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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1239369
審判番号 不服2009-11829  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-06-29 
確定日 2011-06-27 
事件の表示 特願2000- 62169「磁気記録ドライブ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 9月14日出願公開、特開2001-250371〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成12年3月7日に出願したものであって、平成21年1月20日付けの拒絶理由通知に対して同年3月16日付けで手続補正がなされたが、同年3月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月29日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで明細書について手続補正がなされた。
その後、平成22年11月30日付けで前置報告書(特許法第164条第3項)に基づく審尋がなされたが、回答書は提出されなかったものである。


第2 平成21年6月29日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成21年6月29日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.本件補正
平成21年6月29日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について、

本件補正前に、
「【請求項1】 磁気ディスクに対して磁気ヘッドをローディングさせて、信号の記録
/再生を行なう磁気記録ドライブ装置であって、
磁気記録ドライブ装置内に配設された温度センサと、
磁気記録ドライブ装置内を加温する加温手段と、
磁気記録ドライブ装置内を冷却する冷却手段と、
上記温度センサから得た温度情報と予め設定した温度とを比較するとともに、上記加温手段又は冷却手段を駆動して磁気記録ドライブ装置内の温度の一定化を図る制御回路と、を備え、
磁気記録ドライブ装置内の温度が設定温度範囲外のときは、磁気ヘッドのランディングを行わない又は磁気ヘッドのテイクオフをするようにした
ことを特徴とする磁気記録ドライブ装置。
【請求項2】 請求項1に記載した磁気記録ドライブ装置であって、
信号の記録/再生中に磁気記録ドライブ装置内の温度が設定温度範囲外になったときは、磁気ヘッドのランディングを行わない又は磁気ヘッドのテイクオフをするようにしたことを特徴とする磁気記録ドライブ装置。
【請求項3】 請求項2に記載した磁気記録ドライブ装置であって、
信号の記録/再生中に磁気記録ドライブ装置内の温度が設定温度範囲外になったときから所定時間経過後に、磁気ヘッドのテイクオフをするようにした
ことを特徴とする磁気記録ドライブ装置。
【請求項4】 請求項1、請求項2又は請求項3に記載した磁気記録ドライブ装置であって、
ヘッドランディング機構により磁気ヘッドのテイクオフをするようにした
ことを特徴とする磁気記録ドライブ装置。
【請求項5】 請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に記載した磁気記録ドライブ装置であって、
磁気ヘッドには磁気抵抗効果素子が用いられている
ことを特徴とする磁気記録ドライブ装置。」
とあったところを、

本件補正後、
「【請求項1】 磁気ディスクに対して磁気ヘッドをローディングさせて、信号の記録
/再生を行なう磁気記録ドライブ装置であって、
磁気記録ドライブ装置内に配設された温度センサと、
磁気記録ドライブ装置内を加温する加温手段と、
磁気記録ドライブ装置内を冷却する冷却手段と、
上記温度センサから得た温度情報と予め設定した温度とを比較するとともに、上記加温手段又は冷却手段を駆動して磁気記録ドライブ装置内の温度の一定化を図る制御回路と、
を備え、
信号の記録/再生中に磁気記録ドライブ装置内の温度が5℃以下になったときは、磁気ヘッドのテイクオフをするようにした
ことを特徴とする磁気記録ドライブ装置。
【請求項2】 請求項1に記載した磁気記録ドライブ装置であって、
上記磁気ヘッドのテイクオフはヘッドアンローディングである
ことを特徴とする磁気記録ドライブ装置。
【請求項3】 請求項1に記載した磁気記録ドライブ装置であって、
信号の記録/再生中に磁気記録ドライブ装置内の温度が5℃以下になったときから所定時間経過後に、磁気ヘッドのテイクオフをするようにした
ことを特徴とする磁気記録ドライブ装置。
【請求項4】 請求項1、請求項2又は請求項3に記載した磁気記録ドライブ装置であって、
ヘッドランディング機構により磁気ヘッドのテイクオフをするようにした
ことを特徴とする磁気記録ドライブ装置。
【請求項5】 請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に記載した磁気記録ドラ
イブ装置であって、磁気ヘッドには磁気抵抗効果素子が用いられている
ことを特徴とする磁気記録ドライブ装置。」
とするものである。

上記本件補正は、本件補正前の請求項1を引用する請求項2に、「信号の記録/再生中に磁気記録ドライブ装置内の温度が設定温度範囲外になったときは、磁気ヘッドのランディングを行わない又は磁気ヘッドのテイクオフをするようにした」とあったところを、「信号の記録/再生中に磁気記録ドライブ装置内の温度が5℃以下になったときは、磁気ヘッドのテイクオフをするようにした」と限定して補正後の請求項1とし、本件補正後の請求項2については、本件補正後の請求項1を引用して、「上記磁気ヘッドのテイクオフはヘッドアンローディングである」と、磁気ヘッドのテイクオフについて限定し、本件補正後の請求項3については、本件補正前の請求項3に、「磁気記録ドライブ装置内の温度が設定温度範囲外になったときから」とあったところを、「磁気記録ドライブ装置内の温度が5℃以下になったときから」と限定するものであって、上記本件補正は、特許請求の範囲を減縮しようとするものであると認められる。

よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否かを、請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)について以下に検討する。

本願補正発明は、次に記載するとおりのものである。

「【請求項1】 磁気ディスクに対して磁気ヘッドをローディングさせて、信号の記録
/再生を行なう磁気記録ドライブ装置であって、
磁気記録ドライブ装置内に配設された温度センサと、
磁気記録ドライブ装置内を加温する加温手段と、
磁気記録ドライブ装置内を冷却する冷却手段と、
上記温度センサから得た温度情報と予め設定した温度とを比較するとともに、上記加温手段又は冷却手段を駆動して磁気記録ドライブ装置内の温度の一定化を図る制御回路と、
を備え、
信号の記録/再生中に磁気記録ドライブ装置内の温度が5℃以下になったときは、磁気ヘッドのテイクオフをするようにした
ことを特徴とする磁気記録ドライブ装置。」


2.引用例及びその記載事項

(1)引用例1

原査定の拒絶の理由に引用された特開昭57-205875号公報(以下「引用例1」という)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(a)「2.特許請求の範囲
密閉構造型磁気ディスク装置において,該装置内部に温度,湿度センサと除湿機構及び温度制御機構を備えていることを特徴とする磁気ディスク装置。」(1頁左下欄4ないし8行)

(b)「第2図は本発明による磁気ディスク装置の1実施例を説明するための断面図である。図において,密閉型の磁気ディスク装置のカバー9上部に温度センサ10(実施例では熱電対),及び湿度センサ11(実施例では半導体式湿度センサ)を設け,又装置のカバー9側部にパイプ12をクローズループ状に連結し,該パイプ12の途中に冷却器13(実施例では熱交換機),加熱器14(実施例では40?50Wヒータ),除湿器15を直列に接続して,温度制御機構16により装置内部の温度を,除湿器15で湿度(規定以下の湿度に)を夫々制御する。以上のように密閉された装置内部に温度センサ10,湿度センサ11を備えることにより,装置内部の温度,湿度をモニタし,夫々規定値を超えると冷却器13,加熱器14,除湿器15が夫々働き,内部空気の温度,湿度の状態をほぼ一定に保っている。」(2頁左上欄13行ないし右上欄10行)

上記引用例1に記載された事項及び図面の記載を総合勘案すると、引用例1には、結局、次の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。

「磁気ディスク装置の内部に温度センサを設け、冷却器、加熱器からなる温度制御機構により装置内部の温度を制御し、規定値を超えると冷却器、加熱器が夫々働き、内部空気の温度の状態をほぼ一定に保つ磁気ディスク装置。」

(2)引用例2

同じく原査定の拒絶の理由に引用された特開平09-245419号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

(c)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 装置内の温度を検出する温度検出手段と、
この温度検出手段により検出された温度が、前記ディスクへの書き込み動作を保証する所定の温度範囲内にあるか否かを判定する判定手段と、
この判定手段により前記温度検出手段によって検出された温度が前記所定の温度範囲内にないことが判定された場合、前記ディスクへの書き込み動作を禁止する制御手段とを具備することを特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項2】 ディスクを駆動するモータと、
装置内の温度を検出する温度検出手段と、
この温度検出手段により検出された温度が、前記ディスクへの書き込み動作を保証する所定の温度範囲内にあるか否かを判定する判定手段と、
この判定手段により前記温度検出手段によって検出された温度が前記所定の温度範囲内にないことが判定された場合、前記ディスクへの書き込み動作を禁止すると共に前記モータを停止する制御手段とを具備することを特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項3】 ディスクを駆動する第1のモータと、
前記ディスクに対して信号の書き込み及び読み出しを行う磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドを前記ディスク面上で移動させるための第2のモータと、
装置内の温度を検出する温度検出手段と、
この温度検出手段により検出された温度が、前記ディスクへの書き込み動作を保証する所定の温度範囲内にあるか否かを判定する判定手段と、
この判定手段により前記温度検出手段によって検出された温度が前記所定の温度範囲内にないことが判定された場合、前記ディスクへの書き込み動作を禁止すると共に、前記第1のモータ及び前記第2のモータを停止する制御手段とを具備することを特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項4】 ディスクを駆動する第1のモータと、
前記ディスクに対して信号の書き込み及び読み出しを行う磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドを駆動するヘッド駆動回路と、
前記磁気ヘッドを前記ディスク面上で移動させるための第2のモータと、
前記第1のモータ及び前記第2のモータに駆動電力を供給するモータ駆動回路と、
装置内の温度を検出する温度検出手段と、
この温度検出手段により検出された温度が、前記ディスクへの書き込み動作を保証する所定の温度範囲内にあるか否かを判定する判定手段と、
この判定手段により前記温度検出手段によって検出された温度が前記所定の温度範囲内にないことが判定された場合、前記ディスクへの書き込み動作を禁止すると共に、前記ヘッド駆動回路、前記第1のモータ、前記第2のモータ、前記モータ駆動回路のうち少なくとも1つへの電力供給を停止する制御手段とを具備することを特徴とする磁気ディスク装置。」

(d)「【0003】ところで、HDDにおいては、安定動作を保証する温度範囲が機種毎に仕様上定められている。例えば、5℃?55℃程度を安定動作を保証する温度範囲としているものが多い。このHDDの安定動作を保証する温度範囲外の環境下、特にこの温度範囲を越える高温環境下においては、HDD内のメカ的な歪みや各回路素子の動作特性の変化等によって様々な動作障害を起こす危険がある。」

(e)「【0024】このHDDの第1の特徴は、HDD内の温度を監視し、このHDD内の温度がHDDの安定動作を保証する温度範囲内にない(保証温度範囲の上限を越える)場合はディスク1へのデータ書き込み動作を禁止するように制御する点にある。以下、この制御を温度による書き込み制御と呼ぶ。また、このHDDの第2の特徴は、高温環境下においてデータ書き込み動作を禁止した際、SPM2やVCM4等の発熱源の動作を停止(電力供給を停止)することでHDD内の総発熱量を抑制し、以てHDD内温度を低下させるようにした点にある。以下、この機能を温度によるモータ制御機能と呼ぶ。」


(3)引用例3

前置報告書において引用された特許第2626183号公報(平成9年4月11日発行、以下「引用例3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

(f)「従来の技術
磁気記録装置は磁気ハードディスク装置、磁気テープ装置、フロッピーディスク装置、磁気カード装置等があるが、その中で高記録密度に伴い-番耐摩耗、耐摩擦が厳しく追求されるのは磁気ハードディスク装置と考えられる。その磁気ハードディスクの代表的な構成図を第一図に示す。アルミ基板上に非磁性支持体のNi-Pをプレーティングし、その上に強磁性金属薄膜(Co-Ni等)、耐食性保護膜(Cr等)、カーボン保護膜をスパッタリング法で作成し、最後に潤滑剤(パーフルオロアルキルポリエーテル等)をコーティングしている。現在、磁気ハードディスクの場合浮上型磁気ヘッドを用いた磁気記録装置はコンタクト・スタート・ストップ方式(以下CSSと称す)が起動停止方式の主流を占めているが、このCSS方式では、ディスク回転の起動・停止時に記録再生磁気ヘッド(以下ヘッドと称す)が磁気記録媒体面上に接触する。これによって、ヘッドや磁気記録媒体表面が摩耗したり、両者間の摩擦係数が上昇したり、甚だしい場合はヘッドあるいは磁気記録媒体の磁性層の破壊(クラッシュ)が発生する場合がある。従ってこのような問題点を回避するため、磁性層の上にグラファイトを主体とするカーボンや二酸化ケイ素等で代表されるような保護膜を形成しその上にエーテル結合を有するパーフルオロアルキルポリエーテルのような液体潤滑剤を使った潤滑層が一般に使われており、この層を設けることにより数段磁気記録媒体の耐久性が向上した。しかし、それでも耐久性としてはまだ充分満足できるものではなかったため新しい潤滑剤として開発されたのが部分フッ素化アルキル系潤滑剤であり(特開・昭62-219314号公報)、この開発により通常環境では充分満足し得る耐久性が得られるようになった。
発明が解決しようとする課題
ところで、磁気記録装置の使用は、全世界のあらゆる地域で使われている。そのため、地域によっては高温高湿、高温低湿、低温高湿、低温低湿の各々の環境条件があり、それらの全ての環境条件で安定した耐久性を示さななければならない。そのなかで、ヘッドあるいは磁気記録媒体に化学吸着するいずれかの極性基を持ったパーフルオロアルキルポリエーテルや部分フッ素化アルキル系潤滑剤は、通常環境もしくは高温(高湿)下では充分な耐久性をしめすものの低温(低湿)下では若干耐久性の劣化がみられる。この傾向を示す実験結果を第2図に示す。これは潤滑剤が磁気記録媒体のみあるいはヘッドのみに化学吸着しているためであると考えられる。すなわち、低湿では潤滑剤が化学吸着していない磁気記録媒体またはヘッド表面上の吸着水の量が減少し摩耗し易い状態になっている。このためヘッドまたは磁気記録媒体の一方のみに潤滑剤を化学吸着させても充分に摩耗を抑えることはできず劣化が起こる。更に低温では化学吸着していた潤滑剤がヘッド-磁気記録媒体間の摩耗により剥離した場合温度が低いため潤滑剤の剥離した場所に再吸着しにくく、そのため充分な耐久性が得られないという問題点がある。」 (1頁2欄1行ないし2頁4欄4行)

(g)「この混合潤滑剤の発明により磁気ハードディスク、磁気テープはもちろんのことフロッッピーディスク、磁気カードにも応用され、高記録密度に向けての磁気記録装置の信頼性に大きく貢献する事が可能となる。」(6頁12欄9行ないし13行)

(h)図2には、低温(5℃)低湿下において摩擦力が増大することが示されている。


3.対比

本願補正発明を、引用発明と対比する。

磁気ディスク装置は、磁気ディスクを駆動し、磁気ディスクに対して磁気ヘッドをローディングさせて、信号の記録/再生を行うものであるから、引用発明における「磁気ディスク装置」は、本願補正発明の「磁気ディスクに対して磁気ヘッドをローディングさせて、信号の記録/再生を行なう磁気ディスクドライブ装置」に相当する。
引用発明における、「温度センサ」は磁気ディスク装置の内部に設けられるものであるから、本願補正発明の「磁気記録ドライブ装置内に配設された温度センサ」に相当し、また、引用発明における「冷却器」、「加熱器」は、磁気ディスク装置内の温度の状態をほぼ一定に保つものであるから、本願補正発明の「磁気記録ドライブ装置内を加温する加温手段」「磁気記録ドライブ装置内を冷却する冷却手段」に相当する。
引用発明の「温度制御機構」は、装置内部の温度を制御し、規定値を超えると冷却器、加熱器が夫々働き、内部空気の温度の状態をほぼ一定に保つものであって、温度センサから得た温度が規定値を超えると、冷却器又は加熱器が働くことは明らかであり、また、温度センサからの信号を用いて温度を一定に保つ際に制御回路を用いることは技術常識であるから、引用発明は、本願発明の「温度センサから得た温度情報と予め設定した温度とを比較するとともに、上記加温手段又は冷却手段を駆動して磁気記録ドライブ装置内の温度の一定化を図る制御回路」を備えるものである。

すると、本願補正発明と引用発明とは、次の<一致点>及び<相違点>を有する。

<一致点>
「磁気ディスクに対して磁気ヘッドをローディングさせて、信号の記録/再生を行なう磁気記録ドライブ装置であって、
磁気記録ドライブ装置内に配設された温度センサと、
磁気記録ドライブ装置内を加温する加温手段と、
磁気記録ドライブ装置内を冷却する冷却手段と、
上記温度センサから得た温度情報と予め設定した温度とを比較するとともに、上記加温手段又は冷却手段を駆動して磁気記録ドライブ装置内の温度の一定化を図る制御回路と、
を備える磁気記録ドライブ装置。」

<相違点>
本願補正発明は、「信号の記録/再生中に磁気記録ドライブ装置内の温度が5℃以下になったときは、磁気ヘッドのテイクオフをする」のに対し、引用発明は、そのような特定がない点。


4.判断

相違点について

(a)一般に、磁気ディスク装置内の温度センサによって検出された温度が所定の温度範囲外になったとき、磁気ディスク装置を動作させないようにすることは、例えば、上記引用例2(上記2.(2)参照)のほか、特開平5-174565号公報(段落【0003】参照)に記載されているように周知技術であり、また、磁気ディスク装置の動作中に温度が所定の温度範囲外になったときに磁気ディスク装置の動作を終了させることも、例えば、上記特開平5-174565号公報(段落【0018】ないし【0020】参照)に記載されているように周知技術であるから、記録動作及び再生動作において、磁気記録ドライブ装置内の温度が設定温度範囲以下になったとき、磁気ディスクドライブ装置の動作を停止させることは、当業者が容易に想到し得る事項である。

(b)そして、一般に、磁気ディスク装置において、記録再生動作を行っていないときに、ヘッドをアンロードさせることは、特開昭61-82375号公報(3頁右上欄14行ないし左下欄5行、4頁左下欄6行ないし右下欄20行、図3、図4参照)、特開平6-150595号公報(段落【0006】ないし【0007】、図14ないし図16参照)に記載されているように、周知技術であるから、磁気記録ドライブ装置内の温度が設定温度範囲以下になり、記録再生動作を実行しなくなったときに、ヘッドをテイクオフ(アンロード)させることに格別の困難性を有しない。

(c)また、設定温度範囲の下限値を「5℃」とすることは、例えば、引用例2(上記2.(2)(d)参照)に記載されているように、磁気ディスク装置の安定動作のために当業者が通常設定する程度の値であり、また、低温下(5℃程度)において、ヘッドと媒体間の摩擦が大きくなることは、例えば、引用例3(上記2.(3)(f)ないし(h)参照)に記載されているようによく知られた事項であるから、本願補正発明のように、設定温度範囲の下限値を「5℃」とすることに格別の困難性を有しない。

以上のとおりであるから、本願補正発明は、各引用例に記載された発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.本件補正についての結び
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1.本願発明

平成21年6月29日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年3月16日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであって、上記「第2[理由]1.本件補正」に補正前の請求項1として記載されたとおりのものである。

2.引用例

原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、上記「第2[理由] 2.引用例及びその記載事項 」に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願発明は、上記「第2」で検討した本願補正発明から、「信号の記録/再生中に」との限定を削除するとともに、「磁気記録ドライブ装置内の温度が5℃以下になったときは、磁気ヘッドのテイクオフをするようにした」について、「磁気記録ドライブ装置内の温度が設定温度範囲外のときは、磁気ヘッドのランディングを行わない又は磁気ヘッドのテイクオフをするようにした」として、温度の数値限定を削除し、選択的な発明特定事項として「磁気ヘッドのランディングを行わない」ことを付加したものである。

そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、更に他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が前記「第2 〔理 由〕 4.判断」に示したとおり、各引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、各引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-04-07 
結審通知日 2011-04-12 
審決日 2011-05-09 
出願番号 特願2000-62169(P2000-62169)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
P 1 8・ 575- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 橘 均憲渡邊 聡  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 月野 洋一郎
石川 正二
発明の名称 磁気記録ドライブ装置  
代理人 岩田 雅信  

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