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審決分類 審判 判定 同一 属する(申立て成立) B65D
管理番号 1239764
判定請求番号 判定2011-600015  
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2011-08-26 
種別 判定 
判定請求日 2011-04-20 
確定日 2011-07-08 
事件の表示 上記当事者間の特許第4390761号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面、写真及びその説明書に示す「自立袋」は、特許第4390761号の請求項1に係る発明の技術的範囲に属する。  
理由 1 請求の趣旨
判定請求書の記載からみて、本件判定請求の趣旨は、イ号図面、写真及びその説明書に示すイ号物件が請求人所有の特許第4390761号の請求項1に係る発明の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。

2 手続の経緯
(1)平成17年10月17日 本件特許に係る特許出願
(特願平2005-301791。特願2002-21819の分割
出願。原出願日平成4年1月31日。)
(2)平成21年10月16日 特許登録(特許第4390761号)
(3)平成23年4月20日 判定請求
(4)平成23年6月20日 答弁書提出

3 本件特許発明
本件特許発明は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであり、構成要件に分説すると、次のとおりである。本件特許発明及び次の分説について、当事者間に争いはない。

(A)袋の前側と後ろ側を構成する対向する一対の平面部と、これら平面部の間に介在し、折り線が袋の内方に折り込まれて折り襞状一対の側面部とからなる袋本体部を有し、この袋本体部の一方の口部を底面部で閉鎖する自立袋であって、
(B)前記一対の平面部と前記一対の側面部とはそれぞれ別体として設けられた部材から構成されており、これら平面部及び側面部を構成する部材は、それぞれの側縁同士が互いに貼り合わされ、自立袋の4隅に対応する位置に貼り合わせ部が形成され、
(C)一対の側面部の折り線の任意の一点をそれぞれ基点とし、該基点から口部端までの最初の折り線が、もとの折り方向とは逆に折り曲げられ、かつ、前記袋本体部の4隅からこの基点までを結ぶ線を、袋の内側方向に凸となる稜線として折り込まれて形成された開き面に、前記底面部としての中央に折り線を有する四角形状の底面部形成シートがその周縁に熱シール部を形成して融着されていることを特徴とする自立袋。

4 イ号物件
判定請求書に添付されたイ号図面及びイ号写真に示されたものが、被請求人(トタニ技研工業株式会社)の製品番号BH-60DG-F又は製品番号BH-80HVG-F、商品名「高速・高品質次世代ボックスパウチ(角底袋)製袋機」によって製造された袋である点について、当事者間に争いはない。判定請求書に添付された説明書(「イ号物件の説明」と題する書面)、判定請求書及び判定答弁書の記載を参酌すれば、イ号図面及びイ号写真に示されたイ号物件は、構成を分説して示すと次のとおりのものと認める。

(a1)袋の前側及び後ろ側に位置する平面部材11、11を備えており、これらが袋の前側と後ろ側を構成する対向する一対の平面部を構成している。
(a2)前側及び後ろ側に位置する平面部材11、11の間には、左右に位置する一対の側面部材21、21が介在しており、各側面部材21には、中央に縦方向に延びると共に、袋の内方に折り込まれる折り線23が形成されている。
(a3)一対の平面部材11、11と一対の側面部材21、21で形成される筒状体は、一方の口部が底面部30で閉鎖されており、平面部材と側面部材と底面部とで、袋を構成している。
(a4)この袋は、底面部30を広げた状態とすることにより、自立可能である。
(b1)平面部を構成する平面部材11と、側面部を構成する側面部材21とは、それぞれの側縁同士が互いに貼り合わされ、袋の4隅に対応する位置に貼り合わせ部40が形成されている。
(c1)各側面部材21の折り線23は、底面部30に近い部分の基点Pで終端(又は始端)している。
(c2)各側面部材21の基点Pから底面部30までの部分には、各側面部材21の中央に縦方向に延びると共に、袋の外側方向に凸となる折り線23aが形成されている。
(c3)各側面部材21の基点Pから底面部30の4隅を結ぶ線に沿って、袋の内側方向に凸となる稜線17が形成されている。稜線17は、各側面部材21の前側及び後ろ側に1本ずつ形成されているので、各側面部材21毎に2本の稜線17、17が形成されている。
(c4)底面部30は四角形状であり、底面部30の中央には、平面部に平行な方向に沿って、袋の内方に折り込まれる折り線31が形成されている。
(c5)底面部30の周縁は、平面部材11、11の袋内面側及び側面部材21、21の袋内面側と熱シール部30aを形成して融着している。

5 請求人の主張の要旨
判定請求書及び添付された甲各号証の記載などからみて、請求人の主張の要旨は、次のとおりである。
(1)イ号物件は、本件特許発明のすべての構成要件を充足する。そして、イ号物件は、本件特許発明と同一の効果を奏する。したがって、イ号物件は、本件特許発明の技術範囲に属する。
(2)被請求人は、本件特許の特許請求の範囲の記載は、プロダクト・バイ・プロセス・クレームであると主張するが、本件特許の特許請求の範囲の記載は、プロダクト・バイ・プロセス・クレームではない。仮に、本件特許の特許請求の範囲の記載が、プロダクト・バイ・プロセス・クレームと解釈されたとしても、本件特許発明が物の発明である以上、権利範囲が特定の製造方法で製造された場合にのみ限定されるわけではなく、物として同一である限りその技術的範囲に含まれるから、イ号物件は、本件特許発明の技術範囲に属する。なお、本件特許の審査段階で、請求人(本件特許出願の出願人)が、製造方法に特徴がある旨の主張をしたことはない。
(3)被請求人は、本件特許の特許請求の範囲の「形成された開き面」との用語の意義について不明瞭である旨主張するが、「形成された開き面」とは、袋本体部によって一方の口部に開き面が形成された状態を指すのであるから、自立袋の形状・構造を特定する構成要件の記載として何ら不明瞭な点はない。
(4)被請求人は、本件特許の原出願の出願経過を根拠に本件特許の特許請求の範囲を限定するような主張をするが、本件特許にかかる出願とは別の出願の経過から本件特許の権利範囲を論じることは許されない。

6 被請求人の主張の要旨
判定答弁書及び添付された乙各号証の記載などからみて、被請求人の主張の要旨は、次のとおりである。
(1)本件特許の特許請求の範囲の記載は、いわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームである。イ号物件は、乙第6号証(特許第3655627号公報)の図14に示す実施例の工程によって製造されるものであり、本件特許発明の構成要件Cで特定される製造方法とは異なるから、本件特許発明の構成要件Cを充足しない。よって、イ号物件は、本件特許発明の技術範囲に属しない。
(2)袋として見たとき、構成要件Cの「形成された開き面」という用語の意義は不明瞭である。そこで、明細書の段落0011、0014の記載などを考慮すれば、袋の製造工程において、袋本体部10の一方の口部10aを一旦開くために、基点Pから口部端Hまでの最初の折り線23aをもとの折り方向とは逆に折り曲げることによって、かつ、袋本体部10の4隅から基点Pまでを結ぶ線を袋の内側方向に凸となる稜線17として折り込むことによって開き面11a、21aを形成し、開き面11a、21aに中央に折り線31を有する底面形成シート30を融着することが構成要件Cの趣旨というべきである。したがって、本件特許発明は自立袋の発明であるが、構成要件Cの製造要件に基づいて得られる物としての発明であり、いわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームの発明である。
(3)請求人は、本件特許の原出願は、本件特許にかかる出願とは別の出願であるから、本件特許の原出願の出願経過を根拠に本件特許の権利範囲を論じることは許されない旨主張するが、原出願は本件特許の関連出願である以上、その出願経過を参照し、検討すべきである。
そして、原出願である特願平4-40497の審査過程では、平成14年1月30日付け手続補正書で、請求項1を
「袋の前側と後ろ側を構成する…前記袋本体部は、前記一方の口部を一旦開くために、2つの側面の折り線の任意の一点をそれぞれ基点とし、該基点から口部端までの最初の折り線を、もとの折り方向とは逆に折り曲げて引き出すと共に、前記袋本体部の4隅からこの基点までを結ぶ線を、袋の内側方向に凸となる稜線として折り込むようにして形成された開き面を有し、…融着されていることを特徴とする自立袋。」
と補正し、同日付けの意見書で
「(3)上記の下線部の構成を追加することで、最初の折り線のどの範囲を逆側に折り返して袋本体部の外側に引き出すのかが特定され、開き面が確実に形成される発明であることが明らかになりました。」
と主張し、その結果、原出願が特許第3292497号として特許されたものであるから、原出願の特許発明は、物の発明ではあるが、「開き面」の形成方法が前記補正書の下線部分で特定された方法に限定された発明というべきである。
したがって、原出願の出願経過を参酌すれば、本件特許発明も「開き面」の形成方法が限定された発明というべきである。
(4)本件特許発明の特徴は、袋の製造工程において、袋本体部10の一方の口部10aを一旦開くために、基点Pから口部端Hまでの最初の折り線23aをもとの折り方向とは逆に折り曲げることによって開き面11a、21aを形成することというべきである。仮に、この製造要件が本件特許発明の特徴ではないとすると、本件特許発明に特に特徴は認められないから、本件特許発明は、乙第7号証ないし乙第12号証に記載された公知技術などによって、本件特許は無効とされるべきものである。本件特許発明の技術的範囲の判断においては、このような事情も参酌すべきである。

7 当審の判断
(1)構成要件Aについて
イ号物件の構成要件a1ないしa4を総合すると、イ号物件は、本件特許発明の構成要件Aを充足する。なお、被請求人は、イ号物件が本件特許発明の構成要件Aを充足する点について争っていない。

(2)構成要件Bについて
ア.イ号物件の構成要件b1は、本件特許発明の構成要件Bのうち「平面部及び側面部を構成する部材は、それぞれの側縁同士が互いに貼り合わされ、自立袋の4隅に対応する位置に貼り合わせ部が形成され」との要件を充足する。
イ.イ号図面及び写真からは、イ号物件が、構成要件Bのうち「前記一対の平面部と前記一対の側面部とはそれぞれ別体として設けられた部材から構成されており」との要件を充足するか否かは明確でないが、上記6(1)の被請求人の主張によれば、イ号物件は、乙第6号証の図14に示す実施例の工程によって製造されるものである。そして、乙第6号証の図14に示す実施例については、乙第6号証の11頁27?30行に「両層の胴材1,2が互いに重ね合わされる前、連続胴材1,2の間欠送り毎に、サイドガセット材3が一方の層の胴材1に供給され、その上面に載せられ、幅方向に配置される。したがって、その後、サイドガセット材3が両層の胴材1,2 間に配置される。」と記載されている。そうすると、イ号物件は、一対の平面部となる部材が、連続胴材1,2であり、一対の側面部となる部材が、サイドガセット材3であり、両者は、それぞれ別体であるから、イ号物件は、構成要件Bのうち「前記一対の平面部と前記一対の側面部とはそれぞれ別体として設けられた部材から構成されており」との要件を充足すると認められる。
ウ.上記ア、イを総合すると、イ号物件は、本件特許発明の構成要件Bを充足すると認められる。なお、被請求人は、イ号物件が本件特許発明の構成要件Bを充足する点について争っていない。

(3)構成要件Cについて
ア.構成要件Cの記載の明確性について
(ア)特許発明の技術的範囲は、願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めるものであり(特許法第70条第1項)、その際には、明細書の記載及び図面を考慮して、特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するものである(同条第2項)。また、本件特許発明は、物の発明であるから、本件特許の特許請求の範囲の記載は、物の形状・構造等、物としての構成を特定する記載として解釈すべきものである。これらを前提として、本件特許発明の構成要件Cの記載を以下に検討する。

(イ)被請求人は、袋として見たとき、構成要件Cの「形成された開き面」という用語の意義は不明瞭であると主張している(上記6(2)参照)。そこで、「形成された開き面」という用語の意義を解釈するために、特許法第70条第2項に従って、明細書の記載及び図面を参酌する。

(ウ)本件特許明細書の段落0014には、次の記載がある。
「図3に示されるように、袋本体部の口部を開くために2つの側面21,21の折り線23,23の任意の一点P,Pをそれぞれ基点とし、該基点P,Pから折り線の口部端H,Hまでの折り線23,23をもとの折り方向とは逆に折り曲げて、逆の折り目23a,23aとなるように引き出しつつ折り込む。この折り込みによって、必然的に、袋本体部の4隅(この場合、4隅に切り込み15,15,15,15を入れているのでこの切り込みの4つの末端部D)から基点P,Pまでを結ぶ線は、袋の内側に凸となる4つの稜線17として形成される(図4)。この際、袋の内側が表出した開き面11a,11a,21a,21aが形成される。なお、本実施例では図4に示される線分GHの長さが折り込み長さL1の長さと同じになるように基点Pを定めている。この開き面は、本実施例では、後述する底部形成シート30との組み合せの関係から完全に開ききった形状とせず、180度以内の一定の折り込み角度θ1を保っている。しかしながら、場合によっては開き面11a,11aが略同一平面となるように、完全に開かせることも可能である。」(下線は当審で付与した。)
また、図4は次のとおりである。

(エ)本件特許明細書及び図面のこれら記載から見て、構成要件Cの「形成された開き面」とは、袋本体部の、底面部側の口部近傍の内側面11a,11a,21a,21aを意味することが明らかである。そして、「形成された」及び「開き」という語句は、この内側面11a,11a,21a,21aが、「2つの側面21,21の折り線23,23の任意の一点P,Pをそれぞれ基点とし、該基点P,Pから折り線の口部端H,Hまでの折り線23,23をもとの折り方向とは逆に折り曲げて、逆の折り目23a,23aとなるように引き出しつつ折り込」んだ場合には、袋本体部が開かれるような形態で外向きに現れることを表す記載と認められる。
そうすると、「形成された開き面」という用語の意義は、物、すなわち、袋として見たときに明瞭である。したがって、本件特許の特許請求の範囲の記載をプロダクト・バイ・プロセス・クレームと解さなければ、用語の意義が不明瞭である旨の、被請求人の主張(上記6(2)及び6(4)の前半部参照)は、失当であり、採用できない。

(オ)次に、構成要件Cの「一対の側面部の折り線の任意の一点をそれぞれ基点とし、該基点から口部端までの最初の折り線が、もとの折り方向とは逆に折り曲げられ、かつ、前記袋本体部の4隅からこの基点までを結ぶ線を、袋の内側方向に凸となる稜線として折り込まれて」について、図4の記載などを参酌して検討する。
すると、物、すなわち、袋として見たときには、「一対の側面部の折り線の任意の一点をそれぞれ基点とし、該基点から口部端までの最初の折り線が、もとの折り方向とは逆に折り曲げられ」という記載は、側面部の折り線23上の基点Pから、口部端までの側面部中央縦方向の折り線、すなわち、基点Pから底面部までの折り線23aは、折り線23の折り方向(袋の内側方向に凸)とは逆の折り方向(袋の外側方向に凸)であることを意味することが明らかである。
同様に、物、すなわち、袋として見たときには、「前記袋本体部の4隅からこの基点までを結ぶ線を、袋の内側方向に凸となる稜線として折り込まれて」という記載は、基点Pから、底面部の隅まで延びる稜線17が、袋の内側方向に凸となる折り線であることを意味することが明らかである。

(カ)次に、構成要件Cの「…開き面に、前記底面部としての中央に折り線を有する四角形状の底面部形成シートがその周縁に熱シール部を形成して融着されている」について、図6、図9の記載などを参酌して検討する。
すると、物、すなわち、袋として見たときには、底面部を形成するシートは四角形状で、中央に折り線を有していること、及び底面部を形成するシートの周縁は、「開き面」である平面部材の袋内面側及び側面部材の袋内面側と貼り合わされており、その貼り合わせは、熱シールによって融着されたものであること、を意味することが明らかである。

(キ)以上のとおりであるから、構成要件Cの記載は、明細書の記載及び図面を参酌すれば、物、すなわち、袋の構成として明確である。

イ.イ号物件の構成要件Cの充足について
イ号物件の構成要件c1ないしc5を総合すると、イ号物件は、本件特許発明の構成要件Cを充足する。
なお、被請求人は、本件特許発明の「形成された開き面」は、製造方法を特定した構成と解するべきであるという点を除き、イ号物件が本件特許発明の構成要件Cを充足する点について争っていない。そして、本件特許発明の「形成された開き面」を、製造方法を特定した構成と解するのが妥当でないことは、上記ア(エ)で指摘したとおりである。

(4)被請求人のその他の主張について
ア.原出願の出願経過の参酌について
(ア)特許出願の審査時において、特定の製造方法によって製造された物であることを主張した結果、特許査定された等の格別な事情がある場合には、物の発明であっても、その技術的範囲は、特定の製造方法によって製造された物に限定して解釈されるべきである。しかしながら、請求人及び被請求人の主張の全趣旨に照らして、本件特許発明が、出願経過において特定の製造方法によって製造された物であることを主張した結果として特許査定された等の格別な事情があるとは認められない。

(イ)被請求人は、原出願は本件特許の関連出願である以上、その出願経過を参照して本件特許の権利範囲を検討すべきである旨主張する(上記6(3)参照)。しかしながら、関連出願であるとはいえ、原出願と本件特許の出願とは別個の出願であるから、本件特許の出願経過において、原出願の出願経過を参酌した主張をしている等の格別な事情がある場合を除き、本件特許発明の技術的範囲を検討する際に、原出願の出願経過を参酌すべき理由はない。そして、請求人及び被請求人の主張の全趣旨に照らして、本件特許の出願経過において、原出願の出願経過を参酌した主張をしている等の格別な事情があるとは認められない。そうすると、原出願は本件特許の関連出願である以上、その出願経過を参照して、本件特許の権利範囲を検討すべきである旨の被請求人の主張は、法令に基づかない被請求人独自の見解であるから、採用することができない。

(ウ)なお、念のため、原出願の出願経過について述べれば、平成14年1月30日付け手続補正書及び意見書は、平成13年12月4日付けの拒絶理由通知書において、「請求項1に『もとの折り方向とは逆に折り曲げて引き出すようにして形成された袋面を有し』と記載されているが、当該記載では折り線全てを引き出すことも含まれ、『自立袋』としての『開き面』の構成が不明確となる記載である。」と指摘されたことに対応してなされたものであり、「『自立袋』としての『開き面』の構成」、すなわち、物である「自立袋」の構成要件である「開き面」の構成を明確にするための補正及び意見である。したがって、当該補正及び意見を「原出願の特許発明を『製造方法により特定した物』に限定する主張」と解すべき理由はない。そして、該手続補正書で補正された請求項1の記載は、明細書及び図面の記載を参酌すれば、物それ自体を特定する記載として明瞭である。したがって、この点からも、原出願の特許発明を「製造方法により特定した物の発明」と解すべき理由はない。

イ.本件特許が無効であるとの主張について
被請求人は、本件特許は、公知技術に基づいて無効とされるべきものであるから、本件特許発明の技術的範囲の判断においては、このような事情も参酌すべきである旨主張する(上記6(4)参照)。しかしながら、特許が無効とされるべきものであるときは、その特許発明の技術的範囲の判断において、特許請求の範囲の記載とは異なる判断をすべきであるとか、特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈する際に、無効とされるべき理由を考慮すべきである等の法令は存在しない。したがって、本件特許が無効とされるべきものであるか否かにかかわらず、本件特許発明の技術的範囲の判断は同一にすべきものである。本件特許は、無効とされるべきものであるから、本件特許発明の技術的範囲の判断においては、その点を考慮すべきである旨の被請求人の主張は、法令に基づかない被請求人独自の見解であるから、採用することができない。
なお、被請求人が公知技術であるとして提出した乙第7号証ないし乙第12号証を参酌しても、本件特許発明が本件特許の出願時における公知技術であるとは認められないし、イ号物件が本件特許の出願時における公知技術であるとも認められない。

ウ.口頭審理について
被請求人は、「審判管殿が上記した内容についてご理解いただけない場合は、イ号をお持ちしてご説明申し上げますので、口頭審理を希望いたします」と述べている(判定答弁書10頁下から4?3行)。しかしながら、被請求人の主張は、その当否は別として、主張の内容自体に理解困難な点はないから、被請求人の主張が適法・妥当であるかを判断することに支障はない。したがって、本件判定において口頭審理を行う必要を認めない。

8 むすび
以上のとおりであって、イ号物件は、本件特許発明の構成要件をすべて充足するから、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属する。
よって、結論のとおり判定する。
 
判定日 2011-06-30 
出願番号 特願2005-301791(P2005-301791)
審決分類 P 1 2・ 1- YA (B65D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 一ノ瀬 覚高橋 裕一  
特許庁審判長 栗林 敏彦
特許庁審判官 熊倉 強
亀田 貴志
登録日 2009-10-16 
登録番号 特許第4390761号(P4390761)
発明の名称 自立袋  
代理人 石戸 孝則  
代理人 石橋 良規  
代理人 特許業務法人みのり特許事務所  
代理人 石川 泰男  

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