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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C04B |
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管理番号 | 1240158 |
審判番号 | 不服2008-16969 |
総通号数 | 141 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-09-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-07-03 |
確定日 | 2011-07-15 |
事件の表示 | 平成9年特許願第307027号「低発熱モルタルまたはコンクリート」拒絶査定不服審判事件〔平成11年5月25日出願公開、特開平11-139851〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、平成9年11月10日の出願であって、平成19年6月28日付け拒絶理由通知に対して同年9月7日付けで意見書と手続補正書が提出されたが、平成20年5月22日付けで拒絶査定されたため、同年7月3日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。 2 本願発明 本願の請求項1に係る発明は、平成19年9月7日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(以下「本願発明1」という)。 「セメントおよび骨材を含むモルタルまたはコンクリートにおいて、前記セメントは、普通ポルトランドセメントよりも発熱量が小さいセメントから選択され、前記骨材を、ブレーン値(比表面積,単位cm^(2)/g)が1000以上の石灰石微粉末で置換することを特徴とする低発熱モルタルまたはコンクリート。」 3 引用例に記載された発明 (1)引用例1の記載事項 これに対し、本願出願日前に頒布され、原査定の拒絶の理由で引用された特開平8-91885号公報(以下「引用例1」という)には、次の事項が記載されている。 (ア)「ポルトランドセメント50?92重量部、シリカフューム5?25重量部及び石灰石微粉末3?25重量部を合計で100重量部となるように含んでなるセメント組成物を製造する方法であって、・・・ついで仕上げミルで製造した粉砕物に、特定粒度分布を有する石灰石微粉末を混合することを特徴とするセメント組成物の製造方法。」(特許請求の範囲の請求項1) (イ)「本発明により製造したセメント組成物を用いたモルタルおよびコンクリートにおける実施例を以下に示す。まず、実験方法について項目ごとに説明する。 1.使用材料(比較例に使用した材料を含む) 1.1 セメント組成物に使用した材料 (1)ポルトランドセメント ・・・ MP(中庸熱ポルトランドセメント)(比重:3.20) (2)シリカフューム・・・ (3)特定粒度分布を有する石灰石微粉末・・・ a) 実施例に用いた特定粒度分布を有する石灰石微粉末 (1)GL(1):20μm以下が95wt%、・・・の粒度分布を有する。ブレーン比表面積は5280cm^(2) /gである。 (2)GL(2):20μm以下が98wt%、・・・の粒度分布を有する。ブレーン比表面積は7730cm^(2) /gである。 (3)GL(3):20μm以下が100wt%、・・・の粒度分布を有する。ブレーン比表面積は17000cm^(2) /gである。」(【0035】?【0039】段落) (ウ)「1.2 モルタルおよびコンクリートに使用したセメント組成物以外の材料 (1) 細骨材:木更津産山砂(比重2.63,吸水率1.77%) (2)粗骨材:八王子産砕石(最大寸法20mm,比重2.68,吸水率0.83%)」(【0044】段落) なお、(イ)、(ウ)において、丸数字を括弧数字として表記している。 (2)引用例1に記載された発明 摘記事項(ア)より、引用例1には、ポルトランドセメント及び石灰石微粉末を含むセメント組成物が記載されており、同(イ)によれば、ポルトランドセメントとして中庸熱ポルトランドセメントを用い、石灰石微粉末にはブレーン比表面積が5280cm^(2) /g?17000cm^(2) /gのものを用いることが記載されている。 また、同(ウ)によれば、さらに細骨材と粗骨材を、含有することができる。 したがって、引用例1には、次の発明が記載されている(以下「引用例1発明」という)。 「中庸熱ポルトランドセメント、骨材及び石灰石微粉末を含むセメント組成物であって、当該石灰石微粉末のブレーン比表面積が5280cm^(2) /g?17000cm^(2) /gのものを用いるセメント組成物」 4 対比・判断 (1)一致点と相違点 引用例1発明で使用する中庸熱ポルトランドセメントは、本願明細書の【0008】段落の記載によれば、普通ポルトランドセメントよりも発熱量が小さいセメントである。 また、引用例1発明の石灰石微粉末のブレーン比表面積が5280cm^(2) /g?17000cm^(2) /gであるので、これが1000以上であるとする本願発明1で設定する条件を充足する。 さらに、引用例1発明における「セメントと骨材を含むセメント組成物」が、コンクリートであることは明らかである。 したがって、本願発明1と引用例1発明とは、次の点の一致点で一致し、相違点で一応相違する。 (i)一致点 「セメントおよび骨材を含むコンクリートにおいて、前記セメントは、普通ポルトランドセメントよりも発熱量が小さいセメントから選択され、前記骨材が、ブレーン値(比表面積,単位cm^(2)/g)が1000以上の石灰石微粉末を含むことからなるコンクリート。」 (ii)相違点 本願発明1のモルタル又はコンクリートが、骨材の一部を石灰石微粉末で置換したものであるのに対し、引用例1発明の石灰石微粉末は、コンクリートに混合・添加をするもので、本願発明1におけるような「骨材との一部置換」の関係にあるとはいえない点。 (2)判断 審判請求人は、この相違点の意味について、平成20年7月31日付けの審判請求書の手続補正書において、一部置換する本願発明1では石灰石微粉末と置換した骨材は、置換した量だけ骨材の量が減少するが、引用例1発明では、骨材の量は減少することはないとする(第4頁27?31行)。これによれば、本願発明1は、骨材と石灰石微粉末の総量を一定程度に維持しつつ石灰石微粉末を添加するものであるのに対し、引用例1発明は、骨材と石灰石微粉末の合計配合量の変動を考慮しない点で相違することになる。 そこで、この相違点が、本願発明1と引用例1発明との実質的な相違点であるといえるかを検討する。 この点に関して、石灰石微粉末は、骨材と同様に、セメントの結合に関与しない成分である。そして、このような、セメントの結合に関与しない成分の添加量は、コンクリートの特性に支配的な影響を有する。そして、その成分の添加については、添加量ばかりでなく、その機械的・化学的な特性を含めて、用途に応じて当業者が選択するところである。その意味で、本願発明1において、骨材と石灰石微粉末の合計の配合量を一定に保つために、石灰石微粉末を骨材に一部置換させて添加することは、場合によって技術的に意味のありうることである。 しかし、本願発明1では、骨材と石灰石微粉末の合計配合量を特定値に設定することを、発明の特定事項とはしていない。このため、骨材と石灰石微粉末の合計配合量は,当業者が用途に応じて任意に選択することができることになる。そうすると、セメント結合に関与しない成分である骨材と石灰石微粉末の配合量を特に一定に維持することを考慮することなく、石灰石微粉末を添加する引用例1発明と比較して、実質的な差異があるとすることはできない。 したがって、上記相違点として挙げた点は、本願発明1と引用例1発明とを区別する実質的な相違点とならない。 5 結論 以上のとおりであるので、本願の請求項1に係る発明は、引用例1に記載された発明であるので、特許法第29条第1項3号の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-04-22 |
結審通知日 | 2011-05-10 |
審決日 | 2011-05-25 |
出願番号 | 特願平9-307027 |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(C04B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 末松 佳記 |
特許庁審判長 |
真々田 忠博 |
特許庁審判官 |
深草 祐一 斉藤 信人 |
発明の名称 | 低発熱モルタルまたはコンクリート |
代理人 | 松本 雅利 |