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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  G01C
管理番号 1239756
審判番号 無効2010-800154  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-09-03 
確定日 2011-07-04 
事件の表示 上記当事者間の特許第3876256号発明「データ表示装置及びデータ表示方法」の特許無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
(1)本件特許第3876256号の請求項1ないし3に係る発明(以下,「本件特許発明1」ないし「本件特許発明3」という。)についての出願は,平成7年5月1日に出願した特願平7-107710号の一部を平成16年2月16日に新たな特許出願として出願され,平成18年11月2日に特許権の設定登録がなされた後,平成21年3月31日に無効審判(無効2009-800069号)の請求がなされ,平成21年10月14日付けで訂正請求がなされ,平成22年3月2日付けで当該訂正を容認した上で請求項1ないし3に係る特許を維持する旨の審決がなされ,その後,平成23年1月5日に同審決は確定している。

(2)本件無効審判は,平成22年9月3日に審判請求人 小林武より請求がなされ,平成22年11月25日付けで被請求人より審判事件答弁書及び訂正請求書が提出され,その後,請求人より,平成23年4月5日付けで口頭審理陳述要領書,平成23年4月14日付けで口頭審理陳述要領書(2)が提出され,被請求人より,平成23年4月5日付けで口頭審理陳述要領書,平成23年4月15日付けで口頭審理陳述要領書(2)が提出され,平成23年4月26日に口頭審理が行われたものである。なお,被請求人は,口頭審理において訂正請求を取り下げた。

2.本件発明
本件特許発明1ないし3は,平成21年10月14日付けの訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された次の事項により特定されるものである。
「【請求項1】
移動体が移動すべき目的地までの経路を設定する経路設定手段と,
施設に関する情報を進入可能な進行方向と共に該施設が設置されている道路毎に記憶した記憶手段と,
前記設定された経路を前記移動体が移動中に当該移動体の進行方向を認識する認識手段と,
前記認識された移動体の進行方向に基づいて当該移動体の進行方向前方にあり,かつ,当該移動体が進入可能な前記経路上に存在する施設を前記記憶手段から検索する施設検索手段と,
前記施設検索手段により検索された施設の名称を表示する施設名称表示手段と,
カーソル表示手段と,
カーソル位置を変更するカーソル移動手段と,
リセット手段と,
を備え,
基準初期化状態においては,前記施設名称表示手段が,前記経路上での前記施設の実際の存在位置に応じた配列で,かつ,現在地に最も近い施設の名称が最下段となるように上下に施設名称表示を行うと共に前記カーソル表示手段がカーソル位置を現在地に最も近い施設となるように表示し,
前記リセット手段は,前記カーソル移動手段によって移動したカーソルが現在地に最も近い施設以外の施設を選択している表示状態にある場合に,リセット要求に従い,当該表示状態を前記基準初期化状態における表示状態に更新することを特徴とするデータ表示装置。
【請求項2】
前記施設名称表示手段は,所定の施設名描画領域に上下に渡って配された個別施設名描画領域に,前記施設の名称を表示することを特徴とする請求項1に記載のデータ表示装置。
【請求項3】
移動体が移動すべき経路を設定する経路設定工程と,
前記設定された経路を前記移動体が移動中に当該移動体の進行方向を認識する認識工程と,
施設に関する情報を進入可能な進行方向と共に該施設が設置されている道路毎に記憶した記憶手段から,前記認識された移動体の進行方向に基づいて当該移動体の進行方向前方にあり,かつ,当該移動体が進入可能な前記経路上に存在する施設を前記記憶手段から検索する施設検索工程と,
前記施設検索工程により検索された施設の名称を表示する施設名称表示工程と,
表示リセット工程と,
を備え,
前記施設名称表示工程は,基準初期化状態においては,前記経路上での前記施設の実際の存在位置に応じた配列で,かつ,現在地に最も近い施設の名称が最下段となるように上下に施設名称表示を行うと共にカーソル位置を現在地に最も近い施設となるように表示し,
前記表示リセット工程においては,カーソルが現在地に最も近い施設以外の施設を選択している表示状態にある場合に,リセット要求に従い,当該表示状態を前記基準初期化状態における表示状態に更新することを特徴とするデータ表示方法。」

3.請求人の主張
請求人は,本件特許発明1ないし3は,これを無効にする,との審決を求め,証拠方法として,甲第2号証(特開平6-96390号公報)及び甲第3号証(特開平6-294661号公報)を提出し,その理由として,本件特許発明1ないし3は,甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,無効とすべきであると主張している。

4.被請求人の主張
被請求人は,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求め,本件特許発明1ないし3は,甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから,請求人の主張には理由がないと主張している。

5.甲各号証の記載事項
(1)甲第2号証
甲第2号証には,図面と共に以下の事項が記載されている。
・「【請求項1】自車位置を検出する手段と,地図及び関連データの記憶装置と,表示装置とを含み,高速道路を走行していることを人間が指定できる操作部を持つナビゲーションシステムにおいて,上記操作部を人間が操作して,高速道路を走行していることを指定したとき,
上記自車位置を検出する手段から得た自車位置情報に基づいて,ある複数の特徴点のうちのいずれか,もしくは,一部を指定し,指定された上記特徴点に関する複数の情報のうちのいずれか,もしくは,一部を上記記憶装置から取り出し,上記表示装置に周辺図,案内図,全体図,自車位置を表すマーク,または,自車位置情報と上記記憶装置から取り出したデータに基づいて算出されるデータ,もしくは,その一部を表示することを特徴とする自動車のナビゲーションシステムの表示方法。
【請求項2】請求項1において,上記特徴点を指定する方法は,上記自車位置情報に基づいて,次に訪れる特徴点を指定する自動車のナビゲーションシステムの表示方法。
【請求項3】請求項1において,上記操作部の中で,特徴点の種類のいずれかを選択することが可能な操作部をもつナビゲーションシステムのある特徴点を指定する方法は,
人間が上記操作部を操作して,特徴点の種類を選択し,自車位置情報と,上記人間により選択された特徴点の種類とに基づいて,この種類の中で,次に訪れる特徴点を指定する自動車のナビゲーションシステムの表示方法。
【請求項4】請求項1において上記操作部の中で,上記特徴点の前後を選択することが可能な操作部をもつナビゲーションシステムの上記特徴点を指定する方法は,人間による上記操作部の操作に基づいて,上記特徴点を移動させる数を数え,現在の特徴点を,上記特徴点を移動させる数だけ移動させて特徴点を指定する自動車のナビゲーションシステムの表示方法。
【請求項5】請求項1に記載の上記操作部の中で,請求項3に記載の特徴点の種類を選択することが可能な操作部Aと,請求項4に記載の特徴点の前後を選択することが可能な操作部Bと,特徴点の前後選択状態を取り消すことが可能な操作部Cをもつナビゲーションシステムであって,
請求項1に記載の,上記特徴点を指定する方法は,人間が上記操作部Cを操作してから,上記操作部Bを操作するまでの間をリセット状態とし,上記操作部Bを操作してから,上記操作部Cを操作するまでの間をリセット状態でないとして,人間が上記操作部Aを操作して選択した特徴点の種類を検出し,リセット状態であるときは,請求項2,または,請求項3に記載の方法によって,特徴点を指定し,リセット状態でないときは,請求項4に記載の方法によって,特徴点を指定する自動車のナビゲーションシステムの表示方法。」

・「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,自動車のナビゲーションシステムに係り,特に,高速道路を走行しているときの表示方法と,車速に対応して地図の縮尺を変えて表示する方法と,音声入力によって自車位置を補正して表示する方法とに関する。」

・「【0006】地図と自車位置マークを表示する方法には,(1)地図が固定で,自車位置マークが画面上を動くもの,(2)自車位置マークを画面中央に固定して,この位置が常に中央となるように地図をスクロールするもの,(3)自車位置マークを画面中央に固定して,この位置が常に中央となるように地図をスクロールし,自車の進行方向が常に画面の上方向となるように,地図を回転させるもの,などが考えられていることが,計測と制御,vol.30,No.9のp775-p780(以下,文献2という)に紹介されている。
【0007】このような一般的なナビゲーションシステムの表示方法に対し,例えば,特開平1-149200 号公報には,出発点から目的地までの有効な情報を提供する方法が提案されている(以下,従来技術2という)。この方法は,目的地を入力装置から入力すると,目的地までの経路にあたる情報をメモリへ格納し,さらに,経路の各地点を指定入力すると,その地点に関する案内情報が表示装置に表示される。」

・「【0008】
【発明が解決しようとする課題】高速道路を走行しているときを考える。
【0009】首都高速道路などの環状線など,合流分岐や出入口が複雑に連続している道路では,できるだけ,その情報が運転者にいち早く,かつ,簡潔に伝わることが望ましい。
【0010】例えば,次の分岐点で,左側の道路に分岐する必要があるのに,その道路案内標識が分岐点の直前に位置しているために,道路案内標識が見えたときに,最右車線にいると,無理な車線変更を連続して行なわなければならないといったことが生じる。また,首都高速道路はカーブが多く,渋滞時を除けば,高速運転しているため,ナビゲーションシステムの表示装置に視線を移すことができる時間が短いので,従来の表示のように一般道混在型の地図表示では,瞬時に目に入る情報が多過ぎるために,逆に適切な判断を下す妨げとなっている。
【0011】また,高速道では,ある目的地までの距離や到達時間の目安を知りたいという要求がある。」

・「【0015】本発明の第1の目的は,人間が高速道路を走行していることを指定したとき,自車位置情報に基づいて,一般道走行と区別して,CD-ROMからの情報を必要とせずに,高速道の簡潔な地図,道路案内標識の情報,合流分岐の道路形状などを,必要に応じて簡潔に人間に情報伝達できるような表示方法,及び,自車位置マークを地図における高速道路上に補正して表示する方法,及び,ある目的地までの距離や到達時間の目安を表示する方法を提供することにある。」

・「【0023】
【課題を解決するための手段】
(I)上記第1の目的を達成するために,本発明は,人間が高速道路を走行していることを指定したとき,高速道路を走行しているときの表示を,一般道を走行しているときの表示と区別することとする。そして,高速道路を走行しているときに必要なデータ量を少なくし,システム内部のメモリに常駐させ,自車位置情報と,ナビゲーションシステムの表示に関する人間による簡単な操作とに基づいて,このメモリより必要な情報を取り出して,表示装置に高速道の簡潔な地図,道路案内標識の情報,合流分岐の道路形状を表示し,地図表示の状態では,自車位置マークを高速道路上に補正して表示する。さらに,目的地までの距離や到達時間の目安なども併せ表示する。」

・「【0034】
【実施例】図1は,本発明である人間が高速道路を走行していることを指定したときの表示方法の実施例を示したものである。以下,図1に基づいて,図2から図6までの補足説明図を用いて説明する。
【0035】高速道路を走行していることを指定したとする(ステップ101)。このとき,GPS衛星などの自車位置を検出する手段102による自車位置情報(緯度,経度など)11に基づいて,特徴点指定手段103により特徴点12を指定する。ここで,高速道路における特徴点とは,高速道出入口(IC),合流分岐点(JCT),休憩所(SA,PA),料金所の全てを総称したものとし,この他にもトンネル,橋,緊急避難所,緊急電話設置所などを含めても良い。ただし,以下では,高速道出入口(IC),合流分岐点(JCT),休憩所(SA,PA),料金所を特徴点として説明する。
【0036】図2には,関越自動車道における特徴点(練馬IC21,高坂SA22,藤岡JCT23など)を表わしている。ただし,特徴点の全ては表示していない。
【0037】指定された特徴点12に基づいて,記憶装置104から特徴点に関連した図(記号13,計算機処理の場合には,そのデータやコードなど),及び,特徴点に関するデータ14(特徴点の緯度,経度や,前後の特徴点との距離など)を取り出す。ここで,特徴点に関連した図とは,全体図51(図3参照),周辺図52(図4参照),案内図53(図5参照)などを指し,以下,これらについて説明をつけ加える。
【0038】特徴点に関連した全体図51とは,特徴点を含む高速道路をできるだけ広範囲にわたって示したものとする。高速道路全域の場合もあるし,ある範囲に限定される場合もある。また,このときの指定特徴点の表示上の位置は限定しない。つまり,特徴点を中央付近で,前後の道路を表示する場合もあるし,特徴点を端で,進行方向のみの道路を表示する場合もある。この全体図の中では,指定特徴点の名称の表示が,他の特徴点の名称の表示に比べて強調されているものとする。図3は,関越自動車道花園IC24が指定されたときの全体図の一例を示したものである。」

・「【0041】記憶情報取出手段104で記憶装置131から取り出される特徴点に関するデータ14と,自車位置情報11とに基づいて,表示データ算出手段105では,特徴点までの道のり31や到達時間32(以下,表示データ15という)を算出し,特徴点に関連した図(記号13),及び,自車位置情報11とともに,画像作成手段106に取り込まれ,ここで,表示画像16を合成し,表示装置107に送る。」

・「【0043】次に,人間が高速道路を走行していることを指定したとき,特徴点を指定する手段103について,三つの方法について説明する。
【0044】第1の方法は,図1を用いて説明する。
【0045】自車位置情報11に基づいて,特徴点指定手段103において,次に訪れる特徴点を指定する。例えば,関越自動車道を新潟方面に走行中で,自車位置が川越ICと鶴ケ島ICの中間にあるとき,鶴ケ島ICを特徴点として指定する。この方法は,特に,首都高速道など合流分岐,出入口が複雑に連続する高速道で有効である。ここで,進行方向についての判断であるが,特徴点指定手段103の中で,時間的な自車位置情報や既に訪れた特徴点などを管理しておけば,進行方向を判断できる。また,自車位置検出手段に方位計,または,方位計に準ずるもの(ジャイロなどによる方位の算出)を含めておくことによっても,自車が向いている方向から,進行方向を判断できる。
【0046】第2の方法は,図7,図8を用いて説明する。
【0047】図7に示したとおり,人間が高速道路走行を指定しているとき(ステップ101),さらに,特徴点の種類を指定できる操作部121を,人間が操作して指定した特徴点の種類情報41を検出し(ステップ111),この特徴点の種類情報41と自車位置情報11とに基づいて,この種類の中で,次に訪れる特徴点12を指定する。ここで,特徴点の種類を指定する操作部121は,表示装置に備え付けたものや,リモコン,音声入力装置などその形状,方法は何でも良い。図8は表示装置に備え付けの操作部の例を示している。例えば,関越自動車道を新潟方面に走行中で,自車位置が川越ICと鶴ケ島ICの中間にあり,人間が休憩所を指定したときは,高坂SAが特徴点として指定される。この方法は,例えば,休憩所情報を取り出して,休憩所までの所要時間や距離などから,人間が休憩する場所を決めるのに利用できる。
【0048】第3の方法は,図9から図12を用いて説明する。
【0049】図9に示したとおり,人間が高速道路走行を指定しているとき(ステップ101),さらに,人間が,特徴点の前後を選択できる操作部122を,人間が操作して命令している移動させる数(カウンタの数)42を検出し(ステップ114),現在の指定特徴点を検出して(ステップ115),現在の指定特徴点からカウンタの数42だけ指定特徴点を移動させるものである(ステップ116)。移動させたあとは,カウンタの数を0にセットする(ステップ117)。
【0050】図10には,特徴点の前後を選択する操作部122として,表示装置に備え付けの操作部の例を示している(ただし,図中には特徴点リセット操作部123も表示)。例えば,関越自動車道を新潟方面に走行中で,現在の指定特徴点が鶴ケ島IC25のとき,人間が操作部を操作して,後を1回指定すると,高坂SA22が新しい特徴点として指定される。図11は表示画像が全体図を含む場合,図12は表示画像が周辺図を含む場合における,表示画像の変化の様子を表している。この方法によれば,知りたい特徴点の情報を簡単な操作で知ることができる。」

・「【0051】以上では,特徴点を指定するための三つの方法を独立なものとして説明したが,これらのすべてを一つのアルゴリズムで実現する方法について図13および表1を用いて説明する。
【0052】まず,人間が操作部を操作したことによるイベントの処理を,以下の記号(M:高速道路の走行指定モード,K:特徴点の種類,i:前後キーのカウンタ)を用いて説明する。
【0053】
M=0:高速道路走行を指定していない状態
M=1:高速道路走行を指定している状態
K=0:標準
K=1:高速道出入口
K=2:休憩所
K=3:合流分岐
K=4:料金所
i=i+1:後が入力されたとき(または,その逆)
i=i-1:前が入力されたとき(または,その逆)
i=-99:リセット状態
この記号を用いて,図13のアルゴリズムについて説明する。
【0054】高速道路の走行指定モードMが1であるかを判断し(ステップ101),Mが1のときは,現在セットされている特徴点の種類K情報41を検出する(ステップ111)。次に前後キーのカウンタiが-99であるかどうかを判断し(ステップ112),iが-99のときは,自車位置情報11と特徴点の種類K情報41とに基づいて,この特徴点の種類の中で,次に訪れるものを特徴点として指定する。ただし,Kが0のときは,種類に関係なく,次に訪れる特徴点を指定する(ステップ113)。iが-99以外のときは,カウンタiの数42を検出し(ステップ114),現在の特徴点を検出し(ステップ115),特徴点の種類K情報41と前後キーのカウンタiの数42とに基づいて,この種類の中で,現在の特徴点からiの数42だけ移動して,新しい特徴点とする。ただし,Kが0のときは,種類に関係なく,現在の特徴点からiの数だけ移動して,次に訪れる特徴点を指定する(ステップ116)。特徴点を移動したあとは,カウンタiを0にセットする(ステップ117)。ステップ113,または,116により指定された特徴点は記憶され(ステップ118),指定特徴点12として出力される。」

・「【0064】図15に示したとおり,特徴点に関連した図の種類を選択できる操作部124を,人間が操作して指定した関連図の種類情報43を検出し(ステップ119),この関連図の種類情報43と指定特徴点12とに基づいて,指定特徴点に対するこの種類の関連図と,指定特徴点に関するデータを記憶装置131から取り出す。図16には,特徴点に関連した図の種類を選択する操作部124として,表示装置に備え付けの操作部の例を示している。この方法によれば,特徴点に対してデフォルトで定められているものだけでなく,その他の関連図も簡単な操作で表示することができる。」

・「【0122】
【発明の効果】本発明によれば,高速道路走行中に必要な情報を,自車位置情報や簡単な操作に基づいて,簡潔な形で表示でき,合流分岐による車線選択や運転計画の判断に役立つ。また,車速に対応して,地図の縮尺や詳細さを変更でき,適切な量と範囲の情報を人間に提供することができる。さらに,音声入力を用いて,自車位置検出手段の精度が多少悪くても,簡単に自車位置を補正することがでる。」

・【図3】には,簡潔な地図として表示される高速道路に沿って特徴点を表示する全体図51が示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると甲第2号証には,次の発明が記載されていると認められる。
[甲2発明1]
「高速道路における特徴点12に関するデータ14を記憶した記憶装置131と,
高速道路を走行している自車の進行方向を判断する手段と,
高速道路を走行していることを指定するとともに,進行方向のみの高速道路に沿って特徴点を表示する全体図51を関連図の種類として選択しているとき,進行方向と自車位置情報11に基づいて次に訪れる特徴点を指定特徴点12として指定し,関連図の種類情報43と指定特徴点12とに基づいて前記記憶装置131から全体図51を取り出す記憶情報取出手段104と,
記憶情報取出手段104で取り出された前記全体図51を表示する表示装置107と,
指定特徴点12を強調して表示する手段と,
指定特徴点12の前後を選択する操作部122と,
指定特徴点12の前後選択状態を取り消す特徴点リセット操作部123と,
を備え,
指定特徴点12の前後選択状態を取り消すリセット状態のときは,前記表示装置107は,簡潔な地図として表示される進行方向のみの高速道路に沿って特徴点を表示し,かつ,自車位置情報11に基づいて次に訪れる特徴点を指定特徴点12として端に表示し,
前記操作部122を操作してから前記特徴点リセット操作部123を操作するまでの間は前記操作部122の操作に基づいて特徴点を指定し,前記特徴点リセット操作部123を操作してから,前記操作部122を操作するまでの間を前記リセット状態とする自動車のナビゲーションシステム。」
[甲2発明2]
「高速道路を走行している自車の進行方向を判断することと,
高速道路を走行していることを指定するとともに,進行方向のみの高速道路に沿って特徴点を表示する全体図51を関連図の種類として選択しているとき,進行方向と自車位置情報11に基づいて次に訪れる特徴点を指定特徴点12として指定し,関連図の種類情報43と指定特徴点12とに基づいて,高速道路における特徴点12に関するデータ14を記憶した記憶装置131から全体図51を取り出すことと,
取り出された前記全体図51を表示することと,
指定特徴点12の前後選択状態を取り消すことと,
を行い,
取り出された前記全体図51を表示するに当たり,指定特徴点12の前後選択状態を取り消すリセット状態のときは,簡潔な地図として表示される進行方向のみの高速道路に沿って特徴点を表示し,かつ,自車位置情報11に基づいて次に訪れる特徴点を指定特徴点12として強調して端に表示し,
指定特徴点12を前後選択状態とする操作をしてから指定特徴点12の前後選択状態を取り消す操作をするまでの間は前記前後選択状態とする操作に基づいて特徴点を指定し,前記前後選択状態を取り消す操作をしてから,前記前後選択状態とする操作をするまでの間を前記リセット状態とする自動車のナビゲーションシステムの表示方法。」

(2)甲第3号証
甲第3号証には,図面と共に以下の事項が記載されている。
・「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,車両の現在位置および進行方向を運転者に教示して車両の走行案内を行なう車載用ナビゲ-ション装置に関し,特に,車両の走行案内に際して,運転者にとって有効な案内情報を選定して提供する技術に関するものである。」

・「【0004】
【発明が解決しようとする課題】さて,前記表示装置に道路地図を表示する技術によれば,表示装置の表示面の大きさに限りがあるために,画面上に表示できる道路地図の領域にも限りがある。このため,運転者は,画面に表示されない領域について瞬時に道路情報を確認することはできない。したがい,この先(この道路を走行していくと)はどこに行き着くのか迷いが生じることになる。」

・「【0007】そこで,本発明は,車両の走行案内に際して,運転者にとって有効な案内情報を表示外の領域についても提供することのできる車載用ナビゲーション装置を提供することを目的とする。」

・「【0008】
【課題を解決するための手段】前記目的達成達成(当審注:「目的達成」の誤記と認められる。)のために,道路地図を表現する道路網データと,道路の背景の地図を表現する背景データとを含む地図データを記憶する地図データ記憶手段と,車両の現在位置を求める位置計測手段と,表示装置と,前記位置計測手段が求めた車両の現在位置を含む地区の前記道路網データを前記地図データ記憶手段より読み出して,読み出した道路網データが表現する道路地図を前記表示装置に表示する出力選定手段とを有する車載用ナビゲーション装置であって,前記背景データの表現する背景は,各種施設,行政区,地理のうちの一つを含み,前記出力選定手段は,前記位置計測手段が求めた現在位置と前記読み出した前記道路網データから,車両の走行している道路と当該道路上の車両の位置を特定し,前記表示装置に表示した道路地図上において特定した車両の位置を識別可能に表示すると共に,特定した位置と特定した道路より車両の走行経路を予測し,予測した経路近傍にある背景を,必要となる地区の前記道路網データと背景データとを前記地図データ記憶手段より読み出して検索し,検索した背景データの表現する背景についての情報を前記表示手段に表示することを特徴とする車載用ナビゲーション装置を提供する。」

・「【0010】よって,表示装置に表示できない周辺領域の通過地点情報(道路,施設,市区町村)及び道路状況が,車両の走行状況(走行道路と進行方向)に応じて実時間にて出力することができるので,運転者は走行条件を把握しやすくなり運転負荷が軽減できる。」

・「【0014】位置計測手段1は磁気方位センサと距離センサを備えており,磁気方位センサで検出した地磁気の方向を基準とした車両の進行方向と,移動量センサによる車両の走行距離とに基づいて地図座標上における車両位置を計算する。
【0015】地図データ記憶手段2は,地区毎に分割されている地図データを記憶する。地図データは,道路網データと背景データより成る。」

・「【0017】出力選定手段5は,位置計測手段1で求められた対象地区の地図データを地図データ記憶手段2から読み出し,設定入力手段3で設定された出力データの基準値に応じて予想行き先方向の案内情報を検索する。すなわち,出力選定手段5は,車両が走行状態の場合には位置計測手段1で計算された地図座標上における車両位置と車両方向と,予め設定された出力データの基準値(出力デバイス,道路交通情報の必要・不必要,車両進行方向を考慮するか・しないか,出力情報の種類,出力情報の検索範囲)に基づいて案内情報を出力する検索対象地区を計算し,この地区についての地図データから必要な案内情報を検索する。
【0018】出力手段6は,出力選定手段5によって検索された案内情報と道路ネットワ-ク画像等を,CRTや液晶ディスプレイなどを使用した表示デバイスに表示する。(以下略)」

・「【0019】まず,道路網データはリンクデータと道路属性データで構成され背景データはポイントデータと背景属性データで構成される。道路属性データテーブルには背景データとの関連性をもつリンクに対してリンクポインタを付加しており,そのポインタで指示された先を参照すれば背景データが抽出できる。
【0020】ここで,地図データ記憶手段が記憶している地図データについて説明する。
【0021】図12に,地図データの構成を示している。図示するように,地図データは道路網データaと背景データbよりなる。
【0022】図12aに示すように,道路網データは,リンクデータ100と道路属性データ110で構成され,背景データはポイントデータ120と背景属性データ130で構成される。
【0023】リンクデータ100は,道路を構成するリンク毎に設けられており,リンクの識別データ101,リンクの両端であるノード点の位置座標を示すデータ103,105,隣接ノード点との接続情報となるノ-ド識別データ102,104,当該リンクに対応する道路属性データを指定するデータ106を有している。
【0024】道路属性データは,対応するリンクの付加情報を示すデータを記憶しており,対応するリンクの,道路種別(高速道路,国道,県道,主要地方道,細街路等)111や,道路番号(東名,京浜,1号線,234号線等)112や,平均走行所要時間113や,各種の道路属性114や,対応するリンクに関連する(付属している)背景データ120を指定するデータ114を有している。
【0025】このように,対応するリンクに関連する背景データ120を指定するデータ114は,道路データと背景データとを直接リンクする。本実施例では,各種背景のうち,サ-ビスエリアや高速道路出口等の,道路に付属する施設についての背景データ,行政区域の境界である行政界は,このデータ114によって当該施設が付属しているリンクの道路網データにリンクする。この場合,この関係づけられた道路網データと背景データは,リンケ-ジ情報を有しているという。」

・「【0028】ポイントデータ120は,背景毎に設けられており,背景の属する分類(公共施設,行政界,自然,行政区画,道路付属設備等)121と,その位置座標122と,当該背景に対応する背景属性データ130指定するデータ123を有している。
【0029】背景属性データ130は,対応する背景の付加情報を示すデータを記憶しており,背景の種別(市役所,都道府県市町村,サ-ビスエリア,トンネル,水系や山系,市界等)を示すデータ131と,その名前を示すデータ132と,その形状と位置を示すデータ132を有している。」

・「【0043】図相するように,道路ネットワーク画像の表示状態で,設定入力手段3での設定入力操作によって出力案内情報の検索基準がセットされると,出力船体手段5(当審注:「出力選定手段5」の誤記と認められる。)は,案内情報の検索ステップ302に進み案内情報検索処理を実行する(ステップ30)。ここでは,出力案内情報の検索基準として,検索方向,検索距離,検索範囲,出力案内情報の指定を受け付ける。検索方向の指定とは,現在位置からどの方向の地点の案内情報を抽出するかの指定であり,走行している道路の現走行方向向きの延長方向等の方向の指定を受け付ける。検索距離の指定とは,現在位置から検索方向にどのくらい離れた地点を中心とする案内情報を抽出するかの指定である。検索範囲の指定とは,現在位置から検索方向に検索距離離れた地点である検索距離地点を中心として,どの暗い(当審注:「どのくらい」の誤記と認められる。)の範囲の案内情報を抽出するかの指定であり,出力案内情報の指定とは,案内情報としてどのような種類の情報を出力するかの指定であり,公共施設についての情報,一般施設についての情報,道路付属施設についての情報,行政区画,行政界についての情報,自然についての情報,道路交通情報などの指定を受け付ける。
【0044】さて,ステップ302によって求められた案内情報は,ステップ303に示すように出力手段6に現在位置,道路ネットワ-ク画像と共に表示する。」

・「【0053】一方,出力案内情報として指定された情報が特定の分類の背景についての情報を含んでいる場合であって,この特定の分類の背景についての背景データが前述した道路網データとのリンケ-ジ情報を備える分類のものである場合,すなわち,この背景のポイントデータが道路属性データとデータ115で関係づけられるものである場合には,ステップ407,409,411においてデータ115による情報の連結関係より,検索対象地区内の当該分類の背景についての背景データを検索し,案内情報として抽出する。」

・「【0055】次に,図6に,図4ステップ403における検索対象地区の道路網データと背景データ(地図データ)の読み込み処理の処理手順を示す。
【0056】この処理では,走行している道路とその走行方向から次の走行道路を予測し現在位置から検索距離地点までの地図データの読み込みを行う。また,併せて,予測した走行道路付近にある施設,予測した走行道路の交通情報などを逐次抽出する。
【0057】すなわち,まず,ステップ501にて現在走行している道路に基づいて現在走行している道路の道路種別と道路番号(路線番号)を調べ,この道路を車両進行方向側に辿る。
【0058】次に,ステップ502にて現在位置から進行方向側に指定された検索距離を辿った地点である検索距離地点に達したかどうか判定し達していれば処理を終了する。
【0059】まだ達していなければステップ503,504,505にて,それぞれ,後処理にて,リアルタイム交通情報の道路識別番号と対応をとるために,辿っている道路リンクの道路地図データ上での識別番号(図12,101)を記憶し,また,道路網データとリンクしている背景データを後処理にて利用するために記憶する。すなわち,地図データ図12,13において,リンクデータ100のデータ106,道路属性データのデータ114より辿っている道路リンクとリンクしている背景データ120を求め記憶する。
【0060】また,道路網データとリンクしている道路交通情報を後処理にて案内情報として利用するために,辿っている道路上の道路交通情報を記憶してゆく。
【0061】そして,辿っている道路が現在読み込まれている道路地図データの領域から外れた場合はステップ506,507にて次の地区の地図データを読み込む。」

・「【0066】次に,図4,5のステップ407,409,411における道路網データと背景データがリンケージ情報を有する場合の案内情報検索の処理について説明する。
【0067】図8に,この処理手順を示す。
【0068】この処理では,まず,ステップ701にて,図6のステップ504で記憶しておいた検索距離地点までの背景データを全て案内情報として抽出する。そして,案内情報を走行順に出力するために抽出した背景データを現在位置から近い順に並べ換える(ステップ702)。」

・「【0079】さて,このようにして,図3,ステップ30の案内情報の検索処理が終了したら,前述したように,ステップ304において,抽出した案内情報を加工し,図15に示すように,道路ネットワ-ク画像と現在位置と共に,案内情報を出力手段6によって表示デバイス上に表示する。本実施例では,地図ネットワ-ク画像を表示した画面(ウィンドウ)の他に,案内情報の表示用に設けた副画面(サブウィンドウ)に背景の名称等を案内情報として表示している。もちろん表示形態は,この他の形態であってもよい。」

・【図12】には,「サービスエリア,海老名」又は「高速道路出口,横浜」といった道路付属施設を含む背景データbを,「流出」又は「流入」といった道路属性114と共に該道路付属施設が付属している「東名」といった道路番号112を含む道路網データaと,道路属性へのpointer-ID106,背景へのpointer-ID114及び背景属性へのpointer-ID123を介してリンクして記憶した地図データの構成が開示されている。

・【図15】には,案内情報の表示用に設けたサブウィンドウ(サブ表示画面1)中に,上下方向に均等に背景の名称を並べて表示する構成が開示されている。

6.本件特許発明1について
(1)対比
本件特許発明1と甲2発明1とを対比すると,後者の「高速道路における特徴点12に関するデータ14」,「記憶装置131」は,前者の「施設に関する情報」,「記憶手段」にそれぞれ相当する。

後者の「自車」,「判断する」は,前者の「移動体」,「認識する」にそれぞれ相当し,後者の「高速道路を走行」する態様と,前者の「設定された経路を」「移動」する態様とは,「所定の道路を移動」するとの概念で共通するから,後者の「高速道路を走行している自車の進行方向を判断する手段」と,前者の「設定された経路を移動体が移動中に当該移動体の進行方向を認識する認識手段」とは,「所定の道路を移動体が移動中に当該移動体の進行方向を認識する認識手段」との概念で共通している。

後者の「全体図51」は,「次に訪れる特徴点を指定特徴点12として指定し」て「進行方向のみの高速道路に沿って特徴点を表示する」ものであるから,後者の「関連図の種類情報43と指定特徴点12とに基づいて記憶装置131から全体図51を取り出す」態様は,実質的に,前者の「移動体の進行方向前方にあ」る「施設を記憶手段から検索する」態様に相当し,結局,後者の「進行方向と自車位置情報11に基づいて次に訪れる特徴点を指定特徴点12として指定し,関連図の種類情報43と指定特徴点12とに基づいて記憶装置131から,指定特徴点12に対する全体図51を取り出す」態様と,前者の「認識された移動体の進行方向に基づいて当該移動体の進行方向前方にあり,かつ,当該移動体が進入可能な経路上に存在する施設を記憶手段から検索する」態様とは,「認識された移動体の進行方向に基づいて当該移動体の進行方向前方にあり,かつ,所定の道路上に存在する施設を記憶手段から検索する」との概念で共通している。
後者の「記憶情報取出手段104」は,前者の「施設検索手段」に相当する。

後者の「全体図51」は,「進行方向のみの高速道路に沿って特徴点を表示する」ものであるから,後者の「記憶情報取出手段104で取り出された全体図51を表示する」態様は,前者の「施設検索手段により検索された施設の名称を表示する」態様に相当し,後者の「表示装置107」は,前者の「施設名称表示手段」に相当する。

後者の「指定特徴点12を強調して表示する手段」,「指定特徴点12の前後を選択する操作部122」,「指定特徴点12の前後選択状態を取り消す特徴点リセット操作部123」は,前者の「カーソル表示手段」,「カーソル位置を変更するカーソル移動手段」,「リセット手段」にそれぞれ相当する。

後者の「指定特徴点12の前後選択状態を取り消すリセット状態」は,前者の「基準初期化状態」に相当する。
後者の「簡潔な地図として表示される進行方向のみの高速道路に沿って特徴点を表示」する態様と,前者の「経路上での施設の実際の存在位置に応じた配列で」「上下に施設名称表示を行う」態様とは,「所定の道路上での施設を表示」するとの概念で共通する。
後者の「自車位置情報11に基づ」く「次に訪れる特徴点」は,前者の「現在地に最も近い施設」に相当するから,後者の「自車位置情報11に基づいて次に訪れる特徴点」を「端に表示」する態様と,前者の「現在地に最も近い施設の名称が最下段となるように」「施設名称表示を行う」態様とは,「現在地に最も近い施設の名称が端部に位置するように施設名称表示を行う」との概念で共通する。
後者の「指定特徴点12」は,「強調して表示」されるものであるから,後者の「自車位置情報11に基づいて次に訪れる特徴点を指定特徴点12として」「表示」する態様は,実質的に,前者の「カーソル表示手段がカーソル位置を現在地に最も近い施設となるように表示」する態様に相当する。

後者の「操作部122を操作してから特徴点リセット操作部123を操作するまでの間」は,実質的に,前者の「カーソル移動手段によって移動したカーソルが現在地に最も近い施設以外の施設を選択している表示状態にある場合」に相当し,後者の「特徴点リセット操作部123を操作して」「リセット状態とする」態様は,実質的に,前者の「リセット要求に従い,表示状態を基準初期化状態における表示状態に更新する」態様に相当する。

後者の「自動車のナビゲーションシステム」は,「指定特徴点12」に関する「全体図51を表示する」ものであるから,前者の「データ表示装置」に相当する。

したがって,本件特許発明1と甲2発明1とは,
「施設に関する情報を記憶した記憶手段と,
所定の道路を移動体が移動中に当該移動体の進行方向を認識する認識手段と,
前記認識された移動体の進行方向に基づいて当該移動体の進行方向前方にあり,かつ,前記所定の道路上に存在する施設を前記記憶手段から検索する施設検索手段と,
前記施設検索手段により検索された施設の名称を表示する施設名称表示手段と,
カーソル表示手段と,
カーソル位置を変更するカーソル移動手段と,
リセット手段と,
を備え,
基準初期化状態においては,前記施設名称表示手段が,前記所定の道路上での前記施設を表示し,かつ,現在地に最も近い施設の名称が端部に位置するように施設名称表示を行うと共に前記カーソル表示手段がカーソル位置を現在地に最も近い施設となるように表示し,
前記リセット手段は,前記カーソル移動手段によって移動したカーソルが現在地に最も近い施設以外の施設を選択している表示状態にある場合に,リセット要求に従い,当該表示状態を前記基準初期化状態における表示状態に更新するデータ表示装置。」
である点で一致し,次の点で相違する。

[相違点1]
本件特許発明1は,「移動体が移動すべき目的地までの経路を設定する経路設定手段」を備え,該「経路設定手段」により設定された「経路」について,進行方向の認識,施設の検索,施設の名称の表示を行うのに対し,甲2発明1は,走行している高速道路について,進行方向の認識,施設の検索,施設の名称の表示を行う点。
[相違点2]
本件特許発明1は,施設に関する情報を「進入可能な進行方向と共に」記憶し,該「進入可能な進行方向」の情報を用いて施設の検索,施設の名称の表示を行うのに対し,甲2発明1は,かかる特定がなされていない点。
[相違点3]
本件特許発明1は,施設に関する情報を「施設が設置されている道路毎に記憶し」ているのに対し,甲2発明1は,かかる特定がなされていない点。
[相違点4]
本件特許発明1は,基準初期化状態において,施設の名称を「実際の存在位置に応じた配列」で「上下に」表示し,かつ,現在地に最も近い施設の名称が「最下段」となるように表示するのに対し,甲2発明1は,施設の名称を「簡潔な地図として表示される進行方向のみの高速道路に沿って」表示し,かつ,現在地に最も近い施設の名称が「端」となるように表示する点。

(2)判断
上記相違点について検討する。

・相違点1について
一般に,ナビゲーション装置において,移動体が移動すべき目的地までの経路を設定し,設定された経路について表示処理を行うことは,本願の出願前において引例を挙げるまでもない常套手段ある。
そうすると,甲2発明1のナビゲーションシステムに上記常套手段を適用することは,当業者が適宜なし得る事項であり,上記常套手段の適用のために格別の技術的困難性が伴うものとも認められないから,甲2発明1において上記常套手段を適用することにより,上記相違点1に係る本件特許発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到することができたものである。

・相違点2について
甲第3号証には,ナビゲーション装置において,道路に付属する施設についての背景データと,道路データとを,「流出」又は「流入」といった道路属性データのデータ114によりリンクした地図データを記憶した地図データ記憶手段を備え,前記道路属性データのデータ114を用いて道路を検索距離地点まで辿り,辿っている道路にリンクしている背景データ120のみを案内情報として抽出し,表示に用いることにより,運転者にとって有効な案内情報を提供する技術が記載されている。
そして,背景データと,道路データとを,「流出」又は「流入」といった道路属性データのデータ114によりリンクして記憶する態様は,実質的に,施設に関する情報を進入可能な進行方向と共に記憶する態様に相当するものと認められるから,上記技術は,施設に関する情報を進入可能な進行方向と共に記憶し,該進入可能な進行方向の情報を用いて表示処理を行うことにより,施設に関する必要な情報を表示するものといえる。
ところで,甲2発明1は,高速道路走行中に必要な情報(特徴点の情報)を簡潔な形で表示するためのものである。
そうすると,甲2発明1と甲第3号証に記載された上記技術とは,いずれも走行中に必要な情報を表示するためのものであり,甲2発明1において特徴点を表示するに当たり,甲第3号証に記載された上記技術を採用して,上記相違点2に係る本件特許発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到することができたものである。

・相違点3について
甲第2号証の段落【0035】には,「高速道路における特徴点とは,高速道出入口(IC),合流分岐点(JCT),休憩所(SA,PA),料金所の全てを総称したものとし,この他にもトンネル,橋,緊急避難所,緊急電話設置所などを含めても良い。」と記載されており,特徴点のデータは高速道路に関連付けられているものと認められ,また,【図3】には,関越自動車道に関連した特徴点を表示する全体図が示されていることからみても,甲2発明1の全体図51に表示される特徴点のデータが,高速道路毎に記憶されたものであることは,当業者にとって自明の事項といえる。
そうすると,上記相違点3は,実質的な相違点とはいえない。

・相違点4について
一般に,ナビゲーション装置において,自車の進行方向が常に画面の上方向となるように地図を表示することは,例えば,甲第2号証の段落【0006】にも記載されているように,本願の出願前において常套手段ある。
ところで,高速道路には,その形状が大きく蛇行しているものや環状であるものも存在している。
そして,甲2発明1のナビゲーションシステムにおいて,自車の進行方向が常に画面の上方向となるように地図を表示するとき,簡潔な地図として表示される進行方向のみの高速道路を表示する全体図51上に表示される特徴点の配置関係は,高速道路の道路形状に依存し,高速道路の形状が大きく蛇行している場合や環状である場合には,特徴点が,横方向の配列で左右に表示されることもあるものと認められ,さらに,このような表示状態での指定特徴点12は,どの端部に位置するか特定することはできないものと認められる。
そうすると,甲第2号証は,施設の名称を実際の存在位置に応じた配列で上下に表示するという技術思想を開示あるいは示唆するものではなく,さらに,現在地に最も近い施設の名称が最下段となるように表示するという技術思想についても開示あるいは示唆するものではないから,甲2発明1に基づいて,上記相違点4に係る本件特許発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到することができたものではない。

なお,請求人は,高速道路はその性質上起点と終点をほぼ直線状に結ぶものであり,甲2発明1において,進行方向が上になるように高速道路の経路を表示し,その経路上に特徴点を表示すれば,現在地からの経路に沿った距離が遠い特徴点ほど上方に配置されるのが普通であること,及び,首都高速道路のように環状の高速道路であっても,部分的には直線と緩やかなカーブで構成されているのであるから,甲2発明1において,「全体図」に表示される範囲がそれほど大きいものではない場合には,特徴点が進行方向に沿って上方に順次表示されるものとなることを主張している。
しかしながら,上信越自動車道のように大きく蛇行した高速道路は存在しており,上信越自動車道の上り線で碓井軽井沢と横川SAの間を走行しているとき,進行方向が上になるように高速道路の経路を表示した場合には,甲2発明1に基づけば,特徴点である「横川SA」,「松井田妙義」,「下仁田」は,横方向の配列で左右に表示されることもあるものと認められる。また,環状である首都高速道路の都心環状線の外回りで呉服橋と江戸橋の間を走行しているとき,進行方向が上になるように高速道路の経路を表示した場合には,甲2発明1に基づけば,表示される範囲がそれほど大きいものではないとしても,特徴点である「江戸橋JCT」,「宝町」,「京橋JCT」,「新富町」,「銀座」は,横方向の配列で左右に表示されることもあるものと認められる。
したがって,請求人の上記主張は採用することができない。

(3)小括
以上のとおり,本件特許発明1は,甲2発明1及び甲第3号証に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

7.本件特許発明2について
(1)判断
本件特許発明2は本件特許発明1を引用する発明であって,本件特許発明1に発明特定事項を付加する発明である。そして,上記6.で述べたとおり,本件特許発明1が,甲2発明1及び甲第3号証に記載された技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない以上,本件特許発明2もまた,甲2発明1及び甲第3号証に記載された技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

なお,請求人は,甲第3号証には,案内情報の表示用に設けたサブウィンドウにおいて,上下方向に均等に背景の名称を並べて表示する技術が記載されており,甲2発明1に甲第3号証に記載された上記技術を適用することが容易であると主張している。
しかしながら,甲第3号証のサブウィンドウは,地図ネットワーク画像を表示したウィンドウの表示外の領域の案内情報を表示するためのものであり,甲2発明1の,簡潔な地図が表示される全体図51に,甲第3号証の,地図ネットワーク画像の表示外の領域の案内情報を表示する技術を適用することは,当業者が容易に考えることができたものとは認められない。
さらに,甲第3号証のサブウィンドウは,上下方向に均等に背景の名称を並べて案内情報を表示するものであり,甲2発明1の,簡潔な地図として表示される全体図51に,甲第3号証の,均等に背景の名称を並べて案内情報を表示する技術を適用することは,当業者が容易に考えることができたものとは認められない。
したがって,請求人の上記主張は採用することができない。

(2)小括
以上のとおり,本件特許発明2は,甲2発明1及び甲第3号証に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

8.本件特許発明3について
(1)対比
本件特許発明3と甲2発明2とを対比すると,後者の「自車」,「判断する」は,前者の「移動体」,「認識する」にそれぞれ相当し,後者の「高速道路を走行」する態様と,前者の「設定された経路を」「移動」する態様とは,「所定の道路を移動」するとの概念で共通するから,後者の「高速道路を走行している自車の進行方向を判断すること」と,前者の「設定された経路を移動体が移動中に当該移動体の進行方向を認識する認識工程」とは,「所定の道路を移動体が移動中に当該移動体の進行方向を認識する認識工程」との概念で共通している。

後者の「高速道路における特徴点12に関するデータ14」,「記憶装置131」は,前者の「施設に関する情報」,「記憶手段」にそれぞれ相当する。
後者の「全体図51」は,「次に訪れる特徴点を指定特徴点12として指定し」て「進行方向のみの高速道路に沿って特徴点を表示する」ものであるから,後者の「関連図の種類情報43と指定特徴点12とに基づいて」「記憶装置131から全体図51を取り出す」態様は,実質的に,前者の「移動体の進行方向前方にあ」る「施設を記憶手段から検索する」態様に相当し,結局,後者の「進行方向と自車位置情報11に基づいて次に訪れる特徴点を指定特徴点12として指定し,関連図の種類情報43と指定特徴点12とに基づいて」「記憶装置131から,指定特徴点12に対する全体図51を取り出すこと」と,前者の「認識された移動体の進行方向に基づいて当該移動体の進行方向前方にあり,かつ,当該移動体が進入可能な経路上に存在する施設を記憶手段から検索する施設検索工程」とは,「認識された移動体の進行方向に基づいて当該移動体の進行方向前方にあり,かつ,所定の道路上に存在する施設を記憶手段から検索する施設検索工程」との概念で共通している。

後者の「全体図51」は,「進行方向のみの高速道路に沿って特徴点を表示する」ものであるから,後者の「取り出された全体図51を表示すること」は,前者の「施設検索工程により検索された施設の名称を表示する施設名称表示工程」に相当する。

後者の「指定特徴点12の前後選択状態を取り消すこと」は,前者の「表示リセット工程」に相当する。

後者の「指定特徴点12の前後選択状態を取り消すリセット状態」は,前者の「基準初期化状態」に相当する。
後者の「簡潔な地図として表示される進行方向のみの高速道路に沿って特徴点を表示」する態様と,後者の「経路上での施設の実際の存在位置に応じた配列で」「上下に施設名称表示を行う」態様とは,「所定の道路上での施設を表示」するとの概念で共通する。
後者の「自車位置情報11に基づ」く「次に訪れる特徴点」は,前者の「現在地に最も近い施設」に相当するから,後者の「自車位置情報11に基づいて次に訪れる特徴点」を「端に表示」する態様と,前者の「現在地に最も近い施設の名称が最下段となるように」「施設名称表示を行う」態様とは,「現在地に最も近い施設の名称が端部に位置するように施設名称表示を行う」との概念で共通する。
後者の「自車位置情報11に基づいて次に訪れる特徴点を指定特徴点12として強調して」「表示」する態様は,実質的に,前者の「カーソル位置を現在地に最も近い施設となるように表示」する態様に相当する。

後者の「指定特徴点12を前後選択状態とする操作をしてから指定特徴点12の前後選択状態を取り消す操作をするまでの間」は,実質的に,前者の「カーソルが現在地に最も近い施設以外の施設を選択している表示状態にある場合」に相当し,後者の「前後選択状態を取り消す操作をして」「リセット状態とする」態様は,実質的に,前者の「リセット要求に従い,表示状態を基準初期化状態における表示状態に更新する」態様に相当する。

後者の「自動車のナビゲーションシステムの表示方法」は,「指定特徴点12」に関する「全体図51を表示する」方法であるから,前者の「データ表示方法」に相当する。

したがって,本件特許発明3と甲2発明2とは,
「所定の道路を移動体が移動中に当該移動体の進行方向を認識する認識工程と,
施設に関する情報を記憶した記憶手段から,前記認識された移動体の進行方向に基づいて当該移動体の進行方向前方にあり,かつ,所定の道路上に存在する施設を前記記憶手段から検索する施設検索工程と,
前記施設検索工程により検索された施設の名称を表示する施設名称表示工程と,
表示リセット工程と,
を備え,
前記施設名称表示工程は,基準初期化状態においては,前記所定の道路上で前記施設を表示し,かつ,現在地に最も近い施設の名称が端部に位置するように施設名称表示を行うと共にカーソル位置を現在地に最も近い施設となるように表示し,
前記表示リセット工程においては,カーソルが現在地に最も近い施設以外の施設を選択している表示状態にある場合に,リセット要求に従い,当該表示状態を前記基準初期化状態における表示状態に更新するデータ表示方法。」
である点で一致し,次の点で相違する。

[相違点1]
本件特許発明3は,「移動体が移動すべき経路を設定する経路設定工程」を備え,該「経路設定工程」により設定された「経路」について,進行方向の認識,施設の検索,施設の名称の表示を行うのに対し,甲2発明2は,走行している高速道路について,進行方向の認識,施設の検索,施設の名称の表示を行う点。
[相違点2]
本件特許発明3は,施設に関する情報を「進入可能な進行方向と共に」記憶し,該「進入可能な進行方向」の情報を用いて施設の検索,施設の名称の表示を行うのに対し,甲2発明2は,かかる特定がなされていない点。
[相違点3]
本件特許発明3は,施設に関する情報を「施設が設置されている道路毎に記憶し」ているのに対し,甲2発明2は,かかる特定がなされていない点。
[相違点4]
本件特許発明3は,基準初期化状態において,施設の名称を「実際の存在位置に応じた配列」で「上下に」表示し,かつ,現在地に最も近い施設の名称が「最下段」となるように表示するのに対し,甲2発明2は,施設の名称を「簡潔な地図として表示される進行方向のみの高速道路に沿って」表示し,かつ,現在地に最も近い施設の名称が「端」となるように表示する点。

(2)判断
上記相違点について検討する。

・相違点1について
一般に,ナビゲーション装置において,移動体が移動すべき目的地までの経路を設定し,設定された経路について表示処理を行うことは,本願の出願前において引例を挙げるまでもない常套手段ある。
そうすると,甲2発明2のナビゲーションシステムに上記常套手段を適用することは,当業者が適宜なし得る事項であり,上記常套手段の適用のために格別の技術的困難性が伴うものとも認められないから,甲2発明2において上記常套手段を適用することにより,上記相違点1に係る本件特許発明3の構成とすることは,当業者が容易に想到することができたものである。

・相違点2について
甲第3号証には,ナビゲーション装置において,道路に付属する施設についての背景データと,道路データとを,「流出」又は「流入」といった道路属性データのデータ114によりリンクした地図データを記憶した地図データ記憶手段を備え,前記道路属性データのデータ114を用いて道路を検索距離地点まで辿り,辿っている道路にリンクしている背景データ120のみを案内情報として抽出し,表示に用いることにより,運転者にとって有効な案内情報を提供する技術が記載されている。
そして,背景データと,道路データとを,「流出」又は「流入」といった道路属性データのデータ114によりリンクして記憶する態様は,実質的に,施設に関する情報を進入可能な進行方向と共に記憶する態様に相当するものと認められるから,上記技術は,施設に関する情報を進入可能な進行方向と共に記憶し,該進入可能な進行方向の情報を用いて表示処理を行うことにより,施設に関する必要な情報を表示するものといえる。
ところで,甲2発明2は,高速道路走行中に必要な情報(特徴点の情報)を簡潔な形で表示するためのものである。
そうすると,甲2発明2と甲第3号証に記載された上記技術とは,いずれも走行中に必要な情報を表示するためのものであり,甲2発明2において特徴点を表示するに当たり,甲第3号証に記載された上記技術を採用して,上記相違点2に係る本件特許発明3の構成とすることは,当業者が容易に想到することができたものである。

・相違点3について
甲第2号証の段落【0035】には,「高速道路における特徴点とは,高速道出入口(IC),合流分岐点(JCT),休憩所(SA,PA),料金所の全てを総称したものとし,この他にもトンネル,橋,緊急避難所,緊急電話設置所などを含めても良い。」と記載されており,特徴点のデータは高速道路に関連付けられているものと認められ,また,【図3】には,関越自動車道に関連した特徴点を表示する全体図が示されていることからみても,甲2発明2の全体図51に表示される特徴点のデータが,高速道路毎に記憶されたものであることは,当業者にとって自明の事項といえる。
そうすると,上記相違点3は,実質的な相違点とはいえない。

・相違点4について
一般に,ナビゲーション装置において,自車の進行方向が常に画面の上方向となるように地図を表示することは,例えば,甲第2号証の段落【0006】にも記載されているように,本願の出願前において常套手段ある。
ところで,高速道路には,その形状が大きく蛇行しているものや環状であるものも存在している。
そして,甲2発明2のナビゲーションシステムにおいて,自車の進行方向が常に画面の上方向となるように地図を表示するとき,簡潔な地図として表示される進行方向のみの高速道路を表示する全体図51上に表示される特徴点の配置関係は,高速道路の道路形状に依存し,高速道路の形状が大きく蛇行している場合や環状である場合には,特徴点が,横方向の配列で左右に表示されることもあるものと認められ,さらに,このような表示状態での指定特徴点12は,どの端部に位置するか特定することはできないものと認められる。
そうすると,甲第2号証は,施設の名称を実際の存在位置に応じた配列で上下に表示するという技術思想を開示あるいは示唆するものではなく,さらに,現在地に最も近い施設の名称が最下段となるように表示するという技術思想についても開示あるいは示唆するものではないから,甲2発明2に基づいて,上記相違点4に係る本件特許発明3の構成とすることは,当業者が容易に想到することができたものではない。

なお,請求人は,高速道路はその性質上起点と終点をほぼ直線状に結ぶものであり,甲2発明2において,進行方向が上になるように高速道路の経路を表示し,その経路上に特徴点を表示すれば,現在地からの経路に沿った距離が遠い特徴点ほど上方に配置されるのが普通であること,及び,首都高速道路のように環状の高速道路であっても,部分的には直線と緩やかなカーブで構成されているのであるから,甲2発明2において,「全体図」に表示される範囲がそれほど大きいものではない場合には,特徴点が進行方向に沿って上方に順次表示されるものとなることを主張している。
しかしながら,上信越自動車道のように大きく蛇行した高速道路は存在しており,上信越自動車道の上り線で碓井軽井沢と横川SAの間を走行しているとき,進行方向が上になるように高速道路の経路を表示した場合には,甲2発明2に基づけば,特徴点である「横川SA」,「松井田妙義」,「下仁田」は,横方向の配列で左右に表示されることもあるものと認められる。また,環状である首都高速道路の都心環状線の外回りで呉服橋と江戸橋の間を走行しているとき,進行方向が上になるように高速道路の経路を表示した場合には,甲2発明2に基づけば,表示される範囲がそれほど大きいものではないとしても,特徴点である「江戸橋JCT」,「宝町」,「京橋JCT」,「新富町」,「銀座」は,横方向の配列で左右に表示されることもあるものと認められる。
したがって,請求人の上記主張は採用することができない。

(3)小括
以上のとおり,本件特許発明3は,甲2発明2及び甲第3号証に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

7.むすび
以上のとおりであって,請求人の主張及び証拠方法によっては,本件特許発明1ないし3についての特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。

よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2011-05-25 
出願番号 特願2004-38949(P2004-38949)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (G01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 学安池 一貴本庄 亮太郎  
特許庁審判長 大河原 裕
特許庁審判官 冨江 耕太郎
堀川 一郎
登録日 2006-11-02 
登録番号 特許第3876256号(P3876256)
発明の名称 データ表示装置及びデータ表示方法  
代理人 廣瀬 隆行  
代理人 関 大祐  

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