm^(2) 43g/10mm
比較例1 0.78N/mm^(2) 283g/10mm
比較例2 107N/mm^(2) 25g/10mm

上記記載事項を総合すると、引用例2には、次の事項が記載されている。
「異物の除去用粘着テ?プとして、粘着剤層の引張弾性率を特定範囲に規定したものを用いることにより、糊残りによるウエハ汚染の問題をきたすことなく、半導体ウエハ上の異物を効率よく除去できること」(引用例2記載事項1)及び「引張弾性率(試験法JIS K 7127に準ずる)が10?1,000Kg/cm^(2)の範囲に設定された粘着剤層12の粘着力は、JIS Z-0237に準じて測定されるシリコンウエハに対する180度引き剥がし粘着力(常温、剥離速度300mm/分)が通常50?500g/20mm幅となる程度であること」(引用例2記載事項2)

4.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、機能または作用等からみて、後者の「吸着除去」は、前者の「除去」に相当し、以下同様に、「粘着性のテープ」は「クリーニングシート」に、「支持体405」は「支持体」に、それぞれ相当する。
そして、後者の「アクリル系粘着剤404」は、「粘着剤層」といえ、「クリーニング用の粘着剤」であるから、前者の「感圧接着性ポリマーであるアクリル系ポリマーに分子内に不飽和二重結合を1個以上有する化合物と重合開始剤とを含ませて活性エネルギーにより硬化させてなる、引張弾性率(試験法JIS K7127に準ずる)が0.98?4900N/mm^(2)で、シリコンウエハ(ミラー面)に対する180°引き剥がし粘着力が0.20N(20g)/10mm以下である粘着剤層」と「クリーニング層」として共通する。また、後者の「粘着剤402」は、前者の「シリコンウエハ(ミラー面)に対する180°引き剥がし粘着力が0.21?0.98N/10mmである粘着剤層」と「粘着剤層」として共通する。

そこで、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「基板処理装置内に搬送して上記装置内に付着している異物を除去するためのクリーニングシートであって、支持体の片面に、粘着剤層がクリーニング層として設けられ、他面に粘着剤層が設けられてなるクリーニングシート。」

そして、両者は次の点で相違する。
(相違点1)
クリーニング層が、本願補正発明では、感圧接着性ポリマーであるアクリル系ポリマーに分子内に不飽和二重結合を1個以上有する化合物と重合開始剤とを含ませて活性エネルギーにより硬化させてなる、引張弾性率(試験法JIS K7127に準ずる)が0.98?4900N/mm^(2)で、シリコンウエハ(ミラー面)に対する180°引き剥がし粘着力が0.20N(20g)/10mm以下である粘着剤層であるのに対し、引用発明では、アクリル系粘着剤であるものの、その製法及び物性が不明である点。

(相違点2)
他面の粘着剤層が、本願補正発明ではシリコンウエハ(ミラー面)に対する180°引き剥がし粘着力が0.21?0.98N/10mmであるのに対し、引用発明ではその物性が不明であるが、剥離強度はf1(粘着剤402)≧f2(粘着剤404)である点。

5.相違点の判断
(相違点1について)
引用例2には、上記3-2.のとおり、異物の除去用粘着テ?プとして、粘着剤層の引張弾性率を特定範囲に規定したものを用いることにより、糊残りによるウエハ汚染の問題をきたすことなく、半導体ウエハ上の異物を効率よく除去できること(引用例2記載事項1)が記載されている。ここで、引用例2では被洗浄物として半導体ウエハを対象としてその粘着剤層の引張弾性率を特定範囲に規定するものであるが、対象とする被洗浄物及び異物により、最適な粘着剤層の引張弾性率があることは明らかであり、その引張弾性率は、当業者が通常の創作能力として実験等を通じて定めることができるものである。また、引用例2には、粘着剤層の引張弾性率(試験法JIS K 7127に準ずる)と引き剥がし粘着力(JIS Z-0237に準じて測定されるシリコンウエハに対する180度引き剥がし粘着力)の関係が示されており(引用例2記載事項2参照。)、粘着剤層に最適な引き剥がし粘着力があることも明らかであり、その引き剥がし粘着力も、当業者が通常の創作能力として実験等を通じて定めることができるものである。
してみると、引用発明において、クリーニング層の物性を引張弾性率及び引き剥がし粘着力で特定することは、引用例2に記載の事項に基づいて当業者が容易に成し得たことである。
そして、被洗浄物が基板処理装置の搬送係においては、搬送処理するウエハに粘着性のテープを貼り付けてウエハを搬送する際に異物を吸着除去するのである(3-1.ウ及びエ参照。)から、その搬送に支障を生じる粘着力を避けることは当然考慮する事項である。
ところで、本願補正発明で特定している、引張弾性率(試験法JIS K7127に準ずる)が0.98?4900N/mm^(2)という数値は、例えば引用例2に記載された実施例1?4及び比較例2の値をその数値範囲に含んでいる(3-2.カ)ように、粘着剤層の引張弾性率として、特別な範囲のものではない。また、シリコンウエハ(ミラー面)に対する180°引き剥がし粘着力については、引用例2に記載された異物の除去用粘着テープは半導体ウエハの洗浄用のものであるので、その引き剥がし粘着力は本願補正発明のものとは数値範囲を異にしているが、それは被洗浄物の相違によるものであり、しかも、本願補正発明では、0.20N(20g)/10mm以下として上限を定めているにすぎず、本願明細書の記載(0.078N(8g)/10mmである実施例と0.33N(34g)/10mmの比較例)をみても、本願補正発明の数値範囲に臨界的な意義を確認することもできない以上、当業者が容易に設定し得たことといわざるを得ない。
さらに、感圧接着性ポリマーであるアクリル系ポリマーに分子内に不飽和二重結合を1個以上有する化合物と重合開始剤とを含ませて活性エネルギーにより硬化させることは、例えば、特開平8-139067号公報(段落【0014】等)、特開平8-203856号公報(段落【0013】等)、特開平7-142440号公報(段落【0018】等)に示されるように周知である。
したがって、引用発明のクリーニング層を上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、引用例2に記載された事項及び周知の事項に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点2について)
本願補正発明の他面の粘着剤層の引き剥がし粘着力は、クリーニング層の引き剥がし粘着力より大きく、かつ、上限を特定したものであるが、引用発明においても剥離強度はf1(粘着剤402)≧f2(粘着剤404)であるから、他面の粘着剤層の剥離強度はクリーニング層のものより大きいものであって、その点においては違いがない。そして、引き剥がし粘着力の上限は糊残りによるウエハ汚染を考慮して設定されるものであるから、他面の粘着剤層を引き剥がし粘着力で特定することは、引用例2に記載の事項に基づいて当業者が容易に成し得たことである。また、本願補正発明で特定している引き剥がし粘着力が0.21?0.98N/10mmという数値は、例えば引用例2に記載された実施例3,4及び比較例2の値をその数値範囲に含んでいる(3-2.カ)ように、粘着剤層の引き剥がし粘着力として、特別な範囲のものではない。しかも、本願明細書の記載(0.25N/10mmの実施例)をみても、本願補正発明の数値範囲に臨界的な意義を確認することもできない以上、当業者が容易に設定し得たことといわざるを得ない。
したがって、引用発明の他面の粘着剤層を相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本願補正発明による効果も、引用発明、引用例2に記載された事項及び周知の事項から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明、引用例2に記載された事項及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

6.むすび
以上のとおり、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明(以下、同項記載の発明を、「本願発明」という。)は、平成21年9月8日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「基板処理装置内に搬送して上記装置内に付着している異物を除去するためのクリーニングシートであって、支持体の片面に、引張弾性率(試験法JIS K7127に準ずる)が0.98?4900N/mm^(2)で、シリコンウエハ(ミラー面)に対する180°引き剥がし粘着力が0.20N(20g)/10mm以下である粘着剤層がクリーニング層として設けられ、他面にシリコンウエハ(ミラー面)に対する180°引き剥がし粘着力が0.21?0.98N/10mmである粘着剤層が設けられてなるクリーニングシート。」

第4 引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記「第2 3.」に記載したとおりである。

第5 対比・判断
本願発明は、前記「第2 1.」の本願補正発明から、クリーニング層についての「感圧接着性ポリマーであるアクリル系ポリマーに分子内に不飽和二重結合を1個以上有する化合物と重合開始剤とを含ませて活性エネルギーにより硬化させてなる」との限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 5.」に記載したとおり、引用発明、引用例2に記載された事項及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明、引用例2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでのなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-28 
結審通知日 2011-04-05 
審決日 2011-04-18 
出願番号 特願2000-177963(P2000-177963)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A47L)
P 1 8・ 575- Z (A47L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 五十嵐 康弘  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 青木 良憲
松下 聡
発明の名称 クリーニングシ?ト  
代理人 祢▲ぎ▼元 邦夫  

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