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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F02B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02B 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 F02B 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 F02B |
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管理番号 | 1239308 |
審判番号 | 不服2010-1447 |
総通号数 | 140 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-08-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-01-22 |
確定日 | 2011-06-30 |
事件の表示 | 特願2005-261338「内燃機関の吸気ポート構造」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 3月22日出願公開、特開2007- 71163〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
[1]手続の経緯 本件出願は、平成17年9月8日の出願であって、平成21年7月14日付けの拒絶理由通知に対して同年9月21日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年10月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年1月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同時に同日付けで明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正がなされ、その後、当審において同年6月15日付けで書面による審尋がなされ、これに対し、同年8月4日付けで回答書が提出されたものである。 [2]平成22年1月22日付けの手続補正についての補正却下の決定 〔補正却下の決定の結論〕 平成22年1月22日付けの手続補正を却下する。 〔理由1〕 1.本件補正の内容 平成22年1月22日付けの手続補正書による手続補正(以下、単に「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成21年9月21日付けの手続補正書により補正された)特許請求の範囲の下記のa)に示す請求項1ないし8を、下記のb)に示す請求項1及び2と補正するものである。 a)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし8 「 【請求項1】 吸気ポートの下側の壁面近傍に介装した弁軸と、該弁軸に一端部を軸支される気流制御弁とを有する内燃機関の吸気ポート構造であって、 全開時に前記気流制御弁の下面と、前記吸気ポートの下側の壁面との間に間隙が形成されることを特徴とする内燃機関の吸気ポート構造。 【請求項2】 吸気ポートの下側の壁面近傍に介装した弁軸と、該弁軸に軸支され、半開時に該弁軸と前記吸気ポートの壁面との間の一方に流路を形成する気流制御弁とを有する内燃機関の吸気ポート構造であって、 前記気流制御弁の開弁状態によって、前記気流制御弁と前記吸気ポートの下側の壁面との間に間隙が形成されることを特徴とする内燃機関の吸気ポート構造。 【請求項3】 前記間隙が、前記気流制御弁の開度が所定の開度以上の場合に形成され、所定の開度よりも小さい場合に遮蔽されることを特徴とする請求項2記載の内燃機関の吸気ポート構造。 【請求項4】 前記間隙が、前記気流制御弁の開度が所定の開度以上の場合に遮蔽され、所定の開度よりも小さい場合に形成されることを特徴とする請求項2記載の内燃機関の吸気ポート構造。 【請求項5】 前記間隙が、前記気流制御弁の開度が所定の範囲内にある場合に形成されることを特徴とする請求項2記載の内燃機関の吸気ポート構造。 【請求項6】 前記間隙が形成される際に、吸気流の流れ方向において上流側に位置する前記気流制御弁の端部の形状が、前記間隙入口を拡大して吸気を案内する形状に形成されていることを特徴とする請求項2から5いずれか1項記載の内燃機関の吸気ポート構造。 【請求項7】 前記間隙が形成される前記吸気ポートの下側の壁面の、前記弁軸よりも燃焼室側に、 前記間隙を通過した吸気を、前記吸気ポートの上側の壁面の方向へ案内する気流案内部を設けることを特徴とする請求項1または4記載の内燃機関の吸気ポート構造。 【請求項8】 前記間隙は、前記吸気ポートの下側の壁面に生成するデポジットを除去する吸気流が生成するように形成されることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の内燃機関の吸気ポート構造。」 b)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1及び2 「 【請求項1】 吸気ポートの下側の壁面近傍に介装した弁軸と、該弁軸に一端部を軸支される気流制御弁とを有する内燃機関の吸気ポート構造であって、 前記気流制御弁の開弁状態に関わらず、前記気流制御弁の下面と、前記吸気ポートの下側の壁面との間に間隙が形成されることを特徴とする内燃機関の吸気ポート構造。 【請求項2】 前記間隙は、前記吸気ポートの下側の壁面に生成するデポジットを除去する吸気流が生成するように形成されることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の吸気ポート構造。」(下線は請求人が補正箇所を示すために付した。) 2.本件補正の適否についての判断 本件補正によって、特許請求の範囲に関して、本件補正前の請求項2ないし7を削除した上で、本件補正後の請求項1については、本件補正前の請求項1における「全開時に」を「前記気流制御弁の開弁状態に関わらず、」とする補正がなされた。 そこで、本件補正の内容について検討するに、本件補正後の請求項1における「前記気流制御弁の開弁状態に関わらず、」は、本件補正前の請求項1における「全開時」のみならず他の開弁状態をも含んだいかなる開弁状態においても、あるいは、本件補正前の請求項1における「全開時」という開弁状態に依存するものから開弁状態に関わらないものとするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものである。 また、本件補正によって、本件補正前の請求項1及び3ないし7を削除した上で、本件補正前の請求項2における「該弁軸に軸支され、半開時に該弁軸と前記吸気ポートの壁面との間の一方に流路を形成する気流制御弁」及び「前記気流制御弁の開弁状態によって、」を、本件補正後の請求項1における「該弁軸に一端部を軸支される気流制御弁」及び「前記気流制御弁の開弁状態に関わらず、」とする補正であるとしても、本件補正前の請求項2における「半開時に該弁軸と前記吸気ポートの壁面との間の一方に流路を形成する」を削除するとともに本件補正前の請求項2における「前記気流制御弁の開弁状態によって、」を「前記気流制御弁の開弁状態に関わらず、」と変更するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものである。 してみると、このような補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものではなく、さらに、誤記の訂正あるいは明りょうでない記載の釈明、請求項の削除を目的とするものではない。 3.むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 〔理由2〕 1.本願補正発明 仮に、上記〔理由1〕で指摘した本件補正が平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとした場合、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、単に「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。 2.刊行物記載の発明 (1)本件出願の出願前に頒布された刊行物である特開2004-44459号公報(以下、「刊行物」という。)には、図面とともに、例えば、次のような事項が記載されている。 ア)「(57)【要約】 【課題】吸気流制御バルブの下流側近傍における燃料の液溜まりを防止し、エンジンの運転状態に応じたタンブル流を発生させることができる内燃機関の吸気装置を提供する。 【解決手段】吸気管2には、吸気流制御バルブ4が設けられており、吸気流制御バルブ4の上部には、空気を通過させる主開口部4Aが形成されており、吸気流制御バルブ4の下端中央部には、主開口部4Aよりも開口面積の小さい副開口部4Bが形成されている。吸気流制御バルブ4を閉じた際、主開口部4Aから流れ込む空気によってタンブル流を生成することができる。また、吸気流路22で巻き戻された空気に含まれる燃料を、副開口部4Bを流れる空気によって下流側に押し戻すことができる。 【選択図】 図3」(【要約】) イ)「【0002】 【従来の技術】 従来、吸気管内に配置された吸気流制御バルブを備え、この吸気流制御バルブを開閉制御することによって燃焼室へ導入する気流を制御する内燃機関の吸気装置が知られている。このような内燃機関の吸気装置においては、燃料の燃焼効率を向上させるために、燃焼室に供給される空気にスワールやタンブルなどの渦流を生じさせている。燃焼室に供給する空気に渦流を生じさせるために、吸気流制御バルブの一部を切り欠いた吸気装置があり、その例として、特開平10-274046号公報に開示されたものがある。この吸気装置は、吸気流動制御弁(吸気流制御バルブ)の一部に第1の開口部を設けることにより、燃焼室に供給される空気にスワール流を生じさせ、燃料の燃焼効率を向上させるというものである。また、吸気流動制御弁に第1開口部よりも小さな第2開口部を設け、下流ポート部に対して補助的な吸気流を生成させている。この補助的な吸気流により、吸気流動制御弁の裏側に生成する渦の成長を抑制し、吸気ポート内に燃料の付着量を少なくしようというものである。」(段落【0002】) ウ)「【0003】 【発明が解決しようとする課題】 しかし、上記従来の公報に開示された吸気装置は、スワール流を生じさせる吸気流動制御バルブに設けられるものであり、タンブル流を生じさせるものに用いるものではなかった。タンブル流を生じさせる吸気装置には、吸気流制御バルブの上方に開口部が形成されているものがあるが、この場合、吸気流制御バルブの近傍に燃料の液溜まりが生じることがある。そのため、余分に燃料を噴射しなければならないという問題があった。それとともに、この液溜まりした燃料が傾斜などの要因によって一気に燃焼室に流れ込むと、図17に示すように、空燃比がずれてしまい、燃料が不完全燃焼を起こして排気エミッションを低下させるという問題もあった。 【0004】 また、エンジンの運転状態に応じて、適正な渦流を供給するにあたり、バルブの開度を調整することで、渦流の大きさを調整している。ところが、調整の対象はスワール流であるので、タンブル流に対する調整を行うことができないものであった。 【0005】 さらに、上記公報に開示された吸気装置では、吸気流動制御弁の回動軸(弁軸)が吸気流路を横切って形成されている。このため、吸気流動制御弁を全開にしたときでも、吸気流路には回動軸があるので、この回動軸が圧力損失の原因となり、空気流入量が減少して機関出力を低下させるという問題もあった。 【0006】 そこで、本発明の課題は、吸気流制御バルブの下流側近傍における燃料の液溜まりを防止するとともに、エンジンの運転状態に応じた渦流(タンブル流)を発生させることができ、さらには、吸気流路における圧力損失を低減した内燃機関の吸気装置を提供することにある。」(段落【0003】ないし【0006】) エ)「【0007】 【課題を解決するための手段】 上記課題を解決した本発明に係る内燃機関の吸気装置は、吸気管に配置された吸気流制御バルブを備え、吸気流制御バルブを開閉制御することによって燃焼室へ導入する気流を制御する内燃機関の吸気装置であって、吸気流制御バルブの上端部に、空気を通過させる主開口部が形成されているとともに、吸気流制御バルブの下端部に、主開口部の開口面積よりも開口面積が小さい副開口部が形成されているものである。 【0008】 本発明に係る内燃機関の吸気装置においては、吸気流制御バルブの上端部に主開口部が形成されており、下端部に副開口部が形成されている。この主開口部を通過して吸気流が生成されることから、吸気装置の下流側に設けられたエンジンのシリンダ室にタンブル流を生成することができる。また、吸気流制御バルブの下流側近傍に燃料が巻き戻されたとしても、副開口部から供給される少量の空気によって、タンブル流を大きく乱すことなく巻き戻された燃料を下流側に押し戻すことができる。こうして、液溜まりを好適に防止し、大量の燃料が燃焼室に一気に流れ込むことによる燃料の不完全燃焼を防止することができる。」(段落【0007】及び【0008】) オ)「【0013】 このとき、吸気流制御バルブの下端部に、開口部の開口面積よりも開口面積が小さい副開口部が形成されている態様とするのが好適である。 【0014】 このような副開口部が形成されていることにより、開口部を通ることによって生じるタンブル流を乱すことなく、吸気流制御バルブの下流側に巻き戻された燃料を押し戻すことができる。こうして、吸気流制御バルブの下流側近傍における液溜まりを好適に防止し、大量の燃料が燃焼室に一気に流れ込むことによる燃料の不完全燃焼を防止することができる。 【0015】 また、回動軸は、吸気流制御バルブにおける上下方向中央位置よりも低い位置に設けられている態様とするのが好適である。 【0016】 このように、回動軸が吸気流制御バルブの上下方向中央位置よりも低い位置に設けられていることにより、上部の開口部の広さを大きく変えたときでも、副開口部の大きさはあまり変わらないようにすることができる。したがって、開口部の開口面積の比率を大きく変えた場合であっても、巻き戻された燃料を好適に押し戻すことができる。 【0017】 さらに、回動軸は、吸気流路から外れた位置に設けられている態様とするのが好適である。 【0018】 回動軸が吸気流路から外れた位置に設けられていることにより、吸気流制御バルブを全開にしたときに、回動軸が吸気流路を遮ることがない。したがって、回動軸の存在に伴う圧力損失をなくすことができる。」(段落【0013】ないし【0018】) カ)「【0028】 図1は、本発明の第1の実施形態に係る内燃機関の吸気装置の概要を示す斜視図、図2はその側断面図である。 【0029】 図1および図2に示すように、内燃機関であるガソリン多気筒エンジン(以下「エンジン」という)1には、吸気管2および排気管3が接続されており、吸気管2には吸気流制御バルブ4が設けられている。吸気管2は、エンジン1に接続される吸気ポート21と、図示しないサージタンクに接続された吸気流路22を備えている。吸気ポート21は、エンジン1におけるシリンダヘッド11に形成されており、吸気流路22は、シリンダヘッド11に接続されるインテークマニホールド5内に形成されている。また、吸気ポート21には、電磁駆動式のインジェクタ(燃料噴射装置)6が設けられており、インジェクタ6には、図示しない燃料タンクから燃料が供給され、インジェクタ6は供給された燃料を吸気ポート21に向けて噴出する。 【0030】 また、エンジン1におけるシリンダ12には、図2の上下方向に往復動するピストン13が設けられている。ピストン13の上方には、シリンダ12とシリンダヘッド11によって区画された燃焼室14が形成されている。この燃焼室14の上部には、図示しない点火プラグが配置されるとともに、燃焼室14は、開閉可能な吸気バルブ15と排気バルブ16を介して、それぞれ吸気管2と排気管3に接続されている。また、図1に示すように、吸気ポート21は二股に分かれており、その一方から空気が流入することによりスワール流が形成される。 【0031】 吸気流制御バルブ4は、吸気管2におけるインテークマニホールド5に形成された吸気流路22に設けられている。この吸気流制御バルブ4には、シャフト7が取り付けられており、シャフト7を中心として回動可能となっている。このシャフト7は、吸気流路22における空気の流路に直交する方向に延在して設けられており、このため、吸気流制御バルブ4は、吸気流路22における空気が流れる方向に直交する軸回りに回動する。」(段落【0028】ないし【0031】) キ)「【0034】 続いて、本実施形態に係るエンジンの吸気装置の動作・作用について、主に図5を参照して説明する。エンジン1が温まっている通常時や、吸入空気量が多い場合など、タンブルを生じさせることが要求されないときには、吸気流制御バルブ4を開いて、燃焼室14に対してタンブル流Tを生じさせないようにして空気を導入する。一方、エンジン1が冷えており、吸入空気量が少ない場合などには、吸気流制御バルブ4を閉じる。すると、吸気流制御バルブ4の上端部に形成された主開口部4Aを空気Aが通過するので、燃焼室14に供給する空気によって燃焼室14にタンブル流Tを生じさせる気流を供給することができる。 【0035】 また、吸気流制御バルブ4を閉じると、吸気ポート21内で空気が巻き戻され、巻き戻し空気ABが生じる。このような巻き戻し空気ABが生じることにより、インジェクタ6から噴射された燃料Fが吸気ポートの上流側に流される。その結果、燃料Fが吸気流制御バルブ4の近傍に溜まって液溜まりとなると、たとえば吸気流制御バルブ4を開いたときなどに燃焼室14に燃料Fが一気に流れ込んでしまうと、燃焼不良の不具合が生じる。 【0036】 これに対して、本実施形態に係る吸気流制御バルブ4には、その下端部に副開口部4D(図3)が形成されている。この副開口部4Dを流れる空気AFにより、巻き戻し空気ABによって巻き戻され、吸気流路22の下方に溜まろうとする燃料Fを下流側に押し返すことができる。したがって、燃料Fの液溜まりを防止することができるとともに、液溜まりした燃料が燃焼室14に一気に流入して空燃費がずれることによる燃料の不完全燃焼を防止しすることができる。そして、排気エミッションの低下を防止することができる。 【0037】 このように、本実施形態に係る吸気装置装置では、燃焼室に供給する空気のタンブル強度の調整と、液溜まりの防止を好適に両立することができる。」(段落【0034】ないし【0037】) ク)「【0038】 次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図6は、本実施形態に係る内燃機関の吸気装置の要部を示す図であり、(a)は正断面図、(b)は(a)のB-B線断面図である。 【0039】 本実施形態に係る吸気装置30における吸気流制御バルブ31は、長方形の上方両端部に四半円形状のコーナ部を形成した形状をなしている。また、吸気流制御バルブ31における下端中央部には、副開口部31Aが形成されている。さらに、吸気流制御バルブ31の下端辺には、回動軸32が溶接固定されている。回動軸32は、吸気流路22から外れた位置に配置しているとともに、吸気流路22に対して直交するする方向に沿って配設されている。回動軸32の一端部には、本発明の回動駆動手段であるサーボモータ33が取り付けられている。このサーボモータ33によって回動軸32を回動させることにより、吸気流制御バルブ31は揺動して開閉することができるようになっている。 【0040】 また、吸気流路22のうち、吸気流制御バルブ31が設けられている位置の断面形状は、吸気流制御バルブ31と略同一の形状をなしており、コーナ部よりも下方の部位では吸気流路22を塞いで空気の移動を遮っている。他方、吸気流制御バルブ31の下方位置に形成された副開口部31Aを通過することにより、少量の空気が下流側に向けて流れる。 【0041】 さらに、吸気流制御バルブ31を閉じた状態での吸気流制御バルブ31の上端辺と吸気流路22との間には、本発明の開口部となる間隙34が形成される。間隙34の開口面積は、副開口部31Aの開口面積よりも大きくなるように設定されている。そして、吸気流制御バルブ31を開くことにより、図7に示すように、間隙34の開口面積は徐々に大きくなっていく。 【0042】 また、吸気流路22が形成されたインテークマニホールド5における吸気流制御バルブ31が形成されている位置のやや下流側には、吸気流制御バルブ31が開いたときに、吸気流制御バルブ31を収容する収容部35が形成されている。この収容部35は、吸気流路22の下端面を切り欠いて形成されており、吸気流路22から外れた位置に形成されている。このため、収容部35に吸気流制御バルブ31が収容されているときには、吸気流制御バルブ31は、吸気流路22から外れた場所に収容される。その他の構成については、上記第1の実施形態と略同一であるので、その説明は省略する。」(段落【0038】ないし【0042】) ケ)「【0043】 次に、本実施形態に係る内燃機関の吸気装置30の作用・動作について説明する。本実施形態に係る内燃機関の吸気装置30では、サーボモータ33を駆動して、回動軸32を回転させて吸気流制御バルブ31を開閉する。まず、強いタンブル流を生成する場合には、図6に示すように、吸気流制御バルブ31を閉じる。吸気流制御バルブ31を閉じると、吸気流制御バルブ31の上端部と吸気流路22との間に形成された間隙34を通過する。ここで、タンブル流の強さは、間隙34と副開口部31Aの開口面積比率により決められ、副開口部31Aの開口面積に対する間隙34の開口面積比率が大きい場合には、タンブル流が弱く生じることになる。図6に示す状態では、間隙34の開口面積は小さく、副開口部31Aに対する開口面積比率も小さくなるので、強いタンブル流を生成することができる。こうして、吸入空気量が少ない場合などのときに、強いタンブル流を供給することができる。 【0044】 また、ある程度エンジンが温まってきた、弱めのタンブル流を生じさせながら、吸入空気を供給したいことがある。このようなときには、サーボモータ33によって回動軸32を回動させて、図7に示すように、吸気流制御バルブ31を少し開くと、間隙34の開口面積が大きくなる。しかも、吸気流制御バルブ31の側面は吸気流路22の側面と接した状態とされているので、吸気流制御バルブ31の側方が開口することがない。また、回動軸32が下方に設けられていることから、間隙34の開口面積が大きくなっても、副開口部の開口面積には大きな変化がない。したがって、副開口部31Aに対する間隙34の開口面積比率を大きくすることができるので、弱めのタンブル流を生成することができる。 【0045】 さらに、タンブル流を生成する必要がない場合には、図8に示すように、吸気流制御バルブ31を全開にして、吸気流路22を開放した状態とする。こうして、タンブル流を生じさせることなく、燃焼室14(図2)に空気を供給することができる。また、吸気流制御バルブ31を開くための回動軸32は、吸気流路22から外れた位置に形成されており、開いた状態の吸気流制御バルブ31は吸気流路22から外れた収容部35に収容されている。このため、吸気流路22における圧力損失を少なくすることができ、もって流入空気量の減少によるエンジン出力の低下を最小限にすることができる。」(段落【0043】ないし【0045】) コ)「【0064】 【発明の効果】 以上のとおり、本発明に係る内燃機関の吸気装置によれば、吸気流制御バルブの下流側近傍における燃料の液溜まりを防止することができる。また、エンジンの運転状態に応じた渦流(タンブル流)を発生させることができる。さらには、吸気流路における圧力損失を低減することができる」(段落【0064】) サ)「【図面の簡単な説明】 【図1】第1の実施形態に係る内燃機関の吸気装置の概要を示す斜視図である。 【図2】第1の実施形態に係る内燃機関の吸気装置の概要を示す側断面図である。 【図3】(a)は閉じた状態の吸気流制御バルブの正面図、(b)は(a)のB-B線断面図である。 【図4】(a)は開いた状態の吸気流制御バルブの正面図、(b)は(a)のB-B線断面図である。 【図5】内燃機関における空気に流れを示す側断面図である。 【図6】第2の実施形態に係る内燃機関の吸気装置の要部を示す図であり、(a)は正断面図、(b)は(a)のB-B線断面図である。 【図7】第2の実施形態の吸気流制御バルブが少し開いた状態の正断面図、(b)は(a)のB-B線断面図である。 【図8】第2の実施形態の吸気流制御バルブが全開の状態の正断面図、(b)は(a)のB-B線断面図である。 ・・・(略)・・・。 【符号の説明】 1…エンジン、2,30・・・(略)・・・…吸気管、3…排気管、4,31・・・(略)・・・…吸気流制御バルブ、4A…主開口部、4B,4C…隔壁、4D…副開口部、5…インテークマニホールド、6…インジェクタ、7…シャフト、8,33・・・(略)・・・…サーボモータ、11…シリンダヘッド、12…シリンダ、13…ピストン、14…燃焼室、15…吸気バルブ、16…排気バルブ、21…吸気ポート、22…吸気流路、32・・・(略)・・・…回動軸、34…間隙、35…収容部、・・・(略)・・・、37…吸気流制御バルブ、・・・(略)・・・、A,AF…空気、AB…巻き戻し空気、F…燃料、S…スワール流、T…タンブル流。」(【図面の簡単な説明】及び【符号の説明】) (2)ここで、上記(1)及び図面から、次のことが分かる。 シ)上記ク)及びケ)並びに図6ないし8の記載からみて、第2の実施形態において、吸気ポート21及び吸気流路22は、吸気ポート21及び吸気流路22の下側の壁面近傍に介装した回転軸32と、該回転軸32に一端部を軸支される吸気流制御バルブ31とを有することが分かる。 ス)上記ク)及びケ)並びに図6ないし8の記載からみて、第2の実施形態において、吸気流制御バルブ31の開弁状態に関わらず、吸気流制御バルブ31の下面と、吸気ポート21及び吸気流路22の下側の壁面との間に空隙が形成されることが分かる。 (3)上記(1)及び(2)並びに図面の記載を総合すると、刊行物には、第2の実施形態に関して、次の発明(以下、単に「刊行物記載の第1発明」という。)が記載されているものと認められる。 「吸気ポート21及び吸気流路22の下側の壁面近傍に介装した回転軸32と、該回転軸32に一端部を軸支される吸気流制御バルブ31とを有するエンジン1の吸気ポート21及び吸気流路22であって、 前記吸気流制御バルブ31の開弁状態に関わらず、前記吸気流制御バルブ31の下面と、前記吸気ポート21及び吸気流路22の下側の壁面との間に空隙が形成されるエンジン1の吸気ポート21及び吸気流路22。」の発明。 3.本願補正発明と刊行物記載の発明との対比・判断 本願補正発明と刊行物記載の発明とを対比するに、刊行物記載の発明における「吸気ポート21及び吸気流路22」は、その技術的意義からみて、本願補正発明における「吸気ポート」及び「吸気ポート構造」に相当し、以下同様に、「回転軸32」は「弁軸」に、「吸気流制御バルブ31」は「気流制御弁」に、「エンジン1」は「内燃機関」に、「空隙」は「間隙」に、それぞれ相当する。 したがって、本願補正発明と刊行物記載の第1発明とは、 「吸気ポートの下側の壁面近傍に介装した弁軸と、該弁軸に一端部を軸支される気流制御弁とを有する内燃機関の吸気ポート構造であって、 前記気流制御弁の開弁状態に関わらず、前記気流制御弁の下面と、前記吸気ポートの下側の壁面との間に間隙が形成される内燃機関の吸気ポート構造。」である点で一致し、実質的な相違点はない。 以上から、本願補正発明は、刊行物記載の第1発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4.むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 〔理由3〕 1.本願補正発明 上記〔理由2〕と同様に、仮に、上記〔理由1〕で指摘した本件補正が平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとした場合、本願補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。 2.刊行物記載の発明 (1)本件出願の出願前に頒布された刊行物である刊行物(特開2004-44459号公報)には、図面とともに、例えば、上記〔理由2〕2.(1)のような事項が記載されている。 (2)ここで、上記〔理由2〕2.(1)及び図面から、次のことが分かる。 シ)上記カ)及びキ)並びに図1ないし5の記載からみて、第1の実施形態において、吸気ポート21及び吸気流路22は、吸気ポート21及び吸気流路22に介装したシャフト7と、該シャフト7に軸支される吸気流制御バルブ4とを有することが分かる。 ス)上記カ)及びキ)並びに図1ないし5の記載からみて、第1の実施形態において、吸気流制御バルブ31の開弁状態に関わらず、吸気流制御バルブ31の下面と、吸気ポート21及び吸気流路22の下側の壁面との間に副開口部4Dが形成されることが分かる。 セ)上記イ)ないしキ)及び図1ないし5の記載からみて、第1の実施形態において、副開口部4Dを流れる空気AFにより、巻き戻し空気ABによって巻き戻され吸気流路22の下方に溜まろうとする燃料Fを下流側に押し返すことによって、燃料Fの液溜まりを防止することができるといえる。 ソ)上記ク)及びケ)並びに図6ないし8の記載からみて、第2の実施形態において、吸気ポート21及び吸気流路22は、吸気ポート21及び吸気流路22の下側の壁面近傍に介装した回転軸32と、該回転軸32に一端部を軸支される吸気流制御バルブ31とを有することが分かる。 タ)上記ク)及びケ)並びに図6ないし8の記載からみて、第2の実施形態において、吸気流制御バルブ31の開弁状態に関わらず、吸気流制御バルブ31の下面と、吸気ポート21及び吸気流路22の下側の壁面との間に空隙が形成されることが分かる。 チ)上記イ)ないしケ)及び図1ないし8の記載からみて、第2の実施形態において、副開口部31Aを流れる空気により、巻き戻し空気によって巻き戻され吸気流路22の下方に溜まろうとする燃料を下流側に押し返すことによって、燃料の液溜まりを防止することができるといえる。 (3)上記(1)及び(2)並びに図面の記載を総合すると、刊行物には、第1の実施形態に関して、次の発明(以下、単に「刊行物記載の第2発明」という。)が記載されているものと認められる。 「吸気ポート21及び吸気流路22に介装したシャフト7と、該シャフト7に軸支される吸気流制御バルブ4とを有するエンジン1の吸気ポート21及び吸気流路22であって、 前記吸気流制御バルブ4の開弁状態に関わらず、前記吸気流制御バルブ4の下面と、前記吸気ポート21及び吸気流路22の下側の壁面との間に副開口部4Dが形成されるエンジン1の吸気ポート21及び吸気流路22。」の発明 であって、 『副開口部4Dを流れる空気AFにより、巻き戻し空気ABによって巻き戻され吸気流路22の下方に溜まろうとする燃料Fを下流側に押し返すことによって、燃料Fの液溜まりを防止することができる。』発明。 3.本願補正発明と刊行物記載の第2発明との対比 本願補正発明と刊行物記載の第2発明とを対比するに、刊行物記載の第2発明における「吸気ポート21及び吸気流路22」は、その技術的意義からみて、本願補正発明における「吸気ポート」及び「吸気ポート構造」に相当し、以下同様に、「シャフト7」は「弁軸」に、「吸気流制御バルブ4」は「気流制御弁」に、「エンジン1」は「内燃機関」に、それぞれ相当する。 また、刊行物記載の第2発明における「吸気ポート21及び吸気流路22に介装した弁軸」は、「吸気ポートに介装した弁軸」という限りにおいて、本願補正発明における「吸気ポートの下側の壁面近傍に介装した弁軸」に相当する。 さらに、刊行物記載の第2発明における「該シャフト7に軸支される吸気流制御バルブ4」は、「該弁軸に軸支される気流制御弁」という限りにおいて、本願補正発明における「該弁軸に一端部を軸支される気流制御弁」に相当する。 さらにまた、刊行物記載の第2発明における「前記吸気流制御バルブ4の開弁状態に関わらず、前記吸気流制御バルブ4の下面と、前記吸気ポート21及び吸気流路22の下側の壁面との間に副開口部4Dが形成される」は、「前記気流制御弁の開弁状態に関わらず、前記気流制御弁の下面と、前記吸気ポートの下側の壁面との間に連通孔が形成される」という限りにおいて、本願補正発明における「前記気流制御弁の開弁状態に関わらず、前記気流制御弁の下面と、前記吸気ポートの下側の壁面との間に間隙が形成される」に相当する。 したがって、本願補正発明と刊行物記載の第2発明とは、 「吸気ポートに介装した弁軸と、該弁軸に軸支される気流制御弁とを有する内燃機関の吸気ポート構造であって、 前記気流制御弁の開弁状態に関わらず、前記気流制御弁の下面と、前記吸気ポートの下側の壁面との間に連通孔が形成される内燃機関の吸気ポート構造。」である点で一致し、次の点で相違している。 <相違点1> 「弁軸」及び「気流制御弁」について、本願補正発明は、「吸気ポートの『下側の壁面近傍』に介装した弁軸」及び「該弁軸に『一端部を』軸支される気流制御弁」であるのに対し、刊行物載の第2発明は、「吸気ポート1及び吸気通路22[吸気ポート]に介装したシャフト7[弁軸]」及び「該シャフト7[弁軸]に軸支される吸気流制御バルブ4[気流制御弁]」ではあるものの吸気ポートの「下側の壁面近傍」に介装したもの及び「一端部を」軸支されるものとはしていない点(以下、単に「相違点1」という。)。 <相違点2> 本願補正発明は、「前記気流制御弁の開弁状態に関わらず、前記気流制御弁の下面と、前記吸気ポートの下側の壁面との間に『間隙』が形成される」としているのに対し、刊行物載の第2発明は、「前記気流制御弁の開弁状態に関わらず、前記気流制御弁の下面と、前記吸気ポートの下側の壁面との間に『副開口部4D』が形成される」としている点(以下、単に「相違点2」という。)。 4.独立特許要件の判断 上記各相違点について検討する。 4-1.<相違点1>について 内燃機関の吸気ポート構造において、「吸気ポートの『下側の壁面近傍』に介装した弁軸」及び「弁軸に『一端部を』軸支される気流制御弁」は周知の技術(例えば、特開平7-174028号公報(特に、図2及び図3等に記載の「弁軸10」、「弁体11」)、発明協会公開技報公技番号2003-500746(2003年2月18日発行)(特に、「支持軸3」、「気流制御弁2」)、発明協会公開技報公技番号2005-500762(2005年2月1日発行)(特に、「タンブル制御バルブ10」)、特開平11-336552号公報(特に、図19に記載の「回動軸17」、「制御弁30」)参照。以下、単に「周知技術1」という。)である。 してみると、刊行物記載の第2発明において、周知技術1を採用することにより、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項に想到することは当業者であれば容易になし得たものである。 4-2.<相違点2>について <その1> 刊行物記載の第1発明は、上記〔理由2〕2.に記載したとおりである。 そして、本願補正発明と刊行物記載の第1発明とを対比すると、上記〔理由2〕3.に記載したとおりの対応関係にあるから、刊行物記載の第1発明を本願補正発明の用語を用いて表現すれば、 「吸気ポートの下側の壁面近傍に介装した弁軸と、該弁軸に一端部を軸支される気流制御弁とを有する内燃機関の吸気ポート構造であって、 前記気流制御弁の開弁状態に関わらず、前記気流制御弁の下面と、前記吸気ポートの下側の壁面との間に間隙が形成される内燃機関の吸気ポート構造。」の発明といえる。 してみると、刊行物記載の第2発明において、刊行物記載の第1発明を参酌することにより、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項に想到することは当業者であれば容易になし得たものである。 そして、本願補正発明を全体として検討しても、刊行物記載の第2発明、刊行物記載の第1発明及び周知技術1から予測される以上の格別の効果を奏するとも認められない。 <その2> また、気流制御弁と吸気ポートの壁面との間における、巻き戻し空気によって巻き戻され吸気ポートに燃料の液溜まりが生じる部位に、空気が流れる間隙を形成することは周知の技術(例えば、特開2003-293775号公報(特に、図5(c)に記載の「副開口部61」)、特開2003-322024号公報(特に、図1(B)に記載の「切欠部34」)参照。以下、単に「周知技術2」という。)である。 してみると、刊行物記載の第2発明において、周知技術2を採用することにより、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項に想到することも当業者であれば容易になし得たものである。 そして、本願補正発明を全体として検討しても、刊行物記載の第2発明、周知技術1及び周知技術2から予測される以上の格別の効果を奏するとも認められない。 <その3> さらに、そもそも気流制御弁と吸気ポートの壁面との間に空気が流れる間隙を形成することは周知の技術(例えば、特開2004-44459号公報(特に、「間隙34」)、特開2003-293775号公報(特に、図5(c)に記載の「副開口部61」)、特開平11-107764号公報(特に、「開口部18」)参照。以下、単に「周知技術3」という。)である。 してみると、刊行物記載の第2発明において、周知技術3を採用することにより、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項に想到することも当業者であれば容易になし得たものである。 そして、本願補正発明を全体として検討しても、刊行物記載の第2発明、周知技術1及び周知技術3から予測される以上の格別の効果を奏するとも認められない。 以上4-1.及び4-2.から、本願補正発明は、刊行物記載の第2発明、刊行物記載の第1発明及び周知技術1(上記「<相違点2>について」の「<その1>」の場合)、刊行物記載の第2発明、周知技術1及び周知技術2(上記「<相違点2>について」の「<その2>」の場合)または刊行物記載の第2発明、周知技術1及び周知技術3(上記「<相違点2>について」の「<その3>」の場合)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5.むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって、〔理由1〕、〔理由2〕または〔理由3〕により、結論のとおり決定する。 [3]本願発明について 1.手続の経緯および本願発明 平成22年1月22日付けの手続補正は前述したとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし8に係る発明は、平成21年9月21日付けの手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに願書に最初に添付した図面の記載からみて、平成21年9月21日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、単に「本願発明」という。)は、前記[2]の〔理由1〕1.a)の請求項1に記載したとおりのものである。 2.引用刊行物記載の発明 (1)原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願の出願前に頒布された刊行物である特開2003-106158号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、図面とともに、例えば、次のような事項が記載されている。 ア)「【0014】 【発明の実施の形態】図1は、本発明による筒内噴射式火花点火内燃機関の実施形態を示す概略縦断面図である。同図において、1は吸気ポート、2は排気ポートである。吸気ポート1は吸気弁3を介して、排気ポート2は排気弁4を介して、それぞれ気筒内へ通じている。5はピストンであり、6は気筒上部略中心に配置された点火プラグであり、7は気筒上部周囲から気筒内へ直接的に燃料を噴射する燃料噴射弁である。燃料噴射弁7は、燃料のベーパを防止するために、燃焼室内において吸気流により比較的低温度となる吸気ポート1側に配置されている。」(段落【0014】) イ)「【0026】このように、吸気行程で弱いタンブル流が気筒内に生成されると、均質燃焼及び成層燃焼のいずれも良好とはならない。本実施形態は、図3に示すように、吸気ポート1内に弁体10を具備し、この弁体10を操作することにより均質燃焼時には気筒内に強いタンブル流を生成し、成層燃焼時には気筒内にタンブル流を生成しないようにし、良好な均質燃焼及び良好な成層燃焼をいずれも実現可能としている。」(段落【0026】) ウ)「【0027】シリンダヘッドには吸気ポート1の外部開口を取り囲むようにして吸気ポート1の延長部分1aを形成するダクト11が接続される。ダクト11は、少なくとも弁体11が配置された下流部分において、下方向に部分円柱形状に突出した部分を含めて、軸線に対して垂直な矩形断面形状を有している。好ましくは、吸気ポート1の外部開口もダクト11の隣接する矩形断面形状と同じ形状であり、吸気ポート1は上流部分において矩形断面形状から円形断面形状へ徐々に断面形状が変化している。しかしながら、シリンダヘッド内の吸気ポート1は、全体的に円形断面形状を有していても良く、この場合には、吸気ポート1の外部開口における円形断面形状は、ダクト11の隣接する矩形断面形状に対して内接するようにされる。ダクト11の上流側はサージタンクに接続されている。 【0028】ダクト11の下流部分内は、部分円柱状の突出部分を含めて軸線に沿って一様な幅を有している。本実施形態において、図1及び図3の位置関係で部材の上下を表現することとしており、例えば、気筒内の点火プラグ側が上側となり、クランク(図示せず)側が下側となる。吸気ポート1及び延長部分1aは、軸線に対して垂直な断面で上下左右を表現することとし、図1及び図3において斜めになっているために、厳密には斜め上方向及びは斜め下方向との表現となるが、簡単のために、これらは上方向及び下方向と表現することとする。前述したダクト11の幅は上下方向に対して直交する左右方向におけるものである。 【0029】ダクト11の下流部分内に配置された弁体10は、以下に説明するように、下流側部分を通過する吸気を偏向するための可動偏向手段として機能する。この弁体10は、下流部分内の幅にほぼ等しい幅を有する矩形状であり、幅方向に延在する回動軸10aを有している。この回動軸10aは、突出部分の部分円柱形状における中心に位置している。弁体10の回動軸10aより一方側の長さは、この部分円柱形状の半径にほぼ等しく、それにより、所定回動範囲において、弁体10は吸気ポート延長部分1aの下壁側(突出部分側)を閉鎖し続けることができる。また、弁体10の回動軸10aより他方側の長さは、比較的短くされており、前述の回動範囲において弁体10の一方側部分によって吸気ポート延長部1aの下壁側は閉鎖されても、弁体10の他方側部分によっては吸気ポート延長部1aの上壁側は閉鎖されないようになっている。弁体10は、ステップモータ等の駆動装置によって任意の位置に回動可能とされている。」(段落【0027】ないし【0029】) エ)「【0031】本実施形態では、この始動時の均質燃焼において、弁体10を図3に実線で示す位置Aとする。すなわち、弁体10を吸気ポート延長部1aの軸線に対して垂直にする。それにより、弁体10の一方側部分によって吸気ポート延長部1aの下壁側は閉鎖されると共に、弁体10の他方側部分によって吸気ポート延長部1aの上壁側は最小限に開放される。こうして、吸気は、図3に実線の矢印で示すように、吸気ポート延長部1aの上側壁における最上部に沿ってだけ弁体10を通過し、吸気ポート1の上壁側における最上部に沿って気筒内開口の排気弁側だけから気筒内へ供給される。 【0032】それにより、吸気の全ては、殆ど偏向されることなく気筒内へ供給されるために、速度低下はなく、非常に高速の吸気によって非常に強いタンブル流が生成される。噴射燃料は、この非常に強いタンブル流によって十分に攪拌される。また、吸気ポート延長部は最小限にしか開放されていないために、吸気行程末期において気筒内には高い負圧が発生し、この高い負圧によって噴射燃料は非常に気化し易くなる。それにより、噴射燃料の全てを気化させて強いタンブル流によって十分に攪拌することができ、良好な均質混合気が形成されるために、気筒内温度の低い機関始動時において、それほど燃料を増量しなくても確実な着火性を確保して良好な均質燃焼を実現することができる。この機関始動方式は、筒内温度がさらに低い冷間始動時においても、同様に気筒内負圧によって燃料気化が促進されるために有効である。」(段落【0031】及び【0032】) オ)「【0033】機関始動が完了して、燃料ポンプが良好に作動して燃料噴射圧が確保され、また、機関排気系の触媒装置等の暖機が完了すれば、機関運転状態に応じて成層燃焼と均質燃焼とが切り換えられるようになる。図4は、この切り換えを示すマップであり、低負荷側領域Iにおいては成層燃焼が実施される。高負荷側領域II及び高回転高負荷領域III においては均質燃焼が実施される。 【0034】低負荷側領域Iにおいて成層燃焼を実施する時には、弁体10を図3に一点鎖線で示す位置Dとする。それにより、弁体10の一方側部分によって吸気ポート延長部1aの上壁側は閉鎖されるが、比較的短い他方側部分によっては吸気ポート延長部1aの下壁側は比較的大きく開放される。こうして、吸気は、主に吸気ポート延長部1aの下壁側に沿って弁体10を通過し、図3に一点鎖線の矢印で示すように、主に吸気ポート1の下壁側に沿って気筒内開口の反排気弁側から気筒内へ供給される。 【0035】それにより、吸気の多くは大きく偏向されて気筒内へ供給されるために、大幅に速度低下し、タンブル流とは逆方向に緩やかに気筒内を旋回しようとする。弁体10の回動軸10aは、吸気ポート延長部1aの上壁側に偏在しているために、一部の吸気は、最上部ではないが上壁側に沿って弁体10を通過し、吸気ポート1の気筒内開口の排気弁側からも気筒内へ供給される。しかしながら、このように僅かな吸気がタンブル流を生成しようとしても気筒内開口の反排気弁側から供給された大部分の吸気を巻き込んでタンブル流を生成することはできない。また、この大部分の吸気は、タンブル流と逆方向に旋回しようとしても実際には流速が遅いために旋回するようなことはない。 【0036】こうして、成層燃焼時には、吸気行程において吸気が気筒内を旋回することはなく、燃料噴射時期である圧縮行程後半には乱れは存在せず、噴射燃料の指向性は維持されるために、可燃混合気が確実に点火プラグ近傍に形成されて良好な成層燃焼が実現可能となる。成層燃焼時には、機関負荷及び機関回転数に係わらずに弁体10によって吸気ポート延長部1aが比較的大きく開放されているためにポンピング損失が殆ど発生しない。それにより、希薄燃焼に加えてポンピング損失も低減するために、成層燃焼では燃料消費率を低く抑えることができる。 【0037】機関負荷の上昇に伴って高負荷側領域IIとなれば、均質燃焼を実施するために、弁体10を図3に一点鎖線で示す位置Bとする。それにより、前述した位置Aと同様に弁体10の一方側部分によって吸気ポート延長部1aの下壁側は閉鎖されるが、弁体10の他方側部分によって吸気ポート延長部1aの上壁側は位置Aよりは大きく開放される。こうして、吸気は、吸気ポート延長部1aの上壁側に沿って弁体10を通過し、吸気ポート1の上壁側に沿って気筒内開口の排気弁側だけから気筒内へ供給される。 【0038】それにより、吸気の全ては、殆ど偏向されることなく気筒内へ供給されるために、速度低下はなく、高速の吸気によって強いタンブル流が生成される。均質燃焼のために吸気行程で噴射される燃料は、この強いタンブル流によって十分に攪拌される。弁体10の位置Bでは、機関始動時の位置Aに比較して吸気ポート延長部1aは大きく開放されているために、気筒内にはそれほど高い負圧は発生せず、負圧による気化促進はあまり期待できないが、この時には、気筒内温度も比較的高くなっているためにタンブル流による気化促進だけでも十分に噴射燃料を気化させることができる。こうして良好な均質混合気を形成することができるために、高負荷側領域IIにおいて良好な均質燃焼を実現することができる。 【0039】機関回転数の上昇に伴ってさらに機関負荷が高くなって高回転高負荷領域IIIとなると、この時にも均質燃焼が実施されるが、この時には非常に多量の吸気が必要であり、弁体10は図3に一点鎖線で示す位置Cとされる。それにより、吸気ポート延長部1aは全開され、吸気は、吸気ポート延長部1aの上壁側及び下壁側に沿って弁体10を通過し、吸気ポート1の気筒内開口全体から気筒内へ供給される。 【0040】前述したように、吸気が吸気ポート1の気筒内開口全体から気筒内へ供給されると、気筒内開口における排気弁側から供給される一方の吸気流が反排気弁側から供給される他方の吸気流を巻き込んで弱いタンブル流を生成することとなる。高回転高負荷領域III では、短時間で多量の吸入が気筒内へ供給されるために、これら二つの吸気流速はいずれも速くなり、一方の吸気流が他方の吸気流を巻き込む際の衝突のエネルギが増大する。この時においても最終的には、弱いタンブル流が気筒内に生成されることとなるが、二つの気流が衝突する際の大きな衝突エネルギによって気筒内中央部分、すなわち、タンブル流の旋回中心部分には比較的強い乱れが発生する。 【0041】従って、高回転高負荷領域III において吸気行程で噴射された燃料は、弱いタンブル流と気筒内中央部分おける強い乱れとによって十分に攪拌され、この時にも良好な均質混合気を形成することができる。」(段落【0033】ないし【0041】) カ)「【図面の簡単な説明】 【図1】本発明による筒内噴射式火花点火内燃機関の実施形態を示す概略縦断面図であ る。 【図2】図1の筒内噴射式火花点火内燃機関のピストン平面図である。 【図3】図1の筒内噴射式火花点火内燃機関の吸気行程における概略縦断面図である。 【図4】図1の筒内噴射式火花点火内燃機関において成層燃焼と均質燃焼とを切り換え るためのマップである。 【符号の説明】 1…吸気ポート 2…排気ポート 3…吸気弁 4…排気弁 5…ピストン 6…点火プラグ 7…燃料噴射弁 10…弁体」(【図面の簡単な説明】及び【符号の説明】) (2)ここで、上記(1)及び図面から、次のことが分かる。 キ)上記ウ)ないしオ)及び図3の記載からみて、吸気ポート1及び吸気ポート延長部1aは、吸気ポート1及び吸気ポート延長部1aの下方向に部分円柱形状に突出した部分における中心に介装した回動軸10aと、該回動軸10aに軸支される弁体10とを有することが分かる。 ク)上記ウ)ないしオ)及び図3の記載からみて、全開時に弁体10の下面と、吸気ポート1及び吸気ポート延長部1aの下側の壁面との間に間隙が形成されることが分かる。 (3)上記(1)及び(2)並びに図面の記載を総合すると、引用刊行物には、次の発明(以下、単に「引用刊行物記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。 「吸気ポート1及び吸気ポート延長部1aの下方向に部分円柱形状に突出した部分における中心に介装した回動軸10aと、該回動軸10aに軸支される弁体10とを有する筒内噴射式火花点火内燃機関の吸気ポート1及び吸気ポート延長部1aであって、 全開時に前記弁体10の下面と、前記吸気ポート1及び吸気ポート延長部1aの下側の壁面との間に間隙が形成される筒内噴射式火花点火内燃機関の吸気ポート1及び吸気ポート延長部1a。」の発明。 3.対比 本願発明と引用刊行物記載の発明とを対比するに、引用刊行物記載の発明における「吸気ポート1及び吸気ポート延長部1a」は、その技術的意義からみて、本願発明における「吸気ポート」及び「吸気ポート構造」に相当し、以下同様に、「回動軸10a」は「弁軸」に、「筒内噴射式火花点火内燃機関」は「内燃機関」に、それぞれ相当する。 また、引用刊行物記載の発明における「吸気ポート1及び吸気ポート延長部1aの下方向に部分円柱形状に突出した部分における中心に介装した回動軸10a」は、「吸気ポートに介装した弁軸」という限りにおいて、本願発明における「吸気ポートの下側の壁面近傍に介装した弁軸」に相当する。 さらに、引用刊行物記載の発明における「該回動軸10aに軸支される弁体10」は、「該弁軸に軸支される気流制御弁」という限りにおいて、本願発明における「該弁軸に一端部を軸支される気流制御弁」に相当する。 したがって、本願発明と引用刊行物記載の発明とは、 「吸気ポートに介装した弁軸と、該弁軸に軸支される気流制御弁とを有する内燃機関の吸気ポート構造であって、 全開時に前記気流制御弁の下面と、前記吸気ポートの下側の壁面との間に間隙が形成される内燃機関の吸気ポート構造。」である点で一致し、次の点で相違している。 <相違点> 「弁軸」及び「気流制御弁」について、本願発明は、「吸気ポートの『下側の壁面近傍』に介装した弁軸」及び「該弁軸に『一端部を』軸支される気流制御弁」であるのに対し、引用刊行物載の発明は、「吸気ポート1及び吸気ポート延長部1a[吸気ポート]の『下方向に部分円柱形状に突出した部分における中心』に介装した回動軸10a[弁軸]」及び「該回動軸10a[弁軸]に軸支される弁体10[気流制御弁]」ではあるものの吸気ポートの「下側の壁面近傍」に介装したもの及び「一端部を」軸支されるものとはしていない点(以下、単に「相違点」という。)。 4.当審の判断 上記<相違点>について検討する。 内燃機関の吸気ポート構造において、「吸気ポートの『下側の壁面近傍』に介装した弁軸」及び「弁軸に『一端部を』軸支される気流制御弁」は、上記[2]の〔理由3〕4.に記載したとおり、周知の技術(周知技術1)である。 してみると、引用刊行物記載の発明において、周知技術1を採用することにより、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項に想到することは当業者であれば容易になし得たものである。 そして、本願発明を全体として検討しても、引用刊行物記載の発明及び周知技術1から予測される以上の格別の効果を奏するとも認められない。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用刊行物記載の発明及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-03-10 |
結審通知日 | 2011-03-22 |
審決日 | 2011-05-13 |
出願番号 | 特願2005-261338(P2005-261338) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(F02B)
P 1 8・ 121- Z (F02B) P 1 8・ 57- Z (F02B) P 1 8・ 113- Z (F02B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 水野 治彦 |
特許庁審判長 |
小谷 一郎 |
特許庁審判官 |
河端 賢 中川 隆司 |
発明の名称 | 内燃機関の吸気ポート構造 |
代理人 | 片山 修平 |