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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1239720
審判番号 不服2010-17892  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-09 
確定日 2011-07-07 
事件の表示 特願2003-298255「基板検査装置および基板観察装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 3月17日出願公開、特開2005- 69796〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 出願の経緯
本願は,平成15年8月22日を出願日とする特許出願で,平成22年4月26日付けで補正の却下の決定とともに拒絶査定がなされ,これに対し同年8月9日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,同日付で手続補正(以下,「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正について
本件補正によって,特許請求の範囲の請求項1?2(以下,「本願発明1」?「本願発明2」という。)は,以下のとおり補正された。下線は,補正部分を示す。
「【請求項1】
CCD撮像素子またはCMOS撮像素子をもつカメラと,該カメラの光軸と垂直に配置された,基板を把持するステージと,前記カメラが基板面内の任意の一部分を撮像可能となるように,カメラとステージとを相対移動させる駆動手段およびその制御手段と,該ステージ後方から基板を照明する照明手段と,カメラのシャッターを制御する制御手段と,カメラの撮像レンズ又は/及び照明手段の前面に配置され,基板に塗布された複数の着色膜のすべてについて光透過率の低い波長域のみを透過する光学フィルターと,カメラから得られた画像を蓄積,保存する記録手段と,該画像を元に良否判定を行う判定手段とを有することを特徴とする基板検査装置。
【請求項2】
CCD撮像素子またはCMOS撮像素子をもつカメラと,該カメラの光軸と垂直に配置された,基板を把持するステージと,前記カメラが基板面内の任意の一部分を撮像可能となるように,カメラとステージとを相対移動させる駆動手段およびその制御手段と,該ステージ後方から基板を照明する照明手段と,カメラのシャッターを制御する制御手段と,カメラの撮像レンズ又は/及び照明手段の前面に配置され,基板に塗布された複数の着色膜のすべてについて光透過率の低い波長域のみを透過する光学フィルターと,カメラから得られた画像を観察者に提示する表示手段とを有することを特徴とする基板観察装置。」

本件補正は,補正前の請求項3の「すべてについて,」の読点を省くとともに新たな請求項1とし,同じく補正前の請求項6の「すべてについて,」の読点を省くとともに新たな請求項2とした上で,残りの請求項2?5を削除したものであるから,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下,「平成18年改正前」という。)の特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除を目的とするものに該当する。

第3 引用刊行物およびその記載事項
原査定の理由にも引用された,本願出願日前に頒布された刊行物である,特開平10-142101号公報(以下,「引用刊行物1」という。)には,以下の事項が記載されている。
(1-ア)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板上に形成された着色膜に透過光をあて,当該基板を透過してきた光の強度を検出して着色膜の部分的な膜厚の変化を測定する際に,検査光源と被検査体との間に検査しようとする着色膜の補色の一部分を透過するような補色フィルターを使用することを特徴とする着色膜の検査方法。」

(1-イ)
「【0005】
【課題を解決するための手段】このような課題を解決する本発明の要旨の第1は,基板上に形成された着色膜に透過光をあて,当該基板を透過してきた光の強度を検出して着色膜の部分的な膜厚の変化を測定する際に,検査光源と被検査体との間に検査しようとする着色膜の補色の一部分を透過するような補色フィルターを使用することを特徴とする着色膜の検査方法,にある。また,本発明の要旨の第2は,基板上に形成された着色膜に透過光をあて,当該基板を透過してきた光の強度を検出して着色膜の部分的な膜厚の変化を測定する際に,被検査体と光検出器との間に検査しようとする着色膜の補色の一部分を透過するような補色フィルターを使用することを特徴とする着色膜の検査方法,にある。このような検査方法とすることにより,所定以上の光強度変化を生じた着色膜の領域を高い精度で検出することができる。
【0006】ここで,本発明で補色の一部と呼んでいる色フィルター(以下「補色フィルター」という。)は,赤色膜を検査するときには赤色の補色であるシアンもしくはシアンを構成するスペクトル波長の一部である緑色,青色を言い,青色膜を検査するときには黄色もしくは緑色,赤色を言い,緑色膜を検査するときにはマゼンタ色もしくは青色,赤色をさすが,厳密な色純度を持つことは必要でなく,当該スペクトル波長領域を超えない広い範囲の色が使用できる。上記のような本発明では,例えば赤色の着色膜の検査の場合,普通の蛍光灯等で検査すると600から700nmの光は着色膜の濃度もしくは膜厚を変えても光検出器の測定値はほとんど変化せず,通常部に対する異常部の400から700nmのトータルの透過光強度は微少な変化率しか得られない。それに対して,補色フィルターを使い400nmから600nmのみを検出すると,通常時の透過光量に対して異常時の透過光量の変化が際立って強調され,微少な変化が検出できることとなる。」

(1-ウ)
「【0007】
【発明の実施の形態】以下,図1を参照して本発明の最良の実施形態について説明することとする。図1は,本発明の着色膜の検査方法に使用するカラーフィルターの検査装置の一例を説明するための概略構成図である。図1に示される検査装置1は,着色膜が形成された被検査体10を搬送するための搬送部2,この搬送部2上を搬送される被検査体10に光を当てる光源3,被検査体と光源の間に設置し光源の光の選択波長部分を透過する補色フィルター4,被検査体を透過してきた光を検出する光検出器5,この光検出器からの画像信号を電気的に処理して着色膜の異常部分を検出する検査処理部6,および検査処理部6で処理された画像を表示するための画像表示部7とを備えている。なお,被検査体10は,基板10b上に着色膜10aが形成されており通常は液晶用のカラーフィルター等が対象となる。
【0008】搬送部2は被検査体10を一定の速度で搬送するためのものであり,光検出器5がラインセンサーの場合には図示例のようなコロ搬送装置2aのほかにステージ搬送などとすることができ,光検出器5がエリアセンサーの場合には検査時に一瞬停止するようなステージ搬送系とすることができ,これらの搬送方式は被検査体10の製造ラインおよび検査ライン等を考慮して適宜選択することができる。また,被検査体10に搬送速度ムラの影響が及ぶことを防止するために,搬送部2にエンコーダを取り付け,光検出器の入力と同期を取るようにしてもよい。このような搬送部2による被検査体10の搬送速度は,例えば0.5から10.0m/分程度の範囲で設定することができる。
【0009】光源3は被検査体の下方もしくは上方から被検査体に検査光を照射するものであり,例えば高周波蛍光灯,ハロゲンランプのライン照明等を使用することができる。ただし,現像前の着色膜の測定のためには紫外線をカットしていることが好ましい。また,補色フィルター4は被検査体の補色の一部を透過するものであり,セロファン紙,樹脂製カラーフィルター,色ガラス等を使用することができる。光検出器5は被検査体10を透過してきた光を検出するものであり,例えばCCDラインセンサー,CCDエリアセンサー等を使用することができる。」

(1-エ)
「【0010】図2は,本発明の着色膜の検査方法を使用するカラーフィルターの検査装置の他の一例を説明するための概略構成図である。図2に図示される検査装置1は,着色膜が塗布された被検査体10を搬送するための搬送部2,この搬送部2上を搬送される被検査体10に光を当てる光源3,被検査体10と光検出器5の間に設置し光源の光の選択波長部分を透過する補色フィルター4,被検査体を透過してきた光を検出する光検出器5,この光検出器からの画像信号を電気的に処理して着色膜の異常部分を検出する検査処理部6,および検査処理部6で処理された画像を表示するための画像表示部7とを備えている。
【0011】搬送部2は被検査体10を一定の速度で搬送するためのものであり,光検出器5がラインセンサーの場合には図示例のようなコロ搬送装置2aのほかにステージ搬送などとすることができ,光検出器5がエリアセンサーの場合には検査時に,一瞬停止するようなステージ搬送系とすることができ,被検査体10の製造ラインおよび検査ライン等を考慮して適宜選択することができる。また,被検査体10に搬送速度ムラの影響が及ぶことを防止するために,搬送部2にエンコーダをを取り付け,光検出器の入力と同期を取るようにしてもよい。このような搬送部2による被検査体10の搬送速度は,例えば0.5から10.0m/分程度の範囲で設定することができる。
【0012】光源3は被検査体の下方もしくは上方から被検査体に検査光を照射するものであり,例えば高周波蛍光灯,ハロゲンランプのライン照明等を使用することができる。また,補色フィルター4は被検査体の補色の一部を透過するものであり,セロファン紙,樹脂製カラーフィルター,色ガラス等を使用することができ,光検出器5に取り付けることもできる。光検出器5は被検査体10を透過してきた光を検出するものであり,例えばCCDラインセンサー,CCDエリアセンサー等撮像カメラに使用するものを使用することができる。」

(1-オ)
「【0013】図3は,従来の着色膜の検査方法での赤色カラーフィルターの分光透過率曲線である。図3において,は赤色の着色膜において異常のない通常部の透過率曲線,は透過率が低くなってしまった異常部の透過率曲線,は透過率が高くなってしまった異常部の透過率曲線である。赤色の着色膜の検査の場合,普通の白色蛍光灯等で検査すると,600から700nmの波長域の光は着色層の濃度,もしくは膜厚を変えてもほとんど変化せず,通常部に対する異常部の400から700nmのトータルの透過光強度は1:1.05程度の微少な変化率しか得られない。それに対して,図4のようなシアンの補色フィルターを使い400nmから600nmのみを検出すると,通常時の透過光量に対して異常時の透過光量の変化が1:2程度に強調され,微少な変化が検出できることとなる。この場合,使用する補色フィルターはシアンだけではなく,その一部である,図5に図示する400?500nmの青色,500?600nmの緑色または450nm?550nm等で同様の効果を得ることができる。要するに,シアン色のスペクトル波長のいずれかの部分を使用していれば良いということになる。
【0014】同様に青色のフィルターを検査するときには補色である黄色のフィルター,その一部である赤色,緑色のフィルターを使用して同様の効果を得ることができる,緑色のフィルターを検査するときには補色であるマゼンタ色のフィルター,その一部である赤色,青色のフィルターを使用して同様の効果をえることができる。また,フィルターには,CCDの分光感度に対する感度を調整するためのライトバランスフィルターやIRカットフィルター,UVカットフィルターを複合して使用することができる。本発明によって強調されて検出された画像信号から不良部分を抽出するには,検査処理部にてさらに電気的に微分処理,コンボリューション,統計処理をおこなうこと等によって強調して,2値化,3値化等の処理によって抽出することができる。上述のように,本発明の着色膜の検査方法は検査光として着色膜の補色光またはその一部波長領域を有する光を使用することによって着色膜の微少な濃度異常を高い感度で検出することができる。」

そうすると,これら(1-ア)?(1-オ)の記載と,図1?図5を総合すると,引用刊行物1には,次の発明が記載されていると認められる。
「CCDラインセンサー,CCDエリアセンサー等撮像カメラと,被検査体10を搬送する搬送部と,被検査体の下方から被検査体に検査光を照射する光源3と,補色フィルタ4と,画像信号を電気的に処理して着色膜の異常部分を検出する検査処理部6,とを備えたカラーフィルターの検査装置。」(以下,「引用発明」という。)

また,同じく原査定の理由にも引用された,本願出願日前に頒布された刊行物である,特開平5-99787号公報(以下,「引用刊行物2」という。)には,以下の事項が記載されている。
(2-ア)
「【0007】
【課題を解決するための手段】本発明のカラーフィルターの検査方法は,絵素電極がマトリクス状又はストライプ状に配設された第1の透明基板と,対向電極が形成された第2の透明基板とが,該絵素電極及び対向電極を内面側にし,かつ両基板間に液晶層を介在して対向配設され,第1,第2の透明基板の一方にカラーフィルターが設けられて構成されるカラー液晶表示装置の該カラーフィルターの検査方法において,特定波長域の光を透過する検査用色フィルターと光源との間に,該カラーフィルターが形成された第1又は第2の透明基板を配置する工程と,該光源から発した光をカラーフィルターに照射して,カラーフィルターの欠陥部を透過した光と,正常部を透過した光とを該検査用色フィルターに通し,これにより両光のコントラストを大きくして検査する工程とを含んでおり,そのことによって上記目的が達成される。
【0008】
【作用】本発明にあっては,特定波長域の光を透過する検査用色フィルターに,検査対象であるカラーフィルターを透過した光を通す。このため,検査用色フィルターの特定波長域を所望域とすることにより,カラーフィルターの正常部を透過した赤,緑,青の各色を検査用色フィルターで大幅にカットできる。これに対して,カラーフィルターの欠損部を透過した光は全波長域を有するものであり,この光を検査用色フィルターに通してもカットされる割合を,上述の正常部を透過した光のカット割合よりも小さくできる。これにより,正常部を透過した光と欠損部を透過した光とのコントラストが向上する。」

(2-イ)
「【0012】次に,検査用色フィルター3が透過光2に及ぼす影響について説明する。
【0013】図2は,青色透過率曲線A,緑色透過率曲線B,赤色透過率曲線C,欠損部を透過した欠損部透過率曲線D及び検査用色フィルター3の分光曲線Eにおける波長(nm)と透過率との関係を示す。この図において波長が535nmのときには,緑色透過率曲線Bは正常部では最高透過率68%を示し,欠損部透過率曲線Dにおいては全波長域で100%の透過率を示す。よって,両曲線B,Dにおける最高透過率の比は,68(正常部):100(欠損部)≒1:1.47となる。この比が,従来の検査におけるコントラストである。
【0014】ところで,本実施例では主波長580nmの分光曲線Eを有する検査用色フィルター3を用いているので,緑色透過率曲線Bにおける正常部の透過率は,緑色透過率曲線Bと分光曲線Eとの積となり,波長が580nmのときに30%(緑色)×27%(検査用色フィルター)=8.1%となる。また,欠損部9の透過率は欠損部透過率曲線Dと分光曲線Eとの積となり,585nmのときに100%(欠損部)×28%(検査用色フィルター)=28%となる。よって,検査用色フィルター3を設けた場合の比は,8.1(正常部):28(欠損部)≒1:3.46となる。
【0015】したがって,本実施例においては,従来検査に比較し,3.46/1.47=2.35倍に緑色に関してコントラストを向上できる。なお,説明は省略するが,他の赤色や青色についても検査用色フィルター3を設けることにより,同様にコントラストが向上する。」

(2-ウ)
「【0019】なお,本発明に使用する検査用色フィルター3としては,形成方式の種別,形状に限定されず,染色方式,顔料方式,電着方式等により形成してもよく,またストライプ形状,デルタ形状となしてもよい。
【0020】上記実施例においては欠損部の検出はオペレータにより行っているが,これに限定されず,機械的検査方式によってよい。
【0021】また,上記実施例においては検査用色フィルター3として,赤緑青のカラー透過光4の3つの波長の平均透過率が最も低くなる580nm付近に主波長を有するものを用いたが,検査用色フィルター3の分光特性は検査対象であるカラーフィルターの透過率曲線に応じて任意に設定してもよい。」

第4 対比・判断
本願発明1と引用発明とを対比すると,その機能・構造からみて,引用発明の「CCDラインセンサー,CCDエリアセンサー等撮像カメラ」及び「カラーフィルター」は,それぞれ,本願発明1の「CCD撮像素子またはCMOS撮像素子をもつカメラ」及び「基板」に相当する。
上記摘記事項(1-エ)及び図3の記載からして,引用発明の「搬送部2」は,撮像カメラの光軸と垂直に配置された被検査体10を載置するステージ部分を備え,検査に応じて駆動制御されるものであるといえ,そうすると,引用発明の「搬送部2」は,本願発明1の「該カメラの光軸と垂直に配置された,基板を把持するステージと,前記カメラが基板面内の任意の一部分を撮像可能となるように,カメラとステージとを相対移動させる駆動手段およびその制御手段」に相当する。
さらに,引用発明の「被検査体の下方から被検査体に検査光を照射する光源3」は,本願発明1の「該ステージ後方から基板を照明する照明手段」に相当する。
そして,引用発明の「補色フィルタ4」について,上記摘記事項(1-イ),(1-オ)かつ図3?5の記載から,例えば赤色のフィルター(620-750nm付近の波長を透過する)を検査する際には,その補色であるシアンの補色フィルター(400nm?600nm),青色のフィルタ(400?500nm),緑色(500?600nm)等が利用可能であることが記載されている。そうすると,引用発明の「補色フィルタ4」と,本願発明1の「基板に塗布された複数の着色膜のすべてについて光透過率の低い波長域のみを透過する光学フィルター」とは,「基板に塗布された着色膜について光透過率の低い波長域を透過する光学フィルター」である点で共通する。
また,引用発明の「画像信号を電気的に処理して着色膜の異常部分を検出する検査処理部6」は,本願発明1の「該画像を元に良否判定を行う判定手段」に相当する。
そうすると,両者は,
(一致点)
「CCD撮像素子またはCMOS撮像素子をもつカメラと,該カメラの光軸と垂直に配置された,基板を把持するステージと,前記カメラが基板面内の任意の一部分を撮像可能となるように,カメラとステージとを相対移動させる駆動手段およびその制御手段と,該ステージ後方から基板を照明する照明手段と,カメラのシャッターを制御する制御手段と,カメラの撮像レンズ又は/及び照明手段の前面に配置され,基板に塗布された着色膜について光透過率の低い波長域を透過する光学フィルターと,カメラから得られた画像をを元に良否判定を行う判定手段とを有することを特徴とする基板検査装置。」
である点で一致し,以下の点で相違する。

(相違点1)
本願発明1は「カメラから得られた画像を蓄積,保存する記録手段」を備えているのに対し,引用発明は当該構成を備えていない点。

(相違点2)
測定対象である「基板に塗布された着色膜」について,本願発明1では「複数の着色膜」であるのに対し,引用発明においては単色である点。

(相違点3)
「基板に塗布された着色膜について光透過率の低い波長域を透過する光学フィルター」について,本願発明1では「基板に塗布された複数の着色膜のすべてについて光透過率の低い波長域のみを透過する光学フィルター」であるのに対し,引用発明では「基板に塗布された着色膜について光透過率の低い波長域を透過する光学フィルター」である点。

(相違点1)について検討するに,画像処理装置において,カメラで得られた画像を蓄積,保存する記録手段を備えることは技術常識であり,設計事項である。
次に(相違点2)及び(相違点3)について検討する。
上記摘記事項(2-ア)?(2-ウ)には,複数色を載置したカラーフィルターの欠損部を検査する装置として,赤緑青の三色を同時に検査するために,赤緑青のカラー透過光4の3つの波長の平均透過率が最も低くなる580nm付近に主波長を有するものを用いて,正常部と欠損部のコントラストを上げる装置が記載されている。
そうすると,引用刊行物2には,基板検査装置において,基板に塗布された複数の着色膜のすべてについて光透過率の低い波長域を透過する光学フィルターを用いる事項が記載されているといえる。
さらに,上記摘記事項(2-ウ)には,「検査用色フィルター3の分光特性は検査対象であるカラーフィルターの透過率曲線に応じて任意に設定してもよい」旨記載されているから,測定対象である着色膜の光透過率の低い波長域については適宜選択しうるものであるといえ,「光透過率の低い波長域のみを透過する光学フィルター」を選択することは設計事項であるといえる。
そうすると,引用発明に,引用刊行物2に記載された事項,及び上記設計事項を適用して,(相違点1)?(相違点3)における本願発明1の構成とすることは,当業者にとって容易に想到し得る事項であるということができる。
そして,本願明細書に記載された効果も,引用発明,引用刊行物2に記載された事項,及び上記設計事項から,当業者が予測し得る範囲のものであり,格別顕著なものといえない。

したがって,本願発明1は,引用発明および引用刊行物2に記載された発明,及び上記設計事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるというべきである。

第5 まとめ
以上のとおり,本願発明1は,特許法29条第2項の規定により特許を受けることができないから,その余の請求項の発明ついて言及するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-23 
結審通知日 2011-03-29 
審決日 2011-05-25 
出願番号 特願2003-298255(P2003-298255)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平田 佳規  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 信田 昌男
竹中 靖典
発明の名称 基板検査装置および基板観察装置  

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