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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16K
管理番号 1239384
審判番号 不服2009-24993  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-12-17 
確定日 2011-06-29 
事件の表示 特願2002-583856「ピボット作動型スリーブバルブ」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月31日国際公開,WO02/86361,平成16年10月 7日国内公表、特表2004-530846〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,2002年4月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年4月18日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成21年8月7日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年12月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,同日付け手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願の発明
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,
「バルブ本体と,
前記バルブ本体に亘り入口端及び出口端を有する流体通路と,
前記流体通路内に規定されたバルブ座部と,
前記バルブ本体から半径方向に延び,その内部がフラスト円錐形のステムハウジングと,
前記流体通路内で軸方向にスライド可能であり,上流端と,下流端と,前記流体通路の入口端及び出口端に連通する軸方向の流体通路とを具備するスリーブと,
前記ステムハウジング内に設けられ,前記流体通路から半径方向に離隔されたステムピボットと,
前記ステムピボットに揺動自在に取り付けられたバルブステムと
を備え,
該バルブステムは,前記出口端への前記流体通路を通じた液体の流れを選択的に制御するために,前記下流端が前記バルブ座部から離隔された開位置と,前記下流端が前記バルブ座部に支えられた閉位置との間で,前記スリーブをスライドするように作動可能であり,
前記バルブステムの一端は,前記スリーブに継ぎ手で結合され,
前記ステムハウジングは,支承部領域を規定するピボット端を有し,
前記ステムピボットは,前記バルブステムに担持されたピボットボールと,前記ピボット端に形成されて前記ステムハウジング内に配された出っ張り部と,前記ピボット端に取り除き可能に設けられたキャップとを具備し,前記ピボットボールが前記キャップと前記出っ張り部との間において揺動自在に捕らえられていることを特徴とするバルブアセンブリ。」
と補正された。

なお,上記手続補正書の特許請求の範囲の請求項1には,「バルブ本体に亘り入口端及び出口端を有する液体通路」と記載されているが,これは「バルブ本体に亘り入口端及び出口端を有する流体通路」の明らかな誤記と解されるため,同請求項1に係る補正の内容を上記のように認定した。

上記補正は,請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「バルブ本体から半径方向に延びるステムハウジング」について「バルブ本体から半径方向に延び,その内部がフラスト円錐形のステムハウジング」と限定するものであって,平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,単に「改正前の特許法」という。)第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
a)原査定の拒絶の理由に引用された西独国特許第896140号明細書(以下「引用例1」という。)には,明細書本文の記載と共に,図1及び2に以下の構成が示されている。(原文は略す。訳は当審による。行数は明細書の欄外に記載された行数による。)

・「本発明は,管路内を流動するか,もしくは流れる液体および気体の媒体を制御する,すなわち遮断し,絞り,かつ通すための装置に関する。」(2頁左欄1?4行)

・「本発明の実施例を図面に示す。
図1は,スライダが開放している装置を示す。
図2は,スライダが閉じている装置を示す。
ハウジング1内にガイドスリーブ2が挿嵌され,その上に管スライダ3が移動可能に配置されている。このスライダは,その部分4がシール面をなし,このシール面は,固く組付けられたガイド体21に当接できる。スライダ3は,その外周にリングピストン6を担持しており,このリングピストンは,ハウジング1の円筒状内壁に密接する。この構成により,リングピストン6の前後に空間7および空間8ができる。これらの空間に圧力差がある限り,この圧力差によってスライダが開方向または閉方向に運動できる。スライダ3の外側からの直接操作は,このスライダに設けられた環状溝9を通じてフォーク10およびレバー11を介して行うことができる。」(2頁左欄28?49行)

・「同時に,絞り箇所の前と後の圧力差が小さい場合に,スライダ3を,環状溝9に係合させることによって直接操作することもできる。」(2頁右欄96?99行)

・図1及び2には,以下の構成が示されている。
すなわち,ハウジング1に亘り入口端及び出口端を有する流体通路と,流体通路内に規定された弁座部5と,ハウジング1から半径方向に延び,その内部が円筒形のフォーク収容部と,流体通路内で軸方向にスライド可能であり,上流端と,下流端と,前記流体通路の入口端及び出口端に連通する軸方向の流体通路とを具備する管スライダ3と,前記流体通路から半径方向に離隔された揺動支点部と,揺動支点部に揺動自在に取り付けられたフォーク10とを備え,フォーク10の一端が管スライダ3に環状溝9で結合されていることにより,フォーク10は,出口端への前記流体通路を通じた液体の流れを選択的に制御するために,下流端が弁座部5から離隔された開位置と,下流端が弁座部5に支えられた閉位置との間で,管スライダ3をスライドするように作動可能である弁装置の構成。

明細書本文の記載及び上記図示内容を総合すると,引用例1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「ハウジング1と,
前記ハウジング1に亘り入口端及び出口端を有する流体通路と,
前記流体通路内に規定された弁座部5と,
前記ハウジング1から半径方向に延び,その内部が円筒形のフォーク収容部と,
前記流体通路内で軸方向にスライド可能であり,上流端と,下流端と,前記流体通路の入口端及び出口端に連通する軸方向の流体通路とを具備する管スライダ3と,
前記流体通路から半径方向に離隔された揺動支点部と,
前記揺動支点部に揺動自在に取り付けられたフォーク10と
を備え,
該フォーク10は,前記出口端への前記流体通路を通じた液体の流れを選択的に制御するために,前記下流端が前記弁座部5から離隔された開位置と,前記下流端が前記弁座部5に支えられた閉位置との間で,前記管スライダ3をスライドするように作動可能であり,
前記フォーク10の一端は,前記管スライダ3に環状溝9で結合されている弁装置。」

b)同じく,引用された実願昭49-97256号(実開昭51-25125号)のマイクロフィルム(以下「引用例2」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

・「以下,本考案の一実施例を図にしたがって説明すると,各部材が合成樹脂で形成されたホップアップ排水栓はほぼ十字状の本体(1)と,同本体(1)上部に螺入された円筒状の排水筒(2)と,同排水筒(2)に上下摺動自在に内嵌された排水案内弁(3)とからなり本体(1)の交差部(4)右端側壁部には,長孔(4a)が縦方向に穿設された遮蔽板(4b)が形成され,同遮蔽板(4b)のの図示右側には筒状の支持筒(5)が突出されている。しかして,支球(7)をほぼ中央部に固着した杆状のレバー(8)が前記支持筒(5)内に横挿されかつ支持筒(5)の右端部に内嵌のブッシュ(9)と同右端に螺着の袋ナット(6)とによって前記支球(7)が保持されている。」(明細書2頁6行?3頁1行)

・「またレバー(8)の左端部が前記排水案内弁(3)の下端部の鍵形溝(3a)に係合されて,レバー(8)を上下に揺動させることによって排水案内弁(3)が上下動するように形成されている。」(同書3頁14行?4頁1行)

・第1図には,揺動支点部が支持筒5内に設けられ,支持筒5は,揺動支点部が取り付けられる右端部を有し,揺動支点部は,レバー8に固着された支球7と,支持筒5の右端部に内嵌のブッシュ9と,前記右端部に螺着の袋ナット6とを具備し,支球7が袋ナット6とブッシュ9との間において揺動自在に保持される構成が示されている。

(3)対比
そこで,本願補正発明と引用発明とを対比する。

まず,後者の「ハウジング1」は前者の「バルブ本体」に,後者の「弁座部5」は前者の「バルブ座部」に,それぞれ相当している。

次に,後者の「円筒形のフォーク収容部」と前者の「フラスト円錐形のステムハウジング」とは,「所定形状のステムハウジング」との概念で共通している。

続いて,後者の「管スライダ3」は前者の「スリーブ」に,後者の「揺動支点部」は前者の「ステムピボット」に,後者の「フォーク10」は前者の「バルブステム」に,それぞれ相当している。

また,後者の「フォーク10の一端は,管スライダ3に環状溝9で結合され」ている態様と前者の「バルブステムの一端は,スリーブに継ぎ手で結合され」ている態様とは,「バルブステムの一端は,スリーブに所定手段で結合され」ているとの概念で共通している。

さらに,後者の「弁装置」は前者の「バルブアセンブリ」に相当している。

したがって,両者は,
「バルブ本体と,
前記バルブ本体に亘り入口端及び出口端を有する流体通路と,
前記流体通路内に規定されたバルブ座部と,
前記バルブ本体から半径方向に延び,その内部が所定形状のステムハウジングと,
前記流体通路内で軸方向にスライド可能であり,上流端と,下流端と,前記流体通路の入口端及び出口端に連通する軸方向の流体通路とを具備するスリーブと,
前記流体通路から半径方向に離隔されたステムピボットと,
前記ステムピボットに揺動自在に取り付けられたバルブステムと
を備え,
該バルブステムは,前記出口端への前記流体通路を通じた液体の流れを選択的に制御するために,前記下流端が前記バルブ座部から離隔された開位置と,前記下流端が前記バルブ座部に支えられた閉位置との間で,前記スリーブをスライドするように作動可能であり,
前記バルブステムの一端は,前記スリーブに所定手段で結合されているバルブアセンブリ。」
の点で一致し,以下の点で相違している。

[相違点1]
ステムハウジングの「所定形状」に関し,本願補正発明は,「フラスト円錐形」であるのに対し,引用発明は,「円筒形」である点。
[相違点2]
ステムピボットに関し,本願補正発明は,「ステムハウジング内に設けられ」ているのに対し,引用発明は,かかる配置関係が明確にされていない点。
[相違点3]
バルブステムの一端がスリーブに結合される「所定手段」に関し,本願補正発明は,「継ぎ手」であるのに対し,引用発明は,「環状溝」である点。
[相違点4]
本願補正発明は,「ステムハウジングは,支承部領域を規定するピボット端を有し,ステムピボットは,バルブステムに担持されたピボットボールと,前記ピボット端に形成されて前記ステムハウジング内に配された出っ張り部と,前記ピボット端に取り除き可能に設けられたキャップとを具備し,前記ピボットボールが前記キャップと前記出っ張り部との間において揺動自在に捕らえられ」ているのに対し,引用発明は,かかる構成を備えていない点。

(4)判断
上記相違点について以下検討する。

・相違点1について
一般に,揺動するステムを収容するステムハウジングにおいて,その形状は,該ステムが揺動自在に運動し得る範囲内のものとして,製造・加工コスト等を加味しつつ当業者が適宜設計し得るものであるといえる。
そして,引用発明において,揺動するバルブステムの運動軌跡が扇形であることをも考慮すれば,該バルブステムを収容するステムハウジングの形状をフラスト円錐形とすることで相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者にとって容易である。

・相違点2及び4について
例えば,引用例2にも開示されているように,弁の駆動操作部の構成を,ステムピボット(「揺動支点部」が相当)がステムハウジング(「支持筒5」が相当)内に設けられ,前記ステムハウジングは,支承部領域を規定する(「揺動支点部が取り付けられる」態様が相当)ピボット端(「右端部」が相当)を有し,前記ステムピボットは,バルブステム(「レバー8」が相当)に担持(「固着」が相当)されたピボットボール(「支球7」が相当)と,前記ピボット端に形成されて前記ステムハウジング内に配された出っ張り部(「支持筒5の右端部に内嵌のブッシュ9」が相当)と,前記ピボット端に取り除き可能に設けられたキャップ(「螺着の袋ナット6」が相当)とを具備し,前記ピボットボールが前記キャップと前記出っ張り部との間において揺動自在に捕らえられる(「保持される」態様が相当)構成とすることは,弁装置の分野における周知技術である。
そうすると,引用発明において,弁の駆動操作部の構成を上記周知技術を踏まえることにより相違点2及び4に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものというべきである。

・相違点3について
一方の部材の一端を他方の部材に結合する際に継ぎ手を用いることは,連結技術における慣用手段であるから,引用発明において,上記慣用手段に倣い,バルブステムの一端をスリーブに結合する際に継ぎ手を用いることで相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者にとって容易である。

そして,本願補正発明の全体構成により奏される作用効果も,引用発明,上記周知技術及び上記慣用手段から当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって,本願補正発明は,引用発明,上記周知技術及び上記慣用手段に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおりであって,本件補正は,改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下を免れない。

3.本願の発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,同項記載の発明を「本願発明」という。)は,平成21年4月21日付け手続補正書により補正された明細書,特許請求の範囲及び図面によれば,以下のとおりのものと認められる。
「バルブ本体と,
前記バルブ本体に亘り入口端及び出口端を有する流体通路と,
該流体通路内に規定されたバルブ座部と,
前記バルブ本体から半径方向に延びるステムハウジングと,
前記流体通路内で軸方向にスライド可能であり,上流端と,下流端と,前記流体通路の入口端及び出口端に連通する軸方向の流体通路とを具備するスリーブと,
前記ステムハウジング内に設けられ,前記流体通路から半径方向に離隔されたステムピボットと,
前記ステムピボットに揺動自在に取り付けられたバルブステムと
を備え,
該バルブステムは,前記出口端への前記流体通路を通じた液体の流れを選択的に制御するために,前記下流端が前記バルブ座部から離隔された開位置と,前記下流端が前記バルブ座部に支えられた閉位置との間で,前記スリーブをスライドするように作動可能であり,
前記バルブステムの一端は,前記スリーブに継ぎ手で結合され,
前記ステムハウジングは,支承部領域を規定するピボット端を有し,
前記ステムピボットは,前記バルブステムに担持されたピボットボールと,前記ピボット端に形成されて前記ステムハウジング内に配された出っ張り部と,前記ピボット端に取り除き可能に設けられたキャップとを具備し,前記ピボットボールが前記キャップと前記出っ張り部との間において揺動自在に捕らえていることを特徴とするバルブアセンブリ。」

なお,上記平成21年4月21日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1には,「バルブ本体に亘り入口端及び出口端を有する液体通路」と記載されているが,これは「バルブ本体に亘り入口端及び出口端を有する流体通路」の明らかな誤記と解されるため,本願発明を上記のように認定した。

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例,及び,その記載事項は,前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は,前記「2.(1)」で検討した本願補正発明から「バルブ本体から半径方向に延びるステムハウジング」について「バルブ本体から半径方向に延び,その内部がフラスト円錐形のステムハウジング」への限定を省いたものである。

そうすると,本願発明と引用発明とを対比した際の相違点は,前記「2.(3)」で抽出した相違点2ないし4のみとなるため,前記「2.(4)」での検討を踏まえれば,本願発明も,引用発明,上記周知技術及び上記慣用手段に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。

(3)むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明,上記周知技術及び上記慣用手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため,本願は,同法第49条第2号の規定に該当し,拒絶をされるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-01-27 
結審通知日 2011-02-01 
審決日 2011-02-16 
出願番号 特願2002-583856(P2002-583856)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16K)
P 1 8・ 575- Z (F16K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久保 竜一細川 健人  
特許庁審判長 大河原 裕
特許庁審判官 冨江 耕太郎
田良島 潔
発明の名称 ピボット作動型スリーブバルブ  
代理人 特許業務法人 有古特許事務所  

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