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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
管理番号 1240258
審判番号 不服2009-18861  
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-05 
確定日 2011-07-14 
事件の表示 特願2004-115043「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年10月27日出願公開、特開2005-300800〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成16年 4月 9日の出願であって、平成21年 6月26日付で拒絶査定がなされ、同年10月 5日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされ、その後、審判において送付した平成22年12月24日付の拒絶理由通知に対して平成23年 3月18日付で意見書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1ないし2に係る発明は、平成21年10月 5日付手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「【請求項1】
転写材上の未定着画像を形成する画像形成部と、当該転写材上の未定着画像を挟持加熱して定着させる定着装置を有する画像形成装置において、
前記定着装置は、未定着画像に当接する定着ローラと、前記定着ローラに当接すると共に前記定着ローラを加熱する加熱ベルトと、前記加熱ベルトを加熱する熱源と、前記定着ローラに当接している前記加熱ベルトの当接領域の一部を押圧する押圧部材とを有し、かつ、
前記定着ローラと前記加熱ベルトとが当接している当接領域の圧力分布は前記加熱ベルトの走行方向にみて非対称であり、前記押圧部材が押圧する前記加熱ベルトの走行方向上流側の圧力が高いことを特徴とする画像形成装置。」

3.引用例の記載
当審において平成22年12月24日付で通知した拒絶理由で引用した本願出願前に日本国内または外国において頒布された刊行物である引用例1:特開2003-122185号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は、当審にて付与。)

(1a)「【0007】また、本発明は、定着手段に対するクリーニング性と外部加熱効果を確保することができる定着装置にを(当審注:「定着装置を」の誤記であると認める。)提供することを目的とする。・・・(略)・・・」

(1b)「【0014】
【発明の実施の形態】 図1は本発明の一実施例を示す。・・・(略)・・・。
【0015】・・・(略)・・・
【0016】クリーニング手段としての無端状のクリーニング部材であるクリーニングベルト19は、内部に加熱手段としての補助加熱ヒータ20を有する中空のクリーニングローラ21と補助ローラ22に架け渡されて張られ、補助ローラ22により定着ベルト15に押圧されて定着ベルト15に圧接する。クリーニングローラ21は駆動手段としての駆動モータ23(図2参照)により図示しない伝達系を介して回転駆動され、・・・(略)・・・。」

(1c)「【0031】図5は本発明の別の実施例を示す。この実施例の定着装置では、上記実施例において、定着ベルト15、加熱ローラ11、定着ベルトローラ12、ヒータ13、14の代りに、加熱手段としての加熱ヒータ39を内部に有する定着ローラ40が用いられ、この定着ローラ40は加熱ヒータ39により加熱される。・・・(略)・・・。
【0032】・・・(略)・・・
【0033】加圧ローラ16は定着ローラ40に圧接されて定着ニップ部を形成し、クリーニングベルト19は補助ローラ22により押圧されて定着ローラ40に当接し定着ローラ40のクリーニング及び加熱を行う。トナーTを担持した記録材としての用紙Pは、入口ガイド板24により案内されて定着ローラ40と加圧ローラ16との間に送り込まれ、定着ニップ部で加熱及び加圧により未定着トナー像Tが定着された後、排紙ガイド板25、26により案内されて排紙ローラ27により排出される。
【0034】この実施例によれば、加熱手段としての補助加熱ヒータ20を有し定着手段としての定着ローラ40の表面に当接して定着ローラ40のクリーニング及び加熱を行うクリーニング手段としてのクリーニングベルト19を備え、・・・(略)・・・。
【0035】・・・(略)・・・。
【0036】さらに、この実施例によれば、・・・(略)・・・できると共に、常に安定して定着ローラ40に外部から熱を供給することができて定着ローラ40表面の温度ムラを防止することができ、定着ローラに対するクリーニング性と外部加熱効果を確保することができる。」

(1d)「【0037】図6は本発明の他の実施例を示す。この実施例はカラー画像形成装置の一形態である。・・・(略)・・・。感光体41の周りには、クリ-ニング装置42、除電ランプ43、帯電手段としての帯電器44、現像手段としてのリボルバ現像ユニット45の選択された現像器、中間転写ベルト46などが配置されている。
【0038】・・・(略)・・・。図示しない露光手段としての書き込み光学ユニットは、複数色の画像データ、例えばブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色の画像データを順次に光信号47に変換して感光体41に各色の画像データに対応した光書き込みを行い、感光体41上に複数の静電潜像を順次に形成する。
【0039】・・・(略)・・・。
【0040】・・・(略)・・・。この中間転写ベルト46は、・・・(略)・・・各色のトナー像が順次に重ねて転写されることによりフルカラー画像が形成される。
【0041】・・・(略)・・・。
【0042】用紙Pは、2次転写バイアスローラ54により中間転写ベルト46上のフルカラー画像が一括して転写され、搬送ベルト57により搬送されて定着装置58によりフルカラー画像が定着された後、・・・(略)・・・。なお、定着装置58は、図5に示す上記定着装置を用いてもよい。・・・(略)・・・。」

(1e)「【図5】


図5には、クリ-ニングベルト19において、補助ローラ22とクリ-ニングローラ21間において定着ローラ40側にあるベルトが該定着ローラ表面に沿って当接することが、示されている。

(1f)「【図6】



図6には、画像形成装置の全体構造が示されている。

以上の記載事項から、引用例1には以下の発明(以下、「引用例1発明」という。)が開示されていると認められる。

「感光体41、クリ-ニング装置42、帯電器44、現像ユニット45、書き込み光学ユニット等を備え用紙P上にフルカラー画像を形成する部分と、用紙上のフルカラー画像を定着する内部に加熱ヒータ39を有する定着装置58とを備える画像形成装置であって、
定着装置58は、内部に加熱ヒータ39を有し未定着のフルカラー画像に当接する定着ローラ40と、定着ローラ40に当接してクリ-ニング及び加熱をするクリ-ニングベルト19と、クリ-ニングベルト19を架け渡すクリ-ニングローラ21及び補助ローラ22を有するものであり、
クリ-ニングベルトを加熱するクリ-ニングローラ21の内部には補助加熱ヒータ20が設けられ、
補助ローラ22とクリ-ニングローラ21間に架け渡されたクリ-ニングベルト19は、定着ローラ40側部分が定着ローラ40の表面に沿っており、、クリーニングベルトの一部が補助ローラ22により押圧されて定着ローラに当接しており
定着装置の定着ローラはクリーニングベルトによってクリーニング及び加熱が行われるように構成された画像形成装置。」

当審において平成22年12月24日付で通知した拒絶理由で引用した本願出願前に日本国内または外国において頒布された刊行物である引用例2:特開2002-311751号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は、当審にて付与。)

(2a)「【0031】図2は第1実施形態における定着装置116の概略を示す。この定着装置116では、加熱部材兼定着部材としての定着ローラ1にシリコンゴム等の弾性部材からなる加圧部材としての加圧ローラ2が図示しない加圧手段により一定の加圧力で押し当てられている。・・・略・・・・。
【0032】定着ローラ1の表面には外部加熱部材3が所定の圧力で当接され、外部加熱部材3は定着ローラ1を外部から加熱する。外部加熱部材3は、例えば回転体である外部加熱用ローラとすれば、定着ローラ1との接触面で摺動することがなく定着ローラ1との接触が安定する。」

(2b)「【0052】図3は本発明の第2実施形態の概略を示す。この第2実施形態では、上記第1実施形態において、外部加熱部材3は無端ベルト3aが用いられ、この無端ベルト3aはローラ16、17に掛け渡されて定着ローラ1にローラ16、17間の左側部分が当接される。ローラ16内に配設されたサブヒータ5はローラ16を介して無端ベルト3aを加熱し、無端ベルト3aは矢印方向へ回転しながら定着ローラ1を加熱する。
この第2実施形態の定着装置では、定着ローラ1と無端ベルト3aとの接触面積が大きくなるので、定着ローラ1と無端ベルト3aとの接触面積を十分に確保することができ、定着ローラ1表面の加熱をより効率的に行うことができる。」

(2c)「【図3】



4.本願発明と引用例1発明の対比
引用例1発明の「用紙P」、定着前の「フルカラー画像」、「定着ローラ40」、「補助加熱ヒータ20」は、本願発明の「転写材」、「未定着画像」、「定着ローラ」、「熱源」にそれぞれ相当する。

引用例1発明の「感光体41」、「クリ-ニング装置42」、「帯電器44」、「現像ユニット45」、「書き込み光学ユニット」は、いずれも用紙上に未定着のトナー画像を形成するための装置部品であるから、本願発明の「画像形成部」に相当する。
引用例1発明の「クリ-ニングベルト19」は、それを掛け渡す「クリ-ニングローラ21の内部に補助加熱ヒータ20」を有しており、クリ-ニングに加えて加熱も行うから加熱機能を備えるベルトであるということができ、それゆえ本願発明の「加熱ベルト」と「クリ-ニングベルト19」とは加熱用のベルトである点で共通する。
引用例1発明の「補助ローラ22」は、掛け渡す「クリ-ニングベルト19」が定着ローラ40に対向する位置で「補助ローラ22に押圧されて定着ローラ40に当接して」いるから、本願発明の「当接領域を押圧する押圧部材」に相当する。

以上のことから両者は、
「転写材上の未定着画像を形成する画像形成部と、当該転写材上の未定着画像を挟持加熱して定着させる定着装置を有する画像形成装置において、前記定着装置は、未定着画像に当接する定着ローラと、前記定着ローラに当接すると共に前記定着ローラを加熱する加熱用のベルトと、加熱用のベルトを加熱する熱源と、前記定着ローラに当接している前記加熱用のベルトの当接領域の一部を押圧する押圧部材とを有する画像形成装置。」
で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本願発明は、加熱用のベルトが「加熱ベルト」であるのに対して、引用例1発明は、加熱以外にクリ-ニングを行う「クリ-ニングベルト19」である点。

(相違点2)
本願発明は、定着ローラと加熱ベルトの当接領域の圧力分布について「定着ローラと加熱ベルトとが当接している当接領域の圧力分布は加熱ベルトの走行方向にみて非対称であり、押圧部材が押圧する加熱ベルトの走行方向上流側の圧力が高い」と規定するのに対して、引用例1発明は、無端ベルト3a(即ち、加熱ベルト)が定着ローラ1に当接しているが、当接領域の圧力分布が非対称であり、加熱ベルトの走行方向上流側(ニップ部入口側)が高くなることについて規定していない点。

5.判断
5-1.相違点1について
引用例1発明の「クリーニングベルト19」は定着ローラのクリ-ニングと同時に外部から熱供給できるものである。そして、これらの機能が別々の手段に備わっていてもよいことは言うまでもない。
一方、引用例2には、加熱ヒータを内部に有する定着ローラを用いる定着装置において、定着ローラの外部加熱を回転ベルト構造の無端ベルト3a(即ち、加熱ベルト)により行うことが記載されており(上記(2b)段落【0052】及び図3参照。)、この無端ベルト3aは外部から熱を加える構造で、定着ローラを効率的に加熱することだけを目的としていると認められる。
してみると、引用例1発明において、外部加熱を兼ねる「クリーニングベルト19」を、引用例2に記載された無端ベルト3aのように、加熱することだけを目的とするベルトに置き換えて上記相違点1に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得ることに過ぎない。

5-2.相違点2について
引用例1発明の、定着ローラに当接するクリ-ニングベルトの当接領域において、補助ローラ22で押圧される領域に比較して、ベルトが架け渡される他のローラまでの領域では、特別に強い張力若しくは別途のローラによる押圧がベルトに与えられて押圧力が増加されているのでなければ、押圧力は低い。そして、補助ローラ22で押圧される部分以外の当接領域では、伝熱が十分なものとなる程度の当接であればよいのであるから、押圧力を特に高める必要性は考えられない。
してみると、引用例1発明において、走行方向上流であるニップ部入り口側に配置される補助ローラ22のクリ-ニングベルトに対する押圧力を高めて定着ローラとクリ-ニングベルトを当接させ、上記相違点2に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得ることに過ぎない。

5-3.作用効果について
本願明細書に記載された本願発明の、定着ローラ表面の加熱が従来よりより効率的に行えるという効果(本願明細書の段落【0048】等参照)は、補助ローラ22がベルトを押圧しローラ21、22間のベルトが定着ローラ表面にそって当接して効率的加熱が行えるという引用例1発明が奏する効果から、当業者が予測しうることであり、格別のものではない。

5-4.請求人の主張について
請求人は、平成23年 3月18日付意見書の中で以下のように主張する。
『審判官殿は、拒絶理由において、本願発明と引用例1の対比における相違点2について
「引用例1発明の、定着ローラに当接するクリーニングベルトの当接領域において、補助ローラ22で押圧される領域に比較して、ベルトが架け渡される他のローラまでの領域では、特別に強い張力若しくは別途のローラによる押圧がベルトに与えられて押圧力が増加されているのでなければ、押圧力は低い。そして、補助ローラ22で押圧される部分以外の当接領域では、伝熱が十分なものとなる程度の当接であればよいのであるから、押圧力を特に高める必要性は考えられない。」と述べていますが、この部分の記述はあくまで審判官殿の思い込みに過ぎません。
引用例1で開示されているのは、補助ローラ22とクリーニングローラ21に張架されたクリーニングベルト19が定着ローラ40に当接することで、クリーニングベルト19の定着ローラ40に対する当接面積を増加させることで、効果的にクリーニングを行うことができるとともに安定して外部から熱を供給することができるということです。
「補助ローラ22で押圧される領域に比較して、・・・押圧力は低い」ということは、決して自明のことではありません。引用例1の発明の効果を得るためには、当接面積を増加させれば良いのですから、これらの記載もしくは図からは、補助ローラ22の押圧力は、0からベルトが架け渡されている領域と同等程度までの大きさが類推されるのみです。そして、補助ローラ22の当接領域の圧力を周囲より高い圧力で押圧することや、そのことを示唆するような開示もありません。“ローラが当接している領域は、その周囲に比べて圧力が高い”構成は、審判官殿の思い込みに過ぎません。
このように、「補助ローラ22で押圧される領域に比較して、・・・押圧力は低い」との指摘は、本願発明の内容を鑑みての後付けの認定であると考えます。
ゆえに、引用例1において、本願発明のように、走行方向上流であるニップ部入り口側に配置される補助ローラ22のクリーニングベルトに対する押圧力を高めて定着ローラとクリーニングベルトを当接させることは当業者が容易に成し得るものではないと考えます。』

しかし、引用例1の図5について説明した【0033】には、「加圧ローラ16は定着ローラ40に圧接されて定着ニップ部を形成し、クリーニングベルト19は補助ローラ22により押圧されて定着ローラ40に当接し定着ローラ40のクリーニング及び加熱を行う。」と記載されている(上記(1c)参照。)のであるから、上記相違点2に係る認定に誤りはない。

6.まとめ1
以上のことから、本件出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された引用例1?2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

7.引用先願明細書の記載
当審において平成22年12月24日付で通知した拒絶理由で引用した特願2003-400247号(特開2005-164691号公報参照。以下、「先願」という。)の明細書及び図面(以下「先願明細書」という。)には、以下の記載がある。(下線は、当審にて付与。)

(a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着ローラと、定着ローラに圧接された圧ローラとを備えた定着装置において、相互に間隔を置いて配置された複数のベルト支持ローラと、ベルト支持ローラの各々間に巻き掛けられた無端ベルトとを備え、無端ベルトの外周面の一部領域は定着ローラの外周面の一部領域に圧接され、少なくとも1個のベルト支持ローラは、加熱手段が内蔵されたヒートローラから構成される、ことを特徴とする定着装置。
【請求項2】?【請求項3】
・・・略・・・。
【請求項4】
ベルト支持ローラのうち1個のベルト支持ローラは、定着ローラに対し無端ベルトを介して圧接される、請求項1又は請求項2記載の定着装置。
【請求項5】
該1個のベルト支持ローラは、無端ベルトの外周面の一部領域が定着ローラの外周面の一部領域に圧接されることにより形成される、定着ローラに対する無端ベルトのニップ領域において、定着ローラの回転方向における最上流位置に配置されている、請求項4記載の定着装置。」

(b)「【0001】
本発明は、静電複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置に装着されて、用紙上の未定着トナーを用紙に溶融定着させる定着装置に関する。【背景技術】
【0002】
定着ローラを内部からではなく、外部から加熱するよう構成された定着装置はすでに知られている。この種の定着装置の一つの典型例は、定着ローラと、定着ローラに圧接された圧ローラと、定着ローラに圧接されかつ加熱手段を内蔵した複数の熱ローラとを備えている(特許文献1参照)。定着ローラは、鉄製の中空管からなる心金と、心金の周囲を被覆するシリコンゴムから構成されている。また熱ローラの各々は、表面をフッ素樹脂でコーティングしたアルミニウム製の中空管から構成されている。
【0003】
上記定着装置は、定着ローラの表面を直接加熱するので、定着ローラの昇温時間を短縮でき、したがってウォームアップ時間を短縮できる。しかしながら、複数の熱ローラによる定着ローラへの熱の供給は、熱ローラの各々と定着ローラとの間のわずかなニップ幅に限定されるので、熱の供給量が制限される。その結果、定着ローラの昇温時間を更に短縮したい場合には、該ニップ幅を広げる必要があるが、該ニップ幅を広げた場合には、定着ローラに対する局部的な負荷が増加するので、定着ローラの駆動トルクが増加し、駆動系を強化する必要が生ずる。また、定着ローラのシリコンゴムの損傷を早めて耐久性を損なうおそれがある。」

(c)「【0007】
図1を参照して、本発明に従って構成された定着装置の一実施形態は、定着ローラ2と、定着ローラ2に対し下方から圧接された圧ローラ4と、相互に間隔を置いて配置された複数の、実施形態においては2個のベルト支持ローラ6及び8と、ベルト支持ローラ6及び8の各々間に巻き掛けられた無端ベルト10とを備えている。無端ベルト10の外周面の一部領域は定着ローラ2の外周面の一部領域に圧接されている。・・・略・・・。
【0008】
定着装置は、図1において紙面の表裏方向に間隔をおいては配設された一対の側壁を含む図示しないハウジングを備えており、定着ローラ2、圧ローラ4及びベルト支持ローラ6及び8は、側壁の各々間に回転自在にかつ相互に平行に支持されている。・・・略・・・。ベルト支持ローラ6及び8のうち1個のベルト支持ローラ、実施形態においては、ヒートローラであるベルト支持ローラ6は、定着ローラ2に対し無端ベルト10を介して圧接されている。このベルト支持ローラ6は、無端ベルト10の外周面の一部領域が定着ローラ2の外周面の一部領域に圧接されることにより形成される、定着ローラ2に対する無端ベルト10のニップ領域10Nにおいて、定着ローラ2の回転方向(図1において時計方向)における最上流位置(図1において左端)に配置されている。」

(d)「【0009】
定着ローラ2を軸方向に見て(図1において紙面を表から裏に見て)、定着ローラ2の軸心を通る仮想水平線をx軸、定着ローラ2の軸心を通ってx軸に直交する仮想鉛直線をy軸としたとき、ベルト支持ローラ6は、定着ローラ2の外周面に対し、第2象限における周方向の中間位置(実施形態においては、該周方向の中央よりも、定着ローラ2の外周面の頂部に比較的近い位置)において圧接されるよう配置されている。他方、ベルト支持ローラ8は、ベルト支持ローラ6に対し定着ローラ2の回転方向下流側であり、かつ用紙Pの搬送方向上流側において(第1象限において)、定着ローラ2の外周面の外側に間隔をおいて配置されている。加熱手段6Hは、ヒートローラであるベルト支持ローラ6の中心領域において、該側壁の各々間に静止状態で支持されている。」

(e)「【0012】
定着ローラ2が電動モータMにより図1において時計方向に回転駆動されると、圧ローラ4は反時計方向に従動させられる。同時にヒートローラであるベルト支持ローラ6は、無端ベルト10を介して定着ローラ2によって図1において反時計方向に従動回転させられる。その結果、無端ベルト10は同じ反時計方向に従動回転させられ、ベルト支持ローラ8も無端ベルト10を介して同じ反時計方向に従動回転させられる。加熱手段6Hを構成するハロゲンヒータが通電され、発熱が開始されると、加熱手段6Hによる熱は、ヒートローラであるベルト支持ローラ6及び無端ベルト10の両方から定着ローラ2に伝達され、定着ローラ2の昇温が開始される。定着ローラ2に伝達された熱は圧ローラ4にも伝達される。・・・(略)・・・。」

(f)「【図1】


図1には、無端ベルト10はベルト支持ローラ6と同8の間において定着ローラ2側にあるベルト部分が該定着ローラの表面に沿って当接することが、示されている。

(g)「【図2】

【図3】

【図4】

【図5】


上記(a)?(f)の記載及び図1、2の記載から、上記「先願明細書」には以下の発明(以下「引用先願発明」という。)が開示されていると認められる。

「用紙上の未定着トナーを用紙に溶融定着させる定着装置を有する画像形成装置であって、定着装置は、定着ローラ2と、定着ローラに圧接された圧ローラ4とを備えるものであり、相互に間隔を置いて配置されたベルト支持ローラ6、8と、ベルト支持ローラ6、8の各々間に巻き掛けられた無端ベルト10とを備え、
無端ベルト10はベルト支持ローラ6と同8の間において定着ローラ2側にあるベルト部分が該定着ローラの表面に沿って当接するように配置してあり、
ベルト支持ローラ6は無端ベルト10を介し定着ローラ2の外周面に圧接されており、また該ベルト支持ローラは、定着ローラ2に対する無端ベルト10のニップ領域において、定着ローラの回転方向における最上流位置に配置されており、ベルト支持ローラ6は加熱手段6Hを内蔵したヒートローラである画像形成装置。」

8.引用先願発明と本願発明との対比
本願発明と引用先願発明を対比すると、
引用先願発明の「用紙P」、「無端ベルト10」、「加熱手段6H」、「支持ローラ6」、「ニップ領域」は、それぞれ本願発明の「転写材」、「加熱ベルト」、「熱源」、「押圧部材」、「当接領域」に相当する。

したがって、両者は、
「画像を形成する部分と、転写材上の未定着画像を挟持加熱して定着させる定着装置を有する画像形成装置において、
前記定着装置は、未定着画像に当接する定着ローラと、前記定着ローラに当接すると共に前記定着ローラを加熱する加熱ベルトと、前記加熱ベルトを加熱する熱源と、前記定着ローラに当接している前記加熱ベルトの当接領域の一部を押圧する押圧部材とを有する画像形成装置。」
で一致し、以下の点で一応相違する。

相違点(i)
本願発明は、画像形成装置が転写材上の未定着画像を形成する画像形成部を有すると規定するのに対して、引用先願発明ではこの点が明示されていない点。

相違点(ii)
本願発明は、定着ローラと加熱ベルトの当接領域の圧力分布について「定着ローラと加熱ベルトとが当接している当接領域の圧力分布は加熱ベルトの走行方向にみて非対称であり、押圧部材が押圧する加熱ベルトの走行方向上流側の圧力が高いこと」を規定するのに対して、引用先願発明は、無端ベルト10が定着ローラ2に当接しているものの、当接領域の圧力分布が非対称であって無端ベルト10の走行方向上流側(ニップ部入口側)が高くなることについて、明示していない点。

9.判断
9-1.相違点(i)について
静電複写機などの画像形成装置が転写材上の未定着画像を形成する画像形成部を有することは自明であるから、実質的な差異であるとはいえない。

9-2.相違点(ii)について
上記先願明細書段落【0008】【0009】(上記「(c)(d)参照。)によれば、無端ベルト10の外周面の一部が定着ローラ2の外周面の一部に圧接されることで形成されるニップ領域の、入口側にベルト支持ローラ6が配置され、該ベルト支持ローラ6は定着ローラ2の外周面を圧接していることが示されている。
そして、先願明細書の図3?5を参照すると、定着ローラと加熱機能を有する無端ベルト10の当接方法が種々あり得るところ、上記の【0008】【0009】では特にベルト支持ローラ6に圧力を加えることを記載している。このように、ベルト支持ローラ6に圧力を加えて無端ベルト10を定着ローラ2に圧接させた場合、ベルト支持ローラ6に押される無端ベルト部分と定着ローラ2との圧接部分に続く無端ベルト10が掛け渡される他のローラ8までの無端ベルト10の圧接領域は、ローラによる押し付けがないので、ベルト支持ローラ6が押すベルト部分よりも圧力が下がると認められる。
さらに引用先願発明は、定着ローラ2の昇温時間の短縮が目的であり(段落【0004】参照)、ベルト支持ローラ6が押す無端ベルト部分に続く無端ベルトの圧接部分は、伝熱が十分になる程度の圧接があればよいのであるから、他に特段の手段を講じて該当接領域の押圧力を高めているとは考え難い。これに関連して図面1を見ても、そのような特段の手段の記載はなく、むしろベルト支持ローラ8側では無端ベルト10の圧接力が小さくなる状態を示している。

以上のことから、引用先願発明は、ベルト支持ローラ6が無端ベルトを押すことで無端ベルトと定着ローラとの圧接部分が形成されており、ベルト支持ローラ6により押された無端ベルト部分に続く無端ベルト領域は、ベルト支持ローラ6で押された部分より圧力が小さくなっていると認められる。してみると、定着ローラ2と無端ベルト10とが当接している当接領域の圧力分布は無端ベルト10の走行方向にみて非対称であり、ベルト支持ローラ6が押圧する無端ベルト10の走行方向上流側の圧力が高いものであるといえる。
よって、[相違点](ii)も実質的な差異であるとは認められない。

9-3.請求人の主張について
請求人は以下のように主張する。
『審判官殿は、拒絶理由において、本願発明と引用先願発明の対比における相違点2について「・・・ベルト支持ローラ6に圧力を加えて無端ベルト10を定着ローラ2に圧接させた場合、・・・無端ベルト10の圧接領域は、ローラによる押し付けがないので、ベルト支持ローラ6が押すベルト部分よりも圧力が下がると認められる。」「・・・無端ベルトの圧接部分は、伝熱が十分になる程度の圧接があればよいのであるから、他に特段の手段を講じて該当接領域の押圧力を高めているとは考え難い。これに関連して図面1を見ても、そのような特段の手段の記載はなく、むしろベルト支持ローラ8側では無端ベルト10の圧接力が小さくなる状態を示している。」と述べていますが、この部分の記述はあくまでも審判官殿の推定あるいは決めつけに過ぎません。
引用先願発明で開示されているのは、ベルト支持ローラ6と8に張架された無端ベルト10が定着ローラ2に当接することで、ニップ幅を従来よりも大幅に増加することができ、定着ローラ2に対する局部的な負荷を増加することなく、しかも定着ローラ2の耐久性を損なうことなく、定着ローラ2の昇温時間を短縮して定着装置のウォームアップ時間を短縮することができるということです。
ニップ幅を従来よりも大幅に増加させれば良いのですから、上記の効果を得るための条件として、ベルトニップ部入り口で圧力をかけるという点は必須でないことは明らかで、又そのことを示唆する開示もありません。ゆえに、「無端ベルト10の圧接領域は、ローラによる押し付けがないので、ベルト支持ローラ6が押すベルト部分よりも圧力が下がると認められる。」という審査官殿の指摘は、審判官殿の思い込みにもとづくものに過ぎないと言えます。引用先願発明の記載および図からは、ベルト支持ローラ6の押圧力は、0から、ベルトが架け渡されている領域と同等程度までが類推されるのみです。
このように、「圧力が下がると認められる」「押圧力を高めているとは考え難い」「圧接力が小さくなる状態を示している」との指摘は、本願発明の内容を鑑みての後付けの認定であると考えます。
審判官殿は「・・・無端ベルトの圧接部分は、伝熱が十分になる程度の圧接があればよいのであるから、他に特段の手段を講じて該当接領域の押圧力を高めているとは考え難い。」との認定をされていますが、これには同意いたします。それは、引用先願発明の目的からして当然です。逆にこれは支持ローラ6や支持ローラ8の当接領域についても同様のことが言え、支持ローラ6や支持ローラ8の当接領域の圧力は、無端ベルトの圧接領域と同程度であればよく、支持ローラ6や支持ローラ8の当接領域が、無端ベルトの圧接領域よりも高い圧力で圧接される理由はないのであり、上記審判官殿の認定は、むしろ請求人の請求理由妥当性を支持するものです。
さらに、引用先願発明に記載の内容から見て、引用先願発明には本願発明のようにニップ部入り口側に配置されるローラのベルトに対する押圧力を高めるという構成は取り得ません。
引用先願発明には、「上記定着装置は、定着ローラの表面を直接加熱するので、定着ローラの昇温時間を短縮でき、したがってウォームアップ時間を短縮できる。しかしながら、複数の熱ローラによる定着ローラへの熱の供給は、熱ローラの各々と定着ローラとの間のわずかなニップ幅に限定されるので、熱の供給量が制限される。その結果、定着ローラの昇温時間を更に短縮したい場合には、該ニップ幅を広げる必要があるが、該ニップ幅を広げた場合には、定着ローラに対する局部的な負荷が増加するので、定着ローラの駆動トルクが増加し、駆動系を強化する必要が生ずる。また、定着ローラのシリコンゴムの損傷を早めて耐久性を損なうおそれがある。」(段落0003参照)、「本発明の主目的は、定着ローラに対する局部的な負荷を増加することなく、しかも定着ローラの耐久性を損なうことなく、定着ローラの昇温時間を短縮してウォームアップ時間を短縮することを可能にする、新規な定着装置を提供することである。」(段落0004参照)と課題・目的が述べられています。
この記載から考えると、引用先願発明は、定着ローラに対する局部的な負荷を増加することなく、熱を定着ローラに供給するために、無端ベルト10を用いて、そのニップ部も含めて定着ローラ2に当接するようにしたものであることがわかります。
このことから、審判官殿が指摘されるような、ニップ入り口側に配置されるローラのベルトに対する押圧力をそれに続く巻き掛け部分より高くすることは、定着ローラに対する負荷を増加することになり、むしろ引用先願発明が避けようとしていることです。定着ローラに対する局部的な負荷を増加させないために、引用先願発明では、ベルト支持ローラ6による当接部と、無端ベルト10による当接部とは同程度の圧力で定着ローラ2に接していることは明らかです。』

請求人の指摘する箇所「先願明細書【0003】参照。)には、「ニップ幅を広げる必要があるが、該ニップ幅を広げた場合には、定着ローラに対する局部的な負荷が増加するので、定着ローラの駆動トルクが増加し、駆動系を強化する必要が生ずる」と記載されていることからもわかるとおり、先願明細書では定着ローラにはニップ入り口での圧力以外の負荷をかけないことが示唆されている。してみると、ニップ入り口側で定着ローラに対向するベルト支持ローラ6についても、負荷が増加しない工夫が伴うことになる。
さて、ニップ入り口側に配置されるローラの押圧力に対してベルトの巻き掛け部分の押圧力がかかる場合、ベルト支持ローラの回転軸にはニップ入り口における押圧に伴う負荷の他に、巻き掛け部分の押圧力をかける張力を確保するための負荷が加わることになって、単にニップ入り口における押圧力に伴う負荷のみの場合より負荷が増大することになる。ここで、請求人も同意するように「無端ベルトの圧接部分は、伝熱が十分になる程度の圧接があればよいのであるから、他に特段の手段を講じて該当接領域の押圧力を高めているとは考え難い」のであるから、ニップ入り口側で定着ローラに対向するベルト支持ローラ6について、巻き掛け部分の押圧力をかける張力を確保するための負荷が加わらないように設計するはずである。してみると、巻き掛け部分の押圧力はニップ入り口における押圧よりも低いと考えるのが自然である。
したがって、請求人の上記指摘は失当である。

10.まとめ2
以上のことから、本件出願の請求項1に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特許出願の願書に最初に添付された先願明細書に記載された引用先願発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

11.むすび
したがって、本願の請求項1に係る発明は特許を受けることができないものであるから、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、この特許出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-05-16 
結審通知日 2011-05-17 
審決日 2011-05-31 
出願番号 特願2004-115043(P2004-115043)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03G)
P 1 8・ 161- WZ (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村上 勝見  
特許庁審判長 柏崎 康司
特許庁審判官 住田 秀弘
立澤 正樹
発明の名称 画像形成装置  
代理人 特許業務法人光陽国際特許事務所  
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