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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1239084
審判番号 不服2009-4860  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-03-05 
確定日 2011-06-23 
事件の表示 特願2005- 65987「固体撮像装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 9月21日出願公開、特開2006-253316〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成17年3月9日の出願であって、平成20年11月21日に手続補正書が提出され、平成21年1月26日付けで拒絶査定がされ、それに対して、同年3月5日に審判が請求されるとともに、同年4月6日に手続補正書が提出され、その後、平成22年11月2日付けで審尋がされ、平成23年1月6日に回答書が提出されたものである。


第2 平成21年4月6日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正の却下の決定

【補正の却下の決定の結論】

本件補正を却下する。

【理由】
1 補正の内容
本件補正のうち、特許請求の範囲についてする補正は、次のとおりである。

請求項1について、同項中に、「上記第1の開口内の上記第1の絶縁層を覆い、上記第2の開口内の上記第1の絶縁層を露呈させる開口を有する第2のマスク層を形成する工程」とあるのを、「上記第1の開口内の上記第1の絶縁層を覆い、上記第2の開口内の上記第1の絶縁層を露呈させる為に、第2の開口よりは大に、また第1の開口に到ることがない程度に裕度が大きい位置合わせにより開口を有する第2のマスク層を形成する工程」と限定すること。

2 補正の目的の適否
上記補正は、補正前の請求項に規定されている技術的事項をより限定するものであり、平成18年法律55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、同特許法第17条の2第4項柱書きに規定する目的要件を満たす。

以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものであるから、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、独立特許要件を満たすものであるか否かについて、更に検討する。

3 独立特許要件(容易想到性)についての検討
(1)本願補正発明
本件補正による補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
単位画素が、少なくとも光電変換素子と、複数の絶縁ゲート形電界効果トランジスタを有し、上記複数の絶縁ゲート形電界効果トランジスタの一部の絶縁ゲート形電界効果トランジスタのゲート絶縁膜の厚さが、他の少なくとも一部の絶縁ゲート形電界効果トランジスタの厚さと異なる構成による固体撮像装置の製造方法であって、
そのゲート絶縁膜の形成工程が、
半導体基板表面に、最終的に第1の厚さのゲート絶縁膜を形成する第1の開口と、上記第1の厚さに比し小なる第2の厚さのゲート絶縁膜を形成する第2の開口とが形成されたゲート絶縁膜形成の為の、分離絶縁層を兼ねる第1のマスク層を形成する工程と、
上記第1および第2の開口に上記第1の厚さに比して小なる厚さの第1の絶縁層を形成する工程と、
上記第1の開口内の上記第1の絶縁層を覆い、上記第2の開口内の上記第1の絶縁層を露呈させる為に、第2の開口よりは大に、また第1の開口に到ることがない程度に裕度が大きい位置合わせにより開口を有する第2のマスク層を形成する工程と、
上記第2のマスク層の開口を通じて上記第1の絶縁層を除去する工程と、
上記第2のマスク層を除去して上記第1のマスク層の上記第1および第2の開口を通じて上記第2の厚さの第2の絶縁層を形成する工程とを有し、
上記第1の開口に形成された、上記第1及び第2の絶縁層の重複形成部からなる第1の厚さのゲート絶縁膜上に、読み出しMOSトランジスタのゲート電極を形成する工程と、
上記第2の開口に形成された第2の厚さのゲート絶縁膜上に、アンプMOSトランジスタ、リセットMOSトランジスタ、又は、アンプMOSトランジスタ、リセットMOSトランジスタ、垂直選択用MOSトランジスタの各ゲート電極を形成する工程と、
を有する固体撮像装置の製造方法。」

(2)引用例の記載と引用発明
(2-1)引用例1とその記載内容
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2004-265939号公報(以下「引用例1」という。)には、「CMOS固体撮像装置およびその駆動方法」(発明の名称)について、図1?2とともに、次の記載がある(下線は当審で付加。以下同じ。)。

ア 発明の属する技術分野等
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、画素部で光電変換して得た電荷を転送ゲートから電荷電位変換手段へ転送して画像信号を得るCMOS固体撮像装置およびその駆動方法に関する。」
イ 発明の実施の形態等
「【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図に基づき説明する。図1は、本実施形態に係るCMOS固体撮像装置を説明する全体平面図、図2は、本実施形態に係るCMOS固体撮像装置の画素部拡大平面図、図3は、他の画素部拡大平面図である。
【0010】
すなわち、図1に示すように、本実施形態のCMOS固体撮像装置1は1チップ内に画素領域10および周辺回路領域20を備えた構成となっている。画素領域10には縦横に複数の画素部が配置され、各画素部に対応して転送ゲートを備える読み出しトランジスタや増幅トランジスタ等が構成されている。
【0011】
また、周辺回路領域20には、画素領域10の各画素部および各トランジスタへ供給する電源を制御する回路や各画素部で取り込んだ信号を処理する回路等が構成されている。
【0012】
図2に示す例は、各フォトダイオード部11に対応して読み出しトランジスタ12、リセットトランジスタ13、増幅トランジスタ14およびセレクトトランジスタ15が配置される4トランジスタ型のCMOS固体撮像装置、図3に示す例は、各フォトダイオード部11に対応して読み出しトランジスタ12、リセットトランジスタ13および増幅トランジスタ14が配置される3トランジスタ型のCMOS固体撮像装置である。
【0013】
いずれの例であっても本実施形態のCMOS固体撮像装置では、読み出しトランジスタ12の転送ゲート12aへ印加する電圧(VTx)が、それ以外の周辺トランジスタへ印加する電圧(VG)より高くなっている点に特徴がある。
【0014】
ここで、周辺トランジスタには、図1に示す周辺回路領域20で動作するトランジスタや、図2、図3で示す各フォトダイオード部11に対応して設けられる増幅トランジスタ14、セレクトトランジスタ15を含むものとする。
【0015】
このように、転送ゲート12aに印加する電圧を、周辺トランジスタへの印加電圧より高くすることによって、スケーリング則に従った周辺トランジスタの省スペース化、低消費電力化および高速化を図り周辺トランジスタの駆動電圧低下を図った場合でも、フォトダイオード部11に対応した転送ゲート12aの印加電圧が高いため、フォトダイオード部11から転送ゲート12aを介して読み出すことができる電荷の飽和量を低下させずに済むようになる。」
「【0020】
図6は第2の具体例を説明する模式断面図である。画素領域には1つのPhoto diode(フォトダイオード)から成るフォトダイオード部11と、これに対応した転送ゲート12aおよびFloating Diffusion(電荷電圧変換部)16が設けられ、周辺回路領域にはLogic Tr.(ロジックトランジスタ)21が配置されている。
【0021】
また、この例では、フォトダイオード部11の転送ゲート12aの部分のみゲート絶縁膜の膜厚を厚くし、薄い濃度のLDD(Lightly doped drain)を転送ゲート12aの電荷下流側に設けている。
【0022】
つまり、転送ゲート12aのゲート絶縁膜の膜厚をTox(Tx)、周辺回路領域のロジックトランジスタ21におけるゲート絶縁膜の膜厚をTox(Logic)とした場合、Tox(Tx)>Tox(Logic)、転送ゲート12aに対応するLDDの不純物濃度をNLDD(Tx)、周辺管理領域のロジックトランジスタ21におけるLDDの不純物濃度をNLDD(Logic)とした場合、NLDD(Tx)<NLDD(Logic)としている。
【0023】
これにより、転送ゲート12aへ印加する電圧VTxとロジックトランジスタ21に印加する電圧VGとの関係として、VTx≫VGが可能となり、先に説明した具体例1よりも更に飽和電荷量を増加できるようになる。つまり、具体例2では、具体例1よりも高画質を必要とする用途に向いている。
【0024】
いずれの具体例においても、図1に示す周辺回路領域に設けられた電源制御回路によってフォトダイオード部11に対応した転送ゲート12aへの印加電圧VTxと周辺トランジスタへの印加電圧VGとを別個に与えられるようにしておく。
【0025】
これにより、CMOS固体撮像装置の駆動方法として、具体例1のようなVTx>VGや具体例2のようなVTx≫VGとなる印加電圧を各々のトランジスタへ与えることができ、周辺トランジスタの小型化、低消費電力化、高速化と、飽和電荷量の増加との両立を図ることが可能となる。」

(2-2)引用発明
上記ア及びイによれば、引用例1には、製造方法の観点からみると、次の発明が記載されているといえる(以下「引用発明」という。)。

「各フォトダイオード部11に対応して読み出しトランジスタ12、リセットトランジスタ13、増幅トランジスタ14およびセレクトトランジスタ15が配置されるCMOS固体撮像装置の製造方法であって、画素領域には1つのPhoto diode(フォトダイオード)から成るフォトダイオード部11と、これに対応した読み出しトランジスタ12の転送ゲート12aと、周辺回路領域にはLogic Tr.(ロジックトランジスタ)21が形成され、前記転送ゲート12aのゲート絶縁膜の膜厚 > 前記周辺回路領域のロジックトランジスタ21におけるゲート絶縁膜の膜厚である、CMOS固体撮像装置の製造方法。」

(2-3)引用例2とその記載内容
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2000-216257号公報(以下「引用例2」という。)には、「半導体装置およびその製造方法」(発明の名称)の従来技術において、図6とともに、次の記載がある。

ア 産業上の利用分野等
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主に半導体集積回路に使用される半導体装置およびその製造方法に関するものである。」
イ 従来の技術等
「【0002】
【従来の技術】CMOS搭載マイコンのように電源電圧が一定でかつ高速動作を実現するような半導体集積回路を作製する場合、電源電圧がそのまま印加される入出力部や周辺トランジスタ部には、厚膜ゲート絶縁膜を有する高圧系トランジスタが使用される。また、降圧回路により降圧された電圧が印加され、かつ高速動作の要求されるメモリ部には、薄膜ゲート絶縁膜を有する低圧系トランジスタが使用される。このように高圧系トランジスタおよび低圧系トランジスタを有する半導体装置では、同一半導体基板上に、膜厚の異なる2種類のゲート絶縁膜を形成する必要がある。
【0003】以下、図6を参照しながら従来の半導体装置の製造方法について説明する。図6は従来の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。図6において、601はシリコン基板、602はLOCOS酸化膜、603は酸化種、604はシリコン酸化膜、605はレジスト、606はシリコン酸化膜で形成された薄膜ゲート絶縁膜、607は積層されたシリコン酸化膜で形成された厚膜ゲート絶縁膜、608はゲート電極用のポリシリコン膜であり、Aは厚膜ゲート絶縁膜を有する高圧系トランジスタ形成領域、Bは薄膜ゲート絶縁膜を有する低圧系トランジスタ形成領域を示す。
【0004】まず、シリコン基板601上に素子間を分離するLOCOS酸化膜602を形成する(図6(a))。次に、酸素や水蒸気といった酸化種603を用いてシリコン酸化膜604を形成する(図6(b))。次に高圧系トランジスタ形成領域Aをレジスト605で覆い、低圧系トランジスタ形成領域Bのシリコン酸化膜603をウェットエッチング等により除去する(図6(c))。次にレジスト605を剥離した後、再度、酸化種603雰囲気中で薄膜ゲート絶縁膜606が所望の膜厚となるように酸化処理を行う。このとき、高圧系トランジスタ形成領域Aではシリコン酸化膜604がさらに酸化され、積層のシリコン酸化膜となった厚膜ゲート絶縁膜607が形成される(図6(d))。
【0005】次に全面にポリシリコン膜608を成膜し(図6(e))、その後、図示しないがポリシリコン膜608のパターニングを行って高圧系トランジスタ形成領域Aおよび低圧系トランジスタ形成領域Bにゲート電極を形成し、さらに周知の方法により高圧系トランジスタ形成領域Aおよび低圧系トランジスタ形成領域Bにそれぞれソース・ドレイン領域を形成することで、同一シリコン基板601上に膜厚の異なる2種類のゲート絶縁膜を有するMOSトランジスタを形成することができる。」

なお、段落【0004】の「シリコン酸化膜603」は、「シリコン酸化膜604」の誤記と認められる。

ウ 図6について
図6は、従来の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
上記イを参酌すると、図6から、LOCOS酸化膜602は、最終的に第1の厚さの厚膜ゲート絶縁膜を形成する第1の開口と、上記第1の厚さより薄い第2の厚さの薄膜ゲート絶縁膜を形成する第2の開口とが形成され、ゲート絶縁膜形成の為のものであることが分かる。

上記ア?ウの記載から、引用例2には、以下の技術が開示されている。

シリコン基板601上に、最終的に第1の厚さの厚膜ゲート絶縁膜を形成する第1の開口と、上記第1の厚さより薄い第2の厚さの薄膜ゲート絶縁膜を形成する第2の開口とが形成された、ゲート絶縁膜形成の為の、LOCOS酸化膜602を形成する工程と、上記第1および第2の開口に上記第1の厚さより薄い厚さのシリコン酸化膜604を形成する工程と、高圧系トランジスタ形成領域Aである上記第1の開口の上記シリコン酸化膜604を覆い、低圧系トランジスタ形成領域Bである上記第2の開口の上記シリコン酸化膜604を露呈させる為に、高圧系トランジスタ形成領域Aをレジスト605で覆う工程と、前記レジスト605で覆われない部分である開口を通じて低圧系トランジスタ形成領域Bのシリコン酸化膜604を除去する工程と、レジスト605を剥離した後、上記LOCOS酸化膜602の上記第1および第2の開口を通じて所望の膜厚となるように酸化処理を行うことにより、高圧系トランジスタ形成領域Aである上記第1の開口に積層のシリコン酸化膜となった厚膜ゲート絶縁膜607を、低圧系トランジスタ形成領域Bである上記第2の開口に薄膜ゲート絶縁膜606を、それぞれ形成するとともに、各ゲート絶縁膜上にゲート電極をそれぞれ形成する技術。

(3)対比
(3-1)本願補正発明と引用発明とを対比すると、
ア 引用発明の「フォトダイオード部11」及び「CMOS固体撮像装置」は、それぞれ、本願補正発明の「光電変換素子」及び「固体撮像装置」に相当し、引用発明の「周辺回路領域」はLogic Tr.(ロジックトランジスタ)21が形成されていることから、複数の絶縁ゲート形電界効果トランジスタを有していることが分かる。そして、引用発明において、「読み出しトランジスタ12の転送ゲート12aのゲート絶縁膜の膜厚>周辺回路領域のロジックトランジスタ21におけるゲート絶縁膜の膜厚」であることから、複数の絶縁ゲート形電界効果トランジスタの一部、すなわち、読み出しトランジスタ、の絶縁ゲート形電界効果トランジスタのゲート絶縁膜の厚さが、他の少なくとも一部の絶縁ゲート形電界効果トランジスタ、すなわち、ロジックトランジスタ、のゲート絶縁膜の厚さとは異なるものであるから、厚さが異なる構成によるものといえる。
そうすると、引用発明の「画素領域には1つのPhoto diode(フォトダイオード)から成るフォトダイオード部11と、これに対応した各フォトダイオード部11に対応した読み出しトランジスタ12の転送ゲート12aが形成され、周辺回路領域にはLogic Tr.(ロジックトランジスタ)21が形成され、転送ゲート12aのゲート絶縁膜の膜厚>周辺回路領域のロジックトランジスタ21におけるゲート絶縁膜の膜厚として形成しているCMOS固体撮像装置の製造方法」は、本願補正発明の「単位画素が、少なくとも光電変換素子と、複数の絶縁ゲート形電界効果トランジスタを有し、上記複数の絶縁ゲート形電界効果トランジスタの一部の絶縁ゲート形電界効果トランジスタのゲート絶縁膜の厚さが、他の少なくとも一部の絶縁ゲート形電界効果トランジスタの厚さと異なる構成による固体撮像装置の製造方法」に相当する。
イ 引用発明の「リセットトランジスタ13」、「増幅トランジスタ14」及び「セレクトトランジスタ15」は、それぞれ、本願補正発明の「リセットMOSトランジスタ」、「アンプMOSトランジスタ」及び「垂直選択用MOSトランジスタ」に相当する。

(3-2)したがって、本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりとなる。

〈一致点〉
「単位画素が、少なくとも光電変換素子と、複数の絶縁ゲート形電界効果トランジスタを有し、上記複数の絶縁ゲート形電界効果トランジスタの一部の絶縁ゲート形電界効果トランジスタのゲート絶縁膜の厚さが、他の少なくとも一部の絶縁ゲート形電界効果トランジスタの厚さと異なる構成による固体撮像装置の製造方法であって、アンプMOSトランジスタ、リセットMOSトランジスタ、垂直選択用MOSトランジスタを有する固体撮像装置の製造方法。」

〈相違点〉
相違点1
本願補正発明では、ゲート絶縁膜の形成工程が、「半導体基板表面に、最終的に第1の厚さのゲート絶縁膜を形成する第1の開口と、上記第1の厚さに比し小なる第2の厚さのゲート絶縁膜を形成する第2の開口とが形成されたゲート絶縁膜形成の為の、分離絶縁層を兼ねる第1のマスク層を形成する工程と、上記第1および第2の開口に上記第1の厚さに比して小なる厚さの第1の絶縁層を形成する工程と、上記第1の開口内の上記第1の絶縁層を覆い、上記第2の開口内の上記第1の絶縁層を露呈させる為に、第2の開口よりは大に、また第1の開口に到ることがない程度に裕度が大きい位置合わせにより開口を有する第2のマスク層を形成する工程と、上記第2のマスク層の開口を通じて上記第1の絶縁層を除去する工程と、上記第2のマスク層を除去して上記第1のマスク層の上記第1および第2の開口を通じて上記第2の厚さの第2の絶縁層を形成する工程」とを有するのに対し、引用発明では、ゲート絶縁膜の形成工程について特定されていない点。

相違点2
本願補正発明では、「第1及び第2の絶縁層の重複形成部からなる第1の厚さのゲート絶縁膜上に、読み出しMOSトランジスタのゲート電極を形成する工程」と、「上記第2の開口に形成された第2の厚さのゲート絶縁膜上に、アンプMOSトランジスタ、リセットMOSトランジスタ、又は、アンプMOSトランジスタ、リセットMOSトランジスタ、垂直選択用MOSトランジスタの各ゲート電極を形成する工程」とを有するのに対し、引用発明では、各ゲート電極を形成する工程について特定されていない点。

(4)相違点1及び2についての検討
ア 引用例1の段落【0013】の「本実施形態のCMOS固体撮像装置では、読み出しトランジスタ12の転送ゲート12aへ印加する電圧(VTx)が、それ以外の周辺トランジスタへ印加する電圧(VG)より高くなっている点に特徴がある。」との記載から、引用発明のCMOS固体撮像装置の製造方法において、読み出しトランジスタ12は高圧系トランジスタ、それ以外の周辺トランジスタは低圧系トランジスタであることが分かる。
そして、引用発明において、「読み出しトランジスタ12の転送ゲート12aのゲート絶縁膜の膜厚>周辺回路領域のロジックトランジスタ21におけるゲート絶縁膜の膜厚」の関係を有している。
イ そして、引用例2の段落【0003】の「Aは厚膜ゲート絶縁膜を有する高圧系トランジスタ形成領域、Bは薄膜ゲート絶縁膜を有する低圧系トランジスタ形成領域を示す。」との記載から、高圧系トランジスタと低圧系トランジスタを有し、ゲート絶縁膜の膜厚が異なるものであることが分かる。
ウ そうすると、引用発明と引用例2に記載された技術は、高圧系トランジスタと低圧系トランジスタとを有する複数の絶縁ゲート形電界効果トランジスタ半導体装置の製造方法であって、複数の絶縁ゲート形電界効果トランジスタの一部の絶縁ゲート形電界効果トランジスタのゲート絶縁膜の厚さが、他の少なくとも一部の絶縁ゲート形電界効果トランジスタの厚さと異なる構成とするという共通の技術課題を有する。
エ したがって、引用発明のCMOS固体撮像装置の製造方法において、高圧系及び低圧系トランジスタの厚さの異なるゲート絶縁膜の具体的な形成方法として、引用例2に記載の技術を適用することは、当業者が容易に想到し得たものといえる。そして、その際に、レジスト605を「第2の開口よりは大に、また第1の開口に到ることがない程度に裕度が大きい位置合わせにより開口を有する」ものとすることは、当業者が必要(例えば、マスク合わせの余裕をとる等)に応じて適宜なし得る技術的な設計事項である。
オ そして、これにより、相違点1及び相違点2の構成が得られることは明らかである。

(5)小括
したがって、上記各相違点は、いずれも引用発明に引用例2に記載の技術を適用することにより、当業者が容易に想到し得たものである。

(6)独立特許要件についてのまとめと補正却下の結び
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明及び引用例2に記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するので、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明

1 以上のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成19年12月25日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載の次のとおりのものである。

「【請求項1】
単位画素が、少なくとも光電変換素子と、複数の絶縁ゲート形電界効果トランジスタを有し、上記複数の絶縁ゲート形電界効果トランジスタの一部の絶縁ゲート形電界効果トランジスタのゲート絶縁膜の厚さが、他の少なくとも一部の絶縁ゲート形電界効果トランジスタの厚さと異なる構成による固体撮像装置の製造方法であって、
そのゲート絶縁膜の形成工程が、
半導体基板表面に、最終的に第1の厚さのゲート絶縁膜を形成する第1の開口と、上記第1の厚さに比し小なる第2の厚さのゲート絶縁膜を形成する第2の開口とが形成されたゲート絶縁膜形成の為の、分離絶縁層を兼ねる第1のマスク層を形成する工程と、
上記第1および第2の開口に上記第1の厚さに比して小なる厚さの第1の
絶縁層を形成する工程と、
上記第1の開口内の上記第1の絶縁層を覆い、上記第2の開口内の上記第1の絶縁層を露呈させる開口を有する第2のマスク層を形成する工程と、
上記第2のマスク層の開口を通じて上記第1の絶縁層を除去する工程と、
上記第2のマスク層を除去して上記第1のマスク層の上記第1および第2の開口を通じて上記第2の厚さの第2の絶縁層を形成する工程とを有し、
上記第1の開口に形成された、上記第1及び第2の絶縁層の重複形成部からなる第1の厚さのゲート絶縁膜上に、読み出しMOSトランジスタのゲート電極を形成する工程と、
上記第2の開口に形成された第2の厚さのゲート絶縁膜上に、アンプMOSトランジスタ、リセットMOSトランジスタ、又は、アンプMOSトランジスタ、リセットMOSトランジスタ、垂直選択用MOSトランジスタの各ゲート電極を形成する工程と、
を有する固体撮像装置の製造方法。」

2 引用例の記載と引用発明
引用例の記載と引用発明については、前記第2の3(2)で認定したとおりである。

3 対比・判断
前記第2の1及び2で検討したように、本願補正発明は、補正前の請求項1の規定をより技術的に限定するものである。したがって、逆に言えば、本願発明(補正前の請求項1に係る発明)は、本願補正発明から、このような限定をなくしたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、これより限定したものである本願補正発明が、前記第2の3で検討したとおり、引用発明、引用例2に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明することができたということができる。

第4 結言

以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例2に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-04-13 
結審通知日 2011-04-19 
審決日 2011-05-10 
出願番号 特願2005-65987(P2005-65987)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 恩田 春香  
特許庁審判長 相田 義明
特許庁審判官 近藤 幸浩
松田 成正

発明の名称 固体撮像装置の製造方法  
代理人 角田 芳末  
代理人 伊藤 仁恭  

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