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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B30B
管理番号 1239371
審判番号 不服2009-13875  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-08-04 
確定日 2011-06-29 
事件の表示 特願2005-121861「工作機械の安全を確保するための方法、及びこのような方法を実施するための光電式センサ」拒絶査定不服審判事件〔平成17年11月17日出願公開、特開2005-319517〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成17年4月20日(パリ条約による優先権主張2004年4月23日、ドイツ国)の出願であって、平成20年8月26日付けで手続補正がなされ、平成21年3月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月4日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで明細書を補正対象とする手続補正(以下、同手続補正を「本件補正」という。)がなされたものである。

第2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲は、
「【請求項1】工作物(6)に対する機械加工処理を行うために第2工具部(4)の方向に加工動作する第1工具部(2)を含む工作機械の安全を確保するための方法であって、
光が前記工具部(2,4)の間に形成された開放間隙(8)を送信器(12)により送信され、マトリックス状の受光素子を含む受信器(14)により検知されることから、光電式センサ(12,14)が該工具部(2,4)の間にある3次元の防護領域(18,20)を監視しており、且つ、
個々の受光素子又は該受光素子の特定の集団が光を全く受信しない場合に前記第1工具部(2)が停止されるものにおいて、
前記センサ(12,14)が前記第1工具部と共に移動されること、
個々の工作物領域又は工具領域の間の相対位置が、前記機械加工処理の前及び/又は最中及び/又は後に、前記受信器の受光素子により伝えられる信号から決定されること、
隣接する受光素子の集団が測定ウィンドウ(22)として定義され、前記測定ウィンドウ(22)により伝えられる信号のみが、前記相対位置を決定するために使用されること、及び、
決定された前記相対位置に応じて、機械加工された前記工作物(6)を分類するか、或いは、工具を分類すること、
を特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
上記受光素子により伝えられる信号を評価することにより、工作物(6)又は工具のシルエットが決定されること、を特徴とするもの。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、
決定された上記相対位置に応じて、工作物(6)に対する機械加工処理又は上記工作機械の制御を行うか、信号装置に作用を及ぼすこと、を特徴とするもの。
【請求項4】
請求項1?3のいずれかに記載の方法において、
上記測定ウィンドウ(22)が上記マトリックス内で移動されること、又は、該測定ウィンドウ(22)の大きさ及び/又は形状が機械加工中に変更されること、を特徴とするもの。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、
決定された上記相対位置又は測定値、及び/又は上記工作機械の動作状態、及び/又は作業者の入力に従い、上記変更が行われること、を特徴とするもの。
【請求項6】
請求項1?5のいずれかに記載の方法において、
直線から成る輪郭を備えた上記工作物(6)の領域が画像処理アルゴリズムにより決定され、且つ、上記測定ウィンドウ(22)が該領域に置かれること、を特徴とするもの。
【請求項7】
請求項1?6のいずれかに記載の方法において、
上記測定ウィンドウ(22)が、上記第1工具部(2)に対して固定された位置にあるか、該位置に配されること、を特徴とするもの。
【請求項8】
工作物(6)に対する機械加工処理を行うべく第2工具部(4)の方向に加工動作するための第1工具部(2)を含む工作機械の安全を確保するための防護装置たる光電式センサであって、
該センサ(12,14)が、前記工具部(2,4)の間にある3次元の防護領域(18,20)を監視するためであって、該工具部(2,4)の間に形成された開放間隙(8)に光を送信するための送信器(12)と、前記送信光を検知するためのマトリックス状の受光素子を含む受信器(14)とを有し、且つ、
該センサ(12,14)が、更に、個々の受光素子又は該受光素子の特定の集団が光を全く受信しない場合に前記第1工具部(2)を停止させるための評価及び制御ユニットを有するものにおいて、
隣接する受光素子の集団により測定ウィンドウ(22)が定義されること、
該センサが、前記工作機械における、前記第1工具部(2)に対して固定された位置に取り付けられること、
前記評価及び制御ユニットが、前記受光素子により伝えられる信号に従い、個々の工作物領域又は工具領域の間の相対位置を決定するように追加で設計されること、
前記評価及び制御ユニットが、前記測定ウィンドウ(22)により伝えられる信号のみが前記相対位置を決定するために使用されるように適合されていること、及び、
決定された前記相対位置に応じて、機械加工された前記工作物(6)の分類、或いは、工具の分類が行われること、
を特徴とする光電式センサ。
【請求項9】
請求項8に記載の光電式センサにおいて、
該光電式センサが、請求項1?7のいずれかに記載の方法を実施するために作られていること、を特徴とするもの。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の光電式センサにおいて、
上記送信器(12)が、平行光束(16)を送信するように設計されること、を特徴とするもの。
【請求項11】
請求項8?10のいずれかに記載の光電式センサにおいて、
上記評価及び制御ユニットとその受信器とが互いに結合され、且つ、特には一般的な筐体に収容されること、を特徴とするもの。
【請求項12】
請求項8?11のいずれかに記載の光電式センサにおいて、
上記評価及び制御ユニットが、スイッチオフ信号と決定された上記相対位置を記述するデータとを送信するためのデータ出力を有すること、を特徴とするもの。
【請求項13】
請求項8?12のいずれかに記載の光電式センサにおいて、
上記工作機械が、スタンピングプレス機又は折り曲げプレス機又は曲げ機又は切削機又は打抜き機として作られていること、を特徴とするもの。」
と、補正された。

(2)補正事項
上記補正は、以下の事項からなる。

ア.補正事項1
請求項1に記載された発明を特定する事項である「光電式センサ(12,14)」を、さらに「前記センサ(12,14)が前記第1工具部と共に移動されること」と限定する。

イ.補正事項2
請求項1に記載された発明を特定する事項である「個々の工作物領域又は工具領域の間の相対位置が、前記受光素子により伝えられる信号から決定されること」とあるのを、「個々の工作物領域又は工具領域の間の相対位置が、前記機械加工処理の前及び/又は最中及び/又は後に、前記受信器の受光素子により伝えられる信号から決定されること」と補正する。

ウ.補正事項3
請求項1に、発明を特定する事項である「隣接する受光素子の集団が測定ウィンドウ(22)として定義され、前記測定ウィンドウ(22)により伝えられる信号のみが、前記相対位置を決定するために使用されること」との事項を加入する。

エ.補正事項4
元の請求項4,5を削除する。

オ.補正事項5
補正事項4に伴って、元の請求項6?9を、新たな請求項4?7とし、引用する請求項を合わせて補正する。

カ.補正事項6
請求項10に、発明を特定する事項である「隣接する受光素子の集団により測定ウィンドウ(22)が定義されること」、「該センサが、前記工作機械における、前記第1工具部(2)に対して固定された位置に取り付けられること」、及び、「 前記評価及び制御ユニットが、前記測定ウィンドウ(22)により伝えられる信号のみが前記相対位置を決定するために使用されるように適合されていること」を加入し、同項に記載された発明を特定する事項である「機械加工された前記工作物(6)の分類、或いは、工具の分類が行われること」に、「決定された前記相対位置に応じて」との限定を加え、新たな請求項8とする。

キ.補正事項7
補正事項4に伴って、元の請求項11、12を、新たな請求項9,10とし、引用する請求項を合わせて補正する。

ク.補正事項8
元の請求項13を削除する。

ケ.補正事項9
補正事項8に伴って、元の請求項14?16を、新たな請求項11?13とし、引用する請求項を合わせて補正する。

(3)補正の目的
補正事項1?3は、請求項1について、「光電式センサ」が「第1工具部と共に移動」されること、及び、「相対位置の決定」が「機械加工処理の前及び/又は最中及び/又は後」になされることを限定するもの、及び、請求項1に発明を特定する事項を新たに加入するものであって、これは、平成18年法律第55号による改正前の特許法(以下、「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(4)請求項1に係る発明について
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(4-1)引用刊行物
○引用刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第03/104711号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、「A SAFETY SYSTEM(安全システム)」に関して、図面とともに、以下のとおり記載されている。

ア.「CLAIMS」(特許請求の範囲の請求項1)
「1.A safty system for use with a machine having a moving tool arranged to move through a known path of movement, the safty sytem being arranged to detect the presence of an obstruction in a region around a portion of said path deemed to be hazardous, the safty system characterised by comprising:
a light emitting means arranged to emit light generally perpendicular to the path of movement of the tool such that said region is illuminated;
a light receiving means arranged to receive light from the light emitting means which has passed through said region; and
a processing and control means arranged to receive information from the light receiving means and determine whether an obstruction exists in said region by the presence of one or more shadow regions cast on the light receiving means by the obstruction and to control movement of the tool dependent on the presence of obustructions in said region.」

イ.「BRIEF DESCRIPTION OF THE INVENTION」(公報第1頁4?6行)
「The present invention relates to a safty system, in particular a system for use with machinery having moving parts, such as press brakes, to detect the presence of an obstruction in the path of the moving part.」

ウ.「SUMMARY OF THE INVENTION」(公報第3頁5?18行)
「In accordance with one aspect of present invention there is provided a safty system for use with a machine having a moving tool arranged to move through a known path of movement, the safty system being arranged to detect the presence of an obstruction in a region around a portion of said path deemed to be hazardous, the safety system is charactered by comprising:
a light emitting means arranged to emit light generally perpendicular to the path of movement of the tool such that said region is illuminated;
a light receiving means arranged to receive light from the light emitting means which has passed through said region; and
a processing and control means arranged to receive information from the light receiving means and determine whether an obstruction exists in said region by the presence of one or more shadow regions cast on the light receiving means by the obstruction and to control movement of the tool dependent on the presence of obustructions in said region.」

エ.「DESCRIPTION OF THE INVENTION」公報第6頁第15行?第7頁第14行
「As shown in Figure 4, the light emitting means 16 is mounted at one end of the tool 12 of the press brake such that the parallel light beam 24 illuminates a region 20 around the path of movement of the tool 12 which includes the forward edge 48 of the tool 12. The light receiving means 18 is mounted at the opposite end of the tool 12 to receive the light beam 24. If an obstruction 50, such as the hand of the operator, enters the region 20, a corresponding shadow 52 will be cast on the image detection device 46. The light emitting means 16 and light receiving means 18 are mounted to be stationary relative to the tool 12.
The safty system also includes a processing and control means (not shown) connected such that the processing and control means receives information from the light receiving means 18 and processes this information and controls operation of the press brake. The processing and control means may be in the form of a software program residing on a digital signal processor, a computer or embedded into a microcomputer which receives input from the output of the light receiving means 18. The processing and control means captures the images received by the image detection device 46 and processes the images to search for any unknown shadows. The processing and control means stores in memory the image received by the image detection device 46 in which no obstrutions are present. In the case where the light emitting means 16 and light receiving means 18 are mounted stationary relative to the tool 12, the image includes the forward edge of the tool 12. The processing and control means compares the current image received by the image detection device 46 with this stored image to determine the presence of any shadows on the image detection device 46 created by obstructions in the region 20. If any new obstructions are detected, the processing and control means may either stop or slow the movement of the tool 12.」

オ.「DESCRIPTION OF THE INVENTION」公報第8頁第1行?第9頁第20行
「The processing and control means may also create a total picture made up of the image information received by the light receiving means 18 as the tool 12 moves through its path of movement. The picture is created and stored in a memory means by the processing and control means. This total picture will be referred to as a shadow map. A shadow map 54 is shown in Figure 6 in which no shadows other than those of the tool 12 and anvil 14 are detected. Such a shadow map 54 would be created on a first pass of the tool.
The processing and control means can store in the memory means a number of known safe shadow maps. The known safe shadow maps being shadow maps 54 where no obstruction is detected which would require stopping or slowing of the press brake. For example, the shadow map 54 in which the only shadow cast is that of the forward edge of the tool 12 and the anvil would be a known safe shadow map 54.
In use, if an obstruction is placed in the path of the light beam 24, a shadow 52 is cast on the image detection device 46. The processing means recognises the presence of an unknown shadowed area in the shadow map 54 and halts or slows the movement of the tool until either the shadow disappears by removal of the obstruction or the operator confirms that operation of the press brake is safe to continue by operation of the input means. Further the processing and control means could allow the tool 12 to descend to a point adjacent the obstruction before stopping in order to assist the operator to identify the location of the obstruction which has triggered the deactivation of the press brake.
In the case where the obstruction detected by the safety system is one deemed to be safe to continue operation, such as the edge of work which has previously been bent up, the processing and control means stores that shadow map as a known safe shadow map. Therefore, when this work is repeated, the processing and control means automatically recognises the obstruction as being non-hazardous and allows continued operation of the press brake.
The processing and control means may still however determine that an obstruction is hazardous even if the obstruction has previously been detected and the operator has confirmed it is safe to proceed. For example, if the processing and control means detects a known shadow adjacent an edge of the illuminated region, and the known shadow is determined to be of a sufficient size that it could be hiding a hazardous obstruction, then the processing and control means may need to slow or stop movement of the tool 12, or stop the blade at a suitable distance from the material.
To maintain safety requirements, the known safe shadow maps are discarded by the processing and control means if they are not re-detected within a specified time period.
In order to create the shadow maps 54 during operation, a tool position detector is required to provide information to the processing and control means as to the position of the tool 12 from the anvil 14 in order to create the full shadow map. An alternative embodiment, as shown in Figures 7 and 8, of the safety system may be provided in which a tool position detector is not used to detect the possible position of the tool 12. In this embodiment, the processing and control means is arranged to detect the presence of a V-shaped illuminated region 60, being the region defined between the 'V' of the anvil 14 and the work.」

以上を総合すると、引用刊行物1には、本件補正発明に照らして、以下の発明(以下、「引用刊行物発明1」という。)が開示されていると認められる。
「ワークに対する機械加工処理を行うためにアンビル14の方向に加工動作するツール12を含むプレスブレーキの安全を確保する方法であって、
発光器16により送信された光束24が前記ツール12と前記アンビル14の間の領域20に導かれ、前記光束24が受光器18によって検知され、障害物の影によって前記領域20に障害物が入ったことを検知し、
受光器18が前記障害物の影によって光束20を検知しないとき前記ツール12が停止または減速され、
前記発光器16と前記受光器18は、前記ツール12に取り付けられている方法。」

○引用刊行物2
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平3-52717号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、「折曲加工装置」に関して、図面とともに、以下のとおり記載されている。

カ.特許請求の範囲
「(1)折曲加工機の側面側に配置され折曲加工される板材の端面曲げ形状を照明法を陰影法として撮像する撮像手段と、該撮像手段と反対側の側面に配置され、前記撮像手段に向けて均一な拡散光を照射する面光源と、前記撮像手段で撮像された信号から前記板材の現在曲げ角を検出する曲げ角検出手段と、検出された現在曲げ角に基いて最終曲げ角が目標曲げ角となるよう前記折曲加工機の金型を制御する金型制御手段を備えたことを特徴とする折曲加工装置。
(2)折曲加工機の側面側に配置され折曲加工される板材の端面曲げ形状を照明法を陰影法として撮像する撮像手段と、該撮像手段と反対側の側面に配置され、前記撮像手段に向けて均一な拡散光を照射する面光源と、前記撮像手段で撮像された信号から前記板材の現在曲げ角を検出する曲げ角検出手段と、検出された現在曲げ角に基いて曲げ角が目標曲げ角となるよう前記折曲加工機の金型を制御する金型制御手段と、前記撮像手段で撮像された信号から前記板材の反りなどになる異常状態を検出する異常状態検出手段を備えたことを特徴とする折曲加工装置。」

キ.公報第2頁左下欄第7?15行
「そこで、本発明は、加工中の曲げ角を自動検出し、曲げ角が目標角となるよう自動的に金型を制御する折曲げ加工装置において、曲げ角を安定に、かつ高精度に検出することにより製品精度を向上することができる折曲加工装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、曲げ角度の検出に際し、併せてワーク反りなどの異常状態をも検出できる折曲加工装置を提供することを目的とする。」

ク.公報第3頁左上欄第16行?第4頁左上欄第3行
「(実施例)
第2図に示すように、本例の折曲加工機1Aは、C形の側面フレーム8の上部に設けた上部エプロン9に対し下部の移動テーブル10を上下動させる方式である。上部エプロン9の下方にはパンチ11が固定され、下部の移動テーブル10の上部にダイ12が設けられている。
上記側面フレーム8の一方には、前記パンチ11の下端に向けて焦点を合わせることができる視覚センサ(CCDカメラ)13が取付けられている。
前記側面フレーム8の他方には、視覚センサ13の光軸を中心として、視覚センサ13の視野より充分広い面積をもつ面光源14が取付けられている。
面光源14は、第3図に示すように、箱体15内にハロゲン電球16を設け、発光面17を乳白色のアクリル板やすりガラスとするような構成である。かかる構成により、発光面17からはワークWを介し視覚センサ13に向けて均一な拡散光を照射することができる。
したがって、前記視覚センサ13は、面光源14からの照射光をワークWの端面側で撮像することができ、透過光、言い換えればワーク端縁の像から、後述する態様でワークWの曲げ角度を検出することができる。
上記折曲加工機1Aの一側面には前記下部の移動テーブル8を位置決め制御するためにNC装置18が設けられ、他側面には、画像処理装置19及びCRT20を備えたボックス21が配置されている。
第4図に示すように、前記画像処理装置19は、その内部に、バス22にCPU23、RAM24、ROM25、アナログデジタル変換回路(A/D回路)26、フレームメモリ27、入出力インタフェイス28を接続して成り、A/D回路26には前記視覚センサ13のビデオ信号が入力されるようになっている。また、入出力インタフェイス28は前記NC装置18から撮像指令信号を入力し、NC装置18に折曲制御のための補正信号を出力するようになっている。
前記フレームメモリ27は、前記A/D回路26を介して入力されたビデオ信号のデジタル値により、第5図に大まかに示すように、ワークWの端面形状に応じた画像を平面xy座標に記憶する。第5図において、例えば黒画素は0、白画素は1の2値化信号を示しているものとする。
第6図?第9図を用いて、上記画像処理装置19による角度検出方式を説明する。
ステップ601では、フレームメモリ27上に捉えたワークWの端面(端縁)形状の画像につき、第7図に示すように、板材Wの折曲中心たる端面の最下端の点P_(0)(P_(0)x、P_(0)y)を検出する。このとき得られる像は、陰影法によるので、ワーク端面の像は、すなわちワーク端縁の像となっており、反射法によるものと違って、ワークの端面状態に影響されないものである。
ステップ602では、上記点P_(0)を中心として、第8図に示すように、端面画像をA,B2領域に分割する。
ステップ603では、第9図に示すように、各領城A,Bに対する慣性主軸L_(A)、L_(B)を求め、ステップ604では、各主軸L_(A)、L_(B)のx軸と為す角θ_(A),θ_(B)を求め、ステップ505で曲げ角φを得る。
ステップ603?605の慣性主軸L_(A),L_(B)の算出による角度演算方式は、公知の手法によればよい。」

以上によれば、引用刊行物2には、
「折曲加工機に配置され折曲加工される板材の端面曲げ形状を照明法を陰影法として撮像するCCDカメラによる撮像手段と、
該撮像手段と反対側の側面に配置され、前記撮像手段に向けて均一な拡散光を照射する面光源と、
前記撮像手段で撮像された板材の端面形状の画像を、デジタル処理により平面XY座標に記憶し、画像処理装置が記憶された画像から前記板材の現在曲げ角を検出する曲げ角検出手段と、
検出された現在曲げ角に基いて最終曲げ角が目標曲げ角となるよう前記折曲加工機の金型を制御する金型制御手段を備えた折曲加工装置。」
との発明(以下、「引用刊行物発明2」という。)が開示されていると認められる。

(4-2)対比
そこで、本願補正発明1と引用刊行物発明1とを比較すると、両者は、生産機械である点において一致している。
そして、引用刊行物発明1の「ワーク」は、本願補正発明1の「工作物」に相当し、以下同様に、「ツール12」は、「第1工具部」に、「アンビル14」は、「第2工具部」に、「発光器16」は、「送信機」に、「受光器18」は、「受信機」に、「領域20」は、「開放間隙」に、夫々相当していることは明らかである。
また、引用刊行物発明1の「障害物の影によって領域20に障害物が入ったことを検知すること」は、本願補正発明1の「光電式センサが該工具部の間にある3次元の防護領域を監視」することに相当する。
また、引用刊行物発明1の「受光器が前記障害物の影によって光束を検知しないとき前記ツールが停止」する点は、本願補正発明1の「受光素子が光を受信しない場合に前記第1工具部が停止される」点に相当するものということができる。
更に、引用刊行物発明1の「発光器16」、「受光器18」は、ともに「ツール12」に取り付けられているのであるから、「ツール12」とともに移動するのは明らかであり、この点は、本願補正発明1の「前記センサが前記第1工具部と共に移動される」点に相当する。

以上の通りであるから、両者は、
<一致点>
「工作物に対する機械加工処理を行うために第2工具部の方向に加工動作する第1工具部を含む生産機械の安全を確保するための方法であって、
光が前記工具部の間に形成された開放間隙を送信器により送信され、受光素子を含む受信器により検知されることから、光電式センサが該工具部の間にある3次元の防護領域を監視しており、且つ、
該受光素子が光を受信しない場合に前記第1工具部が停止されるものにおいて、
前記センサが前記第1工具部と共に移動される方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>
本願補正発明1は、対象とする生産機械が「工作機械」であるのに対して、引用刊行物発明1はプレスブレーキに関するものである点。

<相違点2>
本願補正発明1では、「受信機」は「マトリックス状の受光素子」を含むものであるのに対し、引用刊行物発明1の「受光器」がそのようなものであるか不明な点。

<相違点3>
本願補正発明1では、「個々の受光素子又は該受光素子の特定の集団が光を全く受信しない場合」、第1工具部が停止されるのに対して、引用刊行物発明1の「受光器」がそのような動作をするのか不明である点。

<相違点4>
本願補正発明1では、「個々の工作物領域又は工具領域の間の相対位置が、前記機械加工処理の前及び/又は最中及び/又は後に、前記受信器の受光素子により伝えられる信号から決定されること、
隣接する受光素子の集団が測定ウィンドウとして定義され、前記測定ウィンドウにより伝えられる信号のみが、前記相対位置を決定するために使用されること、及び、
決定された前記相対位置に応じて、機械加工された前記工作物を分類するか、或いは、工具を分類する」ものであるのに対して、引用刊行物発明1はそのような動作をしていない点。

(4-3)判断
○ 相違点1について
相違点1について検討すると、引用刊行物発明1が対象とするプレスブレーキは本願補正発明1の加工機械が対象とするのは、工作物(例えば、板金部品)の曲げや折り曲げや切削や打抜きのためのスタンピングプレス機であり、板金の折り曲げに関しては、両者は実質的に異なるところがないから、相違点1は実質的な相違点ではない。

○ 相違点2について
相違点2について検討すると、引用刊行物発明2には、撮像手段としてCCDカメラを用いる折曲加工装置が示され、CCDカメラがマトリックス状の受光素子を備えるものであることは明らかであり、このようなCCDカメラを用いる撮像手段が本願補正発明1の受信機として用いることができるのも明らかである。
してみれば、相違点2に係る構成の違いは、引用刊行物発明1に引用刊行物発明2を適用したにすぎないものであり、当業者が容易に想到し得たものである。

○ 相違点3について
相違点3における、「個々の受光素子又は該受光素子の特定の集団が光を全く受信しない場合」というのは、要するに、受光素子のいずれかに光が到達しない、つまり、受光素子のいずれかの上に影ができているということであり、このように影画像によって物体をとらえることは引用刊行物発明2に示されている。
してみれば、相違点3に係る構成の違いは、引用刊行物発明1に引用刊行物発明2を適用したにすぎないものであり、当業者が容易に想到し得たものである。

○ 相違点4について
相違点4における、「個々の工作物領域の間の相対位置が、前記機械加工処理の最中に、前記受信器の受光素子により伝えられる信号から決定し、決定された前記相対位置に応じて、機械加工された前記工作物を分類する」についてみると、引用刊行物発明2において、「板材の現在曲げ角を検出する曲げ角検出手段と、検出された現在曲げ角に基いて最終曲げ角が目標曲げ角となるよう前記折曲加工機の金型を制御」している点は、機械加工処理の最中に個々の工作物領域の間の相対位置が決定され、決定された前記相対位置に応じて、最終曲げ角が目標曲げ角となるよう制御するということであるから、機械加工された工作物をさらに加工するか否かを分類していることにほかならない。
また、相違点4における、「隣接する受光素子の集団が測定ウィンドウとして定義され、前記測定ウィンドウにより伝えられる信号のみが、前記相対位置を決定するために使用される」点についてみると、画像処理技術において、特定のウィンドウ領域のみを信号処理に用い、必要ない領域の信号を処理しないのは常套手段にすぎないものであり、例えば、カメラの露出決定のための明るさ測定や焦点制御のための測距技術においては刊行物名を敢えて例示するまでもなく周知の事項である。
してみれば、相違点4に係る構成の違いは、引用刊行物発明1に、引用刊行物発明2及び周知事項を適用したにすぎないものであり、当業者が容易に想到し得たものである。

以上のとおりであるから、本願補正発明1は、引用刊行物発明1、引用刊行物発明2及び周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するので、改正前特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3.本願発明について
(1)本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし16に係る発明は、平成20年8月26日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1ないし16に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明16」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
工作物(6)に対する機械加工処理を行うために第2工具部(4)の方向に加工動作する第1工具部(2)を含む工作機械の安全を確保するための方法であって、
光が前記工具部(2,4)の間に形成された開放間隙(8)を送信器(12)により送信され、マトリックス状の受光素子を含む受信器(14)により検知されることから、光電式センサ(12,14)が該工具部(2,4)の間にある3次元の防護領域(18,20)を監視しており、且つ、
個々の受光素子又は該受光素子の特定の集団が光を全く受信しない場合に前記第1工具部(2)が停止されるものにおいて、
個々の工作物領域又は工具領域の間の相対位置が、前記受光素子により伝えられる信号から決定されること、及び、
決定された前記相対位置に応じて、機械加工された前記工作物(6)を分類するか、或いは、工具を分類すること、
を特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
上記受光素子により伝えられる信号を評価することにより、工作物(6)又は工具のシルエットが決定されること、を特徴とするもの。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、
決定された上記相対位置に応じて、工作物(6)に対する機械加工処理又は上記工作機械の制御を行うか、信号装置に作用を及ぼすこと、を特徴とするもの。
【請求項4】
請求項1?3のいずれかに記載の方法において、
上記相対位置が、上記機械加工処理の前及び/又は最中及び/又は後に決定されること、を特徴とするもの。
【請求項5】
請求項1?4のいずれかに記載の方法において、
隣接する受光素子の集団が測定ウィンドウ(22)として定義され、
前記測定ウィンドウ(22)により伝えられる信号のみが、上記相対位置を決定するために使用されること、を特徴とするもの。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、
上記測定ウィンドウ(22)が上記マトリックス内で移動されること、又は、該測定ウィンドウ(22)の大きさ及び/又は形状が機械加工中に変更されること、を特徴とするもの。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、
決定された上記相対位置又は測定値、及び/又は上記工作機械の動作状態、及び/又は作業者の入力に従い、上記変更が行われること、を特徴とするもの。
【請求項8】
請求項5?7のいずれかに記載の方法において、
直線から成る輪郭を備えた上記工作物(6)の領域が画像処理アルゴリズムにより決定され、且つ、上記測定ウィンドウ(22)が該領域に置かれること、を特徴とするもの。
【請求項9】
請求項5?8のいずれかに記載の方法において、
上記測定ウィンドウ(22)が、上記第1工具部(2)に対して固定された位置にあるか、該位置に配されること、を特徴とするもの。
【請求項10】
工作物(6)に対する機械加工処理を行うべく第2工具部(4)の方向に加工動作するための第1工具部(2)を含む工作機械の安全を確保するための防護装置たる光電式センサであって、
該センサ(12,14)が、前記工具部(2,4)の間にある3次元の防護領域(18,20)を監視するためであって、該工具部(2,4)の間に形成された開放間隙(8)に光を送信するための送信器(12)と、前記送信光を検知するためのマトリックス状の受光素子を含む受信器(14)とを有し、且つ、
該センサ(12,14)が、更に、個々の受光素子又は該受光素子の特定の集団が光を全く受信しない場合に前記第1工具部(2)を停止させるための評価及び制御ユニットを有するものにおいて、
前記評価及び制御ユニットが、前記受光素子により伝えられる信号に従い、個々の工作物領域又は工具領域の間の相対位置を決定するように追加で設計されること、及び、
機械加工された前記工作物(6)の分類、或いは、工具の分類が行われること、
を特徴とする光電式センサ。
【請求項11】
請求項10に記載の光電式センサにおいて、
該光電式センサが、請求項1?9のいずれかに記載の方法を実施するために作られていること、を特徴とするもの。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の光電式センサにおいて、
上記送信器(12)が、平行光束(16)を送信するように設計されること、を特徴とするもの。
【請求項13】
請求項10?12のいずれかに記載の光電式センサにおいて、
該光電式センサが、上記工作機械自体における、上記第1工具部(2)又は上記第2工具部(4)に対して固定された位置に取り付けられること、を特徴とするもの。
【請求項14】
請求項10?13のいずれかに記載の光電式センサにおいて、
上記評価及び制御ユニットとその受信器とが互いに結合され、且つ、特には一般的な筐体に収容されること、を特徴とするもの。
【請求項15】
請求項10?14のいずれかに記載の光電式センサにおいて、
上記評価及び制御ユニットが、スイッチオフ信号と決定された上記相対位置を記述するデータとを送信するためのデータ出力を有すること、を特徴とするもの。
【請求項16】
請求項10?15のいずれかに記載の光電式センサにおいて、
上記工作機械が、スタンピングプレス機又は折り曲げプレス機又は曲げ機又は切削機又は打抜き機として作られていること、を特徴とするもの。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物、および、その記載事項、ならびに周知事項は、前記第2.に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明1は、前記第2.で検討した本願補正発明1から、前記第2.(2)に記載した補正事項の特定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明1の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明1が、前記第2.(4)、(5)に記載したとおり、引用刊行物発明1、引用刊行物発明2及び周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により、引用刊行物発明1、引用刊行物発明2及び周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用刊行物発明1、引用刊行物発明2及び周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、他の請求項についてみるまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-01-31 
結審通知日 2011-02-01 
審決日 2011-02-15 
出願番号 特願2005-121861(P2005-121861)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B30B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 馬場 進吾  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 遠藤 秀明
菅澤 洋二
発明の名称 工作機械の安全を確保するための方法、及びこのような方法を実施するための光電式センサ  
代理人 小林 良平  
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