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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1240251
審判番号 不服2009-12583  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-07-10 
確定日 2011-07-14 
事件の表示 特願2003- 42668「印刷装置の制御方法、印刷装置の制御プログラム、印刷装置の制御プログラムを記録した記録媒体、及び印刷システム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月 7日出願公開、特開2003-316558〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年2月20日(優先権主張 平成14年2月20日)の出願であって、平成21年4月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し
て、平成21年7月10日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成21年7月10日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年7月10日付けの手続補正を却下する。

[理由]
2-1.補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1(以下、「補正後の請求項
1」という。)の記載は、以下のとおり補正された。

「バッテリ電源により駆動され、受信した制御データ及び印刷データに基づいて印刷を実行する印刷装置の動作を、バッテリ電源の残量に応じて制御する印刷装置の制御方法であって、
(a) 印刷装置からバッテリ電源の状態を示すステータス情報を取得し
て、前記バッテリ電源の残量を判定する工程と、
(b) 前記判定の結果に基づいて、前記バッテリ電源の残量が所定値以上の第1の状態のときには正規処理モードの設定を行ない、前記バッテリ電源の残量が前記第1の状態より低い第2の状態のときには省電力処理モードの設定を行ない、前記バッテリ電源の残量が前記第2の状態より低い第3の状態のときには印刷停止モードの設定を行なう工程と、
(c) 印刷要求があったときに、前記設定された処理モードに応じて、前記正規処理モードにおいては前記印刷装置を定格値で動作させるように制御する正規制御データ及び正規印刷データからなる正規データを生成し、前記省電力処理モードにおいては少なくとも前記正規印刷データより少ない消費電力により印刷可能な省電力印刷データを含む省電力データを生成する工程と、
(d) 前記正規処理モードまたは前記省電力処理モードにおいて生成された前記正規データまたは前記省電力データを前記印刷装置に送信する工程
と、
を備え、
前記工程(b)で省電力処理モードが設定された場合、前記工程(c)において、印刷対象がイメージ画像か否かで異なる複数種類のマスクパターンと前記正規印刷データとの論理積により前記省電力印刷データを生成することを特徴とする印刷装置の制御方法。」

2-2.補正の目的
本件補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項各号の目的に該当するかどうか検討する。

2-2-1.特許請求の範囲の減縮(平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号)

本件補正前の平成21年1月15日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1(以下、「補正前の請求項1」という。)の記載は以下のとおりである。

「バッテリ電源により駆動され、受信した制御データ及び印刷データに基づいて印刷を実行する印刷装置の動作を、バッテリ電源の残量に応じて制御する印刷装置の制御方法であって、
(a) 印刷装置からバッテリ電源の状態を示すステータス情報を取得し
て、前記バッテリ電源の残量を判定する工程と、
(b) 前記判定の結果に基づいて、前記バッテリ電源の残量が所定値以上の第1の状態のときには正規処理モードの設定を行ない、前記バッテリ電源の残量が前記第1の状態より低い第2の状態のときには省電力処理モードの設定を行ない、前記バッテリ電源の残量が前記第2の状態より低い第3の状態のときには印刷停止モードの設定を行なう工程と、
(c) 印刷要求があったときに、前記設定された処理モードに応じて、前記正規処理モードにおいては前記印刷装置を定格値で動作させるように制御する正規制御データ及び正規印刷データからなる正規データを生成し、前記省電力処理モードにおいては少なくとも前記正規印刷データより少ない消費電力により印刷可能な省電力印刷データを含む省電力データを生成する工程と、
(d) 前記正規処理モードまたは前記省電力処理モードにおいて生成された前記正規データまたは前記省電力データを前記印刷装置に送信する工程
と、
を備え、
前記工程(b)で省電力処理モードが設定された場合、前記第2の状態を複数段階に分けて判定し、前記工程(c)において、判定されたそれぞれの段階に対応して異なる複数種類のマスクパターンと前記正規印刷データとの論理積により前記省電力印刷データを生成することを特徴とする印刷装置の制御方法。」

補正前の請求項1の「前記工程(b)で省電力処理モードが設定された場
合、前記第2の状態を複数段階に分けて判定し、前記工程(c)において、判定されたそれぞれの段階に対応して異なる複数種類のマスクパターンと前記正規印刷データとの論理積により前記省電力印刷データを生成すること」とある「複数種類のマスクパターン」は、バッテリ電源の残量が所定値以上の第1の状態より低い、省電力処理モードの設定が行われる第2の状態のときに、第2の状態を複数の段階に分けてバッテリ電源の状態に応じて設けられたものである。
このことは、補正前の請求項1が記載された平成21年1月15日付けの手続補正書と同日に提出された意見書に
「(2)補正内容の説明
請求項1は、旧請求項4に記載されていた第2の状態を複数段階に分けて判定する処理と、旧請求項5に記載されていたマスクパターンとの論理積を行う処理と、旧請求項1に取り込んだものです。この際に、明細書の記載に基づいて表現を若干修正しました。補正の根拠は(0047)、(005
1)及び(0052)です。」
と記載された出願当初の明細書の段落【0051】の記載
「 【0051】
また、バッテリ電源の第2の状態を複数の段階に分けて判定する場合に
は、解像度の異なる複数種類のマスクパターンを設けてバッテリ電源の状態に応じてマスクバターンを選択するよう構成することも可能である。さら
に、紙送り速度を段階的に減速させる複数の省電力制御データを生成するよう構成することも可能である。これらの構成により、バッテリ電源の状態に応じてより木目細かな対応が可能となる。」
からも明らかである。
これに対して、補正後の請求項1の「前記工程(b)で省電力処理モードが設定された場合、前記工程(c)において、印刷対象がイメージ画像か否かで異なる複数種類のマスクパターンと前記正規印刷データとの論理積により前記省電力印刷データを生成すること」とある「複数種類のマスクパターン」は、「印刷対象がイメージ画像か否かで異なる」ものであり、バッテリ電源の状態に応じたものではない。
本件補正について、審判請求書に
「(b)補正内容の説明
請求項1は、引用文献1との違いをだすために、複数種類のマスクパターンを適用するにあたって印刷対象がイメージ画像か否かでマスクパターンを使い分ける構成に補正したものです。補正の根拠は段落(0053)、(0082)です。請求項11も同様の補正です。 」
と記載されている出願当初の明細書の段落【0053】及び段落【008
2】の記載
「 【0053】
マスクパターン62は、消費電力を少なくするという目的と品質劣化をどの程度まで許容するか等の観点から、種々の構成が可能である。図3(b)では、解像度を約3分の1にしたマスクパターンの例を示す。また、解像度の低下は同じであっても、印刷対象の特徴に応じたマスクバターンを使用することにより、印刷品質の劣化を抑制可能である。例えば、中央部分にポイントがあり背景が重要な意味を持たないイメージ画像の印刷の場合には、背景部分の解像度を落して中央部分の解像度を上げるようなマスクパターンの構成とすることにより、品質劣化を抑制しつつ効率的な省電力印刷が可能となる。特にPOSプリンタ等において、ロゴの印刷等同じイメージ画像を連続して印刷する場合には、これらのイメージに対応したマスクパターンを用意しておくことにより、印刷画像にあった適切な省電力印刷データの作成が可能となる。」、
「 【0082】
更に、印刷マスクパターン構成を、キャラクタを構成するドットパターンの特性、印刷イメージを構成するドットパターンの特性を考慮して生成することにより、印字品質の劣化を抑制することも可能となる。」、
からも、「印刷対象がイメージ画像か否かで異なる」ことが、バッテリ電源の状態に応じて異なることを限定したものとはいえない。
特に段落【0053】に消費電力の抑制が同じと考えられる「解像度の低下は同じであっても」と記載されていることからも、「印刷対象がイメージ画像か否かで異なる」ことが、バッテリ電源の状態に応じて異なることと関係がないことは明らかである。
「印刷対象がイメージ画像か否かで異なる」ことが、「複数種類のマスクパターン」を限定することであっても、それによりバッテリ電源の状態に応じて異なることの限定がなくなるのであるから、補正後の請求項1は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定することにより、特許請求の範囲の減縮を目的として補正されたものとはいえない。
また、補正前の請求項2ないし12は、補正前の請求項1を引用するものであり、補正前の請求項13ないし15は印刷システムに関する発明であるし、「第2の状態を複数段階に分けてそれぞれの段階に対応して異なる複数種類のマスクパターン」と、バッテリ電源の状態に応じて異なることが限定されているから、補正後の請求項1は、補正前の請求項のいずれかに記載した発明特定事項を限定することにより、特許請求の範囲の減縮を目的として補正されたものとはいえない。

2-2-2.明りょうでない記載の釈明(平成18年改正前特許法第17条の2第4項第4号)

補正前の請求項1の記載は上記のとおり明りょうであるから、補正後の請求項1が、明りょうでない記載の釈明を目的として補正されたものとはいえない。

2-2-3.請求項の削除(平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号)
補正後の請求項1が、請求項の削除を目的として補正されたものでないことは明らかである。

2-2-4.誤記の訂正(平成18年改正前特許法第17条の2第4項第3号)
補正後の請求項1が、誤記の訂正を目的として補正されたものでないことは明らかである。

したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項各号のいずれの目的にも該当しない。

2-3.むすび
以上のように、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に適合しないので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下する。

3.本願発明について
3-1.本願発明
平成21年7月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年1月15日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「バッテリ電源により駆動され、受信した制御データ及び印刷データに基づいて印刷を実行する印刷装置の動作を、バッテリ電源の残量に応じて制御する印刷装置の制御方法であって、
(a) 印刷装置からバッテリ電源の状態を示すステータス情報を取得し
て、前記バッテリ電源の残量を判定する工程と、
(b) 前記判定の結果に基づいて、前記バッテリ電源の残量が所定値以上の第1の状態のときには正規処理モードの設定を行ない、前記バッテリ電源の残量が前記第1の状態より低い第2の状態のときには省電力処理モードの設定を行ない、前記バッテリ電源の残量が前記第2の状態より低い第3の状態のときには印刷停止モードの設定を行なう工程と、
(c) 印刷要求があったときに、前記設定された処理モードに応じて、前記正規処理モードにおいては前記印刷装置を定格値で動作させるように制御する正規制御データ及び正規印刷データからなる正規データを生成し、前記省電力処理モードにおいては少なくとも前記正規印刷データより少ない消費電力により印刷可能な省電力印刷データを含む省電力データを生成する工程と、
(d) 前記正規処理モードまたは前記省電力処理モードにおいて生成された前記正規データまたは前記省電力データを前記印刷装置に送信する工程
と、
を備え、
前記工程(b)で省電力処理モードが設定された場合、前記第2の状態を複数段階に分けて判定し、前記工程(c)において、判定されたそれぞれの段階に対応して異なる複数種類のマスクパターンと前記正規印刷データとの論理積により前記省電力印刷データを生成することを特徴とする印刷装置の制御方法。」

3-2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-328693号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の記載がなされている。

(1)「【請求項7】 記録データに従って被記録媒体に画像を記録する記録装置における記録方法であって、
電源としての電池の残留電力容量を検知する工程と、
電池の残留電力容量に応じて記録ヘッドへの印加エネルギーを変更する工程と、
を有することを特徴とする記録方法。」

(2)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような従来のインク
ジェットプリンタ装置では、電池の電力容量を監視し、その電力容量が所定値以下になるとユーザに電池の充電を促している。しかし、電池の容量が記録可能な電力容量の閾値以下に低下してしまった後では記録不能となってしまい、記録途中のデータを損失してしまう虞がある。そこで予めユーザに電池残量に基づく警報を発生し、電池残量が所定値以下になった後でも、ある程度の時間その電池を使用して駆動できるようにすることが望まれてい
た。」

(3)「【0008】
【実施例】以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施例を詳細に説明する。
[第1実施例]図1は本発明の第1実施例のインクジェットプリンタの概略構成を示すブロック図である。
【0009】図1において、500はメインコントローラで、プリンタ装置全体の動作を制御するとともに、ホストコンピュータ520より送られてくる印刷データを受信して印刷イメージに展開して、紙等の被記録媒体に印刷する等の制御を行っている。このメインコントローラ500は、マイクロプロセッサ等のCPU500a,CPU500aの制御プログラムや各種データを記憶しているROM500b,CPU500aのワークエリアとして使用され、各種データを一時的に保存するRAM500c等を備えている。513は、例えばニッカド電池等のバッテリを有する二次電池で、このプリンタ装置に電力を供給している。501は電力容量検知回路で、二次電池513の出力電圧が所定の電圧レベルにあるか否かを検出し、その結果をメインコントローラ500に出力している。」

(4)「【0017】図4(c)は二次電池513の電力容量が通常の場合よりも低下した時の駆動パルスを示し、図4(d)は更に二次電池513の電力容量が低下した時の駆動パルスを示している。
【0018】図5は、図4に示す通常の駆動パルス(b)と、二次電池513の電力容量が低下した時の駆動パルス(c)による二次電池513の放電特性を比較して示す図である。
【0019】図5において、2つの駆動パルスの放電特性の差は、プリパルスT1のパルス幅(エネルギー)に応じて発生しており(第2のパルスのパルス幅はいずれの場合も同じである)、このプリパルスの幅T1を変えることにより、電池513の放電特性が変化することがわかる。
【0020】図6は本実施例のプリンタ装置のメインコントローラ500における制御処理を示すフローチャートで、この処理を実行する制御プログラムはROM500bに記憶されている。
【0021】まずステップS1で、電力検知回路501よりの検知信号を入力し、その検知信号に基づいて二次電池513の残量電池容量(電力容量)を検出する。その残量が通常値であればステップS2からステップS4に進み、図4(b)に示すようにプリパルスのパルス幅をT1に設定する情報をRAM500cのプリパルス幅領域に記憶する。一方、電池513の残留電力が通常よりもやや低下している時はステップS3よりステップS6に進
み、プリパルスの幅をT10(T10<T1)に設定する情報をRAM500cに記憶する。またステップS3で二次電池513の残留電力量がかなり低下している時はステップS3よりステップS5に進み、プリパルスの幅をT11(T11<T10)に設定するための情報をRAM500cに記憶する。
【0022】尚、これら二次電池513の残留電力量の検出は、検知回路501の出力信号レベルと所定値とを比較することにより求めることができ
る。
【0023】こうしてプリパルスの幅が設定されるとステップS7に進み、プリントの開始が指示されたかどうかを判断し、プリントが開始されるとステップS8に進み、キャリッジモータ503を回転駆動させてキャリッジ1の走査を開始する。こうしてステップS9で記録ヘッド5を駆動するタイミングになるとステップS10に進み、ステップS4?ステップS6のいずれかの処理でRAM500cに記憶されているプリパルス幅情報を読出し、その情報に対応するパルス幅のプリパルスを出力する。次に所定の時間パルスをオフし、その後実際にプリントを行うために第2のパルスをパルス幅T3で出力する。尚、これらの制御はドライバコントローラ510を介して行われる。
【0024】こうして1回のインク吐出によるプリント動作が終了するとステップS11に進み、1ラインのデータを全てプリントしたかどうかを判断する。1ラインのプリント動作が終了していない時はステップS9に戻り、次のプリントタイミングを待って、前述と同様に記録ヘッド5を駆動してプリントを行う。こうして1ライン分のプリント処理が終了するとステップS12に進み、キャリッジ1をホーム位置に戻す。次にステップS13に進
み、1ページ或いは全印刷データのプリントが終了したかどうかを判断し、まだ印刷すべきデータがある時はステップS1に戻り、前述の処理を実行する。
【0025】以上説明したように第1実施例によれば、ヒータ104に印加する駆動パルスのパルス幅を制御することによって電池513の消費電力を低減し記録可能な量を増やすことができる。」

(5)「【0033】……
[第4の実施例]図12は本発明の第4実施例のインクジェットプリンタの概略構成を示すブロック図で、前述の実施例と共通する部分は同じ番号で示し、それらの説明を省略する。
【0034】113はデータ変換回路で、通常のプリントモードでのプリント時に加えて、図13に示すようなドラフト記録を行うプリントモードを有している。
【0035】図13はドラフト記録モードの一例を示す図で、(a)は通常のプリントモード時における文字「A」の記録例を示し、(b)は記録すべき画素を1画素おきに間引いて記録することにより、記録される画素数を元の画素数の約半分にした記録例を示している。このようにドラフト記録を行うことにより、記録スピードを約2倍にすることが出来る。この時、記録画素の数が約半分になるため、記録に要する消費電力も約半分になる。
【0036】このようにして、電池513の電力容量が所定値以下に低下したことを検知すると、データ変換回路113に制御信号を出力して、記録
ヘッド5に出力するプリントデータを図13の(b)に示すように約半分に間引いたドラフト画像を印刷する。これによりプリンタ全体の消費電力を低く抑えることができると共に、プリントされた画像が通常とは異なった画像になるため、ユーザが電池513の残量が少なくなったことを認識できる。
【0037】尚、この様な間引きプリントを行うと、明らかに異なる画像となるため、ユーザが必要に応じて、スイッチなどを操作することにより、このドラフト記録モードを使用するかしないかを選択できるようにしても良
い。。
【0038】このように第4実施例では、ドラフト記録モードを利用することにより、二次電池の電力容量がある一定値以下になると自動的にドラフト記録モード、または記録画素数を自動的に少なくするモードに移行する。これにより、電池の容量が所定値以下に低下した時、記録データの記録画素数を低下することによって記録画像の濃度を低下させ、ユーザに二次電池の電力容量が少なくなったことを知らせることが出来る。」

したがって、引用例には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「記録データに従って被記録媒体に画像を記録する記録装置における記録方法であって、
電源としての電池の残留電力容量を検知する工程と、
電池の残留電力容量に応じて、通常のプリントモード、又は記録画素の数が約半分になるため記録に要する消費電力も約半分になるように、記録すべき画素を1画素おきに間引くように、記録データを変更するドラフト記録モードとする工程と、
を有することを特徴とする記録方法。」

3-3.対比
引用発明の「電源としての電池」、「記録データ」、及び「記録装置」
は、本願発明の「バッテリ電源」、「印刷データ」、及び「印刷装置」にそれぞれ対応するから、引用発明は「受信した制御データ及び印刷データに基づいて」とするものではないが、本願発明とは、バッテリ電源により駆動され、印刷データに基づいて印刷を実行する印刷装置の動作を、バッテリ電源の残量に応じて制御する印刷装置の制御方法である点で共通する。
引用発明の「電源としての電池の残留電力容量を検知する工程」は、「印刷装置からバッテリ電源の状態を示すステータス情報を取得して」とするものではないが、本願発明とは、バッテリ電源の残量を判定する工程である点で共通する。
引用発明の「通常のプリントモード」及び「ドラフト記録モード」は、本願発明の「正規処理モード」及び「省電力処理モード」にそれぞれ対応するから、引用発明は「印刷停止モード」について特定はないが、本願発明と
は、バッテリ電源の残量を判定する工程の結果に基づいて、前記バッテリ電源の残量が所定値以上の第1の状態のときには正規処理モードの設定を行ない、前記バッテリ電源の残量が前記第1の状態より低い第2の状態のときには省電力処理モードの設定を行なう工程を備える点で共通する。
引用発明で「通常のプリントモード」としたときには、通常のプリントがなされるのであるから、本願発明が「(c) 印刷要求があったときに、前記設定された処理モードに応じて、前記正規処理モードにおいては前記印刷装置を定格値で動作させるように制御する正規制御データ及び正規印刷データからなる正規データを生成し」とする点と変わりはない。
引用発明の「記録画素の数が約半分になるため記録に要する消費電力も約半分になるように、記録すべき画素を1画素おきに間引くように、記録データを変更する」ことは、本願発明の「少なくとも前記正規印刷データより少ない消費電力により印刷可能な省電力印刷データを含む省電力データを生成する」ことに対応するから、本願発明が「(c) 印刷要求があったときに、前記設定された処理モードに応じて、」「前記省電力処理モードにおいては少なくとも前記正規印刷データより少ない消費電力により印刷可能な省電力印刷データを含む省電力データを生成する」点で共通する。
したがって、本願発明と引用発明とを対比すると、次の点で一致する。

「バッテリ電源により駆動され、印刷データに基づいて印刷を実行する印刷装置の動作を、バッテリ電源の残量に応じて制御する印刷装置の制御方法であって、
(a) 前記バッテリ電源の残量を判定する工程と、
(b) 前記判定の結果に基づいて、前記バッテリ電源の残量が所定値以上の第1の状態のときには正規処理モードの設定を行ない、前記バッテリ電源の残量が前記第1の状態より低い第2の状態のときには省電力処理モードの設定を行なう工程と、
(c) 印刷要求があったときに、前記設定された処理モードに応じて、前記正規処理モードにおいては前記印刷装置を定格値で動作させるように制御する正規制御データ及び正規印刷データからなる正規データを生成し、前記省電力処理モードにおいては少なくとも前記正規印刷データより少ない消費電力により印刷可能な省電力印刷データを含む省電力データを生成する工程と、
を備えることを特徴とする印刷装置の制御方法。」

また次の点で相違する。

相違点1
本願発明は「受信した制御データ及び印刷データに基づいて」、「(a)
印刷装置からバッテリ電源の状態を示すステータス情報を取得して、」、及び「(d) 前記正規処理モードまたは前記省電力処理モードにおいて生成された前記正規データまたは前記省電力データを前記印刷装置に送信する工程と、」とあるように、印刷装置の外部から印刷装置を制御する方法であるのに対して、引用発明は外部から印刷装置である記録装置を制御することの特定はされていない点。

相違点2
本願発明は「正規処理モード」及び「省電力処理モード」だけでなく、
「(b) 前記判定の結果に基づいて」、「前記バッテリ電源の残量が前記第2の状態より低い第3の状態のときに」設定する「印刷停止モード」を備えているのに対して、引用発明はそのようなモードについての特定はされていない点。

相違点3
本願発明は「前記工程(b)で省電力処理モードが設定された場合、前記第2の状態を複数段階に分けて判定し、前記工程(c)において、判定されたそれぞれの段階に対応して異なる複数種類のマスクパターンと前記正規印刷
データとの論理積により前記省電力印刷データを生成する」のに対して、引用発明は、どのように記録データを変更することで、省電力印刷データといえる、記録に要する消費電力が約半分になるように記録すべき画素を1画素おきに間引くようにした記録データを生成するのか、具体的な特定のない
点。

3-4.相違点に対する判断
相違点1
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-71580号公報には、「ホスト装置からプリント装置にプリントデータを送信し、前記プリント装置は、前記プリントデータに基づいて、電池を駆動電源として被プリント媒体に画像をプリントするプリントシステムにおいて、
前記プリント装置は、前記ホスト装置からの要求にしたがって、前記電池の電力残量情報を前記ホスト装置に送信する送信手段を備え、
前記ホスト装置は、前記プリント装置に前記プリントデータを送信する前に、前記プリント装置から受信した前記電池の電力残量情報に応じて、前記プリント装置のプリントモードを変更する変更手段を備えた
ことを特徴とするプリントシステム。」(請求項9)が記載されており、引用発明においても、記録装置の外部から記録装置を制御することに困難な点はない。
また、前記特開2000-71580号公報に、
「【0058】(他の実施形態)上述した第1、第2の実施形態の場合は、ホスト装置としてのコンピュータ、プリント装置、および電池パックとの3者によって、通信手段により結ばれたプリントシステムが構成されている。しかし、プリント装置に、他の2者の機能の一部または全てを兼有させるようにしてもよい。」
と記載されていることから、引用発明において、記録装置自体で省電力のための制御を行っていた点を、外部の装置からの制御とすることは、設計事項といえる程度のことでもある。

相違点2
バッテリ電源の状態に応じて印刷を停止することは、本願の明細書の段落【0002】【従来の技術】に記載されているとおり、従来から知られていたことであり、引用発明においても、本願発明の「正規処理モード」及び
「省電力処理モード」に加えて、更に「印刷停止モード」に相当するモードを備えることに困難な点はない。
また、前記特開2000-71580号公報に、電池の電力残量に応じて通常プリントモード、低速プリントモード、又はエラーコードをセットして処理を終了することが記載(図4等)されていることからも、引用発明において、更に「印刷停止モード」に相当するモードを備えることに困難な点がないことは明らかである。

相違点3
前記(4)の記載、特に「電池513の残留電力が通常よりもやや低下している時はステップS3よりステップS6に進み、……」及び「二次電池513の残留電力量がかなり低下している時はステップS3よりステップS5に進み、……」と記載されているように、引用例には、電池の状態を複数段階に判定し、その段階に応じて消費電力を低下させる程度を変更することが示されている。
引用発明は、「記録画素の数が約半分になるため記録に要する消費電力も約半分になるように、記録すべき画素を1画素おきに間引くように、記録
データを変更する」ものであるが、「記録画素の数が約半分になるため記録に要する消費電力も約半分になるように」との記載から明らかなように、記録画素の数に応じて消費電力が変更できることは当業者に自明なことであ
る。
したがって、引用発明において、「記録画素の数が約半分になるため記録に要する消費電力も約半分になるように、記録すべき画素を1画素おきに間引くように、記録データを変更するドラフト記録モード」を、複数段階の電池の状態に応じた、複数種類の間引きの画素数になるように、間引きの手段として周知のマスクパターンとの論理積演算により、記録データを変更するモードとすることは、当業者が容易になしえることである。

上記のとおり、引用発明において、各相違点を本願発明のようにすることに困難な点はないから、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3-5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-05-11 
結審通知日 2011-05-17 
審決日 2011-06-01 
出願番号 特願2003-42668(P2003-42668)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中田 剛史  
特許庁審判長 加藤 恵一
特許庁審判官 溝本 安展
吉村 博之
発明の名称 印刷装置の制御方法、印刷装置の制御プログラム、印刷装置の制御プログラムを記録した記録媒体、及び印刷システム  
代理人 上柳 雅誉  
代理人 須澤 修  
代理人 宮坂 一彦  

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