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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04M
管理番号 1238848
審判番号 不服2009-16867  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-09-11 
確定日 2011-06-24 
事件の表示 平成10年特許願第526262号「加入者番号を送信する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 6月18日国際公開、WO98/26564、平成13年 5月 8日国内公表、特表2001-506077〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、1997年11月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1996年12月10日、フィンランド)を国際出願日とする出願であって、平成21年4月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年9月11日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、当審において平成22年10月6日付けで拒絶理由通知がなされ、平成22年12月24日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年12月24日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
「発呼加入者を識別する少なくとも1つの加入者番号を被呼加入者に送信する方法であって、
デジタル電話ネットワークの電話交換システムに備えられた発呼加入者データに第1の発呼加入者番号を記憶する段階と、
どの加入者番号を選択して送信すべきかに関する情報を含んだ発呼加入者番号選択データを、前記発呼加入者データに記憶する段階と、
前記デジタル電話ネットワークの発呼加入者端末装置を用いて第2の発呼加入者番号を与える段階と、
前記第1の発呼加入者番号、前記第2の発呼加入者番号、及び、これら両方のうち、前記発呼加入者番号選択データに基づいて選択されたものを、前記デジタル電話ネットワークの被呼加入者端末装置において表示すべき加入者番号として、該被呼加入者端末装置に送信する段階と、
を含むことを特徴とする方法。」

3.引用例
当審で通知した拒絶理由に引用された特開平5-236118号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の記載がある。

イ.「【特許請求の範囲】
【請求項1】 入り呼ライン識別(ICLID)番号として使用するための番号を示すための方法において、該方法が:発呼顧客によって決定される選択に応答して複数の可能な番号の1つをICLID番号として使用することを示すステップ;及び該1つの番号及び該1つの番号を決定するための指示データを被呼顧客を扱う交換機に転送するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】 該複数の番号が該呼のための発呼カード番号から成ることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項3】 該複数の番号が該発呼顧客から受信された識別番号から成ることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項4】 該識別番号が該顧客によって該呼を確立するためのダイヤリング動作の一部として供給されることを特徴とする請求項3の方法。
【請求項5】 該ダイヤリング動作が識別番号を識別するために識別シーケンスをダイヤルすることから成ることを特徴とする請求項4の方法。
【請求項6】 該識別番号が特別の電話番号及び個人識別番号から成ることを特徴とする請求項5の方法。
【請求項7】 該識別データに基づいて、該1つの番号を被呼顧客を扱うためのICLIDとして選択するステップがさらに含まれることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項8】 電話交換システム内において電話呼を処理するために使用される装置において、該装置が:共通チャネル信号法メッセージを交換システムに向けて被呼顧客を扱うために送信するための手段;及びプログラムの制御下において動作し、発呼顧客によって決定される選択に応答し、該被呼顧客を扱う交換システム内において入り呼ライン識別(ICLID)番号として使用されるべき複数の可能な番号のどれを使用するかを示す指示データを格納するためのプロセッサ手段を含むことを特徴とする装置。」

ロ.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電気通信呼に関する呼者識別に関する。入り呼ライン識別(incoming calling line identification、ICLID)はますます一般的なサービスとなりつつある。ICLIDサービスにおいては、被呼顧客は発呼者の識別を受信する。この識別は被呼顧客によって呼に応答するか否かの決定を意識的に行なうため、或は呼に応答するための適切な精神的準備を行なうために使用することができる。これに加えて、ICLIDサービスは、ローカルエリア信号法サービス(local area signaling services 、LASS)などのようなサービスと共に、ある呼者からの呼のみを受け入れることを希望する人々或はコンピュータシステムに対する呼を選択的に完結し、ある呼者からの呼を拒絶することを希望する人々に対する呼を拒絶し、またその呼がある選択されたグループの呼者からのものであるとき特別な警告信号を与え、或は選択された呼者からの呼を転送するために使用することができる。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】発呼者が彼或は彼女の自宅の電話機からでないとき問題が発生する。例えば、発呼者が空港から発呼カード呼をかけた場合、被呼顧客を扱う交換システムの所で受信及び使用されるICLID番号はその空港に設置された公衆電話の番号であり、被呼顧客のLASSサービスに対してリストされた番号でも、被呼顧客によって認識できる番号でもない。従って、従来の技術の一つの問題は、ICLIDサービスが、呼が発信された電話機を識別することによって、被呼顧客及び被呼顧客を扱う交換システムに呼者が彼或は彼女の自宅或は会社の電話以外の電話機から電話したとき、呼を正しく処理するために必要とされる情報を提供できないことである。
【0003】
【発明の概要】この問題及び従来の技術に対しての進歩が本発明によって達成されるが、本発明は、従来の技術と、発呼顧客に彼の発呼電話機の番号或は他の番号を入り呼ライン識別(ICLID)番号として使用できると言うオプションが提供されるという点において異なる。本発明の一つの特定の実施例によると、顧客が発呼カード呼を行なおうとしている場合は、顧客にICLID番号として発呼カード番号或は電話番号のいずれかを使用すべきであることを示す選択が与えられる。長所として、顧客は発呼顧客の自宅或は会社の電話番号を含む発呼カード番号を示すことができる。本発明の一つの特徴によると、発呼者はICILD番号として使用するために識別番号、例えば、個人識別番号をキー入力する。長所として、この識別番号は、被呼顧客電話機或はこの顧客を扱う交換システムによって認識することができる。
【0004】
【実施例】図1は本発明を遂行する方法の流れ図である。顧客は0+呼(zero plus call)をダイヤルする(動作ブロック101)。0+呼は第一の数字が0であり、これに続く数字が被呼顧客の電話番号の数字である呼である。こうしてダイヤルされた番号に応信して、発呼顧客を扱う交換システムは呼者の発呼カード番号を要求するトーンを送る(動作ブロック103)。顧客は、おそらくは、カード読取り機の使用を通じて発呼カード番号をダイヤルあるいは入力する(動作ブロック105)。ブロック101、103及び105の動作は従来の技術において周知である。先行技術と離れて、この交換機は、次に、顧客に発呼カード番号あるいは発呼電話番号のいずれかを被呼顧客を扱う交換システムによってICLID番号として使用されるべき番号として選択することを催促する(動作ブロック107)。テスト109は顧客が番号タイプを選択したか否かを決定する。例えば、発呼顧客は発呼カード番号を使用したいときは”1”をキー入力し、発呼電話番号を使用したいときは”2”をキー入力する。顧客が応信しないときは、交換機は省略時の値を使用するが(動作ブロック113)、この省略時の値は電話管理者によって選択される。ここでの実施においては、この省略時の値は、おそらくは、発呼電話機の電話番号とされる。ただし、本発明の実現においては、省略時にこの代わりに発呼顧客の発呼カード番号を使用する必要がある場合もある。発呼顧客が番号タイプの1つを選択すると、交換機は選択れたタイプの番号を使用する(動作ブロック111)。」

ハ.「【0007】図4は本発明を図解するためのブロック図である。二つの電話、つまり、電話機301及び303が発信交換機305に接続される。発信交換機はプログラム309の制御下において動作し、図1及び図2に記述される該当する部分を実行するプロセッサ307を含む。発信交換機305は共通チャネル信号法リンク320(これは、ここには示されない一つ或は複数の信号転送ポイントを横断することがある)を介して終端交換331に接続される。終端交換機331はプログラム335によって制御され、図3のフローチャートによって指定されるプログラムを実行するプロセッサ333を含む。終端交換機はICLIDディスプレイ347から成るICLIDディスプレイ343及び345を含む2つの電話機341に接続される。電話機301が0+電話番号及び発呼カード番号をダイヤルし、発呼カード番号が好ましいことを示すと、発信交換機305は、データトランシーバ310を使用してデータリンク320を通じて発呼カード番号がICLID番号である指示を含む共通チャネル信号法(common channel signaling、CCS)メッセージ323を送る。この発呼カード番号が次に終端電話機341に送信される。
【0008】同様に、電話機303は図2に示されるように先頭の##、IN番号、区切り文字**、及び終端電話番号から成る番号をダイヤルする。このケースにおいては、発信交換機305はプロセッサ307及びプログラム309の制御下においてINがICLID番号であるとこを示すCCSメッセージ327を送信する。INがPIN及びSDNから構成されるときは、SDNが終端電話機345に転送される。データメッセージは終端交換機331のデータトランシーバ336内に受信される。この番号が次にディスプレイのために終端電話機345に転送される。INが発呼者の電話番号及び個人識別番号であるときは、後者が終端交換機内において呼者がこの特別の電話番号をこの呼に対するICLID番号として使用する権利を持つか検証する。
【0009】用語ICLID番号は、ここでは、(番号がプライベートでない限り)顧客の電話機の所で表示するために終端交換システムによって使用される番号、或はLASS機能との関連で使用される番号を指す。これら2つの目的に対して異なる番号を使用できることは明らかであり、この場合、これら番号は終端交換システムへの信号法メッセージ内において別個に識別される。現時点においては、発信交換機と終端交換機との間のCCSメッセージは発呼電話番号及び発呼カード番号の両方を含む複数の番号から成る。本発明を実現するにあたっては、発呼者識別のために使用されるべき番号を識別するのに要求される標識データを収容するためにCCSメッセージ内の1バイト空間のみの割り当てが要求される。好ましい実施例においては、発呼者が識別番号をキー入力した場合、この番号は、終端交換機に伝送される初期アドレスメッセージ(Initial Address Message (IAM)の現在未使用の欄を使用して送信されなければならない。」

引用例の段落【0007】及び図4を参照すると、引用例は、発信交換機と終端交換機とが接続された電話交換システムを前提とするものである。
発信交換機及び終端交換機は、データメッセージを送受信するものであるから、デジタル電話ネットワークを対象とするものであるといえる。
発信交換機及び終端交換機は、プロセッサを含み、プログラムによって制御されるものであるから、発信交換機において、発呼電話番号を記憶する段階を有することは技術的に自明である。
引用例の【請求項8】には、「発呼顧客によって決定される選択に応答し、該被呼顧客を扱う交換システム内において入り呼ライン識別(ICLID)番号として使用されるべき複数の可能な番号のどれを使用するかを示す指示データを格納するためのプロセッサ手段を含む」と記載されていることから、「発呼者の選択に応答し、発呼カード番号あるいは発呼電話番号のいずれかを入り呼ライン識別番号として使用するかを示す指示データを記憶する段階」を有するものであるといえる。

したがって、引用例には、技術常識を考慮すると、
「発呼顧客を識別する入り呼ライン識別番号を被呼顧客に送信する方法であって、
デジタル電話ネットワークの、発信交換機と終端交換機とが接続された電話交換システムに発呼電話番号を記憶する段階と、
デジタル電話ネットワークの発呼顧客の電話機を用いて発呼カード番号を入力する段階と、
発呼者に発呼カード番号あるいは発呼電話番号のいずれかを選択するように催促する段階と、
発呼カード番号あるいは発呼電話番号のいずれかを入り呼ライン識別番号として使用するかを示す指示データを記憶する段階と、
発呼カード番号あるいは発呼電話番号のうち、指示データに基づいて選択されたものを、電話交換システムの被呼顧客の電話機において表示すべき入り呼ライン識別番号として、被呼顧客の電話機に送信する段階とを含む方法。」
との発明(以下、「引用例発明」という。)が開示されていると認めることができる。

4.対比
本願発明と引用例発明とを対比する。
引用例発明の「発呼顧客」、「入り呼ライン識別番号」、「被呼顧客」は、本願発明の「発呼加入者」、「少なくとも1つの加入者番号」、「被呼加入者」にそれぞれ相当する。
引用例発明の「発呼電話番号」、「発呼カード番号」、「入力する」は、本願発明の「第1の発呼加入者番号」、「第2の発呼加入者番号」、「与える」にそれぞれ相当する。
引用例発明の「発呼顧客の電話機」、「被呼顧客の電話機」は、本願発明の「発呼加入者端末装置」、「被呼加入者端末装置」にそれぞれ相当する。
引用例発明の「指示データ」は、「どの加入者番号を選択して送信すべきかに関する情報を含んだ」ものであるといえるので、本願発明の「発呼加入者番号選択データ」と一致している。

したがって、本願発明と引用例発明とは、
「発呼加入者を識別する少なくとも1つの加入者番号を被呼加入者に送信する方法であって、
デジタル電話ネットワークの電話交換システムに第1の発呼加入者番号を記憶する段階と、
どの加入者番号を選択して送信すべきかに関する情報を含んだ発呼加入者番号選択データを記憶する段階と、
前記デジタル電話ネットワークの発呼加入者端末装置を用いて第2の発呼加入者番号を与える段階と、
前記第1の発呼加入者番号、前記第2の発呼加入者番号のうち、前記発呼加入者番号選択データに基づいて選択されたものを、前記デジタル電話ネットワークの被呼加入者端末装置において表示すべき加入者番号として、該被呼加入者端末装置に送信する段階と、
を含む方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
「第1の発呼加入者番号」及び「発呼加入者番号選択データ」の記憶について、本願発明では、「電話交換システムに備えられた発呼加入者データ」に記憶するのに対して、引用例発明では、電話交換システムの何に記憶するのか不明である点。

[相違点2]
「被呼加入者端末装置において表示すべき加入者番号」として、本願発明は、「前記第1の発呼加入者番号、前記第2の発呼加入者番号、及び、これらの両方のうち」から選択するのに対して、引用例発明では、「前記第1の発呼加入者番号、前記第2の発呼加入者番号のうち」から選択するものである点。

5.当審の判断
[相違点1]について
電話交換システムを構成する電話交換機に加入者データを記憶する手段を設けることは、当審で通知した拒絶理由に引用された、特開平5-219205号公報、特開平5-236123号公報、特開平6-104987号公報に示されるように、当業者における周知事項であり、引用例発明の電話交換システムの発信交換機が、発呼加入者データを記憶する手段を有するものであることは技術的に自明なことである。
そして、「第1の発呼加入者番号」及び「発呼加入者番号選択データ」は、発呼側の電話交換機において使用されるものであり、発呼加入者に関するものであるから、発呼加入者データに記憶するように構成することに困難性は認められない。

[相違点2]について
引用例には、「第1の発呼加入者番号」として、発呼加入者端末の電話番号を使用し、「第2の発呼加入者番号」として、自宅や会社の電話番号を使用することできる旨が示されている(段落【0003】等)。この場合に、「第1の発呼加入者番号」と「第2の発呼加入者番号」とは、被呼加入者からすれば、両者を表示させることに意味がある場合があるのは明らかであり、発呼加入者が両者を表示させることを選択できるようにすることは、必要に応じて適宜採用し得る事項である。
さらに、引用例の段落【0009】には、「現時点においては、発信交換機と終端交換機との間のCCSメッセージは発呼電話番号及び発呼カード番号の両方を含む複数の番号から成る。」と記載されており、引用例においては、「第1の発呼加入者番号」と「第2の発呼加入者番号」とは、終端交換機に通知されており、これらを被呼加入者端末装置に送信することに技術的な困難性も認められない。
したがって、引用例発明において、相違点2に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たものというべきである。

そして、本願発明の作用効果も、引用例発明及び周知事項から当業者が予測できる範囲のものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-01-25 
結審通知日 2011-01-27 
審決日 2011-02-08 
出願番号 特願平10-526262
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 永田 義仁  
特許庁審判長 竹井 文雄
特許庁審判官 新川 圭二
宮田 繁仁
発明の名称 加入者番号を送信する方法  
代理人 小川 信夫  
代理人 大塚 文昭  
代理人 中村 稔  

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