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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01G
管理番号 1239074
審判番号 不服2008-14728  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-06-12 
確定日 2011-06-23 
事件の表示 特願2002-288113「固体電解コンデンサの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月22日出願公開,特開2004-128096〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成14年9月30日の出願であって,平成19年11月9日付けで拒絶理由が通知され,平成20年1月15日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年5月8日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年6月12日に審判請求がされるとともに,同年7月14日に手続補正書が提出されたものである。その後,平成22年11月11日付けで審尋がされ,平成23年1月14日に回答書が提出された。

第2 平成20年7月14日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
本件補正を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の内容
本件補正は,補正前の特許請求の範囲の請求項1及び請求項2における「素子を加熱する」との記載を,「素子を100℃以上で加熱する」と補正するものであって,いずれも,補正前の発明特定事項を技術的に限定するものであるから,平成18年法律55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項2号に掲げる特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当する。

そこで,以下,補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項に規定する独立特許要件を満たすか)について検討する。

2 独立特許要件(容易想到性)の成否
(1)補正発明
補正後の請求項1の記載は,次のとおりである(以下,補正後の請求項1に係る発明を「補正発明」という。)。下線は補正箇所を示す。

「表面に酸化皮膜を形成した弁金属からなる陽極体と,重合性モノマーと酸化剤から形成される導電性ポリマーからなる固体電解コンデンサの製造方法において,
前記重合性モノマー及び酸化剤の含浸終了後15分以内に,素子を100℃以上で加熱することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。」

(2)引用例1の記載と引用発明
(2-1)原審の拒絶の理由に引用された,本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2002-203750号公報(以下「引用例1」という。)には,固体電解コンデンサに関し,図1とともに,次の記載がある(下線は当審で付加したものである。以下同じ。)。
・「【0001】【発明の属する技術分野】この発明は,固体電解コンデンサおよびその製造方法にかかり,特に導電性高分子を電解質に用いた固体電解コンデンサに関する。」
・「【0003】【従来の技術】ところで,近年,電子機器のデジタル化,高周波化に伴い,小型大容量で高周波領域でのインピーダンスの低いコンデンサが要求されている。」
・「【0014】【発明の実施の形態】本発明の固体電解コンデンサについて説明する。図1に示すように,アルミニウム等の弁作用金属からなり表面に酸化皮膜層が形成された陽極電極箔1と,陰極電極箔2とを,セパレータ3を介して巻回してコンデンサ素子10を形成する。そして,このコンデンサ素子10のセパレータ3に固体電解質を保持している。
【0015】陽極電極箔1は,アルミニウム等の弁作用金属からなり,陽極電極箔1の表面には,ホウ酸アンモニウム等の水溶液中で電圧を印加して誘電体となる酸化皮膜層を形成している。陰極電極箔2は,陽極電極箔1と同様にアルミニウム等からなり,表面にエッチング処理が施されているものを用いる。
【0016】陽極電極箔1及び陰極電極箔2にはそれぞれの電極を外部に接続するための陽極引出し手段4,陰極引出し手段5が,ステッチ,超音波溶接等の公知の手段により接続されている。これらの電極引出し手段4,5は,巻回したコンデンサ素子10の端面から導出される。
【0017】コンデンサ素子10は,上記の陽極電極箔1と陰極電極箔2とを,セパレータ3を間に挟むようにして巻き取って形成している。両極電極箔1,2の寸法は,製造する固体電解コンデンサの仕様に応じて任意であり,セパレータ3も両極電極箔1,2の寸法に応じてこれよりやや大きい幅寸法のものを用いればよい。
【0018】このコンデンサ素子内に固体電解質を形成するが,固体電解質としてポリエチレンジオキシチオフェン(PEDT)を用いると,大容量,低ESR特性を有する固体電解コンデンサを得ることができるので好適である。このPEDTは,モノマーである3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDT)を酸化剤であるp-トルエンスルホン酸第二鉄で重合させて得ることができる。重合はEDTまたはEDT溶液と酸化剤溶液をコンデンサ素子に注入して加熱して行うこともできるし,EDTと酸化剤の混合液をコンデンサ素子に注入,または混合液にコンデンサ素子を浸漬して含浸し加熱して行うこともできる。
【0019】そして,この固体電解質を形成したコンデンサ素子を有底筒状の金属ケースに収納し,封口ゴムで加締め封止して固体電解コンデンサが形成される(図示せず)。」

(2-2)引用発明
以上によれば,引用例1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「表面に酸化皮膜を形成した弁金属からなる陽極体と,重合性モノマーと酸化剤から形成される導電性ポリマーからなる固体電解コンデンサの製造方法において,
前記重合性モノマー及び酸化剤にコンデンサ素子を含浸し加熱することにより重合を行う,固体電解コンデンサの製造方法。」

(3)引用例2及び引用例3の記載
(3-1)引用例2の記載
原審の拒絶の理由に引用された,本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2001-250744号公報(以下「引用例2」という。)には,アルミニウム固体電解コンデンサに関し,図2?6とともに,次の記載がある。
・「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,信頼性が高い製品を量産することができるアルミニウム固体電解コンデンサの製造方法に関する。」
・「【0025】【発明の実施の形態】図2は本発明に於ける第三工程を終了した段階に在るアルミニウム固体電解コンデンサを表す要部切断側面図であり,図に於いて,1はコンデンサ本体,2はリード端子,3はケース,3Aは第一の開口,3Bは第二の開口,3Cはカラー部分,4は接着剤阻止体,5は接着剤をそれぞれ示している。
【0038】図3及び図4を参照しつつ,アルミニウム固体電解コンデンサの製造工程について説明する。
【0056】図5は乾燥工程にあるコンデンサ及びコンデンサの載置台を表す要部切断側面図であり,図2乃至図4に於いて用いた記号と同記号は同部分を表すか或いは同じ意味を持つものとする。
【0057】図に於いて,40は載置台,40Aはコンデンサのリード端子2A及び2Bを受容する凹所,xはコンデンサ本体1の頂面とケース3に於ける第二の開口3B側の壁面,即ち,上壁内面との間の間隙をそれぞれ示している。
【0058】図示されている間隙xは,第二の開口3Bを介して外部と連通するのに必要な通路をなしていて,少なくとも0.1〔mm〕以上,好ましくは0.5〔mm〕程度が必要である。
【0059】市場の要求では,外形寸法をできる限り小さくすることが要求されている為,従来のコンデンサでは間隙xを0にするのであるが,本発明によるコンデンサでは,そのようにした場合,第一液36の乾燥が不十分となり,信頼性が低下するので,前記した程度の間隙xをもたせることが必要である。
【0060】前記した程度の間隙xを維持する為には,コンデンサ本体1の頂面がケース3の上壁面と直接触れないようにケース3の上壁内面に所要の間隙xと等しい高さの突起を設けておくと有効である。
【0061】第一液36の溶媒はエタノールであるから,その沸点78.3〔℃〕を越えない温度,例えば70〔℃〕を維持して乾燥させることが好ましく,その乾燥時間は,コンデンサの大きさ,及び,第二の開口3Bの大きさに依存して異なることは当然であり,ケース3の外形寸法が3.6〔mm〕×3.6〔mm〕×6.3〔mm〕?4.6〔mm〕×4.6〔mm〕×10.1〔mm〕で,第二の開口3Bの直径φが0.8〔mm〕である場合,30〔分〕?3〔時間〕である。
【0062】乾燥が終わると,コンデンサ本体1の内面及び外面は前記導電性高分子材料のモノマからなる膜で覆われているので,これに酸化剤を混合して酸化重合反応を生じさせ,固体電解質を生成させなければならない。
【0063】この実施の形態では,前記したように,酸化剤としてp-トルエンスルホン酸鉄(III) を採用し,これを正ブチルアルコール(沸点 117.7〔℃〕)に溶解して50〔重量%〕溶液として使用する。以下の記述では,この液を第二液と呼ぶことにする。
【0064】第二液をケース3内のコンデンサ本体1に導入するには真空含浸が最適であって,それを実施するには,第一液の真空含浸と全く同じ手段が用いて良いが,コンデンサ本体1内に第二液が欠如している空所を生成させないようにすることが肝要であり,従って,第一液の場合に比較して大きい減圧,例えば100〔hPa〕程度まで減圧することが好ましい。
【0065】従って,第二液を真空含浸した直後に於いては,ケース3内は第二の開口3Bまで含めて第二液で充満した状態にあり,そのように第二の開口3Bまでが第二液で満たされていると乾燥させることが困難である。
【0066】図6はケースに於ける第二の開口に充満している第二液を排除する工程を説明する為のコンデンサ及び排除装置を表す要部説明図であり,図2乃至図5に於いて用いた記号と同記号は同部分を表すか或いは同じ意味を持つものとする。
【0067】図に於いて,41は圧搾空気供給管,42はノズル,51は第二液,51Aは吹き飛ばされる第二液をそれぞれ示している。
【0068】図から明らかであるが,コンデンサ10を直立させておき,ノズル42から圧搾空気を吹きつけて第二の開口3B近傍に存在する第二液51を吹き飛ばして排出する。尚,この際,含浸時にケース3の外側に付着した第二液も同時に排除することができる。
【0069】ここで第二の開口3Bから排出される第二液は,コンデンサ本体1とケース3との間に在る余剰の液であるから,その排出がコンデンサの特性に影響を与えることは皆無である。
【0070】第一液を構成するモノマは界面と濡れ性が良いエタノールで希釈してからコンデンサ本体1に含浸するので,陽極箔表面の細孔の中まで入った後,エタノールが蒸発し,表面にはモノマの薄い膜が残った状態にあり,そこへ第二液の含浸を行うので,モノマと第二液との混合は自然に行われるのであるが,その混合を更に助長する為に超音波振動を加えると有効であり,それに依って品質のばらつきを少なくすることができる。
【0071】第二液を含浸した直後から,3,4-エチレンジオキシ-チォフェンはp-トルエンスルホン酸鉄(III)の作用に依って,緩徐な酸化重合反応が進行するのであるが,その間,図5に見られるように,コンデンサ10を第二の開口3Cが上を向くように直立させて保持し,下記の熱処理に依って酸化重合及び正ブチルアルコールからなる溶剤の乾燥を行う。
【0072】第一段階
処理温度:50〔℃〕
処理時間:3〔時間〕
第二段階
処理温度:60〔℃〕
処理時間:3〔時間〕
第三段階
処理温度:80〔℃〕
処理時間:10〔時間〕? 30〔時間〕
第四段階
処理温度:125〔℃〕
処理時間:2〔時間〕
第五段階
処理温度:150〔℃〕
処理時間:1〔時間〕
【0073】温度80〔℃〕を適用して実施される熱処理の処理時間は,コンデンサの大きさなどの仕様に応じて選択して良い。
【0074】温度150〔℃〕の熱処理が終了すると,3,4-エチレンジオキシ-チォフェンの酸化重合は完了してポリエチレン-ジオキシ-チオフェンとなるのであるが,本発明では,温度125〔℃〕の熱処理及び温度150〔℃〕の熱処理を行っている段階,即ち,第二の開口3Bを封止する以前の段階で電圧を印加してエージングを行うことで大変良い効果が得られている。」

(3-2)引用例3の記載
本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2002-260965号公報(以下「引用例3」という。)には,固体電解コンデンサに関し,次の記載がある。
・「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,固体電解コンデンサの製造方法及び固体電解コンデンサに係り,特に,コンデンサ素子にモノマー溶液と酸化剤溶液を含浸する際の方法及び条件に改良を施した固体電解コンデンサの製造方法及び固体電解コンデンサに関するものである。」
・「【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら,上記のような製造方法では,コンデンサ素子にEDT等の重合性モノマーを吐出→乾燥→酸化剤を吐出→重合という工程が必要となり,工程が煩雑なものとなるため,EDT溶液等の重合性モノマー溶液と酸化剤溶液を予め混合して含浸させる方法が用いられているが,特性が十分なものではないという問題点があった。
【0009】本発明は,上述したような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり,その目的は,簡便な製造工程で,良好な特性を有する固体電解コンデンサを得ることができる固体電解コンデンサの製造方法及び固体電解コンデンサを提供することにある。」
・「【0037】(実施例1)表面に酸化皮膜層が形成された陽極箔と陰極箔に電極引き出し手段を接続し,両電極箔をセパレータを介して巻回して,素子形状が8φ×4Lのコンデンサ素子を形成した。そして,このコンデンサ素子をリン酸二水素アンモニウム水溶液に40分間浸漬して,修復化成を行った。一方,カップ状の容器に,EDTと45%のパラトルエンスルホン酸第二鉄のブタノール溶液を,その重量比が1:0.8となるように注入し,常温で横2mm,縦1.5mmの振動を10秒間与えた。その後,コンデンサ素子を上記混合液に10秒間浸漬し,100℃,1時間加熱して,コンデンサ素子内でPEDTの重合反応を発生させ,固体電解質層を形成した。そして,このコンデンサ素子を有底筒状のアルミニウムケースに挿入し,開口部を絞り加工によってゴム封口してエージングを行い,固体電解コンデンサを形成した。なお,この固体電解コンデンサの定格電圧は4WV,定格容量は820μFである。」

(4)補正発明と引用発明の一致点及び相違点
ア 補正発明と引用発明の対比
引用発明においても,重合性モノマー及び酸化剤の含浸終了後に,素子を加熱することにより重合を行っていることは明らかであるが,引用例1には,加熱の具体的なタイミングや温度について言及がない。

イ 一致点及び相違点
そうすると,補正発明と引用発明の一致点及び相違点は,次のとおりである。

〔一致点〕
「表面に酸化皮膜を形成した弁金属からなる陽極体と,重合性モノマーと酸化剤から形成される導電性ポリマーからなる固体電解コンデンサの製造方法において,
前記重合性モノマー及び酸化剤の含浸終了後,素子を加熱することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。」

〔相違点1〕
重合性モノマー及び酸化剤の含浸終了後の素子の加熱のタイミングについて,補正発明では,「重合性モノマー及び酸化剤の含浸終了後15分以内」とされているの対し,引用発明では,タイミングについて特定されていない点。

〔相違点2〕
重合性モノマー及び酸化剤の含浸終了後の素子の加熱の時間について,補正発明では,「100℃以上で加熱する」とされているのに対し,引用発明では,加熱の温度について特定されていない点。

(5)相違点についての検討
(5-1)相違点1について
ア 上記(3-1)で摘記したように,引用例2には,アルミニウム固体電解コンデンサの製造方法について,次の記載がある。
「【0071】第二液を含浸した直後から,3,4-エチレンジオキシ-チォフェンはp-トルエンスルホン酸鉄(III)の作用に依って,緩徐な酸化重合反応が進行するのであるが,その間,図5に見られるように,コンデンサ10を第二の開口3Cが上を向くように直立させて保持し,下記の熱処理に依って酸化重合及び正ブチルアルコールからなる溶剤の乾燥を行う。
【0072】第一段階
処理温度:50〔℃〕
処理時間:3〔時間〕
第二段階
処理温度:60〔℃〕
処理時間:3〔時間〕
第三段階
処理温度:80〔℃〕
処理時間:10〔時間〕? 30〔時間〕
第四段階
処理温度:125〔℃〕
処理時間:2〔時間〕
第五段階
処理温度:150〔℃〕
処理時間:1〔時間〕」

ここで,「第二液」が酸化剤であることは,次の記載から明らかである。
「【0063】この実施の形態では,前記したように,酸化剤としてp-トルエンスルホン酸鉄(III) を採用し,これを正ブチルアルコール(沸点 117.7〔℃〕)に溶解して50〔重量%〕溶液として使用する。以下の記述では,この液を第二液と呼ぶことにする。」
イ このように,引用例2には,重合性モノマー及び酸化剤にコンデンサ素子を含浸した「直後」から重合反応が進行し,その間熱処理を行うことが記載されている。そして,熱処理は時間単位で行われるから,1時間に満たない短い時間内にコンデンサ素子の熱処理が開始されていることが明らかであり,このような短い時間の範囲内において熱処理の開始のタイミングを最適化することは,当業者に普通に期待できる技術的設計事項といえる。
ウ そうすると,コンデンサ素子の熱処理の開始のタイミングを「重合性モノマー及び酸化剤の含浸終了後15分以内」とすることは,当業者が適宜設定しうる設計事項と判断される。

(5-2)相違点2について
ア 引用例3には,実施例として,次の記載がある。
「【0037】(実施例1)表面に酸化皮膜層が形成された陽極箔と陰極箔に電極引き出し手段を接続し,両電極箔をセパレータを介して巻回して,素子形状が8φ×4Lのコンデンサ素子を形成した。そして,このコンデンサ素子をリン酸二水素アンモニウム水溶液に40分間浸漬して,修復化成を行った。一方,カップ状の容器に,EDTと45%のパラトルエンスルホン酸第二鉄のブタノール溶液を,その重量比が1:0.8となるように注入し,常温で横2mm,縦1.5mmの振動を10秒間与えた。その後,コンデンサ素子を上記混合液に10秒間浸漬し,100℃,1時間加熱して,コンデンサ素子内でPEDTの重合反応を発生させ,固体電解質層を形成した。そして,このコンデンサ素子を有底筒状のアルミニウムケースに挿入し,開口部を絞り加工によってゴム封口してエージングを行い,固体電解コンデンサを形成した。なお,この固体電解コンデンサの定格電圧は4WV,定格容量は820μFである。」

このように,重合性モノマー及び酸化剤の含浸終了後の素子の加熱温度を「100℃以上」とすることは,加熱温度として,格別の範囲のものではない。
加えて,重合性モノマー及び酸化剤の含浸終了後の素子の加熱に必要な温度や時間は,固体電解コンデンサの大きさや用いる材質などに依存して変動しうるものである。
イ したがって,素子の加熱温度を「100℃以上」とすることも,上記の加熱処理の開始のタイミングと併せて,当業者が適宜設定しうる設計事項といえる。

(5-3)したがって,補正発明は,引用発明及び引用例2,引用例3の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により独立して特許を受けることができない。

なお,本願明細書の段落0027?0029及び表1には,コンデンサ素子を重合液から引き上げた「直後」に「150℃」で加熱処理した実施例と,この加熱処理がなく,室温で1時間放置した比較例について,特性を調べた結果が示されているが,加熱処理の時間も明らかにされておらず,サンプル数や測定バラツキなども明らかにされていないので,客観的な評価ができない。また,重合反応は,重合性モノマー及び酸化剤にコンデンサ素子を含浸した「直後」から進行するのであるから,室温で1時間放置した後に加熱処理をしたものを比較例としたのでは,従来よりも条件の悪いものを比較例としたに等しく,正しい評価ができない。

(6)以上の次第で,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により,却下すべきものである。

第3 本願発明の容易想到性について
1 本願発明
以上のとおり,本件補正は却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,本件補正前の請求項1(平成20年1月15日に提出された手続補正書により補正された請求項1)に記載された,次のとおりのものである。

「表面に酸化皮膜を形成した弁金属からなる陽極体と,重合性モノマーと酸化剤から形成される導電性ポリマーからなる固体電解コンデンサの製造方法において,
前記重合性モノマー及び酸化剤の含浸終了後15分以内に,素子を加熱することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。」

2 引用例1の記載と引用発明
引用例1の記載と引用発明は,前記第2,2(2-1),(2-2)で認定したとおりである。

3 対比・判断
補正発明は,素子の加熱について,「素子を100℃以上で加熱する」と限定するものであった。逆に言えば,補正前の発明(本願発明)は,補正発明から「100℃以上で」との温度限定をなくしたものである。
そうすると,本願発明と引用発明との相違点は,前記2,2(4)イにおいて認定した「相違点1」のみとなる。
そして,引用例2の記載を引用発明に適用して相違点1に係る構成とすることが当業者にとって容易であったことは,前記2,2(5-1)において検討したとおりである。
したがって,本願発明は,引用発明及び引用例2の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができない。

第4 結言
したがって,請求項2に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-04-12 
結審通知日 2011-04-19 
審決日 2011-05-09 
出願番号 特願2002-288113(P2002-288113)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐久 聖子重田 尚郎  
特許庁審判長 相田 義明
特許庁審判官 酒井 英夫
近藤 幸浩
発明の名称 固体電解コンデンサの製造方法  
代理人 木内 光春  

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