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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1239707
審判番号 不服2010-614  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-01-13 
確定日 2011-07-07 
事件の表示 特願2000-349071「撮像装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 5月24日出願公開、特開2002-152541〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成12年11月16日の出願であって、平成21年3月27日付けの拒絶理由の通知に対し、平成21年6月1日付けで手続補正がなされたが、平成21年10月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年1月13日に審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2.平成22年1月13日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年1月13日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正の内容
上記手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項のうち、請求項1の記載は次のとおりである。

「被写体像を撮像して複数の色信号からなる画像信号を出力する撮像素子と、
前記複数の色信号を用いて輝度色差信号へ変換する色座標変換手段と、
前記変換後の輝度色差信号における色差信号に基づいて該色差信号に対する色度補正を行う色度補正手段と、
前記変換後の輝度色差信号における前記色差信号に基づいて該輝度色差信号における輝度信号に対する補正量を取得する輝度補正量取得手段と、
前記取得された補正量を用いて前記輝度信号に対する輝度補正を行う輝度補正手段とを備え、
前記色度補正手段および前記輝度補正量取得手段は、前記色差信号のみを引数として入力し、前記色度補正後の色差信号と、前記輝度信号に対する補正量とをそれぞれ出力する共通の二次元LUTによって構成されていることを特徴とする撮像装置。」

2.補正の適否
上記請求項1は、補正前の請求項1における「二次元LUT」について、その出力を限定するものであるから、この補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という)第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そこで、補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するか否か)について以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記「第2.1.」に記載した補正後の請求項1の記載により特定されるとおりのものである。

(2)刊行物の記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願の日前に頒布された刊行物である特開平6-121338号公報(以下、「刊行物1」という)には、図面(図4、図5、図6)とともに、次のア?ウの事項が記載されている。
ア.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明はビデオ信号からハードコピーを得るビデオプリンタに係わり、特に色再現の良好なプリントを得るのに好適なビデオプリンタに関する。
【0002】
【従来の技術】静止画信号を入力するか、動画ビデオ信号を一度メモリに蓄え静止画信号としてからカラーインクを用いハードコピーを得る装置としてビデオプリンタがある。」

イ.「【0007】本発明の目的は、色再現性を実用上十分なレベルまで低減、あるいは視覚的に目だたなくなるように補正し、しかも比較的簡単な構成で安価に実現したカラービデオプリンタを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】色再現性の補正は、記憶したプリントすべき画像の色差信号をあらかじめ定めた色補正手段で補正する事によって実現する事ができる。
【0009】また、これに色差信号により輝度信号を補正するように構成した輝度補正手段を設ける事により色相に応じた輝度も補正する。
【0010】別の方法では、記憶したプリントすべき画像のRGB信号からあらかじめ定めた別の色補正手段でRGB信号を補正する事により実現する事ができる。
【0011】
【作用】色補正手段はプリントすべき画像の色差信号をあらかじめ定めた方法にしたがって補正する。色差信号の補正は、あらかじめ定めた変換テーブルによる変換、あるいは変換テーブルと計算の組み合わせで行う。色差信号を補正する事により色合いを示す色相、色の濃さである色飽和度を補正する事ができる。
【0012】また、色差信号により輝度信号を補正する事により色相に応じた輝度を補正する事ができる。」

ウ.「【0044】図4に色補正手段106の別の実施例を示す。
【0045】本実施例では、図2に示した補正をあらかじめすべての入力に対して計算しておきこれをルックアップテーブル301、302として用意する事により補正を実現する。
【0046】図1の画像メモリからのR-Y,B-Y信号はルックアップテーブル301、302に入力される。それぞれのルックアップテーブルには入力に応じた補正値が記憶されておりこれを出力する事により補正を行う。また、システムコントローラ112からの信号により補正特性をプリント機構110に装着されたインクの特性に合わせて切り換える事ができる。
【0047】本実施例では、ルックアップテーブルをROM等により用意し補正を行えるので比較的安価に構成可能である。
【0048】図5に本発明の実施例を示す。
【0049】本実施例では図1に示した実施例に輝度補正手段501を設けたものである。
【0050】図1の実施例では、色差信号を補正し色相や色の濃さを補正した。
【0051】本実施例では、色相に応じて明るさを補正する為に輝度信号に対しても補正を行う。
【0052】ビデオプリンタに使用するインクは一般に色純度が低い傾向にあるため、色を濃くプリントしようとするとインクを多量に使用する事となる。しかしインクを多量に使用すると色が濃くなると同時にプリント結果が暗くなってしまう。これを補正するためにプリント結果が暗くなる色相の時に輝度信号を明るくなるように補正する事でこれを解決する。
【0053】図中501は輝度信号の補正手段、502はシステムコントローラ112からインクの種類の情報であるインク種類信号を受け取る端子である。その他、図1とおなじものには同じ記号を付した。
【0054】続いて動作を説明する。図1の実施例と同様に入力端子101から入力された映像信号からプリントしたい画像を画像メモリ103に記憶する。画像メモリ103から読みだした静止画像信号の色差信号は図1の実施例と同様に色補正手段106で色補正されマトリクス108に送られる。画像メモリ103から読みだした輝度信号は輝度補正手段501で輝度補正されたマトリクス108に送られる。マトリクス108では、輝度色差信号からRGB信号を生成する。プリント信号処理109ではRGB信号にプリントするための処理を行いプリントする。プリント機構110は、プリントに必要な機械的動作を行いシステムコントローラ112はこれら全体を制御する。インク判別111ではプリント機構に装着されたインクの種類に関する信号をシステムコントローラ112に伝える。システムコントローラ112ではインクの種類に応じて最適な補正を行うために端子107、502を用いて色補正手段106、輝度補正手段501を制御する。
【0055】以上により、色補正と輝度補正を施したプリントを得る事ができる。
【0056】図6に輝度補正手段501の実施例を示す。
【0057】図中601はROM(読みだし専用メモリ)等で構成したルックアップテーブル、502はシステムコントローラ112からインク種類に関する制御を受け取る端子である。
【0058】色差信号R-Y,B-Y、輝度信号Y、及びインク種類信号が入力されている。ルックアップテーブル601をROMで構成した場合にはこれらの信号をROMのアドレス線に接続する。ROMは、インク種類信号と二つの色差信号で輝度信号補正テーブルを選択するように構成する。補正テーブルには輝度補正用のデータをあらかじめ書き込んでおく。
【0059】これにより、インク種類が決定すると補正テーブル中の対応した部分が選択される。さらに、色差信号により選択された部分の一部分が選択される。輝度信号によりこの選択された補正テーブルの一部分から補正データを選択し、輝度信号の補正値とする。
【0060】以上のようにしてルックアップテーブル601により輝度信号の補正を行う事ができる。」

以上の記載から、刊行物1には以下の発明(以下、「刊行物1発明」という)が記載されている。

メモリに蓄えたビデオ信号である輝度色差信号(輝度信号Yおよび色差信号R-Y,B-Y)の輝度と色差を補正し、カラーインクを用いてハードコピーを得るビデオプリンタであって、
前記色差信号R-Y,B-Yおよびインク種類信号を入力し、該入力に応じた色差信号の補正値を出力するルックアップテーブル3,4からなる色補正手段と、
前記色差信号R-Y,B-Y、前記輝度信号Yおよびインク種類信号を入力し、該入力に応じた輝度信号の補正値を出力するルックアップテーブル6からなる輝度補正手段と、
を備えたビデオプリンタ。

また、原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願の日前に頒布された刊行物である国際公開第98/042142号(以下、「刊行物2」という)には、図面(特に、Fig.19)とともに、次のエの事項が記載されている。

エ.「この図19に示したセカンダリー処理部60は、座標変換回路61、第1及び第2のルックアップテーブル62,63及び第1?第4の乗算回路64,65,66,67及び加算回路68からなる。
このセカンダリー処理部60において、上記座標変換回路51は、上記プライマリー処理部37から出力される色差データU,Vが供給されるようになっている。この座標変換回路37は、順次入力される色差データU,Vについて、
θ = arctan(V/U)
r = U/cosθ (16)式
=(U2+V2)1/2
の演算処理を実行することにより各色差データU,Vを色相θ及び飽和度rのデータに変換する。これによりセカンダリー処理部60は、順次入力される映像信号を色平面上において極座標形式により表現する。このとき第1の座標変換回路61は、各10ビットの色差データU,Vから14ビットの色相θのデータ及び11ビットの飽和度rのデータを生成する。これにより続く処理において十分な分解能を確保する。上記座標変換回路61により生成された色相θのデータは、各ルックアップテーブル62,63に供給され、また、飽和度rのデータは、第1の乗算回路64に供給される。
また、上記第1のルックアップテーブル62は、事前に、上記コンピュータ10の中央処理ユニット11により計算された総合補正データΣΔR,ΣΔX,ΣΔYを蓄積することにより形成され、上記座標変換回路61で計算された色相θをアドレスにして対応する総合補正データΣΔR,ΣΔX,ΣΔYを第1?第3の乗算回路64,65,66に出力する。
上記第1の乗算回路64は、上記座標変換回路61で計算された飽和度rに上記第1のルックアップテーブル62から出力される飽和度rの補正データΔRを乗算して、その乗算出力を第2及び第3の乗算回路65,66に供給する。
また、上記第2の乗算回路65は、上記第1のルックアップテーブル62から出力される色相θのベクトルのU軸成分でなる補正データΔXに上記第1の乗算回路64より出力される飽和度rを乗算する。また、第1の乗算回路66は、上記第1の乗算回路64より出力される飽和度rに上記第1のルックアップテーブル62から出力される色相θのベクトルのV軸成分でなる補正データΔYに上記第1の乗算回路64より出力される飽和度rを乗算する。これにより、上記第2及び第3の乗算回路65,66は、各乗算出力をデスティネーションベクトルの色データUd,Vdとして出力する。
また、第2のルックアップテーブル63は、事前に、中央処理ユニット11により計算された各色相θに対する輝度レベルの総合的な利得ΣΔGAIN及びオフセット量ΣΔOFFを蓄積することにより形成され、上記第1の座標変換回路61より出力される色相θをアドレスにして利得ΣΔGAIN及びオフセット量ΣΔOFFを第4の乗算回路67及び加算回路68に出力する。
上記第4の乗算回路67は、上記プライマリー処理部37から順次入力される輝度データYに上記第2のルックアップテーブル63から供給される利得ΣΔGAINを乗算して、その乗算出力を加算回路68に供給する。
そして、上記加算回路68は、上記第4の乗算回路67の出力データにオフセット量ΣΔOFFを加算して出力する。このようにして、上記第4の乗算回路67及び加算回路68は、
Yd = ΣΔGAIN×Ys+ΣΔOFF (17)式
なる演算処理を実行し、処理対象の範囲Wについて、オペレータの設定した特性により輝度レベルを補正する。」(第45頁第2行-第47頁第6行)

(3)対比・判断
本願補正発明と刊行物1発明とを対比する。

刊行物1発明の「前記色差信号R-Y,B-Yおよびインク種類信号を入力し、該入力に応じた色差信号の補正値を出力するルックアップテーブル3,4からなる色補正手段」は、本願補正発明の「輝度色差信号における色差信号に基づいて該色差信号に対する色度補正を行う色度補正手段」に相当する。

刊行物1発明の「前記色差信号R-Y,B-Y、前記輝度信号Yおよびインク種類信号を入力し、該入力に応じた輝度信号の補正値を出力するルックアップテーブル6からなる輝度補正手段」と、本願補正発明の「前記変換後の輝度色差信号における前記色差信号に基づいて該輝度色差信号における輝度信号に対する補正量を取得する輝度補正量取得手段と、前記取得された補正量を用いて前記輝度信号に対する輝度補正を行う輝度補正手段」とは、「前記輝度色差信号における前記色差信号に基づいて前記輝度信号に対する輝度補正を行う輝度補正手段」といえる点で共通するものである。

刊行物1発明の色補正手段(本願補正発明の「色度補正手段」に相当)は、色差信号R-Y,B-Yを入力し、該入力に応じた色差信号の補正値を出力するルックアップテーブル3,4(本願補正発明の「LUT」に相当)からなるものであり、かつ、刊行物1発明の輝度補正手段も、色差信号R-Y,B-Yを入力し、該入力に応じた輝度信号の補正値を出力するルックアップテーブル6からなるものであって、色差信号R-Y,B-Yは、前記ルックアップテーブル3,4,6のそれぞれに共通に入力されるから、刊行物1発明の色補正手段は、前記色差信号を引数として入力し、前記色度補正後の色差信号を出力する共通のLUTによって構成されているものであるということができる。(なお、本願補正発明において、「共通のLUT」の意味は、発明の詳細な説明の記載を参酌すると、引数として入力される色差信号が共通である複数のLUTという意味であると考えられる。)
したがって、本願補正発明と刊行物1発明とは、「前記色度補正手段は、前記色差信号を引数として入力し、前記色度補正後の色差信号を出力する共通のLUTによって構成されている」点で一致するものである。

以上をまとめると、本願補正発明と刊行物1発明の一致点及び相違点は次のとおりである。

[一致点]
輝度色差信号における色差信号に基づいて該色差信号に対する色度補正を行う色度補正手段と、
前記輝度色差信号における前記色差信号に基づいて前記輝度信号に対する輝度補正を行う輝度補正手段とを備え、
前記色度補正手段は、前記色差信号を引数として入力し、前記色度補正後の色差信号を出力する共通のLUTによって構成されている色補正装置。

[相違点1]
本願補正発明は、被写体像を撮像して複数の色信号からなる画像信号を出力する撮像素子と、前記複数の色信号を用いて輝度色差信号へ変換する色座標変換手段とを備え、前記変換後の輝度色差信号に基づいて補正を行う撮像装置であるのに対し、刊行物1発明は、そのような撮像装置として構成されているものではない点。

[相違点2]
輝度補正手段が、本願補正発明においては、「輝度色差信号における前記色差信号に基づいて該輝度色差信号における輝度信号に対する補正量を取得する輝度補正量取得手段」によって「取得された補正量を用いて前記輝度信号に対する輝度補正を行う」ものであり、「前記色度補正手段および前記輝度補正量取得手段は、前記色差信号のみを引数として入力し、前記色度補正後の色差信号と、前記輝度信号に対する補正量とをそれぞれ出力する共通の二次元LUTによって構成されている」のに対し、刊行物1発明では、輝度補正手段は、輝度補正量を介さずに直接ルックアップテーブルにより補正を行うものであり、また、色補正と輝度補正は、インク種類信号によっても行うものであって、色差信号のみを引数とする二次元LUTによるものではない点。

これらの相違点について検討する。

[相違点1]について
被写体像を撮像して複数の色信号からなる画像信号を出力する撮像素子と、前記複数の色信号を用いて輝度色差信号へ変換する色座標変換手段とを備え、前記変換後の輝度色差信号に基づいて画像信号の補正処理を行う撮像装置は、本願明細書にも従来例として記載されているように当業者に周知のものである。また、刊行物1発明は、ビデオプリンタを発明の対象とするものであるが、補正処理を行う画像信号が、被写体像を撮像した複数の色信号からなる画像信号である点では、上記周知の撮像装置と同じである。
したがって、刊行物1発明において、画像信号の補正処理を行う発明の対象を、上記周知の撮像装置とすることは当業者が容易に想到し得ることである。

[相違点2]について
まず、刊行物1発明は、色補正と輝度補正を、インク種類信号によっても行うものであるが、これは、インクの特性に合わせて色補正や輝度補正の特性を切り換えるために行うことであり(前記第2.2.(2)ウ)、インク種類が1種類の場合や予め決まっている場合などには行わなくてもよいことは当業者に明らかなことであるから、刊行物1発明において、色補正と輝度補正を、インク種類信号によらずに行うことは、必要に応じて適宜なし得ることにすぎない。
次に、刊行物2には、色差データUs,Vsに基づいて輝度信号Ysに対する補正量ΣΔGAIN,ΣΔOFFを取得する座標変換回路61およびLUT63(本願発明の「輝度補正量取得手段」に相当)と、前記取得された補正量を用いて前記輝度信号Ysに対する輝度補正を行う乗算回路67及び加算回路68(本願発明の「輝度補正手段」に相当)が記載されている。刊行物2に記載された輝度補正は、色相に応じて輝度を補正するためのものであり、この点で、刊行物1発明の輝度補正と同一の目的を有するものである。
したがって、刊行物1発明において、輝度補正手段として、色相に応じた輝度補正を行うために、刊行物2に記載された輝度補正量を介した輝度補正手段を用いること、すなわち、輝度色差信号における前記色差信号に基づいて該輝度色差信号における輝度信号に対する補正量を取得する輝度補正量取得手段によって取得された補正量を用いて前記輝度信号に対する輝度補正を行う構成とすることは当業者が容易に想到し得ることであり、その際の、色差データに基づいて輝度信号に対する補正量を取得するための具体的構成として、座標変換回路61およびLUT63の代わりに、二次元LUTを用いることについては、一般に、入力信号を変換して出力信号を出力する場合に、演算手段により演算を行うこともLUTを用いて変換することも何れも周知技術であって、どちらを用いるかはコストや演算速度などを勘案して当業者が必要に応じて適宜選択し得る設計的な事項にすぎないから、本願補正発明で二次元LUTを用いることは単なる設計的事項である。
以上をまとめると、刊行物1発明において、刊行物2に記載された技術事項および周知技術を適用して、輝度補正手段を、輝度色差信号における前記色差信号に基づいて該輝度色差信号における輝度信号に対する補正量を取得する輝度補正量取得手段によって取得された補正量を用いて前記輝度信号に対する輝度補正を行うものとし、前記色度補正手段および前記輝度補正量取得手段を、前記色差信号のみを引数として入力し、前記色度補正後の色差信号と、前記輝度信号に対する補正量とをそれぞれ出力する共通の二次元LUTによって構成することは当業者が容易に想到し得ることである。

以上のとおり、本願補正発明は、刊行物1発明、刊行物2に記載された技術事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

よって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成22年1月13日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成21年6月1日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりのものである。

「被写体像を撮像して複数の色信号からなる画像信号を出力する撮像素子と、
前記複数の色信号を用いて輝度色差信号へ変換する色座標変換手段と、
前記変換後の輝度色差信号における色差信号に基づいて該色差信号に対する色度補正を行う色度補正手段と、
前記変換後の輝度色差信号における前記色差信号に基づいて該輝度色差信号における輝度信号に対する補正量を取得する輝度補正量取得手段と、
前記取得された補正量を用いて前記輝度信号に対する輝度補正を行う輝度補正手段とを備え、
前記色度補正手段および前記輝度補正量取得手段は、前記色差信号のみを引数とする共通の二次元LUTによって構成されていることを特徴とする撮像装置。」

2.刊行物
原査定の拒絶の理由で引用された刊行物、及び、その記載事項は、前記第2.2.(2)に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2.2.で検討した本願補正発明の限定事項である「前記色度補正後の色差信号と、前記輝度信号に対する補正量とをそれぞれ出力」することを省いたものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が前記第2.2.に記載したとおり、刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載された技術事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載された技術事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4.まとめ
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-04-26 
結審通知日 2011-05-10 
審決日 2011-05-23 
出願番号 特願2000-349071(P2000-349071)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大室 秀明  
特許庁審判長 吉村 博之
特許庁審判官 古川 哲也
千葉 輝久
発明の名称 撮像装置  
代理人 永井 冬紀  
代理人 渡辺 隆男  

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