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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F26B
管理番号 1239489
審判番号 不服2010-326  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-01-07 
確定日 2011-07-04 
事件の表示 特願2000-322443号「シート用乾燥装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年5月9日出願公開、特開2002-130947号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成12年10月23日の出願であって、平成21年10月2日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年10月9日)、これに対し、平成22年1月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
そして、当審にて平成22年10月29日付けで拒絶理由通知がなされ、これに対し、同年12月24日付けで手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成22年12月24日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「前後方向へ延びるシート走行路と、該シート走行路に乾燥用ガスを供給するための吹出口を表面側に開口して、該シート走行路を横断する左右方向へ延びる複数本のノズル箱を、前後方向に沿って並列に配置したノズル群と、該ノズル箱の前後外側に形成されて左右方向へ延びる還流用空間と、乾燥処理を終えた還流ガスが集合する集合用吸引部と、を備えたシート用乾燥装置において、前記各ノズル箱の裏面外側に、該ノズル箱を分離可能に接合すると共に該ノズル箱と連通して左右方向へ延びる供給用分岐ダクトを設け、該供給用分岐ダクトの前後外側に、前記シート走行路と対面する表面側に還流用空間を左右方向の全域で均一な吸引状態にする複数個の吸引口を分散して開口した左右方向へ延びる吸引室を設け、これら吸引室と前記集合用吸引部とを還流用集合ダクトを介して連通し、前記任意の供給用分岐ダクトと該任意の供給用分岐ダクトに隣接する前記吸引室とを一体に形成したことを特徴とするシート用乾燥装置。」

第3 引用例
1.当審の拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である、特表2000-513055号公報(以下「引用例1」という。)には、「フローテーションドライヤユニット」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与。以下、同様。)

ア.「図1はコーテッドウエブ12を乾燥するための本発明のフローテーションドライヤユニット10を表している。フローテーションドライヤユニットはウエブを横断して配置された数個のノズルボックス14から成り、これらノズルボックスを通して乾燥エアジエット16はウエブに向かって供給される。ウエブの側部で供給エアデストリュビュション室18はユニット内のノズルボックス14の全てについて共通である。ノズルボックス14はウエブに向かって開いておりかつウエブから排出されるエア用のサクションチャンバ20を形成するボックス状の構造体で覆われている。サクションボックスの箱状構造体はノズルボックス14を覆っているが、ノズルチャンネルの上方に戻りエアの排出用の自由空間を残している。エアは、大きい矢印によって示されているように、ウエブ領域からノズルボックス間のスペース22からサクションチャンバの上部にそしてさらにはウエブの側部で戻りエア集合室24へと排出される。
ウエブボックス14は楔状をしており、それらの高さは入口側端部26から終端部28の方へと、すなわち供給エアの流れ方向において、減少している。この場合において、またノズルボックスをカバーしているサクション室20はわずかに楔状になっていてその結果サクションチャンバ(図2)の高さHは戻りエアの流れ方向において増大している。エアフローテーションドライヤボックスの全体はこのように楔状であるが、しかしその高さは対応する従来の3段階式のフローテーションドライヤ構造体よりも相当に小さい。
本発明によれば、サクションボックス20は戻りエアの流れを等しくする多孔板30によって2つの部分、すなわち多孔板30とウエブ12との間の均一化スペース32と、多孔板とサクションチャンバ20の背面側表面との間の搬送チャンバ34とに分割される。均一化空間32と搬送チャンバ34との双方は図1に示す場合において、楔状でありその高さは流れの方向に増大している。
図2は、図1において使用された同じ参照番号を用いており、ノズルボックス間のスペース22内でウエブの横断方向における図1のフローテーションドライヤユニット10の断面図である。図2は多孔板30が、ウエブの1つの側部から他方に延びていて、ウエブと多孔板との間の開いた均一化空間32と、多孔板とサクションチャンバ20の背面側表面との間にある搬送チャンバ34とにサクションチャンバ20をどのように分割しているかを図1よりもより良く示している。サクションチャンバにおいて、多孔板は圧力エコライザを形成して全ウエブ領域において戻りエアの均一な流れを提供する。
ノズルボックス14は図2において側面図として示されている。また多孔板30がノズルボックスの上でかつノズルボックス14の上側表面に主として平行に、例えば50?70mmの、小さい距離内にサクションチャンバ内に配列されていることもわかる。ノズルボックス14の高さhと均一化空間32の高さh’はh’がhよりもわずかに大きく、これらの高さは戻りエアの流れ方向において主として同じ比率で増大している。ノズルボックス14と均一化空間32の断面の楔形状とは主として同じである。図2はまたエア搬送チャンバ34が楔状であり、戻りエア流の方向に開いていることを示している。
図2においてはまた、ノズルチャンネル14が実際のエアデストリビュウションチャンネル要素36と該エアデストリビュウションチャンネル要素の下の実際のノズル要素38とで形成されていることを示している。
図3は線AAに沿ったウエブ平面の方向における図2の実際のノズル38の断面でを示している。図3においてウエブを横切って延びる6つのエアデストリュビュウションチャンネル36の断面が示されている。エアエアデストリュビュウションチャンネルは共通の供給エアデストリュビュウションチャンバ18に接続されている。ホットエアもしくは何らかの他の適当なガスが、エアデストリュビュションチャンバを介して、ホットエア源から直接にかあるいは戻りエアの条件付け後の循環エアとしてフローテーションドライヤに供給される。」(16ページ20行?18ページ15行)

イ.「図5は図2において線BBに沿ったチャンバ20の断面を示している。図において、開口30’とともに、サクションチャンバの搬送チャンバと均一化スペースとの間の多孔板30が示されている。矢印に従った戻りエアは多孔板30’から戻りエアのための集合チャンバ24の方に流れ、そこから戻りエアはさらに排出チャンネル48へ導かれる。
多孔板内の開口もしくはオープニングの大きさ、数および往復距離はウエブから排出するエアの量とウエブの幅が知られるならば計算することができる。開いている領域は典型的には15パーセントよりも小さくて、これはたとえば5?75mmの開口、好ましくは10?40mmの開口をもって成し遂げることができる。しかしながら多孔板の開口領域はウエブの横断方向において変化させて開口領域が戻りエアの流れ方向において減少するようにすることができる。
図6はウエブの走行方向に平行な2つのボックス14の断面を表している各々のノズルボックスは箱状構造であり、そしてウエブを横切って延びる2つの側壁52、54と長手方向に傾斜している上部56と底部58とで形成されている。上部56の傾きは図1と図2とにおいて見ることができる。ノズルボックスは主として2部品でなり、エアデストリビュウションチャンネル36と、該エアデストリビュウションチャンネルに一体化される実際のノズル要素38とからなる。」(18ページ26行?19ページ15行)

ウ.「ノズル要素38にはウエブを横切って延びる直線化通路もしくはスロット40が設けてある。直線化通路40はウエブを横切り、側壁52と54とのウエブ側の下側エッジ部52’、54’に接合され、そして上記エッジに平行な平らな壁要素60とおよびノズル要素内に設けられた第2の平行な平らな壁要素62とによって画成されている。ノズルボックスの側壁52と54とのエッジ部は、所望ならば、直線化通路40を画成する壁要素として直接使用することもできる。図6に示すノズルはいわゆるフロートタイプのオーバープレッシャノズルである。
直線化通路40には供給エア流を真っ直ぐにする要素42が設けてある。この要素は直線化通路を図4に示されているように、パーティション44を形成することにより連続したチャンネル部分46に分割する。
直線化通路40の壁要素60と62との間の距離aは10?40mm、好ましくは15?25mmである。直線化通路40内に配置された直線化要素42の高さl、すなわち直線化チャンネル深さは約30?100mm、好ましくは40?60mmである。
加えて、延長部68が平らな要素60に設けてあり、該延長部はノズルの内部70とともに実際のノズル開口72を形成しており、そこから直線化された乾燥エアがウエブ12に向かって排出される。
図6はさらに開口30’を備えノズルボックス14の上方に配列された本発明の多孔板30を開示している。本発明により、多孔板はノズルボックス間のスペース22を経て、戻りエアを調節する。」(19ページ16行?20ページ9行)

エ.「図7はフォイルタイプの2つのアンダープレッシャノズルの図6に従う断面図を表している。この配列において、ノズル要素38はただ1つの直線化通路40を有しており、該通路は制御可能な方法でウエブ12の方に向かってエアをもたらすためのエア流直線化要素42を備えている。
ウエブに面するノズルボックス側壁54と52との部分の延長部52’、54’’は図7の場合において、隣接したノズルボックス間のスペース22内でウエブ平面にあるいはノズルの支持面に平行な平面64を形成するべく曲げられている。延長部52’’、54’’はそれらの間に好ましくはウエブを横切って延びる戻りエアギャップ66を形成しており、そこから戻りエアはスムーズにノズルチャンネル間のスペース22内に流れる。戻りエアギャップには流れ直線化要素を設けることができる。
図8はそれ自体知られた2つのノズルボックス14と該ボックスの底部において実際のノズル開口を形成している多孔板74との図6に従う断面を表している。大きな開口領域を備えた格子もしくは多孔板78がノズルボックス間に配置されており、サクションチャンバ内に紙片が流れ込みことを防止している。格子の開口領域は例えば約55パーセントとすることができ、これはたとえば20?40mmの間隔をもって配列された例えば約30x30mmの大きな開口76をもって達成することができる。図8に示した格子はまた有利には例えば図6に示されたノズルボックス間に配置することもできる。図6、図7、図8に示されたノズルボックスに対する異なった中間スペース配列体はまた当然に図示したもの以外の他のノズルのタイプに関連しても好適に使用することができる。」(20ページ10行?21ページ3行)

オ.図1において、ウエブ12に図示された矢印はウエブ12の進行方向を示すものと認められ、その進行方向は前後方向といえるから、ウエブが進行する通路は前後方向に延びるウエブ走行路ということができる。また、記載事項ア、イ及び図1?図3によれば、エアデストリュビュウションチャンネル36と一体化されるノズル要素38からなるノズルボックス14が前後方向に沿って並列に配置されており、それらはノズルボックス群ということができる。

上記記載事項、図示内容及び認定事項を総合して、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。
「前後方向へ延びるウエブ走行路と、該ウエブ走行路にホットエアを供給するためのノズル開口72を開口して、該ウエブ走行路を横断して配置された複数のノズル要素38と、エアデストリュビュウションチャンネル36と一体化されるノズル要素38からなるノズルボックス14を前後方向に沿って並列に配置したノズルボックス群と、該ノズルボックス14の間のスペース22と、戻りエアが集合するサクションチャンバ20、集合チャンバ24及び排出チャンネル48と、を備えたフローテーションドライヤユニット。」

2.当審の拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である、実願昭48-9493号(実開昭49-111593号)のマイクロフィルム(以下「引用例2」という。)には、「クロスガイダー」に関し、図面と共に次の事項が記載されている。

ア.「ほぼ密閉状態の函体内の被加工物走行通路の上下に、被加工物両面に向つて開口する空気吹出しノズルと空気吸込孔とを被加工物と適宜間隔を存するごとく、かつ前記空気吹出しノズルと空気吹込孔とを被加工物両面において被加工物の長手方向に交互に配し、走行する被加工物の上下から連続的に空気を吹き付けるごとくなしたことを特徴とするクロスガイダー。」(実用新案登録請求の範囲)

イ.「第1図において1は本考案に係る空気流を利用したクロスガイダーで、その詳細は後述するが、該クロスガイダー1は例えば乾燥機或はマーセライズ機等の仕上加工機2の前部に設置されており、走行する編地(被加工物)3はほぼ密閉状態に保たれた函体4内を通過する際に空気の作用を受けて浮遊状態に保持され、幅出しされて仕上加工機2に導入される。5は前記函体4内に空気を供給するための送風機で、空気導入管6より導入された空気を送気ダクト7,7’を介して函体4内に空気を供給する。8,8’は函体4内の空気を吸い込むための吸気ダクトである。
これらの送気ダクト7,7’および吸気ダクト8,8’はそれぞれ一方(図においては7および8)が編地3の走行通路上方に、他方(7’および8’)が走行通路下方に設置されている。
クロスガイダー1の内部は第2図および第3図で示すごとく構成されている。9および9’は送気ダクト7,7’と連結された空気吹き出しノズルで、該ノズル9,9’はそれぞれその開口部が対向するごとく設けられており、走行する編地3に対しその両面に連続的に空気が吹き付けられる。
尚、空気吹き出しノズル9,9’は、編地3を浮遊状態にかつ定位置に保持するようにするためにその吹き出し量が上下それぞれ一定量となるようにダンパー(図示せず)によつて調整されている。10,10’は吸気ダクト8,8’と連結された空気吸込孔で、該吸込孔10,10’もそれぞれその開口部が対向するごとく設けられており、空気吹き出しノズル9,9’から編地両面に吹き付けられた空気を吸込むものである。尚、空気吸込孔10,10’はその吸込孔が一方(例えば下方側)が他方(上方側)よりも若干大となるようにダンパー(図示せず)によつて調整されている。この理由は後述する。
前記空気吹出しノズル9,9’および空気吸込孔10,10’は、編地面と適宜間隔を存するごとく、かつ開口幅が編地幅よりも大となるように設けられている。また空気吹出しノズル9,9’と空気吸込孔10,10’とは編地両面において編地の長手方向に交互に設けられている。このようにする理由は空気の流れを一定に保ち編地の浮遊状態を安定させるためである。」(明細書3ページ12行?5ページ14行)

ウ.「従つて空気吹出しノズル9,9’から加熱空気を連続的に吹付けるようにすればクロスガイダー1内にて乾燥等の前処理をも行なうことができ、特に仕上り加工機として乾燥機を使用した場合には乾燥効率を著しく増大できる。」(明細書7ページ13?18行)

エ.記載事項イにおいて、編地3の走行方向は前後方向ということができるから、編地3の走行通路は前後方向に延びるものである。また、第2図及び記載事項イによれば、空気吹出しノズル9および空気吸込孔10は編地3の走行通路を横断する左右方向に延びるものである。さらに、第3図によれば、空気吹出しノズル9の先細部の前後外側に左右方向へ延びる還流用空間が形成されている。

上記記載事項、図示内容及び認定事項を総合して、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例2には、次の事項(以下「引用発明2」という。)が記載されている。
「前後方向へ延びる編地3の走行通路と、該走行通路を横断する左右方向へ延びる複数の空気吹出しノズル9を、前後方向に沿って並列に配置した吹出ノズル群と、該空気吹出しノズル9の先細部の前後外側に形成されて左右方向へ延びる還流用空間と、空気導入管6と、を備えたクロスガイダーにおいて、該空気吹出しノズル9の前後外側に、前記走行通路と対面する側に開口した左右方向へ延びる空気吸込孔10を設け、これら空気吸込孔10と前記空気導入管6とを吸気ダクト8を介して連通し、前記空気吹出しノズル9と前記空気吸込孔10とを交互に設けたクロスガイダー。」

第4 対比
本願発明と引用発明1とを対比すると、その機能又は構造、作用からみて、引用発明1の「ウエブ走行路」は、本願発明の「シート走行路」に相当し、以下同様に、「ホットエア」は「乾燥用ガス」に、「ノズル開口72」は「吹出口」に、「戻りエア」は「乾燥処理を終えた環流ガス」に、「排出チャンネル48」は「集合用吸引部」に、「フローテーションドライヤユニット」は「シート用乾燥装置」に相当する。また、後者において「ノズル開口72を開口」することは、前者において「吹出口を表面側に開口」することに相当し、同様に、後者において「ウエブ走行路を横断して配置され」ることは、前者において「シート走行路を横断する左右方向へ延びる」ことに相当する。さらに、後者の「スペース22」は、「ノズルボックス14」の前後外側に形成されて左右方向へ延びる空間であって、前者の「還流用空間」に相当する。
そして、後者の「ノズル要素38」は「ノズル開口72」を有するものであるから、後者の「ノズル要素38」と前者の「ノズル箱」は、「ノズル部分」で共通する。また、後者の「ノズルボックス14」は「ノズル要素38」を含むものであるから、後者の「ノズルボックス14を前後方向に沿って並列に配置したノズルボックス群」と前者の「複数本のノズル箱を、前後方向に沿って並列に配置したノズル群」は、「複数本のノズル部分を、前後方向に沿って並列に配置したノズル群」で共通する。さらに、後者の「エアデストリュビュウションチャンネル36」と「ノズル要素38」は一体化されているので、該「エアデストリュビュウションチャンネル36」と前者の「ノズル箱の裏面外側に」設けられた「ノズル箱と連通して左右方向へ延びる供給用分岐ダクト」は、「ノズル部分の裏面外側に」設けられた「ノズル部分と連通して左右方向へ延びる供給用分岐ダクト」で共通する。

そうすると、本願発明と引用発明1の一致点及び相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「前後方向へ延びるシート走行路と、該シート走行路に乾燥用ガスを供給するための吹出口を表面側に開口して、該シート走行路を横断する左右方向へ延びる複数本のノズル部分を、前後方向に沿って並列に配置したノズル群と、該ノズル部分の前後外側に形成されて左右方向へ延びる還流用空間と、乾燥処理を終えた還流ガスが集合する集合用吸引部と、を備えたシート用乾燥装置において、
前記各ノズル部分の裏面外側に、ノズル部分と連通して左右方向へ延びる供給用分岐ダクトを設けたシート用乾燥装置。」

[相違点1]
ノズル部分について、本願発明では、供給用分岐ダクトに分離可能に接合したノズル箱であるのに対して、引用発明1では、エアデストリュビュウションチャンネル36に一体化されるノズル要素38である点。

[相違点2]
本願発明は、供給用分岐ダクトの前後外側に、シート走行路と対面する表面側に還流用空間を左右方向の全域で均一な吸引状態にする複数個の吸引口を分散して開口した左右方向へ延びる吸引室を設け、これら吸引室と集合用吸引部とを還流用集合ダクトを介して連通し、前記任意の供給用分岐ダクトと該任意の供給用分岐ダクトに隣接する前記吸引室とを一体に形成したのに対して、引用発明1は、戻りエアが集合するサクションチャンバ20、集合チャンバ24及び排出チャンネル48からなる点。

第5 当審の判断
[相違点1について]
シート用乾燥装置において、ノズル部分を供給用ダクトに分離可能に接合することは従来周知(例えば、実願昭62-169805号(実開平1-77873号)のマイクロフィルム(ノズルピースとノズルボックス)、特開昭59-100388号公報(中空枠13、ガイド壁20とノズルボックス3)参照。)であるから、引用発明1においてかかる周知技術を適用して相違点1にかかる本願発明の構成を採ることは当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点2について]
本願発明と引用発明2とを対比すると、その機能又は構造、作用からみて、引用発明2の「編地3の走行通路」は本願発明の「シート走行路」に相当し、以下同様に、「空気導入管6」は「集合用吸引部」に、「空気吸込孔10」は「吸引室」に、「吸気ダクト8」は「還流用集合ダクト」に、それぞれ相当する。また、引用発明2の「空気吹出しノズル9」は、走行通路を横断する左右方向へ延びる部材であり、空気を吹き出す部材であるから、引用発明2の「空気吹出しノズル9」は本願発明の「ノズル箱」及び「供給用分岐ダクト」に相当する。
してみると、引用発明2は、「前後方向へ延びるシート走行路と、該シート走行路を横断する左右方向へ延びる複数のノズル箱を、前後方向に沿って並列に配置した吹出ノズル群と、該ノズル箱の前後外側に形成されて左右方向へ延びる還流用空間と、集合用吸引部と、を備えたクロスガイダーにおいて、該供給用分岐ダクトの前後外側に、前記シート走行通路と対面する側に開口した左右方向へ延びる吸引室を設け、これら吸引室と前記集合用吸引部とを還流用集合ダクトを介して連通し、前記供給用分岐ダクトと前記吸引室とを交互に設けたクロスガイダー。」と言い換えることができる。
ところで、引用発明2に係るクロスガイダーは、編地の幅出しを目的とするものであるが、浮遊状態のシート状物に気体を当てて処理することでは引用発明1と共通であり、また、前記空気として加熱空気を用いることにより乾燥処理も可能である旨(記載事項ウ参照。)が記載されているから、引用発明2の供給用分岐ダクトと吸引室との配置構造を引用発明1に適用して、供給用分岐ダクトの前後外側に、シート走行路と対面する側に開口した左右方向へ延びる吸引室を設け、これら吸引室と集合用吸引部とを還流用集合ダクトを介して連通することは、当業者が容易に成し得たことである。その際、吸引室を還流用空間を左右方向の全域で均一な吸引状態にする複数個の吸引口を分散して開口したものとすることは、引用例1の「サクションボックス20に設けた多孔板30」(記載事項ア)や「図8に示された多孔板78」(記載事項エ)のように、従来周知であり、当業者における設計事項にすぎない。
また、引用発明2は供給用分岐ダクトと吸引室とを交互に設けているが、任意の隣接する部材を一体構造とする程度のこと(必要ならば、特開昭52-10961号公報(箱体部4内を壁材5で仕切った吹出し用空間6と吸込み用空間7)、特表昭58-500454号公報(ブロワに接続された室62,64と真空源に接続された室66,68)参照。)は当業者における設計事項の範囲である。
してみると、相違点2にかかる本願発明の構成を採ることは、引用発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明の奏する効果についてみても、引用発明1、引用発明2及び周知技術から当業者が予測できた効果の範囲内のものである。

したがって、本願発明は、引用発明1、引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-05-12 
結審通知日 2011-05-13 
審決日 2011-05-24 
出願番号 特願2000-322443(P2000-322443)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F26B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清水 康  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 稲垣 浩司
長崎 洋一
発明の名称 シート用乾燥装置  
代理人 内田 敏彦  

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