• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1239700
審判番号 不服2009-16503  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-09-07 
確定日 2011-07-07 
事件の表示 特願2002-225002「遊技機、遊技制御方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月 4日出願公開、特開2004- 65309〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一.手続の経緯
本願は、平成14年8月1日の出願であって、拒絶理由通知に対応して平成20年10月9日に手続補正書が提出され、その後なされた拒絶査定に対し、平成21年9月7日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、手続補正がなされた。
審判合議体は、平成22年2月22日付けで審査官による前置報告書の内容を添付して審尋を行い、さらに、平成22年12月28日付けで、平成21年9月7日の手続補正を却下するとともに拒絶理由を通知した。これに対して、請求人は平成23年2月17日に手続補正書及び意見書を提出した。

第二.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年2月17日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「 遊技盤面に複数の釘が植設され、所定数の遊技球を排出する入賞の状態を判定するための遊技球を受け入れる入賞口が該遊技盤面に設けられ、前記遊技盤面に射出された遊技球が前記入賞口に投入されたときに、所定の条件の下で前記入賞の状態を判定する遊技機であって、
一つの文字、複数の文字列又はこれらの組み合わせからなる形態素を示す第二形態素情報には、数値、符号等の第一数値情報が関連付けられており、該第二形態素情報を予め複数記憶する形態素記憶手段と、
遊技者に語りかける文には、該文を検索する基準となる数値、符号等の第二数値情報が対応付けられ、該文を予め複数記憶する文記憶手段と、
遊技者から入力された発話内容に対応する文字列に基づいて、該文字列の最小単位を構成する各形態素を第一形態素情報として抽出する形態素抽出手段と、
前記形態素抽出手段で抽出された前記第一形態素情報と予め記憶された前記各第二形態素情報とを照合し、該各第二形態素情報の中から、該第一形態素情報を構成する前記形態素を含む前記第二形態素情報を検索し、検索した該第二形態素情報に関連付けられた前記第一数値情報を取得する第一取得手段と、
前記第一取得手段で取得された前記第一数値情報に基づいて、該第一数値情報と予め記憶された前記各第二数値情報とを照合し、該各第二数値情報の中から、該第一数値情報と一致する前記第二数値情報を検索し、検索した前記第二数値情報に対応付けられた前記文を取得して出力する第二取得手段と
を有することを特徴とする遊技機。」

第三.特許要件(特許法第29条第2項)の検討
1.引用刊行物記載事項
審判合議体が通知した拒絶理由に引用された特開2001-300003号公報(以下「引用文献A」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
【0018】図1は、特別図柄表示装置100を備えたパチンコ遊技機1の正面図を示す。
【0019】本図において、MICは遊技者の音声を入力するマイクロフォン、SWはマイクスイッチ、SPはスピーカである。
【0021】200は、遊技球201が入賞する始動入賞口である。この始動入賞口200は、普通電動役物(電動チューリップ)としても機能する。
【0040】図4は、本パチンコ遊技機1の制御手順を示すフローチャートである。
【0041】パチンコ遊技機1において遊技が開始されると、主制御装置10は、遊戯球201が始動入賞口200に入賞したか否かをチェックする(ステップS1)。
【0043】そして、遊技球201が始動入賞口200に入賞すると、主制御装置10は、その入賞信号を検出し、予め設定された確率に基づいてゲーム内容を決定する(ステップS3)。
【0052】ステップS13においては、マイクロフォンのスイッチSWがオンになっているか否かを判別する。このスイッチSWは、遊技者が本パチンコ機1と対話をしようとする際に操作される。その結果、スイッチSWがオンされていると判別された場合には、ステップS14において、マイクロフォンMICを介して入力される遊技者の音声を音声処理用LSI150(図3参照)で解析し、その解析内容をCPU103に知らせる。
【0053】すると、CPU103では、予め定めてある複数の画像および可聴音の中から最適のものを選択し(ステップS15)、その画像および可聴音を遊技者に報知させる(ステップS16)。例えば、競技者が「うまくいかないよ!」,「どうなってるんだ!」と言ったときには、図8に示すようなキャラクタを特別図柄表示装置100に表示させ、かつ、スピーカSPから「そろそろ当たるんじゃないかな?」,「もう少しだよ、がんばってみて!」といった音声を発生させる。
【0056】次のステップS22においては、マイクロフォンのスイッチSWがオンになっているか否かを判別する。このスイッチSWは、遊技者が本パチンコ機1と対話をしようとする際に操作される。その結果、スイッチSWがオンされていると判別された場合には、ステップS23において、マイクロフォンMICを介して入力される競技者の音声を音声処理用LSI150(図3参照)で解析し、その解析内容をCPU103に知らせる。
【0057】すると、CPU103では、予め定めてある複数の画像および可聴音の中から最適のものを選択し(ステップS24)、その画像および可聴音を遊技者に報知させる(ステップS25)。例えば、競技者が「今日の調子はどう?」と言ったときには、図9に示すようなキャラクタを表示させると同時に、「今日は、じゃんじゃんいけるよ!」,「今日は、調子いいですよ!」といった音声を発生させる。

摘記した上記の記載等から、引用文献Aには、
「 遊技が開始されると、遊技球201が始動入賞口200に入賞したか否かをチェックする主制御装置10を有するパチンコ遊技機1であって、
遊技者の音声を入力するマイクロフォンMIC、音声処理用LSI150及びCPU103を有し、
前記マイクロフォンMICを介して入力される遊技者の音声を前記音声処理用LSI150で解析し、その解析内容を前記CPU103に知らせ、
前記CPU103は、予め定めてある複数の可聴音の中から最適のものを選択し、その可聴音を遊技者に報知させる
パチンコ遊技機1。」
の発明(以下「引用発明A」という。)が記載されていると認められる。

2.引用発明と本願発明との対比
そこで、本願発明と引用発明Aとを比較すると、
引用発明Aの「遊技球201」は、本願発明の「遊技球」に相当し、以下同様に、
「パチンコ遊技機1」は「遊技機」に、
「前記マイクロフォンMICを介して入力される遊技者の音声」は「遊技者から入力された発話内容」に、それぞれ相当する。
また、引用文献Aの記載や図面等からみて、以下のことがいえる。

a.引用発明Aの「パチンコ遊技機1」が、遊技盤面に複数の釘が植設されるとともに「始動入賞口200」が遊技盤面に設けられたものであることは、引用文献Aの図1の記載等から明らかである。また、引用文献Aには明記されてはいないものの、パチンコ遊技機において、遊技球が始動入賞口に入賞した時、所定数の遊技球を排出することは、ごく当たり前のことであるから、引用発明Aの「始動入賞口200」が、本願発明の「所定数の遊技球を排出する入賞の状態を判定するための遊技球を受け入れる入賞口」に相当することも明らかである。
さらに、引用発明Aにおいて「遊技球201が始動入賞口200に入賞」することは、本願発明において「遊技盤面に射出された遊技球が前記入賞口に投入」されることに相当し、引用発明Aの「主制御装置10」は、遊技球201が始動入賞口200に入賞したか否かをチェックするから、引用発明Aの「パチンコ遊技機1」は、本願発明の「所定の条件の下で前記入賞の状態を判定する」に相当する機能を有するものであるということができる。

b.引用発明Aの「可聴音」は遊技者に報知させるものであるから、本願発明の「遊技者に語りかける文」に相当するものということができる。
また、引用発明Aは「予め定めてある複数の可聴音の中から最適のものを選択」しており、そのためには、「複数の可聴音」を記憶しておくことが必要であるから、引用発明Aの「CPU103」は、本願発明の「該文(遊技者に語りかける文)を予め複数記憶する文記憶手段」に相当する手段を含むものということができる。

c.引用文献Aの段落【0053】に「競技者が「うまくいかないよ!」,「どうなってるんだ!」と言ったときには、図8に示すようなキャラクタを特別図柄表示装置100に表示させ、かつ、スピーカSPから「そろそろ当たるんじゃないかな?」,「もう少しだよ、がんばってみて!」といった音声を発生させる。」、同段落【0057】に「競技者が「今日の調子はどう?」と言ったときには、図9に示すようなキャラクタを表示させると同時に、「今日は、じゃんじゃんいけるよ!」,「今日は、調子いいですよ!」といった音声を発生させる。」と記載されていることからみて、引用発明Aの「音声処理用LSI150」は、「前記マイクロフォンMICを介して入力される遊技者の音声」に対応する文字列を認識し、その文字列を「解析し、その解析内容を前記CPU103に知らせ」ているものと認められる。
そうしてみると、引用発明Aの「音声処理用LSI150」と本願発明の「形態素抽出手段」は、“遊技者から入力された発話内容に対応する文字列に基づいて、情報を抽出する情報抽出手段”である点で共通するものということができる。

d.引用発明Aの「CPU103」は、「音声処理用LSI150」から解析内容の知らせを受けて「予め定めてある複数の可聴音の中から最適のものを選択し、その可聴音を遊技者に報知させる」のであるから、上記c.で述べた事項を考え合わせると、引用発明Aの「CPU103」と本願発明の「第一取得手段」及び「第二取得手段」は、“情報抽出手段で抽出された情報に基づいて、複数記憶された文の中から利用者に語りかける文を取得して出力する手段”である点で共通するものということができる。

以上を総合すると、両者は、
「 遊技盤面に複数の釘が植設され、所定数の遊技球を排出する入賞の状態を判定するための遊技球を受け入れる入賞口が該遊技盤面に設けられ、前記遊技盤面に射出された遊技球が前記入賞口に投入されたときに、所定の条件の下で前記入賞の状態を判定する遊技機であって、
遊技者に語りかける文を予め複数記憶する文記憶手段と、
遊技者から入力された発話内容に対応する文字列に基づいて、情報を抽出する情報抽出手段と、
前記情報抽出手段で抽出された情報に基づいて、複数記憶された文の中から利用者に語りかける文を取得して出力する手段と
を有する遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]本願発明は「一つの文字、複数の文字列又はこれらの組み合わせからなる形態素を示す第二形態素情報には、数値、符号等の第一数値情報が関連付けられており、該第二形態素情報を予め複数記憶する形態素記憶手段」を有するのに対し、引用発明Aはそのような構成を有していない点。

[相違点2]本願発明の「遊技者に語りかける文」には、該文を検索する基準となる数値、符号等の第二数値情報が対応付けられているのに対し、引用発明Aの「可聴音」にはそのような情報が対応付けられているか不明である点。

[相違点3]“遊技者から入力された発話内容に対応する文字列に基づいて、情報を抽出する情報抽出手段”における「情報」に関して、本願発明の「形態素抽出手段」が抽出する「第一形態素情報」は、「該文字列(遊技者から入力された発話内容に対応する文字列)の最小単位を構成する各形態素」であるのに対し、引用発明Aの「音声処理用LSI150」がCPU103に知らせる「解析内容」はどのような情報であるのか明らかでない点。

[相違点4]“情報抽出手段で抽出された情報に基づいて、複数記憶された文の中から利用者に語りかける文を取得して出力する手段”に関して、本願発明は、「前記形態素抽出手段で抽出された前記第一形態素情報と予め記憶された前記各第二形態素情報とを照合し、該各第二形態素情報の中から、該第一形態素情報を構成する前記形態素を含む前記第二形態素情報を検索し、検索した該第二形態素情報に関連付けられた前記第一数値情報を取得する第一取得手段と、前記第一取得手段で取得された前記第一数値情報に基づいて、該第一数値情報と予め記憶された前記各第二数値情報とを照合し、該各第二数値情報の中から、該第一数値情報と一致する前記第二数値情報を検索し、検索した前記第二数値情報に対応付けられた前記文を取得して出力する第二取得手段」であるのに対し、引用発明Aの「CPU103」は、「予め定めてある複数の可聴音の中から最適のもの」をどのようにして選択しているのか明らかでない点。

3.当審の判断
[相違点1?4について]
相違点1?4は密接に関連しているので、合わせて検討する。
本願出願前に国内において頒布された刊行物である特開2000-187435号公報(以下「引用文献B」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、情報処理装置、携帯機器、電子ペット装置、情報処理手順を記録した記録媒体及び情報処理方法に関し、例えば携帯電話、パーソナルコンピュータ等の各種情報機器に適用することができる。本発明は、応答の生成に必要な各種データをネットワークを介して交換することにより、また音声にて単語等を登録できるようにすること等により、一段と身近な親しみ易い電子ペット装置、電子ペットを有する情報処理装置、携帯機器、情報処理手順を記録した記録媒体及び情報処理方法を提案する。
【0076】このため音声認識部11Aにおいては、上述したように、HMM法により音声データDAを処理し、これにより音韻列による認識結果を出力する。すなわち音声認識部11Aは、日本語による音声を音韻により識別し、各音韻を示す識別子の列により日本語の発音を記述する。ここでこれら識別子は、「b」、「d」、「g」、「p」、「t」、「k」、「m」、「n」、「r」、「z」、「ch」、「ts」、「y」、「w」、「h」、「i」、「e」、「a」、「o」、「u」、「N」、「ei」、「ou」、「s」、「sh」、「xy」、「j」、「f」 、「sil」とにより構成され、「sil」は無音である。
【0077】これにより音声認識部11Aは、例えばユーザーが「みかん」と入力すると、「sil m i k a N sil」の識別子で記述される音韻列により音声入力を認識する。このため音声認識部11Aは、順次入力される音声データDAを順次処理して音韻を識別すると共に、、この識別結果を図14に示す文法により処理し、これにより識別子の連続してなる音韻列を検出する。なおこの図14は、上述した全ての音韻の接続を許す文法である。
【0078】音声認識部11Aは、通常の動作モードにおいては、このようにして検出した識別子の列により認識データ16Aを検索し、この検索結果より単語、文言のテキストデータにより認識結果を出力する。これによりこの実施の形態において、認識データ16Aに未登録の単語が音声入力された場合、対応するテキストデータを生成することが困難になり、ユーザーの問い掛けに正しく応答することが困難になる。
【0090】ここで知識16Gは、認識データ16Aに登録された各単語、文言について、果物、飲み物等の分類を示す属性のデータが記録されるようになされている。これにより中央処理ユニット11においては、パターンデータ16Eに属性の記述を含めることにより、例えばユーザーに対して「好きな食べ物は何ですか」と問い掛け、この問い掛けに対するユーザーからの「みかんが好きだよ」の返答に対し、「私はみかんは嫌いです」との応答を発生できるようになされている。
【0107】(1-5)対話の分類処理
図20は、対話の分類処理に関して電子ペット装置1を更に詳細に示す機能ブロック図である。この機能ブロック図において、発話分類部11Mは、所定の分類ルール16Mに従って、音声認識結果を識別することにより、音声入力による会話を分類し、その分類結果である分類コードを応答文作成部11Eに出力する。
【0108】ここで発話分類部11Mは、例えば「おはよう」、「こんにちは」等の挨拶一般の音声入力については、「挨拶」に分類する。また「調子はどう」、「……は好き」等の問い掛けの音声入力については、「質問」に分類し、「元気だよ」、「つまらない」等の感想を述べた音声入力については、「感想」に分類する。
【0109】応答文作成部11Eは、パターンデータ16Eに従って応答文を作成する際に、パターンデータ16Eに記録された応答文の分類と、この発話分類部11Mで分類された分類パターンに従って応答を作成する。さらにこのとき必要に応じて対話履歴16Fに記録された過去の対話記録に従って、応答を作成する。
【0110】すなわちパターンデータ16Eにおいて、ルールによっては図8との対比により図21に示すように、各応答文の分類が設定されるようになされている。なおこの分類は、発話分類部11Mにおける分類に対応するように設定される。
【0111】因みに、図21のルール1においては、「ボクも愛しているよ」、「おわっ、ボ、ボクはオスなんですけど」の応答文には「状態」の分類が設定され、「変な人」には「感想」、「あなた誰?」には「質問」の分類が設定されるようになされている。またルール2においては、「うるさいなあ」には「感想」、「なあに?」には「質問」、「こにゃにゃちわ」には「挨拶」、「わお驚いた」には「感想」、「あらどうも」には「挨拶」、「呼んだ?」には「質問」の分類が設定されるようになされている。
【0113】これに対して対話履歴16Fは、図22及び図23に示すように、応答文作成部11Eによりユーザーと電子ペットとの対話が記録されるようになされている。ここでこの記録は、音声を発生した行為者、その音声の分類、音声の内容が記録されるようになされている。図22の例においては、ユーザーによる分類「挨拶」の「こんにちわ」の音声入力に続いて、電子ペットが分類「挨拶」の「どうも」の応答をし、続いてユーザーによる分類「質問」の「調子はどう」、電子ペットによる分類「状態」の「元気だよ」が続いたことが記録されていることになる。

摘記した上記の記載等から、引用文献Bには、
「 電子ペット装置であって、
音声認識部11Aは、順次入力される音声データDAを順次処理して識別子の連続してなる音韻列を検出し、該音韻列により認識データ16Aを検索し、この検索結果より単語、文言のテキストデータにより音声認識結果を出力し、
発話分類部11Mは、所定の分類ルール16Mに従って、前記音声認識結果を識別することにより、音声入力による会話を分類し、その分類結果である分類コードを応答文作成部11Eに出力し、
前記応答文作成部11Eは、パターンデータ16Eに従って応答文を作成する際に、前記パターンデータ16Eに記録された応答文の分類と、前記発話分類部11Mで分類された前記分類コードに従って応答文を作成する
電子ペット装置。」
の発明(以下「引用発明B」という。)が記載されていると認められる。
さらに、引用文献Bの記載や図面等からみて、以下のことがいえる。

ア.引用発明Bの「順次入力される音声データDA」は、本願発明の「遊技者から入力された発話内容」に相当し、以下同様に、
「識別子の連続してなる音韻列」は「文字列」に、「単語、文言のテキストデータ」は「該文字列の最小単位を構成する各形態素」に、「音声認識結果」は「第一形態素情報」に、「分類コード」は「数値、符号等の第一数値情報」に、「応答文」は「遊技者に語りかける文」に、それぞれ相当するものといえる。

イ.引用発明Bの「発話分類部11M」は、「所定の分類ルール16Mに従って、前記音声認識結果を識別することにより、音声入力による会話を分類し、その分類結果である分類コードを応答文作成部11Eに出力」しており、音声認識結果を識別して分類コードを出力するためには、音声認識部11Aからの出力が予測される情報(以下「音声認識結果予測情報」という。)に分類コードを関連付けて記憶しておくことが必要である。これは、摘記した段落【0108】の記載からも明らかである。
そして、音声認識結果予測情報が、単語、文言のテキストデータによるものであることは明らかであるから、本願発明の「一つの文字、複数の文字列又はこれらの組み合わせからなる形態素を示す第二形態素情報」に相当する。さらに、音声認識結果予測情報を複数用意しておくことは当然であり、引用発明Bの「分類コード」は本願発明の「数値、符号等の第一数値情報」に相当するから、引用発明Bの「発話分類部11M」は、本願発明の「一つの文字、複数の文字列又はこれらの組み合わせからなる形態素を示す第二形態素情報には、数値、符号等の第一数値情報が関連付けられており、該第二形態素情報を予め複数記憶する形態素記憶手段」に相当する手段を有しているといえる。

ウ.引用発明Bの「応答文作成部11E」は「パターンデータ16Eに従って応答文を作成する際に、前記パターンデータ16Eに記録された応答文の分類と、前記発話分類部11Mで分類された前記分類コードに従って応答を作成」しているから、パターンデータ16Eには複数の応答文に応答文の分類が対応付けられて記憶されており、分類コードと応答文の分類とは同種のものであるといえる。このことは、摘記した段落【0111】の記載からも明らかである。
よって、引用発明Bの「応答文の分類」は、本願発明の「文を検索する基準となる数値、符号等の第二数値情報」に相当し、引用発明Bの「応答文作成部11E」は、本願発明の「遊技者に語りかける文には、該文を検索する基準となる数値、符号等の第二数値情報が対応付けられ、該文を予め複数記憶する文記憶手段」に相当する手段を有しているといえる。

エ.引用発明Bの「音韻列」は、「音声データDAを順次処理して」検出されているから、「音声データDA」に対応するものといえる。
そして、引用発明Bの「音声認識部11A」は、「音韻列により認識データ16Aを検索し、この検索結果より単語、文言のテキストデータにより音声認識結果を出力」しており、「音韻列」に基づいて、「単語、文言のテキストデータ」を「音声認識結果」として抽出するものということができるから、本願発明の「遊技者から入力された発話内容に対応する文字列に基づいて、該文字列の最小単位を構成する各形態素を第一形態素情報として抽出する形態素抽出手段」に相当するものということができる。

オ.引用発明Bの「発話分類部11M」は、上記イ.で述べたとおり、音声認識結果予測情報<「第二形態素情報」に相当>に分類コード<「第一数値情報」に相当>を関連付けて記憶しているとともに、「音声認識部11A」から出力された音声認識結果<「第一形態素情報」に相当>を識別することにより、前記分類コードを応答文作成部11Eに出力している。
そして、「音声認識結果を識別すること」は、音声認識結果と音声認識結果予測情報とを照合し、適当な音声認識結果予測情報を検索することにほかならないから、引用発明Bの「発話分類部11M」は、本願発明の「前記形態素抽出手段で抽出された前記第一形態素情報と予め記憶された前記各第二形態素情報とを照合し、該各第二形態素情報の中から、該第一形態素情報を構成する前記形態素を含む前記第二形態素情報を検索し、検索した該第二形態素情報に関連付けられた前記第一数値情報を取得する第一取得手段」に相当する手段を有しているといえる。

カ.引用発明Bの「パターンデータ16E」には、上記ウ.で述べたとおり、複数の応答文<「遊技者に語りかける文」に相当>に応答文の分類<「第二数値情報」に相当>が対応付けられて記憶されているとともに、「応答文作成部11E」は、発話分類部11Mから出力された「分類コード」<「第一数値情報」に相当>と「応答文の分類」に従って応答文を作成している。
そして、摘記した引用文献Bの段落【0108】【0111】及び【0113】の記載からみて、引用発明Bは、分類コードと応答文の分類に従って応答を作成するため、分類コードと応答文の分類を照合し、同じ分類と判断される応答文の分類に対応付けられた応答文を取得して出力するものと認められるから、引用発明Bの「応答文作成部11E」は、本願発明の「前記第一取得手段で取得された前記第一数値情報に基づいて、該第一数値情報と予め記憶された前記各第二数値情報とを照合し、該各第二数値情報の中から、該第一数値情報と一致する前記第二数値情報を検索し、検索した前記第二数値情報に対応付けられた前記文を取得して出力する第二取得手段」に相当する手段を有しているといえる。

上記ア.?カ.で述べた事項を総合すると、引用発明Bは、上記相違点1?4に対応する構成を備えているものということができる。
そして、引用発明A及び引用発明Bともに対話機能を有する遊具に包含されるものであるので、引用発明Aの「音声処理用LSI150」及び「CPU103」に、引用発明Bを適用し、上記相違点1?4に係る本願発明のような構成とすることは、遊技機の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に想到し得る。

請求人は、平成23年2月17日付けの意見書(特に(4))において、
(1)「引用文献Bでは、所定の分類ルールに従って音声入力による会話を分類し、この分類結果と記憶された応答文の分類に従って応答文を作成するようにしたもので、本願発明のキーポイントにおける文の取得方法とは全く異なっているので、・・・」と主張しているが、応答文を作成する方法がどのように異なるのかについては具体的に述べていない。
(2)「引用文献Bは、電子ペット装置に関するものであり、本願発明の遊技機(パチンコ機)とは対話型とする上において全く使用状況、要件が異なり、分野が全く異なるものであり、以下に説明いたしますように、引用文献Aと組み合わせることには阻害要因があるかと思われます。」と主張しているが、電子ペット装置と引用発明Aの遊技機は、上述のようにどちらも対話機能を有する遊具に包含されるものであるし、対話機能を有する遊技機の開発にあたって、当業者が遊技機に限らず対話機能を有する装置についての技術を参酌することは当然であるから、引用発明Bが電子ペット装置であることは、引用文献Aに引用発明Bを適用することの阻害要因にはならない。
(3)「引用文献Bではユーザーの問い掛け全てに対して回答するようになると思われますが、この方法を引用文献Aのパチンコ機に適用すると、遊技と関係のない会話に対しても返答することとなり、・・・」、「本願発明では、・・・遊技者の発話の中に特定の内容が含まれる場合に限って遊技機側から語りかける文を出力できるようになるものであります。」と主張しているが、引用文献Bの段落【0078】に「認識データ16Aに未登録の単語が音声入力された場合、対応するテキストデータを生成することが困難になり、ユーザーの問い掛けに正しく応答することが困難になる。」と記載されていることから、引用発明Bはユーザーの問い掛け全てに対して回答できるものではないといえる。そうしてみると、上記相違点1?4に係る構成については、上述したように本願発明と引用発明Bとで格別異なる部分はないから、引用発明Aの遊技機に引用発明Bを適用した際に、遊技と関係のない会話に対して返答しないようにし、登録された問い掛けだけに限って応答するように為すことは、当業者にとってなんら困難なことではない。

[相違点の判断のまとめ]
本願発明の作用効果も、引用発明A及び引用発明Bから当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明A及び引用発明Bに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第四.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明A及び引用発明Bに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項(請求項2?15)について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-04-28 
結審通知日 2011-05-10 
審決日 2011-05-24 
出願番号 特願2002-225002(P2002-225002)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 薄井 義明山崎 仁之  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 澤田 真治
吉村 尚
発明の名称 遊技機、遊技制御方法及びプログラム  
代理人 三好 秀和  
代理人 三好 秀和  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ