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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G02F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02F
管理番号 1239019
審判番号 不服2009-23398  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-11-30 
確定日 2011-06-21 
事件の表示 特願2002-187639「液晶表示素子」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 3月12日出願公開、特開2003- 75871〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成14年6月27日(パリ条約による優先権主張2001年7月11日、大韓民国)の出願であって、平成19年9月3日付けで拒絶理由が通知され、同年12月3日に手続補正がなされたが、平成21年7月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年11月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされたものである。(以下、この平成21年11月30日にされた手続補正を「本件補正」という。)

II.本件補正についての補正却下の決定
[I]補正却下の決定の結論
本件補正を却下する。

[II]理由
本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成14年改正前特許法」という。)第17条の2第1項第3号に掲げる場合においてする補正であって、同法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められるところ、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1及び6には、「前記薄膜トランジスタが“I”字状のチャネルを有する場合、・・・する」との記載がある。
この記載は、「有する場合」どうであるかのみを規定し、”有しない場合”どうであるかについての規定が無く、特許を受けようとする発明が不明確であるので、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
したがって、本件補正後の請求項1及び6に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、平成14年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

なお、請求人は、平成23年1月5日提出の回答書において、補正の用意がある旨記載し、補正案を提示しているが、仮に、本件補正後の請求項の意図するところが、補正案の内容だとしても、この補正案における請求項6に係る発明(以下「補正案発明」という。)は、以下のとおり、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、依然として却下されるべきものである。

[III]補正案について
1.提示の補正案
提示の補正案は、特許請求の範囲の請求項6を
「第1基板上に相互交差配置されて画素領域を定義するゲート配線及びデータ配線と、
前記画素領域の所定部位に形成されるとともに少なくとも1つの凹部を含む第1補償パターンを有するキャパシタ下部電極と、
絶縁膜を間にして前記キャパシタ下部電極上に形成されるとともに少なくとも1つの凹部を含む第2補償パターンを有するキャパシタ上部電極と、
前記ゲート配線及びデータ配線の交差地点に形成されたゲート電極及びソース/ドレイン電極を含む薄膜トランジスタと、
前記画素領域に形成されるとともに前記薄膜トランジスタ及びキャパシタ上部電極と連結される画素電極と、
前記第1基板に対向する第2基板との間に形成された液晶層を含み、
該第1補償パターン及び該第2補償パターンが該薄膜トランジスタのチャネルのパターンに適合する形状に形成され、該第2補償パターンの前記少なくとも1つの凹部の一部を、該第1補償パターンの前記少なくとも1つの凹部とオーバーラップするように形成し、
前記薄膜トランジスタが"I"字状のチャネルを有し、前記第1、2補償パターンは凹凸タイプを有し、前記第2補償パターンは前記第1補償パターンよりさらに大きい幅の凹凸タイプを有し、前記第1補償パターンの凹凸と前記第2補償パターンの凹凸は互いに同一形状を有し、互いに一部がオーバーラップすることを特徴とする液晶表示素子。」
と補正することを含むものである。

2.引用例
原査定の拒絶理由に引用された特開平6-235938号公報(以下「引用例」という。)には、図とともに次の記載がある。

ア 「0001】
【産業上の利用分野】本発明は、均一な表示を行なえる液晶表示装置に関する。」

イ 「【0022】
【課題を解決するための手段】本発明は、マトリクス状に配設された画素電極と、ゲート電極、ドレイン電極およびソース電極を有し前記画素電極をスイッチングするトランジスタと、補助容量を形成する補助容量電極とを備えたアレイ基板を具備した液晶表示装置において、前記補助容量電極は1組設けられ、これら1組の補助容量電極のうち片側の電極の少なくとも一部の相対位置をゲート電極に対するソース電極の相対位置と等しくし、この補助容量を前記ゲート電極および前記ソース電極の重なり量に対応させたものである。
【0023】
【作用】本発明は、補助容量を形成する1組の補助容量電極のうち片側の電極の少なくとも一部の相対位置をゲート電極に対するソース電極の相対位置と等しくし、この補助容量をゲート電極およびソース電極の重なり量に対応させたため、ソース電極とゲート電極の重なり量の増減に応じて補助容量の大きさが増減するので、分割された領域毎の寄生容量の変化を相殺することができ、トランジスタの寄生容量が異なる場合でも、画素電位の変化を一定に保つことができ、フリッカや表示むらが視認されることがなくなる。」

ウ 「【0024】
【実施例】以下、本発明の液晶表示装置の一実施例を図面を参照して説明する。なお、従来例に対応する部分には、同一符号を付して説明する。
【0025】図1および図4に示すように、アレイ基板1は、ガラスなどからなる第1の透明絶縁基板2上に、スパッタ法などによりたとえばタンタル(Ta)を約0.2μmの厚さに成膜し、ホトリソグラフィー法などによりゲート電極3、ゲート線12、補助容量電極16および図示しない外部回路との接続端子を形成して構成する。なお、この時、ホトリソグラフィーを行なう際に、補助容量電極16にこの補助容量電極16の長手方向と直交する方向に切欠部16a を形成し、幅が他の部分より狭い幅狭部16b を形成する。
【0026】次に、ゲート電極3および第1の透明絶縁基板2上に、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition )法などにより、たとえば酸化珪素からなる厚さ0.3μmのゲート絶縁膜4、たとえば非晶質珪素からなる厚さ約0.3μmの半導体膜5、たとえば抵抗率が低い非晶質珪素からなる厚さ約0.05μmの低抵抗半導体膜6,8を、順次連続して積層成膜する。そして、ホトリソグラフィー法等によりゲート電極3上に半導体膜5および低抵抗半導体膜6,8を島状に形成する。
【0027】また、ゲート絶縁膜4上に、たとえばスパッタ法などにより厚さ0.1μmのITO(Indium Tin Oxide)を堆積させ、ホトリソグラフィー法等により画素電極14を形成する。そして、補助容量電極16の切欠部16a の上部に当たる部分は画素電極14に切欠部14a を形成する。
【0028】次に、たとえばスパッタリング法などで、モリブデン(Mo)を厚さ約0.05μmに、アルミニウム(Al)を厚さ約1.0μmに成膜し、画素電極14に電気的に接続するソース電極9と、画素電極18に電気的に接続するとともに、補助容量電極16の切欠部16a 上に位置して補助容量の一部を構成する可変補助容量電極31と、ドレイン電極7と、このドレイン電極7に電気的に接続するドレイン線13と、外部回路との接続端子とを形成する。そうして、これらにて薄膜トランジスタ(TFT)11を構成している。
【0029】ここで、たとえば図1に示すように、ゲート電極3とソース電極9との相対位置、および、補助容量を形成する可変補助容量電極31と補助容量電極16との一部または全部の相対位置が一致するようにしておく。そして、図2(a)、(b)、(c)に示すように、たとえば横方向のずれ量をΔdとすると、ゲート電極3とソース電極9の重なり部分のdo +Δdのずれ量Δdと可変補助容量電極31と補助容量電極16との重なり部分Lo +Δdのずれ量Δdが一致する。
【0030】一方、寄生容量Cgsと画素電極14の電位変動Vp は(1) 式に示す、
Vp =(Vg ・Cgs)/(C_(LC)+Cs +gs)
で表され、相対位置のずれ量Δdによる寄生容量Cgsの変化量をΔCgsとすると、
(Cgs+ΔCgs)/(C_(LC)+Cs +ΔCs+ΔCgs+ΔCgs)
=Cgs/(C_(LC)+Cs +Cgs) ……(2)
が成立し、補助容量Cs の変化量ΔCs を付加すれば画素電位の変動量は変化しない。そして、(2) 式より、
ΔCs ={(C_(LC)+Cs )・ΔCgs}/Cgs ……(3)
が得られる。したがって、
K=(C_(LS)+Cs )/Cgs(一定)
とすると、
ΔCs =K・ΔCgs ……(4)
となる。
【0031】さらに、図2に示すように、たとえば横方向にずれた場合、補助容量Cs の変化量ΔCs および寄生容量Cgsの変化量ΔCgsはいずれもゲート電極3とソース電極9のずれ量Δdに比例し、比例定数Kはたとえば電極の幅W等で設定すれば良い。
【0032】次に、ドレイン電極7およびソース電極9をマスクとして、ドレイン電極7とソース電極9との間に露出した状態の低抵抗半導体膜6,8をエッチングなどにより除去する。
【0033】最後に、TFT11、ゲート線12およびドレイン線13を保護する図示しない絶縁保護膜を全面に成膜し、ホトリソグラフィー法等で外部回路接続部および対向基板21の対向電極25との接続部などを除去する。
【0034】一方、図4に示すように、アレイ基板1に対向してこのアレイ基板1と略平行に対向基板21が設けられている。
【0035】この対向基板21は、ガラスなどの第2の透明絶縁基板22上にブラックマトリスクと呼ばれる遮光層23を形成し、この遮光層23に開けられた窓を覆うように必要に応じて着色層24を形成し、これら遮光層23および着色層24上に必要に応じて図示しない平滑層を形成し、この平滑層上にたとえばITOなどの対向電極25を形成している。
【0036】さらに、それぞれのアレイ基板1および対向基板21上に、たとえばポリイミドなどの液晶26を配向させるための図示しない配向膜を塗布し、これら配向膜をそれぞれラビング処理する。そして、表示領域外のアレイ基板1および対向基板21の外周部に、液晶26を注入するための図示しない注入口となる領域を除いて、たとえばエポキシ樹脂などの接着剤を塗布し、これら配向膜を対向させて、アレイ基板1および対向基板21を数μmの間隙を均一に保持して貼り合わせる。なお、遮光層23はTFT11に照射される光を遮ることと、画素電極14とドレイン電極7との間隙からの漏れ光を遮ることを目的とするため、アレイ基板1と対向基板21とを貼り合わせる際のずれを考慮して、画素電極14と重なるように組み合わせる。
【0037】次に、注入口より液晶26を注入し、たとえばエポキシ系の樹脂で注入口を封止する。さらに、ラビング方向に対して決められた方向に偏光軸を合わせ、図示しない偏光板をそれぞれアレイ基板1および対向基板21に貼り付ける。
【0038】そして、図示しない外部回路接続用端子に駆動用ICを接続し、さらに駆動回路を接続した後に、ケースに組み込み、液晶表示器とする。
【0039】このように製造された液晶表示器を駆動回路と接続し、ケースに納め、液晶表示装置を製造する。」

エ 「【0040】また、比例定数Kが比較的大きい場合には、補助容量電極16に、図3に示すように、切欠部16a を3つ形成し、それぞれに可変補助容量電極31を設けることで、補助容量Cs の変化量ΔCs を、切欠部16a が1つである図1に示す場合の実効的に3倍にすることもできる。」

オ そして、図3をみれば、補助容量電極16には、3つの切欠部16a が形成され、それぞれの切欠部16aには、補助容量電極16及び切欠部16aの一部に重なる可変補助容量電極31が設けられている様子を見てとることができるとともに、それぞれの可変補助容量電極31は、画素電極14の下辺に接続されているものと認められる。

上記ウを踏まえて、上記エに記載される実施例についてみれば、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「第1の透明絶縁基板2上に、ゲート電極3、ゲート線12、補助容量電極16が形成され、この時、補助容量電極16には、この補助容量電極16の長手方向と直交する方向に切欠部16aが3つ形成され、次に、ゲート電極3および第1の透明絶縁基板2上に、ゲート絶縁膜4、半導体膜5、低抵抗半導体膜6,8が順次連続して積層成膜され、ゲート電極3上に半導体膜5および低抵抗半導体膜6,8が島状に形成され、また、ゲート絶縁膜4上に、画素電極14が形成され、次に、画素電極14に電気的に接続するソース電極9と、画素電極14に電気的に接続するとともに、補助容量電極16及びその切欠部16aに一部が重なり、補助容量の一部を構成する3つの可変補助容量電極31と、ドレイン電極7と、このドレイン電極7に電気的に接続するドレイン線13が形成され、これらにて薄膜トランジスタ11が構成されたアレイ基板1が構成され、このアレイ基板1に対向して対向基板21が設けられ、アレイ基板1と対向基板21の間隙に液晶26が注入された液晶表示装置。」

3.対比
補正案発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「第1の透明絶縁基板2」、「ゲート線12」、「ドレイン線13」及び「液晶表示装置」が補正案発明の「第1基板」、「ゲート配線」、「データ配線」及び「液晶表示素子」にそれぞれ相当するところであり、引用発明が補正案発明と同様に「第1基板上に相互交差配置されて画素領域を定義するゲート配線及びデータ配線」を含む「液晶表示素子」であることは明らかである。
(2)引用発明の「補助容量電極16」及びその「切欠部16a」が補正案発明の「キャパシタ下部電極」及びその「凹部」にそれぞれ相当するところであり、引用発明が補正案発明と同様に「前記画素領域の所定部位に形成されるとともに少なくとも1つの凹部を含む第1補償パターンを有するキャパシタ下部電極」を含むものであることは明らかである。
(3)引用発明の「ゲート絶縁膜4」及び「可変補助容量電極31」がそれぞれ補正案発明の「絶縁膜」及び「キャパシタ上部電極」に相当するところであり、また、引用発明の「可変補助容量電極31」は、引用例の図3にみられるように、3つの可変補助容量電極31が間隙を有して並んで配置されているから、第2補償パターンを有しているといえ、補正案発明と引用発明は、「絶縁膜を間にして前記キャパシタ下部電極上に形成されるとともに第2補償パターンを有するキャパシタ上部電極」を含むものである点で一致する。
(4)引用発明の「ゲート電極3」、「ドレイン電極7/ソース電極9」、「薄膜トランジスタ11」、「画素電極14」、「対向基板21」及び「液晶26」が補正案発明の「ゲート電極」、「ソース/ドレイン電極」、「薄膜トランジスタ」、「画素電極」、「第2基板」及び「液晶層」にそれぞれ相当するところであり、引用発明が補正案発明と同様に「前記ゲート配線及びデータ配線の交差地点に形成されたゲート電極及びソース/ドレイン電極を含む薄膜トランジスタと、前記画素領域に形成されるとともに前記薄膜トランジスタ及びキャパシタ上部電極と連結される画素電極と、前記第1基板に対向する第2基板との間に形成された液晶層」を含むものであることは明らかである。
(5)引用発明は、上記2.イに記載されるように「1組の補助容量電極のうち片側の電極の少なくとも一部の相対位置をゲート電極に対するソース電極の相対位置と等しくし、この補助容量を前記ゲート電極および前記ソース電極の重なり量に対応させたものである」から、引用発明の「切欠部16a」のパターンと「可変補助容量電極31」のパターンについて、補正案発明と同様に「該第1補償パターン及び該第2補償パターンが該薄膜トランジスタのチャネルのパターンに適合する形状に形成され」ているといえる。
また、引用例の図3から明らかなように、引用発明の「可変補助容量電極31」のパターンは「補助容量電極16」の「切欠部16a」のパターンにオーバーラップするように形成されているといえるから、引用発明と補正案発明は、「該第1補償パターン及び該第2補償パターンが該薄膜トランジスタのチャネルのパターンに適合する形状に形成され、該第2補償パターンの一部を、該第1補償パターンの前記少なくとも1つの凹部とオーバーラップするように形成し」ている点で一致する。
(6)引用発明の「薄膜トランジスタ11」は、引用例の図1にみられるように、その半導体膜5が四角形の島状に形成されているから、補正案発明でいう「"I"字状のチャネルを有」するものに相当し、また、引用発明の「切欠部16a」が形成された「補助容量電極16」は、引用例の図3から明らかなように凹凸タイプのパターンを有しているといえる。

(7)以上のことから、補正案発明と引用発明は、
「第1基板上に相互交差配置されて画素領域を定義するゲート配線及びデータ配線と、
前記画素領域の所定部位に形成されるとともに少なくとも1つの凹部を含む第1補償パターンを有するキャパシタ下部電極と、
絶縁膜を間にして前記キャパシタ下部電極上に形成されるとともに第2補償パターンを有するキャパシタ上部電極と、
前記ゲート配線及びデータ配線の交差地点に形成されたゲート電極及びソース/ドレイン電極を含む薄膜トランジスタと、
前記画素領域に形成されるとともに前記薄膜トランジスタ及びキャパシタ上部電極と連結される画素電極と、
前記第1基板に対向する第2基板との間に形成された液晶層を含み、
該第1補償パターン及び該第2補償パターンが該薄膜トランジスタのチャネルのパターンに適合する形状に形成され、該第2補償パターンの一部を、該第1補償パターンの前記少なくとも1つの凹部とオーバーラップするように形成し、
前記薄膜トランジスタが"I"字状のチャネルを有し、前記第1補償パターンは凹凸タイプを有し、前記第1補償パターンと前記第2補償パターンは、互いに一部がオーバーラップする液晶表示素子。」の点で一致し、次の点で相違する。

補正案発明は、前記第2補償パターンが少なくとも1つの凹部を含むものであり、前記第2補償パターンは前記第1補償パターンよりさらに大きい幅の凹凸タイプを有し、前記第1補償パターンの凹凸と前記第2補償パターンの凹凸は互いに同一形状を有しているのに対し、引用発明の可変補助容量電極31のパターンはこのようなものでない点。

4.相違点についての検討
引用発明は、上記2.イに摘記したように、「補助容量を形成する1組の補助容量電極のうち片側の電極の少なくとも一部の相対位置をゲート電極に対するソース電極の相対位置と等しくし、この補助容量をゲート電極およびソース電極の重なり量に対応させたため、ソース電極とゲート電極の重なり量の増減に応じて補助容量の大きさが増減するので、分割された領域毎の寄生容量の変化を相殺することができ、トランジスタの寄生容量が異なる場合でも、画素電位の変化を一定に保つことができ、フリッカや表示むらが視認されることがなくなる」というものであるから、引用発明の可変補助容量電極31のパターンは、ソース電極とゲート電極の重なり量の増減に応じて補助容量の大きさが増減し、寄生容量の変化を相殺することができるようなパターンでありさえすればよく、引用例の図3に示されるパターンに限られないことは明らかであって、上記相違点に係る補正案発明の構成とすることに格別の困難性は認められない。
また、第2補償パターンの形状を上記相違点に係る形状としたことによる格別の効果も認められない。

5.むすび
したがって、補正案発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

III.本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成19年12月3日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項12に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項12】 第1基板上に相互交差配置されて画素領域を定義するゲート配線及びデータ配線と、
前記画素領域の所定部位に形成されるとともに少なくとも1つの凹部を含む第1補償パターンを有するキャパシタ下部電極と、
絶縁膜を間にして前記キャパシタ下部電極上に形成されるとともに少なくとも1つの凹部を含む第2補償パターンを有するキャパシタ上部電極と、
前記ゲート配線及びデータ配線の交差地点に形成されたゲート電極及びソース/ドレイン電極を含む薄膜トランジスタと、
前記画素領域に形成されるとともに前記薄膜トランジスタ及びキャパシタ上部電極と連結される画素電極と、
前記第1基板に対向する第2基板との間に形成された液晶層を含み、
該第1補償パターン及び該第2補償パターンが該薄膜トランジスタのチャネルのパターンに適合する形状に形成され、該第2補償パターンの前記少なくとも1つの凹部の一部を、該第1補償パターンの前記少なくとも1つの凹部とオーバーラップするように形成することを特徴とする液晶表示素子。」

2.引用例
上記II.[III]2.で指摘した引用例には、上記引用発明が記載されているものと認められる。

3.対比
本願発明と引用発明を対比するに、上記II.[III]3.における検討から、両者は、
「第1基板上に相互交差配置されて画素領域を定義するゲート配線及びデータ配線と、
前記画素領域の所定部位に形成されるとともに少なくとも1つの凹部を含む第1補償パターンを有するキャパシタ下部電極と、
絶縁膜を間にして前記キャパシタ下部電極上に形成されるとともに第2補償パターンを有するキャパシタ上部電極と、
前記ゲート配線及びデータ配線の交差地点に形成されたゲート電極及びソース/ドレイン電極を含む薄膜トランジスタと、
前記画素領域に形成されるとともに前記薄膜トランジスタ及びキャパシタ上部電極と連結される画素電極と、
前記第1基板に対向する第2基板との間に形成された液晶層を含み、
該第1補償パターン及び該第2補償パターンが該薄膜トランジスタのチャネルのパターンに適合する形状に形成され、該第2補償パターンの一部を、該第1補償パターンの前記少なくとも1つの凹部とオーバーラップするように形成する液晶表示素子。」の点で一致し、次の点で相違するものと認められる。

本願発明は、前記第2補償パターンが、少なくとも1つの凹部を含むものであるのに対し、引用発明の可変補助容量電極31のパターンは、間隙を有するパターンではあっても、凹部を含むものとまではいえない点。

4.相違点についての検討
引用発明は、上記II.[III]2.イに摘記したように、「補助容量を形成する1組の補助容量電極のうち片側の電極の少なくとも一部の相対位置をゲート電極に対するソース電極の相対位置と等しくし、この補助容量をゲート電極およびソース電極の重なり量に対応させたため、ソース電極とゲート電極の重なり量の増減に応じて補助容量の大きさが増減するので、分割された領域毎の寄生容量の変化を相殺することができ、トランジスタの寄生容量が異なる場合でも、画素電位の変化を一定に保つことができ、フリッカや表示むらが視認されることがなくなる」というものであるから、引用発明の可変補助容量電極31のパターンは、ソース電極とゲート電極の重なり量の増減に応じて補助容量の大きさが増減し、寄生容量の変化を相殺することができるようなパターンでありさえすればよく、引用例の図3に示されるパターンに限られないことは明らかであって、引用発明の可変補助容量電極31を上記相違点に係る本願発明の構成とすることに格別の困難性は認められない。
また、第2補償パターンを上記相違点に係る構成としたことによる格別の効果も認められない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-01-25 
結審通知日 2011-01-26 
審決日 2011-02-08 
出願番号 特願2002-187639(P2002-187639)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02F)
P 1 8・ 575- Z (G02F)
P 1 8・ 537- Z (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 磯野 光司柏崎 康司前川 慎喜  
特許庁審判長 稲積 義登
特許庁審判官 吉野 公夫
服部 秀男
発明の名称 液晶表示素子  
代理人 加藤 伸晃  
代理人 朝日 伸光  
代理人 岡部 讓  
代理人 岡部 正夫  

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