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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G05B |
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管理番号 | 1240267 |
審判番号 | 不服2009-26045 |
総通号数 | 141 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-09-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-12-28 |
確定日 | 2011-07-14 |
事件の表示 | 特願2003-422038「建物設備管理の分析装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 7月 7日出願公開、特開2005-182441〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件出願は、平成15年12月19日の特許出願であって、同21年1月22日付けで拒絶の理由が通知され、同年3月19日に手続補正がなされ、同年5月1日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年7月13日に手続補正がなされ、同年9月24日付けで同年7月13日の手続補正を却下するとともに拒絶査定がされた。 これに対し、同年12月28日に本件審判の請求とともに手続補正がなされ、当審において同23年2月2日付けで拒絶理由が通知され、同年4月11日に手続補正がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年4月11日に補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりと認められる。 「建物に配置される設備の運転状態を管理するために必要な情報を受付ける情報受付部と、 前記情報受付部で受付けた情報を基準値と比較して前記設備の運転状態が管理目標に到達しているか否かを判別する判別部と、 前記設備の運転状態がその管理目標に到達しない場合に管理目標未到達の原因を推論する推論処理手順を予め記憶する推論処理手順記憶部と、 運転台数、運転開始、運転レベル、運転停止などの前記設備の使われ方を示す当該設備の運用形態及び通常使用、通常外使用などの前記建物の使われ方を示す当該建物の運用形態の少なくとも一方と日にち又は就業時間との対応関係を示すスケジュールを記憶するスケジュール記憶部と、 前記情報受付部で受付けた情報の中から前記管理目標に応じた日にち又は就業時間に係る情報を前記スケジュールに基づいて抽出するフィルタリング部と、 前記推論処理手順に従って前記情報受付部で受付けた情報を分析して前記原因を推論する推論部と、 前記推論部の推論結果を出力する出力部とを備え、 前記管理目標は、前記設備が消費するエネルギーの消費量及び資源の消費量のうちの少なくとも一方であり、 前記推論部は、前記フィルタリング部で抽出された情報を用いて分析するものであって、前記情報受付部で受付けた情報を集積した後に前記推論処理手順に従って前記原因を推論するものであり、 前記推論処理手順は、前記エネルギーの種類別及び前記資源の種類別のうちの少なくとも一方で前記消費量を分析するか、前記エネルギーを消費する設備の種類別及び前記資源を消費する設備の種類別のうちの少なくとも一方で前記消費量を分析するか、前記エネルギーを消費する設備が配置される階別及び前記資源を消費する設備が配置される階別のうちの少なくとも一方で前記消費量を分析するか、の分析項目の選択を行い、この選択された分析項目で前記管理目標未到達の原因を推論すること を特徴とする建物設備管理の分析装置。」 3.刊行物記載の発明 (1)刊行物1 これに対し、本願の出願前に頒布された刊行物であって、当審で通知した拒絶理由に引用された特開2003-216715号公報(以下「刊行物1」という。)には、次のように記載されている。 ア.段落0001 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、空調等の各種の設備と、これを監視制御する装置を備えた複数の建物のエネルギー消費量を集中的に管理し解析する建物省エネルギー評価監視装置に関するものである。」 イ.段落0004?0005 「【0004】本発明は以上のような実状を考慮してなされたもので、複数の建物のエネルギー消費量を集中的に管理するリモートエネルギー管理システムにおいて、各建物のエネルギー消費量の省エネルギー率を推定し、建物内の省エネルギー制御がうまく行われているかを定期的に評価し診断する建物省エネルギー評価監視装置を提供することを目的とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明は、建物に設置されたエネルギー消費設備のエネルギー消費量を含むプロセス値を検出する計測監視手段と、計測監視手段から定期的にデータを収集して蓄積し建物毎に編集処理を行って記憶するデータ収集記憶手段と、データ収集記憶手段に建物毎に編集され蓄積されたデータを解析することにより得られる省エネルギー率を評価するための基準となるエネルギー消費量の予測モデルを持つ基準エネルギー消費量予測手段と、計測監視手段から得られるエネルギー消費量実測値を基準エネルギー消費量予測手段で算出された基準消費エネルギー量と比較して省エネルギー率を算出する省エネルギー評価手段と、省エネルギー評価手段の評価結果を参照して制御状態の不良の発見と原因追求を行うシステム診断手段とを具備したことを特徴とする建物省エネルギー評価監視装置を構成したものである。」 ウ.段落0008?0015 「【0008】図1は本発明による建物省エネルギー評価監視装置の一実施の形態を示す全体構成図である。 【0009】制御システムが設備の省エネルギー制御を行っており、かつ評価監視対象となっている各建物、例えば事務所ビル11や12、デパートビル13,14、病院ビル15等にはそれぞれ計測監視手段21ないし25が設けられている。計測監視手段21?25はそれぞれの建物に設置されているエネルギー機器のエネルギー消費量を含むプロセス値を検出し、その検出データをプロセスデータとして、ネットワーク30を介して、本発明に係る建物省エネルギー評価監視装置40に送出する。ここでプロセス値には、例えば外気温や、室温、室内湿度等が含まれる。各建物の図示していない制御システムは空調制御やエレベータ制御など、各設備の省エネルギー制御を行っている。 【0010】建物省エネルギー評価監視装置40は、データベース42を有するデータ収集記憶手段41、基準エネルギー消費量予測手段43、省エネルギー評価手段44、およびシステム診断手段45を備えるとともに、アクセスのための端末46を備えている。 【0011】データ収集記憶手段41は、各建物の計測監視手段21?25から定期的に、例えば1回/日に、プロセスデータを収集し、各建物毎に編集処理を行って光磁気記録媒体などの記憶装置に記憶する。 【0012】次に基準エネルギー消費量予測手段43について述べる。まず、基準エネルギー消費量のモデル式(各単位は正規化前のもの)Eiを定義し、1日の合計基準消費エネルギー予測値(ベースライン)Ei(MJ/日)を求める。建物間の相互比較を可能とするために、各建物ともN時間、例えば12時間の運転を行った場合のエネルギー値に換算する。そのため、実際の運転時間がN時間に対して過不足を生じている場合は、比例計算によりN時間運転をしたときのエネルギー値に換算する。 【0013】・・・。 【0014】各ゾーン別にベースラインの消費エネルギーを求める場合は、各方位の日射日積算比も変数とする必要があるが、・・・。 【0015】さらに基準エネルギー消費量予測値の精度を上げるために、夏期、中間期、冬期別に蓄積データを分類し、これを用いて上記の係数a22?a00を統計解析手法により予め求めておく。・・・。」 エ.段落0019?0022 「【0019】基準エネルギー消費量のモデル式は1日単位なので、週毎あるいは月毎の基準エネルギー消費量は、日毎の基準エネルギー消費量を1週間分あるいは1箇月分合計して予測する。よって、基準エネルギー消費量予測手段43の入出力は次のようになる。 【0020】・・・。 【0021】・・・。 【0022】省エネルギー評価手段44は、日々の省エネルギー制御を行った後に、計測監視手段21?25から得られる毎日のエネルギー消費量実測値や、それを合計した週毎あるいは月毎の省エネルギー制御によるエネルギー消費量実測値と、基準エネルギー消費量予測手段43から得られる、日毎、週毎、月毎の従来制御を行ったと仮定した場合の基準エネルギー消費量予測値とを比較して、省エネルギー効果を評価する。・・・。」 オ.段落0027?0029 「【0027】システム診断手段45は、図5に示すように、今日(または今週)の対象建物のエネルギー消費量実測値が、基準エネルギー消費量予測手段43から得られる対象建物の、今日(または今週)の基準エネルギー消費量予測値(ベースライン)の所定の判定基準レベルα(%)以下かどうかを判断し(ステップS51)、以下であれば正常であると判断する。以上であるときは、システムが正常でないと判断し、計測監視手段21?25でデータ収集されている全プロセス値項目について、過去の平均値から大きく外れているデータ項目がないかを探索し(ステップS52)、外れたデータ項目の有無に従い(ステップS53)、外れたデータ項目が無ければオペレータに対して異常データ項目がない旨を表示し(ステップS54)、外れたデータ項目があればオペレータに対して外れたデータ項目を表示する(ステップS55)。ステップS51におけるαの値は、100%前後を目安として、例えば98、100、105等の値を事前に決めて設定しておく。ステップS52,S53において「大きく外れた」かどうかの判断レベルは統計的に決めればよく、例えば、標準偏差を基本として決めることができる。 【0028】以上のようにしてシステム診断手段45は異常を検知し、異常データ項目を表示するので、オペレータはそれを参照し、それに自分の知識や過去の経験を加味して、どの設備にどんな異常があるかを比較的容易に推定することができる。 【0029】なお、設備診断対象機器としては次のようなものがあり得る。すなわち、 空調熱源機器:ボイラ、ターボ冷凍機、冷温水発生機、ヒートポンプチラーなど、 空調熱源補機:冷却塔、循環ポンプ、オイルタンク、熱交換器など、 空調2次側機器:空調機、パッケージ型空調機、ファンコイル、ヒートポンプエアコンなど、 空調配管設備:冷水、温水、冷却水、蒸気、還水、ドレンなどの配管、 換気設備:送風機、全熱交換器、厨房排気設備、天井扇、圧力扇など、 風道設備:給気ダクト、排気ダクト、換気ダクト、ダンパー類など、 衛生設備:受水槽、高架水槽、揚水ポンプ、加圧給水ポンプ、給湯設備、ボイラなど、 衛生配管設備:給水、給湯、雑排水、汚水排水、通気などの配管。」 ここで、上記オ.より、システム診断手段45は、エネルギー消費量実測値が、基準エネルギー消費量予測値の所定の判定基準レベル以下かどうかを判断し(ステップS51)、所定の判断基準レベル以上の場合に全プロセス値項目について過去の平均値から大きく外れているデータ項目がないか探索し(ステップS52)、外れたデータ項目を表示する(ステップS55)。 すなわち、ステップS51は「判別部」ということができ、ステップS52は「予め記憶された推論処理手順に従い原因を推論するものであるから「推論処理手順記憶部」、「推論部」ということができ、ステップS55は「出力部」ということができる。 これらを、図面を参照しつつ、技術常識を踏まえ、本願発明に照らして整理すると、上記刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されているものと認められる。 「建物に配置される設備の運転状態を管理するために必要なエネルギー消費量実測値を収集するデータ収集記憶手段41と、 前記データ収集記憶手段41で収集したエネルギー消費量実測値を基準エネルギー消費量予測値と比較して前記設備の運転状態が所定の判断基準レベル以下か否かを判別する判別部と、 前記設備の運転状態が、1日を単位として、所定の判断基準レベル以上の場合に全プロセス値項目について過去の平均値から大きく外れているデータ項目がないか探索する推論処理手順を予め記憶する推論処理手順記憶部と、 前記推論処理手順に従って前記データ収集記憶手段41で収集したエネルギー消費量実測値を分析して大きく外れているデータ項目を探索する推論部と、 外れたデータ項目を表示する出力部とを備え、 前記所定の判断基準レベルは、前記設備が消費するエネルギーの消費量であり、 前記推論部は、前記データ収集記憶手段41で収集したエネルギー消費量実測値を記憶した後に、前記推論処理手順に従って大きく外れているデータ項目を探索するものであり、 前記推論処理手順は、建物の種類別に、全プロセス値項目について過去の平均値から大きく外れているデータ項目がないか探索するものである、 建物省エネルギー評価監視装置。」 (2)刊行物2 同じく、当審で通知した拒絶理由に引用された特開2003-162324号公報(以下「刊行物2」という。)には、次のように記載されている。 ア.段落0001?0002 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、電気、天然ガス、水道などのユーティリティの消費を管理することに関し、詳細には、異常使用の発生を検出することに関する。 【0002】 【従来の技術】大きなビルは、暖房、換気、空調用のものなど、様々なサブシステムの運転を管理するコンピュータ制御システムを取り入れていることが多い。このサブシステムが、確実に所望の通りに実施できることに加えて、この制御システムは、できる限り効率的に関連装置を運転する。」 イ.段落0014?0015 「【0014】本発明は、所与のビルから得られたデータを分析して、特定のユーティリティ・サービスの異常な使用量を判定するプロセスに関するものである。これは、所与のユーティリティ・サービス用のデータを検索して、アウトライアー、すなわち、そのデータの大部分とは著しく異なるデータサンプルを検出することで、達成される。このユーティリティ・サービスに関連するデータは、関連ビル管理システムにより収集されたすべてのデータから切り離される。次に、その関連データは、そのデータが収集された時間に基づいて、分類される。ユーティリティ消費は、曜日ごとに、大きく異なることがある。例えば、代表的なオフィスビルでは、ほとんどの労働者がいる月曜から金曜まで、比較的ユーティリティ消費が多く、週末では、ユーティリティ消費が著しく少なくなる。これと対照的に、毎日操業する製造施設では、毎日同じユーティリティ消費がある場合がある。しかしながら、異なる曜日に異なる製造作業を予定する場合があり、それにより日別にユーティリティ消費のレベルが異なる。 【0015】それゆえ、アウトライアー分析を実施する前に、ビルのオペレータは、同じユーティリティ消費を有する1つまたは複数のグループの日を定める。このグループ化は、ビル使用の知識に基づくものか、あるいは、日別の平均またはピークのユーティリティ消費に関するデータから基づくことが可能である。例えば、図2は、例示的なビルに対する日別の平均電力消費のボックスプロットである。ピーク電力消費に対しては、同様のボックスプロットを作成できる。このグラフを調べると、平日(月曜から金曜まで)の期間中の消費は同じであることが明らかである。すなわち、通常の電気消費は、レベル(A)という一方の範囲内にあり、また、週末の期間(土曜と日曜)も、他方の範囲(B)内にある同じ消費レベルを持っている。それゆえ、2つのグループの日、すなわち平日と週末からのデータに対して、別々のユーティリティ消費分析を実施することになる。・・・。」 上記記載を、図面を参照しつつ、技術常識を踏まえ整理すると、刊行物2には、以下の事項(以下「刊行物2事項」という。)が記載されていると認める。 「大きなビルにおける、暖房、換気、空調用のものなど、様々なサブシステムの運転を管理し、電気、天然ガス、水道などのユーティリティの異常使用の発生を検出するコンピュータ制御システムにおいて、平日と週末とで分析グループを異ならせるもの。」 4.対比・判断 刊行物1発明の「エネルギー消費量実測値」は本願発明の「情報」に相当し、同様に、「収集する」は「受付ける」に、「データ収集記憶手段41」は「情報受付部」に、「基準エネルギー消費量予測値」は「基準値」に、「所定の判断基準レベル以下」は「管理目標に到達している」に、「所定の判断基準レベル以上」は「管理目標に到達しない」に、「所定の判断基準レベル」は「管理目標」に、「全プロセス値項目について過去の平均値から大きく外れているデータ項目がないか探索する」は「管理目標未到達の原因を推論する」に、「大きく外れているデータ項目を探索する」は「原因を推論する」に、「外れたデータ項目」は「推論部の推論結果」に、「記憶した後」は「集積した後」に、「建物省エネルギー評価監視装置」は「建物設備管理の分析装置」に、それぞれ相当する。 刊行物1発明の「建物の種類別」と、本願発明の「エネルギーを消費する設備が配置される階別」とは、「エネルギーを消費する設備が配置される空間別」である限りにおいて一致する。 そうすると、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致する。 「建物に配置される設備の運転状態を管理するために必要な情報を受付ける情報受付部と、 前記情報受付部で受付けた情報を基準値と比較して前記設備の運転状態が管理目標に到達しているか否かを判別する判別部と、 前記設備の運転状態がその管理目標に到達しない場合に管理目標未到達の原因を推論する推論処理手順を予め記憶する推論処理手順記憶部と、 前記推論処理手順に従って前記情報受付部で受付けた情報を分析して前記原因を推論する推論部と、 前記推論部の推論結果を出力する出力部とを備え、 前記管理目標は、前記設備が消費するエネルギーの消費量であり、 前記推論部は、前記情報受付部で受付けた情報を集積した後に前記推論処理手順に従って前記原因を推論するものであり、 前記推論処理手順は、前記エネルギーを消費する設備が配置される空間別で前記消費量を分析し、前記管理目標未到達の原因を推論する 建物設備管理の分析装置。」 そして、以下の点で相違する。 相違点1:本願発明では「運転台数、運転開始、運転レベル、運転停止などの前記設備の使われ方を示す当該設備の運用形態及び通常使用、通常外使用などの前記建物の使われ方を示す当該建物の運用形態の少なくとも一方と日にち又は就業時間との対応関係を示すスケジュールを記憶するスケジュール記憶部」と、「前記情報受付部で受付けた情報の中から前記管理目標に応じた日にち又は就業時間に係る情報を前記スケジュールに基づいて抽出するフィルタリング部」とを有し、推論部は「前記フィルタリング部で抽出された情報を用いて分析する」ものであるが、刊行物1発明では「1日を単位として」分析する点。 相違点2:推論処理手順について、本願発明では、「前記エネルギーの種類別及び前記資源の種類別のうちの少なくとも一方で前記消費量を分析するか、前記エネルギーを消費する設備の種類別及び前記資源を消費する設備の種類別のうちの少なくとも一方で前記消費量を分析するか、前記エネルギーを消費する設備が配置される階別及び前記資源を消費する設備が配置される階別のうちの少なくとも一方で前記消費量を分析するか、の分析項目の選択を行い、この選択された分析項目で」推論するが、刊行物1発明では、「建物の種類別」に推論する点。 相違点1について検討する。 刊行物2事項は、上記のとおり、大きなビルにおいて、電気、天然ガス、水道などの使用状況が平日と週末とで異なるから、平日と週末とを分けて分析するものである。 また、電気、天然ガス、水道などのエネルギー消費量は、刊行物2事項の平日と週末の違いのみならず、時間によっても、通常使用か通常外使用かによっても異なることは、一般社会常識である。 よって、「1日を単位として」分析するものである刊行物1発明において、エネルギー管理を、きめ細かく行う場合に、「時間」、「通常使用か通常外使用か」という要素を考慮することは、必要に応じてなしうる事項である。 この場合、「時間」、「通常使用か通常外使用か」という要素を記憶する必要があり、条件を満たす情報により分析する必要があるから、「通常使用、通常外使用などの前記建物の使われ方を示す当該建物の運用形態と就業時間との対応関係を示すスケジュールを記憶するスケジュール記憶部」、「情報受付部で受付けた情報の中から前記管理目標に応じた就業時間に係る情報を前記スケジュールに基づいて抽出するフィルタリング部」を設け、「フィルタリング部で抽出された情報を用いて分析する」ものとすることは、「時間」、「通常使用か通常外使用か」という要素を考慮することに伴い、併せて考慮すべき設計的事項にすぎない。 相違点2について検討する。 刊行物2事項は、上記のとおり、「大きなビルにおける、暖房、換気、空調用のものなど、様々なサブシステムの運転を管理し、電気、天然ガス、水道などのユーティリティの異常使用の発生を検出するコンピュータ制御システムにおいて、平日と週末とで分析グループを異ならせるもの」であり、エネルギーの種類として「電気、天然ガス、水道」が、エネルギーを消費する設備として「暖房、換気、空調用」が示されている。 建物の種類別に分析するものである刊行物1発明において、エネルギー管理を、きめ細かく行う場合に、刊行物2事項を踏まえ、エネルギーの種類、エネルギーを消費する設備を考慮することは、必要に応じてなしうる事項である。 また、刊行物1発明は「建物の種類別」に分析するが、エネルギー管理を、きめ細かく行う観点から、刊行物1の「各ゾーン別」(上記3(1)ウ.段落0014参照)なる示唆にもみられるごとく、管理空間の範囲を細分化し、「エネルギーを消費する設備が配置される階別」とすることは、必要に応じてなしうる事項である。 そして、分析にあたっては、各種の観点から行うことが便利であるから、「前記エネルギーの種類別で前記消費量を分析するか、前記エネルギーを消費する設備の種類別で前記消費量を分析するか、前記エネルギーを消費する設備が配置される階別で前記消費量を分析するか、の分析項目の選択を行い、この選択された分析項目で」推論することは、必要に応じてなしうる設計的事項にすぎない。 請求人は、意見書で「分析精度を高めることができる」旨主張するが、予想される効果にすぎず、格別のものとは認められない。 5.むすび 本願発明は、刊行物1発明、刊行物2事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものであるから、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-05-11 |
結審通知日 | 2011-05-17 |
審決日 | 2011-05-31 |
出願番号 | 特願2003-422038(P2003-422038) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G05B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 二階堂 恭弘、柿崎 拓、青山 純、大屋 静男 |
特許庁審判長 |
千葉 成就 |
特許庁審判官 |
菅澤 洋二 刈間 宏信 |
発明の名称 | 建物設備管理の分析装置 |
代理人 | 小谷 悦司 |
代理人 | 小谷 悦司 |