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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L |
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管理番号 | 1239366 |
審判番号 | 不服2009-3500 |
総通号数 | 140 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-08-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-02-17 |
確定日 | 2011-06-28 |
事件の表示 | 特願2002-369120「ネットワーク・プロセッサ内のデータ・ブロックの再組立てのための方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 8月15日出願公開、特開2003-229907〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯と本願発明 本願は、平成14年12月20日(パリ条約による優先権主張2001年12月21日、米国)の出願であって、平成20年4月11日付け拒絶理由通知に対して同年10月16日付けで意見書と手続補正書が提出されたが、同年11月13日付けで拒絶査定がなされ、これを不服として平成21年2月17日付けで審判請求がなされるとともに手続補正書が提出されたものであって、その特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年2月17日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。 「1つまたは複数のデータ・ブロックに分割された複数のデータ・パケットに対して、データ・ブロックをそれらのそれぞれのデータ・パケットに再組立てする方法であって、 データ・ブロックを受け取るステップと、 同じパケットからのそれぞれのデータ・ブロックに同じキュー識別子を割り当てるステップと、 同じキュー識別子を有するすべてのデータ・ブロックを合わせてグループ化するステップと、 同じパケットに再組立てされるすべてのデータ・ブロックに同じパケット識別子が割り当てられるように、それぞれのデータ・ブロックにパケット識別子を割り当てるステップと、 再組立てされたデータ・パケットに追加のデータ処理ステップを実行するステップとを含み、 前記追加のデータ処理ステップ中に、前記パケット識別子が前記データ・パケットに一意的に関連付けられている方法。」 2.引用発明 原査定の拒絶理由に引用された刊行物である特開平6-132974号公報(以下、「引用例」という。)には、「パケット・ディスアセンブル用バッファ」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。 ア.「【特許請求の範囲】 【請求項1】情報部バイト長が所定固定長のパケットを用いる通信のパケット・ディスアセンブリにおいて、 前記所定固定長の整数倍でかつ同一長の複数のパケット・ディスアセンブル用固定長バッファと、 前記パケットのヘッダ部内のコネクション識別子あるいは同一コネクション上の多重化識別子ごとに、当該同一識別子をもつパケットのディスアセンブリが完了したか否かの情報と、当該識別子とフレ-ムバッファの対応を示す情報をもとに識別子とフレームバッファの番号の対応を可変するフレーム管理手段と、 を具備することを特徴とするパケット・ディスアセンブル用バッファ。」(第2頁第1欄第1?13行) イ.「【0003】まず、セル化・デセル化について図3と図4により説明する。 【0004】図3は、セル・デセル化の説明図である。セル・デセル化機能は、図3のコンバ-ジェンス(CS)サブレイヤとSARサブレイヤとからなりATMプロトコルのアダプテ-ション・レイヤに実装されいる。 【0005】図3のように、セル化はフレ-ムからCSサブレイヤ、SARサブレイヤを経て最終的なATMセルになる。フレ-ムは開始デリミタ(SD)、アドレス・フィ-ルド(A)、制御フィ-ルド(C)、情報部、フレ-ム・チェック・シ-ケンス(FCS)、最終デリミタ(ED)からなる。CSサブレイヤに入力されたフレ-ムは、CSサブレイヤのヘッダ(CSH)とトレイラ(CST)が付加される。予め既定されたβバイトの整数倍にフレ-ムがなっていない場合には、図3のCSサブレイヤのようにPADの付加(以下「パディング」という。)を行う。CSサブレイヤから出力されたCSサブレイヤ・プロトコル・デ-タユニット(CS-PDU)はSARサブレイヤに入力され、SARヘッダ(SARH)とSARトレイラ(SART)を付加した後、ATMレイヤへATMHに関する情報とともにATMセルとして出力される。なお、デセル化は、上記セル化の逆を行う。 【0006】図4は、SARサブレイヤのフォ-マット例を示す図である。図4において、STは、セグメント・タイプであり、CS-PDUのセル化を行った時送出するセルが先頭、中間、最終、単一セルかの識別を示す。SNは、シ-ケンス番号であり、4ビット長あるためモジュロ16で値が決められる。MIDは、多重化識別子である。LIは、パディングする場合があるため、セル内の有効情報長を示している。CRCは、誤り検出符号である。SARHはST、SN、MIDで、SARTはLI、CRCで構成される各フィ-ルドとなる。SARHとSARTは、CS-PDUの組立を行う際に必要な情報を含んでいる。SARサブレイヤのデセル化処理はこれらのフィ-ルドを用いて行われ、これらのフィ-ルドに不整合がある場合、セルを廃棄する。 【0007】次に、デセル化の際使用するバッファ構成について、二つの従来例を説明する。 図5は、CS-PDUの最大長以上のフレ-ムバッファ構成とした一従来例を示す機能ブロック図である。この例は固定長バッファをコネクション識別子(VCI)、多重化識別子(MID)ごとにもつものである。まず、ATMレイヤから受信したSAR-PDUのコネクション識別子およびSARヘッダ内の多重化識別子により、書き込み制御部31はスイッチ32を制御して、同一のVCI、同一のMIDをもつSAR-SDUを用いてCS-PDUを組み立てる。この際の作業用バッファがN個分のCS-PDU長の固定長バッファをもつバッファ33である。前述したように、CS-PDUの組立て終了はSTフィ-ルドによって把握できる。組立が終了したCS-PDUは、スイッチ34の選択により読み出し制御部35を通じて上位レイヤに引き渡される。」(第2頁第1欄第27行?同頁第2欄第29行) ウ.「【0015】 【実施例】図1は、本発明の一実施例を示すブロック図である。 【0016】本実施例の各固定長バッファは、図5の従来例と同様、CS-PDUの最大長以上の固定長バッファであるが、FB管理テーブル11により管理されている。すなわち、SAR-PDU入力線14より受信されたあるコネクション上のSAR-PDUは、コネクション識別子(VCI)とフレ-ムバッファ番号(FBN)との変換テ-ブル10により、当該コネクション上のSAR-PDUが組立中である場合は使用中のFBNのバッファを、組立は終了したが上位レイヤ、この場合CSサブレイヤからの引取りが未了の場合および全くフレームバッファ(FB)12になく新規にCS-PDUを組み立てる場合には、空きフレ-ムバッファ13から新たに供給されるフレームバッファを使用するように、選択がなされる。この選択されたフレームバッファFBNをiとすると、FB管理テ-ブル11を、iをキ-にして検索し、FBiのアドレスポインタPi、情報長、ST、SN、VCI等の情報を得る。なお、CS-PDUを組立てはじめる時は、Pi、情報長、ST、SNは初期値とする。SAR-SDUはFBiのバッファに蓄積されCS-PDUが組み立てられるとともに、FB管理テ-ブル11も更新される。以上を繰り返してCS-PDUを組み立てていく。組立て終了後は、上位レイヤに引取りの要求を出し、応答があれば当該CS-PDUのアドレスポインタ、情報長を上位レイヤに提示して引取りをおこなってもらう。引取り終了後は、当該フレ-ムバッファFBiを空きフレ-ムバッファ13に入れる。」(第3頁第4欄第2?30行) 上記引用例の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、 ・上記引用例には、同一のコネクション識別子(VCI)を持つ複数のSAR-PDUを、デセル化により、それぞれのCS-PDUに再組立てする方法が記載されており(摘記事項ア.,ウ.,図1)、 ・同一のコネクション識別子(VCI)を持つ複数のSAR-PDUは、同じCS-PDUからセル化されたものであることは自明であり、 ・同一のコネクション識別子(VCI)を持つそれぞれのSAR-PDUに同じフレームバッファ番号(FBN)を割り当て(図1)、当該フレームバッファ番号のバッファに蓄積してCS-PDUを組み立てており(摘記事項ウ.)、 ・上位レイヤにCS-PDUの引取りをおこなってもらう際にアドレスポインタと情報長を上位レイヤに提示する(摘記事項ウ.)ことからして、上記アドレスポインタはCS-PDUが記憶されたフレームバッファFBiの先頭アドレスであると認められるから、同じCS-PDUに再組立されるすべてのSAR-PDUについて、該再組立時には、FB管理テーブル11が参照され同じアドレスポインタが割り当てられると認められ(摘記事項ウ.,図1)、 ・上記アドレスポインタはCS-PDUの記憶位置を示すものでもあるから、CS-PDUに一意的に関連付けられている、と言うことができ、 以上を総合すれば、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「複数のSAR-PDUにセル化された複数のCS-PDUに対して、SAR-PDUをそれらのそれぞれのCS-PDUに再組立てする方法であって、 SAR-PDUを受け取るステップと、 同じCS-PDUからのそれぞれのSAR-PDUに同じフレームバッファ番号を割り当てるステップと、 同じフレームバッファ番号を有するすべてのSAR-PDUを蓄積してCS-PDUを再組立てするステップと、 同じCS-PDUに再組立されるすべてのSAR-PDUに同じアドレスポインタが割り当てられるように、それぞれのSAR-PDUにアドレスポインタを割り当てるステップと、 再組立てされたCS-PDUを上位レイヤに提示するステップとを含み、 前記上位レイヤに提示するステップ中に、アドレスポインタが前記CS-PDUに一意的に関連付けられている方法。」 3.対比 本願発明と引用発明とを対比するに、 ・本願発明の「データ・ブロック」、「データ・パケット」または「パケット」、は、それぞれ、引用発明の「SAR-PDU」、「CS-PDU」、に相当し、 ・本願発明の「キュー識別子」と引用発明の「フレームバッファ番号」とは、いずれもデータ・ブロック(引用発明のSAR-PDU)に関連した情報、すなわち、「ブロック関連情報」である点で共通し、 ・本願発明の「1つまたは複数のデータ・ブロック」は、引用発明の「複数のSAR-PDU」を含み、 ・引用発明の「セル化」とは、CS-PDUを複数のSAR-PDUに分割することに他ならない(摘記事項イ.から)、引用発明の「セル化された」は本願発明の「分割された」と同義であり、 ・引用発明の「SAR-PDUを蓄積してCS-PDUを再組立てする」は、「SAR-PDUを合わせてCS-PDUにグループ化する」とも言い得るから、本願発明の「データ・ブロックを合わせてグループ化する」に相当し、 ・引用発明の「上位レイヤに提示するステップ」は、CS-PDUを再組立した後のデータ処理ステップであって、「追加のデータ処理ステップ」と言い得るものであるから、本願発明の「追加のデータ処理ステップ」に含まれ、 ・本願発明の「パケット識別子」と引用発明の「アドレスポインタ」は、ともに、データパケット(引用発明のCS-PDU)に関連した情報、すなわち、「パケット関連情報」である点で共通し、また、追加のデータ処理ステップ中は、データパケット(引用発明のCS-PDU)に「一意的に関連付けられた情報」である点で一致し、 したがって、両発明は以下の点で一致及び相違する。 (一致点) 「1つまたは複数のデータ・ブロックに分割された複数のデータ・パケットに対して、データ・ブロックをそれらのそれぞれのデータ・パケットに再組立てする方法であって、 データ・ブロックを受け取るステップと、 同じパケットからのそれぞれのデータ・ブロックに同じブロック関連情報を割り当てるステップと、 同じブロック関連情報を有するすべてのデータ・ブロックを合わせてグループ化するステップと、 同じパケットに再組立てされるすべてのデータ・ブロックに同じパケット関連情報が割り当てられるように、それぞれのデータ・ブロックにパケット関連情報を割り当てるステップと、 再組立てされたデータ・パケットに追加のデータ処理ステップを実行するステップとを含み、 前記追加のデータ処理ステップ中に、前記パケット関連情報が前記データ・パケットに一意的に関連付けられている方法。」 (相違点1) 「ブロック関連情報」が、本願発明では「キュー識別子」であるのに対し、引用発明では「フレームバッファ番号」である点。 (相違点2) 「パケット関連情報」が、本願発明では「パケット識別子」であるのに対し、引用発明では「アドレスポインタ」である点。 4.検討 以下に、上記各相違点につき検討する。 (相違点1)について 本願発明の「キュー識別子」について、本願明細書には、「プリプロセッサ12では、各データ・ブロックに、そのブロック内のパケット・ソース情報に基づいてキュー識別子(QID)が割り当てられる。したがって、パケットから分割されたすべてのブロックが、同じQIDを保有する。同様に、同じソースからの他のブロックを再組立てすることができる前に、1つのソースからのすべてのブロックがパケットに元通り再組立てされなければならない。以下に述べるように、リアセンブラ14内で、同じQIDを有するすべてのブロックが、パケットに再組立てされる。」(段落【0014】)と記載されているように、本願発明の「キュー識別子」は、同一のパケットに再組立されるブロックであることを示す情報であると認められる。 一方、引用発明の「フレームバッファ番号」は、FB管理テーブル11を検索するためのキーとして用いられるもので、該検索された情報に基づいて1つのCS-PDUが再組立される(摘記事項ウ.,図1)から、同一のCS-PDUに再組立されるSAR-PDUであることを示す情報であると言える。 とすると、本願発明の「キュー識別子」も引用発明の「フレームバッファ番号」も、データ・ブロックからデータ・パケットを再組立するときに用いられるブロック関連情報であって、同一のデータ・パケットに再組立されるデータ・ブロックを識別する情報、である点で同一の機能および作用を果たすものであり、両者の相違は単なる呼称の相違でしかないと認められる。 したがって、上記相違点1は格別の相違とすることはできない。 (相違点2)について、 本願発明の「パケット識別子」について、本願明細書には、「パケットがリアセンブラ14内で再組立てされるとき、一意のパケット識別子(PID)が、各パケットに割り当てられ、パケット開始およびパケット終了識別子が追加されてダウンストリーム・ネットワーク・プロセッサをパケット処理で支援する。リアセンブラ14は、QID値にしたがって索引付けされ、PIDフィールドおよび1ビットのQID妥当フィールドを内容として有するQID-PIDテーブルを含む。したがってこのテーブルは、PID値を各QID値に関連付けるために使用される。リアセンブラ14は、ブロックQID値を読取り、この値をテーブルに対する索引として使用して、テーブルから関連するPID値を選択する。QID妥当フィールドは、QID値が使用されているかどうか、すなわち、プリプロセッサ12が、再組立てを受けているパケットにQIDを割り当てたかどうか、を示す。このテーブルは、パケットに対するQID値に基づいてパケットに対するPID値を見つけるために使用されるので、以下でQID-PIDルックアップ・マップとも呼ばれる。」(段落【0016】)と記載されているように、本願発明の「パケット識別子」は、QID-PIDルックアップ・マップにおいてキュー識別子から索引付けされる情報であって、データ・パケット再組立終了後の追加のデータ処理を支援するためのパケット関連情報であると認められる。 一方、引用発明の「アドレスポインタ」は、FB管理テーブル11においてフレームバッファ番号から索引付けされる情報であって、その後の上位レイヤでの処理に使用されるものである(摘記事項ウ.,図1)から、データ・パケット再組立終了後の追加のデータ処理を支援するためのパケット関連情報であると言える。 とすると、本願発明の「パケット識別子」も引用発明の「アドレスポインタ」も、データ・ブロックからデータ・パケットを再組立した後に用いられるパケット関連情報であって、データ・パケット再組立後の追加のデータ処理を支援するためにデータパケットを識別する情報である点、および、上記追加のデータ処理中は、データ・パケットに一意的に関連付けられている情報である点、で同一の機能および作用を果たすものであり、両者の相違は単なる呼称の相違でしかないと認められる。 したがって、上記相違点2は格別の相違とすることはできない。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、上記引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-01-27 |
結審通知日 | 2011-01-31 |
審決日 | 2011-02-14 |
出願番号 | 特願2002-369120(P2002-369120) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 倉山 徹男 |
特許庁審判長 |
竹井 文雄 |
特許庁審判官 |
宮田 繁仁 新川 圭二 |
発明の名称 | ネットワーク・プロセッサ内のデータ・ブロックの再組立てのための方法および装置 |
代理人 | 岡部 讓 |
代理人 | 加藤 伸晃 |
代理人 | 越智 隆夫 |
代理人 | 朝日 伸光 |
代理人 | 臼井 伸一 |
代理人 | 岡部 正夫 |