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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1239121 |
審判番号 | 不服2010-6148 |
総通号数 | 140 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-08-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-03-23 |
確定日 | 2011-06-23 |
事件の表示 | 平成10年特許願第262860号「太陽電池のカバーフィルムおよびその製造方法、およびそのカバーフィルムを用いた太陽電池モジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 3月31日出願公開、特開2000- 91610〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成10年9月17日の特許出願であって、平成20年11月19日付けで拒絶理由通知がなされ、平成21年1月21日に手続補正がなされたが、同年12月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成22年3月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものであり、その請求項に係る発明は、平成21年1月21日に補正された本願明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「【請求項1】太陽電池用のフロントカバーフィルムおよびバックカバーフィルムの各々に、熱可塑性樹脂を主成分とする太陽電池用充填材層が積層されており、前記フロントカバーフィルムが、多層積層フィルムからなり、当該フロントカバーフィルムを構成する多層積層フィルムが、少なくともフッ素樹脂フィルムまたは耐候性フィルムのいずれか一方と、バリヤー層としての無機酸化物の蒸着層、または無機酸化物の蒸着層とその上に積層された無機有機のハイブリッドコート層との複合層のいずれか一方とを含み、かつ前記バックカバーフィルムが、多層積層フィルムからなり、当該バックカバーフィルムを構成する多層積層フィルムが、少なくともバリヤー層としての無機酸化物の蒸着層、もしくは無機酸化物の蒸着層とその上に積層された無機有機のハイブリッドコート層との複合層のいずれかと、光反射性を有する樹脂フィルムとを含む積層フィルム、または、少なくとも金属箔層もしくは金属蒸着層と、樹脂フィルムとを含む積層フィルムのいずれかで形成されており、かつ前記フロントカバーフィルムの厚さが、10μm?70μmであり、前記太陽電池用充填材層の厚さが、50μm?500μmであることを特徴とする太陽電池のカバーフィルム。」 2.引用例 これに対して、原査定の拒絶理由に引用された、本願出願前の平成10年1月27日に頒布された特開平10-25357号公報(以下「引用例」という。)には、図とともに次の記載がある。 ア 「【0007】 【発明の実施の形態】図1は本発明の透明複合フィルムの材質構成例を示す断面図、図2は本発明の透明複合フィルムの使用例(接着層及び防湿薄膜層等の記載を省略)を示す断面図である。本発明は、耐候性フィルムとバリア性フィルムおよび接着性フィルムを積層した透明複合フィルムである。」 イ 「【0015】太陽電池モジュールの製造において、従来は太陽電池素子と表面保護シートとの間に充填剤を介在させていたが、本発明における透明複合フィルムSPは、図2に示すように前記接着性フィルムは太陽電池素子に直接密着し、従来の充填材の機能をも発揮するものである。但し、太陽電池素子の厚み等の要因より、別に充填材を用いることも可能であり、接着性フィルムとして、充填材との接着性のよいものを選択し層構成として設計すればよい。 【0016】本発明による透明複合フィルムSPを太陽電池モジュールに使用する場合において、前記太陽電池モジュールの裏面フィルムBFとしては特に限定しない。裏面フィルムBFとして防湿性が必要なことは、前記表面フィルムと同じであり、本発明の透明複合フィルムSPと同一の積層体を裏面フィルムBFとして用いることは可能である。ただし、太陽電池のエネルギー変換の効率面から、裏面フィルムBFとして用いる際には前記積層体を構成する層の少なくとも一層は二酸化チタン等により白色に着色し、入射した太陽光の反射光を太陽電池素子に照射させるようにする。また、裏面の耐候性フィルム9としては、従来技術による材料、例えば、ポリフッ化ビニルのフィルム間にアルミ箔をサンドラミした構成などを使用することができる。本発明においては、裏面フィルムBFの材質を限定しない。」 ウ 「【0020】 【実施例】 (実施例1)耐候性フィルム2として、ポリフッ化ビニルフィルム、テドラーTUT10BG3、25μm、紫外線吸収剤入り(デュポン株式会社製 商品名)を用意し、基材フィルム1は、ルミラー(東レ社製 商品名)ポリエチレンテレフタレートフィルム12μmにPCVD法により SiO_(x) を200 Åの厚さに形成した。接着性フィルム3としては、別にTダイ法により製膜したEVA フィルム 紫外線吸収剤入り、片面コロナ放電処理、100 μm酢酸ビニル含有量25重量%を用意した。前記耐候性フィルム2とバリアフィルムの防湿薄膜層4、次いで、基材フィルムの前記非蒸着面と前記接着性フィルム3のコロナ処理面とを、順次ポリウレタン系の2液型接着剤によりドライラミネートした。ドライラミネート条件は、接着剤は、AD-76P1 、硬化剤CAT-10(東洋モートン社製、商品名)を100 部:6.5部の割合で用い、塗布量は固形分で5g/m^(2) 、塗布フィルムは、第一のラミネートでは、テドラー、第二のラミネートにおいては、 SiO_(x) の非蒸着面である。得られた透明複合フィルムSPの90℃、90%RHでの水蒸気透過度は50g/m^(2)であり、400 ?1100nmの範囲の光の透過率が91%であった。この透明複合フィルムSPを太陽電池モジュールの表面保護フィルムとして被覆した(150℃、5kg/cm^(2))。そして 40℃ 1.5 hrs →90℃ 1.5 hrs 1200回 ( 昇降時間 1.5hrs) 照度(320W/m^(2))のキセノンランプによる照射 50hrs 連続 1hrs 非照射のサイクル 20 回 ( 温度65℃、湿度50%RH)のヒートサイクル過酷試験、カーボンアーク灯による照射試験の結果、性能の電力低下は観察されなかった。」 エ 「【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の透明複合フィルムの材質構成を示す断面図 【図2】本発明の透明複合フィルムの使用例を示す(接着層および防湿薄膜層を省略して示す)断面図 【符号の説明】 SP 透明複合フィルム BF 裏面フィルム 1 防湿用基材フィルム 2 耐候性フィルム 3 接着性フィルムT 4 防湿薄膜層 5,6 接着層 7 接着性フィルムB 8 防湿フィルム 9 耐候性フィルム B 太陽電池 L リード線」 上記ウの記載によれば、引用例には、 厚さが25μmのポリフッ化ビニルフィルムでなる耐候性フィルム2と、厚さが12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムでなる基材フィルム1と、PCVD法により形成された厚さが200 ÅのSiO_(x) でなる防湿薄膜層4と、厚さが100μmのEVAフィルムでなる接着性フィルム3を順に積層した透明複合フィルムSP及びこの透明複合フィルムSPを太陽電池モジュールの表面保護フィルムとすることが記載されているものと認められる。 また、上記イの段落【0016】には、この透明複合フィルムSPと同一の積層体を太陽電池モジュールの裏面フィルムBFとして使用することが記載され、さらに、裏面フィルムBFとして用いる際には、前記積層体を構成する層の少なくとも一層は二酸化チタン等により白色に着色し、入射した太陽光の反射光を太陽電池素子に照射させるようにすることが記載されている。 そして、図2を参照すれば、太陽電池モジュールの表面保護フィルムは、耐候性フィルム2、防湿用基材フィルム1及び接着性フィルム3をあわせて、SPとして示され、裏面フィルムBFについては、耐候性フィルムには9の符号が付され、基材フィルムとPCVD法により形成されたSiO_(x) の防湿薄膜層で構成されるバリアフィルムは防湿フィルム8として図示され、また、厚さが100μmのEVAフィルムでなる接着性フィルムには7の符号が付されていることを見てとることができる。 以上のことから、引用例には 「厚さが25μmのポリフッ化ビニルフィルムでなる耐候性フィルム2と、厚さが12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムでなる基材フィルム1と、PCVD法により形成されたSiO_(x) の防湿薄膜層4と、厚さが100μmのEVAフィルムでなる接着性フィルム3を順に積層した透明複合フィルムSPである太陽電池モジュールの表面保護フィルム、及び、耐候性フィルム9と、基材フィルムとPCVD法により形成されたSiO_(x) の防湿薄膜層で構成される防湿フィルム8と、厚さが100μmのEVAフィルムでなる接着性フィルム7を順に積層した太陽電池モジュールの裏面フィルムBFであって、前記裏面フィルムBFを構成する層の少なくとも一層は二酸化チタン等により白色に着色され、入射した太陽光の反射光を太陽電池素子に照射させるようになっている、太陽電池モジュールの表面保護フィルム及び裏面フィルム。」(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 3.対比・判断 本願発明と引用発明を対比する。 (1)引用発明の「ポリフッ化ビニルフィルム」は、本願発明の「フッ素樹脂フィルム」に相当する。 (2)引用発明の「PCVD法により形成されたSiO_(x) の防湿薄膜層」は、本願発明の「バリヤー層としての無機酸化物の蒸着層」に相当する。 (3)引用発明の「厚さが100μmのEVAフィルムでなる接着性フィルム」は、本願発明の「熱可塑性樹脂を主成分とする太陽電池用充填材層」に相当し、本願発明の「太陽電池用充填材層の厚さが、50μm?500μmである」との事項を充足する。 (4)引用発明において、「裏面フィルムBFを構成する層の少なくとも一層は二酸化チタン等により白色に着色され、入射した太陽光の反射光を太陽電池素子に照射させるようになっている」から、引用発明の「裏面フィルムBFを構成する層」は、「光反射性を有する樹脂フィルム」を含む点で本願発明の「バックカバーフィルム」と一致する。 (5)そして、引用発明の「厚さが25μmのポリフッ化ビニルフィルムでなる耐候性フィルム2と、厚さが12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムでなる基材フィルム1と、PCVD法により形成されたSiO_(x) の防湿薄膜層4」が本願発明の「(多層積層フィルムからなる)フロントカバーフィルム」に相当するところであり、引用発明のこれらの多層積層フィルムの厚さは、25μmと12μmを併せて37μmであり(なお、SiO_(x) の厚さは200 Åであり、無視できるほどに小さい。)、本願発明の「フロントカバーフィルムの厚さが、10μm?70μm」との事項を充足する。 (6)また、引用発明の「耐候性フィルム9と、基材フィルムとPCVD法により形成されたSiO_(x) の防湿薄膜層で構成される防湿フィルム8」は、本願発明の「(多層積層フィルムからなる)バックカバーフィルム」に相当する。 (7)そして、引用発明の「太陽電池モジュールの表面保護フィルム及び裏面フィルム」は、本願発明の「太陽電池のカバーフィルム」に相当する。 (8)以上のことから、引用発明は、本願発明と、 「太陽電池用のフロントカバーフィルムおよびバックカバーフィルムの各々に、熱可塑性樹脂を主成分とする太陽電池用充填材層が積層されており、前記フロントカバーフィルムが、多層積層フィルムからなり、当該フロントカバーフィルムを構成する多層積層フィルムが、少なくともフッ素樹脂フィルムと、バリヤー層としての無機酸化物の蒸着層とを含み、かつ前記バックカバーフィルムが、多層積層フィルムからなり、当該バックカバーフィルムを構成する多層積層フィルムが、少なくともバリヤー層としての無機酸化物の蒸着層と、光反射性を有する樹脂フィルムとを含む積層フィルムで形成されており、かつ前記フロントカバーフィルムの厚さが、10μm?70μmであり、前記太陽電池用充填材層の厚さが、50μm?500μmである太陽電池のカバーフィルム。」 の点で一致し、本願発明と引用発明に格別の相違は認められない。 4.むすび したがって、本願発明は、引用例に記載された発明であると認められ、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するので、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-04-21 |
結審通知日 | 2011-04-26 |
審決日 | 2011-05-09 |
出願番号 | 特願平10-262860 |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉野 三寛 |
特許庁審判長 |
稲積 義登 |
特許庁審判官 |
服部 秀男 杉山 輝和 |
発明の名称 | 太陽電池のカバーフィルムおよびその製造方法、およびそのカバーフィルムを用いた太陽電池モジュール |
代理人 | 金山 聡 |