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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G11B
管理番号 1240238
審判番号 不服2008-28493  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-11-06 
確定日 2011-07-14 
事件の表示 特願2008- 36439「光ディスク製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 8月 7日出願公開、特開2008-181652〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年8月29日に出願した特願平9-234853号の一部を平成20年2月18日に新たな特許出願としたものであって、平成20年7月4日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年9月8日付けで手続補正がなされ、同年10月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年11月6日付けで拒絶査定不服審判請求がなされた後、同年12月8日付けで手続補正がなされた。
その後、平成22年9月10日付けで審尋がなされ、同年11月15日付けで回答書が提出され、当審がした平成23年2月15日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年4月11日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年4月11日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
中間層を挟んで多層構造の記録層が形成された基板を回転させて前記記録層上に光硬化樹脂を塗布し、前記光硬化樹脂に光を照射し、前記光硬化樹脂を硬化させて光透過層を形成し、
前記光透過層側から対物レンズを介してレーザ光が前記記録層に照射される光ディスクの製造方法において、
前記光硬化樹脂をスピンコート法により塗布し、
基板最外周部に発生する前記光硬化樹脂の盛り上がり部分に光が照射されないようにマスクにより覆い、
前記光硬化樹脂に前記光を照射し前記盛り上がり部分以外の部分の光硬化樹脂を硬化させ、
未硬化の前記盛り上がり部分の光硬化樹脂を回転によって、前記基板の周縁外へ振り切って、未硬化の前記盛り上がり部分の高さと、既に硬化している前記盛り上がり部分以外の部分の高さとを等しくし、
前記盛り上がり部分であった部分に光を照射して光硬化樹脂を硬化させて前記光透過層を形成し、
前記レーザ光、前記対物レンズ、前記光透過層が下記の関係に設定され、前記光透過層の厚みむらを下記の範囲内に抑えることを特徴とする光ディスク製造方法。
レーザ光の波長λ≦0.68μm
対物レンズの開口数N.A./λ≧1.20
光透過層の厚さt=10μm?177μm
光透過層の厚さむら△t≦±5.26(λ/N.A.^(4 ))μm」

3.引用列
これに対して、当審が通知した拒絶の理由に引用された特開平4-310647号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した)。
(1)「【0001】
【産業上の利用分野】 本発明はオーバーライト可能な磁界変調方式の光磁気ディスクの保護コートの製造に用いる紫外線硬化樹脂の硬化方法及び硬化装置に関する。」

(2)「【0008】 図8は従来の紫外線硬化装置の概略図である。図8において、1は基板13上に記録媒体14及び回転塗布後の紫外線硬化樹脂31を形成したワーク、6は紫外線光源、7は反射板、32はワーク1を搬送するベルト、33はベルト32を駆動するモーターである。
【0009】 以上のように構成された回転塗布装置及び紫外線硬化樹脂の硬化装置を用いた、光磁気ディスクの保護コート16の形成方法を以下に説明する。
【0010】 記録媒体14形成面を上に向け、基板13を図7に示した回転塗布装置の回転台26に固定する。基板13を低速で回転し、移動アーム27を基板の内周部から外周部に向かって移動させると共に、ノズル28から紫外線硬化樹脂31を基板13及び記録媒体14上に塗滴する。所定量を塗滴後、回転台26を高速度(1000?4000rpm)で回転し、余分な紫外線硬化樹脂31を振り切ることで塗布が終了する。」

(3)「【0012】
【発明が解決しようとする課題】 しかしながら上記のような構成では、高速回転塗布時に遠心力で基板13の外周端に回り込んだ紫外線硬化樹脂31の硬化反応が完結されるため、光磁気ディスクの保護コート16が光磁気ディスクの外周端で盛り上がり、記録媒体14の最外周部の記録トラックへの記録の際にスライダー21が保護コート16と衝突し、磁気ヘッド22と記録媒体14の距離が変化し、最外周部の記録トラックへの記録が不安定になるという課題を有していた。
【0013】 本発明は上記課題に鑑み、スライダー21の移動領域で保護コート16の盛り上がりがなく、最外周部の記録トラックへの記録が安定に行える光磁気ディスクの保護コート16を形成することができる紫外線硬化樹脂の硬化方法及び硬化装置を提供するものである。」


(4)「【0017】 図1は、本発明の第1の実施例に於ける紫外線硬化樹脂の硬化装置の概略図を示すものである。図1に於いて、1は従来例の図6に示した基板13上に記録媒体14及び未硬化状態の紫外線硬化樹脂を形成したワーク、2は直径が異なる2個の円形開口部を有する遮光板、3は回転位置制御機構を有する遮光板の回転駆動装置、4はワーク1の略中心をその回転軸に一致させる装着機能を備えた回転テーブル、5は速度可変機能を有する駆動モータ、6は紫外線光源、7は紫外線の反射板、8、9はワーク1を保持するステージ、10、11は真空チャック機構を備えたワーク1の移動手段、12はステンレスの板である。
【0018】 図2は、本発明の第1の実施例における紫外線硬化樹脂の硬化装置の遮光板2の設置部の上面概略図である。図2に於いて201はワーク1の外周より大きい直径を有する開口部、202は記録媒体14の外径と略一致した直径の開口部である。1、2、3、4は本発明の第1の実施例の図1と同様であって、1はワーク、2は遮光板、3は回転駆動装置、4は回転テーブルである。遮光板2はその開口部201及び201の略中心が回転テーブル4の回転軸の延長線上に配置されるように回転駆動装置3を遮光板2の適切な位置に設置する。
【0019】 また、図3は本発明の第1及び第2の実施例におけるワーク1の外周端での紫外線硬化樹脂の挙動を示した要部断面図である。図3(a)、(b)、(c)(d)に於いて、13は基板、14は記録媒体、301は未硬化状態の紫外線硬化樹脂、302は硬化した紫外線硬化樹脂、2は遮光板、4は回転テーブルである。
【0020】 以上のように構成された紫外線硬化装置について、以下図1、図2、図3(a)、図3(b)、図3(d)を用いてその動作を説明する。
【0021】 ステージ8に設置したワーク1を移動手段10により静止した回転テーブル4に設置する。このとき、回転テーブル4の上部には遮光板2の開口部201が配置されており、紫外線光源6及び反射板7からの紫外線はステンレス板12により遮光されている。また、基板13及び記録媒体14上の紫外線硬化樹脂301は図3(a)に示すように表面張力により部分的に外周方向に移動し盛り上がっている。従来の方法では紫外線硬化樹脂301はこの状態で紫外線の暴露を受け硬化するため、ワーク1の外周端面での保護コート16の盛り上がりが生じていた。
【0022】 次に、回転駆動装置3を駆動して遮光板2の開口部202を回転テーブル4上に移動し、回転テーブル4に設置したワーク1を所定の回転数で回転を継続し、ステンレス板12を移動して、ワーク1に紫外線を所定時間暴露する(第1の紫外線暴露)。この時の紫外線硬化樹脂301、302の様子を図3(b)に示す。紫外線硬化樹脂301は遠心力が作用中に紫外線が暴露されるため、記録媒体14の最外周部まで平坦な状態で紫外線硬化樹脂302は硬化する。斜線Aで示した部分は紫外線の暴露がないため、この部分は未硬化紫外線硬化樹脂301である。紫外線硬化樹脂301は遠心力の影響で外周方向に向かって部分的に凸形状になっている。この凸形状を防止するため、次のプロセスを導入する。
【0023】 所定時間紫外線を暴露後、回転テーブル4を停止する。回転停止にともない図3(b)に示した紫外線硬化樹脂302の凸部は表面張力の作用で、なだらかな形状になる。
【0024】 その後、回転駆動装置3を駆動し遮光板2の開口部201を回転テーブル4上に移動し、紫外線硬化樹脂302に紫外線を暴露する(第2の紫外線暴露)。この時の紫外線硬化樹脂302の様子を図3(d)に示す。所定時間紫外線を暴露後、ステンレス板12を移動して、紫外線を遮光する。移動手段11によりワーク1をステージ9に移動して紫外線硬化行程が終了する。」

(5)「【0042】
【発明の効果】以上のように本発明は紫外線光源と、回転テーブルと、紫外線光源と回転テーブルの間に紫外線の暴露領域を制御する遮光板を設け、遠心力を付与した第1の紫外線暴露による紫外線硬化樹脂の硬化工程と遠心力を付与しない第2の紫外線暴露による紫外線硬化樹脂の硬化工程を順次行うことにより、紫外線硬化樹脂に対して遠心力が作用中に磁気ヘッド及びスライダーが滑走する領域の紫外線硬化樹脂の硬化が完了することとなり、保護コートの外周端面での盛り上がりが防止でき、磁気ヘッドが光磁気ディスクの全領域で安定に浮上し安定した記録が可能である光磁気ディスクを製造することが出来る紫外線効果樹脂の硬化方法及び硬化装置を提供することができる。」

上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「光磁気ディスクの保護コートの製造に用いる紫外線硬化樹脂の硬化方法において、
記録媒体形成面を上に向けた基板を低速で回転し、紫外線硬化樹脂を前記基板及び記録媒体上に所定量塗滴後、前記基板を高速度で回転し、余分な前記紫外線硬化樹脂を振り切ることで回転塗布し、
未硬化の前記紫外線硬化樹脂が塗布されたワーク(基板)の外周端面で生じる前記紫外線硬化樹脂の盛り上がり(凸形状)の部分を、前記記録媒体の外径と略一致した直径の円形開口部を有する遮光板により遮光し、
前記ワークを回転させながら前記紫外線硬化樹脂に紫外線を暴露し、前記盛り上がりの部分以外の部分の前記紫外線硬化樹脂を硬化させ、 前記ワークの回転を停止させて未硬化の前記盛り上がりの部分を表面張力の作用でなだらかな形状とさせ、
その後、前記遮光板における前記ワークの外周より大きい直径を有する円形開口部を利用して未硬化の前記盛り上がりの部分であった部分を含む前記ワーク全体に紫外線を暴露して前記紫外線硬化樹脂を硬化させることによって、前記ワークの外周端面での盛り上がりを防止するようにした紫外線硬化樹脂の硬化方法。」

4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、
(1)引用発明における「記録媒体」、「基板」、「紫外線」、「紫外線硬化樹脂」、「遮光板」、「光磁気ディスク」は、それぞれ本願発明における「記録層」、「基板」、「光」、「光硬化樹脂」、「マスク」、「光ディスク」に相当し、

(2)引用発明における「記録媒体形成面を上に向けた基板を低速で回転し、紫外線硬化樹脂を前記基板及び記録媒体上に所定量塗滴後、前記基板を高速度で回転し、余分な前記紫外線硬化樹脂を振り切ることで回転塗布し」は、紫外線硬化樹脂をいわゆるスピンコート法により塗布することに他ならず、本願発明における「前記光硬化樹脂をスピンコート法により塗布し」に相当する。

(3)引用発明における「未硬化の前記紫外線硬化樹脂が塗布されたワーク(基板)の外周端面で生じる前記紫外線硬化樹脂の盛り上がり(凸形状)の部分を、前記記録媒体の外径と略一致した直径の円形開口部を有する遮光板により遮光し」は、本願発明における「基板最外周部に発生する前記光硬化樹脂の盛り上がり部分に光が照射されないようにマスクにより覆い」に相当する。

(4)引用発明における「前記ワークを回転させながら前記紫外線硬化樹脂に紫外線を暴露し、前記盛り上がり(凸形状)の部分以外の部分の前記紫外線硬化樹脂を硬化させ」は、本願発明における「前記光硬化樹脂に前記光を照射し前記盛り上がり部分以外の部分の光硬化樹脂を硬化させ」に相当する。

(5)引用発明における「前記ワークの回転を停止させて未硬化の前記盛り上がりの部分を表面張力の作用でなだらかな形状とさせ、その後、前記遮光板における前記ワークの外周より大きい直径を有する円形開口部を利用して未硬化の前記盛り上がりの部分であった部分を含む前記ワーク全体に紫外線を暴露して前記紫外線硬化樹脂を硬化させることによって、前記ワークの外周端面での盛り上がりを防止する」によれば、本願発明における「未硬化の前記盛り上がり部分の光硬化樹脂を回転によって、前記基板の周縁外へ振り切って」なる工程が盛り上がり部分の盛り上がりを低減させるための工程であるといえることから、本願発明と引用発明とは「未硬化の前記盛り上がり部分の光硬化樹脂を[所定の工程によってその盛り上がりを低減させ]、前記盛り上がり部分であった部分に光を照射して光硬化樹脂を硬化させて[所定の]層を形成し」の点で共通する。

(6)そして、引用発明における「保護コート」と本願発明における「光透過層」とは、記録媒体(本願発明における「記録層」)上に形成される層であることから、
引用発明における「光磁気ディスクの保護コートの製造に用いる紫外線硬化樹脂の硬化方法において」は、結局、「記録層が形成された基板を回転させて前記記録層上に光硬化樹脂を塗布し、前記光硬化樹脂に光を照射し、前記光硬化樹脂を硬化させて[所定の]層を形成する光ディスク製造方法において」である点で本願発明と共通するといえる。

よって、本願発明と引用発明とは、
「記録層が形成された基板を回転させて前記記録層上に光硬化樹脂を塗布し、前記光硬化樹脂に光を照射し、前記光硬化樹脂を硬化させて[所定の]層を形成する光ディスクの製造方法において、
前記光硬化樹脂をスピンコート法により塗布し、
基板最外周部に発生する前記光硬化樹脂の盛り上がり部分に光が照射されないようにマスクにより覆い、
前記光硬化樹脂に前記光を照射し前記盛り上がり部分以外の部分の光硬化樹脂を硬化させ、
未硬化の前記盛り上がり部分の光硬化樹脂を[所定の工程によってその盛り上がりを低減させ]、
前記盛り上がり部分であった部分に光を照射して光硬化樹脂を硬化させて前記[所定の]層を形成する光ディスク製造方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点1]
記録層が、本願発明では「中間層を挟んで多層構造」であると特定するのに対して、引用発明ではそのような特定がない点。

[相違点2]
光硬化樹脂における未硬化の盛り上がり部分を低減させるための所定の工程が、本願発明では「回転によって基板の周縁外へ振り切って、未硬化の盛り上がり部分の高さと、既に硬化している盛り上がり部分以外の部分の高さとを等しくし」とするものであるのに対し、引用発明では回転を停止させ、表面張力の作用を用いるものである点。

[相違点3]
光硬化樹脂を硬化させることにより形成される所定の層が、本願発明では「光透過層」であり、「光透過層側から対物レンズを介してレーザ光が記録層に照射される」ものであり、さらに「レーザ光の波長λ≦0.68μm、対物レンズの開口数N.A./λ≧1.20、光透過層の厚さt=10μm?177μm、光透過層の厚さむら△t≦±5.26(λ/N.A.^(4) )μm」の関係に設定されるものであるのに対し、引用発明では保護コートであり、「光透過」の層との特定がなく、さらにレーザ光の波長、対物レンズの開口数及び光透過層(厚さ、厚さむら)についての関係についても特定がない点。

5.判断
上記相違点について検討する。
[相違点1]について
記録層を中間層を挟んで多層構造とすることは、例えば当審が通知した拒絶の理由に引用された特開平9-161334号公報(特に段落【0038】参照)、特開平8-263874号公報に記載のように、当業者が適宜採用し得る事項にすぎない。

[相違点2]について
基板最外周部における未硬化の光硬化樹脂の盛り上がりを低減させる方法として、高速回転させて余分な盛り上がり部分を基板の周縁外へ振り切るようにすることは、例えば当審が通知した拒絶の理由に引用された特開平9-167382号公報(特に段落【0016】)、特開平6-4910号公報(特に段落【0020】)に記載されているように周知といえる技術事項であり、引用発明においても、回転を停止させて表面張力の作用を用いることに代えて、むしろ高速回転させて余分な盛り上がり部分を基板の周縁外へ振り切ることにより積極的に盛り上がりを低減させる方法を採用することは当業者であれば容易になし得ることである。
なお、本願発明では「未硬化の盛り上がり部分の高さと、既に硬化している盛り上がり部分以外の部分の高さとを等しく」と限定しているが、そもそも厳密な意味で未硬化の盛り上がり部分の高さと、既に硬化している盛り上がり部分以外の部分の高さとを完全に等しくすることは技術的にみて困難なことであり、本願発明が光透過層の厚さむらΔtをゼロではなく、所定の許容範囲を持たせていることからしても、かかる限定事項における下線を付した「等しく」は、極力等しく、すなわち理想的には完全に等しいことが望ましいといった意味にしか解し得ないところ、引用発明においても、極力等しい、すなわち理想的には完全に等しいことが望まれることは当然のことであって、「未硬化の盛り上がり部分の高さと、既に硬化している盛り上がり部分以外の部分の高さとを等しく」することは当業者がごく普通に想到し得ることである。

[相違点3]について
本願発明における「光透過層」にあっても、記録層の保護用の層でもある点で引用発明における「保護コート」と変わりがない。そして、記録層上に塗布した光硬化樹脂を硬化させてなる層を、記録層の保護を兼ねた例えば厚さ100μm(0.1mm)の光透過層として用い、該光透過層側から対物レンズを介してレーザ光が記録層に照射されるようにすることは、当審が通知した拒絶の理由に引用された上記特開平9-161334号公報(特に段落【0028】、【0031】、【0040】を参照)、特開平9-161333号公報(段落【0007】?【0008】、【0020】)、特開平8-235638号公報(【請求項5】、段落【0040】)に記載のように周知といえる技術事項であって、特に上記特開平9-161334号公報や上記特開平8-235638号公報には、記録層として光磁気記録層を用いる場合の例についても記載されているところであり、引用発明における保護コートについても、例えば厚さ100μmの「光透過」層として用い、該光透過層側から対物レンズを介してレーザ光が記録層に照射されるようにすることは当業者が容易になし得ることである。
ここで、高密度化のためには波長λを短くし、対物レンズの開口数N.A.を大きくする必要があることは周知の技術事項であるところ、例えば当審が通知した拒絶の理由に引用された特開平9-212909号公報(λ=680nm、N.A.=1.0?1.35)、特開平8-221790号公報(λ=532nm、N.A.=0.84)に記載のように、波長λ≦0.68μm、対物レンズの開口数N.A./λ≧1.20を満たすような波長、開口数を選択することは当業者が適宜なし得ることであり、さらに、光透過層の厚さむらをΔtとすると、発生する球面収差は、Δt・N.A.^(4)/λに比例し、当然、この球面収差は小さい(限りなくゼロに近い)ほうが望ましいことは例えば当審が通知した拒絶の理由に引用された特開平3-225650号公報(3頁右上6行?同頁左下欄1行)、特開平8-212583号公報(段落【0007】)、特開平9-17022号公報(段落【0006】)に記載のように周知の技術事項であって、厚さむらΔtを、選択される波長λ及び対物レンズの開口数N.A.の値に応じて発生する球面収差の値が許容しうる範囲内に抑えられるような範囲、具体的には△t≦±5.26(λ/N.A.^(4) )μmを満たすような範囲とすることも当業者にとって設計的事項にすぎない。
〔因みに、周知のCD(波長λ=0.78μm、開口数N.A.=0.45)においては規格上の基板厚さむらの許容値は±100μmであるところ、
±5.26(λ/N.A.^(4))=±5.26(0.78/0.45^(4))
≒±100
であるから、結局、本願発明で特定される厚さむらΔtの範囲は、選択される波長及び対物レンズの開口数の値に応じた規格化された厚さむらの許容値を意味しているにすぎないといえる。〕

そして、上記各相違点を総合的に判断しても本願発明が奏する効果についてみても、引用発明及び周知の技術事項から当業者が十分に予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。

6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-05-12 
結審通知日 2011-05-17 
審決日 2011-05-30 
出願番号 特願2008-36439(P2008-36439)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山下 達也中野 和彦  
特許庁審判長 山田 洋一
特許庁審判官 早川 学
井上 信一
発明の名称 光ディスク製造方法  
代理人 杉浦 正知  

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