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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25B
管理番号 1240126
審判番号 不服2009-21550  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-11-06 
確定日 2011-07-13 
事件の表示 特願2007- 42691号「ヒートポンプシステム用室外熱交換器」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 9月 6日出願公開、特開2007-225275号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本件出願は、平成19年2月22日(パリ条約による優先権主張、2006年2月24日、大韓民国)の出願であって、平成21年2月4日付けで拒絶の理由が通知され、同年5月1日付けで意見書の提出とともに手続補正がなされたが、同年7月3日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、同年11月6日に本件審判の請求がされると同時に特許請求の範囲について手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

2 本件補正の適否及び本願発明
(1)本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲について補正をするものであって、補正前後の特許請求の範囲の請求項1について、補正箇所に下線を付して示すと次ののとおりである。

ア 本件補正前の請求項1
「【請求項1】
ケーシングに冷媒用伝熱管とブライン用伝熱管をそれぞれジグザグに形成して交互に垂直に配置し、前記冷媒用及びブライン用伝熱管に複数のフィンを垂直に設置してなる、ヒートポンプシステム用室外熱交換器。」

イ 本件補正後の請求項1
「【請求項1】
複数の冷媒用伝熱管および複数のブライン用伝熱管を、それぞれ個別の垂直面内においてジグザグに形成して、ケーシングに、前記冷媒用伝熱管および前記ブライン用伝熱管を交互に、各々の前記垂直面同士が互いに対向して並ぶように配置し、前記冷媒用及びブライン用伝熱管に複数のフィンを、前記垂直面とは交差する垂直方向に設置してなる、ヒートポンプシステム用室外熱交換器。」

(2)本件補正の適否
ア 請求人の主張
本件補正の目的について、請求人は次のとおり主張する。

「請求項1について、補正前の記載により意図していた構成をより明確にするために、本願の図1から読み取れる範囲で、冷媒用およびブライン用伝熱管の配管構成を特定する補正を行ないました。
より具体的には、補正前の請求項1においては、冷媒用およびブライン用伝熱管について、『それぞれジグザグに形成して交互に垂直に配置し』と記載していたため、各伝熱管のジグザグの方向が特定されておらず、その結果、『交互に垂直に配置』という記載により特定される構成が不明瞭になっておりました。
そこで、本願の図1に示された配管構成が明確に特定されるように、まず、各伝熱管のジグザグが個別の垂直面内に形成されていることに限定しました。この『垂直面』という仮想の要素は、本願の当初明細書には記載されておりませんが、図1から、各伝熱管のジグザグが、略平行に隣接して配列された仮想の垂直面内に形成されていることが自明に読み取れることから、請求項1において『垂直面』を導入する補正は、新規事項には該当しないものと確信致します。
なお、この『垂直』の語は、『直角』ではなく『鉛直』の意味で用いており、この点については、出願当初の明細書の記載(当初請求項1、段落0015第3行、第4行等)から一貫しております。
また、補正後の請求項1において、各伝熱管のジグザグが形成される垂直面同士が互いに対向して並ぶように配置が配置されていること、複数のフィンが、当該垂直面と交差する垂直方向に設置されていることを特定致しました。いずれも、図1から自明に読み取れる範囲の限定であると確信致します。」(審判請求書第3ページ第4行?第24行)

イ 検討
(ア)本件補正前の請求項1の「ケーシングに冷媒用伝熱管とブライン用伝熱管をそれぞれジグザグに形成して交互に垂直に配置し」との事項は、ジグザグに形成される冷媒用伝熱管による垂直面とジグザグに形成されるブライン用伝熱管による垂直面とが、同一の面の場合も異なる面の場合も含む記載となっており、どちらの場合を意図しているのか明らかでない。
そして、「冷媒用伝熱管とブライン用伝熱管とをそれぞれジグザグに形成して交互に垂直に配置し」との事項が、ジグザグに形成される冷媒用伝熱管による垂直面とジグザグに形成されるブライン用伝熱管による垂直面が異なる面の場合を意図しているとしても、次のa?cのいずれを意図しているのか明らかでない。
a ジグザグに形成された冷媒用伝熱管により形成される垂直面とブライン用伝熱管とにより形成される垂直面とにおいて、冷媒用伝熱管とブライン用伝熱管の位置を垂直方向にずらすことで、冷媒用伝熱管(特に、その水平部分)とブライン用伝熱管(特に、その水平部分)とが交互に垂直方向に配置されていること。
b ジグザグに形成された冷媒用伝熱管により形成される垂直面とジグザグに形成されたブライン用伝熱管により形成される垂直面とが対向して交互に配置されること。
c 上記a及びbの両方、すなわち、ジグザグに形成された冷媒用伝熱管により形成される垂直面とジグザグに形成されたブライン用伝熱管により形成される垂直面とにおいて、冷媒用伝熱管とブライン用伝熱管の位置を垂直方向にずらすことで、冷媒用伝熱管(特に、その水平部分)とブライン用伝熱管(特に、その水平部分)とが交互に垂直方向に配置されると共に、冷媒用伝熱管により形成される垂直面とブライン用伝熱管により形成される垂直面とが対向して交互に配置されること。

(イ)これに対して、本件補正は、ジグザグに形成された冷媒用伝熱管により形成される垂直面とジグザグに形成されたブライン用伝熱管により形成される垂直面とが対向して交互に配置されていること(上記b参照。)を明らかにするものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

(3)本願発明
以上のとおり、本件補正は適法と認められるから、本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正後の特許請求の範囲及び明細書並びに図面の記載からみて、上記(1)イの請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められる。

3 引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である特開2000-97509号公報(以下、単に「刊行物」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。

(1)段落【0001】
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、暖房機能と冷房機能を有する冷暖房エアコンにおいて、室外側熱交換器を温水により加熱できるようにした冷暖房エアコンであって、特に、暖房能力の向上を図った冷暖房エアコンに関する。」

(2)段落【0007】?【0009】
「【0007】本発明は、上記のような従来の問題を解決するためになされたもので、暖房時に、冷媒循環回路に設けた室外側熱交換器の能力が低下するのを防止し、又、施工に余分な手間がかからないようにする。又、冷媒循環回路と温水循環回路を独立させることにより、冷媒循環回路が複雑になるのを防止すると共に、温風が出るまでに余分な時間がかからないようにした冷暖房エアコンを提供することを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために本発明(請求項1)の冷暖房エアコンは、室内側熱交換器と室外側熱交換器とを連結する冷媒循環回路に、圧縮機、減圧器、アキュームレータ、及び冷暖房切り替え用の四方切り替え弁が設けられている冷暖房エアコンにおいて、水を加熱するための温水器と、この温水器からの温水を通す温水熱交換器とが温水循環回路で連結されている温水循環装置を備え、この温水循環装置の温水熱交換器が前記室外側熱交換器に沿設され、冷暖房エアコンの暖房運転時に温水循環装置を加熱運転して温水熱交換器を通る温水の熱交換で室外側熱交換器を加熱できるようにした。尚、本発明において、温水循環装置で用いられる水には、防錆剤、防蝕剤等を添加した不凍液及び熱媒油を含める。
【0009】従って、この冷暖房エアコンでは、暖房運転時、蒸発器として機能する室外側熱交換器を温水熱交換器を通る温水の熱交換で加熱することができる。従って、特に外気温がマイナス温度のような低外気温の場合でも室外側熱交換器の蒸発作用を促進させることができる。又、除霜運転の必要がなくなり、連続して暖房を行なうことができる。」

(3)段落【0015】?【0017】
「【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面により説明する。図1は実施の1形態である冷暖房エアコンの回路図である。
【0016】図において、Aは室内ユニットで、室内側熱交換器10が組み込まれている。この室内側熱交換器10は、冷房運転時に蒸発器として機能し、暖房運転時は凝縮器として機能する。
【0017】また、Bは室外ユニットで、室外側熱交換器11、圧縮機12、減圧器13、アキュームレータ14、冷暖房切り替え用の四方切り替え弁15が組み込まれている。そして、前記室内側熱交換器10と室外側熱交換器11とを連結して冷媒循環回路1aが構成され、この冷媒循環回路1aに圧縮機12、減圧器13、アキュームレータ14、冷暖房切り替え用の四方切り替え弁15が設けられることで冷暖房エアコン1が構成される。尚、室外側熱交換器11は、冷房運転時に凝縮器として機能し、暖房運転時は蒸発器として機能する。又、図中16は送風ファンで、室外側熱交換器11の外側に設けられ、外気に向けて送風する。」

(4)段落【0019】?【0025】
「【0019】又、前記室外ユニットBには温水循環装置2が組み込まれている。この温水循環装置2は、水タンク20、ポンプ21、燃焼器22を備えた温水器23、温水熱交換器24が温水循環回路2a上で順に設けられている。そして、この温水熱交換器24が前記冷媒循環回路1aの室外側熱交換器11の風上に沿設されている。この場合、室外側熱交換器11は冷媒管11aに放熱フィン11bが設けられ、温水熱交換器24は温水管24aに放熱フィン24bが設けられて、室外側熱交換器11と温水熱交換器24とがそれぞれ独立した状態で、室外側熱交換器11の風上に温水熱交換器24が並設するように沿設されている。尚、前記燃焼器22には燃料供給管22aが接続されている。
【0020】又、この温水循環装置2には、温水器23の燃焼器22をON(燃焼),OFF(消火)すると共に、ポンプ21をON(稼働),OFF(停止)する制御装置3が設けられている。そして、この制御装置3により、暖房運転時における加熱運転モードと運転停止モードの切り替えが行なわれる。
【0021】即ち、暖房運転時における加熱運転モードでは、燃焼器22及びポンプ21をONにして、温水熱交換器24を通る温水の熱交換で室外側熱交換器11を加熱できるようにする。又、運転停止モードでは、燃焼器22及びポンプ21をOFFにして、温水循環装置2を停止し、冷媒循環回路1aの運転のみにより暖房する。
【0022】従って、外気温がマイナス温度のような低外気温の場合(暖房負荷が大きいとき)には、加熱運転モードに設定して室外側熱交換器11の蒸発作用を促進し、外気温がそれほど低くないプラス温度の場合(暖房負荷が小さいとき)には、運転停止モードに設定して、冷媒循環回路1aのみによる暖房運転を行なうことができる。尚、このモード切り替えは、室外ユニットBに設けた外気温センサ4からの信号によって自動的に切り替わるようにしてもよいし、手動で切り替わるようにしてもよい。
【0023】又、制御装置3は、送風ファン16のON(運転),OFF(停止又は微風運転)についても制御するように接続され、前記加熱運転モードによる暖房運転時において、送風ファン16をOFFにするように設定されている。温水熱交換器24により室外側熱交換器11を加熱する場合、送風ファン16がONであると、送風によって温水熱交換器24からの放熱が放散し、熱交換効率が低下することになる。これに対し、送風ファン16をOFFにすると、送風が停止あるいは微風になるため、温水熱交換器24からの放熱が滞留し、室外側熱交換器11との熱交換効率を向上させることができる。
【0024】又、前記加熱運転モードで、温水循環装置2による温水の温度が十分に上昇するまでは送風ファン16を運転して空気からの吸熱を維持したまま温水からの吸熱が充分になるまで待ち、温水の温度が十分に上昇してから送風ファン16を停止又は微風運転することができる。
【0025】この場合、加熱運転モードでの暖房運転立上り時に、温水循環装置2による温水の温度が十分に上昇するまでは、送風ファン16による空気から吸熱し、温水循環装置2による温水の温度が十分に上昇した時点で温水循環装置2による温水から吸熱するため、加熱運転モードでの暖房運転の立上りが早くなる。又、冷媒循環回路1aのみで暖房を行なうモード(暖房負荷が小さいとき)から温水循環装置2を加熱運転するモード(暖房負荷が大きいとき)に切り替える過渡期の温度変化をスムーズにすることができる。」

(5)段落【0026】?【0030】
「【0026】次に、図2?図4は室外側熱交換器11と温水熱交換器24とを混在するように沿設した場合の実施の形態を示す側面図である。図2の形態では、風上側と風下側に独立して放熱フィン5a,5bが設けられ、この両放熱フィン5a,5bに対して室外側熱交換器11の冷媒管11aと温水熱交換器24の温水管24aとが跨るようにジグザグに蛇行して配管されたものとなっている。即ち、両放熱フィン5a,5bに対し、冷媒管11aと温水管24aとが跨ることによって室外側熱交換器11と温水熱交換器24とが混在するように沿設したものである。
【0027】又、図3の形態では、室外側熱交換器11と温水熱交換器24との共通の放熱フィン5を有し、この放熱フィン5に対し、風下側に冷媒管11aが上下方向に蛇行して配管され、風上側に温水管24aが上下方向に蛇行して配管されたものとなっている。即ち、共通の放熱フィン5を設けることによって室外側熱交換器11と温水熱交換器24とが混在するように沿設したものである。
【0028】又、図4の形態では、室外側熱交換器11と温水熱交換器24との共通の放熱フィン5を有し、この放熱フィン5に対し、冷媒管11a及び温水管24aが上下方向に交互に配管されたものとなっている。即ち、共通の放熱フィン5を設けると共に、冷媒管11a及び温水管24aを上下方向に交互に配管することによって室外側熱交換器11と温水熱交換器24とが混在するように沿設したものである。
【0029】以上のように、室外側熱交換器11と温水熱交換器24とが混在するように沿設すれば熱の伝達が促進されると共に、熱の伝達ムラがなくなり、熱交換効率を向上させることができる。
【0030】尚、本発明でいう沿設には、実施の第1形態(図1)で示したように室外側熱交換器と温水熱交換器が並設するようにした場合と、実施の第2?第4形態(図2?図4)で示したように室外側熱交換器と温水熱交換器とが混在するようにした場合の両方を含むものとする。」

(6)「図2?図4は室外側熱交換器11と温水熱交換器24とを混在するように沿設した場合の実施の形態を示す側面図である。」との記載(上記(5)段落【0026】)、「図3の形態では、室外側熱交換器11と温水熱交換器24との共通の放熱フィン5を有し、この放熱フィン5に対し、風下側に冷媒管11aが上下方向に蛇行して配管され、風上側に温水管24aが上下方向に蛇行して配管されたものとなっている。」との記載(上記(5)段落【0027】)及び図3からみて、冷媒管11aと温水管24aとが、図3の紙面と直交かつ図3の上下方向に延びる個別の面内において蛇行して形成されている、すなわち、冷媒管11aと温水管24aとが、それぞれ個別の垂直面内において蛇行して形成されている、ということができる。このとき、各々の前記垂直面同士が互いに対向して並んでいることは明らかである。
また、冷媒管11a及び温水管24aが備える共通の放熱フィン5は、図3の紙面と平行かつ図3の上下方向に設置されると共に図3の紙面と直交する方向に複数設置されている、すなわち、冷媒管11a及び温水管24aが備える複数の放熱フィン5は、前記垂直面とは交差する垂直方向に設置されている、ということができる。

(7)技術常識からみて、室外ユニットBがケーシングを有していることは明らかである。

上記(1)ないし(5)に摘示した事項並びに上記(6)ないし(7)で認定した事項をふまえると、刊行物には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「冷媒管および温水管を、それぞれ個別の垂直面内において蛇行して形成して、ケーシングに、前記冷媒管および前記温水管を、各々の垂直面同士が互いに対向して並ぶように配置し、前記冷媒管及び温水管に複数の放熱フィンを、前記垂直面とは交差する垂直方向に設置してなる、室外ユニット。」
4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「冷媒管」は、本願発明の「冷媒用伝熱管」に相当する。
以下同様に、
「温水管」は、「ブライン用伝熱管」に、
「蛇行して形成」は、「ジグザグに形成」に、
「放熱フィン」は、「フィン」に、
「室外ユニット」は、「ヒートポンプシステム用室外熱交換器」に、
それぞれ相当する。

したがって、両者の一致点及び相違点は、次のとおりと認められる。

<一致点>
「冷媒用伝熱管およびブライン用伝熱管を、それぞれ個別の垂直面内においてジグザグに形成して、ケーシングに、前記冷媒用伝熱管および前記ブライン用伝熱管を、各々の前記垂直面同士が互いに対向して並ぶように配置し、前記冷媒用及びブライン用伝熱管に複数のフィンを、前記垂直面とは交差する垂直方向に設置してなる、ヒートポンプシステム用室外熱交換器。」の点。

<相違点>
本願発明は、冷媒用伝熱管とブライン用伝熱管とがそれぞれ複数であり、冷媒用伝熱管およびブライン用伝熱管が交互に、各々の前記垂直面同士が互いに対向して並んでいるのに対し、
引用発明は、冷媒管(冷媒用伝熱管)と温水管(ブライン用伝熱管)とがそれぞれ複数でなく、このため、冷媒管および温水管は、各々の前記垂直面同士が互いに対向して並んでいるものの、交互に、各々の前記垂直面同士が互いに対向して並ぶものではない点。

5 当審の判断
(1)相違点ついて
引用発明の室外ユニットは、冷媒管および温水管を、それぞれ個別の垂直面内において蛇行して形成して、ケーシングに、前記冷媒管および前記温水管を、各々の垂直面同士が互いに対向して並ぶように配置したものである。
そして、引用発明は、燃焼器22及びポンプ21の運転をせず、冷媒循環路1aの運転のみにより暖房する運転停止モード(刊行物1の段落【0020】?【0025】、前記3(4)参照。)の際には、冷媒管は外気から吸熱して冷媒を蒸発させているところ、この冷媒管を複数とするかどうかは、かかる運転停止モードにおいて冷媒管が外気から吸熱すべき熱量や設置スペースに応じて適宜選択する設計事項である。
また、引用発明は、燃焼器22及びポンプ21を運転すると共に、冷媒循環路1aを運転する加熱運転モード(刊行物1の段落【0020】?【0025】、前記3(4)参照。)の際には、冷媒管は温水管の熱を吸熱して冷媒を蒸発させているところ、この冷媒管及び温水管を複数とするかどうかは、かかる加熱運転モードにおいて冷媒管が温水管から吸熱すべき熱量や設置スペースに応じて適宜選択する設計事項である。
その上、冷媒管に温水管の熱を吸熱させる際に、冷媒管及び温水管を交互に、各々の垂直面同士が互いに対向して並ぶように配置することは、従来周知の事項である(例えば、特公昭48-34267号公報の第3欄第30行?36行、第4欄第11行?第20行、第5欄第3行?第8行を参照のこと)。
以上をふまえると、引用発明において、冷媒管(冷媒用伝熱管)と温水管(ブライン用伝熱管)とをそれぞれ複数とし、冷媒管および温水管を交互に、各々の垂直面同士が互いに対向して並ぶものとすることは、当業者が容易になし得たことである。

(2)本願発明の効果について
本願発明の効果についてみても、引用発明及び周知の事項から十分に予測できる範囲内のものであって、顕著なものとはいえない。
なお、請求人は、「本願発明では、添付別紙の『本願発明の配管構造』において『外気導入方向』として矢印で示すように、ファンが空気を上から押し込む際にも、冷媒用およびブライン用伝熱管の間に熱伝達が良好になされる」と主張する(審判請求書第7ページ第1行?第3行)が、外気の導入方向は本願発明の特定事項ではないから、かかる主張は採用できない。

(3)小括
したがって、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-14 
結審通知日 2011-02-15 
審決日 2011-03-01 
出願番号 特願2007-42691(P2007-42691)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F25B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山村 秀政  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 鈴木 敏史
長崎 洋一
発明の名称 ヒートポンプシステム用室外熱交換器  
代理人 酒井 將行  
代理人 深見 久郎  
代理人 堀井 豊  
代理人 野田 久登  
代理人 森田 俊雄  
代理人 仲村 義平  

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