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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C10L
管理番号 1240088
審判番号 不服2007-30486  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-09 
確定日 2011-07-12 
事件の表示 平成 9年特許願第320600号「圧縮点火エンジンにおける排出物量低下剤としての混合アルカリ土類-アルカリ金属系の使用」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 8月18日出願公開、特開平10-219262〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成9年11月7日〔パリ条約による優先権主張 1997年2月7日 イギリス(GB)〕の出願であって、平成19年8月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年11月9日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、その後、平成22年7月23日付けで当審による拒絶の理由が通知され、前記当審による拒絶理由通知の指定期間内である平成22年12月27日に意見書とともに手続補正書が提出されたものである。

そして、本願請求項1?5に係る発明は、平成17年12月12日付けの手続補正、及び平成22年12月27日付けの手続補正により補正された明細書(以下、当該補正後の明細書を「本願明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】(a)基礎燃料を主要部で含みそして(b)燃料添加剤を少量であるが上記燃料が燃焼する結果として生じる粒状排出物の生成を低くするに充分な量で含む燃料組成物であって、該燃料添加剤が(i)カルシウム塩と(ii)ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つの金属の塩から成る塩混合物を含み、該金属塩のアニオンがスルホン酸塩、フェノラート、サリチル酸塩またはそれらの混合物の形態であり、該燃料添加剤が燃料組成物に与える全金属含有量が50ppm未満である燃料組成物。」

2.当審による拒絶の理由
平成22年7月23日付けの当審による拒絶の理由は、理由2として『本件出願の請求項1?5に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1?5に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。』という理由を含むものであって、当該「刊行物1」として「英国特許出願公開第2248068号明細書」を提示しているものである。

3.引用文献及びその記載事項
当審による拒絶の理由において引用された上記「刊行物1」は、本願優先権主張日前に頒布された刊行物であって、和訳にして、次の記載がある。

摘記1a:請求項1?3、7?10、16?17及び23
「1.次の組成からなる(comprising)組成物
(a)アルカリ金属の化合物
(b)周期律表の2a族金属の化合物、及び
(c)周期律表の1b、3b、4b、5b、6b、7b又は8族から選ばれる遷移金属の化合物。
2.アルカリ金属がナトリウム又はカリウムである、請求項1に記載の組成物。
3.2a族金属がカルシウム又はバリウムである、請求項1又は2に記載の組成物。…
7.カリウム、カルシウム及び鉄の化合物からなる(comprises compound of)、請求項1?4の何れか一つに記載の組成物。
8.少なくとも一つの金属化合物が有機酸の金属塩である、請求項1?7の何れか一つに記載の組成物。
9.塩のアニオンが、カルボン酸又は無水カルボン酸から誘導されたものである、請求項8に記載の組成物。
10.塩のアニオンが、フェノール、硫化フェノール、又はスルホン酸から誘導されたものである、請求項8に記載の組成物。…
16.ディーゼル油、ジェット燃料、暖房油又は潤滑油、並びに請求項1?15の何れか一つに記載の組成物からなる、油組成物。
17.成分(a)、(b)、及び(c)の各々が、1?10000ppmの割合で存在する、請求項16に記載の組成物。…
23.燃料油における煙及び/又は粒状物の排出抑制剤としての、請求項1?15の何れか一つに記載の組成物の使用。」

摘記1b:第4頁第18行?第5頁第3行
「カルボン酸は、例えば、次のものである:
i)次式の酸:
R-COOH
ここでRは、水素、或いは置換又は非置換のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、又はアリール基である。このような酸の例には、…サリチル酸、…が含まれる。」

摘記1c:第12頁第26行?第13頁第5行
「金属化合物の各部類は、燃料油に添加された場合に、各金属が1?10000ppm、より好ましくは5?1000、そして、さらに好ましくは5?100ppmの範囲で含まれるような割合で添加剤に存在するのが好ましく、金属の全割合は、それ故、3?30000、15?3000及び15?300ppmで、燃料油に存在するのが好ましい。」

摘記1d:第15頁第23行?第16頁第25行
「実施例2 …
燃料には実施例1で使用されたものと同様なものが使用され、次のように処方された:
(a)9.5%のカルシウムを含む過塩基性硫化カルシウムフェネートのカルシウム炭酸塩。(燃料のカルシウム含有量:0、100及び200ppm。)
(b)10%の鉄を含む高分子量のカルボン酸の鉄塩。(燃料の鉄含有量:0、100及び200ppm。)
(c)8%のカリウムを含む中性スルホン酸カリウム。(燃料のカルシウム含有量:0、100及び200ppm。)
…試験の最後に、フィルター用紙を再度秤量し、紙片当たりの増加をmg/試験として、粒状物係数(particulate coefficient)を得た。
結果は表2に示す。」

摘記1e:第19頁第2表
「EXPT.No. Ca(ppm) Fe(ppm) K(ppm) … SMOKE SMOKE PART.COEFF.
(BOSCH) (HARTRIDGE)
ED01 0 0 0 … 1.8 17 241
ED02 200 0 200 … 1.0 9 234
ED03 0 0 200 … 2.1 19 314
ED04 200 200 200 … 1.2 11 277 」

訳註:刊行物1の原語における「comprising」及び「comprise ... of」の和訳については、「comprise」の場合には「include」の意味合い、すなわち、「?を含む」の意味合いが強く、「comprise of」の場合には「consist of」又は「be composed of」の意味合い、すなわち、「?からなる」の意味合いが強いが、摘記1aの和訳に際しては、何れも、「?からなる」との訳語で統一した。また、摘記1eの「PART.COEFF.」については、摘記1dの「粒状物係数(particulate coefficient)」を意味するものと解する。

4.刊行物1に記載された発明
刊行物1の「7.カリウム、カルシウム及び鉄の化合物からなる…組成物。…8.少なくとも一つの金属化合物が有機酸の金属塩で…9.塩のアニオンが、カルボン酸…から誘導されたもの…10.塩のアニオンが、フェノール、…又はスルホン酸から誘導されたもの…16.ディーゼル油、ジェット燃料、暖房油又は潤滑油、並びに請求項1?15の何れか一つに記載の組成物からなる、油組成物。…23.燃料油における煙及び/又は粒状物の排出抑制剤としての、請求項1?15の何れか一つに記載の組成物の使用。」との記載(摘記1a)、及び「金属の全割合は…15?300ppmで、燃料油に存在する」との記載(摘記1c)からみて、刊行物1には、
『ディーゼル油又はジェット燃料、並びにカリウム、カルシウム及び鉄の化合物からなる請求項7の組成物からなる請求項16の油組成物であって、請求項7の組成物は燃料油における煙及び/又は粒状物の排出抑制剤として使用され、請求項7の金属化合物は、塩のアニオンが、カルボン酸、フェノール又はスルホン酸から誘導されたものである、有機酸の金属塩であり、金属の全割合は15?300ppmで、燃料油に存在する、油組成物。』についての発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

5.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「ディーゼル油又はジェット燃料、並びに…請求項7の組成物からなる請求項16の油組成物」は、これに使用される「請求項7の組成物」の使用量が「金属の全割合で15?300ppm」という少量なものであり、その「ディーゼル油又はジェット燃料」は、基礎燃料として主要部を占めているものと解されることから、本願発明の「(a)基礎燃料を主要部で含みそして(b)燃料添加剤を少量…含む燃料組成物」に相当し、
引用発明の「請求項7の組成物は燃料油における煙及び/又は粒状物の排出抑制剤として使用」は、その「請求項7の組成物」が「燃料油における…粒状物の排出抑制剤として使用」できる程度の量で含まれるものであると解されることから、本願発明の「(b)燃料添加剤を…燃料が燃焼する結果として生じる粒状排出物の生成を低くするに充分な量で含む」に相当し、
引用発明の「カリウム、カルシウム及び鉄の化合物からなる請求項7の組成物」は、引用発明において「請求項7の化合物は、…有機酸の金属塩」であるとされていることから、本願発明の「該燃料添加剤が(i)カルシウム塩と(ii)…カリウム…から成る群から選択される少なくとも1つの金属の塩から成る塩混合物」と対応し、
引用発明の「請求項7の金属化合物は、塩のアニオンが、カルボン酸、フェノール又はスルホン酸から誘導されたものである、有機酸の金属塩」は、摘記1bの「カルボン酸は、…i)次式の酸:R-COOH ここでRは、…置換…の…アリール基である。このような酸の例には、…サリチル酸、…が含まれる。」との記載からみて、引用発明の「カルボン酸」には「サリチル酸」が含まれているものと解され、また、一般に「フェノラート」は、フェノールのプロトンが失われたアニオンを意味することからみて、引用発明の「フェノール…から誘導された」には「フェノラート」が含まれているものと解されるから、本願発明の「該金属塩のアニオンがスルホン酸塩、フェノラート、サリチル酸塩またはそれらの混合物の形態」に相当し、
引用発明の「金属の全割合は15?300ppmで、燃料油に存在する」は、本願発明の「該燃料添加剤が燃料組成物に与える全金属含有量が50ppm未満である」という数値範囲と、「15以上50ppm未満」の数値範囲で重複するものである。
そうしてみると、本願発明と引用発明は、『(a)基礎燃料を主要部で含みそして(b)燃料添加剤を少量であるが上記燃料が燃焼する結果として生じる粒状排出物の生成を低くするに充分な量で含む燃料組成物であって、該燃料添加剤が(i)カルシウム塩と(ii)カリウムなどから成る少なくとも1つの金属の塩から成る塩混合物を含み、該金属塩のアニオンがスルホン酸塩、フェノラート、サリチル酸塩またはそれらの混合物の形態であり、該燃料添加剤が燃料組成物に与える全金属含有量が15以上50ppm未満である燃料組成物。』という点において一致し、
燃料添加剤としての「(i)カルシウム塩と(ii)カリウムなどから成る少なくとも1つの金属の塩から成る塩混合物」の絶対組成が、本願発明においては、「(i)カルシウム塩と(ii)ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つの金属の塩から成る塩混合物」であるのに対して、引用発明においては、「カリウム、カルシウム及び鉄の金属塩」である点においてのみ相違している。

6.判断
上記相違点について検討する。
摘記1eに示されるように、刊行物1には、Ca、Fe及びKを0ppmの量で燃料油に配合した「ED01」の具体例における粒状物係数が「241」であり、Ca、Fe及びKを200ppmの量で燃料油に配合した「ED04」の具体例における粒状物係数が「277」であるのに対して、Ca及びKを200ppm並びにFeを0ppmの量で燃料油に配合した「ED02」の具体例における粒状物係数が「234」になること、すなわち、粒状物の排出量を低減するためには、Feの含有量を少なめ(0ppm)にした方が好ましいことまでもが記載されている。
そうしてみると、引用発明の「カリウム、カルシウム及び鉄の化合物からなる…金属塩」を、刊行物1のCa及びKを200ppm並びにFeを0ppmの量で燃料油に配合した「ED02」の具体例に基づいて、「カリウム及びカルシウムの化合物からなる…金属塩」に変更すること、すなわち、本願発明の「(i)カルシウム塩と(ii)ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つの金属の塩から成る塩混合物」という発明特定事項を満たす絶対組成のものに変更することは、当業者にとって格別困難なことではない。
そして、引用発明の金属塩のうち、鉄塩の配合量を0ppmにすることの効果については、刊行物1の表2のED02とED04の具体例における比較実験データによって明確かつ十分に示されており、なおかつ、本願明細書の発明の詳細な説明に記載された比較実験データを参酌しても、鉄塩の有無によって格別予想外の顕著な効果が得られることが明確かつ十分に示されているものでもないから、本願発明に、刊行物1の表2に示された結果を凌駕する格別予想外の顕著な効果があるとは認められない。
なお、当審による拒絶の理由の通知においては、『本願明細書の段落0029の「本発明の組成物に、更に…追加的成分…を含有させることも可能である」との記載』からみて、本願発明においては「鉄」などの他の金属塩を含み得る場合が排除され得ない旨を指摘したところ、本願明細書の段落0029の記載は、平成22年12月27日付けの手続補正による補正後においても、更に追加的成分を含有させることも可能であるとされており、しかして、本願明細書の発明の詳細な説明の記載、及び平成22年12月27日付けの意見書の主張を精査しても、鉄塩の有無について、格別の技術上の意義があると認めるに足る程度の技術的な裏付けないし根拠は見当たらない。
また、摘記1aの「(comprise ... of)」の和訳について、これを「?からなる」ではなく、「?を含む」であると解釈した場合においても、本願発明は、上記のとおり「更に追加的成分を含有させることも可能」とされているものであり、しかも、刊行物1に記載された「ED02」の具体例がCa及びKのみからなり、同じく「ED04」の具体例がCa、Fe及びKのみからなる絶対組成の組成物であることから、上記和訳の如何によって、上記相違点についての判断が左右されるものではない。

7.平成22年12月27日付けの意見書の主張について
審判請求人は、平成22年12月27日付けの意見書において、『英国特許出願公開第2248068号明細書(以下引例1という)には、アルカリ金属塩、周期律表第2族金属の塩および遷移金属塩を含む組成物(請求項1)、アルカリ金属としてカリウム等(請求項2)、第2族金属としてカルシウムまたはバリウム(請求項3)、遷移金属としてコバルト等(請求項4)が記載されているものの、遷移金属を含まない本発明の添加剤は記載も示唆もされていない。』と主張しているが、刊行物1には、摘記1eの「ED02」の具体例に示されるように、金属塩としてカルシウム塩及びカリウム塩のみを使用した場合の具体例が示されていることから、当該第一の主張については、これを採用できない。
また、審判請求人は、同意見書において、『引例1には好適な金属の全割合として15?300ppm(公報第13頁第4-5行)が記載されている。しかしながら、具体的には200ppmのカルシウム塩と177ppmのカリウム塩を含む燃料組成物が記載されおり(実施例2)、カルシウム塩の含量200ppmのみでも本発明の50ppm未満の4倍である。このように、引例1は低レベルの添加量で得られる本発明の有利な効果には及ばない効果しか示し得ないことを過小評価すべきではないと考える。』と主張しているが、刊行物1に好適な金属の全割合として記載されている「15?300ppm」の数値範囲内で、その最適化を図ることは、当業者にとって通常の創作能力の発揮の範囲内であり、本願発明において「50ppm未満」としたことによって、格別予想外の臨界的な効果が生じ得ていると認めるに足るような比較実験データないし科学的な説明が、本願明細書の発明の詳細な説明に明確かつ十分に記載されているものでもないことから、当該「50ppm未満」という数値範囲の技術的な意義を客観的に評価するに至らず、当該第二の主張についても、これを採用できない。
さらに、審判請求人は、同意見書において、『引例1の組成物は人体に有害な金属である遷移金属が必須であり、本発明の無害な金属と顕著に異なる。加えて、同じく有害なバリウムがコバルトと共に、好適な金属として挙げられており(公報第3頁23行-第4頁第5行)、当業者が引例1に基づいてカルシウム塩、カリウム塩を選択したとしても、敢えて好適なバリウム、コバルトに替えて本発明のマグネシウムを選択する動機付けはないと考える。』と主張しているが、引用発明は、摘記1aの請求項7及び23の記載から認定したように、「カリウム、カルシウム及び鉄の化合物」のみからなる組成物を粒状物の排出抑制剤として使用するものであって、バリウムやコバルトを使用するものはなく、しかして、本願発明は、必ずしもマグネシウムを使用する場合に限られるものでもないことから、当該第三の主張についても、これを採用できない。

8.まとめ
以上総括するに、本願発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、当審による理由2の拒絶の理由を解消し得ないものであり、その余の理由及びその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-01-31 
結審通知日 2011-02-08 
審決日 2011-02-22 
出願番号 特願平9-320600
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C10L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 近藤 政克  
特許庁審判長 西川 和子
特許庁審判官 木村 敏康
松本 直子
発明の名称 圧縮点火エンジンにおける排出物量低下剤としての混合アルカリ土類-アルカリ金属系の使用  
代理人 特許業務法人小田島特許事務所  
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