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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1239322
審判番号 不服2010-15755  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-07-13 
確定日 2011-07-01 
事件の表示 特願2004-191248「パチンコ機」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 1月12日出願公開、特開2006- 6795〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成16年6月29日の出願であって、平成22年4月19日付け(発送:4月21日)で拒絶査定され、これに対し、同年7月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同日付けで手続補正がなされたものである。
その後、当審において、平成22年10月19日付けで審査官の前置報告書に基づく審尋がなされ、平成22年12月16日付けで回答書が提出された。

2.補正の内容
平成22年7月13日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は、
「【請求項1】発射装置から発射される遊技球の発射強度を、遊技盤の前面側に設けられた発射強度設定手段を操作することによりデジタルデータを変化させて調整し、前記発射装置から発射された遊技球を前記遊技盤に設けられた遊技領域に流下させるパチンコ機において、
前記発射強度設定手段には、
予め選択されたデジタルデータによる発射強度によって、遊技球が到達する所定の位置を選択するための発射強度選択手段と、
前記発射装置の最小発射強度から最大発射強度までに対応し、前記予め選択されたデジタルデータを含む発射強度のデジタルデータの中から選択したデジタルデータを調整開始点として、前記所定の位置を含む前記発射装置のデジタルデータの調整を行う発射強度調整手段が設けられていることを特徴とするパチンコ機。
【請求項2】
前記発射強度選択手段は、複数設けられた前記遊技球が到達する所定の位置をサイクリックに選択可能な1つの選択スイッチからなることを特徴とする請求項1に記載のパチンコ機。
【請求項3】
前記発射強度選択手段は、前記遊技球が到達する所定の位置に対応する複数の選択スイッチからなることを特徴とする請求項1に記載のパチンコ機。
【請求項4】
前記発射強度設定手段には、前記発射強度選択手段によって選択された遊技球の発射強度、あるいは前記発射強度調整手段によって調整された遊技球の発射強度を報知するための表示ランプが設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のパチンコ機。
【請求項5】
前記遊技球の発射強度を報知するための表示ランプは、前記遊技領域に植設されている遊技釘の配置を模して設けられていることを特徴とする請求項4に記載のパチンコ機。」
に補正された。

本件補正は、補正前(平成22年3月5日付け手続補正、以下同じ。)の請求項1の「予め選択されたデジタルデータによる発射強度によって遊技球が到達する、所定の位置を選択するための発射強度選択手段と、前記発射装置の最小発射強度から最大発射強度までに対応し、前記予め選択されたデジタルデータを含む発射強度のデジタルデータによって、前記所定の位置を含む前記発射装置の最小発射強度から最大発射強度までの発射位置を選択するための発射強度調整手段が設けられている」を「予め選択されたデジタルデータによる発射強度によって、遊技球が到達する所定の位置を選択するための発射強度選択手段と、前記発射装置の最小発射強度から最大発射強度までに対応し、前記予め選択されたデジタルデータを含む発射強度のデジタルデータの中から選択したデジタルデータを調整開始点として、前記所定の位置を含む前記発射装置のデジタルデータの調整を行う発射強度調整手段が設けられている」とし、拒絶査定時の付言において指摘された不明りょうな記載を、読点の位置を変更することや、発射強度調整手段の修飾語を変更することにより明りょうとしたものであって、この補正は明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認められる。

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反しないので補正は認められる。

3.引用文献に記載された発明
原査定の拒絶の理由(平成21年12月21日付け拒絶理由通知)において引用文献1として引用された特開2003-38740号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、弾球遊技機の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】入賞装置などが配されて遊技領域が形成された遊技盤と、遊技領域に向けて遊技球を発射する発射装置とを備えて、遊技領域に撃ち込まれた遊技球の挙動によって遊技が行われる弾球遊技機、例えばパチンコ機がある。」

(イ)「【0005】
【課題を解決するための手段および発明の効果】上記課題を解決するための請求項1記載の弾球遊技機は、遊技領域が形成された遊技盤と、前記遊技領域に向けて遊技球を発射する発射装置とを備えて、前記遊技領域に撃ち込まれた遊技球の挙動によって遊技が行われる弾球遊技機において、タッチ面への接触によってポイントされた位置(ポイント位置)を検出するパネル装置と、前記パネル装置上のポイント位置に対応する前記遊技領域上の位置に遊技球を到達させるための前記発射装置の発射強度(主強度)を設定する発射強度設定手段と、前記発射強度設定手段によって設定された前記主強度に基づく値を目標値として前記発射装置を制御する発射力制御手段とを備えたことを特徴とする。」

(ウ)「【0035】
【実施例1】図1に示すように、本実施例のパチンコ機10の前面枠12には、金枠13に縁取られた窓状の開口が設けられている。この開口には前面枠12に対して開閉可能にガラス枠14が取り付けられている。ガラス枠14には、外側(遊技者側)になるタッチパネル15と奥側になるガラス板とが二重にはめ込まれており、これらにて覆われた内部には図2に示す遊技盤30が収納されている。
【0036】タッチパネル15の遊技者に対面する表面はタッチ面15aとされており、複数のセルCに区分されている。各セルCは左上隅を原点、横方向をX座標、縦方向をY座標とする座標にて特定され、例えば最上段の左から5番目は(1-5)となる。なお、ガラス枠14に隠れる部分のセルCもあるが、この座標系にはそれらも含まれている。このタッチパネル15は容量結合方式を採用しており、例えば指先が接触すると、その接触した領域(指先の接触面)の重心点がどのセルCに属するかを判別して、接触位置(ポイント位置)をセルC単位で認識し、その座標データを出力する。なお、左下隅部に位置するセルCには、タッチパネル15の裏面に印刷されたRの文字が付けられたもの(セルCR)、左向きの矢印が付けられたもの(セルCW)及び右向きの矢印が付けられたもの(セルCS)がある。」

(エ)「【0053】こうした遊技形態自体は公知のパチンコ機と変わるところはないが、本実施例のパチンコ機10は発射強度の制御が独特であるので、次に、パチンコ機10における発射強度の制御について説明する。発射強度の制御に関わる機構の概要は図4に示すとおりで、タッチパネル15、CPU50a、ROM50b、D/A変換機53a、増幅器53b、発射モータ57等で構成される。本実施例の場合、CPU50a及びROM50bは主制御装置50のワンチップマイコンのCPU及びROMであり、D/A変換機53a及び増幅器53bは発射制御装置53に含まれている。
【0054】まずCPU50aが実行する出力調整処理(図5)を説明する。この処理では、タッチパネル15がポイント位置を検出したか否かが判断される(S101)。タッチパネル15は、遊技者が指先でタッチ面15aにタッチすると、その位置を検出してセルCの座標としてCPU50aに送信してくる。従って、S101ではタッチパネル15からの座標データを受信したか否かが判断される。
【0055】S101で肯定判断のときは、タッチパネル15から送られてきた座標データとROM50bの発射強度テーブルとを照合して、座標に対応した出力調整値を発射強度テーブルから読み込んでRAM(図5には示さない。)に記憶する(S102)。なお、このS102が実行されると、後述する微調整処理による出力調整値の補正分はクリアされる。
【0056】そして、この出力調整値をD/A変換機53a(正確には発射制御装置53)に送って発射強度を更新させる(S103)。このようにして、出力調整値(発射強度)は、新たなポイント位置が検出される毎に更新されるが、S102で選択された出力調整値は、更新履歴として少なくとも2回分(最新値とその前の値)が記憶される。
【0057】D/A変換機53aは、出力調整値をアナログ信号(電圧)に変換して増幅器53bに入力する。増幅器53bは、これを増幅して発射モータ57に入力する。発射モータ57は、入力されたアナログ信号(電圧)にて稼働するので、その発射強度が出力調整値に応じたものになる。
【0058】発射強度テーブルにおける座標と出力調整値との対応は、実験データなどに基づいて、座標に対応して選択された出力調整値(発射強度)であれば、発射された遊技球が座標で示されたセルC(ポイントされたセルC)に到達する設定である。図11は、ポイントされたセルCの座標に基づく発射強度で発射された遊技球がそのセルCに到達している例を示している。
【0059】この出力調整処理による発射強度は、セルCの例えば中心を目標位置として、そこに遊技球を到達させるための発射強度となるので、実際に遊技者が狙っている位置(タッチ面15aでポイントした位置)とは必ずしも一致しない。そこで、次のような微調整処理が行われる。
【0060】微調整処理の概要は図6に示すとおりで、本実施例の場合、タッチパネル15の矢印付きのセルCW、CSが微調整指示手段に該当している。微調整処理では、CPU50aは、セルCWまたはセルCSに遊技者が接触したか否か、つまりタッチパネル15からセルCWまたはセルCSの座標データを受信したか否かを判断する(S111)。
【0061】S111で肯定判断のときは、タッチパネル15から送られてきた座標データがセルCWであるかセルCSであるかを判断し、セルCWなら発射強度を1微調整単位分弱め、セルCSなら発射強度を1微調整単位分強めるべく出力調整値を補正し、補正後の出力調整値をRAM(図5には示さない。)に記憶する(S112)。本実施例の場合、1微調整単位は、セルCの横幅を10等分した際に1区分幅に相当する発射強度に対応している。また、補正された出力調整値は、上述のS102で出力調整値が選択更新されるまで、すべて履歴として記憶される。
【0062】そして、補正した出力調整値をD/A変換機53a(発射制御装置53)に送って発射強度を更新させる(S113)。このように、遊技者がセルCWにタッチすれば発射強度が弱め側に微調整され、遊技者がセルCSにタッチすれば発射強度が強め側に微調整されるので、遊技者は、まず上述のように目標位置とするセルCをポイントし、それによる遊技球の飛び位置を見た上でセルCWまたはセルCSにタッチすることで、所望の狙い位置を正確に指示できる。」

以上、(ア)乃至(エ)の記載、及び図面を総合すると、引用例1には、
「遊技領域が形成された遊技盤30と、遊技領域に向けて遊技球を発射する発射装置の発射強度(主強度)を設定する発射強度設定手段を備え、前記発射強度設定手段によって設定された前記主強度に基づく値を目標値として前記発射装置を制御し、遊技領域に撃ち込まれた遊技球の挙動によって遊技が行われるパチンコ機10であって、
パチンコ機10の前面枠12には、金枠13に縁取られた窓状の開口が設けられており、この開口には前面枠12に対して開閉可能にガラス枠14が取り付けられ、ガラス枠14には、外側(遊技者側)になるタッチパネル15と奥側になるガラス板とが二重にはめ込まれており、これらにて覆われた内部には遊技盤30が収納されており、タッチパネル15の遊技者に対面する表面はタッチ面15aとされ、複数のセルCに区分され、遊技者が指先でタッチ面15aにタッチしてタッチパネル15がポイント位置を検出したか否かを判断し、その位置を検出してセルCの座標としてCPU50aに送信し、
タッチパネル15から送られてきた座標データとROM50bの発射強度テーブルとを照合して、座標に対応した出力調整値を発射強度テーブルから読み込んでRAMに記憶し、この出力調整値をD/A変換機53a(正確には発射制御装置53)に送って発射強度を更新し、D/A変換機53aは、出力調整値をアナログ信号(電圧)に変換して増幅器53bに入力し、これを増幅して発射モータ57に入力して発射モータ57は、入力されたアナログ信号(電圧)にて稼働し、出力調整処理による発射強度は、遊技者がタッチしたセルCの中心を目標位置として、そこに遊技球を到達させるための発射強度となり、
左下隅部に位置するセルCには、左向きの矢印が付けられたもの(セルCW)及び右向きの矢印が付けられたもの(セルCS)があり、前記目標位置から、遊技者がセルCWにタッチすれば発射強度が弱め側に微調整され、遊技者がセルCSにタッチすれば発射強度が強め側に微調整されるパチンコ機」
の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認めることができる。

4.対比
引用発明と本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)とを対比する。
引用発明の「発射強度(主強度)」は本願発明の「発射強度」に相当し、以下同様に、
「遊技盤30」は「遊技盤」に、
「パチンコ機10」は「パチンコ機」に、
それぞれ相当する。

引用発明では、遊技盤30から見て遊技者側にタッチパネル15を設けており(すなわち本願発明における「遊技盤の前面側」に相当)、タッチパネル15は、遊技者に対面する表面はタッチ面15aとされ、複数のセルCに区分して、遊技者が指先でタッチして遊技球の発射強度を更新するのであるから、引用発明は「発射装置から発射される遊技球の発射強度を、遊技盤の前面側に設けられた発射強度設定手段を操作することにより」「調整」しているといえ、また、タッチした位置の座標に対応した出力調整値をD/A変換機53aに送って発射強度を更新していることから、「デジタルデータを変化させて調整」しているといえる。すなわち、引用発明の「タッチパネル15」は本願発明の「発射強度設定手段」に相当する。
また、引用発明では、遊技領域内の複数のセルCから目標位置を選択して遊技者がタッチすると、その座標に応じて設定された前記主強度に基づく値を目標値として前記発射装置を制御するのであるから、引用発明は「発射強度設定手段には、予め選択されたデジタルデータによる発射強度によって、遊技球が到達する所定の位置を選択するための発射強度選択手段」を備えているといえる。
また、引用発明では、遊技者がタッチしたセルCの中心を目標として、当該目標位置から、遊技者がセルCWにタッチすれば発射強度が弱め側に微調整され、遊技者がセルCSにタッチすれば発射強度が強め側に微調整されるのであるから、引用発明は「前記予め選択されたデジタルデータを含む発射強度のデジタルデータの中から選択したデジタルデータを調整開始点として、前記所定の位置を含む前記発射装置のデジタルデータの調整を行う発射強度調整手段が設けられている」といえる。

以上を総合すると両者は、
「発射装置から発射される遊技球の発射強度を、遊技盤の前面側に設けられた発射強度設定手段を操作することによりデジタルデータを変化させて調整し、前記発射装置から発射された遊技球を前記遊技盤に設けられた遊技領域に流下させるパチンコ機において、
前記発射強度設定手段には、
予め選択されたデジタルデータによる発射強度によって、遊技球が到達する所定の位置を選択するための発射強度選択手段と、
前記予め選択されたデジタルデータを含む発射強度のデジタルデータの中から選択したデジタルデータを調整開始点として、前記所定の位置を含む前記発射装置のデジタルデータの調整を行う発射強度調整手段が設けられていることを特徴とするパチンコ機。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
本願発明では、発射強度調整手段が、発射装置の最小発射強度から最大発射強度までに対応しているのに対して、引用発明では、発射強度調整手段が、発射装置の最小発射強度から最大発射強度までに対応していない点。

5.判断
<相違点>について
予め設定した値を選択できる手段と、予め設定した値を含む選択可能範囲の全てに対応し、選択した値を調整開始点として調整可能な手段を設けることは、例えば、CDプレーヤにおける曲の選択ボタン(スキップボタン)と進むボタン及び戻るボタン(サーチボタン)や、カーラジオにおける予めメモリされた周波数選択スイッチと周波数を上下に調整するための2つのスイッチ、等に見られるように、様々な分野における周知技術である。そして、発射装置の発射強度の調整をどのように行うかは、当業者が操作性等に応じて従来周知の手段より適宜選択し得る程度の事項に過ぎないため、引用発明において、発射強度の選択手段として、前記周知技術を採用して、発射強度調整手段を、発射装置の最小発射強度から最大発射強度まで対応するようにし、本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

また、本願発明の作用効果は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が予測できる範囲のものである。

なお、審判請求人は平成22年12月16日付けの回答書において「また、本願請求項1の発明は、発射強度調整手段を「遊技盤の前面側に設け」ているが(実施形態では飛距離調整スイッチ47,48は設定操作部30に設けられる(図2、3,4))、引用文献1の発明では、タッチパネル15をガラス枠14にガラス板と二重にはめ込まれており(段落0035)、両者の設置位置が異なっている。」と主張しているが、本願発明の「遊技盤の前面側に設け」では、引用発明も「遊技盤30」から見て遊技者側にタッチパネル15を設けており、引用発明との差異は認められない。

6.まとめ
よって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
 
審理終結日 2011-04-13 
結審通知日 2011-04-20 
審決日 2011-05-11 
出願番号 特願2004-191248(P2004-191248)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 足立 俊彦  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 吉村 尚
澤田 真治
発明の名称 パチンコ機  
代理人 萼 経夫  
代理人 宮崎 嘉夫  
代理人 小野塚 薫  

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