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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1240117 |
審判番号 | 不服2008-24210 |
総通号数 | 141 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-09-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-09-22 |
確定日 | 2011-07-13 |
事件の表示 | 特願2004-129471「ファイルのコピー・オン・ライトを実施する方法、システム、およびコンピュータ・プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年11月18日出願公開、特開2004-326801〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯・本願発明 本願は、平成16年4月26日(パリ条約による優先権主張平成15年4月29日、アメリカ合衆国)の出願であって、その特許請求の範囲に記載された発明は、平成20年9月22日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものと認める。 そして、その請求項1に係る発明(以下、本願発明という。)は、以下のとおりである。 「コンピューティング環境でコピー・オン・ライトを実施する方法であって、 (i)ファイルのデータのブロックを修正のために物理記憶装置から読み取るのに使用される第1仮想ブロック-物理ブロック・マッピングを実行するのに第1マッピング・テーブルを使用することと、 (ii)前記ファイルの前記データの修正されたブロックを物理記憶装置に書き込むのに使用される第2仮想ブロック-物理ブロック・マッピングを実行するのに第2マッピング・テーブルを使用することであって、データの前記ブロックのコピー・オン・ライトが、単一の書込動作を使用して達成される、前記使用することと を含む方法。」 2.引用例記載の発明 原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-175700号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。 「【0002】 【従来の技術】近年、情報化の重要性が認識されるにつれ、データベースの重要性が増してきている。特に、最近、他メーカの機種同士を組み合わせてローカル・エリア・ネットワーク(LAN)やワイド・エリア・ネットワーク(WAN)等のコンピュータネットワークを構成する、いわゆるオープンシステムの構築が盛んになっているが、このオープンシステムにおいても、データベースが必須要素となっている。 【0003】データベースシステムにおいては、信頼性が重んじられ、このため電源断等のシステム障害(System Failure) やトランザクション障害(Transaction Fialure) などの種々の障害が発生しても、データベースの論理的一貫性を保つことが要求される。 【0004】このような、データベースシステムの信頼性制御方式として、シャドウページ方式が知られている。これは、トランザクションがデータベースを更新する際、更新結果を更新前の情報の格納場所とは異なる新しい場所に格納する方式である。 【0005】データベースは、その論理的構成において複数の固定長のページ(論理ページ)から構築されており、各論理ページのデータは実際には物理的な記憶媒体上の該論理ページと同一サイズの一般にブロックまたはスロットと呼ばれる物理ページに格納される。このため、論理ページと物理ページの対応関係(マッピング情報)を有するページテーブル(ページマッピングテーブル)が設けられる。 【0006】シャドウページ方式においては、上述したように、各トランザクションにおいてデータベースの更新が行われる毎に、最新のデータが格納されているページ(カレントページ)と更新前のデータが格納されているページ(シャドウページ)が生成される。このため、上記ページテーブルもカレント版とバックアップ版の2つが作成される。そして、これらについても、不揮発性の2次記憶媒体上に格納される。通常、これらのページテーブルも、複数のブロックに分割されて、2次記憶上に格納される。尚、このブロックは、主記憶と該2次記憶との間のデータ転送単位である。 【0007】図17は、このような従来のシャドウページ方式を説明する模式図である。この図に示す例は、あるトランザクションが論理ページnを更新する場合の例である。このトランザクションの実行開始前の状態では、カレント版ページテーブルの論理ページnのエントリ位置のポインタP_(C)とバックアップ版ページテーブルの論理ページnのエントリ位置のポインタP_(B)は、共に物理ページiを指している(同図(a) 参照)。 【0008】次に、上記トランザクションの実行が開始され、論理ページnの更新が開始されると、不図示のデータ格納用2次記憶から論理ページnに対応する新たな物理ページとして未使用の物理ページjが獲得され、この物理ページjに更新後の内容が書き込まれる。このため、カレント版ページテーブルにおいて論理ページnに対応するカレントページポインタP_(C)は物理ページjを指す値に変更される。また、このときバックアップページポインタP_(B)の指す物理ページiはシャドウページとなる(同図(b) 参照)。 【0009】そして、このトランザクションが正常終了し、物理ページjに最新データが反映されると、バックアップ版ページテーブルの論理ページnに対応するバックアップページポインタP_(B)に上記カレントページポインタP_(C)の値がコピーされ、両ポインタP_(B),P_(C)は共に物理ページjを指すようになる。これにより、上記シャドウページすなわち物理ページiは削除される。 【0010】このように、シャドウページ方式においては、ページテーブルをカレント版とバックアップ版の2つ持ち、トランザクションによって論理ページnが更新されている間、更新前の内容がシャドウページ(物理ページi)によって保存される。また、このシャドウページを指すポインタもバックアップ版ページテーブルに保持されているため、トランザクション障害が発生しても、バックアップ版ページテーブルの内容をカレント版ページテーブルにコピーすることによりシャドウページを最新の物理ページとして扱い、該トランザクションを無効すとることができ、データベースの論理的一貫性を保つことができる。」 ここで、上記記載事項を技術常識に照らせば、以下のことがいえる。 (1)上記記載事項中の「シャドウページ方式」は、「コンピューティング環境でデータのブロックの修正処理を実施する方法」の一種である。 (2)上記「シャドウページ方式」における論理ページnのデータのブロックの修正処理は、「論理ページnに物理ページi(修正前のデータのブロックが格納されている物理ページ)が対応付けられたマッピングテーブル」を使用して「データのブロックの読み取りのためのマッピング」を実行し、物理的な記憶媒体から修正前のデータのブロックを読み取り、「論理ページnに物理ページj(修正後のデータのブロックを書き込むべき物理ページ)が対応付けられたマッピングテーブル」を使用して「データのブロックの書き込みのためのマッピング」を実行し、物理的な記憶媒体に修正後のデータのブロックを書き込む、といった手順で行われる。 (3)上記データのブロックの修正処理は、単一の書込動作を使用して達成される。 したがって、引用例には、次の発明(以下、「引用例記載発明」と呼ぶ。)が記載されているといえる。 「コンピューティング環境でデータのブロックの修正処理を実施する方法であって、 (i)データのブロックを修正のために物理的な記憶媒体から読み取るのに使用される『データのブロックの読み取りのためのマッピング』を実行するのに『論理ページnに物理ページi(修正前のデータのブロックが格納されている物理ページ)が対応付けられたマッピングテーブル』を使用することと、 (ii)前記データの修正されたブロックを物理的な記憶媒体に書き込むのに使用される『データのブロックの書き込みのためのマッピング』を実行するのに『論理ページnに物理ページj(修正後のデータのブロックを書き込むべき物理ページ)が対応付けられたマッピングテーブル』を使用することであって、データの前記ブロックの修正処理が、単一の書込動作を使用して達成される、前記使用することと を含む方法。」 3.対比 本願発明と引用例記載発明を対比すると、以下の対応関係が認められる。 (1)引用例記載発明の「物理的な記憶媒体」は、本願発明の「物理記憶装置」に相当する。 (2)引用例記載発明の「データのブロックの読み取りのためのマッピング」は、本願発明の「第1仮想ブロック-物理ブロック・マッピング」に相当する。 (3)引用例記載発明の「論理ページnに物理ページi(修正前のデータブロックが格納されている物理ページ)が対応付けられたマッピングテーブル」は、本願発明の「第1マッピング・テーブル」に相当する。 (4)引用例記載発明の「データのブロックの書き込みのためのマッピング」は、本願発明の「第2仮想ブロック-物理ブロック・マッピング」に相当する。 (5)引用例記載発明の「論理ページnに物理ページj(修正後のデータブロックを書き込むべき物理ページ)が対応付けられたマッピングテーブル」は、本願発明の「第2マッピング・テーブル」に相当する。 (6)引用例記載発明の「データのブロックの修正処理」と本願発明の「コピー・オン・ライト」とは、「物理記憶装置上のデータのブロックに対する修正を伴う処理」である点で共通する。 したがって、本願発明と引用例1記載発明の間には、以下の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「コンピューティング環境で物理記憶装置上のデータのブロックに対する修正を伴う処理を実施する方法であって、 (i)データのブロックを修正のために物理記憶装置から読み取るのに使用される第1仮想ブロック-物理ブロック・マッピングを実行するのに第1マッピング・テーブルを使用することと、 (ii)前記データの修正されたブロックを物理記憶装置に書き込むのに使用される第2仮想ブロック-物理ブロック・マッピングを実行するのに第2マッピング・テーブルを使用することであって、データの前記ブロックの物理記憶装置上のデータのブロックに対する修正を伴う処理が、単一の書込動作を使用して達成される、前記使用することと を含む方法。」である点 (相違点1) 本願発明の「物理記憶装置上のデータのブロックに対する修正を伴う処理」は、「コピー・オン・ライト」であるのに対し、引用例記載発明の「物理記憶装置上のデータのブロックに対する修正を伴う処理」は、「コピー・オン・ライト」ではない点。 (相違点2) 本願発明の「データのブロック」は「ファイルのデータのブロック」であるのに対し、引用例記載発明の「データのブロック」は「ファイルのデータのブロック」であるとは限らない点。 4.当審の判断 (1)上記相違点について ア.(相違点1)について 以下の事情を勘案すると、引用例記載発明の「物理記憶装置上のデータのブロックに対する修正を伴う処理」を、「コピー・オン・ライト」とすることは、当業者が容易に推考し得たことというべきである。 (ア)本願明細書の【技術分野】や【背景技術】の欄の記載や、平成22年10月28日付けの審尋に添付した前置報告書に引用された特開平7-152641号公報の記載、今回新たに提示する特開平6-19787号公報の記載、等から見て、「コピー・オン・ライト」は、「物理記憶装置上のデータに対する修正を伴う処理」として周知である。 (イ)コンピュータを利用して各種処理を行う技術分野においては、ある用途の処理に使用されている方法を別の用途の処理に適用することはごく普通に行われていることである。 (ウ)上述したように、引用例記載発明の「データのブロックの修正処理」と本願発明の「コピー・オン・ライト」とは、「物理記憶装置上のデータのブロックに対する修正を伴う処理」である点で共通するから、両者は近接した技術分野に属しているということができ、また、引用例記載発明の方法が、上記周知の「コピー・オン・ライト」でも有用な場合があることは、当業者に自明である。 (エ)以上によれば、引用例記載発明の方法を、「コピー・オン・ライト」に適用することは、当業者が容易に推考し得たことといえる。そして、そのことは、取りも直さず、引用例記載発明の「物理記憶装置上のデータのブロックに対する修正を伴う処理」を「コピー・オン・ライト」とすることが、当業者にとって容易であったことを意味する。 イ.(相違点2)について データを「複数のデータブロックを含むファイル」として扱うことはごく普通に行われていることであること、引用例記載発明ないしはその方法を「コピー・オン・ライト」に適用したものにおいても、データを「複数のデータブロックを含むファイル」として扱うのが有用である場合があることは当業者に自明であること、等の事情を勘案すると、引用例記載発明の「データのブロック」を「ファイルのデータのブロック」とすることも、当業者が容易に推考し得たことというべきである。 (2)本願発明の効果について 本願発明の構成によってもたらされる効果は、引用例の記載事項等から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、当業者が引用例記載発明に基いて容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-02-09 |
結審通知日 | 2011-02-15 |
審決日 | 2011-03-01 |
出願番号 | 特願2004-129471(P2004-129471) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 高瀬 勤 |
特許庁審判長 |
小曳 満昭 |
特許庁審判官 |
長島 孝志 池田 聡史 |
発明の名称 | ファイルのコピー・オン・ライトを実施する方法、システム、およびコンピュータ・プログラム |
代理人 | 太佐 種一 |
代理人 | 坂口 博 |
代理人 | 上野 剛史 |
代理人 | 市位 嘉宏 |