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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1238940
審判番号 不服2009-1075  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-01-13 
確定日 2011-06-22 
事件の表示 特願2003-553771「時間予約制でのサービス品質の設定」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 6月26日国際公開、WO03/52993、平成17年 5月12日国内公表、特表2005-513865〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2002年12月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年12月15日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成20年10月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年1月13日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成21年2月12日付けで手続補正がなされ、平成22年7月5日付けで審尋がなされ、平成22年12月21日に回答書が提出されたものである。

2.平成21年2月12日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成21年2月12日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項23は、
「ネットワークにおいて、クライアント間でのセッションに対するサービス品質(QoS)契約を設定することができることを設ける方法であって、該ネットワークは該ネットワークを通じて情報を送るルーティング・エレメントを有し:
該セッションに対する予約を送信する工程であって、該予約は該セッションについての時間帯を特定するので、クライアントが、該特定時間帯中に、保証されたサービス・レベルの該セッションに参加し得る工程;及び
前記セッションがいつ終了したかの通知を送信する工程;
を含むことを特徴とする方法。」
と補正された。

上記補正は、願書に最初に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内において、補正前の特許請求の範囲の請求項23に記載された「ネットワークにおいて、クライアント間でのセッションに対するサービス品質(QoS)契約を設定することができることを設ける方法」が「前記セッションがいつ終了したかの通知を送信する工程;を含む」ことを限定するものであり、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項23に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-253053号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の記載がある。

イ.「【請求項1】ネットワークドメインは、IPパケットの転送とデータ処理が可能な通信ノードと、ネットワーク管理システムと、制御サーバとエンドシステム(ES)と、それらの間を接続する回線から構成され、前記ネットワークドメインが複数個接続されたネットワークシステムにおいて、ネットワークドメイン間の通信パスの設定交渉手段により、ネットワークドメインに跨る通信品質保証された通信パスを設定することを特徴とするネットワークシステム。」

ロ.「【0013】
【発明の実施の形態】本発明の第一の実施の形態を図1から図32を参照して説明する。図1は本発明を適用するネットワークシステムの一構成例を示す図である。本システムは,ネットワークドメイン10を複数個含むものである。一つのネットワークドメイン10は、NMS(Network Management System)11、制御サーバ12、通信ノード13、PC端末あるいはサーバ装置のごときES(End System)14、および、NMS11と制御サーバ12と通信ノード13を接続し該ネットワークドメイン10内のネットワーク制御・管理のために使用する制御ネットワーク16、通信ノード13間を接続する中継ネットワーク回線17、通信ノード13とES14間のアクセスネットワーク回線18から構成される。制御サーバ12、通信ノード13、ES14はそれぞれ複数個存在してよい。
【0014】ネットワークドメイン10の間は、制御ネットワーク16間を接続する回線L16と通信ノード13間を接続する回線L13により接続される。制御ネットワーク16、中継ネットワーク回線17、アクセスネットワーク回線18、回線L16、回線L13は、例えばIEEE802 CSMA/CD、ATM、SONET/SDHのごときLAN(Local Area Network)およびWAN(Wide Area Network)であり、LANスイッチ、ATMスイッチ、SONET/SDH伝送装置と回線メディア(メタルケーブル、光ファイバー等)で実現される。以上で説明した構成要素は全てIP(Internet Protocol)に基づく通信を行い、例えば、IPv4まはたIPv6に準拠したIPアドレスを持ち、相互にIPパケットによる通信が可能である。
【0015】[ハードウェアの構成例と動作例説明]図2は本発明を適用する通信ノード13の構成例を示す図である。通信ノード13は、管理部131、サービス処理部132、転送処理部133、内部スイッチ部135、外部サービス処理部134から構成される。管理部131、サービス処理部132、転送処理部133は、内部スイッチ部135と接続されており、接続には内部スイッチポート139と内部スイッチパス136が使われ、内部スイッチポート139には、ユニークな番号(内部スイッチポート番号)が付与されている。管理部131、サービス処理部132、転送処理部133間には、CPU間通信パス137が設けられている。転送処理部133と外部サービス処理部134との間は、処理部間ネットワーク回線138で接続されている。サービス処理部132、転送処理部133、外部サービス処理部134は複数個存在して良い。内部スイッチ部135は、例えば、クロスバースイッチ等で実現される。」

ハ.「【0028】図13は、通信ノードの経路制御表13343の構成例を示す図である。経路制御表13343は、マスク133431、IPアドレス133432、次ホップIPアドレス133433、出力先転送処理部(内部スイッチポート)アドレス133434の欄からなるエントリ133435が複数個により構成される。経路制御表13343は、上り制御エンジン13341が入力したパケット19を対象に、マッチするエントリ133435を検索するための表である。検索時には、マスク133431の値と入力パケット19のIPヘッダ部201の中にある宛先IPアドレス部分とANDを取り、その後、IPアドレス133432の値と比較をする。一致した場合、次ホップIPアドレス133433と出力先転送処理部(内部スイッチポート)アドレス133434の値が得られる。これらの値の使い方は、一般のIPルータの上り転送処理と同一で公知なので説明は省略する。
【0029】図14は、通信ノードのアドレス変換表133D3の構成例を示した図である。アドレス変換表133D3は、IPアドレス133D31、物理アドレス133D32、エージングタイマ133D33の欄からなるエントリ133D34が複数個から構成される。アドレス変換表133D3は、下り制御エンジン133D1が入力したタグ付パケット21のパケット内容部216に格納されているIPパケット20を対象に、マッチするエントリ133D34を検索するための表である。検索時には、IPパケット20のIPヘッダ部201の中にある宛先IPアドレス部分とIPアドレス133D31の値とを比較する。一致した場合、物理アドレス133D32の値が、該タグ付きパケットの物理アドレス217に格納される。このようなアドレス変換表を用いた処理については、一般のIPルータの下り転送処理と同一で公知のため、詳細説明は省略する。
【0030】以上の説明で出てきた、経路制御表13343、アドレス変換表133D3の値は、それぞれ、いわゆるOSPF(Open Shortest Path First)等の経路制御プロトコル、ARP(Address Resolution Protocol)等のプロトコル制御ソフトウェアを実行させることにより得ることができる。実現方式などは、公知であるので詳細説明は省略する。」

ニ.「【0049】[ソフトウェア機能実施例の説明]図21は、ネットワークシステム・ソフトウェアの一構成例を示す図である。本システムは,管理ドメイン機能50を複数個含むものである。一つの管理ドメイン機能50は、システム運用管理機能51、サービス管理機能52、ネットワーク制御機能53、ESアプリ機能54、通信ノード制御機能55から構成される。これら機能間の接続関係、つまり情報の授受関係は、図の中で矢線により示している。複数の管理ドメイン機能50の間は、図に示したようにネットワーク制御機能53の間の接続64と、通信ノード制御機能55の間の接続68とによって実現されるが、一般には、4個以上の管理ドメイン機能間をメッシュ状の接続を行うことができることは自明である。
【0050】図1との対応では、システム運用管理機能51はNMS11の上で、ESアプリ機能54はES14の上で、サービス管理機能52およびネットワーク制御機能53は制御サーバ12の上で、通信ノード制御機能55は、通信ノード13の上で実行される。サービス管理機能52およびネットワーク制御機能53は、一台以上、複数個の制御サーバ12の上で実行されても良い。次に、情報の授受関係を示す矢線と、図1との対応を説明する。56は、一般に、アクセスネットワーク回線18、通信ノード13、制御ネットワーク回線15、制御ネットワーク16を経由して、ES14とNMS11が情報を授受する。
【0051】57、58は、同様にアクセスネットワーク回線18、通信ノード13、制御ネットワーク回線15、制御ネットワーク16を経由して、ES14と制御サーバ12が情報を授受する。60は制御ネットワーク回線15、制御ネットワーク16を経由して、NMS11と制御サーバ12が情報を授受する。61は、制御ネットワーク回線15、制御ネットワーク16を経由してNMS11と通信ノード13が情報を授受する。62は制御ネットワーク回線15、制御ネットワーク16を経由して、制御サーバ12間で情報を授受しても良い。63は、制御ネットワーク回線15、制御ネットワーク16を経由して制御サーバ12と通信ノード13が情報を授受する。64は、L16を経由して制御サーバ12間で情報を授受する。」

ホ.「【0054】図27は、サービス管理機能52およびネットワーク制御機能53の一構成例を示す図である。サービス管理機能52は、ソフト基盤機能522、サービス要求振分け機能521、サービス対応に存在するサービス管理機能523(図27では、A,B,Cのサービス管理機能として図示している)から構成される。次に、ネットワーク制御機能53は、予約系資源管理機能531、即時系資源管理機能532、資源報告受信機能533、資源指示送信機能534、組織間調停機能535、ソフト基盤機能536から構成される。
【0055】サービス要求振分け機能521は、57経由、ESアプリ機能54からのサービス要求、例えばビデオ会議開催要求を受付けると、要求されたサービス種別毎に振り分けて、複数存在するサービス管理機能523の何れか、例えばビデオ会議サービス管理機能に相当するサービス管理機能523に転送する。サービス管理機能523は、サービス提供に必要なネットワーク資源、例えば、ビデオ会議の場合、参加者X,Y,Zに相当する3箇所のES14と、これら3箇所からの動画情報をミキシングして一つの動画情報にするデータ処理機能との間を接続する「QoS保証されたパスの集合」と「該動画情報ミキシング機能」とから構成されるネットワーク資源を決定し、予約系資源管理機能531および即時系資源管理機能532にネットワーク資源を要求する。
【0056】ここで、ネットワーク資源とは、上記説明のように、例えば、ES14間の通信品質保証された通信パスであったり、通信ノード55上で動作するデータ処理機能、つまり、Webキャッシング・プロキシ機能やビデオ会議用符号則変換機能、N個の動画ストリーム情報のミキシング機能であったり、さらに通信品質保証された通信パスと該データ処理機能を組み合わせたものである。
【0057】予約系資源管理機能531および即時系資源管理機能532は、システム運用管理機能51および組織間調停機能と連携し、ネットワーク資源を予約あるいは即時に獲得し、通信ノード13への資源指示情報に変換する。資源指示送信機能534は、資源指示情報を送信すべき通信ノード13を判断し、対応する一つ以上の通信ノード制御機能55に送信する。各通信ノード制御機能55からは資源報告情報が送信されてくるので、資源報告受信機能533が受信したのち、資源報告情報の種別を判定して、システム運用管理機能51、予約系資源管理機能531および即時系資源管理機能532に通知する。」

ヘ.「【0081】[QoS保証型多地点ビデオ会議サービスの予約と実行の実施例説明]次に、QoS保証パス設定とデータ処理機能を組み合わせたサービスの例としてQoS保証型多地点ビデオ会議予約を例に実施例を説明する。会議主催者の(X)から、例えば、「3個所のES14(X、Y、Zと表記)の間で、開始時刻(V)から終了時刻(W)までの間、ビデオ品質(Q)のビデオ会議を開催する。主催者は(X)」といった要求がサービス管理機能52のサービス要求振分け機能521に入力され、該要求に対応するサービス管理機能523に該要求が転送される。
【0082】サービス管理機能523は、主催者(X)が該要求を発行可能か否かの判定をUDB518並びにPDB519をアクセスし(X)の資格情報ならびに予約受付けポリシー情報基づいて行う。更に、「ビデオ品質(Q)のビデオ会議」なる要求条件を確保すべきネットワーク資源の要求情報、すなわち、「多地点からの動画情報をミキシングして1つの共通動画情報に変換するデータ処理ソフトウェア(S)」、「(S)実行に必要なコンピューティング資源(CPU性能、メモリ量等)」、(X-S間、Y-S間、Z?S間)の3つの「QoS保証パス設定要求」に分解する。
【0083】ここで、該「QoS保証パス設定要求」を詳細に説明すると、「XとSとの間に、開始時刻(V)から終了時刻(W)までの間、帯域(Z)を確保する。確保する帯域は、ビデオ会議アプリに対応するIPパケット・フロー(F)に対し適用する。」要求であるが、(S)の位置は、予約系資源管理機能531において最適選択するために、この段階では確定していない。尚、帯域(Z)の量は、ビデオ品質(Q)およびビデオ会議アプリ、データ処理ソフトウェア(S)が使用する符号則等から決定される。以上、確保すべきネットワーク資源の要求情報を完成させ、予約系資源管理機能531へ要求情報を送信する。
【0084】予約系資源管理機能531の処理は、上記[QoS保証パスの予約と設定の実施例説明]と同様であるが、異なる点は以下である。(1)SRDB5315には、(通信ノード13の番号、転送処理部133の番号、開始時刻(V)、終了時刻(W)、帯域(Z)、IPパケット・フロー(F)識別情報)に加え、(「多地点からの動画情報をミキシングして1つの共通動画情報に変換するデータ処理ソフトウェア(S)、(S)実行に必要なコンピューティング資源情報(通信ノード13の番号、サービス処理部132または外部サービス処理部134の番号、割当てCPU性能値、割当てメモリ量等)」、)等の情報も登録されている。同様に、CDB51Bおよび現在&将来資源情報管理機能51CもSRDB5315と同種の情報を持ち、CDB51Bは、運用管理者が計画しているネットワーク資源の構成情報と将来の利用計画(利用可能時間帯等)が格納されている。
【0085】現在&将来資源情報管理機能51Cは、CDB51Bの内容と、各通信ノード制御機能55の資源報告実行機能5522および通信ノード管理情報中継機能5512から定期的に報告される資源利用状況情報、および回線管理機能516からの情報を入力することにより、604経由の情報問合わせに対し、現在から将来に渡るネットワーク資源エレメント情報を応答する。該ネットワーク資源エレメント情報とは、各通信ノードで利用可能なデータ処理ソフトウェア(S)サービス処理部132または外部サービス処理部134のCPU性能値、メモリ量等である。
【0086】予約系資源管理機能531は、上記の情報を入力し、「多地点からの動画情報をミキシングして1つの共通動画情報に変換するデータ処理ソフトウェア(S)」の実行位置(ある通信ノード内のサービス処理部132または外部サービス処理部134)候補を選択し、(X-S間、Y-S間、Z?S間)の3つの「QoS保証パス設定要求」に変換した後、上記[QoS保証パスの予約と設定の実施例説明]と同様の処理を実行する。全ての選択肢の中から、PDB519の値、例えば、通過する通信ノード数が最小のケースを選択する、あるいは、使用する回線の帯域あるいはサービス処理部132または外部サービス処理部134の資源の利用率が平均化するケースを選択する、等の運用ポリシーに基づき、割当てるべき資源を決定する。
【0087】予約資源登録機能5314は、割当て決定された(通信ノード13の番号、転送処理部133の番号、開始時刻(V)、終了時刻(W)、帯域(Z)、IPパケット・フロー(F)識別情報)、(「多地点からの動画情報をミキシングして1つの共通動画情報に変換するデータ処理ソフトウェア(S)、(S)実行に必要なコンピューティング資源情報(通信ノード13の番号、サービス処理部132または外部サービス処理部134の番号、割当てCPU性能値、割当てメモリ量等)」、)等の情報をSRDBに登録する。
【0088】予約資源ディスパッチ機能5341は、SRDB5315をアクセスし、利用開始時刻になったネットワーク資源エレメントに対応する情報を入力し、通信ノード振分け機能5344に対応する通信ノード制御機能55への送信を要求する。更に、ソフトウェアダウンロード機能5343に対し、「多地点からの動画情報をミキシングして1つの共通動画情報に変換するデータ処理ソフトウェア(S)、(S)実行に必要なコンピューティング資源情報(通信ノード13の番号、サービス処理部132または外部サービス処理部134の番号、割当てCPU性能値、割当てメモリ量等)」等の情報を通知し、(S)のダウンロードを依頼する。
【0089】ソフトウェアダウンロード機能5343は、SDB603から(S)を入手し、通信ノード振分け機能5344に対し、「多地点からの動画情報をミキシングして1つの共通動画情報に変換するデータ処理ソフトウェア(S)、(S)実行に必要なコンピューティング資源情報(通信ノード13の番号、サービス処理部132または外部サービス処理部134の番号、割当てCPU性能値、割当てメモリ量等)」からなる情報を通知し、該当通信ノードへの送信を要求する。通信ノード振分け機能5344は、予約資源ディスパッチ機能5341、およびソフトウェアダウンロード機能5343からの要求により、通信ノード制御機能の資源指示中継機能5514に対し、QoS保証型多地点ビデオ会議サービスに必要な指示情報を送信する。
【0090】同様に、予約資源ディスパッチ機能5341は、SRDB5315をアクセスし、利用終了時刻になったネットワーク資源エレメントに対応する情報を入力し、通信ノード振分け機能5344に対応する通信ノード制御機能55への送信を要求すると通信ノード振分け機能5344は、通信ノード制御機能の資源指示中継機能5514に対し、QoS保証パス解放、データ処理ソフトウェア(S)および(S)実行に必要なコンピューティング資源解放に必要な指示情報を送信する。通信ノード制御機能の資源指示中継機能5514は、該指示情報を資源指示実行機能5523に通知し、資源指示実行機能は、該指示に基づき必要なハードウェア等5524への設定を実行する。資源指示実行機能5523からサービス処理部132または外部サービス処理部134への(S)の転送は、既に説明した。
【0091】以上、(X-S間、Y-S間、Z?S間)の3つの「QoS保証パス設定要求」、「多地点からの動画情報をミキシングして1つの共通動画情報に変換するデータ処理ソフトウェア(S)」、「(S)実行に必要なコンピューティング資源(CPU性能、メモリ量等)」、がネットワーク全体で確保・設定・起動され、または解放されることにより、「3個所のES14(X、Y、Zと表記)の間で、開始時刻(V)から終了時刻(W)までの間、ビデオ品質(Q)のビデオ会議を開催する。主催者は(X)」といったサービスが動的に提供できるばかりでなく、この種の、通信とデータ処理の異なる種類の資源を必要とするサービス要求に対し、運用ポリシーに基づき、最適な資源管理(QoS保証パスの確保、ビデオ会議支援機能の確保、等)を行うことが可能である。」

摘記事項ヘ.には、QoS保証型多地点ビデオ会議予約について記載されており、エンドシステム間でのビデオ会議に対するQoS保証を設定するものであるといえる。
摘記事項ロ.、ハ.によれば、ネットワークシステムは、IPパケットの経路制御を行う通信ノードを有するものである。

引用例の上記記載及び技術常識からすると、引用例には、
「ネットワークシステムにおいて、エンドシステム間でのビデオ会議に対するQoS保証を設定することができることを設ける方法であって、該ネットワークシステムは該ネットワークシステムを通じてIPパケットの経路制御を行う通信ノードを有し、
該ビデオ会議に対する予約を送信する工程であって、該予約は該ビデオ会議の開始時刻と終了時刻を特定するので、エンドシステムが、開始時間から終了時刻までの間、保証されたQoSの該ビデオ会議に参加し得る工程を含む方法。」
の発明(以下、「引用例発明」という。)が開示されていると認めることができる。

(3)対比
本願補正発明と引用例発明を対比する。
引用例発明の「ネットワークシステム」、「エンドシステム」、「ビデオ会議」、「経路制御を行う通信ノード」は、本願補正発明の「ネットワーク」、「クライアント」、「セッション」、「ルーティング・エレメント」にそれぞれ相当する。
引用例発明の「QoS保証を設定する」ことは、本願補正発明の「サービス品質(QoS)契約を設定する」ことに含まれており、引用例発明の「QoS」は、本願補正発明の「サービス・レベル」に含まれるものであるといえる。
引用例発明の「IPパケットの経路制御を行う」ことは、本願補正発明の「情報を送る」ことに含まれている。
引用例発明の「開始時刻と終了時刻を特定する」ことは、「時間帯を特定する」ことであるといえる。

したがって、両者は、
「ネットワークにおいて、クライアント間でのセッションに対するサービス品質(QoS)契約を設定することができることを設ける方法であって、該ネットワークは該ネットワークを通じて情報を送るルーティング・エレメントを有し、
該セッションに対する予約を送信する工程であって、該予約は該セッションについての時間帯を特定するので、クライアントが、該特定時間帯中に、保証されたサービス・レベルの該セッションに参加し得る工程を含む方法。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
本願補正発明は、「前記セッションがいつ終了したかの通知を送信する工程」を含むのに対して、引用例発明は、そのような工程を含まない点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
ネットワークを用いてセッションを行う場合に、セッションの終了を通知することは、例えば、特開平10-32652号公報の【0080】?【0084】、特開平11-27283号公報の【0010】?【0011】に示されるように、通信分野における周知事項であることを考慮すれば、引用例発明において、セッション(ビデオ会議)を終了する場合に、セッションがいつ終了したかの通知を送信するようにすることは、当業者が格別の困難無くなし得ることである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用例発明及び周知事項から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用例発明及び周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成21年2月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項23に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年8月8日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項23に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「ネットワークにおいて、クライアント間でのセッションに対するサービス品質(QoS)契約を設定することができることを設ける方法であって、該ネットワークは該ネットワークを通じて情報を送るルーティング・エレメントを有し:
該セッションに対する予約を送信することができることを設ける工程;
を有し、該予約は該セッションについての時間帯を特定するので、クライアントが、該特定時間帯中に、保証されたサービス・レベルの該セッションに参加し得ることを特徴とする方法。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.(1)」で検討した本願補正発明において付加された限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-01-19 
結審通知日 2011-01-25 
審決日 2011-02-07 
出願番号 特願2003-553771(P2003-553771)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04L)
P 1 8・ 575- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清水 稔小曳 満昭藤井 浩  
特許庁審判長 竹井 文雄
特許庁審判官 萩原 義則
宮田 繁仁
発明の名称 時間予約制でのサービス品質の設定  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠重  

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