• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47K
管理番号 1238888
審判番号 不服2010-9952  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-05-10 
確定日 2011-06-23 
事件の表示 特願2004-247344「静電霧化装置付き洗面化粧台」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月 9日出願公開、特開2006- 61407〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成16年8月26日の出願であって,平成22年2月2日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年5月10日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同時に手続補正がなされたものである。
その後,平成22年10月1日付けで,審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ,同年11月22日付けで回答書が提出された。


第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は,平成22年5月10日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「水粒子放出部と,該水粒子放出部と対向する対向電極と,水粒子放出部に水を供給するための水供給手段と,水粒子放出部と対向電極との間に高電圧を印加する電圧印加部とを備え,水粒子放出部と対向電極との間に高電圧を印加することで水粒子放出部の水からナノメータサイズの帯電微粒子水を生成する静電霧化装置を構成すると共に,洗面化粧台にボウル部を設け,洗面化粧台のボウル部の上面に直接又はボウル部の上方に隙間を介して静電霧化装置を配設し,水粒子放出部に水を供給するための水供給手段が空気中の水分を結露させることで水の供給を行う結露水生成装置であることを特徴とする静電霧化装置付き洗面化粧台。」
(以下,「本願発明」という。)


第3 引用刊行物
1.刊行物1
原審の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である,特開2000-139736号公報(以下,「刊行物1」という。)には,次のことが記載されている。
(1a)「【0021】(実施例1)図1は本発明の実施例1における健康洗面ユニットの外観図である。
【0022】図において、1は洗面作業をおこなう洗面台であり、この洗面台1の下部には収納棚2が組み込まれている。また洗面台1の上部には洗面器3や水栓4などの水まわり機器が設置されている。さらに洗面台1の上方には洗面時に顔や姿を映し出すミラー5を備えたミラーキャビネット6が設けてある。またミラーキャビネット6の上部には照明器具7および健康促進手段8が設置されている。」

(1b)「【0032】(実施例4)本発明の実施例4における健康洗面ユニットを図1または図2の外観図に従って説明する。
【0033】この実施例4は、健康促進手段8を超音波方式の加湿器で構成したものである。
【0034】なお、実施例1または2と同一符号のものは同一構造を有し、説明は省略する。
【0035】次に動作、作用について説明すると、洗面使用者が洗面台1の前面に位置し、洗面器3や水栓4を使って、顔や手を洗ったり、ミラー5を覗いて化粧や歯磨きをするとき、ミラーキャビネット6に設けられた超音波方式の加湿器からなる健康促進手段8が作用する。これにより洗面使用時における洗面使用者のまわりの加湿ができるため、洗面使用者の空調環境が良化する。一般に湿度が50%以下ではウィルスの繁殖が著しく、特に乾燥しやすい冬場における洗面使用空間の湿度を保つことによってウィルスの繁殖を抑制することが出来るため、風邪をひくことがほとんどなくなる。また湿度を保つことにより静電気がたまりにくくなり、使用者自身が電気ショックを受けることがなくなる。さらに洗面使用者の肌に潤いを与えることが出来るため美容促進効果を有するとともに、喉の粘膜にも潤いを与えることができるので喉に溜まる老廃物を排出し易くなり体調が良くなる。」

(1c)「【0066】(実施例11)本発明の実施例11における健康洗面ユニットを図1または図2の外観図に従って説明する。
【0067】この実施例11は、健康促進手段8を電気集塵方式による空気清浄装置で構成したものである。
【0068】なお、実施例1または2と同一符号のものは同一構造を有し、説明は省略する。
【0069】次に動作,作用について説明すると、洗面使用者が洗面台1の前面に位置し、洗面器3や水栓4を使って、顔や手を洗ったり、ミラー5を覗いて化粧や歯磨きをするとき、ミラーキャビネット6に設けられた電気集塵方式による空気清浄装置で構成された健康促進手段8が作用する。これにより洗面使用者のまわりのほこりやダニの死骸,カビの胞子,ウィルス等を除去することができ空気環境が良くなるため、洗面使用者の不快感が無くなり精神衛生上良くなるとともにリフレッシュ効果がある。」

(1d)「【0071】(実施例12)本発明の実施例12における健康洗面ユニットを図1または図2の外観図に従って説明する。
【0072】この実施例12は、健康促進手段8を空気に電場をかけ電磁エネルギーを付加する空気機能化装置で構成したものである。
【0073】なお、実施例1または2と同一符号のものは同一構造を有し、説明は省略する。
【0074】次に動作,作用について説明すると、洗面使用者が洗面台1の前面に位置し、洗面器3や水栓4を使って、顔や手を洗ったり、ミラー5を覗いて化粧や歯磨きをするとき、ミラーキャビネット6に設けられた空気に電磁場をかけ電磁エネルギーを付加する空気機能化装置で構成された健康促進手段8が作用する。これにより窒素,酸素や水蒸気が電荷を帯びて、洗面使用者のまわりの空気がイオン化された状態になる。このイオン化した空気が洗面使用者へ生理的に作用し、脳波や心拍が安定化し、精神衛生上良い状態となる。」

上記記載(1a)?(1d)及び図面の記載からみて,刊行物1には,以下の発明が記載されているものと認められる。
「洗面台に洗面器が配置され,洗面台の上方のミラーキャビネットに加湿機能や空気清浄機能や空気をイオン化する空気機能化機能等を有する健康促進手段を備えた洗面台。」
(以下,「刊行物1記載の発明」という。)

2.刊行物2
原審の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である,特開2004-85185号公報(以下,「刊行物2」という。)には,次のことが記載されている。
(2a)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、室内空気の脱臭や室内壁面等の付着物の脱臭を行うことができる空気清浄機に関し、特に静電霧化の技術を利用した空気清浄機に関するものである。」

(2b)「【0017】図1、図2には本発明の空気清浄機Aの一例が示してある。空気清浄機Aは本体ケース11内に空気清浄部12及び静電霧化装置9を内装してある。
【0018】空気清浄部12は従来の空気清浄機と同様に室内空気を吸入するための吸込み口1と、濾過した空気を室内に吐出するための吐出口3と、吸込み口1から吐出口3に至る風路10内に設けた不織布や活性炭等のフィルタ2と、ファン4aを備えた送風部4とを備えたもので、室内空気を吸込み口1から空気清浄部12内に吸入し、フィルタ2により濾過して空気を清浄化し、清浄化した空気を吐出口3から再び室内に吐出するようになっているものであり、いわゆるフィルタ2で濾過する方式(フィルタレーション方式)により室内に浮遊している臭いを除去するようになっている。
【0019】
本体ケース11内には上記のように空気清浄部12の他に静電霧化装置9が設けてあるが、この静電霧化装置9は、図6に示す原理図のように、水Wを入れた水溜め部5と、水溜め部5より水Wを搬送する搬送部6と、搬送部6による水Wの搬送方向に対向するように配置された電極7と、搬送部6と電極7との間に高電圧を印加する電圧印加部8とを備えている。
【0020】ここで、本発明の空気清浄機Aにおいては、少なくとも静電霧化装置9の搬送部6及び電極7はフィルタ2の下流側に設けてある。搬送部6と電極7との間に高電圧を印加することにより搬送部6先端の水Wが帯電して霧化してナノサイズのミストMが発生する。そして、本発明においては搬送部6と電極7がフィルタ2の下流側に設けてあるので、上記のように搬送部6と電極7に高電圧を印加することで発生したナノサイズのミストMはフィルタ2で浄化された空気と共に空気清浄機Aの外の雰囲気中に拡散され、室内空気中の脱臭や室内壁面等の付着物の脱臭を効果的に行うことができる。・・・」

(2c)「【0049】
【発明の効果】
上記のように本発明にあっては、搬送部と電極との間に高電圧を印加することにより搬送部の水が霧化して発生したミストが、フィルタで浄化された空気と共に空気清浄機Aの外の雰囲気中に拡散されることになり、室内空気中の脱臭や室内壁面等の付着物の脱臭を効果的に行うことができる。」

上記記載(2a)?(2c)及び図面の記載からみて,刊行物2には,以下の発明が記載されているものと認められる。
「水を入れた水溜め部と,水溜め部より水を搬送する搬送部と,搬送部による水の搬送方向に対向するように配置された電極と,搬送部と電極との間に高電圧を印加する電圧印加部とを備え,搬送部と電極との間に高電圧を印加することにより搬送部先端の水が帯電して霧化してナノサイズのミストを発生させる静電霧化装置。」
(以下,「刊行物2記載の発明」という。)


第4 当審の判断
1.本願発明と刊行物1記載の発明との対比
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると,刊行物1記載の発明の「洗面台」及び「洗面器」が,それぞれ,本願発明の「洗面化粧台」及び「ボウル部」に相当しており,本願発明の「静電霧化装置」は,洗面台を使う人の保湿効果や洗面所内の臭いの除去やカビ等の繁殖を抑制するものであるから,刊行物1記載の発明の「健康促進手段」に対応している。

したがって,両者は,以下の点で一致している。
「洗面化粧台にボウル部を設け,洗面化粧台に健康促進手段を配設した洗面化粧台。」

そして,以下の点で相違している。
(相違点1)
健康促進手段が,本願発明は「水粒子放出部と,該水粒子放出部と対向する対向電極と,水粒子放出部に水を供給するための水供給手段と,水粒子放出部と対向電極との間に高電圧を印加する電圧印加部とを備え,水粒子放出部と対向電極との間に高電圧を印加することで水粒子放出部の水からナノメータサイズの帯電微粒子水を生成する静電霧化装置」であるのに対し,刊行物1記載の発明は,加湿機能や空気清浄機能や空気をイオン化する空気機能化機能を有するもの等であって特に装置は限定されていないが,静電霧化装置は具体的に特定されていない点。

(相違点2)
本願発明は,健康促進手段を「洗面化粧台のボウル部の上面に直接又はボウル部の上方に隙間を介して配設」しているのに対し,刊行物1記載の発明は,洗面化粧台の上方のミラーキャビネットに備えているものの,ボウル部の上面に直接又はボウル部の上方に隙間を介して配設しているものであるか否かは明らかではない点。

(相違点3)
相違点1に関連して,本願発明は,健康促進手段が水供給手段を備えるものであって,該水供給手段が空気中の水分を結露させることで水の供給を行う結露水生成装置であるのに対して,刊行物1記載の発明は,健康促進手段として加湿機能を想定しており,その際には当然何らかの水供給手段を備えるものではあるが,該水供給手段について何ら具体的な特定はされていない点。

2.相違点についての判断
(相違点1について)
刊行物2記載の発明の「搬送部」,「電極」及び「水溜め部」が,相違点1に係る本願発明の静電霧化装置の「水粒子放出部」,「対向電極」及び「水供給手段」に相当しており,本願発明の「静電霧化装置」は,室内空気中の脱臭や室内壁面等の付着物の脱臭を効果的に行うことができる健康促進手段として公知である。
そして,刊行物2記載の発明の「静電霧化装置」を,刊行物1記載の発明の「健康促進手段」として採用することは,それを妨げる要因はなく,当業者が容易になし得たことである。

(相違点2について)
刊行物1記載の発明においては,健康促進手段は,ボウル部が設けられた洗面化粧台の上方のキャビネットに設けられており,ボウル部の上方に設けられている点では同じであって,健康促進手段から水漏れ等が生じた場合には,ボウル部に流れることが多少なりとも期待できる構成となっている。
そもそも洗面化粧台に加湿機能や空気をイオン化する空気機能化機能等を備える健康促進手段を設ける際には,該手段の機能が効率的に働く箇所に設けるのが基本であって,健康促進手段を洗面化粧台のボウル部を使用している使用者に作用させるべく該ボウル部の近傍に設けることは当業者が普通に採用できる構成である。
そして,健康促進手段として水漏れの可能性がある装置を採用する際には,水漏れが生じた場合に全体に支障が無いような位置に配置できればそれに超したことはなく,刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明を採用するに際して,健康促進手段を使用者に作用させることができとともに,静電霧化装置から水漏れが生じた場合には該水が洗面化粧台のボウル部に流れるような位置,すなわち「洗面化粧台のボウル部の上面」の位置や「ボウル部の上方に隙間を介した」位置に,静電霧化装置を取り付けることは,当該技術分野の当業者であれば容易に想い到ることである。

(相違点3について)
空気中の水分を結露させることで水分の供給を行うことは,特開2002-310465号公報(特に【請求項1】参照),実願平1-123778号(実開平3-67822号)のマイクロフィルム(特に,明細書9頁11行?11頁13行参照),特開2003-287316号公報(特に【請求項1】参照)等に記載されているように周知である。
そして,刊行物1記載の発明の「健康促進手段」として,刊行物2記載の発明のような水分を必要とする装置を採用した際に,その水分供給手段として,上記周知の技術を採用することは当業者が容易に想い到ることである。

3.効果についての検討
本願発明は,静電霧化装置の水として結露水を用いることによる,水の供給の手間が省け,不純物を含まない清浄な水を使用することができ,脱臭効果を低下させない等の効果は,結露を利用した水分供給装置の効果として当業者が十分認識しているものであって,静電霧化装置の水供給手段として用いることによって,当業者の予測できない相乗的な効果が生じるとまでは認められない。
また,健康促進手段を洗面化粧台のボウル部の上面に直接又はボウル部の上方に隙間を介して配設することによる水漏れの処理についての効果も,当該技術分野における当業者であれば十分に予測できる効果に過ぎない。

以上より,本願発明は,本願出願前に頒布された刊行物1,2記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。


第5 むすび
以上のとおり,本願発明は,本願出願前に頒布された刊行物1,2記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条2項の規定により特許を受けることができず,本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。

(補正案について)
なお,請求人は,平成22年11月22日付け回答書において,補正案を提示して,さらに「静電霧化装置の空気路中にフィルタを配置」することを特定する旨の主張をしているが,空気清浄器等の装置にフィルタを設けることは,例えば刊行物2の記載事項(2b),(2c)に記載されているように周知の技術であり,刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明を採用するに際して,当業者が適宜採用できる構成にすぎない。
 
審理終結日 2011-04-18 
結審通知日 2011-04-19 
審決日 2011-05-10 
出願番号 特願2004-247344(P2004-247344)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A47K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 家田 政明  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 土屋 真理子
宮崎 恭
発明の名称 静電霧化装置付き洗面化粧台  
代理人 西川 惠清  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ