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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B
管理番号 1239396
審判番号 不服2010-13836  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-06-23 
確定日 2011-06-29 
事件の表示 特願2004-291303「ゴルフクラブ」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 4月20日出願公開、特開2006-102038〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年10月4日の出願であって、平成21年10月2日に手続補正がなされ、平成22年3月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年6月23日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ、その請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成22年6月23日付けの手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される、次のとおりのものである。

「クラブ長さが44インチ以上48インチ以下、ヘッド重量が190g以上210g以下、ヘッド体積が360cc以上500cc以下であるウッド型ゴルフクラブにおいて、
シャフトのヘッド側先端から130mmの位置の剛性値EItとシャフトのグリップ側後端から250mmの位置の剛性値EIbの比EIt/EIbの値が0.50以上0.60以下であり、
前記EItの値は1.50×10^(6)kgf・mm^(2)以上5.00×10^(6)kgf・mm^(2)以下、EIbの値は2.00×10^(6)kgf・mm^(2)以上10.00×10^(6)kgf・mm^(2)以下の範囲内であるウッド型ゴルフクラブ。」

第3 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平11-164919号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が図とともに記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。

1 「【0007】本発明のゴルフクラブ用シャフトは、その剛性分布を測定した場合に、例えば図2中の-○-○-で示されるように、先端から80?500mmの位置に、値(EI値)が2000000?4000000kgmm^(2)の曲げ剛性のピークを有するものである。ここで、曲げ剛性とは、ASTM D790に準じて測定されるもので、スパン長を200mmとして、15mmRの圧子部を10mm/分でシャフトの測定ポイントに下降させてシャフトに20kgの負荷をかけ、その負荷中のS-S曲線より求められるものである。また、ピークとは、極大を示す箇所を云い、シャフト全体にわたっての最大となる箇所を云うものではない。グリップ側が太いシャフトにおいては、図示例のもののように、グリップ側の弾性率の方が高くなることがあるからである。本発明においては、当該ピークの値は、2000000?4000000kgmm^(2)の範囲内になければならない。2000000kgmm^(2)未満であると、振動減衰率を高めることができず、また、良好なしなり性を発揮させにくいからである。他方、4000000kgmm^(2)よりも大きいと、曲げ剛性のバランスが崩れ、ゴルフクラブ用シャフトとして不適当なものとなるからである。また、当該ピークはゴルフクラブ用シャフトの先端(チップ)から、80?500mmの位置になければならない。100?300mmであればより好ましく、140?180mmであればさらに好ましい。80mmよりも先端側に、また、500mmよりも遠くの位置にピークが存在しても、高い振動減衰率と良好なしなり性を発揮させるのは困難で、使用時の爽快感を向上させにくいからである。
【0008】このような特異な剛性分布をもつものとしては、先端から80?500mmの位置に、引張り弾性率が5?20ton/mm^(2)の炭素繊維強化プラスチックからなる隆起部が形成されているものが望ましい。炭素繊維強化プラスチック製のゴルフクラブ用シャフトにおいて、隆起部を形成することにより振動の減衰率やしなり性を調整することができることは知られているが、上述したように、それらの効果を発揮させるように、即ち、十分な大きさ、高さの隆起部を形成すると、必要以上に曲げ剛性が高められ、ゴルフクラブ用シャフトとして曲げ剛性のバランスが崩れ、かえって好ましくないものとなることがあった。そこで、本発明者等は鋭意研究を重ねたところ、単に層厚等を調整して隆起部を形成するのでなく、引張り弾性率が5?20ton/mm^(2)の炭素繊維強化プラスチックを用いて隆起部を形成することにより、その剛性(EI)を4000000kgmm^(2)以下に抑えつつ、振動の減衰率やしなり性を向上させ得ることを見い出した。」

2 「【0011】
【実施例】[実施例1]以下のようにしてゴルフクラブ用シャフトを製造した。…(略)…
【0013】得られたゴルフクラブ用シャフトは、ウッドタイプのゴルフクラブ用のもので、全長が1145mm、先端から頂部迄の距離Xが140mm、頂部の高さHが4mm、隆起部の幅が145mmのものである。このシャフトにゴルフクラブヘッドとグリップを取り付けてゴルフクラブを製造した。このゴルフクラブを用いて試打を行なったところ、非常に良好な使用感の評価が得られた。
【0014】また、このゴルフクラブ用シャフトにおいて、先端(チップ)からの距離毎に曲げ剛性を求めた。結果を図2中に-○-○-で示した。曲げ剛性の測定は、ASTM D790に準じ、スパン長を200mmとして支持部(10mmR)上にシャフトを置き、また、スパン中心の測定ポイント上にブチルゴム製シート(厚さ:2mm、硬度:60゜)を載せ、15mmRの圧子部を10mm/分でブチルゴム製シートを介在させてシャフトの測定ポイントに下降させてシャフトに20kgの負荷をかけ、その負荷中のS-S曲線より求めた。さらに、このゴルフクラブ用シャフトにおいて、先端(チップ)からの距離毎に捩り剛性を求めた。…(略)…
【0017】[比較例1]隆起部を形成する炭素繊維強化プラスチックとして、引張り弾性率が24ton/mm^(2)(±45゜引張弾性率は1.68ton/mm^(2))のものを用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして、ウッドタイプのゴルフクラブ用シャフトを製造した。このシャフトにゴルフクラブヘッドとグリップを取り付けてゴルフクラブを製造した。このゴルフクラブを用いて試打を行なったところ、使いづらい悪い評価が得られた。また、このゴルフクラブ用シャフトにおいて、先端(チップ)からの距離毎に曲げ剛性を求めた。結果を図2中に-△-△-で示した。…(略)…
【0019】尚、図2中には、隆起部を形成しないこと以外は実施例1と同様にして製造した従来型のゴルフクラブ用シャフトの剛性分布結果も併記(-□-□-)した。…(略)…」

3 「



4 ゴルフクラブ用シャフトの曲げ剛性分布のグラフである図2から、曲げ剛性であるEI値(×1000000kgmm^(2) )が、先端(チップ)において約1.5となり、先端(チップ)から130mmにおいて約3.3となり、先端(チップ)から約140mmにおいて極大となり、先端(チップ)から約320mmにおいて極小となり、先端(チップ)から895mmにおいて約4.0となる曲げ剛性分布を有するゴルフクラブ用シャフトが見て取れる。

5 上記1ないし4から、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「全長が1145mmのウッドタイプのゴルフクラブ用シャフトに、ゴルフクラブヘッドとグリップを取り付けてなるゴルフクラブであって、
前記ゴルフクラブ用シャフトは、曲げ剛性であるEI値(×1000000kgmm^(2) )が、先端において約1.5となり、先端から130mmにおいて約3.3となり、先端から約140mmにおいて極大となり、先端から約320mmにおいて極小となり、先端から895mmにおいて約4.0となる曲げ剛性分布を有する、
ゴルフクラブ。」

第4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
1 引用発明の「ゴルフクラブ用シャフト」、「ゴルフクラブヘッド」、「ウッドタイプのゴルフクラブ用シャフトに、ゴルフクラブヘッドとグリップを取り付けてなるゴルフクラブ」、「先端」及び「曲げ剛性であるEI値」は、それぞれ、本願発明の「シャフト」、「ヘッド」、「ウッド型ゴルフクラブ」、「ヘッド側先端」及び「剛性値」に相当する。

2 引用発明の「シャフト(ゴルフクラブ用シャフト)」は、「剛性値(曲げ剛性であるEI値)」(×1000000kgmm^(2) )が、「ヘッド側先端(先端)」から130mmにおいて約3.3となり、「ヘッド側先端」から895mmにおいて約4.0となる曲げ剛性分布を有するところ、前記「kgmm^(2) 」が「kgf・mm^(2) 」を意味することは当業者に自明であり、かつ、前記シャフトの全長は1145mmであるので、前記「ヘッド側先端から895mm」は「グリップ側後端から250mm」といえるから、引用発明の「シャフト」と本願発明の「シャフト」とは、「シャフトのヘッド側先端から130mmの位置の剛性値EItの値は1.50×10^(6)kgf・mm^(2)以上5.00×10^(6)kgf・mm^(2)以下、シャフトのグリップ側後端から250mmの位置の剛性値EIbの値は2.00×10^(6)kgf・mm^(2)以上10.00×10^(6)kgf・mm^(2)以下の範囲内である」ものである点で一致する。

3 上記1及び2から、本願発明と引用発明とは、
「ウッド型ゴルフクラブにおいて、
シャフトのヘッド側先端から130mmの位置の剛性値EItの値は1.50×10^(6)kgf・mm^(2)以上5.00×10^(6)kgf・mm^(2)以下、シャフトのグリップ側後端から250mmの位置の剛性値EIbの値は2.00×10^(6)kgf・mm^(2)以上10.00×10^(6)kgf・mm^(2)以下の範囲内であるウッド型ゴルフクラブ。」
である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:
前記ウッド型ゴルフクラブが、本願発明では、「クラブ長さが44インチ以上48インチ以下、ヘッド重量が190g以上210g以下、ヘッド体積が360cc以上500cc以下」のものであるのに対して、引用発明では、クラブ長さ、ヘッド重量及びヘッド体積のいずれも明らかでないものである点。

相違点2:
本願発明では、前記剛性値EItと前記剛性値EIbとの比EIt/EIbが、「0.50以上0.60以下」であるのに対して、引用発明では、前記剛性値EItが約3.3であり、前記剛性値EIbが約4.0であるから、比EIt/EIbは約0.825である点。

第5 判断
上記相違点1及び2について検討する。
1 相違点1について
(1)引用発明において、クラブ長さ、ヘッド重量及びヘッド体積の具体的数値は、いずれも当業者が適宜決定すべき設計事項というべきものである。

(2)長さが1117.6mm(44インチ)以上1219.2mm(48インチ)以下のウッド型ゴルフクラブは、本願の出願前に周知である(以下「周知技術1」という。例.特開2000-300704号公報【0024】【表2】及び【表3】、特開2004-209021号公報【0002】、特開平11-319170号公報【0063】及び【0074】【表1】、特開2003-47677号公報【0002】参照。)。

(3)ヘッド重量が190g以上210g以下、ヘッド体積が360cc以上500cc以下のウッド型ゴルフクラブは、本願の出願前に周知である(以下「周知技術2」という。例.特開2003-320060号公報特に【0001】及び【0026】、特開2004-209091号公報特に【0034】及び【0035】参照。)

(4)上記(1)ないし(3)から、引用発明において、クラブ長さを44インチ以上48インチ以下とし、ヘッド重量を190g以上210g以下とし、ヘッド体積を360cc以上500cc以下とし、上記相違点1に係る本願発明の構成となすことは、当業者が周知技術1及び周知技術2に基づいて適宜なし得た設計上のことである。

2 相違点2について
(1)引用例には、「本発明のゴルフクラブ用シャフトは、その剛性分布を測定した場合に、例えば図2中の-○-○-で示されるように、先端から80?500mmの位置に、値(EI値)が2000000?4000000kgmm^(2)の曲げ剛性のピークを有するものである。」(第3の1【0007】参照。)と記載されているから、引用発明において、ゴルフクラブ用シャフトを、先端から130mmにおいて2000000?2400000kgmm^(2)の曲げ剛性のピークを有するものとすることは、当業者が引用例に記載された事項に基づいて容易に想到し得た程度のことである。

(2)先端から130mmにおいて2000000?2400000kgmm^(2)の曲げ剛性のピークを有するものとした上記(1)のゴルフクラブ用シャフトは、グリップ側後端から250mmにおいて約4000000kgmm^(2)の曲げ剛性を有するから、先端から130mmにおける曲げ剛性とグリップ側後端から250mmにおける曲げ剛性との比は、約0.5?約0.6であり、このことは、本願発明の「シャフトのヘッド側先端から130mmの位置の剛性値EItとシャフトのグリップ側後端から250mmの位置の剛性値EIbの比EIt/EIbの値が0.50以上0.60以下」であることに相当する。

(3)上記(1)及び(2)から、引用発明において、上記相違点2に係る本願発明の構成となすことは、当業者が引用例に記載された事項に基づいて容易になし得た程度のことである。

3 効果について
本願発明の奏する効果は、当業者が、引用発明、周知技術1及び周知技術2それぞれの奏する効果並びに引用例に記載された事項から予測することができた程度のものである。

4 まとめ
したがって、本願発明は、当業者が、引用例に記載された発明、引用例に記載された事項、周知技術1及び周知技術2に基づいて容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が、引用例に記載された発明、引用例に記載された事項、周知技術1及び周知技術2に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-04-14 
結審通知日 2011-04-19 
審決日 2011-05-06 
出願番号 特願2004-291303(P2004-291303)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 薄井 義明  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 桐畑 幸▲廣▼
菅野 芳男
発明の名称 ゴルフクラブ  
代理人 大和田 和美  

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