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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04D
管理番号 1239394
審判番号 不服2010-10518  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-05-18 
確定日 2011-06-27 
事件の表示 特願2004-138544「屋根の防水構造」拒絶査定不服審判事件〔平成17年11月17日出願公開、特開2005-320731〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯及び本願発明
本願は,平成16年5月7日の出願であって,平成22年4月1日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年5月18日に拒絶査定に対する審判請求がなされ,同時に手続補正がなされたものである。
また,当審において,平成22年10月1日付けで審査官による前置報告書に基づく審尋がなされたところ,同年10月15日に回答書が提出されたものである。

そして,その請求項1に係る発明は,平成22年5月18日付け手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
外周壁の上部にパラペット壁が設けられ、このパラペット壁に囲まれた部分に勾配屋根が設けられ、この勾配屋根の軒部分には前記パラペット壁の内側に沿って平坦部が設けられており、前記パラペット壁、平坦部の上面、及び勾配屋根の上面は防水シートにより被覆されており、前記勾配屋根の前記パラペット壁上端よりも高い部分の前記防水シートは屋根材によって被覆されているとともに、前記パラペット壁の内周面、平坦部、及び前記勾配屋根の前記パラペット壁上端よりも低い部分の前記防水シートは不燃材で被覆されず、露出しており、前記外周壁の内周面には屋根受け材が設けられ、前記勾配屋根はその軒先部分を前記屋根受け材に支持されていることを特徴とする屋根の防水構造。」
(以下,「本願発明」という。)

第2.引用刊行物に記載された発明
刊行物1:特開平10-273949号公報
刊行物2:特開2002-21243号公報
刊行物3:実願平4-72540号(実開平6-30310号)のCD-ROM
刊行物4:特開2003-138685号公報

(1)刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された上記刊行物1には,図面とともに,以下の記載がある。
(1a)「【請求項1】 屋内空間の上方を覆う勾配がつけられた屋根の屋根構造において、前記屋根を形成する屋根体は、少なくとも外周壁付近の屋根面を、屋内中央部上方から前記外周壁の屋内側の壁面に向かって下降傾斜させて形成され、かつ、前記外周壁付近の端部を前記壁面における上端部より下方に接続されること、を特徴とする屋根構造。
【請求項2】 請求項1において、
前記屋根体は、前記端部と前記壁面との間に隙間を設けて形成され、接続手段を介して前記壁面に接続されること、を特徴とする屋根構造。
・・・
【請求項4】 請求項1から請求項3までのいずれかにおいて、
前記屋根は、前記屋根面と前記壁面とを上から覆う防水材を備え、
前記防水材は、前記壁面における前記屋根体との接続位置から少なくとも前記上端部にかけての領域と、前記屋根面における前記壁面との接続位置から少なくとも前記外周壁の上端面を通る水平線との交差位置より上までの領域とを、その一部によって覆うこと、を特徴とする屋根構造。
【請求項5】 請求項2から請求項4までのいずれかにおいて、
前記壁面における前記接続手段との接続位置から前記上端部にかけての領域に接着される板状の第一の不燃材と、前記接続手段の上面に接着される板状の第二の不燃材と、前記第二の不燃材に接続されて前記屋根面に接着される板状の第三の不燃材と、を含むこと、を特徴とする屋根構造。
・・・
【請求項7】 請求項5又は請求項6において、
不燃性の屋根仕上げ材と、金属板からなる水切り材と、を備え、
前記屋根仕上げ材は、前記第三の不燃材を避けて前記屋根体の屋根面に取り付けられ、
前記水切り材は、前記屋根仕上げ材と前記第三の不燃材との境界において前記屋根面を覆うため、一方の端部を前記第三の不燃材の上面における前記境界付近の端部に重ねて配置され、他方の端部を前記屋根仕上げ材と前記屋根面との間に挟み込んで固定されること、を特徴とする屋根構造。」

(1b)「【0027】図1において、屋根10は、屋内空間100の上方を覆う屋根体12が、屋根面12aを、屋内中央部上方から外周壁14における屋内側の壁面(以下、「内壁面」という)14aに向かって下降傾斜させて形成され、外周壁14側の端部12bを、接続手段20を介して内壁面14aに接続されて形成される。また、屋根10は、上方に露出する部分全体を、図2に示すような種々の防水材30,32,34,36,38によって覆われ、さらにその上を、図1に示す第一の不燃材40乃至第三の不燃材44と、水切り材52と、屋根仕上げ材50によって覆われている。そして、外周壁14の上端部には、上端面の長手方向に沿って、笠木90が取り付けられている。
【0028】ここで、屋根体12は、矩形の枠体11aの一方の面に面材11bを張り付けてなる屋根パネル11を複数枚接合して形成される。そして、面材11bを上に向けて、結合補助材82を介して梁80の上に固定される。このとき、端部12bを内壁面14aから離して、両者の間に隙間16ができるように設置する。これにより、屋根体12が外周壁14に衝突して外周壁14が外方に押し広げられる事態の発生が防止される。」

(1c)「【0031】このような屋根体12と外周壁14とを互いに接続する接続手段20は、板状部材22と、第一の結合材24と、第二の結合材26からなる。
【0032】板状部材22は、合板からなり、隙間16を上から覆い得るように、隙間16よりも大きく形成され、一方の端部を第一の結合材24上に載置して固定され、他方の端部を第二の結合材26上に載置して固定される。
【0033】そして、第一の結合材24は、矩形の断面をなす角材であり、内壁面14aとは交差方向に突出するように、長手方向を水平に向けて内壁面14aに固定される。また、第二の結合材26は、略直角三角形の断面をなす棒状部材であり、直角に近い角部と対角に位置する面を屋根面12aに当接させて固定される。
【0034】このとき、第一の結合材24及び第二の結合材26は、それぞれの上面が、互いに同じ高さにおいて水平となるように固定される。このため、これらの上に載置される平板状の板状部材22を、安定した状態で固定することが可能となる。」

(1d)「【0036】このように接続された屋根体12と外周壁14には、まず、図2に示すように、屋根面12aと外周壁14の双方を覆う防水材30が取り付けられる。
【0037】この防水材30は、合成高分子ルーフィングからなり、外周壁14の上端面と、内壁面14aにおける接続手段20との接続位置から上端部にかけての部分と、屋根面12aにおける接続手段20との接続位置から外周壁14の上端面を通る水平線A-Aと屋根体12との交差位置より上までの部分とを、その一部によって覆っている。これにより、屋根10において雪や雨水等が最も溜まりやすい部分における確実な防水を図ることができる。つまり、水平線A-Aに達するまで雨水等が溜まった場合でも、水平線A-Aより下の位置において防水材30に継ぎ目や切れ目がなく、さらに、防水材30の端部は、水平線A-A上もしくはそれより上に位置することから、防水材30の端部付近からも雨水等が屋根体12等に浸透しにくい。」

(1e)「【0043】図1に示す第一の不燃材40乃至第三の不燃材44は、このように取り付けられた防水材30,32,34,36の上に重ねて取り付けられる。
【0044】第一の不燃材40乃至第三の不燃材44は、いずれも、矩形のモルタル板であり、接着剤を用いて所定位置に張り付けられる。具体的には、第一の不燃材40は、内壁面14aにおける接続手段20との接続位置から上端部にかけての領域に張り付けられ、第二の不燃材42は、板状部材22の上面に張り付けられ、第三の不燃材44は、屋根面12に、各々、防水材30等を介して取り付けられる。また、第一の不燃材40と第三の不燃材44は、一方の端部を第二の不燃材42の端部に接続させて設置される。これにより、不燃材同士の隙間が少なくなり、耐火効果が高められる。
【0045】なお、固定金物を用いず、接着剤を用いて固定されることから、防水材30等に穴があかず、防水性能の低下が防止される。」

(1f)「【0058】屋根仕上げ材50は、石綿スレート板であり、第三の不燃材44を避けて、第五の防水材38を覆い隠すように、屋根面12aに取り付けられる。このため、第三の不燃材44との境界付近では、屋根仕上げ材50の一部が水切り材52の端部に重なった状態で設置される。」

(1g)「【0067】同図において、屋根10は、周囲を外周壁14で囲まれている。このため、内樋60も、屋根10を一周するように形成されている。」

(1h)「【0075】さらに、本発明において、壁面における接続手段との接続位置から上端部にかけての領域に接着される第一の不燃材と、接続手段の上面に接着される第二の不燃材と、この第二の不燃材に接続されて屋根面に接着される第三の不燃材と、を含む場合には、接続手段及びその周辺の耐火を図りつつ、防水効果の低下を防ぐことができる。」

(1i)図1及び2等から,外周壁14の上部の屋根体の軒先側より上方の部分がパラペット壁であることは明らかである。

(1j)図1には,屋根体のパラペット壁上端よりも高い部分の防水材は屋根仕上げ材50によって,低い部分は第三の不燃材44によって被覆されている点が示されている。

以上の記載事項(1a)?(1j)及び図面から見て,刊行物1には,以下の発明が記載されているものと認められる。(以下,「刊行物1記載の発明」という。)

「外周壁14の上部にパラペット壁が設けられ,このパラペット壁に囲まれた部分に勾配がつけられた屋根10が設けられ,この勾配がつけられた屋根10を形成する屋根体12の端部と外周壁の内壁面14aとが,水平に載置・固定される板状部材22を含む接続手段20で接続されており,パラペット壁の内壁面14a,板状部材22上面,及び屋根体12の上面は防水材30,32,34,36,38により被覆されており,前記勾配がつけられた屋根10のパラペット壁上端よりも高い部分の防水材30,32,34,36,38は屋根仕上げ材50によって被覆されているとともに,パラペット壁の内壁面14a,板状部材22の上面,及び屋根体12の上面のパラペット壁上端よりも低い部分の防水材30,32,34,36は不燃材40,42,44により被覆されており,屋根体12は結合補助材82を介して梁80上に固定されている屋根構造。」

(2)刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された上記刊行物2には,図面とともに,以下の記載がある。
(2a)「【請求項1】 フラット屋根部の上面部の一部に置屋根部を形成した屋根であって、置屋根部をフラット屋根部の一部から立ち上がった置屋根用立ち上がり部と、置屋根用立ち上がり部の上部に形成した傾斜屋根部とで構成し、傾斜屋根部の下端部をフラット屋根部の上面よりも上方に位置させ、フラット屋根部の外周部にパラペット部を立設し、傾斜屋根部の傾斜の延長線と、パラペット部を通る垂直線との交わる部分がパラペット部の上端よりも下方に位置していることを特徴とする屋根。」

(2b)「【0009】建物Bの上部には屋根Aが形成してある。本発明の屋根Aはいわゆる陸屋根と称されるフラット屋根部1の上面部の一部に図2に示すように平面視における屋根面積全体よりも小さい平面視における面積の小さい置屋根部2を設けて構成してある。
【0010】フラット屋根部1の外周部にはパラペット部5が上方に向けて突出形成してある。
【0011】また、置屋根部2はフラット屋根部1の一部から上方に向けて突出する置屋根用立ち上がり部3とこの置屋根用立ち上がり部3の上部に形成する傾斜屋根部4とで構成してある。・・・」

(2c)「【0014】図4にはフラット屋根部1と置屋根用立ち上がり部3とのなすコーナ部分の水仕舞いの構造が示してある。図4においてフラット屋根部1の上面部に敷設する防水シート17を置屋根用立ち上がり部3の外装材18に沿って上方に垂直に立ち上げ、外装材18の上端部に取付けた水切り板19に防水シート17の上端部を溶着等の固着手段により一体に固着してある。また、フラット屋根部1の端部とパラペット5とのなすコーナ部分の水仕舞いも、上記と同様にしてフラット屋根部1の上面部に敷設する防水シート17をパラペット部5の外装材18’に沿って上方に垂直に立ち上げ、外装材18’の上端部に取付けた水切り板19’に防水シート17の上端部を溶着等の固着手段により一体に固着してある。つまり、フラット屋根部1と置屋根用立ち上がり部3とのなすコーナ部分の水仕舞い、フラット屋根部1とパラペット部5とのなすコーナ部分の水仕舞いは共に水平と垂直とのなすコーナ部分の水仕舞いとなって水仕舞いが確実となるものである。つまり、水平と緩い傾斜とのなすコーナの水仕舞いの場合には水平部分から吹き上がってくる水が緩い傾斜に沿って上昇して水仕舞い部分から水が浸入しやすいが、水平と垂直とのなすコーナ部分の水仕舞い部分においては水平部分から垂直に水が吹き上がり難くて水仕舞い部分からの水の浸入が確実に防止できることになる。」

(2d)「【0016】フラット屋根部部1には図6に示すように排水部20が形成してあり、傾斜屋根部4に降った雨水はフラット屋根部1に流れ、フラット屋根部1に降った雨水と上記傾斜屋根部4からフラット屋根部1に流れた雨水は上記排水部20に集まるようになっている。排水部20にはパラペット部5の下方を貫通して排水筒21が接続してあり、排水筒21に縦樋(図示せず)を接続して排水するようになっている。したがって、本発明においてはフラット屋根部1の端部に従来のように軒樋を取付ける必要がないものであって、外観が良くなるものである。また、傾斜屋根部4の傾斜の延長線と、パラペット部5を通る垂直線との交わる部分がパラペット部5の上端よりも下方に位置しているので、傾斜屋根部4を勢いよく流れた雨水はパラペット部5の存在によりフラット屋根部1から外に飛散するのが防止され、フラット屋根部1の一部に傾斜屋根部4を設けても排水上何ら問題がないものである。」

(2e)図4には,フラット屋根部1の外周部で建物Bの外壁の上部にパラペット部5が設けられている点が開示されている。

以上の記載事項(2a)?(2e)及び図面から見て,刊行物2には,以下の発明が記載されているものと認められる。(以下,「刊行物2記載の発明」という。)

「フラット屋根部1の上面部の一部から立ち上がった置屋根用立ち上がり部3と,置屋根用立ち上がり部3の上部に形成した傾斜屋根部4とで構成した置屋根部2を形成し,フラット屋根部1の外周部で建物Bの外壁の上部にパラペット部5を立設した屋根において,
フラット屋根部1の上面部に敷設する防水シート17を,置屋根用立ち上がり部3の外装材18及びパラペット部5の外装材18’に沿って上方に垂直に立ち上げ,置屋根用立ち上がり部3の外装材18及びパラペット部5の外装材18’の上端部にそれぞれ取付けた水切り板19,19’に防水シート17の上端部を溶着等の固着手段により一体に固着した屋根。」

(3)刊行物3
(3a)「【請求項1】建築物の外壁から建築物内方へ向けて下降傾斜した屋根面を有する建築物の屋根構造において、
屋根設置高さ位置よりも高い位置まで伸長する外壁パネルと、
該外壁パネルの建築物内方側の側面の屋根設置位置に設けられる屋根支持材と、
建築物外壁から内方へ向けて下降傾斜した状態で前記屋根支持材上に外壁側端を支持させる屋根パネルとを有し、
前記外壁パネルの屋根設置高さ位置より上方部をパラペットとしたことを特徴とする建築物の屋根構造。」

(4)刊行物4
(4a)「【請求項1】屋根の両側から屋根の略中央に向かって緩傾斜下降する複数の屋根面にて形成される建築物の屋根構造であって、
前記屋根面は、複数の屋根パネルを組み合わせて形成されていることを特徴とする建築物の屋根構造。
・・・
【請求項4】前記屋根の周囲には、その屋根からの落雪を防ぐ雪止め壁が設けられ、その雪止め壁の内面側には、前記屋根パネルを支持する屋根枠が設けられていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の建築物の屋根構造。」

(4b)「【0019】続いて、屋根10について説明する。屋根10は、落雪防止用の雪止め壁(パラペットパネル)20と、その内方に設けられる屋根枠30と、屋根枠30上に載置される複数の屋根パネル40(図4参照)と、屋根中央に設けられる排水溝50(図6参照)と、を備えて構成されている。
【0020】落雪防止用の雪止め壁20は、図1に示されるように、外壁パネル1a上に連結し、建物上部に連続した周壁を形成している。すなわち、屋根10の周囲を囲み、屋根10上に降り積もった雪の落下を防止するためのものである。」

第3.対比
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると,刊行物1記載の発明の「勾配がつけられた屋根10を形成する屋根体12」が,本願発明の「勾配屋根」に相当し,以下同様に,「外周壁の内周面14a」が「パラペット壁の内側」に,「板状部材22」が「平坦部」に,「防水材30,32,34,36,38」が「防水シート」に,「屋根仕上げ材50」が「屋根材」に,それぞれ相当する。
また,刊行物1記載の発明も,防水材で屋根体を被覆していることから,「屋根の防水構造」であることは明らかである。

よって,両者は,
「外周壁の上部にパラペット壁が設けられ,このパラペット壁に囲まれた部分に勾配屋根が設けられ,この勾配屋根の軒部分には前記パラペット壁の内側に沿って平坦部が設けられており,前記パラペット壁,平坦部の上面,及び勾配屋根の上面は防水シートにより被覆されており,前記勾配屋根の前記パラペット壁上端よりも高い部分の前記防水シートは屋根材によって被覆されている屋根の防水構造。」
である点で一致し,以下の点で相違している。

(相違点1)
パラペット壁の内周面,平坦部,及び勾配屋根のパラペット壁上端よりも低い部分の防水シートについて,本願発明は,不燃材で被覆されず,露出しているのに対し,刊行物1記載の発明は,不燃材で被覆されている点。

(相違点2)
本願発明は,外周壁の内周面に屋根受け材が設けられ,勾配屋根はその軒先部分を屋根受け材に支持されているのに対し,刊行物1記載の発明は,屋根体が結合補助材を介して梁上に固定されている点。

第4.判断
上記相違点について検討する。
(相違点1について)
刊行物2記載の発明から,フラット屋根部の上面部,置屋根用立ち上がり部の外装材,及びパラペット部の内周面の外装材に沿って敷設した防水シートを不燃材等の他の部材で被覆することが必ずしも必要でないことが推認できる。
そして,刊行物1記載の発明は,パラペット壁の内周面,平坦部,及び勾配屋根のパラペット壁上端よりも低い部分に敷設された防水シートは不燃材で被覆されているが,一般的に不燃材は耐火処理の必要性に応じて設けるものに過ぎず,また,刊行物1記載の発明が,落雪等を防止する屋根構造を提供するという目的に基づいてなされた発明であることを考慮しても,当該不燃材を設けることが刊行物1記載の発明の成立性に係わる必須の構成要件とは見られず,刊行物1記載の発明の防水シートを不燃材で被覆しないことの阻害要因は存在しない。
よって,刊行物1記載の発明において,防水シートを被覆している不燃材を省略して防水シートを露出させ,本願発明の相違点1のようにすることは,当業者が容易になし得たことである。

請求人は平成22年10月15日付け回答書において,刊行物2記載の発明について,「上記図4に関する説明に依りますと、フラット屋根部1の上面部に敷設する防水シート17は、置き屋根用立ち上がり部3の外装材18に沿って垂直にたち上げておりますが、そのフラット屋根部1の平坦な面については具体的な記載が有りません。そこで仕方なく図面を参照しますと、その上端が水切り板19,19’に溶着された防水シート17(図面で2枚)の下端は、屋根A又はフラット屋根部1の夫々ハッチングが施された上下2部材の下面まで届いており、これらの2部材の更に下に当該防水シート17と同様の平面部材が示されております。
従って、図4及び[0014]の説明をどのように解釈しても、上記フラット屋根部1の平坦部分は防水シートが他の部材に依って被覆されていることが明らかです。」と主張している。
しかし,上記記載事項(2c)(段落【0014】)には「・・・フラット屋根部1の上面部に敷設する防水シート17・・・」と記載されている上,図6を参照すると,水切り板19の下方の外装板の表面に防水シート17が被覆されている状態が見てとれ,してみると,請求人が図4から「防水シート17」と判断した2本線部分は防水シートではなく外装板であると見られ,当該外装板がフラット屋根部のハッチングが施された部材の下端まで届いていることを示したものと解されることから,請求人の主張は採用できない。

(相違点2について)
刊行物3には,外壁パネル(外周壁)の建築物内方側の側面に屋根支持材(屋根受け材)を設け,屋根パネル(勾配屋根)を該屋根支持材で支持した点が,また,刊行物4には,雪止め壁の内方に屋根枠を設け,屋根パネルを載置した点が,それぞれ記載されており,刊行物1記載の発明の梁で屋根体を支持する構造に代えて,刊行物3及び4記載の発明における外周壁の内周面に設けられた屋根受け材で勾配屋根を支持する構造とすることは,当業者が容易になし得たことである。

そして,本願発明の効果は,刊行物1?4記載の発明から予測することができる程度のことである。

第5.むすび
したがって,本願発明は,刊行物1?4記載の発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-04-26 
結審通知日 2011-05-02 
審決日 2011-05-16 
出願番号 特願2004-138544(P2004-138544)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 宮崎 恭
草野 顕子
発明の名称 屋根の防水構造  
代理人 土井 清暢  
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