• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1239002
審判番号 不服2008-8596  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-07 
確定日 2011-06-20 
事件の表示 特願2003-139584「特定のプレーヤによる口頭のコミュニケーションを防止するための方法及びそのシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月25日出願公開、特開2003-334383〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願の手続の経緯は、概要次のとおりである。
特許出願 :平成15年 5月16日
(パリ条約に基づく優先権主張の日:平成14年5月17日、米国)
拒絶理由通知(最初):平成19年 5月25日(起案日)
手続補正 :平成19年11月29日
拒絶査定 :平成19年12月28日(起案日)
拒絶査定不服審判請求:平成20年 4月 7日
手続補正 :平成20年 5月 1日
審尋 :平成21年 5月29日(起案日)
回答書 :平成21年 9月 7日
補正の却下の決定 :平成22年 8月23日(起案日)
拒絶理由通知(最初):平成22年 8月23日(起案日)
手続補正 :平成22年11月29日

第2 本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成22年11月29日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認める。

「【請求項1】 複数のマルチプレーヤゲームコンソール上で行われるネットワークを介したゲームのプレーヤ間で前記ネットワークを介した口頭のコミュニケーションを提供する能力を有する前記複数のマルチプレーヤゲームコンソール上で行われる前記ネットワークを介したゲームで使用するための、特定のプレーヤによる口頭のコミュニケーションを防止するための方法であって、オンラインゲームサービスによって、
(a)ゲームに参加する各プレーヤに関するデータを保持するステップであって、前記データはインジケータを含み、前記インジケータが、
(i)前記特定のプレーヤと口頭でコミュニケーションをとらないことを選択した別のプレーヤと行われる現行のゲームセッションと、
(ii)前記特定のプレーヤと口頭でコミュニケーションをとらないことを選択した別のプレーヤと行われるすべてのゲームと、
(iii)ネットワークを介して前記特定のプレーヤによって行われ、かつ前記オンラインゲームサービスを使用するすべてのゲームと、
(iv)前記オンラインゲームサービスに接続された任意のマルチプレーヤゲームコンソールを使用して前記特定のプレーヤによって行われるすべてのゲームと
の少なくとも1つの際中に口頭でコミュニケーションをとることから除外される前記特定のプレーヤを指すステップと、
(b)ステップ(a)の従属的な段落(i)?(iv)の前記少なくとも1つに応じて、前記段落(i)及び(ii)の場合は前記特定のプレーヤと前記別のプレーヤとの前記ネットワークを介した口頭のコミュニケーションを自動的に防止し、前記段落(iii)及び(iv)の場合は前記特定のプレーヤとすべての他のプレーヤとの前記ネットワークを介した口頭のコミュニケーションを自動的に防止することによって前記データの中の前記インジケータに応答するステップと
を備えたことを特徴とする特定のプレーヤによる口頭のコミュニケーションを防止するための方法。」

第3 引用例
当審で通知した平成22年8月23日付けの拒絶理由で引用した本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2001-204973号公報(以下「引用例1」という。公開日:平成13年7月31日)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

a.「【0010】図1に示すのは、この発明の一例である通信ゲームシステムを用いたネットワークビジネス形態示す構想図である。
【0011】このネットワークビジネス形態では、複数のアプリケーションサーバを保有するプロバイダーと、前記アプリケーションに使用されるコンテンツを製作するコンテンツ開発・提供会社と、前記コンテンツ開発・提供会社の開発したコンテンツを管理し、前記プロバイダーに対して前記コンテンツを提供するとともに、前記コンテンツを使用するユーザを管理するコンテンツ管理会社(NPCC/ネオジオポケットクラブ)と、前記コンテンツを使用するユーザと前記プロバイダー並びに前記コンテンツ管理会社をとの間に立ち、金銭の授受を管理するクレジット会社から構成される。
・・・(中略)・・・
【0013】図2に示すのは、上記ネットワークビジネス形態でユーザが使用できるサービスを模式的に示した模式図である。
・・・(中略)・・・
【0015】そして、その他のアプリケーションやコンテンツとして「Netゲーム」類、「情報サービス」類、「ビジネス」類の各アプリケーションやコンテンツを選択することができる。ここでアプリケーションとは、ネット上でユーザが係わり合いながらサーバ上でプログラムを走らせて使用するもの、コンテンツとは、ユーザがネット上で単に内容物を参照するとか、ネットワークを利用してゲームプログラムという内容物をダウンロードするその内容物のことを指している。
【0016】例えば、上記「Netゲーム」としては、アプリケーションとしてのネットワークRPGやネット対戦ゲーム(音声チャット対応)や、コンテンツとしてのゲームダウンロードが考えられる。前記対戦ゲームとしては、花札や麻雀などが考えられる。」

b.「【0020】図3は、前記ユーザに手渡されるゲーム端末の概観図を示している。そして、図4は、前記ゲーム端末のハードブロック図を示している。
【0021】図において、符号1は、ゲーム端末の本体部であって、この本体部1には、電話回線と有線で接続するためのモジュラージャック2と、携帯電話と接続するための携帯電話専用ソケット3と、マイク付きのヘッドホン4Aと接続するための音声入出力部4と、使用者自身や使用者が使用してデジタル画像データを生成するCCDカメラ5と、パーソナルコンピュータと接続してデータを送受信するためのシリアルポート6と、前記本体部1内で作成したデジタルデータを一旦記憶するための外部記憶媒体と接続する読取書込部7と、ゲーム情報や前記カメラ5で撮影した映像などを表示するディスプレイ8と、ユーザがゲーム入力等の操作入力を行うための第1の入力手段9と、第1の入力手段9とは別の第2の入力手段としてのタッチパネル10とが、前記本体部1内の制御部11に電気的に接続されて構成されている。
【0022】そして、図4における符号12は、ゲームプログラム等のゲーム情報が記憶されたゲームカートリッジ等の記憶媒体が着脱自在に接続されるコネクタであり、図1の「NGP-ROM」と表記された部位から矢印の方向に記憶媒体が指しこまれると、前記コネクタ12と記憶媒体とが電気的に接続され、前記制御部11によりデータを吸い上げることができるようにしている。
【0023】また、符号14は、ユニバーサルシリアルバス(USB)コネクタであって、このコネクタ14は汎用バスとして使用され、例えば外部のイメージスキャナやプリンタなどと接続される。
【0024】符号13は、LEDランプであり、当該LEDランプ13は、前記ゲーム端末の電源がONされていれば点灯、OFFであれば消灯するようにしている。
【0025】図5に示すのは、上記ゲーム端末を使用者(ゲームプレーヤ)が使用している状態を示すイメージ図であり、前記ゲーム端末の本体部1には、内部電池を備え、どこでも好きな場所で使用できるようになっている。この発明は、内部電源(乾電池などのバッテリ)で使用できるゲーム端末に限定されるものではないが、このようにどこでも好きな場所で使用できるような構成にすれば、パーソナル端末として有用であることは言うまでもない。」

c.「【0026】図6に前述したネットワークビジネス形態で行えるアプリケーションの一つとしての音声チャット対応のネット対戦ゲームのシステム図である。
【0027】図において、符号20は前述したアプリケーションサーバ群の一つのサーバを示している。
【0028】前記サーバ20には、制御部21と、当該制御部21が複数のユーザ1・・nからゲーム入力に応じてゲーム演算を行うためのデータをして使用するゲーム情報記憶部22とを主な構成としている。前記ゲーム情報とは、ゲームプログラム等がこれに相当する。
【0029】しかも、当該サーバ20は、同じゲーム情報で複数のグループでの対戦ゲームが行えるように、複数のスロットが用意されている。つまり、麻雀ゲームであれば、このスロットの数だけの卓があり、同時進行で複数の麻雀ゲームが当該1つのサーバ上で行えることになる。
【0030】次に、スロット1を使用し、ユーザ1からユーザ4により構成されるAグループの麻雀ゲームを例にとって、音声チャット機能を有する麻雀ゲームの進行(ステップ)について説明する。
【0031】第1のステップとして、双方向通信が可能な電話回線30(無線も含む)などを通じてサーバ20に接続される。
【0032】第2のステップとして、サーバは、今の麻雀卓の満席状況データを前記電話回線30を通じてゲーム端末に送信する。
【0033】第3のステップとして、前記ジャック2やソケット3を介して前記満席状況データを受け取ったゲーム端末の本体部1は、当該データに基づき制御部11が表示画面情報を生成し、ディスプレイ9に前記表示画面情報を表示する。
【0034】第5のステップとして、ユーザは前記ディスプレイ9上に表示される麻雀卓の満席状況表示を見ながら、どの麻雀卓で麻雀ゲームを行うか、及び待機しているどのユーザと麻雀ゲームを行うのかを決定するため、待機している他のユーザとまず文字チャットや音声チャットで会話をしたりして対戦ユーザを決定する。
【0035】第6のステップとして、決定したユーザ同士で、どの麻雀卓に入るかを前記操作手段9,10により決定する、麻雀卓が決定されるとサーバ20側は、このユーザ群(ユーザ1?ユーザ4)に対して、1つのスロットを割り当てるとともに、図6における符号Aの一点鎖線で囲む通信回路を通じて割り当てられたスロットと接続される。図6上では、上記一点鎖線で囲む通信回路Aはユーザ1のみについて表示したが、これに限らずユーザ2・・ユーザNに対しても割り当てられたスロットに対して前記通信回路Aと同様の通信回路で接続される。
【0036】第7のステップとして、上述した第6のステップまでが終了した段階で、いつでもゲームがスタートできるスタンバイ状態となる。
【0037】第8のステップとして、ゲームがスタートすると、ディスプレイ8の上で4人のユーザがサイコロを振り、順番や麻雀卓に座る位置をまず決定する。
【0038】第9のステップとして、その後は、自分の順番が回ってきたごとに、入力手段9,10を用いてゲーム入力を行うとともに、前記ヘッドホン4Aのマイクを使用して「なかなかいい手だぞ」といった具合の音声を入力する。
【0039】第10のステップとして、通信回線30を通じて前記音声をデジタル信号に変換した音声データとゲーム入力情報とがサーバ20に伝達される。
【0040】第11のステップとして、前記通信回路30を通じて送信されるデータは、音声データとゲーム入力情報が混在したものとなっているため、これを分岐回路23で分岐する。前記スロット1は、ゲームデータライン24と音声データライン25の2つのラインで構成されており、前記分離された音声データは、バッファ26を介して前記ライン25に入力される一方、分離されたゲーム入力情報は、ライン24に入力される。」

d.「【0041】次の段階では、音声とゲーム情報は別々に非同期で処理されるので、ここでは、まずゲーム情報の処理について説明した後、音声の処理について説明する。
【0042】(ゲーム情報の処理)ライン24に集められたユーザ1乃至ユーザ4のゲーム入力情報に基づいて、入力ごと又は一巡のユーザの入力が終了した後に、前記制御部21はゲーム情報22とユーザのゲーム入力情報とに基づいて、ゲーム演算処理を行う。
【0043】ゲーム演算処理が終了すると、そのゲーム演算処理結果データが各ユーザに返信され、この返信されたゲーム演算処理結果データに基づき、各ユーザのゲーム端末の制御部11がディスプレイに表示すべき表示情報を生成し表示させる。
【0044】このように、サーバ20側では、表示情報生成までの演算処理を行わず、例えば、3次元の座標演算だけを行い、色づけやマッピング処理などは各ゲーム端末で行うようにしているため、通信回路30で送信するデータ量を少なくすることができるといったメリットがある。つまり、サーバ20の制御部21では、ゲーム演算処理を行い、ゲーム端末の制御部11においては、グラフィックの演算処理を行うといったように、通常のゲーム機においては単体で行っていた処理を、役割分担処理をするように構成する点にも特徴を有している。
【0045】つまり、前記ゲーム端末の外部記憶媒体スロット7(図3参照)に接続されるメモリには、上記グラフィック演算を行う基礎データとしてのキャラクタデータ(画像データ)が記憶されており、ゲーム端末の制御部11がこのメモリに適宜アクセスして、サーバ側から送信されるゲーム演算データを基にして、グラフィック演算処理を行うようにしている。そして、前記画像データが異なるメモリに差し替えれば、異なる映像がディスプレイに表示されることになり、飽きのこないゲームとすることもできる。
【0046】もうすこし、具体的に説明するために、前記対戦ゲームが格闘ゲームである場合には、格闘ゲームプログラムはサーバ側に、格闘ゲームに登場するキャラクタデータとしての画像データは前記外部記憶媒体としてのメモリに記憶されている。
【0047】そして、あるゲームプレーヤは、ドラえもんシリーズのキャラクタで対戦したいと思えば、前記ゲーム端末のメモリにドラえもんのキャラクタデータを記憶したメモリを使用し、次にルパン三世のキャラクタを使用してゲームを行いたい場合には、ルパン三世のキャラクタデータを記憶したメモリに変更すればルパン三世のキャラクタを使用して同じゲームが行えるといった具合である。」

e.「【0048】(音声の処理)分岐回路23で分岐された音声データは一旦バッファ26に蓄えられ、通信速度とサーバ20内でのデータ処理速度の調整を行えるようにしている。
【0049】バッファ26から出力された音声データはライン25に入力され、他のユーザから同様に送信された音声データとミックスされて、音声ミックスデータが各ユーザに返信される。
【0050】ただし、返信される音声ミックスデータは、各ユーザごとに異なるようにこの実施の形態では設定しており、例えば、ユーザ1に対しては、ユーザ2、3、4の音声データをミックスしたものが返信される。ユーザ1の音声データは、減衰器27を介して、ユーザ1の音声データを1/Kに減衰した音声データとして、前記音声データをミックスしたものと更に合成される。このような合成処理は、前記制御部21が担う。
【0051】そして、ユーザ1に対しては、ユーザ2?ユーザ4の音声データのミックスした音声データと、ユーザ1の音声データを減衰させた音声データとをミックスした音声データが、バッファ26を介して前記通信回線30を介して返信され、ゲーム端末の前記ヘッドホン4Aを介してユーザ1に認識される。このような、同時複数人通話を本発明において、音声チャットと呼んでいる。
【0052】前記通信回路30を通じて送受信されるデータは、パケット通信方式を採用しており、そのデータの構成図を図7に示している。
【0053】図7に図示するように、1パケットは、例えば256バイトで構成され、その256バイトの大きさのデータの1パケット内には、ヘッダ部とデータ部とが収納されている。そして、前記ヘッダ部は、データ部に収納されるデータはどのような種類のデータであるのか、どこからどこへ運ばれるデータであるのか(アドレス情報)などのデータが詰まっており、後のデータ部に前述したゲーム入力情報や音声データが収納されている。
【0054】前述した音声チャットを行う場合、各ゲーム端末に音声変換部4Bを設けて、自分の声を漫画キャラクタの声に変換したりするボイスチェンジャ機能を設けることもできる。このようにボイスチェンジ機能を使用しつつ音声チャットを行えると、女性が男性としてゲームに参加できるし、逆に男性が女性としてゲームに参加できるためゲームとしての趣向性を高めることができるとともに、恥ずかしがりやのプレーヤでも音声チャットを使用してのゲームに取っ付きやすくなるといったメリットがある。
【0055】さらに、スロット1に接続される4人のユーザの内、特定のユーザだけに秘話通話をできるように構成することもできる。このときには、入力手段9,10を使用して特定のユーザと話す秘話通話入力を行った後に、ヘッドホン4Aのマイクを使用して送話する。このような秘話通話を行えるようにしれば、実際の麻雀卓を囲んで行う目配せによる秘話を同じようなことを、遠隔地に離れたプレーヤ同士で行うゲームにおいても実現することができる。」

f.「【0101】
【発明の効果】以上説明したこの発明によれば、複数人で会話をしながら遠隔地に離れた複数のゲームプレーヤでの対戦ゲームが行えるといった通信ゲームとしての新しい趣向性を提供できる。」

g.図6には、音声チャット対応のネット対戦ゲームのシステム図が示されている。

〔引用例1に記載された発明の認定〕
上記摘記事項a?gから、引用例1には、
「ユーザがゲーム端末でネットワークRPGやネット対戦ゲーム(音声チャット対応)等のNetゲームを行い、
アプリケーションサーバが複数のユーザからのゲーム入力に応じてゲーム演算を行うと共に、当該アプリケーションサーバにより、ユーザが同時複数人通話できる音声チャットを行うことができ、入力手段9,10を使用して特定のユーザと話す秘密通話入力を行うことで特定のユーザだけに秘密通話をすることも可能であり、
複数人のユーザが会話をしながらネット対戦ゲームを行う方法。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

第4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

<対応関係A>
引用発明の「ゲーム端末」は、複数人で遊ぶネットワークRPGやネット対戦ゲームを実行可能なものであるから、本願発明の「マルチプレーヤゲームコンソール」に相当する。
また、引用発明の「ユーザ」は、ネットワークRPGやネット対戦ゲームを行う者であるから、本願発明の「プレーヤ」に相当する。
さらに、引用発明の「アプリケーションサーバ」はゲーム演算を行い、ネットワークRPGやネット対戦ゲーム等のNetゲームのサービスを提供するものであるから、本願発明の「オンラインゲームサービス」に相当する。

<対応関係B>
引用発明の「ネットワークRPGやネット対戦ゲーム(音声チャット対応)等のNetゲーム」は、複数人のユーザにより上記「ゲーム端末」で行われるものであるから、本願発明の「複数のマルチプレーヤゲームコンソール上で行われるネットワークを介したゲームのプレーヤ間で前記ネットワークを介した口頭のコミュニケーションを提供する能力を有する前記複数のマルチプレーヤゲームコンソール上で行われる前記ネットワークを介したゲーム」に相当する。

そうすると、本願発明と引用発明とは、
「複数のマルチプレーヤゲームコンソール上で行われるネットワークを介したゲームのプレーヤ間で前記ネットワークを介した口頭のコミュニケーションを提供する能力を有する前記複数のマルチプレーヤゲームコンソール上で行われる前記ネットワークを介したゲームで使用するための方法。」
の発明である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
本願発明は「特定のプレーヤによる口頭のコミュニケーションを防止する」ものであるのに対して、引用発明は特定のユーザの口頭のコミュニケーションを防止するものではない点。

(相違点2)
オンラインゲームサービスについて、本願発明は、
「(a)ゲームに参加する各プレーヤに関するデータを保持するステップであって、前記データはインジケータを含み、前記インジケータが、
(i)前記特定のプレーヤと口頭でコミュニケーションをとらないことを選択した別のプレーヤと行われる現行のゲームセッションと、
(ii)前記特定のプレーヤと口頭でコミュニケーションをとらないことを選択した別のプレーヤと行われるすべてのゲームと、
(iii)ネットワークを介して前記特定のプレーヤによって行われ、かつ前記オンラインゲームサービスを使用するすべてのゲームと、
(iv)前記オンラインゲームサービスに接続された任意のマルチプレーヤゲームコンソールを使用して前記特定のプレーヤによって行われるすべてのゲームと
の少なくとも1つの際中に口頭でコミュニケーションをとることから除外される前記特定のプレーヤを指すステップと、
(b)ステップ(a)の従属的な段落(i)?(iv)の前記少なくとも1つに応じて、前記段落(i)及び(ii)の場合は前記特定のプレーヤと前記別のプレーヤとの前記ネットワークを介した口頭のコミュニケーションを自動的に防止し、前記段落(iii)及び(iv)の場合は前記特定のプレーヤとすべての他のプレーヤとの前記ネットワークを介した口頭のコミュニケーションを自動的に防止することによって前記データの中の前記インジケータに応答するステップ」
というステップを実行するのに対して、引用発明のアプリケーションサーバはそのようなステップを実行するとはされていない点。

第5 当審の判断
上記相違点について検討する。

(1)相違点1について
音声チャット等のネットワークを介する音声通信の技術分野において、不適切な発言を行う者等のユーザを特定して発言を禁止・拒否(音声チャットへの参加の禁止等も含む)することで特定のユーザの口頭のコミュニケーションを防止することは、周知の技術である(例えば、特開2001-268078号公報(【0082】-【0089】等参照)、国際公開第00/13416号(第32頁第21行目?第33頁第2行目、第53頁第13?34行目等参照。チャットに音声チャットが含まれる点は、第34頁第31行目?第37頁第33行目等に開示されている。)、特開平9-70029号公報(発明の実施の形態参照。)等の記載を参照されたい。)。
そうすると、引用発明に周知の技術を付加して特定のユーザの口頭のコミュニケーションを防止することを可能にすることで、相違点1に係る構成を得ることは、当業者にとって格別の創意を必要とすることではない。
また、引用発明はユーザと他の特定のユーザとの秘密通話を可能にするもの、すなわち、秘密通話を可能とした特定のユーザ以外のユーザとの口頭のコミュニケーションに制限を加えるという技術思想を含んでいるものであって、引用発明の実施形態で用いるシステムもそれに対応可能なものであるので、ユーザ間の口頭のコミュニケーションに制限を加える点で共通する上記周知の技術を付加することに、何らの困難性や阻害要因も認められない。

なお、請求人は、平成22年11月29日付けの意見書において、
「引用例1(【0010】?【0055】および図1?4,6?7参照。)には、多人数参加によりゲームを行う通信ゲームシステムのゲーム端末で行われるゲームのプレーヤ間で音声チャットを行う方法が記載されており、特に、段落【0055】には、所定の複数のユーザの内の特定のユーザだけに秘話通話をすることが記載されています。ここで、秘話通話とは、所望のユーザだけと通話するものです。すなわち、引用例1に記載の方法は、所望のユーザを指定し、そのユーザだけと通話するものであって、本発明のように、特定のユーザとの、ネットワークを介した口頭のコミュニケーションを防止するものではありません。したがって、引用例1に記載の方法に対して、例えば、不適切な発言を行う者等のユーザを特定して発言を禁止・拒否することで音声でのコミュニケーションをできなくすることなどの周知の技術を組み合わせる動機付けはありません。」
と主張している。
当該主張を要約すると、『引用発明に特定のユーザとの口頭のコミュニケーションを防止するという課題がないから、引用発明に周知の技術を適用する動機付けがない』というものである。
しかし、音声チャット等のネットワークを介する音声通信の技術分野において、不適切な発言を行う者等のユーザを特定して発言を禁止・拒否することで特定のユーザの口頭のコミュニケーションをできなくすることが周知の技術であるということは、不適切な発言を行う者等の特定のユーザを口頭のコミュニケーションから除外する必要性があることが一般に知られていたということであり、その課題が周知であったことは明らかである。
そして、引用発明も音声チャットを用いるものであり、音声通信の技術分野に属するものであるから、当該周知の課題が内在していることは当業者にとって明らかであり、周知の技術を適用する動機付けは十分にあるといえる。
よって、請求人の上記主張を採用することはできない。

(2)相違点2について
(2-1)相違点2に係る構成の認定
上記相違点2に係る構成の「ステップ」「(a)」及び「(b)」において、「(i)」?「(iv)」「の少なくとも1つ」という並列的な選択肢があるので、ここでは、「(i)」を選択した場合について検討する。この場合、相違点2に係る構成は次のとおりである。

「(a)ゲームに参加する各プレーヤに関するデータを保持するステップであって、前記データはインジケータを含み、
前記インジケータが、前記特定のプレーヤと口頭でコミュニケーションをとらないことを選択した別のプレーヤと行われる現行のゲームセッションの際中に口頭でコミュニケーションをとることから除外される特定のプレーヤを指すステップと、
(b)ステップ(a)に応じて、前記特定のプレーヤと前記別のプレーヤとの前記ネットワークを介した口頭のコミュニケーションを自動的に防止することによって前記データの中の前記インジケータに応答するステップ」

(2-2)相違点2に係る構成の容易想到性
ネットワークを介して音声通信をする際、通信に必要となるユーザに関するデータを保持しておくことは当然のことに過ぎず、さらに、上記(1)で述べた周知の技術のように、ユーザを特定して発言を禁止・拒否する場合、その特定のユーザを指し示す情報(すなわち、インジケータ)もデータとして保持しておく必要があることは、技術常識から自明なことである。
また、どの程度の期間、発言を禁止・拒否するかは、当業者が適宜に設定し得る設計的事項に過ぎず、特定のゲームセッション期間に限って禁止・拒否できるようにしたり、永続的にすべてのゲームで禁止・拒否できるようにしたりすることも、当業者にとって格別の創意を必要とすることではない。
そうすると、上記(1)で述べた、引用発明に周知の技術を付加する場合、アプリケーションサーバが発言を禁止・拒否(音声チャットへの参加の禁止等も含む)する対象の特定のユーザを指し示す情報を保持し、その情報に基づいて特定のユーザの発言を禁止・拒否するように構成すると共に、発言の禁止・拒否期間を適宜に設定することで、相違点2に係る構成を得ることは、当業者であれば容易に想到することである。

さらに、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明及び周知の技術から当業者が予測し得る程度のものである。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

なお、上記(2-1)では、特許請求の範囲の記載のとおり解釈し、本願発明の「ステップ」「(a)」、「(b)」における「(i)」?「(iv)」について並列的な選択肢であると認定した。この認定については、意見書や請求の理由等でも「(i)」?「(iv)」が並列的な選択肢ではないと主張されていないだけでなく、並列的な選択肢ではないと解釈すると矛盾も生じる(例えば、請求項3のように、親が未成年の子供を特定のプレーヤとして指定する場合、「(i)」あるいは「(ii)」の場合と矛盾する。請求項5等でも同様である。請求項3,5等で矛盾しないのは、「(i)」?「(iv)」が並列的な選択肢であって「(iii)」あるいは「(iv)」のみを選択した場合のみである。)ので妥当なものである。
本来、上述のとおりの認定以外の解釈は考えられないが、以下、念のために補足的な検討を加える。
仮に、「(i)」?「(iv)」が並列的な選択肢ではなく、インジケータが「(i)」?「(iv)」の同時に全ての場合を含み得ることを意味する(すなわち、本願発明は、「(i)」?「(iv)」の少なくとも一つが設定可能であることが構成要件ではなく、それら全ての場合が設定可能であることが構成要件である。)と解釈しても、本願発明は引用発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるという結論は変わらない。
上記した特開2001-268078号公報、国際公開第00/13416号、特開平9-70029号公報等にも開示されているように、音声チャット等で特定のユーザの口頭のコミュニケーションを防止する理由や条件には様々なものがあり、その対応も様々であるから(不適切な発言をするユーザの発言を聞かないという個人間の対応、不適切な発言をするユーザの発言を禁止・音声通信の切断という全体的な対応、子供を保護するためにチャットグループへの参加を禁止する個別対応等。)、それら各種の理由や条件に応じた各種の対応ができるようにしておくことは、当業者にとって格別の創意を必要としないことである。
そして、口頭のコミュニケーションを防止する期間を一時的なものとするか(その期間の長短をどうするか)、または、永久に防止するか等は、その理由や条件に応じて当業者が任意に設定し得ることであり、上記各種の理由や条件に応じて期間にバリエーションを持たせることは当業者が適宜になし得る設計的事項といえる。
さらに、そのように理由や条件に応じたバリエーションを持たせる場合、上記(2-2)で述べた、「特定のユーザを指し示す情報」に口頭のコミュニケーションを防止する各種の理由や条件に応じたデータを設定可能にすることによって実現することは、当業者であれば容易に想到することである。

第6 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-01-17 
結審通知日 2011-01-21 
審決日 2011-02-04 
出願番号 特願2003-139584(P2003-139584)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮本 昭彦  
特許庁審判長 村田 尚英
特許庁審判官 橋本 直明
神 悦彦
発明の名称 特定のプレーヤによる口頭のコミュニケーションを防止するための方法及びそのシステム  
復代理人 井原 光雅  
代理人 谷 義一  
代理人 阿部 和夫  
復代理人 濱中 淳宏  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ