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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60K 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 B60K |
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管理番号 | 1240275 |
審判番号 | 不服2010-8724 |
総通号数 | 141 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-09-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-04-23 |
確定日 | 2011-07-14 |
事件の表示 | 特願2005-180276「先行車追従走行制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 1月11日出願公開、特開2007- 1327〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成17年6月21日の出願であって、平成21年11月24日付けで拒絶理由通知がなされ、これに対し、同年12月21日に意見書が提出されるとともに、同日付で手続補正がなされ、平成22年1月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月23日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に、同日付けで明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正がなされ、当審における平成22年11月15日付けの書面による審尋に対して、平成23年1月11日に回答書が提出されたものである。 第2.平成22年4月23日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成22年4月23日付けの手続補正を却下する。 1.補正の内容 平成22年4月23日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、下記(A)から(B)へと補正された。 (A)「車間距離を検出する車間距離検出手段と、 自車速を検出する車速検出手段と、 車両の走行駆動源による駆動力と通常ブレーキ装置による制動力とを制御して、先行車との車間距離を保ちながら追従走行制御を行う追従走行制御手段と、 駐車ブレーキ装置を制御して作動させる駐車ブレーキ駆動手段と、 前記追従走行制御手段による追従走行制御を解除するためのブレーキペダルと、 前記ブレーキペダルの踏み込みを検出する踏み込み検出手段と、 前記追従走行制御中に前記車速検出手段により停車状態が検出され、前記駐車ブレーキ駆動手段により前記駐車ブレーキ装置を作動させている状態(以下、停止保持制御状態という)において、前記踏み込み検出手段が所定時間継続して作動した場合には、前記追従走行制御を解除して前記駐車ブレーキ駆動手段により前記駐車ブレーキ装置を非作動とした状態(以下、制御解除状態という)へ切り換える状態切換手段とを備えることを特徴とする先行車追従走行制御装置。」 (B)「車間距離を検出する車間距離検出手段と、 自車速を検出する車速検出手段と、 車両の走行駆動源による駆動力と通常ブレーキ装置による制動力とを制御して、先行車との車間距離を保ちながら追従走行制御を行う追従走行制御手段と、 駐車ブレーキ装置を制御して作動させる駐車ブレーキ駆動手段と、 前記追従走行制御手段による追従走行制御を解除するためのブレーキペダルと、 前記ブレーキペダルの踏み込み圧力を含む踏み込み状態を検出する踏み込み状態検出手段と、 前記追従走行制御中に前記車速検出手段により停車状態が検出され、前記駐車ブレーキ駆動手段により前記駐車ブレーキ装置を作動させている状態(以下、停止保持制御状態という)において、前記踏み込み状態検出手段が所定時間継続して作動した場合、あるいは所定時間継続して作動しておらず、前記ブレーキペダルの踏み込み圧力が前記停止保持制御状態の解除意志を示す圧力以上に達した場合には、前記追従走行制御を解除して前記駐車ブレーキ駆動手段により前記駐車ブレーキ装置を非作動とした状態(以下、制御解除状態という)へ切り換える状態切換手段とを備えることを特徴とする先行車追従走行制御装置。」(下線は請求人が付した。) 2.本件補正の適否についての判断 [理由1] 2.-1 目的要件違反 (1)当審の判断 上記請求項1についての補正は、本件補正前の請求項1に記載された「前記ブレーキペダルの踏み込みを検出する踏み込み検出手段」を「前記ブレーキペダルの踏み込み圧力を含む踏み込み状態を検出する踏み込み状態検出手段」と、同じく「前記踏み込み検出手段が所定時間継続して作動した場合には、前記追従走行制御を解除して前記駐車ブレーキ駆動手段により前記駐車ブレーキ装置を非作動とした状態(以下、制御解除状態という)へ切り換える」を「前記踏み込み状態検出手段が所定時間継続して作動した場合、あるいは所定時間継続して作動しておらず、前記ブレーキペダルの踏み込み圧力が前記停止保持制御状態の解除意志を示す圧力以上に達した場合には、前記追従走行制御を解除して前記駐車ブレーキ駆動手段により前記駐車ブレーキ装置を非作動とした状態(以下、「制御解除状態」という。)へ切り換える」と補正するものである。 しかしながら、当該補正により、本件補正前の請求項1に係る発明が、制御解除状態への切り換えを、踏み込み検出手段が所定時間継続して作動した場合に行うものであったのが、本件補正後の請求項1に係る発明においては、踏み込み状態検出手段が所定時間継続して作動した場合に加えてさらに、ブレーキペダルの踏み込み圧力が停止保持制御状態の解除意志を示す圧力以上に達した場合にも行うものとなった。そうすると、上記請求項1についての補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものとはいえない。 また、上記請求項1についての補正は、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明を目的とするものでもない。 (2)[理由1]のむすび したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 [理由2] 2.-2 独立特許要件違反 上記2.-1 目的要件違反で検討したように、上記特許請求の範囲の請求項1に関しての補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえないものではあるが、仮に、上記本件補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとして、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。 (1)引用文献 原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-34240号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の記載がある。 なお、下線は、発明の理解の一助として、当審において付したものである。 ア.「【発明の属する技術分野】本発明は、先行車との車間距離に基づいて常用ブレーキ装置の作動を制御する制動制御手段を備えた車両の制動制御装置に関する。」(第2ページ第1欄第13行ないし第15行) イ.「【従来の技術】先行車が存在しないときには設定車速を維持する定速走行制御を行い、先行車が存在するときには先行車との間に設定車間距離を維持する定車間距離制御を行うACC(アダプティブ クルーズ コントロール)システムが既に知られている。ACCシステムでは、定速走行制御中に車速検出手段で検出した実車速が設定車速を下回った場合、あるいは定車間距離制御中にレーダーやカメラのような先行車検知手段で検出した先行車との実車間距離が設定車間距離を上回った場合に車両が自動的に加速され、また実車速が設定車速を上回った場合、あるいは実車間距離が設定車間距離を下回った場合に車両が自動的に減速される。 【0003】このACCシステムの適用領域を更に低速域まで拡大して渋滞追従機能を持たせたシステムでは、先行車が停止および発進を繰り返す渋滞時に、先行車検知手段で検出した先行車が停止すると先行車に追従して自車を自動的に停止させ、先行車が発進すると先行車に追従して自車を自動的に発進させるようになっている。」(第2ページ第1欄第17行ないし第34行) ウ.「【0012】図1に示すように、本実施例の車両は渋滞追従機能を兼ね備えたACCシステムを搭載しており、そのACCシステムECU1は、ミリ波レーダー装置、レーザーレーダー装置、テレビカメラ等で構成される先行車検知手段2からの信号に基づいてブレーキアクチュエータ3およびスロットルアクチュエータ4の作動を制御する。ブレーキアクチュエータ3は車両の常用ブレーキ装置5の作動を制御して車両を自動的に減速し、またスロットルアクチュエータ4は車両のスロットルバルブ6の作動を制御して車両を自動的に加速あるいは減速する。ACCシステムECU1との間で通信を行う電動駐車ブレーキ装置ECU21は、後述するスイッチおよびセンサ群29a?29iからの信号に基づいて後述する電動駐車ブレーキ装置12の作動を制御する。」(第3ページ第3欄第6行ないし第19行及び図1) エ.「【0050】次に、ACCシステムECU1によるACCシステムの制御を、図13および図14のフローチャートに基づいて説明する。 【0051】先ず、ステップS21で先行車検知手段2、ブレーキアクチュエータ3、スロットルアクチュエータ4等の初期診断を行った後、ステップS22でACCシステムの作動を許可するスイッチからの信号を取り込み、ステップS23でACCシステムの作動が許可されていれば、ステップS24で先行車検知手段2により検知した先行車との車間距離を算出する。ステップS25で前記車間距離が大きくて追従制御(定車間距離制御)が不要であれば、ステップS26で設定車速でのクルーズ制御(定車速制御)を実行する。またステップS25で前記車間距離が小さくて追従制御が必要であれば、ステップS27で車間距離を設定車間距離に一致させるために必要な目標加減速度を算出する。」(第7ページ第11欄第11行ないし第26行及び図13) オ.「【0056】図15には、先行車に追従走行する車両が自動的に減速して停止した後に、先行車の発進に追従して自動的に発進する場合のタイムチャートが示される。 【0057】ACCシステムECU1からの指令でブレーキアクチュエータ3が作動し、常用ブレーキ装置5が発生する制動力で車両が自動減速する。車両が停止すると、ACCシステムECU1から電動駐車ブレーキ装置ECU21に電動駐車ブレーキ装置12の作動要求信号が出力される。作動要求信号が出力されてから所定時間(例えば、300msec)が経過すると、電動駐車ブレーキ装置ECU21からの指令で電動モータ30および電磁ブレーキ33に通電して電動駐車ブレーキ装置12を作動させる。ACCシステムECU1からの作動要求信号が終了すると電動モータ30および電磁ブレーキ33への通電も終了し、電動駐車ブレーキ装置ECU21からACCシステムECU1に電動駐車ブレーキ装置12の作動完了信号を出力する。この電動駐車ブレーキ装置ECU21からの作動完了信号にに基づき、ACCシステムECU1はブレーキアクチュエータ3を駆動して常用ブレーキ装置5の作動を解除する。 【0058】先行車の発進に基づいてACCシステムECU1から電動駐車ブレーキ装置ECU21に電動駐車ブレーキ装置12の作動解除要求信号が出力され、その時点から所定時間(例えば、300msec)が経過すると、電動駐車ブレーキ装置ECU21からの指令で電動モータ30および電磁ブレーキ33に通電して電動駐車ブレーキ装置12の作動を解除する。ACCシステムECU1からの作動解除要求信号が終了すると電動モータ30および電磁ブレーキ33への通電も終了し、電動駐車ブレーキ装置ECU21からACCシステムECU1に電動駐車ブレーキ装置12の制御終了信号を出力する。この電動駐車ブレーキ装置ECU21からの制御終了信号に基づき、ACCシステムECU1はスロットルアクチュエータ4を駆動して車両を発進させる。」(第7ページ第12欄第14行ないし第47行及び図15) 上記ア.ないしオ.の記載及び図面を参酌すると、引用文献1には、以下の発明が記載されているといえる(以下、「引用文献1に記載された発明」という。)。 「車間距離を検出する先行車検知手段2と、 自車速を検出する車速検出手段と、 車両のスロットルバルブ6の作動を制御して車両を自動的に加速あるいは減速するスロットルアクチュエータ4と車両の常用ブレーキ装置5の作動を制御して車両を自動的に減速するブレーキアクチュエータ3とを制御して、先行車との車間距離を維持しながら追従制御を行うACCシステムECU1と、 電動駐車ブレーキ装置12を制御して作動させる電動駐車ブレーキ装置ECU21と、 前記追従制御中に車両が停止され、前記電動駐車ブレーキ装置ECU21により前記電動駐車ブレーキ装置12を作動させている状態において、先行車の発進に基づいて前記電動駐車ブレーキ装置ECU21により前記電動駐車ブレーキ装置12の作動を解除し、先行車の発進に追従して自動的に発進する車両の制動制御装置。」が記載されている。 同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-341624号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の記載がある。 なお、下線は、発明の理解の一助として、当審において付したものである。 カ.「車両が停車状態かつアクセルペダル開放かつブレーキペダルを踏み込んだときに停車ブレーキ装置が作動し、ブレーキペダルを開放してもブレーキ制動力を安全に停車維持可能まで増力してから保持する。」(第2ページ第2欄第48行ないし第3ページ第3欄第2行) キ.「実施の形態1.以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明における停車ブレーキ装置は、図1に示すように、ブレーキペダル1の踏込量又は踏込/開放を検出するブレーキ踏込み検出手段2と、アクセルペダル(図示せず)の踏込/開放を検出するアクセル踏込み検出手段3と、車両の停止状態を判定する停車状態判定手段4と、マスタシリンダ5とホイルシリンダ6の間に設けられ、ブレーキ制動力を保持/開放できる保持バルブ7とマスタシリンダとブレーキペダルとの間に設けられ、ブレーキペダルが踏み込まれるか、増力指示があった時、ブレーキ制動力を増加できるマスタバック8と、車両が停車状態かつアクセルペダル開放かつ少なくともブレーキペダルを踏み込まれている時に成立する停車ブレーキ作動開始条件及び停車ブレーキ作動中にアクセルペダルを踏み込むと成立する停車ブレーキ解除条件を判定する停車ブレーキ作動判定手段9と、停車ブレーキ作動開始条件成立により第1の所定時間だけ増力指示してブレーキ制動力を増力した後、保持バルブによってブレーキ制動力を保持するブレーキ制動力制御手段10と、停車ブレーキ解除条件が成立すると保持バルブによってブレーキ制動力を開放するブレーキ制動力開放手段11を備え停車ブレーキ作動開始条件の成立により停車ブレーキ装置の作動を開始し、停車ブレーキ解除条件が成立するまで停車ブレーキ装置の作動を維持するものである。」(第3ページ第3欄第27行ないし第4欄第1行及び図1) ク.「実施の形態5.本発明の別の実施の形態について説明する。本発明の停車ブレーキ装置は、実施の形態1における前記停車ブレーキ解除条件を、前記停車ブレーキ作動中に第2の所定量前記ブレーキペダルを踏み込んだときに成立するようにしたものである。」(第4ページ第6欄第5行ないし第9行) ケ.「実施の形態6.本発明の別の実施の形態について説明する。本発明の停車ブレーキ装置は、実施の形態1における前記停車ブレーキ解除条件を、前記停車ブレーキ作動中に第3の所定時間、前記ブレーキペダルが踏み込まれている時に成立するようにしたものである。」(第4ページ第6欄第10行ないし第15行) (2)対比 本願補正発明と引用文献1に記載された発明とを対比すると、引用文献1に記載された発明における「先行車検知手段2」は、その技術的意義からみて、本願補正発明における「車間距離検出手段」に相当し、以下同様に、「車両のスロットルバルブ6の作動を制御して車両を自動的に加速あるいは減速するスロットルアクチュエータ4を制御して」は「車両の走行駆動源による駆動力を制御して」に、「車両の常用ブレーキ装置5の作動を制御して車両を自動的に減速するブレーキアクチュエータ3を制御して」は「通常ブレーキ装置による制動力を制御して」に、「車間距離を維持しながら追従制御」は「車間距離を保ちながら追従走行制御」に、「ACCシステムECU1」は「追従走行制御手段」に、「電動駐車ブレーキ装置12」は「駐車ブレーキ装置」に、「電動駐車ブレーキ装置ECU21」は「駐車ブレーキ駆動手段」に、「前記電動駐車ブレーキ装置ECU21により前記電動駐車ブレーキ装置12を作動させている状態」は「停止保持制御状態」に、「車両の制動制御装置」は「先行車追従走行制御装置」に、それぞれ、相当する。また、引用文献1に記載された発明における「車両が停止され」は、実車速は車速検出手段で検出していることから、本願補正発明における「前記車速検出手段により停車状態が検出され」に相当することは明らかである。 してみると、両者は、 「車間距離を検出する車間距離検出手段と、 自車速を検出する車速検出手段と、 車両の走行駆動源による駆動力と通常ブレーキ装置による制動力とを制御して、先行車との車間距離を保ちながら追従走行制御を行う追従走行制御手段と、 駐車ブレーキ装置を制御して作動させる駐車ブレーキ駆動手段と、 前記追従走行制御中に前記車速検出手段により停車状態が検出され、前記駐車ブレーキ駆動手段により前記駐車ブレーキ装置を作動させている状態(停止保持制御状態)とを備える先行車追従走行制御装置。」 の点で一致し、以下の〔相違点1〕及び〔相違点2〕で相違している。 〔相違点1〕 追従走行制御手段による追従走行制御を解除に関して、本願補正発明においては、ブレーキペダルによってするのに対し、 引用文献1に記載された発明においては、ブレーキペダルによってするのか否か明らかでない点(以下、「相違点1」という。)。 〔相違点2〕 本願補正発明においては、ブレーキペダルの踏み込み圧力を含む踏み込み状態を検出する踏み込み状態検出手段と、停止保持制御状態において、前記踏み込み状態検出手段が所定時間継続して作動した場合、あるいは所定時間継続して作動しておらず、前記ブレーキペダルの踏み込み圧力が前記停止保持制御状態の解除意志を示す圧力以上に達した場合には、追従走行制御を解除して駐車ブレーキ駆動手段により駐車ブレーキ装置を非作動とした状態(制御解除状態)へ切り換える状態切換手段とを備えるのに対し、 引用文献1に記載された発明においては、停止保持制御状態において、先行車の発進に基づいて駐車ブレーキ駆動手段により駐車ブレーキ装置の作動を解除し、先行車の発進に追従して自動的に発進する点(以下、「相違点2」という。)。 (3)当審の判断 〔相違点1〕について 先行車追従走行制御装置において、「ブレーキペダルを踏み込んだときに追従走行制御を解除する」ことは、周知技術(必要なら、原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-113058号公報の第2ページ第2欄第8行ないし第10行及び図8参照。)であることから、上記周知技術を引用文献1に記載された発明に適用して、相違点1に係る本願補正発明のように特定することは、当業者が容易に推考し得るものである。 〔相違点2〕について 上記〔相違点1〕について検討したように、先行車追従走行制御装置において、「走行中にブレーキペダルを踏み込んだときに追従走行制御を解除する」ことは、周知技術である。また、「走行中だけでなく、停車中においても追従走行制御を解除し得るようにする」ことは、通常の技術課題(必要なら、本願明細書において従来技術を示すものとして引用された特開平10-338054号公報の第8ページ第13欄第3行ないし第9行、特開2002-293160号公報の第2ページ第2欄第30行ないし第35行参照。)である。 そして、引用文献2には、上記記載カ.ないしケ.によると、車両が停車状態かつアクセルペダル開放かつブレーキペダルを踏み込んだときに停車ブレーキ装置が作動し、ブレーキペダルを開放してもブレーキ制動力を安全に停車維持可能まで増力してから保持する停車ブレーキ装置において、「(i)停車ブレーキ解除条件を、停車ブレーキ作動中にブレーキペダルが所定時間踏み込まれた時に成立するようにした、若しくは、(ii)停車ブレーキ解除条件を、停車ブレーキ作動中にブレーキペダルを所定量踏み込んだ時に成立するようにした」技術(以下、「引用文献2に記載された技術」という。)が記載されている。ここで、上記(ii)において、ブレーキペダルの所定量の踏み込みを、踏み込み圧力の検出によって行うことは、ごく普通の事項(必要なら、前置報告書において引用した特開平10-271608号公報の第5ページ第8欄第25行ないし第27行参照。)にすぎない。 そうすると、引用文献1に記載された発明の停止保持制御状態において、追従走行制御を解除し、駐車ブレーキ装置を非作動とすることを目的として、上記周知技術、及び引用文献2に記載された技術を適用し、もって、「ブレーキペダルの踏み込み圧力を含む踏み込み状態を検出する踏み込み状態検出手段と、停止保持制御状態において、前記踏み込み状態検出手段が所定時間継続して作動した場合、あるいは所定時間継続して作動しておらず、前記ブレーキペダルの踏み込み圧力が停止制御状態の解除意志を示す圧力以上に達した場合には、制御解除状態へ切り換える状態切換手段とを備える」ように特定することは、当業者が格別困難なく想到し得るものである。 そして、本願補正発明の作用効果も、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)[理由2]のむすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.むすび [理由1]又は[理由2]によって、結論のとおり決定する。 第3.本願発明について 1.本願発明 平成22年4月23日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成21年12月21日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、前記第2.1.(A)のとおりのものである。 2.引用文献 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記第2.-2(1)に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記第2.-2(2)で検討した本願補正発明の限定事項である「前記ブレーキペダルの踏み込み圧力を含む踏み込み状態を検出する踏み込み状態検出手段」のうち、「圧力を含む踏み込み状態、状態」との事項を省き、同じく「前記踏み込み状態検出手段が所定時間継続して作動した場合、あるいは所定時間継続して作動しておらず、前記ブレーキペダルの踏み込み圧力が前記停止保持制御状態の解除意志を示す圧力以上に達した場合」のうち「前記踏み込み状態検出手段が所定時間継続して作動しておらず、前記ブレーキペダルの踏み込み圧力が前記停止保持制御状態の解除意志を示す圧力以上に達した場合」との事項を省いたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2.-2(3)に記載したとおり、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-05-13 |
結審通知日 | 2011-05-17 |
審決日 | 2011-05-31 |
出願番号 | 特願2005-180276(P2005-180276) |
審決分類 |
P
1
8・
57-
Z
(B60K)
P 1 8・ 575- Z (B60K) P 1 8・ 121- Z (B60K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 畔津 圭介 |
特許庁審判長 |
小谷 一郎 |
特許庁審判官 |
安井 寿儀 中川 隆司 |
発明の名称 | 先行車追従走行制御装置 |
代理人 | 永井 冬紀 |