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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1238884
審判番号 不服2010-9166  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-04-28 
確定日 2011-06-23 
事件の表示 特願2004-191049「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 1月12日出願公開、特開2006- 7695〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成16年6月29日に出願したものであって、平成19年2月21日付け及び平成21年10月19日付けで手続補正がなされ、平成22年1月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月28日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
その後、平成22年10月13日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、同年12月15日に回答書が提出された。

2 平成22年4月28日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年4月28日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲についての補正を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「外部から入力される印刷データに基づいて画像を形成する画像形成部と、
画像形成装置の状態変化を検出する装置状態検出部と、
電力供給を制限することで省電力モードに移行させる制御を行う制御部と、
画像形成装置内における印刷前の印刷データの有無を検出するデータ有無検出部と
を有する画像形成装置であって、
前記制御部は、前記装置状態検出部が画像形成装置の状態が変化したことを検出したとき、前記データ有無検出部で印刷データの有無を検出し、前記データ有無検出部が印刷データを検出しない場合、画像形成装置の省電力モードにし、前記データ有無検出部が印刷データを検出した場合、画像形成装置の印刷準備動作を開始する
ことを特徴とする画像形成装置。」
から
「外部から入力される印刷データに基づいて画像を形成する画像形成部と、
画像形成装置の状態変化を、画像形成装置に設けられたセンサにより検出する装置状態検出部と、
電力供給を制限することで省電力モードに移行させる制御を行う制御部と、
画像形成装置内における印刷前の印刷データの有無を検出するデータ有無検出部と
を有する画像形成装置であって、
前記制御部は、前記装置状態検出部が画像形成装置の状態が変化したことを検出したとき、前記データ有無検出部で印刷データの有無を検出し、前記データ有無検出部が印刷データを検出しない場合、画像形成装置の省電力モードにし、前記データ有無検出部が印刷データを検出した場合、画像形成装置の印刷準備動作を開始する
ことを特徴とする画像形成装置。」
と補正された(下線は審決で付した。以下同様。)。
上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「装置状態検出部」の検出について、「画像形成装置に設けられたセンサにより」と限定したものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開2000-190596号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の記載が図とともにある。
ア 【0016】同図において、プリンタ装置1はパーソナルコンピュータ等のホスト機器2から印刷データの供給を受け、記録紙に画像形成を行う印刷装置であり、内部は電源オン認識部3、データ受信部4、アイドル状態計時タイマ5、スリープ移行時間記憶部6、プリンタエンジン7、排紙管理部8、スリープモード管理部9で構成されている。
【0017】電源オン認識部3はプリンタ装置1のメイン電源の投入を認識し、スリープモード管理部9に通知するものであり、スリープモード管理部9はこの通知により電源の投入を知る。また、データ受信部4は受信バッファ等で構成され、上述のホスト機器2から供給される印刷データを格納する。
【0018】アイドル状態計時タイマ5は、プリンタ装置1をアイドル状態に設定するまでの時間を計時するタイマである。また、スリープ移行時間記憶部6は電源投入からスリープモードへの移行時間を記憶するものである。
【0019】プリンタエンジン7は印字ヘッドや記録紙の搬送機構で構成され、例えばビットマップデータに変換された印刷データに従った印刷を記録紙に行う。また、排紙管理部8は上記プリンタエンジン7によって印刷処理された記録紙を機外に排出する際の排紙管理を行う管理部である。
【0020】さらに、スリープモード管理部9はプリンタ装置1のスリープモードを管理する機能を有し、スリープモードへの移行処理、スリープモードでの各部の制御等を行う。以上の構成のプリンタ装置1において、以下にスリープ移行制御を中心とした本例の動作を説明する。
イ 【0021】先ず、オペレータが電源をオンすると(ステップ(以下Wで示す)1)、図2に示すフローチャートに従って前述の電源オン認識部3は電源投入を検出する。尚、電源がオンされる前、例えば補助電源等により常時電源オンの判断を行っている(W1がNO)。すなわち、電源のオンを検出すると(W1がY(YES))、電源オン認識部3はスリープモード管理部9に電源オンがあった旨の通知を行う(W2)。
【0022】図3はスリープモード管理部9の処理動作を説明するフローチャートであり、スリープモード管理部9は電源オン認識部3からの電源オン通知を待ち(ステップ(以下Sで示す)1がNO)、電源オン認識部3から電源オン通知を受けると(S1はYES)、直ぐにアイドル状態計時タイマ5を“0”にリセットする(S2)。次に、アイドル状態計時タイマ5の計時動作をストップし(S3)、スリープ状態に移行すべく、プリンタエンジン7にコマンドを送信する(S4)。
ウ 【0023】次に、イベント発生を判断し(S5)、アイドル状態計時タイマ5の駆動処理等を行う。ここで、イベントとはホスト機器2からの印刷データの入力等をいう。そして、このようなイベントの発生がない場合(S5がNO)、アイドル状態計時タイマ5の計時処理が実行される(S6)。
【0024】したがって、上述の一連の処理により、本例によれば印刷データの入力等がない限り電源投入と同時にアイドル状態計時タイマ5の計時処理が開始され、プリンタエンジン7はスリープモードに設定される。例えば、定着部の温度は低く保持され、省電力制御モードとなる。
【0025】次に、スリープモード管理部9はスリープ移行時間を越えたか判断する(S7)。本例の場合、スリープ移行時間記憶部6には大きな時間データが記憶されており、プリンタ装置1はスリープモードを継続する。
エ 【0026】その後、イベントが発生すると(S5がYES)、イベントの種類によって以下の処理を行う。例えば、イベントが印刷データの入力である場合、アイドル状態計時タイマ5の計時動作を停止し(S8)、現在スリープモード状態であるか判断し(S9)、スリープモード状態であればプリンタエンジン7にコマンドを送信してスリープモードを解除する(S10)。図4はデータ受信の際の処理動作を説明するフローチャートであり、データ受信部4は印刷データの入力があると(S5-1がYES)、スリープモード管理部9に印刷データの入力があった旨の通知を行う(S5-2)。したがって、スリープモード管理部9はこの通知により、印刷データの入力を知り、上述の処理を行う。
【0027】一方、発生したイベントが排紙管理部8からの未印字データなしの通知である場合、前述のアイドル状態計時タイマ5を“0”にリセットし、アイドル状態計時タイマ5を再度スタートさせる(S11)。図5は排紙管理部8の処理動作を説明するフローチャートである。先ず、未印字フラグ有無フラグをオフする(ステップ(以下Uで示す)1)。次に、プリンタ装置1内の未印字データの有無を確認する(U2)。この未印字データは、プリンタ装置1内に記録紙が残っており、印字処理が全て終了していないことを示す。したがって、未印字データがある場合(U3がYES)、未印字フラグ有無フラグをオンし(U4)、印字処理が終了するまで上述の処理を繰り返す。一方、未印字データがない場合(U3がNO)、未印字フラグ有無フラグのオンを判断し(U5)、スリープモード管理部9に対し、未印字データがなくなった旨の通知を行う(U6)。したがって、スリープモード管理部9はこの通知に基づいて、上述の処理を行うものである。
【0028】尚、本例の処理は、最初の電源投入時のみ、ただちにスリープモードに移行させるものであり、以後印刷データを受信した後の処理は従来と同様である。
【0029】以上のように処理することにより、例えば電源投入後、しばらく印刷処理を行わないプリンタ装置において、無駄な電力消費を無くすことができる。
オ 【図3】から、ステップ5でイベントの発生を判断し、イベントの種類が「データ受信部からの印刷データ受信の通知または、スリープ状態を解除する条件に合致する通知」である場合ステップ8に進むことが看取できる。

上記記載及び図面を含む刊行物1全体の記載から、刊行物1には、以下の発明が開示されていると認められる。
「プリンタ装置1はパーソナルコンピュータ等のホスト機器2から印刷データの供給を受け、記録紙に画像形成を行う印刷装置であり、内部は電源オン認識部3、データ受信部4、アイドル状態計時タイマ5、スリープ移行時間記憶部6、プリンタエンジン7、排紙管理部8、スリープモード管理部9で構成されており、
電源オン認識部3はプリンタ装置1のメイン電源の投入を認識し、スリープモード管理部9に通知するものであり、スリープモード管理部9はこの通知により電源の投入を知り、データ受信部4は受信バッファ等で構成され、前記ホスト機器2から供給される印刷データを格納し、
オペレータが電源をオンすると、補助電源等により常時電源オンの判断を行っている電源オン認識部3は電源投入を検出し、電源オン認識部3はスリープモード管理部9に電源オンがあった旨の通知を行い、
スリープモード管理部9は電源オン通知を受けると、スリープ状態に移行すべく、プリンタエンジン7にコマンドを送信し、
次に、ホスト機器2からの印刷データの入力または、スリープ状態を解除する条件に合致する通知のイベント発生を判断し、このようなイベントの発生がない場合、プリンタエンジン7はスリープモードに設定され、定着部の温度は低く保持され、省電力制御モードとなり、
その後、データ受信部4は印刷データの入力があると、スリープモード管理部9に印刷データの入力があった旨の通知を行い、スリープモード管理部9は、現在スリープモード状態であるか判断し、スリープモード状態であればプリンタエンジン7にコマンドを送信してスリープモードを解除し、
排紙管理部8は、プリンタ装置1内の未印字データの有無を確認するものであり、
電源投入後、しばらく印刷処理を行わないプリンタ装置において、無駄な電力消費を無くすことができるプリンタ装置1。」(以下「引用発明」という。)

(3)対比
a 本願補正発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「パーソナルコンピュータ等のホスト機器2」、「印刷データ」、「スリープモード管理部9」及び「スリープモード」は、それぞれ本願補正発明の「外部」、「印刷データ」、「省電力モードに移行させる制御を行う制御部」及び「省電力モード」に相当する。
b 引用発明の「プリンタ装置1」は「パーソナルコンピュータ等のホスト機器2から印刷データの供給を受け、記録紙に画像形成を行う」ものであるから、外部から入力される印刷データに基づいて画像を形成する画像形成部を有しているものといえる。
c 引用発明の「電源オン認識部3」は「プリンタ装置1のメイン電源の投入を認識し、スリープモード管理部9に通知するものであり」、「補助電源等により常時電源オンの判断を行っている」ものであるから、画像形成装置の状態変化を、画像形成装置に設けられたセンサにより検出する装置状態検出部といえる。
d 引用発明は「プリンタエンジン7はスリープモードに設定され、定着部の温度は低く保持され、省電力制御モードとな」るものであるから、電力供給を制限することで省電力モードに移行させる制御を行う制御部を有しているものといえる。
e 引用発明の「排紙管理部8」は「プリンタ装置1内の未印字データの有無を確認」するものであるから、引用発明は、画像形成装置内における印刷前の印刷データの有無を検出するデータ有無検出部を有しているものといえる。
f 引用発明は「オペレータが電源をオンすると、補助電源等により常時電源オンの判断を行っている電源オン認識部3は電源投入を検出し、電源オン認識部3はスリープモード管理部9に電源オンがあった旨の通知を行い、スリープモード管理部9は電源オン通知を受けると、スリープ状態に移行すべく、プリンタエンジン7にコマンドを送信し、次に、ホスト機器2からの印刷データの入力または、スリープ状態を解除する条件に合致する通知のイベント発生を判断し、このようなイベントの発生がない場合、プリンタエンジン7はスリープモードに設定され、定着部の温度は低く保持され、省電力制御モードとなとなり、その後、データ受信部4は印刷データの入力があると、スリープモード管理部9に印刷データの入力があった旨の通知を行い、スリープモード管理部9は、現在スリープモード状態であるか判断し、スリープモード状態であればプリンタエンジン7にコマンドを送信してスリープモードを解除」するものであり、「定着部の温度は低く保持され、省電力制御モード」であるスリープモードを解除すると、定着部の温度を高くする印刷準備動作を開始することは当業者に自明であるから、引用発明の「スリープモード管理部9」と本願補正発明の「省電力モードに移行させる制御を行う制御部」とは、「装置状態検出部が画像形成装置の状態が変化したことを検出するとともに、画像形成装置の省電力モードにし、特定の条件で印刷準備動作を開始する」点で共通する。
g 上記aないしfから、本願補正発明と引用発明は、
「外部から入力される印刷データに基づいて画像を形成する画像形成部と、
画像形成装置の状態変化を、画像形成装置に設けられたセンサにより検出する装置状態検出部と、
電力供給を制限することで省電力モードに移行させる制御を行う制御部と、
画像形成装置内における印刷前の印刷データの有無を検出するデータ有無検出部と
を有する画像形成装置であって、
前記制御部は、前記装置状態検出部が画像形成装置の状態が変化したことを検出するとともに、画像形成装置の省電力モードにし、特定の条件で印刷準備動作を開始する
画像形成装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点]省電力モードに移行させる制御を行う制御部に関し、本願補正発明は「前記装置状態検出部が画像形成装置の状態が変化したことを検出したとき、前記データ有無検出部で印刷データの有無を検出し、前記データ有無検出部が印刷データを検出しない場合、画像形成装置の省電力モードにし、前記データ有無検出部が印刷データを検出した場合、画像形成装置の印刷準備動作を開始する」と特定されているのに対し、引用発明は本願補正発明のような制御を行うものではない点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
引用発明は「ホスト機器2からの印刷データの入力または、スリープ状態を解除する条件に合致する通知のイベント発生」があると、「スリープモードを解除する」ものであるが、通知の有無にかかわらず、スリープ状態を解除する条件がある場合、スリープモードを解除するように制御することは当業者が容易になし得る程度のことである。
引用発明は、オペレータによりメイン電源がオン・オフされるもの、即ち、印刷が不可能な状態と印刷が可能な状態に切り替わるものであり、メイン電源オフの状態(印刷不可能な状態)で印刷データが受信されたり(特開2004-166257号公報、段落【0051】、特開昭63-14540号公報、SW2が開状態でデータが受信される。)、用紙切れ等で印刷データが残っている状態で電源オフされることが想定できる。
オペレータによりメイン電源がオンされた状態で、印刷データが残っていたら、スリープ状態を解除する条件がある場合に相当することは明らかであり、引用発明の「排紙管理部8」は「プリンタ装置1内の未印字データの有無を確認する」ものであるから、引用発明において、電源オン認識部3がプリンタ装置1のメイン電源の投入を認識したとき、排紙管理部8にプリンタ装置1内の未印字データの有無を確認させ、未印字データがない場合、プリンタ装置1をスリープモードにし、未印字データがある場合、プリンタ装置1をスリープモードにせず、即ち、印刷準備動作を開始させるように制御させることは、当業者が容易になし得る程度のことである。
上記のように制御される引用発明は、装置状態検出部が画像形成装置の状態が変化したことを検出したとき、データ有無検出部で印刷データの有無を検出し、前記データ有無検出部が印刷データを検出しない場合、画像形成装置の省電力モードにし、前記データ有無検出部が印刷データを検出した場合、画像形成装置の印刷準備動作を開始するものといえる。
よって、本願補正発明の上記相違点に係る構成となすことは、当業者が容易になし得る程度のことである。

以上のとおりであるから、本願補正発明の相違点に係る構成は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到することができたものであり、それにより得られる効果も当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお、請求人は、平成22年4月28日付け審判請求書の「〔3-4〕本願発明と引用発明との対比」「〔3-3-1〕」において、以下のように主張している。
「 また、引用文献2(審決注:審決における「刊行物1」のことである。)では、プリンタエンジンがスリープモードに設定されている場合には、印刷データの入力等のイベントがない限り、このスリープモードが維持されるようになっております(段落0023、図3等を参照)。
即ち、引用文献1及び引用文献2に記載された発明は、外部の装置からの要求又はデータの入力により、省電力モードを維持するか否かを判断しており、本願請求項1に係る発明のように、画像形成装置に設けられたセンサにより画像形成装置の状態変化、特に、画像形成装置の機構的変化が検出された場合に、画像形成装置内の印刷データの有無を判断して、印刷準備動作を開始するか否かを判断することは行っておりません。」
上記主張は、画像形成装置に設けられたセンサが画像形成装置の機構的変化(本願明細書の最良の形態として、カバーの開閉が記載されている。)を検出するものであるかの如きものであるが、仮に、本願補正発明の「センサ」が検出する内容がカバーの開閉のような画像形成装置の機構的変化を検出するものであるとして、以下検討する。
カバーが開いている状態では、印刷不可能であることは、当業者に自明であるところ、本願補正発明と引用発明は、いずれも、印刷が可能か否かを検出している点で共通する。カバーの開閉を検知することは、原査定で引用された特開2000-330426号公報に記載されているように周知技術であるところ、引用発明のメイン電源の検出(印刷が可能か否かの検出)に代え、カバーの開閉を検出(印刷が可能か否かの検出)し、上記「(4)判断」で検討したように、排紙管理部8にプリンタ装置1内の未印字データの有無を確認させることは、当業者が容易になし得る程度のことであり、そうすると、本願補正発明のような構成となる。
したがって、本願補正発明の画像形成装置に設けられたセンサが画像形成装置の機構的変化(本願明細書の最良の形態として、カバーの開閉が記載されている。)を検出するものであるとしても、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

また、請求人は、平成22年12月15日付け回答書で以下の請求項1の補正案を提示している。
「外部から入力される印刷データに基づいて画像を形成する画像形成部と、
画像形成装置の状態変化を、画像形成装置に設けられたセンサにより検出する装置状態検出部と、
電力供給を制限することで省電力モードに移行させる制御を行う制御部と、
画像形成装置内における印刷前の印刷データの有無を検出するデータ有無検出部と
を有する画像形成装置であって、
前記制御部は、前記装置状態検出部が画像形成装置の状態が変化したことを検出したとき、前記データ有無検出部で印刷データの有無を検出し、前記データ有無検出部が印刷データを検出しない場合、画像形成装置の省電力モードにし、前記データ有無検出部が印刷データを検出した場合、画像形成装置の印刷準備動作を開始し、
前記データ有無検出部は、前記受信部の受信バッファに格納されているデータが、親展印刷データである場合には、印刷データ無しの検出結果を制御部に返信する
ことを特徴とする画像形成装置。」
しかしながら、親展印刷データが、本人確認を要するものであることは当業者に自明であるところ、本人確認がなければ、スリープ状態を解除する条件とならないから、上記補正案の下線を付した部分のような構成とすることは当業者が容易になし得る程度のことである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3 本願発明について
平成22年4月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし11に係る発明は、平成21年10月19日付け手続補正後の特許請求の範囲、明細書及び図面からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「外部から入力される印刷データに基づいて画像を形成する画像形成部と、
画像形成装置の状態変化を検出する装置状態検出部と、
電力供給を制限することで省電力モードに移行させる制御を行う制御部と、
画像形成装置内における印刷前の印刷データの有無を検出するデータ有無検出部と
を有する画像形成装置であって、
前記制御部は、前記装置状態検出部が画像形成装置の状態が変化したことを検出したとき、前記データ有無検出部で印刷データの有無を検出し、前記データ有無検出部が印刷データを検出しない場合、画像形成装置の省電力モードにし、前記データ有無検出部が印刷データを検出した場合、画像形成装置の印刷準備動作を開始する
ことを特徴とする画像形成装置。」

(1)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は、前記「2(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2で検討した本願補正発明から「装置状態検出部」の検出についての限定事項である「画像形成装置に設けられたセンサにより」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明を特定する事項を全て含み、さらなる限定を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2(4)」に記載したとおり、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-04-13 
結審通知日 2011-04-19 
審決日 2011-05-06 
出願番号 特願2004-191049(P2004-191049)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41J)
P 1 8・ 575- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大浜 登世子  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 桐畑 幸▲廣▼
鈴木 秀幹
発明の名称 画像形成装置  
代理人 篠原 昌彦  
代理人 山形 洋一  
代理人 前田 実  

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