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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K
管理番号 1240128
審判番号 不服2009-23530  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-11-30 
確定日 2011-07-13 
事件の表示 特願2005-243309「スマートカード個人化のシステム及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月16日出願公開、特開2006- 72998〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯と本願発明
本願は、1997年4月14日を国際出願日とする特願平09-537290号の一部を平成17年8月24日(パリ条約による優先権主張1996年4月15日 米国、1996年11月22日 米国)に新たな特許出願としたものであって、平成19年9月26日付けで拒絶理由通知がなされ、平成20年4月2日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされ、同年10月2日付けで拒絶理由通知がなされ、平成21年4月7日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが、同年7月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年11月30日付けで審判請求がなされたものである。

本願の特許請求の範囲の請求項1乃至請求項8に係る発明は、平成20年4月2日付け及び平成21年4月7日付けでした手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至請求項8に記載されたとおりの事項により特定されるものと認められる。
そして、その請求項7に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次の事項により特定されるものである。
「カード所有者用パーソナル化データおよびパーソナル化手段用特性データを取得し、更に、上記特性データにより指定されるパーソナル化手段に対し上記パーソナル化データを転送してデータ担体を発行する手段、を備え、プログラムされた携帯型データ担体を発行するシステム。」

第2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平7-334631号公報(以下「引用文献」という。)には、図1及び図2と共に、次のように記載されている(下線は、参考のため、当審において付した。)。
A.「【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述したような同一カード上に種々の個人情報記録形態を備えたカードを発行する場合、カード形態として、多種多様のバリエーションが考えられる。例えば、カード発行の依頼先であるユーザの仕様によって、どの情報記録媒体を用い、どのような個人情報を記録させるかが異なっている。このため、今後益々カードの需要が増大すると予想される現在において、発行しようとする多種多様のカードの個々の情報記録媒体に所望の個人情報を記録させるためのカード発行処理作業が非常に煩雑になるといった問題がある。他の情報記録媒体と組み合わせたICカードを用いる場合、他の情報記録媒体の記録内容とIC記録部の記録内容とをどちらも特定個人に関する情報であるようにし、他方の記録処理は、一方の記録媒体の記録内容を、カードを識別する情報として用いることにより行われる。このように発行処理を行うには、発行処理機のシステム制御部において、カードの仕様毎に、それらに対応するように、上述のようなカード識別情報の認識方法といった、発行処理機における種々の稼動制御条件の設定を行わなくてはならず、非常に処理効率および処理精度が悪くなる。また、ICカードに対する書込み処理には、ICカードに対する仕様によっては、所望のICカードを発行するためにIC書込み装置に与える指示情報としての制御情報も異なってくることになり、やはりその設定作業が煩雑となる。そこで本発明は、個人情報記録媒体として複数の情報記録形態を備えた複数種のICカードに対し、効率的且つ正確に発行処理を行うことのできるICカード発行処理システムを提供することを目的とする。」

B.「【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の態様は、複数のIC書き込み手段と、該装置を制御する制御手段とを含んだ複数のICカード発行機を用いたICカード発行処理システムにおいて、ICカード発行パターンを生成するための情報と、個人情報とを用いてICカード発行パターンを生成する手段と、該発行パターンと、発行依頼先情報とを対応付けた顧客データとして格納する手段と、ICカードを発行する手段と、システム全体を制御するための制御手段とから構成され、該制御手段が、前記複数のICカード発行機の制御情報及び稼働状況を管理し、前記格納手段内の顧客データに基いて、発行処理に使用するICカード発行機を選択し処理を行わせるようにすることにより、ICカード発行処理の制御を行う機能を持たせたものである。
【0005】本発明の第2の態様は、上述の第1の態様を持ったシステムにおいて、発行依頼先情報が、カードの情報記録形態や記録される情報の種類を設定するようにしたものである。
【0006】本発明の第3の態様は、上述の第1ないし第2の態様を持ったシステムにおいて、さらに、ICカード発行パターンを生成する手段において、さらにICカード発行パターンを生成するための情報を作成する手段を含むようにしたものである。
【0007】本発明の第4の態様は、上述の第1ないし第3の態様を持ったシステムにおいて、ICカード発行パターンを生成するための情報が、発行処理時に生成される情報をカードに付与するために必要なICカード発行機制御情報を含むようにしたものである。
【0008】本発明の第5の態様は、上述の第1ないし第4の態様を持ったシステムにおいて、格納手段内のメモリの容量状況に応じてICカード発行パターンを生成し格納する数を制御するようにしたものである。
【0009】
【作用】本発明によれば、システムの制御手段において、格納手段に格納された複数種のカード発行パターンデータを管理し、該パターンデータ内に設定されているIカード発行機制御情報によって、それぞれのICカード発行処理に適応するよう制御された複数のICカード発行機の中から発行対象のICカードの発行処理に最適なICカード発行機を選定し、処理を行わせることができる。また、それぞれの発行機の稼働状況を把握し、格納手段のメモリ容量に応じて発行パターンの生成,格納数を制御することにより状況に応じた効率の良い発行処理が可能となる。」

C.「【0010】
【実施例】以下、本発明を図示する実施例に基づいて説明する。図1は本発明の一実施例を示すICカード発行処理システム全体を示すブロック図である。ここで、ICカード発行処理システムは、ICカード発行処理システム1内に、システム全体を制御する制御手段21と、発行パターンを発行依頼先に対応付けた顧客データとして格納する格納手段22と、複数のIC発行機として本実施例では4つのIC書き込み処理部31,41,51,61を有し、個人情報をIC部に書き込み、個人情報記録媒体としてのICカードを発行する機能をもったICカード発行機としてのシステムであり、個人情報配給装置71は、これら複数のIC書き込み処理部に対し個人情報を配給する機能を持った装置である。制御手段21と格納手段22,各IC書込み処理部31,41,51,61および個人情報配給装置71と各IC書込み処理部31,41,51,61とはそれぞれネットワークによって相互に接続されている。
【0011】IC書込み処理部31,41,51,61は、いずれもコンピュータを利用したシステムであり、本体部とデイスプレイと処理装置によって構成されている。本体部はパーソナルコンピュータ等のコンピュータ本体によって構成されており、デイスプレイ部は、この本体部の動作に関連した表示を行う機能を有する。また、処理装置はICカード用リーダライタ装置であり、本体部からの指示に基づいて、個々の媒体ICメモリにに対し直接的に情報の記録を行う機能を有する。なお、必要に応じ、キーボード等の入力機器やハードデイスク等外部記憶装置が接続されている。」

D.「【0012】ICカード形態以外の種々の情報記録形態の態様については、ICカードの発行を依頼するユーザの仕様によって異なるのが通常である。例えば、発行時に生成する情報を付与する場合、その付与条件(初期値、間隔等装置を稼働させるための制御情報)が必要となり、その他にも、カード識別情報の認識方法(磁気データ,光学データ等)、クロック周波数の切り換え、データ伝送の規格情報、処理エラー許容回数の設定、カード搬送条件等ICカード発行機を制御するための情報があり、これらを必要に応じてパラメータ等で設定した制御情報ファイルを用意する。また、実際のICカード発行パターンデータを生成するための情報であるひな形パターンファイルを用意し、前記パラメータファイルとひな形パターンファイルとをICカード発行処理システム1内の格納手段22に格納する。IC書き込み用情報として顧客から供給されるデータも、それぞれ個々のリーダライタ装置がICカードにアクセスするために利用するパターンファイルの記述書式が異なっている場合があるため、このような場合には、いったん実際のアクセスに用いるリーダライタ装置の書式に適合するよう書き換える作業として、ICカード発行パターンを生成するための情報を作成する手段、すなわちひな形パターンを作成する手段23をさらに設ける必要がある。IC書込み用情報として顧客から与えられたデータの入力/編集を行って、まずIC書込み用データを生成するためのひな形パターンを作成するひな形パターン作成手段23により、ひな形パターンファイルを作成する。また、前述したようなICカード発行機制御情報データについても、パラメータ設定等を行った制御情報ファイルを作成し、前記ひな形パターンファイルと前記制御情報ファイルとを一組にした顧客情報ファイルとして、IC発行パターン生成手段24へ供給する。
【0013】IC発行パターン生成手段24は、供給された顧客情報ファイルと、個人情報配給装置71から供給された個人情報を用いて、発行対象の各々ICカードに対する書込み処理データからなるICカード発行パターンファイルを生成し、格納手段22に供給し、顧客情報ファイル単位での管理を行う。なお、予め実際に生成する予定数の発行パターンを格納可能であるか否かをそのメモリ容量状況を考慮したうえで格納するよう制御することが好適である。例えば、メモリ使用可能容量が大きい場合は、すべて生成,格納し、容量が小さい場合は、例えば、分割して生成,格納するような措置をとるようにする。これにより、機能性は良いが容量が少ないメモリを用いた効率の良い処理が可能となる。。格納手段22に供給された発行パターンファイルは、発行依頼先と対応付けた顧客データとして格納され、管理される。」

E.「【0014】上述のようにしてIC書込み処理を行う準備が整い、ICカード発行処理システム1の制御部はICカードの発行機のIC書込み処理の作動開始を指示する。該発行処理システム1は複数、この実施例においては4種のIC書込み処理部31,41,51,61を有している。IC書き込み処理部31の細部については図2に示すように、ICカード発行処理制御部32、カード識別装置33、IC書込み装置であるICカード用リーダライタ装置34から構成され、さらに、これに図示しないエンボス加工処理装置、磁気記録処理装置、カラー印刷処理装置等も接続され、これら一連の工程を経てICカードの全発行処理を行うICカード発行機を構成している。前述の構成は、それぞれ他のIC書き込み処理部41,51,61においても同様である。
【0015】ICカード発行処理システム1の制御部21は、格納手段22に格納されている顧客情報である発行パターンファイルと、制御情報ファイルを用いて、複数種のICカードを対象とした発行機内で使用するIC書込み装置の制御条件の設定(クロック周波数切り換えのための情報、光学読み取り文字認識、磁気情報認識等カード識別情報の認識方法に関する情報といったカードの種類毎に異なる条件や、処理エラーの許容回数等の共通条件等)を行い、各顧客のカード仕様に適応可能なIC書込み装置の制御条件の制御を行うようにしておく。IC書込み処理に際しては、制御部21は、発行対象の顧客に対応するICカード発行パターンファイルを、選定した発行処理に適するIC書き込み処理部31に対し、供給するようにする。IC書き込み処理部31内のICカード発行処理制御部32では、供給されたデータを用い、ICカード用リーダライタ装置33に処理を行わせるよう、制御を行う。これにより、発行対象のICカードの書き込み処理が行われ、その他の処理(エンボス,磁気記録等)は、前出の顧客情報に基づいて順次行われる。ICカード発行処理システム全体の制御部21は、複数のICカード発行機の稼働状況を管理し、発行機の制御情報を加味した上で、常に発行処理に最適なICカード発行機を選択するように制御を行う。具体的には、IC書き込み処理部31と41が同一設定条件のもとに制御されている場合、これら2つの書き込み処理部の稼働状況により、発行処理に余裕のある書き込み処理部を適宜選択し、発行処理を行わせるよう、カード搬送部および発行パターン供給先の制御を行う。」

F.ICカード発行処理システム全体を示すブロック図である図1には、発行パターン生成手段24の出力が格納手段22に供給され、前記格納手段22の出力が制御手段21に供給されることが、図示されている。


a.Bに「本発明の第1の態様は、複数のIC書き込み手段と、該装置を制御する制御手段とを含んだ複数のICカード発行機を用いたICカード発行処理システムにおいて、ICカード発行パターンを生成するための情報と、個人情報とを用いてICカード発行パターンを生成する手段と、該発行パターンと、発行依頼先情報とを対応付けた顧客データとして格納する手段と、ICカードを発行する手段と、システム全体を制御するための制御手段とから構成され」と、Cに「ICカード発行処理システムは、ICカード発行処理システム1内に、システム全体を制御する制御手段21と、発行パターンを発行依頼先に対応付けた顧客データとして格納する格納手段22と、複数のIC発行機として本実施例では4つのIC書き込み処理部31,41,51,61を有し、個人情報をIC部に書き込み、個人情報記録媒体としてのICカードを発行する機能をもったICカード発行機としてのシステムであり」と、Eには「該発行処理システム1は複数、この実施例においては4種のIC書込み処理部31,41,51,61を有している。IC書き込み処理部31の細部については図2に示すように、ICカード発行処理制御部32、カード識別装置33、IC書込み装置であるICカード用リーダライタ装置34から構成され、さらに、これに図示しないエンボス加工処理装置、磁気記録処理装置、カラー印刷処理装置等も接続され、これら一連の工程を経てICカードの全発行処理を行うICカード発行機を構成している。」と、それぞれ、記載されている。
ここで、Bの「複数のIC書き込み手段と、該装置を制御する制御手段とを含んだ複数のICカード発行機」、Bの「ICカードを発行する手段」、Cの「複数のIC発行機」、Cの「複数のIC発行機として」の「4つのIC書き込み処理部31,41,51,61」、Cの「個人情報をIC部に書き込み、個人情報記録媒体としてのICカードを発行する機能をもったICカード発行機」、及び、Eの「ICカード発行機を構成」している「ICカード発行処理制御部32、カード識別装置33、IC書込み装置であるICカード用リーダライタ装置34から構成」される「4種のIC書込み処理部31,41,51,61」は、すべて同じもの、すなわち、「ICカード発行機」を指していると認められる。よって、ICカード発行処理システムは、システム内に複数のICカード発行機を備えることが記載されている。
そして、Cの「個人情報をIC部に書き込み、個人情報記録媒体としてのICカードを発行する」の記載における、「個人情報」を書き込む「IC部」とは、「ICカード」のICを指すことは明らかである。
したがって、B、C、Eの前記記載から、引用文献には、
システム全体を制御する制御手段と、格納手段と、個人情報をICカードのICに書き込むことで個人情報記録媒体としてのICカードを発行する複数のICカード発行機とを備えるICカード発行処理システム、
が記載されている。

b.Dには「IC書き込み用情報として顧客から供給されるデータも、それぞれ個々のリーダライタ装置がICカードにアクセスするために利用するパターンファイルの記述書式が異なっている場合があるため、このような場合には、いったん実際のアクセスに用いるリーダライタ装置の書式に適合するよう書き換える作業として、ICカード発行パターンを生成するための情報を作成する手段、すなわちひな形パターンを作成する手段23をさらに設ける必要がある。」と記載されている。ここで、前記「IC書き込み用情報として顧客から供給されるデータ」とは、Cの「複数のIC発行機として本実施例では4つのIC書き込み処理部31,41,51,61を有し、個人情報をIC部に書き込み、個人情報記録媒体としてのICカードを発行する」から、顧客から供給される「個人情報」であると認められる。
そして、Eの「IC書き込み処理部31の細部については図2に示すように、ICカード発行処理制御部32、カード識別装置33、IC書込み装置であるICカード用リーダライタ装置34から構成され」の記載から、前記「リーダライタ装置」は、「IC書き込み処理部31」すなわちICカード発行機が有する装置である。したがって、Dの「IC書き込み用情報」を「実際のアクセスに用いるリーダライタ装置の書式に適合するよう書き換える作業」とは、「IC書き込み用情報」を前記「リーダライタ装置」を有する「ICカード発行機」に適合するよう書き換える作業であると云うことができる。
また、前記「IC書き込み用情報」とは、Cの「個人情報をIC部に書き込み、個人情報記録媒体としてのICカードを発行する」から、「個人情報」を指すと認められる。
してみれば、
ICカード発行パターンファイルは、個人情報をIC書き込みに利用するICカード発行機に適合するよう書き換えた、実際に、前記ICカード発行機に供給するデータである、
と認められる。

c.Dの「ICカード形態以外の種々の情報記録形態の態様については、ICカードの発行を依頼するユーザの仕様によって異なるのが通常である。例えば、発行時に生成する情報を付与する場合、その付与条件(初期値、間隔等装置を稼働させるための制御情報)が必要となり、その他にも、カード識別情報の認識方法(磁気データ,光学データ等)、クロック周波数の切り換え、データ伝送の規格情報、処理エラー許容回数の設定、カード搬送条件等ICカード発行機を制御するための情報があり、これらを必要に応じてパラメータ等で設定した制御情報ファイルを用意する。」、「前述したようなICカード発行機制御情報データについても、パラメータ設定等を行った制御情報ファイルを作成し、前記ひな形パターンファイルと前記制御情報ファイルとを一組にした顧客情報ファイルとして、IC発行パターン生成手段24へ供給する。」から、
制御情報ファイルは、情報記録形態の仕様やICカード発行機を制御するための情報を含むICカード発行機の制御情報のファイルである。

d.さて、Eには、「IC書込み処理に際しては、制御部21は、発行対象の顧客に対応するICカード発行パターンファイルを、選定した発行処理に適するIC書き込み処理部31に対し、供給するようにする。」と記載されている。一方、同じEには、「ICカード発行処理システム全体の制御部21は、複数のICカード発行機の稼働状況を管理し、発行機の制御情報を加味した上で、常に発行処理に最適なICカード発行機を選択するように制御を行う。具体的には、IC書き込み処理部31と41が同一設定条件のもとに制御されている場合、これら2つの書き込み処理部の稼働状況により、発行処理に余裕のある書き込み処理部を適宜選択し、発行処理を行わせるよう、カード搬送部および発行パターン供給先の制御を行う。」とも記載されている。
[(注)Eの前記「制御部21」の記載は“制御手段21”の明らかな誤記であると認められる。]
ここで、Eの前者の記載の直前には、「格納されている顧客情報である発行パターンファイルと、制御情報ファイルを用いて、複数種のICカードを対象とした発行機内で使用するIC書込み装置の制御条件の設定…(中略)…を行い、各顧客のカード仕様に適応可能なIC書込み装置の制御条件の制御を行うようにしておく。」と記載されている。この記載における「制御条件」による制御対象である「IC書込み装置」は、Eの「IC書き込み処理部31の細部については図2に示すように、ICカード発行処理制御部32、カード識別装置33、IC書込み装置であるICカード用リーダライタ装置34から構成され」から、「IC書き込み処理部」が有する「ICカード用リーダライタ装置」を指している。したがって、前記Eの前者の記載における「選定した発行処理」とは、「IC書き込み処理部」に供給する制御情報ファイルを用いて、ICカード用リーダライタ装置の制御条件を設定することにより、各顧客のカード仕様に適応するように選定した、前記「IC書き込み処理部」によるICカードの発行処理を云うと解される。してみれば、前記「選定した発行処理」は、「IC書き込み処理部(前記aの認定の通り、「ICカード発行機」を指すものである。)」に供給する制御情報ファイルに基づく制御条件の制御により特徴付けられるものと認められる。
そして、前記Eの後者の記載における「同一設定条件のもとに制御されている場合」とは、上記「複数種のICカードを対象とした発行機内で使用するIC書込み装置の制御条件の設定…(中略)…を行い」との記載から、同一の制御条件が設定されている場合を指すことは明らかである。したがって、前記後者の記載は、“制御手段21は、ICカード発行機に供給する制御情報ファイルの制御情報に基づく制御条件により発行処理に最適なICカード発行機を選択し、同一の制御条件が設定されている場合には、発行処理に余裕があるICカード発行機を選択する”ことを意味すると認められる。
さらに、Bには、「本発明によれば、システムの制御手段において、格納手段に格納された複数種のカード発行パターンデータを管理し、該パターンデータ内に設定されているIカード発行機制御情報によって、それぞれのICカード発行処理に適応するよう制御された複数のICカード発行機の中から発行対象のICカードの発行処理に最適なICカード発行機を選定し、処理を行わせることができる。」と記載されているから、引用文献には、設定されようとするICカード発行機制御情報によって、発行対象のICカードの発行処理に最適なICカード発行機を選定しようとすることが記載されている。
[(注)Bの前記「Iカード発行機制御情報」は“ICカード発行機制御情報”の明らかな誤記であると認められる。]

ところで、Eの「IC書き込み処理部31内のICカード発行処理制御部32では、供給されたデータを用い、ICカード用リーダライタ装置33に処理を行わせるよう、制御を行う。これにより、発行対象のICカードの書き込み処理が行われ」の記載から、「IC書き込み処理部」すなわち、ICカード発行機は「供給されたデータ」を用いて、ICカード用リーダライタ装置に「発行対象のICカードの書き込み処理」を行わせるものである。そして、前記「供給されたデータ」は、Eの前記記載の直前の「IC書込み処理に際しては、制御部21は、発行対象の顧客に対応するICカード発行パターンファイルを、選定した発行処理に適するIC書き込み処理部31に対し、供給するようにする。」との記載から、「発行対象の顧客に対応するICカード発行パターンファイル」のデータを指すものと認められる。したがって、引用文献には、供給されたICカード発行パターンファイルを用いて、ICカード発行機にICカードの書き込み処理を実行させることが記載されている。
以上から、引用文献には、
ICカード発行処理システムの制御手段は、IC書込み処理に際しては、ICカード発行パターンファイルを、ICカード発行機に供給する制御情報ファイルに基づく制御条件によって選定したICカード発行機に対して供給して、前記供給されたICカード発行パターンファイルを用いるICカードの書き込み処理を実行させる、
ことが記載されていると解される。

e.そして、Dの「IC発行パターン生成手段24は、供給された顧客情報ファイルと、個人情報配給装置71から供給された個人情報を用いて、発行対象の各々ICカードに対する書込み処理データからなるICカード発行パターンファイルを生成し、格納手段22に供給し、顧客情報ファイル単位での管理を行う。」、Eの「ICカード発行処理システム1の制御部21は、格納手段22に格納されている顧客情報である発行パターンファイルと、制御情報ファイルを用いて、複数種のICカードを対象とした発行機内で使用するIC書込み装置の制御条件の設定…(中略)…を行い」、及び、Fの図示態様から、IC発行パターン生成手段24が生成したICカード発行パターンファイルは格納手段に供給され、制御手段は前記格納手段に格納された前記ICカード発行パターンファイルを利用することが記載されている。
また、Eの前記記載及びFの図示態様から、前記制御手段は、前記格納手段に格納された制御情報ファイルを利用することが記載されている。

以上、a?eから、引用文献には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「システム全体を制御する制御手段と、個人情報をICカードのICに書き込むことで個人情報記録媒体としてのICカードを発行する複数のICカード発行機と、個人情報をIC書き込みに利用するICカード発行機に適合するよう書き換えたICカード発行パターンファイルと、情報記録形態の仕様や前記ICカード発行機を制御するための情報を含む前記ICカード発行機の制御情報である制御情報ファイルとを格納する格納手段と、を備えるICカード発行処理システムにおいて、
前記制御手段は、IC書込み処理に際しては、前記ICカード発行パターンファイルを、前記ICカード発行機に供給する前記制御情報ファイルに基づく制御条件によって選定したICカード発行機に対して供給して、前記供給されたICカード発行パターンファイルを用いるICカードの書き込み処理を実行させる、
ことを特徴とするICカード発行処理システム。」


第3.対比
本願発明と引用発明とを対比する。

引用発明において、「個人情報」は「ICカードのICに書き込む」情報である。
一方、本願明細書には、段落【0004】に「スマートカードはまた、“パーソナル化(personalization)”と呼ぶプロセスにより、個々のカード所有者に特有な情報を使ってプログラムされる。」と、段落【0023】に「各取引きカードに対してカード所有者データを印刷/エンボス加工/コード化するプロセスは、“個人化(パーソナル化)”として知られている。」と記載されている。すなわち、本願発明において、「カード所有者用パーソナル化データ」とは「プログラムされた携帯型データ担体」に入力され記録されるデータである。
したがって、引用発明の「個人情報」は、本願発明の「カード所有者用パーソナル化データ」に相当する。
そして、引用発明の「ICカード」は携帯型データ担体であるから、引用発明の「ICカード」と本願発明の「プログラムされた携帯型データ担体」とは、いずれも、携帯型データ担体である点で共通する。

また、引用発明の「ICカード発行機」は「個人情報をICカードのICに書き込む」手段であるから、本願明細書の前記記載によれば、「パーソナル化」を実行する手段であると云いうるものである。したがって、引用発明の「ICカード発行機」は、本願発明の「パーソナル化手段」に相当する。

引用発明の「制御情報ファイル」は、「前記ICカード発行機に供給する」ものであり、「情報記録形態の仕様や前記ICカード発行機を制御するための情報を含む前記ICカード発行機の制御情報」を示す「ファイル」である。そして、この「ICカード発行機の制御情報」のうちの「情報記録形態の仕様」は、「ICカード発行機」が行う「情報記録」の処理の「形態の仕様」であるから、「ICカード発行機」用の当該「ICカード発行機」の処理の特性を示す情報である。一方、前記「ICカード発行機の制御情報」のうちの「前記ICカード発行機を制御するための情報」は、「ICカード発行機」用の「前記ICカード発行機を制御する」コマンド情報に他ならない。
これに対して、本願明細書の段落【0062】には、「パーソナル化装置の識別子に対応する装置特性データを、パーソナル化装置データベース926 から入手する。装置特性データに含まれるのは、パーソナル化装置の作用を制御する一連のパーソナル化プログラミング制御コマンドである。」と記載されている。すなわち、本願発明の「パーソナル化手段用特性データ」とは、「パーソナル化手段用」の、「パーソナル化手段」の装置「特性データ」であるとともに、当該「パーソナル化手段」の作用を制御するコマンドの「データ」でもあると認められる。
してみれば、引用発明の前記「制御情報ファイル」は、本願発明の「パーソナル化手段用特性データ」に相当する。

引用発明においては、「格納手段」に「格納」されている「個人情報をIC書き込みに利用するICカード発行機に適合するよう書き換えたICカード発行パターンファイルと、情報記録形態の仕様や前記ICカード発行機を制御するための情報を含む前記ICカード発行機の制御情報である制御情報ファイル」を利用して、「制御手段」が前記「ICカード発行パターンファイル」を「選定したICカード発行機に対して供給」するという処理を行うものである。
してみれば、「制御手段」が、前記「ICカード発行パターンファイル」及び前記「制御情報ファイル」を「格納手段」から取得していることは当然である。

引用発明は、「IC書込み処理に際しては、前記ICカード発行パターンファイルを、前記ICカード発行機に供給する前記制御情報ファイルに基づく制御条件によって選定したICカード発行機に対して供給して」いる。ここで、前記「ICカード発行パターンファイル」は「個人情報をIC書き込みに利用するICカード発行機に適合するよう書き換えた」ファイルであるとともに、「ICカード発行機」は「個人情報をICカードのICに書き込む」ことから、前記「ICカード発行パターンファイル」は「個人情報」の情報を含むことは明らかである。よって、前記「ICカード発行パターンファイル」を「ICカード発行機に対して供給」すれば、前記「個人情報」の情報も「ICカード発行機に対して供給」されると認められる。
したがって、引用発明の「IC書込み処理に際しては、前記ICカード発行パターンファイルを、前記ICカード発行機に供給する前記制御情報ファイルに基づく制御条件によって選定したICカード発行機に対して供給して」いることは、本願発明の「上記特性データにより指定されるパーソナル化手段に対し上記パーソナル化データを転送」することに相当する。

引用発明は「前記供給されたICカード発行パターンファイルを用いるICカードの書き込み処理を実行させる」。ここで、引用発明は、「個人情報をICカードのICに書き込むことで個人情報記録媒体としてのICカードを発行」させるから、「前記供給されたICカード発行パターンファイルを用いる」ことで、「個人情報をICカードのICに書き込む」という「ICカードの書き込み処理を実行させ」て「個人情報記録媒体としてのICカードを発行」していると解される。
したがって、引用発明の「前記供給されたICカード発行パターンファイルを用いるICカードの書き込み処理を実行させる」ことと、本願発明の「データ担体を発行する」こととは、データ担体を発行する点で一致する。

以上から、引用発明の「IC書込み処理に際しては、前記ICカード発行パターンファイルを、前記ICカード発行機に供給する前記制御情報ファイルに基づく制御条件によって選定したICカード発行機に対して供給して、前記供給されたICカード発行パターンファイルを用いるICカードの書き込み処理を実行」させる「制御手段」と、本願発明の「カード所有者用パーソナル化データおよびパーソナル化手段用特性データを取得し、更に、上記特性データにより指定されるパーソナル化手段に対し上記パーソナル化データを転送してデータ担体を発行する手段」とは、カード所有者用パーソナル化データおよびパーソナル化手段用特性データを取得し、更に、上記特性データにより指定されるパーソナル化手段に対し上記パーソナル化データを転送してデータ担体を発行する手段である点で一致する。
そして、引用発明の「ICカード発行処理システム」と、本願発明の「プログラムされた携帯型データ担体を発行するシステム」とは、いずれも、携帯型データ担体を発行するシステムである点で共通する。

したがって、引用発明と本願発明とは、次の特定事項を有する点では一致し、そして、次の点で相違する。
(一致点)
「カード所有者用パーソナル化データおよびパーソナル化手段用特性データを取得し、更に、上記特性データにより指定されるパーソナル化手段に対し上記パーソナル化データを転送してデータ担体を発行する手段、を備え、携帯型データ担体を発行するシステム。」

(相違点)
「携帯型データ担体」が、本願発明は、「プログラムされた携帯型データ担体」であるのに対し、引用発明は、「個人情報」をその「IC」に「書き込む」ことができる「ICカード」ではあるが、プログラムされた「ICカード」であるという明示はない点。


第4.当審の判断
1.相違点について
ICカードが、プログラムされたデータ担体(ICカード)である技術は本願の優先権主張日の前において周知技術にすぎない。
このことは、たとえば、特開昭63-065591号公報の第2頁の左上欄第13行?右上欄第19行に、
「〔問題点を解決するための手段〕
本発明の上記目的は、書替え可能なメモリとマイクロコンピュータとを有するICカードを用いるシステムにおいて、前記ICカードを、該ICカード内の書替え可能なメモリの記憶エリアを複数のエリアに分割して各エリアにプログラムをロード可能とするとともに、プログラム名称、プログラム先頭アドレス等を格納するプログラム配置管理テーブルを有する如く構成し、一方、前記プログラム配置管理テーブルを介して前記ICカード内の各プログラムを外部から選択する手段を設けたことを特徴とするICカード・システムによって達成される。
〔作用〕
本発明においては、ICカード側では、該ICカード内に設けられた書替え可能なROM中に複数のプログラムをロード可能にするとともに、プログラム名称、プログラム開始アドレスおよびプログラム・サイズを指定するプログラム配置管理テーブルを設け、一方、上記ICカードを扱う装置側では、ICカード内の上記プログラム配置管理テーブルを介して、プログラム・ロード時にはその内容を追加または変更し、また、プログラム実行時には、上記テーブルを読出して実行プログラムを指定することにより、前記目的を達成可能とするプログラム書込み、実行指定機能を有するものである。」、
と記載され、前記特開昭63-065591号公報に、ICカードが、書込みができ、プログラムされたICカードである技術が示されている通りである。
よって、引用発明において、「個人情報」をその「IC」に「書き込む」ことができる「ICカード」を、プログラムされたデータ担体(ICカード)とすることは、前記周知技術を参酌することにより、当業者が容易になし得ることである。

そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用文献記載の発明及び前記周知技術から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。
したがって、前記相違点は格別のものではない。

2.審判請求人の主張
審判請求人は、「請求の理由」として、
(1)「引用文献1の個人情報配給装置71は、個人情報を配給するもので(段落0010、0013)、これは単なるカード所有者個人に関係する情報(住所、氏名、年齢等)であって、本願発明の<カード所有者に対するパーソナル化データ>ではありません。パーソナル化データとは、所有者の口座番号、カード満了日等を含む情報であります。」と、
(2)「引用文献1には、<パーソナル化装置の識別子>に関する記載はありません。」及び「そうすると、引用文献1には、パーソナル化装置がカード発行者管理システムから<パーソナル化装置の識別子>及び<カード所有者に対するパーソナル化データ>を取得するステップは存在しません。」と、及び、
(3)「更に、上記タイプのパーソナル化装置に対する装置特性データにより指定されたパーソナル化装置に対してパーソナル化データを転送しデータ担体を発行するステップもありません。」と、
それぞれ、主張している。

上記各主張について検討すると、
(1)の主張に関して、引用発明の「個人情報」が、本願発明の「カード所有者用パーソナル化データ」に相当することは、前記「第3.対比」の項で説明した通りである。そして、本願発明の「カード所有者用パーソナル化データ」とは、所有者の口座番号、カード満了日等を含む情報でなければならないことは、本願の請求項7には記載されていない。
なお、上記の点は、審判請求人が、平成20年4月2日付けの意見書において、
「(2)について
「パーソナル化」について、明細書段落0004に説明されています。つまり、カードに個人的なデータを入力することを意味するもので、パーソナル化データとは、パーソナル化する際に使われるデータ、つまりカードに記録される個人情報を意味しています。」、
と述べている通りである。
したがって、前記(1)の主張は、本願の特許請求の範囲の記載に基づくものでなく、また、当を得ておらず、これを採用することはできない。

(2)の主張に関して、「パーソナル化装置の識別子」に関する記載は、本願の請求項7には存在しない。
したがって、前記(2)の主張は、本願の特許請求の範囲の記載に基づくものではないから、これを採用することはできない。
なお、引用発明において、「制御手段」が、前記「ICカード発行パターンファイル」及び前記「制御情報ファイル」を「格納手段」から取得していることは当然であることは、前記「第3.対比」の項で説明した通りである。

(3)の主張に関して、引用発明が、本願発明の「上記特性データにより指定されるパーソナル化手段に対し上記パーソナル化データを転送してデータ担体を発行する手段」と一致する、「IC書込み処理に際しては、前記ICカード発行パターンファイルを、前記ICカード発行機に供給する前記制御情報ファイルに基づく制御条件によって選定したICカード発行機に対して供給して、前記供給されたICカード発行パターンファイルを用いるICカードの書き込み処理を実行」させる「制御手段」を有することは、前記「第3.対比」の項で説明した通りである。
したがって、前記(3)の主張は当を得ておらず、これを採用することはできない。

3.小括
以上の通りであるから、本願発明は、引用発明及び前記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであると認められる。


第5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び前記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-14 
結審通知日 2011-02-15 
審決日 2011-02-28 
出願番号 特願2005-243309(P2005-243309)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村田 充裕  
特許庁審判長 鈴木 匡明
特許庁審判官 宮司 卓佳
赤川 誠一
発明の名称 スマートカード個人化のシステム及び装置  
代理人 青木 篤  
代理人 森 啓  
代理人 水谷 好男  
代理人 鶴田 準一  

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