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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1239398
審判番号 不服2010-18128  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-11 
確定日 2011-06-29 
事件の表示 特願2008-148280「電子式計算機及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成21年12月17日出願公開、特開2009-294926〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、
平成20年6月5日付けの出願であって、
平成21年9月4日付けで審査請求がなされ、
平成22年3月12日付けで拒絶理由通知(同年3月23日発送)がなされ、
同年5月12日付けで意見書が提出されると共に、同日付けで手続補正書が提出され、
同年5月24日付けで拒絶査定(同年6月1日発送)がなされ、
同年8月11日付けで本件審判請求がされたものである。


2.本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明は、上記平成22年5月12日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、下記に本願発明として記載の通りものと認める。

<本願発明>
「式表示エリアとグラフ表示エリアとを有するタッチパネル式の表示画面を備えた電子式計算機であって、
ユーザ操作に応じて連立方程式の計算式を入力する式入力手段と、
この式入力手段により入力された連立方程式を前記表示画面の式表示エリアに表示させる式表示制御手段と、
前記表示画面に対するユーザ操作により、前記式表示エリアに表示された連立方程式が前記グラフ表示エリアにドラッグされたことに応じて、当該連立方程式の解を算出する演算手段と、
前記連立方程式をグラフ化する場合に前記演算手段により算出された解をグラフの交点として表示するための座標レンジを設定するレンジ設定手段と、
このレンジ設定手段により設定された座標レンジに従い前記連立方程式とその解を表わすグラフ画面を生成し前記グラフ表示エリアに表示させるグラフ表示制御手段と、
を備えたことを特徴とする電子式計算機。」

(なお、上記平成22年5月12日付けの手続補正書の特許請求の範囲に記載の「この式入力手段段」は本来「この式入力手段」と記載すべき明らかな誤記であると認められるので、上記のとおりに認定した。)


3.引用文献
原査定の拒絶の理由である上記平成22年3月12日付けの拒絶理由通知において引用された、下記引用文献にはそれぞれ下記の引用文献記載事項が記載されている。(下線は当審付与。)

<引用文献1>特開2004-126679号公報(平成16年4月22日出願公開)

<引用文献記載事項1-1>「【請求項3】
表示形態を幾何図形で表示する第1画面と表示形態を文字列からなる数式で表示する第2画面とを備えた表示部と、
前記第1画面及び前記第2画面の内、一方の画面に対するコピー操作がなされた後、他方の画面に対する貼り付け操作がなされた場合に、前記コピー操作により指定された一方の表示形態の内容を、前記貼り付け操作により指定された他方の表示形態に変換して当該他方の画面に表示制御する変換表示制御手段と、
を備えることを特徴とする図形表示制御装置。」

<引用文献記載事項1-2>「【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の関数電卓では、関数式や図形の式を入力してグラフ化したり、グラフ表示からグラフ式や図形を表示させるためには、その目的に応じて、それぞれ異なる一連の操作を必要としていた。従って従来の関数電卓を用いて、数式等の文字データとグラフや図形の関係を学習・分析する為には、それぞれの一連の操作を行う必要があり、関数電卓の操作を良く理解している必要があった。
【0006】
本発明は、上記した従来の事情に鑑みてなされたものであり、きわめて簡単な操作により数式等の文字データとそれに対応するグラフや図形等の関係を理解することができる図形表示制御装置を実現することを目的とする。」

<引用文献記載事項1-3>「【0027】
【発明の実施の形態】
以下、図1?図36を参照して、本発明に係る図形表示制御装置を関数電卓に適用した場合の実施の形態について詳細に説明する。」

<引用文献記載事項1-4>「【0028】
図1に、本発明を適用した関数電卓1の概観図の一例を示す。同図に示すように、関数電卓1は、ディスプレイ3、各種キー群5、入力ペン7を備えて構成されている。各種キー群5を構成するキーにはそれぞれ固有の機能が割り当てられており、ユーザは、これらのキーを押下して関数電卓1を操作する。さらに、ディスプレイ3には後述するタブレット(タッチパネル)30が一体的に構成されており、ユーザは、入力ペン7を使用したディスプレイ3上のタッチ操作により入力することも可能である。」

<引用文献記載事項1-5>「【0137】
図26は、計算ウィンドウCW41に表示された関数式を幾何ウィンドウGW41にドラッグアンドドロップする際の画面遷移例を示す図である。同図(a)に示す計算ウィンドウCW41において、先ず、入力ペン7を用いて関数式を入力する(図6ステップA10(YES)→A12→図7ステップB10(YES)→B12(YES)→B14)。
【0138】
そして、入力ペン7を用いた範囲指定操作により当該テキスト入力した関数式“x^2-3”の文字列領域T90を反転表示させてコピー対象に指定し、ドラッグ操作を開始すると、コピー/ドラッグ処理が行われ、指定した関数式がコピーバッファ808に格納される(図6ステップA14(YES)→A16→図8ステップC10→C12(YES)→C14→C16)。
【0139】
そして、ドラッグ操作を開始した文字列領域T90を幾何ウィンドウGW41上にドロップ操作すると(図6ステップA18(YES)→A20→図10ステップD10→D12(YES)→D18(YES)→D20→D22→図11ステップD236(YES))、図26(b)に示すように、指定した関数式に基づく関数グラフオブジェクト192が幾何ウィンドウGW41に描画される(図11ステップD238→C240(NO)→C242→C248(NO))。
【0140】
さらに、図26(c)に示すように、計算ウィンドウCW41において、入力ペン7を用いて関数式を追加し、当該追加した関数式“x^2*sin(x)”の文字列領域T92を入力ペン7を用いた範囲指定操作により指定して反転表示させてコピー対象に指定し、ドラッグ操作を開始すると、コピー/ドラッグ処理が行われ、指定した関数式がコピーバッファ808に格納される。
【0141】
そして、ドラッグ操作を開始した文字列領域T92を幾何ウィンドウGW41上にドロップ操作すると、指定した関数式に基づく関数グラフオブジェクト194が幾何ウィンドウGW41に描画される。」


<引用文献2>特開2000-250498号公報(平成12年9月14日出願公開)

<引用文献記載事項2-1>「【請求項2】設定された表示範囲に基づいて、グラフ表示領域内にグラフを表示させるグラフ表示制御手段と、
前記グラフ表示領域内にグラフを表示する際の、グラフの最適表示範囲を算出する最適表示範囲算出手段と、
この最適表示範囲算出手段によって算出された最適表示範囲に基づいて、前記グラフ表示制御手段の表示範囲を設定する表示範囲設定手段と、
を備えたことを特徴とするグラフ表示制御装置。
【請求項3】前記最適表示範囲算出手段は、表示させるグラフの数学的特徴に基づいて、最適表示範囲を算出することを特徴とする請求項1または請求項2記載のグラフ表示制御装置。」

<引用文献記載事項2-2>「【発明の属する技術分野】本発明は、グラフの表示制御に係り、詳細には、最適な表示内容を容易に表示するグラフ表示制御装置及び記憶媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、コンピュータによって実行されるソフトウェアには、グラフ表示可能なものが存在する。また、グラフ作成表示機能を備えたグラフ関数電卓が、教育の現場や、エンジニアの技術計算用に利用されている。グラフ関数電卓は、様々な関数演算プログラムを内蔵しており、入力された数式に基づくグラフ作成表示、入力された数表に基づくグラフ作成表示等が可能である。
【0003】このようなグラフ関数電卓では、グラフは初期設定としての表示範囲設定に基づいて表示される。そして、グラフの表示範囲が適切でなく、グラフがグラフ表示画面内に表示されていなかったり、グラフの特徴的な部分が表示されていない場合には、ユーザが表示範囲入力して、適切な表示範囲を設定していた。
【0004】図36は、従来のグラフ表示の表示範囲変更の例を示す図であり、同図中のグラフ表示画面4aは、x軸4c及びy軸4dによって構成される座標系上に、関数グラフ表示4eによってグラフが示される。例えば、x3 -2x2 -5の関数をグラフ化した場合、図36(a)のような表示がされてしまうと、ユーザとしては関数の概形を把握できないため、図36(b)のように表示範囲を変更する必要がある。

<引用文献記載事項2-3>「【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、実際に描画されるグラフが座標上のどのあたりに表示されるかを、グラフ描画前にユーザ自身が推定することは容易ではないため、適切な表示範囲の入力を予め行ったり、少ない回数で行うことは難しく、表示範囲の入力とグラフ表示画面4aの確認とを何度も繰り返すこととなってしまい、手間がかかり大変不便であった。
【0006】また、グラフ中の最大値部分等の特徴のある部分を表示させる際にも、手動での設定は不便であった。更に、極大値部分のようにグラフ中に複数の特徴部分が存在する場合にはその全てを含むように設定することが難しかったり、周期関数の1周期を判別することが容易でないなど、グラフ表示に関しては解決すべき様々な課題があった。
【0007】そこで、本発明の課題は、目的に応じてグラフの最適な表示を行うことが可能なグラフ表示制御装置及び記憶媒体を提供することである。」

<引用文献記載事項2-4>「【0015】この請求項3記載の発明のグラフ表示制御装置によれば、請求項1または請求項2記載の発明の効果に加えて、グラフの数学的特徴部分に対応する最適表示範囲を算出することができるため、例えば、数学の学習の際に、生徒が未習の分野のグラフを表示させる場合等であっても、数学的特徴部分の解析を行わずに容易に最適表示範囲を算出することができ、グラフ表示制御装置の使い勝手を向上させることができる。」

<引用文献記載事項2-5>「【0229】請求項3記載の発明によれば、請求項1または請求項2記載の発明の効果に加えて、グラフの数学的特徴部分に対応する最適表示範囲を算出することができるため、例えば、数学の学習の際に、生徒が未習の分野のグラフを表示させる場合等であっても、数学的特徴部分の解析を行わずに容易に最適表示範囲を算出することができ、グラフ表示制御装置の使い勝手を向上させることができる。」


<引用文献3>特開2003-281102号公報(平成15年10月3日出願公開)

<引用文献記載事項3-1>「【0043】ここで、機能表示とは、例えば、数式における極値や変曲点、特異点、の表示や、方程式の解の表示、y切片や複数のグラフの接点・交点の表示など、1つ若しくは複数のグラフにおける特徴を示すことを含む意である。」


4.引用発明の認定

(1)引用文献1は、上記引用文献記載事項1-2の如く「きわめて簡単な操作により数式等の文字データとそれに対応するグラフや図形等の関係を理解することができる図形表示制御装置を実現することを目的とする」発明であるところの、上記引用文献記載事項1-1のとおりの「図形表示制御装置」を説明するものであり、その発明の詳細な説明及び図面には上記引用文献記載事項1-3のとおり該「図形表示制御装置」を「関数電卓」に適用した場合の実施の形態が記載されている。
従って、引用文献1には
「表示形態を幾何図形で表示する第1画面と表示形態を文字列からなる数式で表示する第2画面とを備えた表示部と、
前記第1画面及び前記第2画面の内、一方の画面に対するコピー操作がなされた後、他方の画面に対する貼り付け操作がなされた場合に、前記コピー操作により指定された一方の表示形態の内容を、前記貼り付け操作により指定された他方の表示形態に変換して当該他方の画面に表示制御する変換表示制御手段と、
を備える関数電卓」
が記載されている。

(2)上記引用文献記載事項1-4記載の通り、該関数電卓の「表示部」には「タッチパネルが一体的に構成されて」いる。

(3)上記引用文献記載事項1-5の「入力ペン7を用いて関数式を入力する」、「入力ペン7を用いた範囲指定操作により当該テキスト入力した関数式“x^2-3”」「入力ペン7を用いて関数式を追加し」等の記載から、引用文献1には「入力ペンを用いた入力操作により、前記第2画面に前記数式として複数の関数式を表示」する例も開示されている。
そして、上記引用文献記載事項1-5の「入力ペン7を用いた範囲指定操作により当該テキスト入力した関数式“x^2-3”の文字列領域T90を反転表示させてコピー対象に指定し、ドラッグ操作を開始する」、「ドラッグ操作を開始した文字列領域T90を幾何ウィンドウGW41上にドロップ操作する」、「当該追加した関数式“x^2*sin(x)”の文字列領域T92を入力ペン7を用いた範囲指定操作により指定して反転表示させてコピー対象に指定し、ドラッグ操作を開始する」、「ドラッグ操作を開始した文字列領域T92を幾何ウィンドウGW41上にドロップ操作する」との記載等から明らかなように、この例では「前記コピー操作及び貼り付け操作」として「前記複数の関数式のドラッグアンドドロップを行うこと」が採用されている。
そして、上記引用文献記載事項1-5の「指定した関数式に基づく関数グラフオブジェクト192が幾何ウィンドウGW41に描画される」、「指定した関数式に基づく関数グラフオブジェクト194が幾何ウィンドウGW41に描画される」との記載等から明らかなように、この例では「前記第1画面に前記幾何図形として、前記複数の関数式に基づく複数の関数グラフオブジェクトを描画する」ことがなされる。
よって、上記「関数電卓」は「入力ペンを用いた入力操作により、前記第2画面に前記数式として複数の関数式を表示し、前記コピー操作及び貼り付け操作として前記複数の関数式のドラッグアンドドロップを行うことにより、前記第1画面に前記幾何図形として、前記複数の関数式に基づく複数の関数グラフオブジェクトを描画する」ものであると言える。

(4)よって、引用文献には「きわめて簡単な操作により数式等の文字データとそれに対応するグラフや図形等の関係を理解することができる図形表示制御装置を実現すること」を目的とする下記の引用発明が記載されていると認められる。

<引用発明>
「表示形態を幾何図形で表示する第1画面と表示形態を文字列からなる数式で表示する第2画面とを備えた表示部と、
前記第1画面及び前記第2画面の内、一方の画面に対するコピー操作がなされた後、他方の画面に対する貼り付け操作がなされた場合に、前記コピー操作により指定された一方の表示形態の内容を、前記貼り付け操作により指定された他方の表示形態に変換して当該他方の画面に表示制御する変換表示制御手段と、
を備える関数電卓であって、
表示部にはタッチパネルが一体的に構成されており、
入力ペンを用いた入力操作により、前記第2画面に前記数式として複数の関数式を表示し、前記コピー操作及び貼り付け操作として前記複数の関数式のドラッグアンドドロップを行うことにより、前記第1画面に前記幾何図形として、前記複数の関数式に基づく複数の関数グラフオブジェクトを描画する関数電卓。」


5.対比
以下に、本願発明と引用発明とを比較する。

(1)引用発明は「電卓」即ち電子式卓上計算機であるから、本願発明と同様に「電子式計算機」と言えるものである。

(2)引用発明における「表示部」は、本願発明における「表示画面」に対応付けられるものであるところ、前者には「タッチパネルが一体的に構成されて」いるのであるから、引用発明も本願発明と同様に「タッチパネル式の表示画面を備え」るものである。

(3)引用発明における「第2画面」は、本願発明における「式表示エリア」に対応付けられるものであるところ、前者は「表示形態を文字列からなる数式で表示する」のであるから、前者も後者と同様に「式表示エリア」と言えるものである。

(4)引用発明における「第1画面」は、本願発明における「グラフ表示エリア」に対応付けられるものであるところ、前者は「表示形態を幾何図形で表示する」ものであり、該「幾何図形」は「関数グラフオブジェクト」であるから、前者も後者と同様に「グラフ表示エリア」と言えるものである。

(5)上記(1)?(4)より、引用発明も本願発明も「式表示エリアとグラフ表示エリアとを有するタッチパネル式の表示画面を備えた電子式計算機」と言えるものである点で一致すると言える。

(6)引用発明においては「入力ペンを用いた入力操作により、前記第2画面に前記数式として複数の関数式を表示」するのであるから、本願発明と同様に「ユーザ操作に応じて」「計算式を入力する式入力手段」を有していると言えるものである。
また、引用発明における「複数の関数式」と、本願発明における「連立方程式の計算式」は、ともに「複数の数式よりなる計算式」と言えるものである点で共通する。
従って、引用発明と本願発明とは「ユーザ操作に応じて複数の数式よりなる計算式を入力する式入力手段」を備える点で一致する。

(7)引用発明は「前記第2画面に前記数式として複数の関数式を表示」するのであるから、該表示のための制御手段を備えるものであることは明らかであり、該制御手段は、「式表示制御手段」に対応付けられるものであるところ、上記(6)での所論と同様に、引用発明における「複数の関数式」と、本願発明における「連立方程式」は、ともに「複数の数式」と言えるものであるから、引用発明と本願発明とは「この式入力手段段により入力された複数の数式を前記表示画面の式表示エリアに表示させる式表示制御手段」を備える点で一致する。

(8)引用発明における「変換表示制御手段」は「前記コピー操作により指定された一方の表示形態の内容を、前記貼り付け操作により指定された他方の表示形態に変換して当該他方の画面に表示制御する」ものであり、該「変換表示制御手段」における「変換」は「関数式に基づく」「関数グラフオブジェクト」を「描画」するための処理であるから、該「関数式」「を表すグラフ画面を生成するための数値」を算出する演算を行っていることは明らかである。
そして、引用発明における「関数グラフオブジェクト」の「描画」は「前記複数の関数式のドラッグアンドドロップを行うことにより」なされるのであるから、該「グラフ画面を生成するための数値」を算出する演算は「前記表示画面に対するユーザ操作により、前記式表示エリアに表示された複数の数式が前記グラフ表示エリアにドラッグされたことに応じて」なされるものと言える。
一方、本願発明における「連立方程式の解」も「グラフ画面を生成するための数値」と言えるものであるから、引用発明と本願発明とは「前記表示画面に対するユーザ操作により、前記式表示エリアに表示された複数の数式が前記グラフ表示エリアにドラッグされたことに応じて、複数の数式を表すグラフ画面を生成するための数値を算出する演算手段」を備える点で一致する。

(9)引用発明における「変換表示制御手段」が行う「当該他方の画面に表示制御する」ことは、本願発明における「グラフ表示制御手段」による処理に対応付けられるものであるところ、前者も後者と同様に「グラフ画面を生成し前記グラフ表示エリアに表示させる」ものであることは明らかである。
従って、引用発明と本願発明とは「前記複数の数式を表わすグラフ画面を生成し前記グラフ表示エリアに表示させるグラフ表示制御手段」を備える点で一致する。

(10)よって、本願発明は、下記一致点で引用発明と一致し、下記相違点を有する点で引用発明と相違する。

<一致点>
「式表示エリアとグラフ表示エリアとを有するタッチパネル式の表示画面を備えた電子式計算機であって、
ユーザ操作に応じて複数の数式よりなる計算式を入力する式入力手段と、
この式入力手段により入力された複数の数式を前記表示画面の式表示エリアに表示させる式表示制御手段と、
前記表示画面に対するユーザ操作により、前記式表示エリアに表示された複数の数式が前記グラフ表示エリアにドラッグされたことに応じて、複数の数式を表すグラフ画面を生成するための数値を算出する演算手段と、
前記複数の数式を表わすグラフ画面を生成し前記グラフ表示エリアに表示させるグラフ表示制御手段と、
を備えた電子式計算機。」

<相違点>
本願発明においては、複数の数式は「連立方程式」であり、
演算手段は「当該連立方程式の解を算出」するものであり、
「前記連立方程式をグラフ化する場合に前記演算手段により算出された解をグラフの交点として表示するための座標レンジを設定するレンジ設定手段」を備え、
グラフ表示制御手段は「このレンジ設定手段により設定された座標レンジに従い」グラフ画面を表示させるものである点。

これに対し、引用文献1には、「レンジ設定」に関する記載は無く、このため、該レンジが「グラフの交点として表示するための座標レンジ」であることの記載も無く。さらに、上記複数の関数式を「連立方程式」として扱う旨の明示も無い。


6.判断
(1)上記相違点について検討するに、上記引用文献記載事項2-1から見て、引用文献2には、「設定された表示範囲に基づいて、グラフ表示領域内にグラフを表示させるグラフ表示制御手段と、前記グラフ表示領域内にグラフを表示する際の、グラフの最適表示範囲を算出する最適表示範囲算出手段と、この最適表示範囲算出手段によって算出された最適表示範囲に基づいて、前記グラフ表示制御手段の表示範囲を設定する表示範囲設定手段と、を備えたことを特徴とするグラフ表示制御装置であって前記最適表示範囲算出手段は、表示させるグラフの数学的特徴に基づいて、最適表示範囲を算出することを特徴とする請求項1または請求項2記載のグラフ表示制御装置」の発明が記載されている。
該引用文献2記載の発明は、上記引用文献記載事項2-2?2-5等からみて、引用発明と同様の「グラフ関数電卓」における「使い勝手を向上させる」ことを目的とするものであり、「きわめて簡単な操作」を意図するものである引用発明に適う解決手段を提示するものである。
してみると、引用発明に該引用文献2記載の発明の適用を試みることは、当業者の通常の創作力の発揮と言えるものであり、該適用に格別な阻害要因も認められない。
そして、引用発明の如き複数の関数式を表わすグラフにおいては、その「交点」が数学的特徴であることは説示するまでもない常識的な事項である(必要があれば、引用文献3(特引用文献記載事項3-1)あるいは特開2002-351848号公報(平成14年12月6日出願公開)(特に【請求項3】【請求項5】【請求項19】【請求項21】、段落【0069】?【0080】、【0095】?【0106】)等参照)。
してみると、上記引用発明への引用文献2記載の発明の適用に際し、複数の関数式を表わすグラフの数学的特徴点である交点を表示するためにその座標を算出し、これを表示するためのレンジを設定することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
そして、グラフの「交点」が、連立方程式の解を意味することも、説示するまでもない一般常識であるから、複数の関数式を連立方程式として、また、グラフの交点を該連立方程式の解として捉えることができることは明らかである。
してみると、引用発明における複数の関数式を「連立方程式」とするとともに、引用発明における変換表示制御手段を「当該連立方程式の解を算出」する手段、「前記連立方程式をグラフ化する場合に前記演算手段により算出された解をグラフの交点として表示するための座標レンジを設定するレンジ設定手段」及び、「このレンジ設定手段により設定された座標レンジに従い」グラフ画面を表示させる手段として動作させること、即ち引用発明を上記相違点を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。

(2)従って、本願発明の構成は引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
また、本願発明の作用効果は、当業者であれば容易に予測し得る程度のものであって、格別顕著なものではない。
よって、本願発明は、引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


7.請求人の主張等について、
なお、請求人は、審判請求書の【請求の理由】「3.本願発明が特許されるべき理由」「(3)本願発明と引用文献との対比 」において、
『しかし、引用文献1に示されるのは、関数式(例えばy=f(x)で記載された式)をグラフ領域にドラッグすることによりグラフを表示するという動作が実行されるだけであり、本発明のように、グラフ化だけでなく解の演算の指令としても働かせることは示していない。つまり、ドラッグという一つの動作で連立方程式あるいは高次方程式の解を算出させ、また同時に解を表示するのに適切な表示範囲(座標レンジ)を算出させ、実際に表示させることは、引用文献1には何ら記載がない。
引用文献2?4においても、1回のドラッグ操作で、連立方程式あるいは高次方程式の解を算出させ、また同時に解を表示するのに適切な座標レンジを算出させ、実際に表示させることは何ら記載がない。
(3) つまり、請求項1、3における「連立方程式がグラフ表示エリアにドラッグされたことに応じて、当該連立方程式の解を算出する演算手段」、「連立方程式をグラフ化する場合に演算手段により算出された解をグラフの交点として表示するための座標レンジを設定するレンジ設定手段」に相当する構成や、請求項2、4における「高次方程式がグラフ表示エリアにドラッグされたことに応じて、当該高次方程式の解を算出する演算手段」、「高次方程式をグラフ化する場合に演算手段により算出された解をX軸との交点として表示するための座標レンジを設定するレンジ設定手段」に相当する構成が、各引用文献に記載されていないことは明らかである。
(4) よって、本発明は引用文献に記載されない独自の構成を備えていることは明白であり、引用文献を組み合わせたとしても本発明がなし得られるはずはない。 』と主張している。
しかしながら、本願特許請求の範囲の請求項1には「前記表示画面に対するユーザ操作により、前記式表示エリアに表示された連立方程式が前記グラフ表示エリアにドラッグされたことに応じて、当該連立方程式の解を算出する演算手段」を備える旨の記載はあるものの、この「算出」がドラッグされたこと「のみ」に応じてなされる旨の記載も、当該「演算手段」とは別の手段として記載される「レンジ設定手段」「表示制御手段」における処理も該ドラッグされたこと「のみ」に応じてなされる旨の記載も、このドラッグが一つの動作で有る旨の記載もないのであるから、本願発明を「ドラッグという一つの動作で連立方程式あるいは高次方程式の解を算出させ、また同時に解を表示するのに適切な表示範囲(座標レンジ)を算出させ、実際に表示させる」ものと解釈し得るものではない。
なお、操作性の向上は、引用発明が「きわめて簡単な操作」を意図しているように、当該分野における普遍的な課題であり、引用文献2記載の発明の適用に際して、その交点の算出や表示範囲の設定を一つのドラッグアンドドロップに応じて行うようにすることは、当業者であれば当然の如く想到し、適宜採用する設計的事項に過ぎないものと認められ、仮に、本願発明を請求人主張の如く「ドラッグという一つの動作で連立方程式あるいは高次方程式の解を算出させ、また同時に解を表示するのに適切な表示範囲(座標レンジ)を算出させ、実際に表示させる」ものと解釈したとしても、上記6.(2)の結論に影響するものではない。


8.むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項についての検討をするまでもなく、本願は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-09 
結審通知日 2011-04-05 
審決日 2011-04-19 
出願番号 特願2008-148280(P2008-148280)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 漆原 孝治  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 ▲吉▼田 美彦
冨吉 伸弥
発明の名称 電子式計算機及びプログラム  

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