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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1239129
審判番号 不服2010-8118  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-04-16 
確定日 2011-06-23 
事件の表示 特願2004-158716号「基板処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年1月5日出願公開、特開2006-4955号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成16年5月28日(国内優先権主張平成15年5月30日、平成16年5月19日、平成16年5月19日)の出願であって、平成22年1月13日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年1月19日)、これに対し、同年4月16日に審判請求がなされ、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2.平成22年4月16日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年4月16日付け手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、「基板ホルダで保持した基板を回転させながら、基板の表面に向けて洗浄液と湿度が調整されたドライガスを供給し、同時に基板の裏面に向けて湿度が調整されたドライガスを供給して基板を洗浄し、
基板ホルダで保持した基板を回転させながら、基板の表面に向けて湿度が調整されたドライガスを供給し、同時に基板の裏面に向けて湿度が調整されたドライガスを供給して基板を乾燥させることを特徴とする基板処理方法。」とあったものを「表面を上向きにして基板ホルダで水平に保持した基板を回転させ、基板の表面に向けて洗浄液を供給しながら、基板の上方に配置されて基板の表面の中央部に向けて開口する第1ドライガス供給部から基板の表面に向けて湿度が調整されたドライガスを供給し、同時に基板の下方に配置されて基板の裏面の中央部に向けて開口する第2ドライガス供給部から基板の裏面に向けて湿度が調整されたドライガスを供給して基板を洗浄し、
表面を上向きにして基板ホルダで水平に保持した基板を回転させながら、前記第1ドライガス供給部から基板の表面に向けて湿度が調整されたドライガスを供給し、同時に前記第2ドライガス供給部から基板の裏面に向けて湿度が調整されたドライガスを供給して基板を乾燥させることを特徴とする基板処理方法。」と補正することを含むものである。
上記補正について検討する。
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、「基板ホルダで保持した基板を回転させ」るとあったものを「表面を上向きにして基板ホルダで水平に保持した基板を回転させ」ると限定し、「基板の表面に向けて洗浄液と湿度が調整されたドライガスを供給」するとあったものを「基板の上方に配置されて基板の表面の中央部に向けて開口する第1ドライガス供給部から基板の表面に向けて湿度が調整されたドライガスを供給」すると限定し、「基板の表面に向けて湿度が調整されたドライガスを供給し、同時に基板の裏面に向けて湿度が調整されたドライガスを供給」するとあったものを「前記第1ドライガス供給部から基板の表面に向けて湿度が調整されたドライガスを供給し、同時に前記第2ドライガス供給部から基板の裏面に向けて湿度が調整されたドライガスを供給」すると限定するものであり、かつ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野および解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて検討する。

2.刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由にて提示された、本願の優先権主張の主張の基礎となる出願前に頒布された刊行物である特開2001-319909号公報(以下「刊行物」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審にて付与。)。
a)「【発明の属する技術分野】本発明は、液処理装置及び液処理方法に関する。」(段落【0001】)
b)「【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の方法は、溶剤によるレジスト膜の除去に関する方法であり、除去には化学反応が必要な、金属薄膜の形成されたメッキ処理基板周縁の洗浄には単純には適用できない。また、この方法をメッキ処理基板周縁の洗浄に用いた場合には、噴射された洗浄液や薄膜の溶解物が、基板表面上に飛散し、デバイス作成領域に悪影響を与えるという問題があった。
従って、本発明の目的は、基板の周縁を、デバイスへ悪影響を及ぼすことなく洗浄することのできる基板の液処理装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、半導体基板の周縁を、デバイスへ悪影響を及ぼすことなく洗浄することのできる、メッキ処理装置に適用可能な半導体基板の液処理装置を提供することにある。」(段落【0007】?【0008】)
c)「なお、カセットステーション21及び処理ステーション22には、清浄空気のダウンフローによって内部の雰囲気は清浄に保たれている。
処理ステーション22は、ウェハに一枚ずつメッキ処理を行うメッキ処理ユニット26およびメッキ処理後の洗浄と乾燥を行う洗浄乾燥ユニット27を、それぞれ複数台、所定の位置に備える。」(段落【0025】?【0026】)
d)「図5に示すように、裏面洗浄ノズル409は、第2シャフト408に固定された部分を中心として4本の棒状体が十字状に回転テーブル406の周縁まで伸びた構造を有する。棒状体の内部は中空であり、第2シャフト408の内部を通る管410と連通している。この管410を通って洗浄液が、裏面洗浄ノズル409の棒状体の上方に開いた穴51から上方に供給される。
さらに、第1シャフト407と第2シャフト408の間の空間にはガス流路411が形成されており、不活性ガス、例えば窒素ガスが吹き出されるようになっている。吹き出された不活性ガスは、回転テーブル406の表面に沿って回転テーブル406の周縁部へと流れる。したがって、この回転テーブル406は、ガス拡散板としての機能も併せ持っている。
この不活性ガスは、回転処理中、即ちウェハWに対して洗浄処理を行っている間は、回転テーブル406の下面中心から外方へと吹き出され、回転テーブル406周縁部、即ちウェハWの周縁部から外方へと排気されているので、ウェハWの裏面へのパーティクル等の侵入を防止することができる。したがって、ウェハWの裏面の汚染を防止することができる。カップ402と回転駆動体404の間の空間には、排気口412が設けられ、排気及び洗浄液等の廃液を含んだ排気が流れる。
回転テーブル406には、3つの保持部材52が支持部材53により回転テーブル406の周縁部にそれぞれ120度の角度で等間隔に取り付けられている(図5)。図6に示すように、この保持部材52は、上側の保持部54と下側の付勢部55とが一体となった構成を有している。保持部54には上端に段差が形成され、この段差によりウェハWを保持する。保持部54は支持部材53の上端部に設定された回動支点56で支持部材53と結合されている。保持部材52はこの回動支点56を中心として回動可能である。付勢部55の重量は保持部54よりも大きく設定されており、これにより、付勢部55は保持部材52の重錘として働く。
回転駆動体404によりウェハWは高速で回転するので、ウェハWを安定して保持する必要がある。このため、保持部材52はウェハWを保持部54の段差だけでなく、付勢部55による付勢によってウェハWの周縁部を保持する構造となっている。
すなわち、ウェハWは回転していない状態で保持部材52に戴置され、その保持部54に保持される。そして、回転テーブル406が回転すると、付勢部55に作用する遠心力によって、付勢部55はさらに外方へと移動しようとし、その結果、保持部材52の保持部54側は回転テーブル406の中心側へと押され、さらにウェハWは強固に保持されることになる。また、保持部材52の保持部54は、図に示すように、前面から見た場合凸状に形成されていて、ウェハWを保持部54の段差で、点接触により保持している。
回転テーブル406の上方には、主洗浄ノズル414とエッジ洗浄ノズル415が備えられている。主洗浄ノズル414は、第1洗浄液槽419につながっており、第1洗浄液槽に貯蔵された純水を所定の供給速度でノズル先から吐出する。また、主洗浄ノズル414は、回転テーブル406にウェハWが戴置された場合に、そのノズル先端がウェハWの中心部に来るように備えられ、第2搬送機構29によるウェハWの搬送を妨げないように可動な構成となっている。
エッジ洗浄ノズル415は、第2洗浄液槽420につながっており、第2洗浄液槽420に貯蔵された洗浄液を所定の供給速度でノズル先端から噴出する。ここで、第2洗浄液槽420に貯蔵された洗浄液は、フッ酸、塩酸、硫酸等の無機酸または有機酸等の酸系薬液と過酸化水素水(H_(2)O_(2))の混合液、例えば、希フッ酸とH_(2)O_(2)の混合液である。この実施形態では、フッ酸:H_(2)O_(2):H_(2)O=1:1:23の混合液を用いる。
図7に示すように、ウェハW周縁の表面上にはCuシード層L1およびその上にメッキ処理により形成されたCu層L2が存在する。エッジ洗浄ノズル415は、主洗浄ノズル414からウェハW表面上に純水が供給されている状態で、このウェハW周縁に洗浄液を噴射してウェハW周縁の洗浄(エッチング)を行う。
エッジ洗浄ノズル415は、主洗浄ノズルと同様に可動である。本実施形態では、エッジ洗浄ノズル415は、ウェハWのエッジから2cm、ウェハWの上方1cmに配置される。また、エッジ洗浄ノズル415は、ウェハW平面に対して鋭角、例えば、30°の角度で備えられ、かつ、ウェハW平面上で、ウェハWの半径方向に対して0?90°、例えば、45°で備えられている。
エッジ洗浄ノズル415を上記配置とすることにより、ウェハW表面のデバイス作成領域への洗浄液や薄膜の溶解物の飛散を抑えながら、ウェハW周縁に所望の洗浄幅、例えば、2mm前後の洗浄幅を得ることができる。」(段落【0039】?【0049】)
e)「回転テーブル406の回転数が所定の回転数(200?300rpm)に達した後、ウェハWの裏面及び周縁の洗浄が行われる。ウェハW裏面及び周縁の洗浄では、まず、主洗浄ノズル414から純水が供給される。続いて、ウェハW表面上に純水が十分に供給された状態に達した後、エッジ洗浄ノズル415から洗浄液が供給される。周縁の洗浄は所定時間(約30秒)行われ、エッジ洗浄ノズル415からの洗浄液の供給が止まった後に、主洗浄ノズル414からの純水の供給が止まり終了する。」(段落【0052】)
f)「ウェハW裏面及び周縁の洗浄の後、同じ回転数としたまま、ウェハWの両面の純水による洗浄が行われる。ウェハWの純水洗浄は、ウェハW上方の主洗浄ノズル414、及び、下方の裏面洗浄ノズル409の穴51から純水が供給されて、所定時間(約40秒)行われる。
ウェハW裏面の洗浄後、ウェハWのスピン乾燥が行われる。このスピン乾燥では、回転テーブル406の回転数は所定の回転数(2000?3000rpm)まで上げられ、同時に、ウェハW上方の主洗浄ノズル414及び下方の裏面洗浄ノズル409の穴51からN2が供給されて、所定時間(約10秒)行われる。このとき、カップ402は下降位置にあり、第2搬送機構29によるウェハWの搬送を妨げないようしている。」(段落【0055】?【0056】)
g)上記dの記載事項及び【図4】、【図6】、【図7】の図示内容によれば、保持部材52に、周縁にCuシード層L1およびその上にメッキ処理により形成されたCu層L2が存在するウェハW表面を上向きにして保持することが示されている。

上記a?fの記載事項、上記gの認定事項及び図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物には、次の発明が記載されていると認められる。
「保持部材52に、周縁にCuシード層L1およびその上にメッキ処理により形成されたCu層L2が存在するウェハW表面を上向きにし、回転テーブル406に取り付けられている保持部材52にウェハWを保持し、回転テーブル406の回転数が所定の回転数(200?300rpm)に達した後、さらに、ウェハW表面上に主洗浄ノズル414から純水が十分に供給された状態に達した後、エッジ洗浄ノズル415から洗浄液が供給されるウェハWの洗浄処理が行われ、ウェハWに対して洗浄処理を行っている間は、ガス流路411からN_(2)が、回転テーブル406の下面中心から外方へと吹き出され、
スピン乾燥では、ウェハW上方の主洗浄ノズル414及び下方の裏面洗浄ノズル409の穴51からN_(2)が供給され、
処理ステーション22には、清浄空気のダウンフローによって内部の雰囲気は清浄に保たれている液処理方法。」

3.対比
本件補正発明と刊行物に記載された発明とを対比する。
刊行物に記載された発明の「保持部材52に、周縁にCuシード層L1およびその上にメッキ処理により形成されたCu層L2が存在するウェハW表面を上向きにし、回転テーブル406に取り付けられている保持部材52にウェハWを保持し、回転テーブル406の回転数が所定の回転数(200?300rpm)に達」することは、その構成および機能からみて、本件補正発明の「表面を上向きにして基板ホルダで水平に保持した基板を回転させ」ることに相当し、同様に、
「液処理方法」は「基板処理方法」に、
相当する。
また、刊行物に記載された発明の「ウェハW表面上に主洗浄ノズル414から純水が十分に供給された状態に達した後、エッジ洗浄ノズル415から洗浄液が供給されるウェハWの洗浄処理が行われ、ウェハWに対して洗浄処理を行っている間は、ガス流路411からN_(2)が、回転テーブル406の下面中心から外方へと吹き出され」ることと本件補正発明の「基板の表面に向けて洗浄液を供給しながら、基板の上方に配置されて基板の表面の中央部に向けて開口する第1ドライガス供給部から基板の表面に向けて湿度が調整されたドライガスを供給し、同時に基板の下方に配置されて基板の裏面の中央部に向けて開口する第2ドライガス供給部から基板の裏面に向けて湿度が調整されたドライガスを供給して基板を洗浄」することとは、「基板の表面に向けて洗浄液を供給し、同時に基板の下方に配置されて基板の裏面の中央部に向けて開口する第2ガス供給部から基板の裏面に向けてガスを供給して基板を洗浄」することで共通し、同様に、
「スピン乾燥では、ウェハW上方の主洗浄ノズル414及び下方の裏面洗浄ノズル409の穴51からN_(2)が供給され」ることと「表面を上向きにして基板ホルダで水平に保持した基板を回転させながら、第1ドライガス供給部から基板の表面に向けて湿度が調整されたドライガスを供給し、同時に第2ドライガス供給部から基板の裏面に向けて湿度が調整されたドライガスを供給して基板を乾燥させる」こととは、「表面を上向きにして基板ホルダで水平に保持した基板を回転させながら、第1ガス供給部から基板の表面に向けてガスを供給し、同時に第2ガス供給部から基板の裏面に向けてガスを供給して基板を乾燥させる」ことで共通する。

したがって、上記両者の一致点および相違点は、次のとおりと認められる。
[一致点]
「表面を上向きにして基板ホルダで水平に保持した基板を回転させ、基板の表面に向けて洗浄液を供給し、同時に基板の下方に配置されて基板の裏面の中央部に向けて開口する第2ガス供給部から基板の裏面に向けてガスを供給して基板を洗浄し、
表面を上向きにして基板ホルダで水平に保持した基板を回転させながら、第1ガス供給部から基板の表面に向けてガスを供給し、同時に前記第2ガス供給部から基板の裏面に向けてガスを供給して基板を乾燥させる基板処理方法。」

[相違点1]
第1及び第2ガス供給部から供給されるガスが、本件補正発明では、湿度が調整されたドライガスであるのに対して、刊行物に記載された発明では、N_(2)である点。

[相違点2]
基板の表面に向けて洗浄液を供給し、同時に基板の下方に配置されて基板の裏面の中央部に向けて開口する第2ガス供給部から基板の裏面に向けてガスを供給しての基板の洗浄が、本件補正発明では、「基板の表面に向けて洗浄液を供給しながら、基板の上方に配置されて基板の表面の中央部に向けて開口する第1ドライガス供給部から基板の表面に向けて湿度が調整されたドライガスを供給」するものであるのに対して、刊行物に記載された発明では、「ウェハW表面上に主洗浄ノズル414から純水が十分に供給された状態に達した後、エッジ洗浄ノズル415から洗浄液が供給されるウェハWの洗浄処理が行われ(る)」点。

4.当審の判断
上記相違点1及び2について検討する。
基板洗浄処理の技術分野において、ウォーターマークの発生や、パーティクルの発生を防止するために、基板の中央表面部を含む表面に向けて洗浄液と、クリーンルーム内へダウンフローされる清浄空気や不活性ガスとを上方から同時に供給することは、本願の優先権主張時に周知の技術事項である(例えば、特開平11-283948号公報の段落【0004】、【0018】、【0024】及び【0036】には、ウエハWの表面への処理液の供給処理中に、クリーンルーム内へダウンフローされる清浄な空気を処理チャンバ5内に取り込み、基板の中央部を含む全面に向けて供給し、処理中のウエハWの雰囲気を効率的に置換し、ウエハWに対する処理を清浄な雰囲気中で良好に行うことにより、スピンチャック周辺の空間に生じている処理液ミストがすみやかにウエハよりも下方の空間に導かれ、ウエハへの処理液ミストの再付着に起因するパーティクルの発生を抑制することが記載され、また、特開平10-41261号公報には、「薬液による洗浄処理が終了すると、次に、洗浄液噴射ノズル12から純水が噴射され、基板W表面の純水洗浄処理が行われる。このときに、洗浄中の純水に空気中の酸素が溶込み、基板Wの表面にコロイダルシリカ(不揮発性ケイ酸塩)や自然酸化膜が生成されやすい。これを防ぐ目的で、純水洗浄処理中は、ガス供給ノズル13から基板Wに向かって不活性ガスが噴射され、基板Wの表面付近は不活性ガス雰囲気で満たされる。」(段落【0006】)こと、「表面洗浄処理が終了すると、次に、純水洗浄処理が行われる。この純水洗浄処理においては、純水が供給されるのに先立って、ガス噴射口23から基板Wの中心部に向かって不活性ガスである窒素が噴射され、基板Wと遮蔽板22との間の空間が窒素で満たされ、やがて図1に示すような気流Fが生じる。そして、基板Wと遮蔽板22との間の空間に窒素が噴射されつつ、基板Wを回転させながら噴射ノズル25から純水を基板Wの回転中心近傍に噴射して、基板W表面の汚染物質を除去する。」(段落【0037】)こと、「また、乾燥処理中も常に、基板Wと遮蔽板22との間の空間が窒素で満たされているため、基板Wの表面に付着した水滴に酸素が溶込んでコロイダルシリカを生成することがなくなり、ウォーターマークの発生を防止することができる。」(段落【0042】)ことが記載されている。以下「周知の技術事項1」という。)
さらに、基板処理の技術分野において、クリーンルーム内へダウンフローされる清浄な空気の湿度を調整し、清浄な空気を乾燥状態で供給することは、本願の優先権主張時周知の技術事項である(例えば、特開2002-110535号公報の段落【0066】、【0083】や、特開2000-304322号公報の段落【0001】、【0011】を参照。以下「周知の技術事項2」という。)。
これらのことから、刊行物に記載された発明において、ウォーターマークの発生や、パーティクルの発生を防止するために、上記周知の技術事項1に倣って、ウェハWの表面の洗浄処理を行うと同時に、処理ステーション22内部へダウンフローされる清浄空気をウェハWの表面の中央部に向けて上方から供給するとともに、清浄空気を上記周知の技術事項2に倣って、ウェハWへ供給されるガスを湿度の調整された乾燥状態の清浄空気とすることも、当業者が容易になし得たものである。
そして、上記適用に際して、洗浄処理時に加えて、スピン乾燥時にも、主洗浄ノズル414からN_(2)をウェハW上方へ供給することに換えて、処理ステーション22内部へダウンフローされる乾燥状態の清浄空気をウェハW上方へ供給する程度のことは、当業者が適宜なし得たものである。
また、本件補正発明の奏する効果についてみても、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項から当業者が予測できた範囲内のものである。
したがって、本件補正発明は、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
ゆえに、本件補正発明は、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.まとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成22年4月16日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成21年8月31日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「基板ホルダで保持した基板を回転させながら、基板の表面に向けて洗浄液と湿度が調整されたドライガスを供給し、同時に基板の裏面に向けて湿度が調整されたドライガスを供給して基板を洗浄し、
基板ホルダで保持した基板を回転させながら、基板の表面に向けて湿度が調整されたドライガスを供給し、同時に基板の裏面に向けて湿度が調整されたドライガスを供給して基板を乾燥させることを特徴とする基板処理方法。」

2.刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由にて提示された刊行物の記載事項及び刊行物に記載された発明及び刊行物に記載された技術事項は、前記「第2.[理由]2.刊行物に記載された発明」に記載したとおりである。

3.対比および判断
本願発明は、前記「第2.[理由]1.本件補正発明」において検討した本件補正発明について、「表面を上向きにして基板ホルダで水平に保持した基板を回転させ」ることとあったものを「基板ホルダで保持した基板を回転させ」ることとその限定を省き、「基板の上方に配置されて基板の表面の中央部に向けて開口する第1ドライガス供給部から基板の表面に向けて湿度が調整されたドライガスを供給」することとあったものを「基板の表面に向けて洗浄液と湿度が調整されたドライガスを供給」することとその限定を省き、「同時に前記第2ドライガス供給部から基板の裏面に向けて湿度が調整されたドライガスを供給」することとあったものを「同時に基板の裏面に向けて湿度が調整されたドライガスを供給」することとその限定を省くものである。
そうすると、本願発明の構成要件の全てを含む本件補正発明が前記「第2.[理由]3.対比および4.当審の判断」に記載したとおり、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-04-20 
結審通知日 2011-04-26 
審決日 2011-05-10 
出願番号 特願2004-158716(P2004-158716)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長谷井 雅昭  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 長崎 洋一
松下 聡
発明の名称 基板処理方法  
代理人 渡邉 勇  
代理人 廣澤 哲也  
代理人 小杉 良二  

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