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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01R
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1239078
審判番号 不服2008-29184  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-11-17 
確定日 2011-06-23 
事件の表示 特願2003-130597号「導電性接着剤結合」拒絶査定不服審判事件〔平成15年12月5日出願公開、特開2003-346930号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成15年5月8日の出願(パリ条約による優先権主張2002年5月18日、ドイツ国)であって平成20年7月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年11月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成20年11月27日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成20年11月27日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年11月27日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。
「少なくとも1つの機械的な接点における導電性接着剤結合において、
合成物質担持体(8)に、センサープレート(5)が取付けられており、その際、接点(1)が、このセンサープレート(5)の穿孔(6)を通って貫通係合していること、
接点(1)が、この接点の表面(2)上で立体成形されており、このことによって、導電性接着剤(3)が、機械的に、立体成形(4)の箇所に、しっかり固定されるように構成されていること、
上記立体成形(4)が、のこぎり刃形起伏、または棘状起伏であること、を特徴とする導電性接着剤結合。」(下線部は補正個所を示す。)

2.補正の目的
本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「立体成形」について、「上記立体成形(4)が、のこぎり刃形起伏、または棘状起伏である」との限定を付加するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「改正前の特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3-1.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平2-172266号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア 「二、発明の構成
即ち、本発明は、インナーリード部と、所定の導体に接合材を介して接合されるアウターリード部とを有し、前記アウターリード部に接合材はみ出し防止手段が設けられているリードに係るものである。」(2ページ左下欄11?16行)
イ 「次に、プリント基板1について説明すると、公知の方法によって、絶縁基板(例えばフェノール樹脂)1上にCr、Cu、Auをこの順に真空蒸着により積層し、パターニングを行って所定の導体パターン2を形成する。」(3ページ左上欄12?16行)
ウ 「以上に説明したように、本実施例によるリード4及びパッケージ5によれば、アウターリード部4bに貫通孔12を設けているので、第2図及び第3図に示すように、半田3が導体パターン2からはみ出そうとしても、その分の半田3が貫通孔12に入り込もうとするため、十分に接合強度を保ちながら半田3のはみ出しを防止できる。」(3ページ右上欄9?15行)
エ 「即ち、上記したように、合計の表面積で比較すると、本発明に基づく場合は従来例に比べて、約12%増加している。従って、上述の例と同様の利点があると共に、表面積を大きくとれて半田付け強度上有利となる。ここで、一般に、底面(半田膜3との接触面)30よりも側面(アウターリード部4bの厚さ方向の面)31におけるメニスカスが多くなるほど半田付けの強度が増すと考えられるので、この例による半田付けの強度は従来例よりもずっと増すことになる。」(4ページ左上欄6行?右上欄4行)
オ 「第8図は本発明の他の実施例を示すものであって、アウターリード部4bの側面及び先端に図に示すような楔形の切欠き部16を設けたものである。即ち、この場合にも切欠き部16内に半田が入り込むため、上述の例と同様の利点がある。」(4ページ左下欄15?19行)
カ 「第9図及び第10図は本発明の更に他の例を示すものである。
この例は、いわゆるピンスルーホール型と呼ばれる実装構造において、両面に導体パターン2a2bを設けたプリント基板1に貫通孔(スルーホール)18を形成し、これに図のように鉛直線方向に延びたアウターリード部17(既述の4bに対応するもの)を挿入し、予め導体パターン2上にスクリーン印刷によって形成された半田3により半田付けを行うものである。そして、アウターリード部17には、図のように、その幅広の部分に上述したと同様の円形の貫通孔14が設けられている。即ち、この例においても、アウターリード部17に貫通孔14を設けることにより、半田3が一部分貫通孔14に入り込むため、横方向の広がりが抑制され上述した例と同様の利点がある。」(4ページ左下欄20行?右下欄16行)
キ 「また、接合材としては上述した半田の他、例えば導電性接着剤(銀エポキシ樹脂等)を用いてもよい。」(5ページ左上欄12?14行)

そして、第8図には、記載オに関連して、アウターリード部4bの接合域20の側面に複数の楔形の切欠き部16を設け、側面に実質的に鋸歯状の凹凸を形成したものが記載されている。
また、第9図には、ピンスルーホール型のアウターリード部の断面図が示されており、プリント基板1及び、その表面に設けられた導体パターン2a,2bを貫通する貫通孔(スルーホール)18を通って、円形の貫通孔14が設けられたアウターリード部17が、貫通孔14を設けた部分がスルーホール18の上面に位置するように嵌合し、半田3により導体パターン2a,2bと接合された状態が示されており、また第10図には、そのX-X矢視断面図が示されている。

上記記載事項について検討すると、記載アには、所定の導体に接合材を介して接合されるアウターリード部に、接合材はみ出し防止手段が設けられているリードが記載されており、記載ウには、はみ出し防止手段としてアウターリード部4bに貫通孔12を設けたものでは、半田3が貫通孔12に入り込もうとするため、十分に接合強度を保ちながら半田3のはみ出しを防止できる旨記載され、さらに、記載エには、貫通孔を設けた場合、表面積が増すので半田付けの接合強度がそうでないものに比べ増す利点がある旨記載されている。
第9図と第10図を参照すると、記載カには、表面に導体パターン2aを設けたプリント基板1に、導体パターン2aを貫通するスルーホール18を形成し、ここに、円形の貫通孔14が設けられたアウターリード部17を、貫通孔14を設けた部分がスルーホール18の上面に位置するように挿入し、半田3によりアウターリード部17と導体パターン2aとの間を半田付けするものが記載されており、この場合も、半田3が一部分貫通孔14に入り込むため、横方向の広がりが抑制され上述した例と同様の利点、すなわち、記載エにあるように半田付けの接合強度を増す利点がある旨記載されている。
ここで、記載イには、プリント基板1が、「絶縁基板(例えばフェノール樹脂)1上にCr、Cu、Auをこの順に真空蒸着により積層し、パターニングを行って所定の導体パターン2を形成」して構成されることが記載されているので、プリント基板1は、合成樹脂の基板上にクロムや銅等の導電性素材で形成した導体パターン2を設けたものであるといえる。
第8図を参照すると、記載オには、はみ出し防止手段としてアウターリード部4bに複数の楔形の切欠き部16を設け、表面に実質的に鋸歯状の凹凸を形成したものが記載されており、このものにあっても、切欠き部16内に半田が入り込むため、上述の例と同様の利点がある、すなわち、貫通孔を設けたものと同様に、はみ出し防止の機能に加え、半田付けの接合強度を増す利点がある旨記載されている。
記載キには、接合材として、半田に代えて、導電性接着剤(銀エポキシ樹脂等)を用いてもよい旨記載されている。

上記記載事項ア?エ及びカ、並びに図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

「少なくとも1つの機械的な接点における半田付け結合において、
合成樹脂の基板1上に導電性素材で形成した導体パターン2が設けられており、その際アウターリード部4bが、この導体パターン2を貫通するスルーホール18を通って貫通係合していること、
アウターリード部4bに貫通孔14が形成されており、このことによって、半田3が、貫通孔14を形成した箇所に、接合強度を増して固定されるように構成されている半田付け結合。」

また、上記記載事項オ及び第8図より、引用例には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

「はみ出し防止手段としてアウターリード部4bに複数の楔形の切欠き部16を設け、表面に実質的に鋸歯状の凹凸を形成し、切欠き部16内に半田が入り込むことにより、半田が接合強度を増して固定されるようにした半田付け結合。」

3-2.対比
本願補正発明と引用発明1とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、引用発明1の「半田」「付け結合」は、本願補正発明の「導電性接着剤」「結合」と、「導電性の接合材」「による結合」である点で共通する。
また、引用発明1の「合成樹脂の基板1」は、本願補正発明の「合成物質担持体(8)」に相当する。
そして、引用発明1の「導体パターン2」は導電性素材で形成した板状の部材であり、一方、本願補正発明の「センサープレート(5)」も、その詳細は不明であるものの、本願明細書の段落【0014】によれば、少なくともその接触位置がポリマー銀導電性接着剤で構成された板状の部材であることから、両者は「導電性の板状部材」である点で共通する。
次に、引用発明1の「導体パターン2を貫通するスルーホール18を通って貫通係合している」「アウターリード部4b」は、本願補正発明の「センサープレート(5)の穿孔(6)を通って貫通係合している」「接点(1)」に相当する。
引用発明1の「貫通孔14」は、「接点(1)」に相当する「アウターリード部4b」に設けられた凹凸形状である点で、本願補正発明の「のこぎり刃形起伏、または棘状起伏」である「立体成形」と共通する。
そして、引用発明1の「接合強度を増して固定される」は、本願補正発明の「しっかり固定される」に相当する。

そこで、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「少なくとも1つの機械的な接点における導電性の接合材による結合において、
合成物質担持体に、導電性の板状部材が取付けられており、その際、接点が、この導電性の板状部材の穿孔を通って貫通係合していること、
接点が、この接点の表面上で凹凸形状となっており、このことによって、導電性の接合材が、凹凸形状の箇所に、しっかり固定されるように構成されている導電性の接合材による結合。」

そして、両者は次の点で相違する(対応する引用発明(引用例記載)の用語を( )内に示す。)。
(相違点1)
本願補正発明は、導電性の接合材が導電性接着剤であるのに対し、引用発明1は、導電性の接合材が半田である点。

(相違点2)
本願補正発明は、導電性の板状部材がセンサープレートであるのに対し、引用発明1は、導電性の板状部材が導体パターン2である点。

(相違点3)
本願補正発明は、凹凸形状が立体成形であって、立体成形が、のこぎり刃形起伏、または棘状起伏であるのに対し、引用発明1は、凹凸形状が貫通孔14である点。

(相違点4)
導電性の接合材の凹凸形状の箇所への固定について、本願補正発明は、「導電性接着剤(3)が、機械的に、立体成形(4)の箇所に、しっかり固定されるように構成されている」のに対し、引用発明1は、導電性の接合材(半田3)が、凹凸形状の箇所(貫通孔14を形成した箇所)に、しっかり(接合強度を増して)固定されるように構成されているものの、機械的にしっかり固定されているか必ずしも明らかでない点。

3-3.相違点の判断
上記相違点について検討する。
(相違点1について)
引用例には、記載キに、接合材としては半田に代え導電性接着剤(銀エポキシ樹脂等)を用いてもよい旨記載があることから、導電性の接合材として導電性接着剤を用いることは、当業者が適宜なし得た事項である。

(相違点2について)
引用発明1に係る導電性の接合材による結合を、導体パターン2と、導電性の板状部材である点で共通した構造をもつセンサープレートに適用することは、当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点3について)
引用例には、貫通孔14と同等なはみ出し防止手段として、複数の楔形の切欠き部16により、表面に実質的に鋸歯状の凹凸を形成する引用発明2が記載されている。
そこで、引用発明1に引用発明2を適用し、凹凸形状として、貫通孔14に代え、複数の楔形の切欠き部16により、接点(アウターリード部4b)表面に実質的に鋸歯状の凹凸を形成することにより、相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が容易になし得たことである。

(相違点4について)
引用例には、記載ウ、エ、オにあるように、接点(アウターリード部4b)の貫通孔14や楔形の切欠き部16に導電性の接合材(半田)が入り込むために、接点(アウターリード部4b)と導電性の接合材(半田)との接触面積が増し、接合強度が増すことが記載されているが、貫通孔14や楔形の切欠き部16のような凹凸形状に導電性の接合材(半田)が入り込むことは、同時に、入り込んだ導電性の接合材(半田)が、これらの凹凸形状との間に機械的な噛み合いを形成し、接点(アウターリード部4b)と導電性の接合材(半田)との間の相互移動を妨げることによっても、その接合強度を増すであろうことは、引用例に明示的な記載がなくても、当業者が容易に予測し得た事項であるといえるので、この点に実質的な相違はない。

そして、本願補正発明による効果も、引用発明1及び引用発明2ないし引用例に記載された事項から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明1及び引用発明2ないし引用例に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3-4.むすび
以上のとおり、本件補正は、改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を、「本願発明」という)は、平成20年6月26日付けの手続補正書により補正された明細書の、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「少なくとも1つの機械的な接点における導電性接着剤結合において、
合成物質担持体(8)に、センサープレート(5)が取付けられており、その際、接点(1)が、このセンサープレート(5)の穿孔(6)を通って貫通係合していること、
接点(1)が、この接点の表面(2)上で立体成形されており、このことによって、導電性接着剤(3)が、機械的に、立体成形(4)の箇所に、しっかり固定されるように構成されていること、
を特徴とする導電性接着剤結合。」

2.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記「第2」「3-1」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記「第2」「1」の本願補正発明から、「立体成形」の限定事項である「上記立体成形(4)が、のこぎり刃形起伏、または棘状起伏である」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2」「3-3」に記載したとおり、引用発明1及び引用発明2ないし引用例に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明1及び引用発明2ないし引用例に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び引用発明2ないし引用例に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-12-03 
結審通知日 2011-01-04 
審決日 2011-01-17 
出願番号 特願2003-130597(P2003-130597)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01R)
P 1 8・ 121- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲垣 浩司  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 長崎 洋一
鈴木 敏史
発明の名称 導電性接着剤結合  
代理人 江崎 光史  

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