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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01L |
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管理番号 | 1239390 |
審判番号 | 不服2010-7596 |
総通号数 | 140 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-08-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-04-09 |
確定日 | 2011-06-29 |
事件の表示 | 特願2005-276951「ロッカアーム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 4月 5日出願公開、特開2007- 85279〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本件出願は、平成17年9月22日の出願であって、平成21年6月10日付けで拒絶理由が通知され、それに対して、同年8月7日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成22年1月5日付けで拒絶査定がなされ、同年4月9日に同拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に、同日付けで手続補正書が提出されたものである。 さらに、同年11月8日付けで当審により書面による審尋がなされ、それに対して平成23年1月12日付けで回答書が提出されたものである。 第2.本願発明 本件出願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年4月9日付け手続補正により補正された明細書及び図面並びに平成21年8月7日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された以下の事項により特定されるものである。 なお、平成22年4月9日付け手続補正は、明細書及び図面の誤記の訂正を目的とするものであって、特許請求の範囲の請求項1に関しての補正はなされていない。 「【請求項1】 二つの起立した側壁部(3)と、両側壁部(3)の先端部間を連結するパッド部(5)と、両側壁部(3)の基端部間を連結するピボット受け部(4)とを含むロッカアーム本体(2)が冷間鍛造により一体に形成され、両側壁部(3)の長さ方向中央部間にカムに接触するローラ(10)が回転可能に軸着されたローラ付ロッカアームにおいて、 側壁部(3)の長さ方向中央部の最大高さ(C)に対する、パッド部(5)の最大肉厚(A)の比が0.27?0.35であり、ピボット受け部(4)の平均肉厚(B)の比が0.42?0.52であり、かつ、 ロッカアーム本体(2)の全長(L)に対する、パッド部(5)の平均長さ(M)の比が0.20?0.26であり、ピボット受け部(4)の平均長さ(N)の比が0.30?0.40であることを特徴とするローラ付ロッカアーム。」 第3.原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-88084号公報(平成17年4月7日公開。以下、「引用文献」という。) (A)引用文献には、次の事項が図面とともに記載されている。 (ア)「【0015】 本発明のロッカーアーム及びその製造方法は、この様な事情に鑑みて、金属線材製の素材に冷間鍛造を施す事により得るロッカーアームで、このロッカーアームを組み込んだエンジンの性能向上を図るベく発明したものである。 【課題を解決するための手段】 【0016】 本発明のロッカーアーム及びその製造方法のうちのロッカーアームは何れも、金属線材を所定長さに切断する事で得られた素材に冷間鍛造を施す事により造られ、互いに間隔をあけて設けられた1対の側壁部と、これら両側壁部の長さ方向両端寄り部分同士を連結する第一、第二の連結部と、これら両側壁部の互いに整合する位置に形成した1対の通孔とを備え、この第一の連結部が弁体と係合する第一の係合部を有するものであり、上記第二の連結部が揺動支持部材と係合する第二の係合部を有するものであり、上記各通孔に両端部を支持する支持軸の中間部にローラを支持する。」(段落【0015】及び【0016】) (イ)「【0020】 上述の様に構成される本発明のロッカーアーム及びその製造方法により得られたロッカーアームによれば、金属線材製の素材に冷間鍛造を施す事により得るロッカーアームで、このロッカーアームを組み込んだエンジンの性能向上を図れる。 即ち、請求項2に記載したロッカーアームの製造方法等により得られた請求項1に記載したロッカーアームの場合には、各側壁部の内面に打ち抜き加工により形成される剪断面及び破断面と、ローラの両端面とが接触する事を防止できる。この為、このローラを組み付けたロッカーアームで、このローラを円滑に回転させる事ができる。又、このローラの両端面に異常摩耗が発生する事を防止できると共に、当該接触部での摩耗に基づく摩耗粉の発生を抑える事ができる。従って、ロッカーアームを組み込んだエンジンの出力性能等の性能の向上を図れる。又、上記打ち抜き加工後の工程で、上記剪断面及び破断面を、面押し等により平滑化する面倒な作業を行なう必要がなくなる。 又、請求項3に記載したロッカーアームの場合には、各側壁部の容積を小さくできる為、ロッカーアーム全体の軽量化を図れる。この為、このロッカーアームを組み込んだエンジンの性能向上を図れる。 本発明は、以上に述べた通り構成され作用するので、ロッカーアームを組み込んだエンジンの性能向上を図れる。」(段落【0020】) (ウ)「【0022】 本実施例のロッカーアーム1aは、図1?4に示す様に、互いにほぼ平行でそれぞれ略三角形に形成した1対の側壁部2a、2aと、これら両側壁部2a、2aの長さ方向(図1、2の上下方向)両端部同士を連結する第一の連結部3a及び第二の連結部4aとを有する。又、これら両側壁部2、2の長さ方向中間部に1対の円孔5、5を、互いに同心に形成し、これら両円孔5、5に、カムと係合するローラ35をその中間部に回転自在に支持する為の、支持軸(図示せず)の両端部を支持固定する様に構成している。 【0023】 又、弁体の基端部を突き当てる為、上記第一の連結部3aの片面(図1、3の右側面、図2の表側面)に、第一の係合部である第一の凹部36を形成している。又、ラッシュアジャスタの先端部を突き当てる為、上記第二の連結部4aの片面(図1の右側面、図2の表側面)に、第二の係合部である、半球面状の第二の凹部40を形成している。尚、本実施例の場合には、第二の係合部に揺動支持部材としてラッシュアジャスタの先端部を係合する例を示しているが、第二の連結部4aにねじ孔を形成し、このねじ孔部分にアジャストねじを螺着する構造に関しても、本発明を適用できる。」(段落【0022】及び【0023】) (B)上記(A)及び図面から次のことが分かる。 (カ)上記(A)(ア)ないし(ウ)及び図1及び図2から、二つの起立した側壁部2aと、両側壁部2aの先端部間を連結する第一の凹部36が形成された第一の連結部3aと、両側壁部2aの基端部間を連結する半球面上の第二の凹部40が形成された第二の連結部4aとを含むロッカーアーム1aが冷間鍛造により一体に形成されていることが分かる。 (キ)上記(A)(ウ)及び図1から、ロッカーアーム1aは、両側壁部2aの長さ方向中央部間にカムに係合するローラ35を回転自在に支持していることが分かる。 (C)上記(A)及び(B)並びに図面によると、引用文献には、 「二つの起立した側壁部2aと、両側壁部2aの先端部間を連結する第一の凹部36が形成された第一の連結部3aと、両側壁部2aの基端部間を連結する半球面上の第二の凹部40が形成された第二の連結部4aとを含むロッカーアーム1aが冷間鍛造により一体に形成され、両側壁部2aの長さ方向中央部間にカムに係合するローラ35が回転自在に支持されたローラ35を有するロッカーアーム1a。」 という発明(以下、「引用文献記載の発明」という。)が記載されている。 第4.対比 本願発明と引用文献記載の発明を対比すると、引用文献記載の発明における「側壁部2a」、「第一の凹部36が形成された第一の連結部3a」、「半球面上の第二の凹部40が形成された第二の連結部4a」、「ロッカーアーム1a」、「係合」、「回転自在に支持」及び「ローラ35を有するロッカーアーム1a」は、それぞれの機能や技術的意義からみて、本願発明における「側壁部(3)」、「パッド部(5)」、「ピボット受け部(4)」、「ロッカアーム本体(2)」、「接触」、「回転可能に軸着」及び「ローラ付ロッカアーム」に、それぞれ相当する。 したがって、本願発明と引用文献記載の発明は、 「二つの起立した側壁部と、両側壁部の先端部間を連結するパッド部と、両側壁部の基端部間を連結するピボット受け部とを含むロッカアーム本体が冷間鍛造により一体に形成され、両側壁部の長さ方向中央部間にカムに接触するローラが回転可能に軸着されたローラ付ロッカアーム。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点) 本願発明においては、「側壁部の長さ方向中央部の最大高さ(C)に対する、パッド部の最大肉厚(A)の比が0.27?0.35であり、ピボット受け部の平均肉厚(B)の比が0.42?0.52であり、かつ、ロッカアーム本体の全長(L)に対する、パッド部の平均長さ(M)の比が0.20?0.26であり、ピボット受け部の平均長さ(N)の比が0.30?0.40である」のに対して、引用文献記載の発明においては、「側壁部の長さ方向中央部の最大高さ(C)」及び「ロッカアーム本体の全長(L)」に対する、「パッド部」や「ピボット受け部」に関する比が明らかでない点(以下、「相違点」という。)。 第5.当審の判断 上記、相違点について検討する。 ロッカアームの技術分野において、一体的に形成されたロッカアームの剛性の維持と軽量化を図るために、ロッカアームのある部位の長さや厚みを、ロッカアームの他の部位の長さや厚みを比較することにより最適化することは周知の技術である(例えば、特開2001-280106号公報の段落【0040】、特開2001-65316号公報の段落【0012】ないし【0016】及び特開2001-198641号公報の段落【0028】参照。以下、「周知技術」という。)。 ここで、「側壁部」、「パッド部」、「ピボット受け部」及び「ロッカアーム本体」を有する引用文献記載の発明も、ロッカアームの剛性の維持と軽量化という課題は内在するものであって、引用文献記載の発明において、ロッカアームの剛性の維持と軽量化を図るために、ロッカアームのある部位の長さや厚みを、ロッカアームの他の部位の長さや厚みとを比較することにより最適化するという上記周知技術を参酌して、「側壁部の長さ方向中央部の最大高さ(C)に対する、パッド部の最大肉厚(A)の比」(以下、「数値限定の前提1」という。)、「側壁部の長さ方向中央部の最大高さ(C)に対するピボット受け部の平均肉厚(B)の比」(以下、「数値限定の前提2」という。)、「ロッカアーム本体の全長(L)に対する、パッド部の平均長さ(M)の比」(以下、「数値限定の前提3」という。)及び「ロッカアーム本体の全長(L)に対する、ピボット受け部の平均長さ(N)の比」(以下、「数値限定の前提4」という。)という「パッド部」及び「ピボット受け部」に関する数値限定の前提を設けてみることは、当業者が適宜設定し得る程度の設計的事項にすぎない。また、前記数値限定の前提1ないし4によって規定される「側壁部の長さ方向中央部の最大高さに対する、パッド部の最大肉厚(A)の比が0.27?0.35」(以下、「数値範囲1」という。)、「側壁部の長さ方向中央部の最大高さに対する、ピボット受け部の平均肉厚(B)の比が0.42?0.52」(以下、「数値範囲2」という。)、「ロッカアーム本体の全長(L)に対する、パッド部の平均長さ(M)の比が0.20?0.26」(以下、「数値範囲3」という。)及び「ロッカアーム本体の全長(L)に対する、ピボット受け部(4)の平均長さ(N)の比が0.30?0.40」(以下、「数値範囲4」という。)という数値範囲も、本件出願の明細書の段落【0017】の【表1】の他の数値と比較した場合において数値のオーダーが異なるといった格別な違いがあるとも認められず、当業者が通常の創作の範囲内で適宜設定し得る程度の設計的事項である。 よって、引用文献記載の発明において、上記周知技術を参酌することにより、上記数値範囲1ないし4を設定して、相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 また、本願発明を全体としてみても、引用文献記載の発明及び上記周知技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。 第6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献記載の発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-04-12 |
結審通知日 | 2011-04-19 |
審決日 | 2011-05-09 |
出願番号 | 特願2005-276951(P2005-276951) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 橋本 敏行 |
特許庁審判長 |
伊藤 元人 |
特許庁審判官 |
中川 隆司 西山 真二 |
発明の名称 | ロッカアーム |
代理人 | 松原 等 |