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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C03C 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C03C |
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管理番号 | 1239073 |
審判番号 | 不服2008-14581 |
総通号数 | 140 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-08-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-06-10 |
確定日 | 2011-06-23 |
事件の表示 | 特願2002-124117「プレス成形用光学ガラス」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月11日出願公開、特開2003-321245〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成14年4月25日の出願であって、平成19年12月6日付けで拒絶理由が通知され、平成20年2月18日に意見書とともに手続補正書が提出され、同年5月7日付けで拒絶査定された。 これに対し、平成20年6月10日に拒絶査定不服審判請求がなされたものであり、その後、平成22年12月16日付けで当審より拒絶理由が通知され、平成23年2月18日に意見書が提出されたものである。 2.本願発明 本願の特許請求の範囲に記載された発明は、平成20年2月18日付けで補正された明細書ならびに図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?2に記載されたとおりのものであり、その請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は、次の事項により特定されるものである。 「【請求項1】 重量%で、 P_(2)O_(5):20.0?30.0%、 B_(2)O_(3):0.5?10.0%、 Nb_(2)O_(5):25.0?50.0%、 WO_(3):15.0?27.0%、 Bi_(2)O_(3):0.1?3.0%、 ZnO:1.0?7.0%、 Li_(2)O:3.5?8.0%、 Na_(2)O:0?15.0%、 K_(2)O:0?15.0%、 TiO_(2):0?2.0%、 PbO=0%、 且つ、 Li_(2)O+Na_(2)O+K_(2)O:5.0?20.0% のガラス成分を含有し、 屈折率が1.78?1.86 であることを特徴とするプレス成形用光学ガラス。」 3.当審の拒絶理由 当審において、平成22年12月16日付けで通知した拒絶の理由の概要は、次のとおりである。 (1)「3.特許法第29条第1項第3号及び特許法第29条第2項違反について」 本願請求項1?2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された「国際公開第02/02470号」(引用文献1)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また、本願請求項1?2に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された「国際公開第02/02470号」(引用文献1)に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 4.引用文献の記載事項 引用文献1:国際公開第02/02470号 (ア)「本発明は、高屈折率、高分散および低いガラス転移温度を有し、640℃以下の低温にて精密プレス成形が可能で、かつ精密プレス成形後に研削または研磨を必要としない超精密非球面レンズなどを作製するためのPbOを含まない精密プレス成形用光学ガラス、並びにそれを用いたガラスプリフォームおよび工学製品に関するものである。」(第1頁第10?14行) (イ)「(7)モル%で、P_(2)O_(5) 15?30%、B_(2)O_(3) 0.5?15%、Nb_(2)O_(5) 5?25%、WO_(3) 6?40%並びにLi_(2)O、Na_(2)OおよびK_(2)Oの中から選ばれる少なくとも1種(R’_(2)O)4?45%およびBaO、ZnOおよびSrOから選ばれる少なくとも1種(RO)0?30モル%(30モル%は含まず)を含み、かつ上記成分の合計含有量が95%以上であることを特徴とする光学ガラス(以下、光学ガラス(4)と称す。)。」(第9頁第9?14行) (ウ)「本発明の光学ガラス(4)においては、前記の必須成分と任意成分との合計含有量は、95モル%以上であることが望ましい。さらに、・・・Bi_(2)O_(3)・・・などの成分を、本発明の目的が損なわれない程度であれば、5モル%まで導入することが可能である。」(第24頁第21行?第25頁第3行) (エ)「 ![]() 」(表1) (オ)「 ![]() 」(表2) (カ)「 ![]() 」(表3) (キ)「 ![]() 」(表4) (ク)「 ![]() 」(表5) (ケ)「 ![]() 」(表6) (コ)「 ![]() 」(表7) (サ)「 ![]() 」(表8) (シ)「 ![]() 」(表9) (ス)「 ![]() 」(表10) (セ)「 ![]() 」(表11) (ソ)「 ![]() 」(表12) (タ)「 ![]() 」(表13) (チ)「 ![]() 」(表14) 5.対比・判断 (a)引用文献1には、記載事項(ア)に、「高屈折率、高分散および低いガラス転移温度を有し、・・・PbOを含まない精密プレス成形用光学ガラス」が記載されている。この「PbOを含まない精密プレス成形用光学ガラス」について、記載事項(イ)に、「モル%で、P_(2)O_(5) 15?30%、B_(2)O_(3) 0.5?15%、Nb_(2)O_(5) 5?25%、WO_(3) 6?40%並びにLi_(2)O、Na_(2)OおよびK_(2)Oの中から選ばれる少なくとも1種(R’_(2)O)4?45%およびBaO、ZnOおよびSrOから選ばれる少なくとも1種(RO)0?30モル%(30モル%は含まず)を含み、かつ上記成分の合計含有量が95%以上である」点が記載され、記載事項(ウ)に、「Bi_(2)O_(3)・・・などの成分を、本発明の目的が損なわれない程度であれば、5モル%まで導入することが可能である。」と記載されている。 (b)上記「PbOを含まない精密プレス成形用光学ガラス」の実施例について、記載事項(エ)?(チ)に、実施例1?83が記載されている。これらのうち、P_(2)O_(5)、B_(2)O_(3)、Nb_(2)O_(5)、WO_(3)、ZnO、Li_(2)O、Na_(2)O、K_(2)O、TiO_(2)を含有する、実施例8?13、15、18、20?27、31、32、56、66?75、78?83について、モル%を重量%に置き換えると、前記各実施例には、P_(2)O_(5):18.21?26.27%、B_(2)O_(3):0.56?2.67%、Nb_(2)O_(5):22.73?44.95%、WO_(3):6.82?29.74%、ZnO:0.60?6.40%、Li_(2)O:1.84?5.07%、Na_(2)O:2.38?6.96%、K_(2)O:0?4.94%、TiO_(2):0?3.70%含有され、屈折率が1.8152?1.8551である点が記載されている。 (c)また、上記各実施例のLi_(2)O+Na_(2)O+K_(2)Oは、5.27%?15.49%である。 (d)そして、記載事項(ウ)について、モル%を重量%に置き換えると、上記各実施例でBi_(2)O_(3)を15重量%まで導入することが可能であるといえる。 これらの記載を本願発明の記載に則して整理すると、引用文献1には、「重量%で、P_(2)O_(5):18.21?26.27%、B_(2)O_(3):0.56?2.67%、Nb_(2)O_(5):22.73?44.95%、WO_(3):6.82?29.74%、Bi_(2)O_(3):15%まで、ZnO:0.60?6.40%、Li_(2)O:1.84?5.07%、Na_(2)O:2.38?6.96%、K_(2)O:0?4.94%、TiO_(2):0?3.70%、PbO=0%、且つ、Li_(2)O+Na_(2)O+K_(2)O:5.27%?15.49%のガラス成分を含有し、屈折率が1.8152?1.8551であるプレス成形用光学ガラス。」(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 そこで、本願発明と引用発明とを比較する。 (e)引用発明における上記各成分の含有量は、本願発明と比較すると、以下の点で重複する。 P_(2)O_(5):20.0?30.0%のうち20.0?26.27%で重複 B_(2)O_(3):0.5?10.0%のうち0.56?2.67%で重複 Nb_(2)O_(5):25.0?50.0%のうち25.0?44.95%で重複 WO_(3):15.0?27.0%のうち15.0?27.0%で重複 ZnO:1.0?7.0%のうち1.0?6.40%で重複 Li_(2)O:3.5?8.0%のうち3.5?5.07%で重複 Na_(2)O:0?15.0%のうち2.38?6.96%で重複 K_(2)O:0?15.0%のうち0?4.94%で重複 TiO_(2):0?2.0%のうち、0?2.0%で重複 PbO=0%で一致 Li_(2)O+Na_(2)O+K_(2)O:5.0?20.0%のうち5.27?15.49%で重複 屈折率:1.78?1.86のうち1.8152?1.8551で重複 上記(e)を踏まえると、両者は、 「重量%で P_(2)O_(5):20.0?26.27%、 B_(2)O_(3):0.56?2.67%、 Nb_(2)O_(5):25.0?44.95%、 WO_(3):15.0?27.0%、 ZnO:1.0?6.40%、 Li_(2)O:3.5?5.07%、 Na_(2)O:2.38?6.96%、 K_(2)O:0?4.94%、 TiO_(2):0?2.0%、 PbO=0%、 且つ、 Li_(2)O+Na_(2)O+K_(2)O:5.27?15.49% のガラス成分を含有し、 屈折率が1.8152?1.8551であるプレス成形用光学ガラス。」である点で一致し、以下の点で一応相違する。 ・相違点 本願発明では、Bi_(2)O_(3)を0.1?3.0%含有させているのに対し、引用発明は、Bi_(2)O_(3)を15%まで導入することが可能な点。 上記相違点について検討する。 本願発明がBi_(2)O_(3)を0.1?3.0%含有させることについて、本願明細書段落【0014】には、「Bi_(2)O_(3)はガラスの耐失透性を向上させるとともにTg及びAtを低くする作用を奏する。含有量が0.1%より少ないとこの作用が奏されず、他方含有量が3.0%より多いとガラスの耐着色性が低下する。そこで含有量を0.1?3.0%の範囲と定めた。より好ましい含有量は0.1?2.0%の範囲である。」と記載されており、耐失透性を向上させるとともにTg及びAtを低くする作用を奏させつつ、耐着色性が低下しないように、Bi_(2)O_(3)の含有量を0.1?3.0%に制限しているといえる。 一方、引用文献1には、記載事項(ウ)に、「Bi_(2)O_(3)・・・を、本発明の目的が損なわれない程度であれば、5モル%まで導入することが可能である。」と記載されている。引用文献1の目的は、記載事項(ア)の、「高屈折率、高分散および低いガラス転移温度」を有する「精密プレス成形用光学ガラス」を得ることであるから、前記Bi_(2)O_(3)を「目的が損なわれない程度」導入することは、「高屈折率、高分散および低いガラス転移温度」が損なわれない程度導入することであるといえる。 そして、Bi_(2)O_(3)を含有させると、Tg及びAtを低くする作用を奏する反面、対着色性が低下するために、含有量を制限することは、例えば、特開2001-180972号公報の段落【0017】に記載されるとおり、本願出願前周知技術であるから、引用文献1も、これらの点を考慮した上で、上記「高屈折率、高分散および低いガラス転移温度」が損なわれない程度にBi_(2)O_(3)を導入していると認められる。 してみると、上記相違点は実質的な相違点ではなく、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができず、そうでないとしても、本願発明は、引用文献1および上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 6.意見書における主張について なお、請求人は、平成23年2月18日付けの意見書の(1)において、「本願発明は、・・・着色が問題とならない範囲で適切な含有量のBi_(2)O_(3)を添加することで、耐失透性やTg及びAtを低くする作用を持たせる、という思想の元に、Bi_(2)O_(3)を特定量添加することを規定するものです。 しかしながら、引用文献1や特開2001-180972号公報には、このような技術的思想がなく、単にBi_(2)O_(3)の添加量は少ない方がよいとされています。」と主張しているので、以下に検討する。 上記特開2001-180972号公報の段落【0017】には、「なお、Bi_(2)O_(3)は軟化点を下げる効果を有するが着色成分でもあり、着色が問題となる用途では好ましくは4モル%以下、より好ましくは2モル%以下である。このような用途では実質的に含有しないこと、すなわち不純物レベル以下であることが最も好ましい。」と記載されており、上記「着色が問題とならない範囲で適切な含有量のBi_(2)O_(3)を添加することで、Tg及びAtを低くする作用を持たせる」という技術思想が開示されているといえる。 また、平成19年12月6日付け拒絶理由通知書において引用された、特開平8-105437号公報の段落【0020】には、「本発明の光学ガラスにおいて、任意成分であるIn_(2)O_(3)、Bi_(2)O_(3)、TeO_(2)は、少量添加により対失透性を損なわずに屈折率の調整をすることが可能である。しかし、In_(2)O_(3)が10%超え、Bi_(2)O_(3)が6%を超え、TeO_(2)が6%を超えると、ガラスの対失透性が悪くなる。そのためIn_(2)O_(3)の含量はを0?10%の範囲、Bi_(2)O_(3)の含量は0?6%の範囲、TeO_(2)の含量は0?6%に限定される。好ましくは、In_(2)O_(3)が0?8%、Bi_(2)O_(3)が0?4%、TeO2が0?4%の範囲である。」(当審注:上記「In_(2)O_(3)の含量はを0?10%」は「In_(2)O_(3)の含量は0?10%」の誤記と認める。)と記載されており、上記「耐失透性」に関する技術思想が開示されているといえる。 さらに、Bi_(2)O_(3)を0.1?3.0%添加するか否かによる効果も、本願の実施例からはうかがえない。 したがって、上記「着色が問題とならない範囲で適切な含有量のBi_(2)O_(3)を添加することで、耐失透性やTg及びAtを低くする作用を持たせる」という技術思想は、当業者にとって自明の事項であると認められるので、上記主張は採用できない。 7.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができず、そうでないとしても、本願発明は、引用文献1および上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 そして、本願は他の請求項について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-04-13 |
結審通知日 | 2011-04-19 |
審決日 | 2011-05-09 |
出願番号 | 特願2002-124117(P2002-124117) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(C03C)
P 1 8・ 113- WZ (C03C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 藤代 佳 |
特許庁審判長 |
松本 貢 |
特許庁審判官 |
斉藤 信人 吉川 潤 |
発明の名称 | プレス成形用光学ガラス |
代理人 | 佐野 静夫 |