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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1240248
審判番号 不服2009-9529  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-05-01 
確定日 2011-07-14 
事件の表示 特願2000-584367「携帯電話とその電源投入方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 6月 2日国際公開、WO00/31611、平成14年 9月17日国内公表、特表2002-530972〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年11月18日(パリ条約による優先権主張1998年11月19日、スウェーデン国)を国際出願日とする特許出願であって、原審において平成21年1月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月1日に審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正書の提出がなされたものであり、
その請求項8に係る発明は、前記手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下、「本願発明」という。)

「【請求項8】
装置に電源を入れるためのタッチ・スクリーン・ディスプレイ(20)を備える携帯電話(10)内の電源手段(50)の接続を制御する方法であって、
携帯電話(10)のユーザが、フリップなどの可動ハウジング要素上に設けられ、折りたたまれた状態で前記タッチ・スクリーン・ディスプレイ(20)に圧力を与える入力手段(70)の電源投入キー(9)を押し、
前記携帯電話(10)のユーザが前記電源投入キー(9)を押すことで、前記タッチ・スクリーン・ディスプレイ(20)上の前記電源投入キーの位置に対応した位置が押されたことを示す信号が出力され、該信号を受けると電圧制御スイッチ(2)は前記携帯電話(10)の電源を入れる、ステップを特徴とする、携帯電話(10)内の電源手段(50)の接続を制御する方法。」

なお、上記手続補正書の請求項8には、「フリップなどの稼働ハウジング要素」と記載されているが、上記手続補正書の請求項1や本願明細書の記載を参酌すれば、「フリップなどの可動ハウジング要素」の明らかな誤記であるので、上記のように認定した。


2 引用発明
A.原審における拒絶の理由に引用した、特開平8-251062号公報(以下、「引用例1」という。)には、「可動ハウジング要素とその中に配置されたキーパッドとを有する無線通信装置」として図面とともに以下の記載がある。

(イ)「【請求項1】 内部に配置された無線回路(113)を有する無線通信装置(103)であって: 内部に配置された前記無線回路(113)の少なくとも一部を有する本体ハウジング要素(107); 少なくとも第1位置と第2位置との間で移動可能な可動ハウジング要素(109); 前記可動ハウジング要素(109)を前記本体ハウジング要素(107)に結合するヒンジ;および 前記可動ハウジング要素(109)内に内蔵された複数のキーを含むキーパッド(125)であって、前記複数のキーのそれぞれは、前記可動ハウジング要素(109)の第1面上に露出された第1部分を有し、前記可動ハウジング要素(109)が前記第2位置のとき、前記複数のキーの前記第1部分がユーザに露出される、キーパッド(125);によって構成されることを特徴とする無線通信装置(103)。
【請求項2】 ユーザ・データを入力し、かつ表示データを表示するタッチ・スクリーン・ディスプレイ(119)をさらに含んで構成され、前記タッチ・スクリーン・ディスプレイ(119)は、前記無線通信装置(103)の前記ハウジング要素(107)内に配置され、前記タッチ・スクリーン・ディスプレイ(119)の少なくとも第1部分は前記本体ハウジング要素(107)の第1面上で露出され、前記可動ハウジング要素(109)は、前記可動ハウジング要素(109)が第2位置のときに前記タッチ・スクリーン・ディスプレイ(119)の少なくとも第2部分を覆うことを特徴とする請求項1記載の無線通信装置(103)。
【請求項3】 前記キーパッド(125)の前記複数のキーは、前記可動ハウジング要素(109)の第2面上で露出された第2部分を有し、前記可動ハウジング要素(109)が第2位置であり、かつユーザが第1の複数のキーのうち第1部分を押した場合に、前記第1の複数のキーのうち第2部分が前記タッチ・スクリーン・ディスプレイ(119)に対して圧力を与えて、それにより前記タッチ・スクリーン・ディスプレイ(119)を起動することを特徴とする請求項2記載の無線通信装置(103)。」(2頁1欄2?38行)

(ロ)「【0004】
【実施例】本発明の実施例は、本体ハウジング要素とこれに結合された可動ハウジング要素とを有する無線通信装置に関する。可動ハウジング要素は、開または伸張位置と閉位置との間で移動可能である。無線通信装置は、本体ハウジング要素に配置されたタッチ・スクリーン・ディスプレイと、可動ハウジング要素に配置されたキーパッドとを含む。可動ハウジング要素が閉位置のとき、可動ハウジング要素はタッチ・スクリーン・ディスプレイの一部を覆う。さらに、無線通信装置は、キーパッドによって動作可能な第1セットのユーザ機能を有する。第1セットのユーザ機能は、電話番号入力や、電話呼出の送受信など限定された無線電話機能を含む。キーパッドは、複数のキーを形成するように成形される。キーは、可動ハウジングにおける対応する開口部を介して露出した第1部分を有し、ユーザがキーの第1部分を押すと、キーの第2部分がタッチ・スクリーン・ディスプレイに対して圧力を与える。この与えられた圧力は、タッチ・スクリーン・ディスプレイの一部を起動する。可動ハウジング要素が開または伸張位置のとき、無線通信装置は第2セットのユーザ機能を有し、この機能には無線電話機能,高度な無線電話機能およびメッセージ機能が含まれる。メッセージ機能には、電子メール,ファックスおよびショート・メッセージ・サービスが含まれる。
【0005】図1は、無線通信システム100のブロック図である。無線通信システム100は、リモート・トランシーバ101を含む。無線通信システム100において、リモート・トランシーバ101は、固定地理的エリア内の複数の無線通信装置と無線周波数(RF)信号を送受信する。無線通信装置103は、リモート・トランシーバ101が担当する地理的エリア内に含まれるような無線通信装置である。リモート・トランシーバ101と無線通信装置103との間で送信されるRF信号は、無線電話サービス,電子メール・サービス,ワイヤレス・ファックス・サービスおよびショート・メッセージ・サービスなどの無線通信サービスを提供する。本発明の他の同様に十分な実施例には、これらの通信サービスの他の組み合わせおよび他の無線通信サービスを含んでもよい。
【0006】無線通信装置103は、アンテナ105,本体ハウジング要素107,可動ハウジング要素109および可動ハウジング要素109を本体ハウジング要素107に結合するヒンジ111を含む。好適な実施例では、本体ハウジング要素107は、無線回路113,プロセッサ115およびユーザ・インタフェース117の一部を含む。ユーザ・インタフェース117は、ディスプレイ119,マイクロフォン121,スピーカ123およびキーパッド125を含む。ディスプレイ119,マイクロフォン121およびスピーカ123は、本体ハウジング要素107内に配置される。キーパッド125は、好適な実施例では可動ハウジング要素109内に配置される。さらに、無線通信装置103は、本体ハウジング要素107内に配置されたスイッチ127と、可動ハウジング要素109内に配置されたスイッチ起動装置129とを含む。本発明の他の同様に十分な実施例は、本体ハウジング要素と可動ハウジングとの間に構成要素を同様に配置した無線通信装置を含むことが考えられる。かかる実施例では、無線回路の少なくとも一部を本体ハウジング要素内に配置する。」(3頁3欄37行?4欄45行)

(ハ)「【0009】好適な実施例では、可動ハウジング要素109は、開位置および閉位置ともいう第1位置および第2位置とを有する。図2は、閉位置における図1の無線通信装置103の詳細図である。可動ハウジング要素109が閉位置のとき、タッチ・スクリーン・ディスプレイ119の一部を覆い、無線通信装置103は限定された第1セットのユーザ機能を有する。この限定されたセットのユーザ機能は、電話番号の入力,呼の開始および終了,電話番号のメモリからの呼出など無線電話機能のみを含む。この限定されたセットのユーザ機能は、今日の下層(low tier)無線電話で利用可能な機能に関連する。閉位置では、タッチ・スクリーン・ディスプレイ119の一部はユーザに露出される。この露出部分には、電話番号,信号強度,バッテリ・レベル,ローム情報(roaming information) など無線電話フィードバックを表示するデータ・ディスプレイ領域201がある。データ・ディスプレイ領域に表示される情報は、図4に示すように縦方向であり、以下では縦モード(portrait mode) という。
【0010】好適な実施例では、可動ハウジング要素109は、キーパッド125を含む。キーパッド125は、限られた数のファンクション・キーを含む複数の個別キーと、0?9の番号の個別キーを含む番号パッドとを含む。各個別キーは、可動ハウジング要素109内に配置される。各キーは、可動ハウジング要素109の第1面上に露出されたキーの第1部分を有し、キーの第2部分は可動ハウジング要素109の第2面上に露出される。キーは、可動ハウジング要素109が閉位置のときに、複数のキーがタッチ・スクリーン・ディスプレイ119のユーザ・データ領域(図示せず)に隣接して配置されるように配列される。タッチ・スクリーン・ディスプレイ119のユーザ・データ領域は、可動ハウジング要素109によって覆われ、キーパッド125の複数のキーに対応する複数のユーザ・データ・サブ領域に分割される。第1キーの第1部分がユーザによって押されると、第1キーの第2部分はタッチ・スクリーン・ディスプレイに対して圧力を与えて、対応するユーザ・データ・サブ領域を起動する。タッチ・スクリーン・ディスプレイ119の特定のユーザ・データ・サブ領域の起動は、対応する信号を生成し、この信号はプロセッサ115に返送され、この起動の意味を解釈する。この信号は、ディスプレイ・バス133を介して送出される。」(4頁5欄22行?6欄13行)

(ニ)「【0015】図2および図3における携帯無線通信装置103の詳細図において、可動ハウジング要素109はフリップである。可動ハウジング要素109の他の同様に十分な実施例も代用できることが理解される。これら他の実施例には、貝殻(clam shell)型のハウジング要素,スイベル(swivel)型のハウジング要素およびスライド型のハウジング要素が含まれる。
【0016】図6は、図2の無線通信装置103の断面図である。具体的には、図6は閉位置における可動ハウジング要素109を示し、ヒンジ111が可動ハウジング要素109を本体ハウジング要素107に結合する。ここで、本体ハウジング要素107は無線基板611およびディスプレイ119を含む。無線基板611は、図1の無線回路113およびプロセッサ115を有する。ディスプレイ119は、ディスプレイ119の第1部分が本体ハウジング要素107の第1面上で露出されるように本体ハウジング要素107に配置される。好適な実施例では、ディスプレイ119はタッチ・スクリーン・ディスプレイである。タッチ・スクリーン・ディスプレイ119は、無線通信装置の表示データを表示する従来のディスプレイ装置605と、タッチ・スクリーン・ディスプレイ119が起動されたときをプロセッサ115に指示する抵抗性フィルム607とを含む。」(5頁7欄25?47行)

(ホ)「【0018】キーパッド125は、可動ハウジング要素109が閉位置のときに動作可能となる。図7は、可動ハウジング要素109,キーパッド125および図6のタッチ・スクリーン・ディスプレイ119の分解図である。好適な実施例では、可動ハウジング要素109が閉位置のとき、キーパッド125の複数のキーはディスプレイ119に隣接する。複数のキーの第1部分701は、開口部603を介して可動ハウジング要素109の第1面上で露出される。複数のキーの第2部分703は、可動ハウジング要素109の第2面上で露出される。キーパッドは次のように動作する。まず第1に、キーパッドの第1キーは、可動ハウジング要素109の第1面と実質的に同一面上にある第1位置705でリセットされる。第2に、ユーザは、可動ハウジング要素の第1面上に露出されたキーパッド125の第1キーの第1部分を押す;第3に、この押下に応答して、第1キーは図7の点線によって表される第2位置707に移動する;第4に、図7の矢印709によって表される圧力がディスプレイ119の抵抗性フィルム607に加えられ、それによりディスプレイ119を起動する。」(5頁8欄13?32行)

上記(イ)乃至(ホ)の摘記事項、及びこの分野の技術常識によれば、
引用例1には、上記(イ)?(ハ)及び図1?3にあるように、「タッチ・スクリーン・ディスプレイ119」を備える「無線通信装置103」が開示されており、
上記(ニ)【0015】前段にあるように、該「無線通信装置103」は更に「フリップなどの可動ハウジング要素109」を有してなり、
上記(ホ)【0018】、図2にあるように、該「可動ハウジング要素109」には、「閉位置」すなわち「折りたたまれた状態」でユーザが操作可能な「キーパッド125」が設けられてなり、
上記(ハ)【0010】後段、(ニ)、(ホ)及び図6,7の記載によれば、ユーザが該「キーパッド125」の「キー601」を押すことで前記「タッチ・スクリーン・ディスプレイ119」に圧力を与え、「タッチ・スクリーン・ディスプレイ119」を「起動」(上記(イ)【請求項3】後段、(ホ)【0018】末尾)することが開示されており、『無線通信装置103のタッチ・スクリーン・ディスプレイ119の起動を制御する方法』が開示されているということができる。
したがって、引用例1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が開示されている。

(引用発明1)
「タッチ・スクリーン・ディスプレイ119を備える無線通信装置103のタッチ・スクリーン・ディスプレイ119の起動を制御する方法であって、
無線通信装置103のユーザが、フリップなどの可動ハウジング要素109上に設けられ、折りたたまれた状態で前記タッチ・スクリーン・ディスプレイ119に圧力を与えるキーパッド125のキー601を押し、
前記無線通信装置103のユーザが前記キー601を押すことで、タッチ・スクリーン・ディスプレイ119を起動する、ステップを特徴とする、無線通信装置103のタッチ・スクリーン・ディスプレイ119の起動を制御する方法。」


B.また、原審における拒絶の理由に引用した、特開平6-348374号公報(以下、「引用例2」という。)には、「コンピュータ・システムの電源制御方法および装置」として図面とともに以下の記載がある。

(ヘ)「【請求項1】 コンピュータ・システムの電源を制御する方法において:タッチスクリーン入力装置からのタッチ入力を検出するステップと;コンピュータ・システムがフルパワー・モードであれば、上記タッチ入力に対応する入力座標を決定し、それらの入力座標を中央処理システムに転送するステップと;コンピュータ・システムがパワーダウン・モードであれば、上記タッチ入力が検出された後、コンピュータ・システムの電源サブシステムへの主電源オン信号をアサートし、その電源オン信号で電源サブシステムに中央処理システムへ電源を供給させるステップと;からなるコンピュータ・システムの電源制御方法。」(2頁1欄)

上記の摘記事項、及びこの分野の技術常識より、引用例2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が開示されている。

(引用発明2)
「タッチスクリーン入力装置からのタッチ入力を検出し、コンピュータ・システムの電源サブシステムへの主電源オン信号をアサートし、その電源オン信号で電源サブシステムに中央処理システムへ電源を供給させるステップからなるコンピュータ・システムの電源制御方法。」


3 対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
まず、引用発明1の「無線通信装置103」は、上記(ニ)【0015】冒頭に「携帯無線通信装置103」ともあり、引用例1の図2,3からも明らかなように携帯可能な装置であって、上記(ロ)【0004】には「無線電話機能を含む」ともあるから、本願発明の「携帯電話(10)」に相当する。
また、引用発明1の「タッチ・スクリーン・ディスプレイ119」は、本願発明の「タッチ・スクリーン・ディスプレイ(20)」であり、引用発明1の「可動ハウジング要素109」は、本願発明の「可動ハウジング要素」である。
また、引用発明1の「キーパッド125」は、入力のための手段であるから、本願発明の「入力手段(70)」に相当する。
また、引用発明1の「キー601」と本願発明の「電源投入キー(9)」は、ともに「キー」である点で一致する。
そして、引用発明1の「タッチ・スクリーン・ディスプレイ119の起動」と、本願発明の「電源手段の(50)の接続」とは、ともに「携帯電話(10)」の『動作』である点で一致する。

したがって、両者は、以下の点で一致し、また相違する。

(一致点)
「タッチ・スクリーン・ディスプレイを備える携帯電話の動作を制御する方法であって、
携帯電話のユーザが、フリップなどの可動ハウジング要素上に設けられ、折りたたまれた状態で前記タッチ・スクリーン・ディスプレイに圧力を与える入力手段のキーを押し、
前記携帯電話のユーザが前記キーを押すことで、動作を行う、ステップを特徴とする、携帯電話の動作を制御する方法。」

(相違点)
a)「タッチ・スクリーン・ディスプレイ」に関し、本願発明は「装置に電源を入れる」ためのものであるのに対し、引用発明1はそのように構成されていない点。
b)制御対象の「動作」に関し、本願発明は「電源手段(50)の接続」であるのに対し、引用発明1は「タッチ・スクリーン・ディスプレイ119の起動」である点。
c)「キー」に関し、本願発明は「電源投入キー(9)」であるのに対し、引用発明1は「キー601」である点。
d)「キー」を押すことで、「動作」を行うまでのステップの詳細に関し、
本願発明は、「前記タッチ・スクリーン・ディスプレイ(20)上の前記電源投入キーの位置に対応した位置が押されたことを示す信号が出力され、該信号を受けると電圧制御スイッチ(2)は前記携帯電話(10)の電源を入れる」のに対し、
引用発明1には「キー601を押すことで、タッチ・スクリーン・ディスプレイ119を起動する」とあるのみで、その詳細は不明である点。


4 当審の判断
まず、相違点a)の「装置に電源を入れる」ための「タッチ・スクリーン・ディスプレイ(20)」について検討する。
そもそも複数の入力部を備える入力手段の各入力部(例えば、キーボード、キーパッドの各キー)にどのような機能・動作を割り当てるかは、ユーザインタフェースとして様々な得失はあるにせよ、設計的事項の範疇であり、
引用発明1の「タッチ・スクリーン・ディスプレイ119」も複数の入力部を備える入力手段であることは、引用例1の上記(ハ)【0010】中段の「複数のユーザ・データ・サブ領域」なる記載や、引用例1図3の305等からも明らかなことであるが、
引用発明2には、「タッチスクリーン入力装置からのタッチ入力を検出し、コンピュータ・システムの電源サブシステムへの主電源オン信号をアサートし、その電源オン信号で電源サブシステムに中央処理システムへ電源を供給させるステップからなるコンピュータ・システムの電源制御方法。」が記載されており、入力手段としてのタッチスクリーンをコンピュータ・システム(装置)の電源制御に用いることは公知の技術であるから、これを引用発明1の「タッチ・スクリーン・ディスプレイ119」に適用して、装置の「電源制御」すなわち「装置に電源を入れる」ための「タッチ・スクリーン・ディスプレイ(20)」とすることは、当業者であれば容易なことに過ぎない。

つぎに、相違点b)の「電源手段(50)の接続」と「タッチ・スクリーン・ディスプレイ119の起動」について検討する。
引用発明1の「タッチ・スクリーン・ディスプレイ119の起動」に際しては、「起動」と言う以上少なくとも例えば表示デバイスとしての「ディスプレイ」に電源が供給されるなどの動作がおこなわれることは技術常識であって、デバイスに電源を供給するためには「電源手段」に電気的な「接続」が行われることも当然のことである。
そして電源に制約のある携帯機器において節電のためには、単に一部のデバイスの電源制御のみならず、携帯機器全体としての電源制御を行うことも通常のことであるから、引用発明1の「タッチ・スクリーン・ディスプレイ119の起動」を制御する方法を、前記引用発明2の適用により携帯電話の電源を入れる(携帯電話内の)「電源手段(50)の接続」を制御する方法とすることも、当業者であれば容易なことに過ぎない。

つぎに、相違点c)の「電源投入キー(9)」について検討する。
上記相違点a)およびb)において検討したように、引用発明1に引用発明2を適用し、引用発明1の「タッチ・スクリーン・ディスプレイ」を「装置に電源を入れる」ためのものとし、引用発明1の制御方法を携帯電話の電源を入れる(携帯電話内の)「電源手段(50)の接続」を制御する方法とした場合に、「タッチ・スクリーン・ディスプレイ」上の「装置に電源を入れる」ための領域(ユーザ・データ・サブ領域)に対応して可動ハウジング要素上に設けられる「キー」の一つは、電源を投入するための「キー」となるのであるから、これを「電源投入キー(9)」と称することができるのは当然のことであって、相違点c)は格別のことではない。

最後に、相違点d)の「キー」を押してから「動作」を行うまでのステップの詳細について検討する。
そもそも複数の入力部を備える入力手段の各入力部が操作された場合に、操作された入力部に対応した『信号』が出力され、機器が動作することは、例えばパソコンのキーボード、キーパッドの各キーを押すと、押されたキーに対応した文字などが表示されることからも明らかなことであるが、
引用例1の上記(ハ)【0010】後段には、「タッチ・スクリーン・ディスプレイ119のユーザ・データ領域は、可動ハウジング要素109によって覆われ、キーパッド125の複数のキーに対応する複数のユーザ・データ・サブ領域に分割される。第1キーの第1部分がユーザによって押されると、第1キーの第2部分はタッチ・スクリーン・ディスプレイに対して圧力を与えて、対応するユーザ・データ・サブ領域を起動する。タッチ・スクリーン・ディスプレイ119の特定のユーザ・データ・サブ領域の起動は、対応する信号を生成し、この信号はプロセッサ115に返送され、この起動の意味を解釈する。」とあり、引用発明1の「タッチ・スクリーン・ディスプレイ119」においても、押された位置に対応する信号が出力され、動作するものである。
そして、引用発明2には「タッチスクリーン入力装置からのタッチ入力を検出し、コンピュータ・システムの電源サブシステムへの主電源オン信号をアサートし、その電源オン信号で電源サブシステムに中央処理システムへ電源を供給させるステップからなるコンピュータ・システムの電源制御方法。」が記載されており、「タッチスクリーン入力装置からのタッチ入力」に対応して「電源オン信号」が出力され、「コンピュータ・システムの電源制御」動作が行われているから、
上記相違点a)?c)の検討を踏まえれば、引用発明1に引用発明2を適用した電源制御方法においても、「電源投入キー(9)」を押すことで、「前記タッチ・スクリーン・ディスプレイ(20)上の前記電源投入キーの位置に対応した位置が押されたことを示す信号」が出力され、該信号を受けると「前記携帯電話(10)の電源を入れる」動作が行われるものである。
また、電子機器の電源を入れる場合に「電圧制御スイッチ」のような電子制御のスイッチがもちいられることは、周知の慣用手段に過ぎない。
したがって、引用発明1に引用発明2を適用し、「電源投入キー(9)」を押すことで、「前記タッチ・スクリーン・ディスプレイ(20)上の前記電源投入キーの位置に対応した位置が押されたことを示す信号が出力され、該信号を受けると電圧制御スイッチ(2)は前記携帯電話(10)の電源を入れる」ようになすこと、すなわち相違点d)は格別のことではない。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明1、2及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。


5 むすび
したがって、本願発明は、引用発明1、2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-18 
結審通知日 2011-02-21 
審決日 2011-03-04 
出願番号 特願2000-584367(P2000-584367)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西脇 博志  
特許庁審判長 石井 研一
特許庁審判官 宮田 繁仁
萩原 義則
発明の名称 携帯電話とその電源投入方法  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 大貫 敏史  

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