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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E05C |
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管理番号 | 1239385 |
審判番号 | 不服2009-25143 |
総通号数 | 140 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-08-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-12-18 |
確定日 | 2011-06-29 |
事件の表示 | 特願2000-542547「モータビークルのドアストップ」拒絶査定不服審判事件〔平成11年10月14日国際公開、WO99/51841、平成14年 4月 9日国内公表、特表2002-510764〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯及び本願発明 本願は,1999年1月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1998年4月3日,ドイツ)を国際出願日とする出願であって,平成21年8月7日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年12月18日に拒絶査定に対する審判請求がなされ,同時に手続補正がなされたものである。 また,当審において,平成22年6月21日付けで審査官による前置報告書に基づく審尋がなされたところ,同年12月22日に回答書が提出されたものである。 そして,その請求項1に係る発明は,平成21年12月18日付け手続補正で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 モータビークルのヒンジであって、 ドアおよびドア柱の一方に取付けられ得る第1のヒンジ部分(2)と、 ドアおよびドア柱の他方に取付けられ得る第2のヒンジ部分(3)と、 第1のヒンジ部分(2)および第2のヒンジ部分(3)を回転可能に接続するヒンジピン(1)とを含み、前記ヒンジピン(1)は第1のヒンジ部分(2)および第2のヒンジ部分(3)の一方に非回転可能に保持され、かつ第1のヒンジ部分(2)および第2のヒンジ部分(3)の他方に回転可能に受取られ、前記モータビークルのヒンジはさらに 第1のヒンジ部分(2)または第2のヒンジ部分(3)のいずれかに割当てられる少なくとも1つのラッチ位置(7)と、 前記少なくとも1つのラッチ位置(7)と協働してヒンジ部分(2、3)の開放位置を定める係合部分を含むトーションバーばね(4)とを含み、 前記ラッチ位置(7)と協働する前記トーションバーばね(4)の前記係合部分は、前記トーションバーばね(4)の前記係合部分以外の面よりも硬い選択的に表面硬化される面を有し、 前記トーションバーばね(4)の前記表面硬化される前記係合部分は、前記トーションバーばね(4)の前記表面硬化される前記係合部分に隣接する前記トーションバーばね(4)の非硬化部分と同じ円筒形の断面を有する、モータビークルのヒンジ。」 (以下,「本願発明」という。) 第2.引用刊行物に記載された発明 刊行物:特開平8-193456号公報 (1)刊行物 原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された上記刊行物には,図面とともに,以下の記載がある。 (1a)「【請求項1】 ドア固定装置と一体構造の自動車ドア用ドア蝶番、とくに蝶番軸(1)により相互に揺動可能に結合された2つの蝶番ウイング(2、3)であって一方の蝶番ウイング(2)はドア本体に固定されたままでありまた他方の蝶番ウイング(3)はドア支柱に着脱可能に固定されている前記蝶番ウイングとねじり棒ドア固定装置とからなる前記自動車ドア用ドア蝶番であって、 前記ドア蝶番において一方の蝶番ウイング(2)に通常のように固定されかつC形状またはS形状のねじり棒ばね(9)の自由な荷重アーム(8)に配置された、ドア固定装置のブレーキ要素および保持要素用ストッパ装置が、蝶番軸(1)に対し横方向に突出する他方の蝶番ウイング(3)の横壁に配置または形成され;ここで他方の蝶番ウイング(3)は全体が対応して折り返された薄板プレス部品により形成され、また前記他方の蝶番ウイング(3)は、第1の固定手段(10)を介して所定の方向に部分固定された姿勢で常にドア支柱に固定され、しかも蝶番軸(1)の軸線に平行の蝶番ウイング用当接面(11)が設けられた中間部品(12)と第2の固定手段(13)とを介してドア支柱に固定可能であり;ここで中間部品(12)には同時にドア蝶番の蝶番軸(1)とその上方または下方のいずれかで係合する、蝶番軸に対し横方向に向けられた突出アーム(14)が設けられているところの前記自動車ドア用ドア蝶番において:前記他方の蝶番ウイング(3)が、該蝶番ウイング(3)を中間部品(12)と結合させかつ中間部品(12)および蝶番ウイング(3)を一緒にドア支柱に固定するための、ねじ込みボルトの第2の固定手段(13)により着脱可能にドア支柱に固定されていることと;およびこれと共に、蝶番軸(1)とその上方または下方で係合する中間部品(12)の突出アーム(14)が突起部(15)を有し、前記突起部(15)が、ドア固定装置(7)のためのストッパコア(5、6、7)を支持する、他方の蝶番ウイング(3)の横壁(16)と係合することにより、ドア固定装置(4)の作動により発生する力に抗する追加支持を形成することと;を特徴とするドア固定装置と一体構造の自動車ドア用ドア蝶番。」 (1b)「【0016】 【発明の実施の形態】図面に示した、ドア固定装置と一体構造の自動車ドア用ドア蝶番は、蝶番ピン1により相互に揺動可能に結合された2つの蝶番ウイング2および3とねじり棒ドア固定装置4とからなっている。一方の蝶番ウイング2は図示されていないドア本体に固定されたままであり、また他方の蝶番ウイング3は同じく図示されていないドア支柱に着脱可能に固定されている。一方の蝶番ウイング2に通常のように固定されたS形状のねじり棒ばね9の自由な荷重アーム8により形成された、2つのロール5および6ならびに端部ストッパ7からなるドア固定装置4のブレーキ要素および保持要素用ストッパ装置が、蝶番軸1に対し横方向に突出する他方の蝶番ウイング3の横壁に配置されている。他方の蝶番ウイング3は全体が対応して折り返された薄板プレス部品により形成され、また前記他方の蝶番ウイング3は、第1の固定手段(ねじ込みボルト)10を介して所定の方向に部分固定された姿勢で常にドア支柱に固定され、しかも蝶番軸1の軸線と平行の蝶番ウイング3用当接面11が設けられた中間部品12と第2の固定手段(ねじ込みボルト)13とを介してドア支柱に固定可能である。・・・」 以上の記載事項(1a),(1b)及び図面から見て,刊行物には,以下の発明が記載されているものと認められる。(以下,「刊行物記載の発明」という。) 「ドア本体に固定された一方の蝶番ウイング(2)と, ドア支柱に着脱可能に固定されている他方の蝶番ウイング(3)と, 一方の蝶番ウイング(2)と他方の蝶番ウイング(3)とを相互に揺動可能に結合する蝶番軸(1)と, 他方の蝶番ウイング(3)に配置されるドア固定装置のブレーキ要素と, 該ドア固定装置のブレーキ要素と協働して一方及び他方の蝶番ウイング(2,3)の開放位置を定めるねじり棒ドア固定装置(4)とを含む自動車ドア用ドア蝶番。」 第3.対比 本願発明と刊行物記載の発明とを対比すると,刊行物記載の発明の「ドア本体」が,本願発明の「ドア」に相当し,以下同様に, 「一方の蝶番ウイング(2)」が「第1のヒンジ部分(2)」に, 「ドア支柱」が「ドア柱」に, 「他方の蝶番ウイング(3)」が「第2のヒンジ部分(3)」に, 「蝶番軸(1)」が「ヒンジピン(1)」に, 「ドア固定装置のブレーキ要素」が「ラッチ位置(7)」に, 「ねじり棒ドア固定装置(4)」が「トーションバーばね(4)」に, 「自動車ドア用ドア蝶番」が「モータビークルのヒンジ」に,それぞれ相当する。 また,刊行物記載の発明も,蝶番である以上,蝶番軸(ヒンジピン)は一方及び他方の蝶番ウイング(第1のヒンジ部分および第2のヒンジ部分)の一方に非回転可能に保持され,他方に回転可能となる構造であることは,明らかである。 よって,両者は, 「モータビークルのヒンジであって, ドアに取付けられ得る第1のヒンジ部分と, ドア柱の他方に取付けられ得る第2のヒンジ部分と, 第1のヒンジ部分および第2のヒンジ部分を回転可能に接続するヒンジピンとを含み,前記ヒンジピンは第1のヒンジ部分および第2のヒンジ部分の一方に非回転可能に保持され,かつ第1のヒンジ部分および第2のヒンジ部分の他方に回転可能に受取られ,前記モータビークルのヒンジはさらに 第1のヒンジ部分または第2のヒンジ部分のいずれかに割当てられる少なくとも1つのラッチ位置と, 前記少なくとも1つのラッチ位置と協働してヒンジ部分の開放位置を定める係合部分を含むトーションバーばねとを含む,モータビークルのヒンジ。」 である点で一致し,以下の点で相違している。 (相違点) 本願発明は,ラッチ位置と協働するトーションバーばねの係合部分は,トーションバーばねの係合部分以外の面よりも硬い選択的に表面硬化され,トーションバーばねの表面硬化される係合部分は,トーションバーばねの表面硬化される係合部分に隣接するトーションバーばねの非硬化部分と同じ円筒形の断面を有するのに対し,刊行物記載の発明は,ラッチ位置と協働するトーションバーばねの係合部分を表面硬化していない点。 第4.判断 上記相違点について検討する。 一般的に,互いが摺接する機械要素において,摺接する部分に摩擦が生じて摩耗すると,機械要素の精度が損なわれることは,当業者であれば当然に認識する課題であり,また,このような摩擦が生じる部分の耐久性向上を目的として,表面硬化処理を行うことは,例えば,特開平5-311233号公報(請求項1,段落【0010】等参照),特開平10-75629号公報(段落【0006】等参照)に開示されているように,本願出願前に周知の技術である。 さらに,このような表面硬化処理のうち,硬化部分と非硬化部分との断面形状を同じとする,例えばレーザ処理などの処理手段についても,請求人も認めているように,周知の技術である。 したがって,刊行物記載の発明における,摩擦が生じる部分であるトーションバーばね(ねじり棒ドア固定装置)に,上記周知の技術を適用することは,当業者が容易になし得たことであり,その際,表面硬化処理の対象物がばねであることを考慮すると,当該ばねの応力低下など,ばねの特性を損なうことないよう処理を行うことは,当業者であれば当然に考慮する事項であって,そのために,トーションバーばねとラッチ位置との係合部分のみ,かつ表面のみを硬化するような処理とすることは,当業者が適宜決定する事項にすぎない。 第5.むすび したがって,本願発明は,刊行物記載の発明及び周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本件は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-01-25 |
結審通知日 | 2011-02-01 |
審決日 | 2011-02-15 |
出願番号 | 特願2000-542547(P2000-542547) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(E05C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 土屋 真理子、佐藤 美紗子 |
特許庁審判長 |
山口 由木 |
特許庁審判官 |
草野 顕子 宮崎 恭 |
発明の名称 | モータビークルのドアストップ |
代理人 | 堀井 豊 |
代理人 | 森田 俊雄 |
代理人 | 深見 久郎 |
代理人 | 仲村 義平 |