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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1238928
審判番号 不服2008-9399  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-15 
確定日 2011-06-22 
事件の表示 特願2002-523162「多層キャッシングシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 3月 7日国際公開、WO02/19114、平成16年 6月 3日国内公表、特表2004-516532〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年8月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理平成12年8月29日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成20年1月10日付けで拒絶査定がなされ、同年4月15日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年5月15日付けで手続補正がなされたものである。


第2 平成20年5月15日付けの手続補正(以下、「本件補正」と呼ぶ。)についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

本件補正を却下する。

[理由]

1.本件補正の補正内容
平成20年5月15日付けの手続補正書(方式)の【手続補正1】の【補正の内容】の【請求の理由】の「3.3」の「(1)」の欄に「補正前の請求項1に対応する補正後の請求項1」と記載されていること等からみて、本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、下記<補正前の請求項1>欄に転記したものから、同<補正後の請求項1>欄に転記したものに変更する補正事項を含むものである。

<補正前の請求項1>
「【請求項1】 データリクエストに応答する方法であって、該方法は、2つ以上のキャッシュメモリを含む多層キャッシュシステムを有するコンピュータシステムにおいて用いられ、
該方法は、
複数のパラメータを有する第1のデータリクエストをユーザデバイスから受信することと、
該コンピュータシステムのオペレーティングシステムが、該第1のデータリクエストに応答して、データアイテムを求めて第1のメモリをサーチすることであって、該第1のメモリの内容は、該コンピュータシステムのオペレーティングシステムによって管理されている、ことと、
該第1のメモリのサーチが不成功である場合、該第1のメモリから、該コンピュータシステム上で実行されているアプリケーションプログラムによって管理されている第2のメモリに該第1のデータリクエストを伝えることであって、該アプリケーションプログラムは、該第1のデータリクエストに応答して、該データアイテムを求めて該第2のメモリをサーチする、ことと、
該第1のメモリまたは該第2のメモリのサーチが成功である場合、該第1のデータリクエストに応答する該データアイテムを該第1のメモリまたは該第2のメモリから該ユーザデバイスに供給することと、
該第2のメモリのサーチが不成功である場合、該第1のデータリクエストに応答する第1のデータアイテムを該第1のメモリおよび該第2のメモリ以外の格納デバイスから受信し、該第1のデータリクエストに応答して該第1のデータアイテムを供給することと、
該第1のデータアイテムの内容に基づいて、該第1のメモリおよび該第2のメモリのうちのどちらが該第1のデータアイテムを格納するかを決定し、該第1のデータアイテムが複数の異なるデータリクエストに応答する否かを決定することと
を包含する、方法。」

<補正後の請求項1>
「【請求項1】 データリクエストに応答する方法であって、該方法は、オペレーティングシステムと複数のキャッシュメモリを含む多層キャッシュシステムとを有するコンピュータシステムにおいて用いられ、
該方法は、
該オペレーティングシステムが、第1のデータリクエストをユーザからユーザデバイスを介して受信することと、
該オペレーティングシステムが、該第1のデータリクエストに応答して、第1のデータアイテムを求めて該複数のキャッシュメモリのうちの第1のキャッシュメモリをサーチすることであって、該第1のデータアイテムは、所定の特性を有し、該第1のキャッシュメモリの内容は、該オペレーティングシステムによって管理されている、ことと、
該第1のキャッシュメモリのサーチが不成功である場合、該オペレーティングシステムが、該第1のデータアイテムを求めて該複数のキャッシュメモリのうちの第2のキャッシュメモリをサーチすることであって、該第2のキャッシュメモリの内容は、アプリケーションプログラムによって管理されている、ことと、
該第1のキャッシュメモリのサーチが不成功であり、かつ、該第2のキャッシュメモリのサーチが不成功である場合、
該オペレーティングシステムが、該第1のキャッシュメモリおよび該第2のキャッシュメモリ以外の格納デバイスから該第1のデータアイテムを受信することと、
該第1のデータアイテムの該所定の特性に基づいて、該オペレーティングシステムが、後のデータリクエストに応答して供給するために、該第1のキャッシュメモリおよび該第2のキャッシュメモリのうちのどちらが該第1のデータアイテムを格納するかを決定することと、
該第1のデータアイテムの該所定の特性に基づいて、該オペレーティングシステムが、該第1のキャッシュメモリまたは該第2のキャッシュメモリから該第1のデータアイテムを検索し、該第1のデータアイテムを該ユーザに供給することと、
を包含し、
該第1のデータアイテムの特性は、データアイテムの人気、該データアイテムのサイズ、該データアイテムの経過時間、該データアイテムの無効性、該データアイテムのタイプのうちの1つ以上を含み、
該第1のデータリクエストは、値を有するパラメータを含み、
該決定することは、該第1のデータアイテムとは異なる第2のデータアイテムが該第1のデータリクエストとは該パラメータの異なる値を有する第2のデータリクエストに対して供給されなければならない場合には、該第1のデータアイテムを該第2のキャッシュメモリに格納することを包含する、方法。」

2.本件補正の目的の適否について
本件補正の目的が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に適合するか否かを検討するに、当審は、以下の理由で、本件補正の目的は、同改正前の特許法第17条の2第4項の規定に適合するものではないと判断する。

(1)上記改正前の特許法第17条の2第4項第2号でいう「発明を特定するために必要な事項を限定するもの」は、「補正前の請求項における『発明を特定するための事項』(以下、「発明特定事項」と呼ぶ。)の一つ以上を、概念的により下位の『発明特定事項』とする補正」のことであると解するのが相当であるところ、上記補正後の請求項1中の「該第1のデータアイテムの該所定の特性に基づいて、該オペレーティングシステムが、該第1のキャッシュメモリまたは該第2のキャッシュメモリから該第1のデータアイテムを検索し、該第1のデータアイテムを該ユーザに供給することと、」なる発明特定事項(以下、「発明特定事項A」と呼ぶ。)が、補正前の請求項1のいずれの発明特定事項の下位概念でもないことは明らかである。
したがって、本件補正の上記補正事項のうち、上記発明特定事項Aを追加する補正事項は、上記改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げられる事項を目的とするものではない。

(2)上記改正前の特許法第17条の2第4項第4号でいう「明りょうでない記載の釈明」は、「補正前の記載の不明りょうさを正して、『その記載本来の意味内容』を明らかにすること」であると解するのが相当であるところ、上記発明特定事項Aを本来の意味内容とする記載事項が上記補正前の請求項1に存在しないことは明らかである。
したがって、上記発明特定事項Aを追加する補正事項は、上記改正前の特許法第17条の2第4項第4号に掲げられる事項を目的とするものでもない。

(3)上記発明特定事項Aを追加する補正事項が、上記改正前の特許法第17条の2第4項第1号でいう「請求項の削除」、同第3号でいう「誤記の訂正」のいずれにも該当しないことは明らかである。

(4)よって、上記発明特定事項Aを追加する補正事項を含む本件補正は、上記改正前の特許法第17条の2第4項の規定に適合するものではない。

3.新規事項追加の有無について
本件補正が、特許法第17条の2第3項の規定に適合するか否かを検討するに、当審は、以下の理由で、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合するものではないと判断する。

(1)上記補正後の請求項1は、「該第1のキャッシュメモリのサーチが不成功である場合、該オペレーティングシステムが、該第1のデータアイテムを求めて該複数のキャッシュメモリのうちの第2のキャッシュメモリをサーチすること」という発明特定事項(以下、「発明特定事項B」と呼ぶ。)と、上記発明特定事項Aの両方を発明特定事項としているが、本願の国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下、「翻訳文等」と呼ぶ。)に、上記発明特定事項Aと上記発明特定事項Bの両方を具備する方法が記載されているとは認められない(翻訳文等における明細書の段落【0088】?【0092】には上記発明特定事項Aに対応する事項が記載されており、同段落【0093】には上記発明特定事項Bに対応する事項が記載されているとは認められるが、同段落【0093】では、上記発明事項Bに対応する事項を具備する実施形態は、上記発明特定事項Aを具備する実施形態の代替的な実施形態であるとされており、上記発明特定事項Aに対応する事項と同Bに対応する事項の両方を具備する実施形態があり得るとはされていない。又同明細書のその他の箇所の記載を精査しても、本願発明が上記発明特定事項Aに対応する事項と同Bに対応する事項の両方を具備するものであり得ることを示す記載は見当たらない。)し、そのような方法は、翻訳文等の記載から自明な事項とも認められない。

(2)したがって、請求項1において上記発明特定事項Aと上記発明特定事項Bの両方を発明特定事項とすることを含む本件補正は、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。

(3)よって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合するものではない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、上記改正前の特許法第17条の2第4項の規定、及び特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。


第3 上記補正却下の決定を踏まえた本願についての検討

1.本願発明
上記のとおり本件補正は却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」と呼ぶ。)は、上記「第2」の「[理由]」の「1.」の「<補正前の請求項1>」の欄に転記したとおりのものである。

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された「Rosu.D, et al、"Hint-based Acceleration of Web Proxy Caches"、Proceeding of The IEEE International、Performance, Computing, and Communications Conference、2000.IPCCC '00、20 February 2000、pages 30-37(ISBN:0-7803-5979-8)」(以下、「引用例」と呼ぶ。)には、以下の事項が記載されている。

(1)「1 Introduction
・・・(中略)・・・This system, which we call a proxy accelerator,(see Figure 1) forwards the hits to the Web proxy and processes the cache misses itself. Therefore, the Web proxy's missrelated overheads are reduced to receiving cacheable objects from the accelerator.
The information about proxy caches that is used in filtering the requests is called hint information and might not provide 100% accurate information. The hints are maintained based on information provided by proxy nodes and information derived from the accelerator's own decisions.
Besides hints, the accelarator may have a main memory cache. An accelerator cache can serve objects with considerably less overhead than from a proxy cache partly because of the embedded operating system on which the accelerator runs and partly because all objects are cached in main memory.」(第30ページ左欄第21行?右欄第10行)
(当審による邦訳)
「1 イントロダクション
・・・(中略)・・・我々がプロキシアクセラレータと呼ぶこのシステム(図1参照)は、ヒットをウェブプロキシへ転送し、このシステム自体がキャッシュミスを処理する。それ故、ウェブプロキシの関連づけられていないオーバーヘッドは、アクセラレータからキャッシュ可能なオブジェクトを受信することに減縮される。
要求をフィルタリングする際に用いられるプロキシキャッシュについての情報は、ヒント情報と呼ばれ、100%の正確性を与えるものではないかもしれない。ヒントは、プロキシノードから提供される情報とアクセラレータ自身の判断によりもたらされる情報により維持される。
ヒントの他に、アクセラレータはメインメモリキャッシュを持っていてもよい。アクセラレータキャッシュは、一部はその上でアクセラレータが動作する実装されたオペレーティングシステムのおかげで、また、一部はすべてのオブジェクトがメインメモリに存在するおかげで、プロキシキャッシュからよりもかなり少ないオーバーヘッドでオブジェクトを提供できる。」

(2)「2 Accelerated Web Proxy
This Paper proposes a new approach to speeding up proxy caches by reducing their cache-miss overheads. In the new approach, the Web Proxy(WP) configuration includes an extended content-based router called a proxy accelerator(PA). A PA in typically built from stock hardware and runs under an embedded operating system optimized for communication. A PA can achieve an order of magnitude better throughput than a Web proxy node for communication operations.
The PA filters client requests, distinguishing between cache hits and misses based on hints about proxy cache content. In the case of a cache hit, the PA hands off the request to a WP node that contains the objects. In the case of a cache miss, the PA sends the request to the Web site, bypassing the WP. When it receives the object from the Web site, the PA replies to the client, and if appropriate, pushes the object to a WP node.
The PA may include a main memory cache for storing the hottest objects. Requests satisfied from a PA cache never reach the WP, further reducing the traffic seen by the WP. The PA cache is populated with objects received directly from remote Web sites or objects pushed by WP nodes.
Figure 1(a) illustrates the interactions of a PA in a four-node WP cluster. Notice that WP nodes still interact with Web sites. This occurs when the PA filter is not accurate, or the PA is overloaded and does not apply the content filter to all requests.」(第31ページ左欄第1?30行)
(当審による邦訳)
「2 アクセラレーテッドウェブプロキシ
このペーパは、プロキシキャッシュのキャッシュミスのオーバーヘッドを減少することにより、プロキシキャッシュをスピードアップすることへの新しいアプローチを提案する。新しいアプローチでは、ウェブプロキシ(WP)の構成は、プロキシアクセラレータ(PA)と呼ばれる拡張されたコンテンツベースのルータを含む。PAは、典型的には、ありふれた装置から構築され、通信のために最適化された、実装されたオペレーティングシステムの下で実行される。PAは、通信処理に関して、ウェブプロキシノードよりも1桁以上高いスループットを実現可能である。
PAは、プロキシキャッシュコンテンツについてのヒントに基づいて、キャッシュヒットとミスを区別するように、クライアントからの要求を濾過する。キャッシュヒットの場合、PAは、オブジェクトを有するWPノードへ要求を手渡す。キャッシュミスの場合、PAは、WPをバイパスさせて、要求をウェブサイトへ送る。ウェブサイトからのオブジェクトを受信したとき、PAはクライアントへ応答し、適切な場合は、オブジェクトをWPノードへ送る。
PAは、最も人気のある(hottest)オブジェクトを蓄積するためのメインメモリーキャッシュを含んでいてもよい。PAキャッシュによって満たされた要求は、WPノードへは到達しない。そしてこのことは、WPからみたトラフィックをさらに減少させる。PAキャッシュは、リモートウェブサイトから直接受信したオブジェクト、またはWPノードから送られたオブジェクトによって構成される。
図1(a)は、4ノードのWPのクラスタにおけるPAの相互作用を示す。WPノードが依然としてウェブサイトと相互作用する点に留意されたい。これは、PAフィルタが正確でないとき、あるいは、PAが過負荷ですべての要求にコンテントフィルタを適用しないときに生じる。」

そして、上記記載事項を各種常識に照らせば、以下のことがいえる。
ア.「WPノード」と「PA」とによって実現される方法は、クライアントからのデータリクエストに応答する方法の一種であり、そこにおける各キャッシュのサーチ等の処理は、「第1のデータリクエスト」と呼び得るものに応答して為される。
イ.上記方法は、WPノードのキャッシュ(プロキシキャッシュ)とPAのキャッシュ(メインメモリキャッシュ;PAキャッシュ)という2つ以上のキャッシュメモリを含む多層キャッシュシステムを有するコンピュータにおいて用いられる方法でもある。
ウ.上記「PAのキャッシュ」の内容は、上記コンピュータシステムのオペレーティングシステムによって管理されており、その内容のサーチは、当該オペレーティングシステムによって為される。
エ.上記記載事項(2)中の「PAは、最も人気のある(hottest)オブジェクトを蓄積するためのメインメモリーキャッシュを含んでいてもよい。PAキャッシュによって満たされた要求は、WPノードへは到達しない。そしてこのことは、WPからみたトラフィックをさらに減少させる。」なる記載は、「クライアントからのデータリクエストは、PAのキャッシュのサーチが不成功である場合に、PAのキャッシュからWPノードのキャッシュに伝えられる」ことを意味している。
オ.PAのキャッシュまたはWPノードのキャッシュのサーチが成功である場合には、データリクエストに応答するオブジェクトは、当然に、該PAのキャッシュまたはWPノードのキャッシュからクライアントに供給される。
カ.PAのキャッシュおよびWPノードのキャッシュのサーチが不成功である場合には、データリクエストに応答するオブジェクトは、当然に、ウェブサイトからクライアントに供給される。

したがって、引用例には、以下の発明(以下、「引用例記載発明」と呼ぶ。)が記載されているといえる。
「データリクエストに応答する方法であって、該方法は、2つ以上のキャッシュメモリを含む多層キャッシュシステムを有するコンピュータシステムにおいて用いられ、
該方法は、
第1のデータリクエストをクライアントから受信することと、
該コンピュータシステムのオペレーティングシステムが、該第1のデータリクエストに応答して、オブジェクトを求めてプロキシアクセラレータ(PA)のキャッシュをサーチすることであって、該PAのキャッシュの内容は、該コンピュータシステムのオペレーティングシステムによって管理されている、ことと、
該PAのキャッシュのサーチが不成功である場合に、該PAのキャッシュから、ウェブプロキシ(WP)ノードのキャッシュに該第1のデータリクエストを伝えることであって、該WPは、該第1のデータリクエストに応答して、該オブジェクトを求めて該WPノードのキャッシュをサーチする、ことと、
該PAのキャッシュまたは該WPノードのキャッシュのサーチが成功である場合、該第1のデータリクエストに応答する該オブジェクトを該PAのキャッシュまたは該WPノードのキャッシュから該クライアントに供給することと、
該PAのキャッシュおよび該WPノードのキャッシュのサーチが不成功である場合、該第1のデータリクエストに応答するオブジェクトをウェブサイトから受信し、該第1のデータリクエストに応答して該ウェブサイトから受信したオブジェクトを供給することと、
を包含する、方法。」

3.対比
本願発明と引用例記載発明とを対比すると、両者の間には、以下の対応関係があるといえる。
(1)引用例記載発明の「クライアント」は、本願発明の「ユーザデバイス」に相当する。
(2)引用例記載発明の「オブジェクト」、「ウェブサイトから受信したオブジェクト」は、それぞれ、本願発明の「データアイテム」、「第1のデータアイテム」に相当する。
(3)引用例記載発明の「プロキシアクセラレータ(PA)のキャッシュ」、「ウェブプロキシ(WP)ノードのキャッシュ」は、それぞれ、本願発明の「第1のメモリ」、「第2のメモリ」に相当する。
(4)引用例記載発明の「ウェブサイト」は、本願発明の「第1のメモリおよび第2のメモリ以外の格納デバイス」に相当する。

したがって、本願発明と引用例記載発明との間には、以下の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「データリクエストに応答する方法であって、該方法は、2つ以上のキャッシュメモリを含む多層キャッシュシステムを有するコンピュータシステムにおいて用いられ、
該方法は、
第1のデータリクエストをユーザデバイスから受信することと、
該コンピュータシステムのオペレーティングシステムが、該第1のデータリクエストに応答して、データアイテムを求めて第1のメモリをサーチすることであって、該第1のメモリの内容は、該コンピュータシステムのオペレーティングシステムによって管理されている、ことと、
該第1のメモリのサーチが不成功である場合、該第1のメモリから、第2のメモリに該第1のデータリクエストを伝えることであって、該第1のデータリクエストに応答して、該データアイテムを求めて該第2のメモリをサーチする、ことと、
該第1のメモリまたは該第2のメモリのサーチが成功である場合、該第1のデータリクエストに応答する該データアイテムを該第1のメモリまたは該第2のメモリから該ユーザデバイスに供給することと、
該第2のメモリのサーチが不成功である場合、該第1のデータリクエストに応答する第1のデータアイテムを該第1のメモリおよび該第2のメモリ以外の格納デバイスから受信し、該第1のデータリクエストに応答して該第1のデータアイテムを供給することと、
を包含する、方法。」である点。

(相違点1)
本願発明の「第1のデータリクエスト」は、複数のパラメータを有するものであるのに対し、引用例記載発明の「第1のデータリクエスト」は、複数のパラメータを有するとは限らない点。

(相違点2)
本願発明の「第2のメモリ」は、コンピュータシステム上で実行されているアプリケーションプログラムによって管理されており、該「第2のメモリ」のサーチは、該アプリケーションプログラムによって為されるのに対し、引用例記載発明の「第2のメモリ」(ウェブプロキシ(WP)ノードのキャッシュ)は、コンピュータシステム上で実行されているアプリケーションによって管理されているとは限らず、該「第2のメモリ」のサーチも、アプリケーションプログラムによって為されるとは限らない点。

(相違点3)
本願発明の方法は、「該第1のデータアイテムの内容に基づいて、該第1のメモリおよび該第2のメモリのうちのどちらが該第1のデータアイテムを格納するかを決定し、該第1のデータアイテムが複数の異なるデータリクエストに応答する否かを決定すること」という手順を有しているのに対し、引用例記載発明は、それに相当する手順を有していない点。

4.判断

(1)(相違点1)について
一般に、データリクエストに複数のパラメータを持たせることは周知であるし、引用例記載発明におけるデータリクエストを複数のパラメータを有するものとできない理由もないから、引用例記載発明の「第1のデータリクエスト」を、複数のパラメータを有するものとすることは、当業者が容易に推考し得たことである。

(2)(相違点2)について
コンピュータシステムで実行する各種処理を、アプリケーションプログラムにより実現することはごく普通のことであるし、引用例記載発明のWPノードのキャッシュについても、その管理やサーチはアプリケーションプログラムにより実現するのが簡便であることは、当業者に自明であるから、引用例記載発明の「第2のメモリ」(ウェブプロキシ(WP)ノードのキャッシュ)を、コンピュータシステム上で実行されているアプリケーションによって管理されるものとし、該「第2のメモリ」のサーチをアプリケーションプログラムによって為されるようにすることも、当業者が容易に推考し得たことである。

(3)(相違点3)について
下記ア.?オ.の事情を勘案すると、引用例記載発明に「該第1のデータアイテムの内容に基づいて、該第1のメモリおよび該第2のメモリのうちのどちらが該第1のデータアイテムを格納するかを決定し、該第1のデータアイテムが複数の異なるデータリクエストに応答する否かを決定すること」という手順を設けることも、当業者が容易に推考し得たことというべきである。

ア.上記「2.」の「(2)」に摘記した引用例の記載事項からも明らかなように、引用例記載発明は、「第1のメモリ」(プロキシアクセラレータ(PA)のキャッシュ)に、ウェブサイトから受信したオブジェクト(第1のデータアイテム)の中の「最も人気のある(hottest)オブジェクト」を格納することを想定しているが、そのようにする場合に、当該「最も人気のある(hottest)オブジェクト」を「第2のメモリ」(「ウェブプロキシ(WP)ノードのキャッシュ」)に格納しなくても所期の目的を達成し得ることは当業者に自明であり、当該「最も人気のある(hottest)オブジェクト」を上記「第1のメモリ」(プロキシアクセラレータ(PA)のキャッシュ)のみへ格納するようにすることは、当業者が適宜なし得たことである。

イ.上記ア.に示した引用例記載発明における想定を実現するために、ウェブサイトから受信したオブジェクト(第1のデータアイテム)が「最も人気のある(hottest)オブジェクト」に該当するか否かを決定する必要があることや、その決定が、ウェブサイトから受信したオブジェクト(第1のデータアイテム)の内容に基づいて為されるべきことも、当業者に自明である。

ウ.複数のキャッシュを用いるものにおいて、キャッシュに格納すべきデータの内容に基づいて格納先のキャッシュを決定することは、拒絶査定や前置報告書に周知例として例示された文献にも示されるように周知でもある。

エ.「第1のデータアイテムが複数の異なるデータリクエストに応答する否か」が、上記「最も人気のある(hottest)オブジェクト」に該当するか否かの指標となり得ることは、当業者に自明であるし、該「第1のデータアイテムが複数の異なるデータリクエストに応答する否か」を当該指標とすることは、当業者が設計事項として適宜決定し得たことである。

オ.引用例記載発明に、「該第1のデータアイテムの内容に基づいて、該第1のメモリおよび該第2のメモリのうちのどちらが該第1のデータアイテムを格納するかを決定し、該第1のデータアイテムが複数の異なるデータリクエストに応答する否かを決定すること」という手順を設けることができない理由はない。

(4)本願発明の効果について
本願発明の構成によってもたらされる効果は、引用例の記載事項や周知の事項から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

5.まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例記載発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願は、他の拒絶の理由について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-01-21 
結審通知日 2011-01-25 
審決日 2011-02-07 
出願番号 特願2002-523162(P2002-523162)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 57- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 野田 佳邦  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 池田 聡史
飯田 清司
発明の名称 多層キャッシングシステム  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  
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